2009年09月30日(水)  「ウェルかめ」がはじまり、ひかりTVを終える。

「つばさ」が終わり、次の朝ドラ「ウェルかめ」がはじまった。いつも朝ドラが入れ替わってしばらくは、食べ慣れた朝食のメニューが変わったような違和感があり、慣れるまでに時間がかかる。今回は味つけも盛りつけも極端な違いがあるし、「つばさ」の消費量が半端ではなかったので、いつも以上に適応期間が必要になりそう。

「だんだん」が終わって「つばさ」が始まったとき、「だんだんは?」と戸惑っていた娘のたまは、昨日、一昨日と「ちゅばさは?」と淋しがったが、今日は「わっかめ みるうー」とノリノリ。「わっかめじゃないよ。ウェルかめだよ」と訂正しつつ、似てるかもと思ったりする。「そっかあ。わかめは こんぶかあ}とたま。亀もわかめも海のものだと気づく。

ひかりTVの無料お試し期間2か月が今日で終わるので、解約の電話をする。熱烈な電話勧誘を受けて申し込んだもののなかなか接続できずにいて、結局ほとんど観る機会はなかったけれど、ちょうど仕事の資料で観なきゃいけない映画がかかっていたときは便利だった。それでも月々の契約料の元を取れるほどは観ないし、間取りの都合でモデムから伸びるケーブルが部屋を縦断してしまうのも煩わしく、利用を継続しなかった。いちばん多く再生したのは「ハム太郎」のアニメビデオで、たまの食いつきはすごかった。大人はひとつの回を観ると次の回を観ようとするが、3歳児はひとつの回を観ると、もう一度頭から同じ回を観ようとするので、延々と第一話を観続けた。

2008年09月30日(火)  脊髄を洗って乾燥してキレイになる
2006年09月30日(土)  本と遊ぶ「おそろい展 ミヤケマイ」
2003年09月30日(火)  BG SHOPでお買い物


2009年09月29日(火)  『ディア・ドクター』(西川美和原作・脚本・監督)

6月27日[土]公開の『ディア・ドクター』をついに観る。有楽町イトシアにあるシネカノン有楽町二丁目にて、朝10時からの一回上映。公開3か月で、ロングランを続けている。

画面に映るもの、聞こえてくる言葉や音、すべてに細やかな気配りが行き届き、役者さんの呼吸やディテールの積み重ねがひとつの世界を完成させているのに立ち会えて、見応えがあった。原作・・脚本・監督を西川美和さん一人が手がけていることも世界観の揺るぎなさの理由かもしれない。

『ゆれる』と同じく、企画はエンジンフィルムの安田匡裕会長。『ゆれる』のマスコミ試写をやっていた頃、一緒にお仕事をしかけていて、試写状をいただき、「あ、西川美和監督の」と反応すると、「これ、俺なんだよ」と言われ、「え! 西川美和監督って、安田さんだったんですか!」と早合点してしまったことを思い出す。自分の関わった作品を「これ、俺なんだよ」とか「これ、わたしなんですよ」と言うのはよくあることだし、西川美和監督の美しい顔写真も見ていたはずなのに。わたしのおなかがずいぶん大きくなった頃だったから、あれから3年。一作ごとにじっくりと時間と手間をかけ、鮮やかな存在感と印象を残す。充実した仕事ぶりだなあと惚れ惚れした。

同じ劇場では『子猫の涙』の脚本をお手伝いし、個人的にも親しくさせていただいている森岡利行さん脚本、監督の『女の子ものがたり』を上映中。こちらも評判がいいので、ロングランになりそうだけど、近いうちに観ようと思う。

2008年09月29日(月)  たま大臣にインタビュー「日本をどんな国に?」
2006年09月29日(金)  金太本、ついに出版。
2005年09月29日(木)  レストランJ→カフェ・プラハ→レストラン・キノシタ
2002年09月29日(日)  『パニックルーム』→餃子スタジアム→出社の長い日曜日


2009年09月28日(月)  「瀬戸内国際こども映画祭」を子育て中

7月29日の日記に「瀬戸内国際子ども映画祭」の実行委員会に出席したことを書いたが、あれから2か月、再び実行委員会が開かれた。漢字が多いので「子ども」を「こども」とひらがなにしましょうと合意したので、以後、「瀬戸内国際こども映画祭」と表記する。

参加者は男性3名、女性6名。前回はチーズケーキの差し入れがあったが、今回は、ダクワース、手づくり栗ようかん、ミニたい焼き。女性が多いと、おやつがにぎわう。おやつがあると、話の角も取れて、会議はまあるく進む。

今日の議題は、コンペ部門の実施方法、各専門部会の割り振り、サイトの準備をどのように進めるか、予算を抑えるためにどこにどんな協力をお願いできるか、などなど。やりたいこと、やるべきことが、少しずつ具体的に煮詰まっていく。映画祭を支えるためには、ボランティアの存在が不可欠で、実行委員会も手弁当。参加する一人ひとりが気持ちを会わせ、チカラを会わせないと、志だけが空回りして空中分解してしまう。「ボランティアではなく、サポーターと呼ぼう」と意見が一致した。

映画祭のコンセプトをコピーにする仕事を託されたので、帰ってから、前回思いついた「二十四の瞳、きらり」をキャッチコピーにして、ボディコピーを考えてみた。さ来年夏に産声をあげるこの映画祭は、名前にも「こども」がついているけれど、これから育っていくべき存在で、そのためには、たくさんの「育ての親」が必要だ。そんなストーリーが浮かんだ。


折しも9月下旬から配布中の池袋シネマ振興会のフリーペーパーbuku21号(表紙は『悪夢のエレベーター』監督の堀部圭亮さん)に掲載された「出張いまいまさこカフェ」13杯目のタイトルは、「母と子と映画」。『ぼくとママの黄色い自転車』公開の話とあわせて、こども映画祭のことも紹介していて、「映画祭を産み育てる」という言葉が、ひと月前に原稿を書いたわたしから出ている。

たくさんの人に愛されて、その愛を未来にお返しできるような、「こども」になって欲しいと願い、育ての親の一人として、注げるものを注ぎたいと思う。

2008年09月28日(日)  オレンジの壁のユキちゃんち
2005年09月28日(水)  『Spirit of Wood. Spirit of Metal(平成職人の挑戦)』
2002年09月28日(土)  料理の腕前


2009年09月27日(日)  客に聞こえる声で叱る飲食店

どっか外で食べよっか、どこにしようと候補の店を頭の中で検索して、「あそこのピロシキ食べたいと思ったけど、こないだ感じ悪かったからなあ」とダンナが言った。そのお店のピロシキが抜群においしかったけれど、食事している間じゅうずっと女主人が店員の女性に小言を言い続けていて、せっかくの味を何割か損ねてしまっていた。

店員さんにも落ち度というか、言われる隙はあり、女主人が期待するより動きが遅かったり、やるべきことの順序が前後したりしたのだけど、言われなければ客は気づかないような些細なことで、それをいちいちくどくどとなじる女主人の言葉のほうが、よっぽど不愉快だった。店員さんがビクビクしながら給仕し、食べているこちらまで一緒に叱られている気持ちになり、胃が縮むような居心地の悪さを味わった。店を出るとき、ひとこと苦言を申し立てようかと思ったほどだ。

「もったいないよねえ、あのお店」とダンナと話したが、別なお店での出来事を思い出した。「さっきのお客さん、百円足りなかった」と延々とレジの子を責めているのを聞かされながらランチを食べた店では、「わたしが百円払いますから、百円の話はもうやめてください」と喉まで出かかって、呑み込んだ。ピロシキのお店と同じくこじんまりした家庭的な雰囲気のお店だった。目が届く小さなお店ゆえに店員のアラが目につき、ずっと顔を合わせている息苦しさがはけ口を求めてしまうのかもしれない。客に聞こえてしまわないかと気遣いする余裕すら失われているのは、気の毒でもある。

先日デニーズへ行くと、厨房のそばに通され、隊長のように新米店員を𠮟り続けるボス格店員のよく通る声が丸聞こえだった。デニーズへ行くのは食事よりもネタを味わうことが目的だったりするのと、ボス店員の歯切れのいい言葉が小言ではなく格言調で、これは聞いていて痛快だった。「手ぶらで帰ってこないの! わかる? お皿運んだら、お皿下げてくる! 片道だけが仕事じゃないの!」。その言葉を肝に銘じ、家事に応用すると、あら不思議。探しものが多いせいで無駄に家の中を動き回る毎日なのだが、そのついでに少しずつ部屋が片付く結果となり、デニーズ効果と喜んでいる。

2008年09月27日(土)  生傷が絶えない足
2007年09月27日(木)  1979〜80年「4年2組 今井まさ子」の日記
2005年09月27日(火)  串駒『蔵元を囲む会 十四代・南部美人・東洋美人』
2003年09月27日(土)  ハロルド・ピンターの「料理昇降機(THE DUMB WAITER)」
2002年09月27日(金)  MONSTER FILMS


2009年09月26日(土)  川越「つばさ」展会場で最終回

半年間、これまでにない熱心さで観続けた朝ドラ「つばさ」の最終回。7:45からのBS2、8:15からの総合、9:30からのBS2一週間分再放送を観て、一家で川越で向かう。「つばさ」展を開催中の鏡酒造跡地で、みんなで最終回を観ようという試みがあることを「つばさ」ファン掲示板で知った。

4度目の川越、クレアモールを歩いて鏡山酒造跡地へ。「なんか のみたいよー」を連発するたまをなだめすかし、到着すると、前回飲んでおいしかったグレープフルーツジュースを買う。ごっくんと飲んで、笑顔を見せるたまに「我慢して良かったでしょ」。

「つばさ」展会場に入ると、並べたパイプ椅子を埋めた人々が「つばさ」PR映像に見入っていた。プロデューサーの後藤さんと初めましての奥様を見つけて、ご挨拶。わたしの服をほめていただく。パコダテ人の衣装に使ったアップリケを3900円の古着ワンピースに縫いついたもの。古着な上に7年も着ているから、相当ボロボロだけど、チャーミングな奥様と話が弾むきっかけになった。

12:45から今日4度目の最終回。みんなで見守るテレビの背景には川越キネマと甘玉堂のミニチュアセット。


パイプ椅子に座っていたたまは、落ち着かず、立ち見のわたしの元へ。展示のジオラマと画面のジオラマを見比べて、「おんなじー」。知秋が万里にメロンの新作菓子を差し出す場面では、さざ波のようなくすくす笑い。終わると、大きな拍手が沸き起こった。サプライズゲストとして紹介された後藤さんが地元の皆さんに感謝の挨拶。再び拍手が贈られた。

わたしとダンナは川越ファンミーティングのときに立ち寄ったけれど、そのとき留守番だったたまは初めてで、「これなあに?」と展示物に興味津々。川越キネマの前で記念撮影。「なかにはいりたいよー」が叶わず、指をくわえて、いじけのポーズ。「かわごえきねま」「らじおぽてと」と言えるようになったのはドラマの終盤だった。大きくなっても覚えてくれているかな。

甘玉堂の前で母娘ショット。二人で写ることは珍しいけど、母と娘の物語ですからね。たまは「こちらあまたまどうですー」のポーズ。

撮影小物もいろいろ。これは、小料理屋「こえど」に飾ってあったもの。

斎藤興業にあったブーメラン。グラスの展示もぜひ!

浪岡が音楽にはまるきっかけとなった記念のレコード。7週で登場。

16週で登場した加乃子の売れ残り防災グッズ「防災くん」。


9週で初登場し、その後いろんな人がかぶることになった加乃子手づくりの「あまたま君」「ぽてと君」。たまはマネキンと同じポーズを取っているつもり。

「つばさ」展は10月末まで期間延長。「つばさ」公式サイトも年内まで見られるとのこと。「つばさ」ファン掲示板へも番組や川越の感想、印象をぜひぜひ。

3歳児のたまの体力を考慮し、今日は川越駅と鏡山酒造跡の間で過ごすことに。同じ敷地内の明治蔵で乾物を買い、駅へ向かってクレアモールを引き返す。行きにチラシをもらったインド料理屋でランチ。ナンの大きさにびっくりしたけど、味は予想の範囲内。写真のほうがおいしそうかな。お店の雰囲気は明るく、かわいく、子どもにはオレンジジュースをサービスしてくれた。インド人のやっているカレー屋さんは例外なく子どもにやさしい。壁際がベンチタイプの椅子だったのも助かった。

クレアパークという公園前で、川越の保育園の質の向上を訴える署名をやっていた。「ほいくえん?」と他人事ではないという顔で、たまが立ち止まる。市外住人も署名できるとのことで応じると、最後の一個という風船をくれた。風船を持って、たまは公園の中へ。裸足になり、ズボンを脱いで、水遊び。ここが保育園の園庭だと思ったらしく、「また かわごえで ほいくえん いくぅー」。

ユニクロとGAPで服を買い(この二軒がとても近いのはうれしい)、行きに気になっていた茂蔵という豆腐屋で豆腐ハンバーグ、枝豆豆腐、もちもち豆腐(皮がドーナツ、中身がおからぎょうざのようなもの)を買って帰る。夕食で食べたら、とてもおいしかった。クレアモールはいつも素通りだったので、買い物が楽しい通りだと発見。

2008年09月26日(金)  スーパー家事執行人Mさんの仕事っぷり
2006年09月26日(火)  マタニティオレンジ11 ひるまないプロデューサーズ
2005年09月26日(月)  『東京タワー』(リリー・フランキー)でオカンを想う
2004年09月26日(日)  新木場車両基地 メトロ大集合!撮影会
2003年09月26日(金)  映画の秋
2002年09月26日(木)  ジャンバラヤ
2001年09月26日(水)  パコダテ人ロケ4 キーワード:涙


2009年09月25日(金)  朝ドラ「つばさ」残すところあと一回

いつも朝ドラが終わりに近づくと、最後はどうなっちゃうんだろという楽しみよりも、もうすぐお別れなんだという淋しさが勝る。開発から関わり、放送を一日2回から4回観続けてきた「つばさ」との別れを惜しむ気持ちは、これまでとは比べ物にならず、小豆島のテレビで「ウェルかめ」が特集されていたときも、「つばさ」の終わりばかりが意識されてしまった。

そんなときに、今日の放送。ラジオの男とつばさの別れは、いっそうせつなかった。

感覚としてはあっという間だったけど、半年間お祭りを見られて、楽しかった。いよいよ明日は最終回。ありがとうの気持ちで観たい。

9週以降、週の見どころ紹介に添えるために撮っていた台本と小物の写真。楽しみにしてくれていた人もいたので、まとめてどうぞ。毎回、家の中に転がっているものを週のテーマに合わせて選んで、光を当てた。今週は何を合わせようかと狭いわが家を見渡すと、掘り出し物を発見できて楽し待った。幸せもまた、そんな風に、なにげなくそこにあるけど、あまりにも当たり前の光景になっていて、普段は日常に埋もれているものなのだろう。

第1週「ハタチのおかんとホーローの母」
第2週「甘玉堂よ、永遠に」
第3週「家族の周波数」
第4週「つばさよ、あれが恋の灯だ」
第5週「運命の人」
第6週「父のぬくもり」
第7週「もうひとつの家族」
第8週「親子の忘れもの」





2008年09月25日(木)  ロハス(LOHAS)より愛せるセコ(SECO)
2007年09月25日(火)  すごい本『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』
2003年09月25日(木)  ディズニー・ハロウィーン
2002年09月25日(水)  宮崎・日高屋の「バタどら」
2001年09月25日(火)  『パコダテ人』ロケ3 キーワード:遭遇 


2009年09月23日(水)  旅する、恋する、たま3歳1か月。

4泊5日の小豆島旅行から帰宅し、一夜明けた。荷解きをし、洗濯をし、お礼状(俺以上と変換された!)を書き、家でのんびり過ごす。

おやつは、昨日、香川県三木町渡邊邸でのグループ展「和今感彩」で買い求めた「小豆島ブラウニー」。焼き菓子工房【oyatsu】の木村美智子さんの作品。一日持ち歩いたので、崩れてほろほろになっていたけど、指で固めて食べるのの楽しい。やさしい味を噛み締めながら、小豆島の風景に思いをはせる。

【oyatsu】のページがあるのは、Thingsという小豆島を拠点にした服飾小物ブランドのサイト。このブランドとサイトを運営しているユッコさんという人が、「和今感彩」展のまとめ役だったようで、昨日はいろんな人が「ユッコさん、ユッコさん」と噂していた。いちばん声が大きくて、たくさん動いていたあの女性がその人だったんだろなと振り返る。Thingsの作品を見ると、絵描鬼・柳生忠平さんの妖怪鞄もこのブランドのものかもしれない。

「和今感彩」展でもらった靴入れ用エコバッグは、わたしの仕事椅子のクッションとなじむ色合いであることを、「おんなじ!」とたまが発見。

夕方は「おみやげあるよ」の電話を受けて、ご近所仲間で映画通のT氏が立ち寄ってくれる。お土産は、小豆島・二十四の瞳映画村の無添加佃煮(柔らかくて美味!)と香川・池上製麺所るみばあちゃんのうどんと、思い出話。高峰秀子版『二十四の瞳』のDVDをいただいてきたので、お貸ししましょうかと言うと、「何度も観て、細部まで記憶しております」。次回はぜひ一緒に行きましょうと話す。いつものように、たまが読む絵本を贈ってくださり(今回は『てぶくろ』というウクライナ民話)、どっちがお土産なんだか……と恐縮。

昨日3歳1か月になったたまは、旅行でたくさんの刺激を得た様子。旅行前夜は「あした りょこう」と躍りだし、旅先では「きょうも りょこう」と踊って出会った人たちを和ませ、家に帰ってくると「あした ほいくえん」と踊っている。普段は保育園があるし、休日もわたしが仕事のことが多いので、こんなにべったりと長いこと一緒にいたのは、保育園に入る前以来だったかもしれない。たくさん遊んで、甘えて、いちだんと言葉や表情が豊かになった気がする。「ママ だいすきー」と一日に何度も言ってくれ、一時期のイヤイヤを卒業し、素直さや無邪気さが戻ってきた。

小豆島から持ち帰った芸は、「ちゅうべいこうせん」。指を軽く曲げた掌を向け合って、「ガオー」と光線を送りあう忠平さんと延々とやっていた。アレンジで「大阪名物たこ焼き光線」や「お好み焼き光線」をわたしが仕込むと、それも気に入って、「どやー」と繰り出している。「ちゅうべい また あいたいね。やじゅうさん(柳生さんと言えず、野獣さんになる) また あいたいね。また しょうどしま いこうね。ぼくママ いこうね」。故郷ができたような気持ちなのだろう。大型旅行が、ひと月遅れの誕生日プレゼントになった。

この一か月の大きな変化は、人との交流を積極的に楽しむようになったこと。保育園で同じクラスのリオ君と帰る方向が同じなので、お迎えの時間が同じときに一緒に帰れるのがうれしくてたまらない。リオ君はたまより5キロも大きいけれど、3歳になるのは3か月後で、たまは姉さん女房気取りで靴をはかせてあげたりする。二人で手をつなぎ、ショップ99で仲良し夫婦のようにお買い物。信号を待ちながら「たまちゃん すきー」「リオくん すきー」と大声で言い合っている。一軒家のリオ君の家にはエレベーターがないので、いつもうちのマンションのエレベーターを昇って、降りる儀式の後、マンションの入口まで戻ってきてバイバイとなる。明日になればまた会えるのに、毎回リオ君が泣いて別れを惜しみ、たまはまんざらでもない顔をしている。リオ君が泣かないときは、たまが泣く。これが初恋ってやつかしら。

2008年09月23日(火)  さつまいもの町、川越。
2007年09月23日(日)  オフコースを聴いて思い出すこと
2006年09月23日(土)  マタニティオレンジ10 誕生日コレクション
2005年09月23日(金)  今日は秋分の日
2001年09月23日(日)  『パコダテ人』ロケ1 キーワード:事件


2009年09月22日(火)  小豆島5日目は香川県三木町の渡邊邸で妖怪三昧

小豆島のゲストハウスで4回目の朝を迎え、冷蔵庫の中身大掃除の朝ごはん。明日の午前中の飛行機で東京に戻る予定だったのだけど、今日、柳生さんに高松を案内していただくことになったので、高松へ渡ったついでに東京へ向かうことにした。やる気の出るキッチンと眺めのいいベランダ、洗い場にベッドを二つ置けそうな広々したお風呂……わが家の何倍も広く、快適なゲストハウスと名残を惜しむ。

土庄港の高速艇乗り場では小豆島にまつわる曲が順繰りに流れている。一昨日、うちの両親を見送ったときに『ぼくとママの黄色い自転車』の主題歌、さだまさしさんの「抱きしめて」が聴こえてきて感激したが、今朝もちょうどいいタイミングで「抱きしめて」が流れていて、見送られているようだった。

柳生さん、峰子さんとともに高速艇に乗り込む。二階があり、ラウンジのようにソファが置かれているのを初めて知る。小豆島の話、柳生家の成人した四人のお子さんたちの話、窓から見える風景の話(二つ重なった不思議な岩が見えた)……あっという間に30分、高松港に着くと、長男忠平さんのお嫁さん、陽子さんがお出迎え。これから高松市の隣の三木町で開かれている忠平さんのグループ展を見に行く。

19日に通った県庁公園前の大通りを走っていると、「たまちゃん、ここで、ズボン落っこちたねえ」とたまが言い出した。県庁公園近くのうどん屋「さか枝」で食べた帰り、ウエストがゆるくなったジーンズが漫画のようにすとんとくるぶしまで落っこちた。それをよく覚えていることに驚く。今回の旅行のいろんな出来事も、小さな思い出の引き出しにしまわれていることだろう。


小豆島での「ぼくママ}上映会を主催した映画館ホール・ソレイユの前を通っていただく。「ぼくママ}がかかっているかなという期待があったが、違う作品だった。『子ぎつねヘレン』の太一役、深澤嵐くん主演の『いけちゃんとぼく』、『子猫の涙』でご一緒した森岡利行さんが監督、脚本の『女の子ものがたり』を上映中。

グループ展「和今感彩」の会場は、渡邊邸という古い茶室が集まった情緒あるお屋敷。門をくぐると、大きな紅い和傘が目に飛び込み、着物美女がチケットと引き換えに、靴を入れるエコバックとラムネなどのガラス瓶に入った冷たい飲み物が差し出してくれる。一瞬でこの空間、空気に恋してしまった。「和今感彩」というタイトルは、「和魂漢才」をもじったもの。前にいた外資系広告会社のモットーが「和魂洋才」だったことを思い出す。

中に足を踏み入れると、手づくりのお菓子やら和風小物やらTシャツやらを展示販売している。夜市のような楽しさ。小豆島のお菓子作家さんのブラウニーを、たまが試食を気に入ったので、購入する。

さらに奥の間に進むと、お目当ての忠平さんが襖(!)に描いた妖怪の絵を前に説明していた。蝋燭の炎が、ゆらめき、妖しさを盛り上げる。


絵は描きかけで、昨日も今日も泊まり込み、筆を進めて進化中なのだという。部屋の片隅にはただならぬ妖気を放つ、これまた襖に描かれた妖怪画が。これは、もともとこの屋敷にあったものだそうで、時の洗礼も受けて、すごみを増している。忠平さん、この絵に大いに刺激を受けたそう。

「夜に来ると、いいですよお」と忠平さん。こんな部屋に泊まり込んだら、背筋が冷えそうだけど、それがまた絵描鬼・柳生忠平にとっては、筆に妖気を呼び込むチャンスなのかもしれない。以前、妖怪もののアニメを開発する仕事に半年ほど首を突っ込んだことがあり、妖怪についてけっこう勉強したが、この世と妖怪の世界はつながっていて、妖怪たちは自由に行き来しているのだという。それも文明の発達で、道がふさがれつつあるらしいが、ここならいくらでも通り道が開いていそうだ。

作品はちょっと怖いけど、妖怪をデザインしたTシャツを購入。男物なので、Sサイズでも大きい。そのうちレディースも作る予定とのこと。パフスリーブとか、ワンピースとか、かわいいラインに妖怪の組み合わせを希望。

その隣の間には、忠平さんデザインの革のバッグを展示。こんなの見たことない。面白い。

忠平さんの妖怪画の前にお供えされているのは、20日に小豆島で見た井口三四二さんのコレクションのひとつ。民俗資料館を案内してくださった柳生さんが、展示物を「妖怪のもと」と呼んだ理由がわかった。今は休眠していて宝のもちぐされとなっているコレクションをどのように展示したら人を引きつけられるだろう、と考えをめぐらせていたが、古い道具に新しい感性を吹き込む忠平さんの発想にヒントがあるように思った。

外に出る。お堂の中にも妖怪画、これ以上ふさわしい展示スペースがあろうか。鬼気迫る提灯は、昨日、会場の設営をしているときに見つけたのだとか。これが灯って絵を浮かび上がらせるところも見てみたかった。ちょうどお堂の後ろを電車が走る。琴平鉄道、通称「こと電」の白山(しろやま)駅から徒歩10分とのこと。東京のわが家の最寄り駅は白山(はくさん)で、いつも乗り換え案内を調べると、「白山(新潟)」「白山(香川)」という候補が出るのだが、香川の白山駅はこんなところにあったのか。

「妖怪のもと」×柳生忠平の競演は続く。やかんや鍋が妖怪になるのだから、鍵と錠前だって妖怪になる。自分で自分をかんじがらめに施錠しているのか。

これはセメントを平らに塗る道具だったっけ。近所で大工さんが仕事するのを惚れ惚れ眺めた思い出が蘇る。この妖怪も自分で自分を塗り固めているのか。


左は煙管(キセル)で右は分銅か。分銅妖怪も自分の重みで身動き取れなくなっている。

これは携帯筆らしい。筆ペンの祖先か。

代々受け継がれてきたこの屋敷を管理している小橋さんとお話ができた。「前はこういうものを背負わされて重荷で重荷で……でも今は、どうやって活かしていこうかと考えてたら楽しいですね。白州邸にも行って、じっくり見てきました」。快活で頭の回転のいい女性で、お話もキレがいいと思ったら、ラジオのパーソナリティもなさっているという。ダンナ様はテレビ局に務めていて、「ぼくママ」試写会などにも関わられていたとのことで、作品のことをよく知ってくれていた。

お堂の隣に建つ蔵の前で立ち話したのだが、蔵の下の部分の色が変わっている部分を指差し、「あそこから泥棒が入ったんです」。数年前のその出来事がきっかけで、それまで眠らせていた屋敷を開放して、風を通さなくてはと思ったという。蔵から何を盗まれたのかもわからないらしく、「風穴だけ開けに来たのかもしれませんね」と話す。この建物に人といい空気が集まっている場面に出会えて、とても幸せだった。建物の外観の写真を撮り損ねたのが惜しまれる。


香川といえば、うどん。クルマを走らせて目に留まった「根っこ」というお店へ。わたしは釜揚げを、たまはざるを。「昼どきを過ぎてもこんだけ人が入ってたら、当たりや」と柳生さん。本場でうどんを食べるというだけで、わたしには十分おいしさの条件はそろっている。

食後は高松市内に戻り、柳生さんの親戚がやっているというきらら温泉でひと風呂浴び、マッサージでほぐされる。その間、たまはこんこんと昼寝。目覚めてお風呂に入ると、大浴場に興奮。露天風呂も泡風呂も楽しんだが、調子に乗って風呂から風呂の移動にダッシュし、洗い場の床に勢いよくダイブして大泣きした。あわてて脱衣場に引き上げたが泣き止まず、地元のおばちゃんが「痛かったなあ」と同情してなだめてくれ、「子どもを泣かせたままにしとくと、お母さんの器量が疑われるよってな」とわたしに耳打ち。たまは「たかまつばあば」となつき、「たかまつばあば、おおさかばあばのこと、しってるかなあ」。

畳敷きの休憩スペースで休み、柳生さんの親戚の方とご挨拶。パワフルで強運の持ち主の女主人は柳生さんの叔母さん。「山あり谷あり、わたしの一代記、おもろいよー」。

四国に来たからにはお遍路さんに会いたかったが、車で移動する人がほとんどとのことで、道を歩いている姿は見かけなかった。温泉近くの八十三番札所、一宮寺を訪ねたが、参拝時間が終わっていて、静かだった。その分広々としていて、たまは大はしゃぎ。お地蔵さんがエプロンをしている姿に親近感を抱いた様子だった。

陽子さんに空港まで送っていただき、JAL最終便で羽田へ。ひさしぶりに旅行らしい旅行をして、狭く散らかったわが家に帰ると、なんだか気が抜けつつも、ほっとした。

2008年09月22日(月)  「せつない」が言葉になった、たま2才1か月
2007年09月22日(土)  マルセル・マルソー氏死去
2006年09月22日(金)  マタニティオレンジ9 赤ちゃんとお母さんは同い年
2005年09月22日(木)  innerchild vol.10『遙<ニライ>』
2003年09月22日(月)  花巻く宮澤賢治の故郷 その3


2009年09月21日(月)  小豆島4日目はアートの島「直島」へ

娘のたまが生まれた頃だっただろうか、友人に「すっごくいいよ」とすすめられ、直島のことを調べたことがあった。岡山からさらにフェリー、しかも宿泊施設は限られていて、ほぼ満室。これは無理だと断念し、それから数年、思い出したように小豆島滞在中に日帰り旅が実現した。土庄港からは直行の船はなく、高松に出てから直島行きに乗り換える。高速艇なら乗り換え時間を入れても2時間足らず。

今回お世話になりっぱなしの小豆島の柳生さんのお友だちで、瀬戸内国際子ども映画祭の準備にも関わっている直島の井下良雄さんが船着き場まで出迎え、早速、古民家をアートスペースとして活用している「家プロジェクト」へ案内してくれる。

室内に浅く水を張って発光ダイオードを浮かべ、数字が明滅するアート(その間隔は島民たちに秒数を決めてもらったそう)。碁会所の畳に木でできた花をちりばめたアート。壁の絵が鏡のような床に映りこみ、深い崖の底にすいこまれるような錯覚を覚える「FALLING」というタイトルのアート。

有名な地中美術館へ抜ける山道をたくさんの人が歩いている。ここは竹下通りか、と思うほどの人通り。約4000人の島民に対して、年間の訪問者数は約40万人。今日は大型連休でにぎわい、島民を上回る勢いの旅行客が押し寄せているのだとか。なんにもない山道の途中に突如巨大ゴミ箱が現れる。いたるところにアートがあって、これは楽しい。

地中美術館の整理券待ちの列に井下さんの奥さんが並んでくれていた。朝から女文楽の練習をしてから昼前に並び、17時半入場の整理券を取れたという。9時に並んでも11時入場だったとか。「今日はえらい人や」と井下さんもびっくり。

草間彌生のオレンジかぼちゃに、たまは大興奮。るるぶを見たときから、「ここいく!」と所望していた。「台風のときに流されかけて、大変やった」と井下さん。


井下さんの同級生がやっている山本うどん店は大人気で、ベネッセミュージアムの中にある和食屋に名前を残し、作品を見ながら待つことに。

イタリアから運んだという大きな石のオブジェに寝そべり、建物に切り取られた空を見上げるというアート。雲までなんだか絵画的。

30分待ちのはずが1時間半待ちとなり、メニューは親子丼を残すのみ。小鉢がちょこちょこついて上品な定食といった感じ。食事の前にフレッシュジュースを注文。島にいると、喉が渇く。退屈したたまがぐずると、元保育士というウェイターさんが松葉を持ってきて、あやしてくれる。たまは松葉をひきちぎり、「ちょうちょさんつくるー」と遊びだした。


長蛇の列で入れなかった「家プロジェクト」のひとつ、古い歯科を再生させた「歯医者」。10分待って3メートルというペースだったから、一時間待ち覚悟? 廃屋のような建物が行列に取り囲まれている図もまたアート。「自由の女神みたいなんがおるんやけど、狭いとこに押し込められてるから不自由の女神やー」と井下さん。

港近くにできたお風呂やさん。「アーティスト大竹伸朗が手がける実際に入浴できる美術施設」、その名も直島銭湯「I♥湯」。カラフルなコラージュが楽しい。

右も左もゴテゴテと。色とりどりで何とも楽しい。目を輝かせていると、「いかにも君好みだねえ」とダンナが呆れる。

「中もすごいで」と井下さんに言われ、入浴。大人500円、子ども200円。そして、直島島民は300円。番台のおっちゃんも「I♥湯」シャツを着ている。男湯と女湯の仕切りの上には巨大な象! 浴槽はタイルがコラージュ。サボテンがニョキニョキの温室がのぞめて、作品の中にどっぷり浸れる感覚。

脱衣場のベンチには映像スクリーンが埋め込まれ、トイレもまたコラージュ尽くし。便器と洗面台には中国の骨董のような絵が描かれている。プロデュースはベネッセの福武總一郎さん。アートと生活の融合に脱帽! 散髪屋やマッサージ屋もぜひ作ってほしい。

銭湯から歩いてすぐの港近くには、赤くて大きな草間彌生かぼちゃ。ここは大人気のフォトロケーション。

島のあちこちの触れるところにアートがあり、自分もその一部になれたりする。その感激が口コミで広まって、島に人を連れてくるのかもしれない。「人がいっぱい来よると、年寄りは元気になるし、どんどんええ顔になりよる。みんな家もきれいにしよるし、見られてるゆうのは大事なことや」と井下さん。たしかなセンスと方針を持ったプロデューサーがいれば、宝は磨かれるんだなと感銘を受けた。

帰りは高速艇がなくフェリーを乗り継いで小豆島土庄港に戻り、迎えてくれた柳生さん夫妻に「島勝」という日本料理屋の庭の見える個室で会席をごちそうになる。盛りつけも味もすばらしく、カメラを車に置いてきたのが残念。たまはフェリーから爆睡してたが、ゲストハウスに帰って目を覚ますと、食べきれなくて持ち帰った天ぷらをむしゃむしゃ食べた。

2008年09月21日(日)  「プロポーズ・アゲイン。」と『最後の初恋』
2006年09月21日(木)  マタニティオレンジ8 赤ちゃん連れて映画に行こう
2003年09月21日(日)  花巻く宮澤賢治の故郷 その2
2002年09月21日(土)  アタックナンバーハーフ


2009年09月20日(日)  小豆島3日目ロケ地めぐり&朝ドラ「つばさ」最終週は「二度目の春」

『ぼくとママの黄色い自転車』ロケ地、小豆島を訪ねて、3日目。今日はオリーブの記念植樹から始まった。映画でも今回の滞在でもお世話になっている柳生好彦さんは小豆島ヘルシーランドというオリーブオイル関連商品を扱う地元企業の会長さん。滞在先のゲストハウスのすぐ隣にオリーブ畑がある。今の季節は苗木を植えるのではなく、すでに根づいた木に土をかけるセレモニー。木の脇に記念メッセージのプレートを立ててくださるというので、「たまえの木」と名付け、「のびのび育て! たまえの木」と願いを込めた。

今はたまの背たけの倍ぐらいの大きさだけど、大きくなると、7〜8メートルほどになるのだという。小豆島の大地に根を下ろした「たまえの木」が枝を伸ばし、実をつけ、のびのび、すくすく育つのを想像するだけでも愉快だ。もう少し大きくなったたまを連れて、大きくなった木を見に来よう。

今日大阪に帰るうちの両親とともに、柳生さんに小豆島を案内してもらうことに。昨日のバーベキューでたまとよく遊んでくれた地元のユウキ君(5歳)とお母さんのミカさんも一緒で、にぎやか。車窓の外を黄色いレンタサイクルが連なって走るのをあちこちで見かける。真新しい車体の黄色が、島の緑に実によく映える。主人公の大志少年を黄色い自転車に乗せたいというのは、わたしのこだわりだったから、映画の中だけでなく現実の光景となったのは、とてもうれしい。

小豆島には農村歌舞伎の舞台が二つ残っていて、神社にしつらえられた舞台だけでなく、そこでの上演も300年あまりにわたって受け継がれているのだという。こちらは肥土山離宮八幡神社。上演は奉納という荘厳な儀式であり、とても神秘的な体験なのだそう。


映画にも登場する棚田は、もうひとつの歌舞伎舞台がある中山の春日神社の近くにあった。

「民俗資料館に興味はありますか?」と柳生さんに聞かれて案内されたのは、閉館となって久しい資料館。同級生のお父様、井口三四二さんが散逸していく島の生活道具を後世に残したい一念で集めた膨大な資料が倉庫に所狭しとひしめきあっている。別名「妖怪の元」と柳生さんが呼ぶ理由を、2日後の22日に知ることになる。

「店台」などと道具のひとつひとつに添えられた味のある説明書きは、三四二さんの直筆。亡くなる間際、柳生さんに資料館を頼むと言い残し、今は柳生さんが管理されているというが、三四二さんの想いを知っているだけに責任は重く、どのような形で公開すればいいのか、思案しているところだという。

美容院の一角を再現したこのコーナー、磨けば面白くなりそう。外観も再現して、フォトロケーションにするとか。

運営していた頃の看板は、今は役目を休んで転がっている。これも骨董の趣。


建物入口に立てられている資料館への想いを綴った看板からも三四二さんのひたむきさが伝わってくる。私財を投げ打ち、膨大な時間を費やし、まさに人生を懸けたのだろう。このまま眠らせておくのは宝の持ち腐れで、宝の山にする手はないものかと考えてしまう。

再びロケ地めぐり。大志(武井証)が自転車を走らせた石畳の道沿いに、大志がママの琴美(鈴木京香)を思い出す夢と、ラストの奇跡が起きる場面に登場する風車があった。宣伝写真の沖田家スリーショットを真似て、家族写真を撮る。

沖田一志(阿部サダヲ)と山岡静子(市毛良枝)が木陰で大志と琴美を見守る大きなオリーブの木は、昭和天皇が植えたものだとか。根元に大きなバッタがいて、恐らく生まれて初めてバッタを見るたまは、飛び跳ねて逃げるバッタをしつこく追いかけていた。

近くには「オリーブ発祥の地」の碑が。101年前、オリーブが根づいたのが、この場所らしい。

「光彩園」のロケ地は、町が運営するスパ施設。

その手前にある「道の駅」では、ハーブを使ったお土産を扱っていて、ホールではハーブのリース越しに「ぼくママ」ミニ展示をのぞめる。

眺めのいい2階のレストランでハーブカレーとフレッシュハーブティーの昼食。カレーは辛口、甘口ともになかなかおいしい。

ポットにびっしり詰まったフレッシュハーブには感激。しかし、店員さんの余裕のなさはハーブがもたらすゆったり感にはほど遠く、受け答えもぶっきらぼうなのが惜しまれる。

たまが出発前に「るるぶ」を見たときから目をつけていた「むらさきのアイス!」が売っていて(ラベンダー味)、オリーブ味とともに食べる。たまは口のまわりをクリームまみれにしながらほぼ一本食べきった。

オリーブ公園を後にし、映画で3歳の大志が「おせんべいのにおい」と呼んだ醤油のにおいがこぼれる醤油工場へ。においと記憶は強く結びつくが、わたしが小豆島で真っ先に思い出したのは、醤油のにおいだった。

続いては、昨日お会いした有本裕幸さんのいる二十四の瞳映画村へ。「魚にえさをやれるんですよ」と有本さんに聞いていたが、シャリシャリに凍ったシャーベット状態の小えびを箸でくずすという豪快な絵付け。タイがジャンプして食いつきにくる。

大石先生と子どもたちの像。Vサインをしている子や手を振っている子……ではなく、先生を相手にじゃんけんをしている。映画を観ていないのに、たまはすばやく理解して、「じゃんけん」とチョキを出していた。

87年公開版の撮影で使われたセットを中心に古い街並が再現され、土産屋などが入っている。校舎の中にはロケで使われたそのままなのか、教室が残っていて、先生になったり生徒になったり。目の前は海で、このロケーションはすばらしい。校舎近くにはボンネットバスがあり、子どもたちがうれしがって乗り降りしていた。

有本さんにおみやげをたくさんいただき、記念撮影。「麒麟麦酒」の前掛け姿。ここの雰囲気にぴったりな「昭和ラガー」というビールがあるのだそう。この空の色、まだ夏のよう。

映画村入口には、ぼくママのチラシが。有本さん、ほんとに熱心に応援してくださってます。


「二十四の瞳」の著者、壷井栄の資料館では、生い立ちをまとめた映像を見ながら、彼女が使っていたというテーブルで葉書を書く。古き良き映画好きなご近所仲間のT氏に高峰秀子版二十四の瞳のポストカードを。切手は資料館で買え、ポストは映画村を出たところにある。
バスの待合室が大きな醤油樽。これ、島の至る所にあれば、小豆島らしくて、観光客に喜ばれそう。

再びドライブして土庄町へ戻り、ちょっと疲れの出たユウキくん親子と大阪へ帰るうちの両親が車を降り、かわりに峰子夫人が合流して、小豆島で売り出し中の「迷路のまち」へ。会長の泊道夫さんは瀬戸内国際子ども映画祭の準備にも関わられているとのこと。待合所にも「ぼくママ」チラシを発見。

泊会長自らの案内で、迷路のまちを歩く。その昔、外からの攻撃をかわすために家同士がスクラムを組むように入り組んで建てられ、路地を三叉路にした結果、迷路のような街並ができたのだという。

上から見ると、重なり合うようにひしめく屋根は、歯並びの悪い歯のようでもある。

その眺めは、西光寺の三重の塔から見たもの。正面の本殿(?)に地下に入る道があり、壁を触らないと方角を見失うほどの闇を抜けると、突如オレンジの光に包まれ、見ると、淡いぼんぼりの光が両側の鏡で無限に続いていて、その光に反射的に救済を感じるという幻想的な体験ができる。その脇の階段をずんずん登っていくと、三重の塔のてっぺんに出て、迷路のまちを見晴るかすことができるのだった。

横から見ると十字架の形に見える隠れキリシタンのものらしい墓などを見ながら、迷いそうな路地を幾度も曲がり、「咳をしても一人」の尾崎放哉の記念館へたどり着く。すでに閉館時間となっていたが、記念館の前にある現役の井戸にたまは大喜び。「いれものがない両手でうける」は小豆島で作られた句だそう。迷路のまちを知り尽くした泊さんの解説のおかげで、何気なく歩いていたら見落としそうな見どころをたくさん拾わせてもらった。

朝から柳生さんにつきっきりで案内していただいたが、夜は長男夫妻に食事をごちそうになる。刺身、天ぷら、西京焼、そうめんなど、地元の幸をたくさんいただく。長男さんは妖怪の絵を描く「絵描鬼」で、柳生忠平の名で活動している。この名前が呼びやすく、たまもすっかり「ちゅーべー」となついたので、わたしもそう呼ばせていただく。

同じブランドの自転車に乗っていたのが縁で陽子さんが声をかけたという馴れ初めはドラマに使えそうだけど、その出会いがなくても一週間後に同じイベントで会うことになっていたとは、まさに運命。もうひとつ驚いたのが、京都で学生時代を過ごした陽子さんが、わたしが下宿していた女子寮の名を「聞き覚えがあります」と言い出し、「下宿先の候補として見に行きました」。おっとりした品のある口調で「トイレやお風呂が共同のところがよかったんです」と言い、本当は吉田寮に憧れていたというから、なかなかユニーク。妖怪との親和性も高そうだ。

話が弾んだので、ゲストハウスまで送ってもらったときにお茶していきませんかと誘う。ドアの前に紙袋が置かれていて、見ると、昼間一緒だったユウキくんとお母さんからおもちゃの差し入れだった。「小豆島滞在中お使いください」とメモが添えられていた。その中に、わが家にもある「水でお絵描きセット」を見つけて、早速お絵描き大会。忠平画伯が妖怪風のたまを描いてくれた。陽子さんも絵が上手。ここでは「幽霊が見える、見えない」話で盛り上がった。

こうして、盛りだくさんな小豆島3日目は終わった。

盛りだくさんといえば、明日からいよいよ最終週の「つばさ」は最後までネタ切れ知らず。主題歌のタイトルでもある「二度目の春」の意味は? 主題歌の歌詞と物語のシンクロというのも新鮮だけど、頭の何週分かの台本を読んでこの歌詞を作り上げたアンジェラ・アキさんはタダ者ではない。演出は1〜3週、6週(斎藤と加乃子)、10週(紀菜子あらわる)、14週(大衆演劇)、16週(台風)、19週(ビバマリア)、24週(千代と加乃子和解)のチーフディレクターの西谷真一さん。目を離さず、ハンカチも手放さず、ラスト6日間お楽しみください。ファン掲示板へも感想をお寄せくださいね。

2003年09月20日(土)  花巻く宮澤賢治の故郷 その1


2009年09月19日(土)  小豆島2日目『ぼくママ』上映会

虫の声を聴きながら眠り、海からの陽射しに朝早く目覚める。島の朝! 7:30のBS hi(東京のわが家では映らない)と7:45のBS2、8:15の地上波で「つばさ」第25週の結末を観る。大画面のハイビジョンで観る冨士さんは、ど迫力。


朝食はベランダで。海まで遮るもののない眺めが何よりのごちそう。水着に着替えて海まで行き、誰もいない浜辺を一家で独占して水と戯れる。

海が大好きなたまは、おおはしゃぎ。でも、唇が紫になり、海から上がると震えていた。

午後からは今回の旅行のメインイベントである『ぼくとママの黄色い自転車』上映会。その前に、柳生さんの車で、船着き場横にある「二十四の瞳」像を見に行く。昨日着いたときは気づかなかった。若い女性二人組に「録ってください」と頼まれてシャッターを切ると、「今の人は小豆島を舞台にした映画の脚本を書かれた方です」と柳生さんが教えたので、「今日上映会があります」とチラシを渡す。

たまは船に興味津々。写真はたまが撮ったもの。


上映会会場の公民館近くの天ぷら屋さん「幸宝」でお昼をごちそうになる。今日高松で次回作がクランクインした井口喜一プロデューサーも合流。天ぷらに行き着くまでに出される一品一品が感動もの。「こちらはフグです」と説明され、「え! これが!」と驚いたのは胡麻豆腐(フグのフォアグラか!と早合点)だったが、胡麻豆腐もフグも舌でとろけて口福〜。満を持して登場の天ぷらは、衣の軽やかなサクサク感が秀逸。きす、えび、あなごなど、衣に閉じ込められ、揚げられると、海鮮の新鮮さが際立つ。今朝もぎたてといういちじくの天ぷらが珍しく、サクッ、ジュルッといただく。

途中、たまが拳を天つゆに突っ込んで母娘で天つゆまみれになる事件があった。その瞬間、頭に思い浮かんだのは、舞台挨拶どうしよう!だったが、すぐに水洗いすると、まったくしみは残らず、ワンピースの布地が薄いので自然乾燥で乾いた。たまはせっかく映画にちなんで黄色いワンピースを着てきたのに、着替える羽目に。

14:20からの2回目の上映の20分ほど前に公民館に着くと、長蛇の列! 岡山から駆けつけた今井雅子ファン第一号の「岡山のTOM」さんと一年半ぶりに再会。岡山産マスカットを求肥で包んだ「陸乃宝珠」(「珠」の字が入っているのがポイント)という源吉兆庵のお菓子をお土産にいただく。

1回目の上映を終えて出てきた人たちが2回目をこれから観る知り合いに「よかったよ」などと笑顔で声をかけていく。1回目、2回目ともに300人を超える人が観てくれたそうで、これは島民3万人あまりの2%に相当する数。全戸に配布したチラシには、わたしが舞台挨拶する旨も記されていた。

1回目を観ていたわたしの両親は、舞台挨拶を見るため、会場に残っていた。高松に住む母のいとこが友人を誘って1回目を観にきてくれていた。わたしが会うのは初めてらしい。映画のおかげで、いろんな人に会える。

入れ替えに時間がかかり、10分押しで小豆島町長、土庄町長、井口さんとともに舞台挨拶。小豆島の風景をお借りしたお礼、16年前に小豆島に来たこと、原作との大きな違いである黄色い自転車が島の緑に映える姿を見て感激したことなどを話す。映画の終盤で感動していただけたなら、その半分は小豆島という場所の力だと締めくくった。小豆島町長さんは小豆島観光協会の会長でもあり、ぼくママのプロモーションにもご尽力いただいた様子。恰幅のいい堂々たる風貌の土庄町長さんはユーモラスな語り口。このお二人とご挨拶しそびれてしまったのが残念。慣れた名調子で司会進行をされた「二十四の瞳映画村」の有本裕幸さん、上映会を主催された高松の映画館ホール・ソレイユ支配人の岡雅仁さんとはご挨拶できた。

いよいよ地元での本編鑑賞。スクリーンで観るのは、初号試写、完成披露試写、キャリアマム試写会、親子試写会に続いて5回目。地元ならではのあたたかな期待感が客席を包み、とてもいい雰囲気。小豆島の場面に差しかかると、おなじみの場所が画面に現れるたびに「おお」とどよめきが起こる。「おお?」とハテナや笑いが混じるのは、大志が自転車で移動する距離への突っ込みらしい。それもまた微笑ましい感じがして、ああ小豆島で観ているんだなあと実感できた。映画が終わると自然に拍手が起こり、ありがたい気持ちでいっぱいになった。出口で「ひさしぶりの映画で、いいものを見せていただきました」と地元の女性に声をかけられる。小豆島には映画館が一軒もないので、今日の鑑賞がひさしぶりという人は多かったのかもしれない。

「ぼくまま、みるう」と心待ちにしていたたまは、犬のアンが出てくるたびに喜び、終盤まで集中して観てくれ、エンジェルロードを見届けたあたりでコテッと寝た。舞台挨拶も印象に残ったようで、「ママの こえ きこえたよ」とうれしそうに言い、「また しょうどしま いって ぼくまま みるう。ママの こえ きくう」。保育園でも小豆島へ行くことを「ぼくまま いく」と先生たちに言っていたから、たまにとって、「小豆島=ぼくママ」らしい。

わたしたちが泊めていただいているゲストハウスに移動し、映画の関係者の方やご近所さんも集まって、柳生さん主催のバーベキューパーティ。あなごやサザエなど海鮮も豪快に。

お刺身もあふれんばかりの歓迎の意を表しているかのよう。二十四の瞳映画村の有本さんに、つくだ煮京宝亭支配人の川原英治さん、オリーブ園営業部長の永井順也さん、寒霞渓ロープウェイ営業課長の高橋俊司さんを紹介していただく。皆さん、小豆島観光協会の活動に携わり、ぼくママ公開に合わせて小豆島PRに奔走されたとのこと。公開初日に東京バルト9でオリーブ石鹸が、大阪ブルク11でつくだ煮が配られたのは、そういうわけだった。

初めて会う方ばかりだけれど、話題に困ることはなく、心地よいひとときを過ごさせていただく。わたしのありふれた顔は、初対面の人に「どこかで見たことがある」「知っている人によく似ている」と言われることが多く、今宵もそうだったが、そのおかげで、するりと小豆島の人の輪になじませてもらった気もする。「集まった人たちがそれぞれ気の合う人を見つけて、そこから交流が始まるのお見るのが好きなんですよ」と柳生さん。映画は人と人をつなげる天才だけど、柳生さん自身もそうで、映画と柳生さんが出会った「ぼくママ」は愉快な縁に恵まれている。

2008年09月19日(金)  広告会社時代の同期会
2004年09月19日(日)  2代目TU-KA


2009年09月18日(金)  高松うどん&小豆島1日目

『ぼくとママの黄色い自転車』上映会を目当てに、今日から小豆島で遅い夏休みを取ることに。娘のたまが生まれてから、大阪の実家に帰るか、近場の海へ出かけるぐらいで、一家で長期旅行に出かけるのは、初めて。昨夜、荷造りをしながら、たまは「あした、りょこう。あした、りょこう」と創作ダンスを舞い始めた。


飛行機で高松入り。香川出身で映画『UDON』(脚本は「つばさ」の戸田山雅司さん)を作ったうどん通の本広克行監督に教えてもらったおすすめ店のうちひとつ、「さか枝」が、県庁公園近くにあり、高松駅行き空港バスを途中下車して5分ほど歩く。おひるどきで店の外まで行列。黙々とうどんをかきこむ人々の静かな迫力に威圧される。注文、会計はどうするのか、異国に舞い込んだようにドギマギ、モタモタ。3人分で1000円足らず。しっかりしたコシのある麺で、たまは「小」ざるうどんでは足りず、わたしの分を横取り。わたしは甘い豆の天ぷらを気に入る。本場の雰囲気にのまれながら食べる醍醐味が何よりのスパイス。

大通りを1キロあまり歩き(歩くと何か楽しい発見があるかと期待したが、商店街は脇にそれたところにあったらしい)高松港へ。チケット売り場には「ぼくママ」マップ。高速艇で小豆島土庄港に着くと、「ぼくママ}のぼりと映画で使われたのと同じ黄色い自転車がお出迎え。さらに、映画公開を記念して始まった黄色いレンタサイクルも。このあと、小豆島滞在中に島のあちこちで黄色い自転車を見かけ、そのたびに映画が島に新しい風を起こしているようで感激した。


映画製作と宣伝に多大な協力をしてくださった小豆島ヘルシーランド会長の柳生好彦さんが港まで出迎えてくれ、ゲストハウスに案内される。東京のわが家の何倍もの広さと窓の外は海という絶好の眺めをたたえたこの家が小豆島滞在中の宿。柳生さんの奥様の峰子さん、長男のお嫁さんの陽子さん、次男のお嫁さんの希保さんを紹介される。オリーブオイル効果か、皆さんお肌がつやつや。

上映会に合わせて大阪の両親も泊まりがけで来ていて、宿泊先の小豆島国際ホテルへ会いに行く。偶然にも、わたしのチョコレート名刺やいまいまさこカフェのチョコ壁紙を作ってくれた広告会社時代の先輩、古川ジュンさんがエンジェルロードの広告でお仕事していたのが、このホテル。ここの社長さんに「小豆島が舞台の映画を作った」と「ぼくママ」を紹介された古川さんが、「この脚本書いたの、知り合いですよ」と話してつながり、世の中狭いなあと驚いたが、うちの両親がこのホテルを選んだのも何かの縁。ホテル前には黄色いレンタサイクルがあり、ロビーにも宣伝スペースが設けられていて(写真を撮りそびれて残念)感激。

映画にも登場するエンジェルロードは、ホテルの目の前。客室からは潮の満ち引きで道が現れたり隠れたりするのをのぞめるらしい。ちょうど潮が引いているときで、歩くことができたが、たまは「みずが あがってくるよう」と怖がり、小石を積み上げるという不思議な行動に出た。何か神懸かり的な空気が宿っている場なのだろうか。



エンジェルロードの突き当たりに生い茂る木に、実のようなものがたわわについている。近づいてみると、ハート形の絵馬がたくさん! 


夕食は、宿泊客と同じものを出してもらう。海の幸の新鮮さに目を見張り、頬張る。宿泊しないわたしたち一家は小豆島在住の人だと思われたようで、料理の説明をするたびに「地元の人はよくご存知でしょうけど」と言われ、東京から来ましたと修正するチャンスがないままそうめんまで食べてしまった。

食事中も相手を変えては探険に出かけていたたまは、食後はロビーの外のライトアップされた芝生で大はしゃぎ。うちの両親が会うのは1月以来だから8か月ぶり。あまり孫に執着がなく、大阪に帰ってこいとも言わない人たちではあるが、「たまちゃん、元気やなあ」と面白がっていた。小豆島で落ち合うことにして良かった、と延々と芝生を走り回るたまを見て思った。

2008年09月18日(木)  マタニティオレンジ333(最終回) 魔の二歳児 魔法の二歳児
2005年09月18日(日)  和歌山・串本の干物
2004年09月18日(土)  愛以外は証明できる宇宙飛行士
2003年09月18日(木)  夢も人もつながる映画『夢追いかけて』
2002年09月18日(水)  月刊ドラマ


2009年09月15日(火)  読書の秋! amazonの本全品送料無料

3日で3冊を読んだことを先週水曜の日記に記したが、その翌日の木曜には道尾秀介さんの『シャドウ』を読んだ。先月読んだ『Story Seller(ストーリーセラー)』という人気作家の競作短編集の中で、表題になった有川浩さんの作品と道尾さんの『光の箱』が飛び抜けて面白かった。有川さんは『阪急電車』が去年読んだベスト3に入るほど気に入ったけど、このところ日曜版の書評でこの人の名前を見ない週はないほど話題作を連発している道尾さんの本は読んだことがなかった。

作者の筆力が仕向けた人物を犯人だと怪しんだので、ラストで全容が明かされたときは、やられたと思ったが、振り返ると、ミスリードのための意図があからさまにわかる部分もあり、無理がないことはない。だけど、まんまと騙される快感をひさしぶりに味わえた。『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野 晶午)や『倒錯のロンド』(折原一)などの叙述トリックものに一時期はまったけど、素直に思い込むクセのあるわたしは、いつも作者の狙いに見事に引っかかる。

土日で『やさしい訴え』(小川洋子)を読み、昨日は夜中に起きだして『素人庖丁記』(嵐山光三郎)を読んだ。どちらの作家も何を読んでも外れなし、ページを開いているだけでウットリとなれる。小川さんの美しい文体は繊細な旋律のようだと思うことがあるけれど、今回はチェンバロという楽器を真ん中にした男女三人の話で、チェンバロは嫉妬の対象にもなり、秘めた愛の目撃者にもなり、いっそう深い響きと余韻を物語にもたらしている。

嵐山さんの食べものへの造詣の深さと飽くなき好奇心は、『文人悪食』などからもうかがえたが、好奇心の赴くまま素人包丁をふるい、尺八の竹を煮物にするチャレンジ精神には恐れ入った。病院食にうんざり、ぐったりしていたのに、差し入れのステーキ400gでみるみる回復という逸話もこの人らしい。人生の最後を飾る「死期の献立」についても真剣に論じ、正岡子規が死の前年から36歳(若い!)で亡くなるまで、病人とは思えない食欲で延々食べ続けたものを記録した日記(『仰臥漫録』として岩波文庫から出ている)を紹介している。食べることは生きること、食欲は生命力だとはよく思うけど、命を削ってまで食べる壮絶な生き方もあるのだ。

子どもが寝静まった深夜は本の世界に入り込むのに打ってつけ。真夜中の読書も快適な涼しさとなり、読書の秋だなあとしみじみ。2日に一冊ぐらいのペースで読んでいけたら、言葉銀行の充実をはかれそうだ。コピーライター時代の先輩が「わたしたちの仕事は言葉を捻り出すことだけど、出すばかりだと枯渇するよ」と警告してくれたのを思い出す。折しもアマゾンから「本全品送料無料キャンペーン」(11/4まで)のお知らせが届いた。1500円以上送料無料もすばらしいが、一冊でこの金額を超えるのは難しく、いつも余計な買い物をしてしまうのが難点だった。この機会に今井雅子(いまいまさこ)の関連本を求めてみるのも、よろしいかと。

2008年09月15日(月)  「第2回万葉LOVERSのつどい」でますます万葉ラブ!
2002年09月15日(日)  パコダテ人P面日記 宮崎映画祭1日目


2009年09月14日(月)  ヘッドスパとジェルネイルのビューティサンデー

先日髪を短くしたら、先っぽに残っていたパーマ部分が切り取られて、途端にまとまりがつかなくなった。前回は半年以上の間が空いたけど、今回は一か月も経たないうちに昨日、美容院へ駆け込んだ。担当の美容師さんが新規開店した系列店に移ったばかりで、お店はお祝いのお花だらけ。ヘッドスパとパーマを組み合わせたコースの割引券が案内葉書についていたので、ヘッドスパを初体験する。ここのお店はハンドマッサージでリンパの流れを良くするやり方。抱き枕のようなものを抱えながら、20分ほどもまれた後、じっくりシャンプー。ユーカリ配合とのことで、マッサージ剤もシャンプーもスースーして気持ちいい。わたしの頭皮は血行が悪いため赤みがかっているらしいが、何度かヘッドスパをすると、理想的な青白い地肌になるらしい。「自分の頭皮って見る機会ないですからねえ」と話す。

夕方からは、友人せらママの家でジェルネイルを初体験。先日、娘の星良ちゃんの中学校の宿題でインタビューを受けたとき、せらママもわが家に来たのだけど、せらちゃんのインタビューよりせらママの人生相談が主役になった。娘たちが大きくなって子育てにかけていた時間がずいぶん浮き、それをどう使えばいいのかしら、と迷っている様子だったので、「技術を身につけるとか、磨くとか、自分も楽しめて、人とも分かち合えるような生産的なこと」をおすすめした。たとえば、趣味のキャンドル作りと仕事の英語教室を組み合わせて、親子で楽しめる英語キャンドル作り教室を開く、そのための準備をするなど。

思い立ったら即行動するせらママは、その夜、早速新しいキャンドルの先生を見つけて教室を申し込み、さらに前から興味のあったジェルネイル講座を受講。自宅でジェルネイルができるキットとその使い方を取得したので、「今井さんの爪で練習させて」というわけだった。

ちょうど今度の週末に『ぼくとママの黄色い自転車』上映会に合わせて小豆島へ行くので、「黄色い爪で上陸だ!」作戦と銘打ち、せらママは数日前から黄色いジェルネイルを試行錯誤。アクリル絵の具をジェルに混ぜて黄色を出すのだけど、だまになったり、固まらなかったり、なかなかうまくいかない。二人で相談して、「クリアジェルに黄色いパーツを貼り付けて黄色感を出す」方針に。

甘皮処理に始まり、ベースのジェルを塗っては紫外線で固め、パーツを乗っけては固め、上にジェルを重ねてはまた固め……フルーツのまわりにゼリー液を流し込んで冷蔵庫で固め、ゼリー寄せを作るような感覚。レモンの他にライム、ピンクグレープフルーツ、スイカを組み合わせて、今から夏が始まりそうなトロピカルな爪になった。

昔、留学時代の友人ミカコの従妹にヒロコちゃんというネイルアーティストがいて、ミカコの家でよくネイルアート会を開いた。ネイルをしながらとりとめのない話をするのが楽しくて、ネイルを挟んでのおしゃべりは女の子の特権だなあと思った。時は移り、話題の中心は子育てだけど、2時間がかりでネイルを仕上げる間、せらママとじっくり話すことができた。

わたしがネイルをしに行くことを話したわけでもないのに、土曜日の夜、お客さんからもらったお絵描きセットで、たまは爪に色を塗りだして、「ネイルアート〜」とうれしそうに見せに来た。ネイルアートなんて言葉、わたしが教えたんだっけ。たしかに、足の甲まで色にまみれて、これはこれで前衛アートになっていた。

2008年09月14日(日)  降雪確率100%の「ハーベストの丘」
2003年09月14日(日)  ヤッシー君、地震を吹っ飛ばす!
2002年09月14日(土)  旅支度


2009年09月13日(日)  朝ドラ「つばさ」第25週は「最後のラブレター」

先日の昭和芸能舎公演『長ぐつのロミオ』は六本木のディスコが華やかさを競っていた時代が舞台だった。一緒に観に行ったヤマシタさん、アサミちゃんに「ヴェルファーレで松田聖子に間違われた事件」を話すと、勘違いのスケールの大きさに受けていた。正しくは「松田聖子に間違われたと思い込んだ事件」である。詳細を記した日記にも書いたが、おめでたい性格ゆえに、物事を前向きにねじ曲げて解釈する傾向があり、ありえない勘違いをしでかしてしまう。

最近では、「つばさ」の資料を届けた宅配便のお兄さんが、封筒に「つばさ」のロゴのスタンプが押されているのを目に留めて、「ひょっとして、関係者ですか?」と声を弾ませたときのこと。「ええ、まあ」と答えると、「ひょっとして、出演されているんですか?」。まあわたしって女優に見えるのかしらと自惚れたのと、お兄さんが言葉を続けたのがほぼ同時で、「そちらのお嬢さん」とわたしが手を引いていた娘のたまに目をやった。「いえ、違います」と言うと、「そうですか。いやーお嬢さんが出ているのかなって思いました。かわいいし」とお兄さん。娘じゃなかったらわたしが出ているとは思わなかったらしい。

宅配便の勘違いといえば、学生時代、関西ローカルの「ナイトinナイト」に「公募名人」としてゲスト出演した翌日のこと。荷物を配達に来たお兄さんがわたしの顔を見るなり、「昨日、桂三枝さんとテレビ出てはりましたよね?」と興奮した声を上げた。「観てはりました?」「観てましたよー。うわ、びっくり、本物やわ」とひとしきり盛り上がった後で、「サインください」とお兄さん。いやん、すっかり有名人やんと舞い上がり、「どこにサインしましょ?」と聞くと、「ここにお願いします」とお兄さんは伝票の受領欄の小さい四角を指差した。

……とまあ思い込みの激しさでは武勇伝に事欠かないけれど、最近思うのは、「思い込み」と「決めつけ」は違うということ。自分の価値観、許容範囲からはみ出したものに遭遇したときに、受け入れる余地があるかどうか。その間口は、大きいほうではないかと思う。インド人を幼なじみに持ち、アメリカの高校に留学した経験から、肌の色や言葉が違っても人間はわかりあえるという感覚が育ったし、応援団や広告代理店での波瀾万丈な日々からは、どうにもならない状況にも突破口はあることを学んだ。完璧な人はいないし、完璧な人生なんてない。その事実を受け入れた上で、どれだけ歩み寄れるか、積み上げられるかを探る姿勢に希望は宿るのだと思う。

明日からの「つばさ」第25週では、ラジオぽてとと城之内房子(冨士眞奈美)の対立が激化。欲しいものを手に入れるためなら手段を選ばない房子とわかりあえる道を探るつばさ。絵本『まじょのなみだ』に加乃子が付け足したハッピーエンドのように、みんなから怖れられる魔女の素顔は、みんなとつながりたい淋しがりやなのかもしれない。果たして、つばさは、房子は、どういう答えを出すのか……。24週に続けて「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。演出は初登場の松園武大さん。タイトルの「最後のラブレター」にちなんで、台本のお供はハートで描かれたラブレターを。いろんな形で愛をふりまいてきた「つばさ」も、25週を終えると、残すは最終週のみ。ラストまで休むことなくで精力的に進化を続ける公式サイトにもご注目。ドラマが二倍面白くなること請け合い。公式掲示板にもぜひ感想を書き込んでくださいませ。

【お知らせ】魔女田さん、NHKラジオに40分出演

日本イラン合作映画『風の絨毯』でご一緒して以来のくされ縁で、瀬戸内国際子ども映画祭の準備にも一緒に関わることになった平成の錬金術師、魔女田さんこと益田祐美子さんよりラジオ出演のご案内。

9月17日(木)NHKラジオ第一放送 どきめきインタビューのコーナーで10時から11時45分ころまで「主婦からプロデユーサー 4本目の映画「築城せよ」現在公開中!」(仮)という題で40分間おしゃべりします。また、5作目の映画(ドキュメンタリー)準備中と瀬戸内国際こども映画祭・綜合プロデユーサーについても最後で少し触れる予定です。

とのこと。肩書きのプロデューサーが「プロデユーサー」になっている(dhuで「デュ」と打つ術を知らないから?)のがお茶目。「どきめきインタビュー」と案内にはあるけど、正しくは、「ラジオビタミン」という番組内の「ときめきインタビュー」コーナー。でも、魔女田さんの爆弾発言にはらはらどきどきで、どきめきになるかも。「NHK側は 放送禁句用語をなるべくしゃべらないようとのこと。心がけます」と益田さん。その昔、NHKの地方局でラジオのパーソナリティをしていた益田さんは、中継でレポーターが「男性の身体のとある部分をかたどった氷」の話題を紹介したとき、スタジオから「その氷、なめると大きくなるんでしょうか」と思ったまんまの天然ボケ発言を放送に乗せた前歴がある。でも、益田さんのぶっとびリアクション以前に、中継で取り上げたのも意欲的。どきめきインタビュー、何が飛び出すか、乞うご期待。「10時から11時45分頃まで」「約40分間」というのも矛盾しているので「10時45分頃まで」が正解?

2008年09月13日(土)  大阪・北浜『五感』のVIPルーム


2009年09月12日(土)  「ツジモトは約束を守りますか?」の会

学生時代からの友人で新聞記者のウヅカ君が海外特派員になる夢を叶えてイランへ赴任することになり、共通の友人であるセピー君とツジモトさんも招いて、わが家で送別会を開く。うちのダンナを加えた男性四人は日本人と留学生がともに暮らす寮に下宿していた仲間で、寮の近所に住んでいたわたしは、ちょくちょくパーティに顔を出していた。


主役のウヅカ君が持って来てくれたケーキのメッセージは「たまちゃんもがんばってね」。期待以上に不安も大きかろうが、そこには心強い仲間の支えがある。ツジモトさんはウヅカ君にイラン駐在の役人を紹介し、お父さんの母国イランで生まれ育ち、大学でペルシャ語を教えるセピー君はウヅカ君に個人レッスンで仕込んでいるところ。その寮の出身者の世界を股にかける活躍とネットワークは大したもので、国に帰った留学生たちは、国家の要職に就いたり、大臣クラスの通訳になったり、それぞれの国を背負う人材になっている。

ウヅカ君とセピー君が実践しているのが、「ツジモトは約束を守りますか?」「ツジモトは来ますか?」などと例文の三人称を「ツジモト」にする方法。親しみが湧くのか、頭に入りやすく、驚異的なスピードで習得しているのだという。「通常ペルシャ語の文法を教えるのに一年はかかると思ってたけど、2か月でできることがわかった」とセピー君。

「ちょっと、人を勝手に例文にしないでもらえる?」とツジモトさんが反論。最年長のツジモトさんは同級生であるわたしたちより3つ上で、優秀な成績でキャリア官僚に合格し、尊敬を集めていたはずなのに、いつの間にかいじられ役に没落してしまったことが解せない様子。朝ドラ「つばさ」にわたしが関わっていることを知らなかった、というネタでもさんざん攻撃を浴びる。たしかにドラマが始まったときに「元キャリア官僚が重要な役割で登場します」と案内を送り、返事ももらっていたはずなのだけど、「官僚、官僚と言うな」のようなとんちんかんな返信だったから、内容を理解していなかったのかもしれない。

「つばさ」を一度も観たことがないとツジモトさんが言うので、「朝何時に家を出てるんですか?」と聞くと、「7時」。居酒屋タクシーにも乗らず、終電までこつこつ働いているという。「ちょうど今からやるので観ましょう」と夜7:30からの再放送をつけると、「アンジェラ・アキさんという人が主題歌を歌っているのか? この人はグループ?」。「これが経済産業省出身の真瀬さんですよ」と画面を指差したが、宅間孝行さんの顔は知らず、ヒロインの多部ちゃんのことも知らなかった。

いきなり土曜の回を見せられてもちんぷんかんぷんだったようだけど、クレジットにわたしの名前が出たことには興奮して、「すごいすごい」と半年遅れで喜んでくれた。「反響は賛否両論まっ二つなんですよ」と言うと、「法案でも議論を呼ぶほうがいいんだ。何にも引っかからない当たり障りのないものより、意味がある」と熱く語っていた。帰り際、「つばさ、観ます!」と力強く言ってくれたけど。来週から出勤を遅らせるのだろうか。ツジモトは約束を守りますか?

2008年09月12日(金)  キューバ帰りのクラシゲ嬢
2006年09月12日(火)  マタニティオレンジ7 おなかの赤ちゃんは聞いている
2004年09月12日(日)  黒川芽以ちゃんのTシャツ物語
2003年09月12日(金)  ビーシャビーシャ@赤坂ACTシアター
2002年09月12日(木)  広告マンになるには


2009年09月11日(金)  押上のスパイスカフェに迷い込む

昨年5月、南インド料理のダバインディアでカレー三昧した帰り、一緒に行ったヤマシタさんが言った。「押上にSpice Cafe(スパイスカフェ)っていうむっちゃいい店があるんです。次はそこ行きましょう」。その後なかなかカレーを食べに集まる機会がなかったのだけど、今宵宿願を果たす。メンバーはダバインディアのときと同じくヤマシタさんとアサミちゃんとわたし。今週火曜に昭和芸能舎のお芝居を観たのも、この三人。会えるときは、続けて会える。

CMプロダクションで働くヤマシタさんは、アサミちゃんとわたしがマッキャンエリクソンという広告会社で働いていたときにアサミちゃんと同じ得意先を担当していた。この三人を今もつなげているのは、芝居好きとカレー好きの縁。ヤマシタさんは演劇フリーペーパープチクリの編集人の一人で、アサミちゃんがレイアウトをやっている。その打ち合わせで顔を合わせるたびに「また今井ちゃんに会いたいねえ}と二人で噂してくれているらしい。

さて、押上駅から歩くこと10分強。通り過ぎても気づかないようなひっそりした佇まいのお店は古い木造アパートを改造したもの。木のぬくもりに迎えられ、東京にいるのに旅先の遠い町にいるような錯覚を覚える。先日、東京カリ〜番長の水野仁輔君に「今度スパイスカフェに行くんですよ}と言ったら「日本人で本格的なカレーをやっている希少なお店です」と大絶賛していたので、味にも期待が高まる。

「前菜1種類、カレー1種類、デザート2種類、飲み物」で2500円のコースを二つと「前菜2種類、カレー3種類、デザート3種類、飲み物」で3500円のコースを一つ注文。これでカレーは全5種類、デザートは9種類中7種類を制覇できることに。前菜は「本日の5品盛り」を各自注文して、もう自家製ソーセージを分け合う。シェフは地中海料理出身だそうで、見た目も美しく上品な味わいで、シードルによく合う。

白ワインとともに、メインのカレーは定番のマトン、チキン、野菜、トマトと日替わりのドライカレー。マトンはまったく臭みがなく、どれも素材の味わいが上手に引き出されている。ごはんを大盛りにしたらとんでもない量が皿に盛られてきて焦ったが、しっかり平らげられた。

デザートは別腹。バナナのムースといちじくのタルト、チョコレートのタルトとヨーグルトムースとカスタードプリン、ぶどうのゼリーと大葉と柚子のシャーベット。インド料理屋のデザートと言うと、お米のプリンなど何ともいえないメニューに遭遇することが多いけど、これだけデザートが充実しているのはうれしい。

併設のギャラリーでは明日から始まる「琉9典子展〜かさなるかたち〜」(27日まで)の版画が飾られ、作者の琉9典子(りゅうきゅうてんこ)さんとお話しできた。名前から察する通り沖縄からやってきたという。静岡出身、東京を経て、今は名護に暮らしているそう。「都会の那覇よりも名護のほうが沖縄らしい」「地図のくびれの上と下で人柄が変わる」など興味深い話をにこやかに、ふわふわと。「困ったときに手を見てしまうのは、こまって、の『て』だったんだ!」というのが最近の大発見だったそう。サイトのエッセイも不思議な詩のような味わい。

建物を出て、小径を抜けて通りに出て振り返ると、やはりそこに店があるとは気づかない。今のは夢か幻か、明日来たらそこにはもう何もないのかもしれない。そんなことさえ思わせる時間が流れていた。でも、歩いても歩いてもずっしりとおなかに詰まったごちそうの存在感が、夢じゃなかったんだよと教えてくれる。

2008年09月11日(木)  フォトグラファー内藤恵美さんの写真
2007年09月11日(火)  マタニティオレンジ175 母娘漫才
2006年09月11日(月)  マタニティオレンジ6 予定日過ぎても踊れます 
2005年09月11日(日)  ZAKUROの2階のZAM ZAM
2004年09月11日(土)  感動の涙が止まらない映画『虹をつかむステージ』
2003年09月11日(木)  9.11に『戦場のピアニスト』を観る


2009年09月10日(木)  9/19『ぼくとママの黄色い自転車』小豆島上映会

今井雅子の6本目の長編『ぼくとママの黄色い自転車』は、ただいま公開3週目。時間差で今後公開する館もあるので、「うちの近くに来ない!」と諦めていた方にもスクリーンで観るチャンスがあるかも。

日記でお知らせするのがすっかり遅くなった小豆島上映会は、来週土曜日開催。これに合わせて、大学4年の応援団の夏合宿ぶりに小豆島へ行くことに。ロケ地巡りもとても楽しみ。小豆島では今、劇中で使われたのと同じ黄色い自転車を貸し出しているそう。

『ぼくとママの黄色い自転車』小豆島上映会

日時:9月19日(土)12:30〜/14:20〜
当日料金:一般 1500円/シニア・大高・中・小 1000円
※映画チラシを持参の場合1000円  ※全国共通券使えます
場所:土庄中央公民館 電話:0879-62-0238

『ぼくとママの黄色い自転車』上映劇場情報
(9/10時点。日付は公開日)

10.3 【北海道】苫小牧シネマトーラス 0144-37-8182
12.19 【北海道】北見シアターボイス 0157-31-3600
10.3 【青森】 シネマディクト 017-722-2068
9.26 【青森】 八戸フォーラム 0178-44-4411
10.3 【岩手】 盛岡フォーラム 019-622-4703
8.22 【宮城】 MOVIX利府 022-767-7400
9.5 【宮城】 仙台フォーラム 022-728-7866
10.3 【山形】 山形フォーラム 023-632-3220
8.22 【東京】 新宿バルト9 03-5369-4955
8.22 【東京】 T・ジョイ大泉 03-5933-0147
8.22 【東京】 立川シネマシティ 042-525-1251
10.31 【東京】 船堀シネパル 03-5658-3230
8.22 【東京】 品川プリンスシネマ 03-5421-1113
8.22 【神奈川】川崎チネチッタ 044-223-3190
8.29 【神奈川】ワーナー・マイカル・シネマズ港北ニュータウン 045-914-7677
8.22 【千葉】 エクスワイジー・シネマズ蘇我 043-209-3377
8.29 【埼玉】 MOVIX三郷 048-949-2300
8.29 【埼玉】 ワーナー・マイカル・シネマズ浦和美園 048-812-2055
8.29 【群馬】 MOVIX伊勢崎 0270-30-1700
8.22 【新潟】 T・ジョイ新潟万代 025-242-1840
8.22 【新潟】 T・ジョイ長岡 0258-21-3190
8.22 【長野】 長野千石劇場 026-226-7665
8.22 【長野】 松本エンギザ 0263-32-0396
10/3〜23 【長野】 i city cinema 0263-97-3892
9/12〜25 【静岡】 静岡シネギャラリー 054-250-0283
8.22 【愛知】 ゴールド劇場 052-451-0815
8.22 【愛知】 ユナイテッド・シネマ豊橋18 0532-38-0888
8.22 【愛知】 イオンシネマ岡崎 0564-72-3020
9.5 【愛知】 イオンシネマ・ワンダー 052-509-1414
8.22 【大阪】 梅田ブルク7 06-4795-7602
8.29 【京都】 京都シネマ 075-353-4723
8.22 【広島】 T・ジョイ東広島 082-493-6781
8.22 【広島】 広島バルト11 082-561-0600
9.26 【広島】 エーガル8シネマズ 084-960-0084
10.10 【広島】 福山ピカデリー 084-932-3381
8.22 【島根】 T・ジョイ出雲 0853-24-6000
10.3 【愛媛】 シネマサンシャイン大街道 089-933-6677
8.22 【香川】 ワーナー・マイカル・シネマズ綾川 087-870-8787
8.22 【香川】 ワーナー・マイカル・シネマズ高松 087-822-0505
10.3 【徳島】 徳島シネアルテ 088-632-2239
8.22 【福岡】 T・ジョイリバーウォーク北九州 093-573-1566
8.22 【福岡】 T・ジョイ久留米 0942-41-8250
8.29 【長崎】 TOHOシネマズ長崎 095-848-1400
10.3 【佐賀】 シアター シエマ 0952-27-5116
8.22 【大分】 T・ジョイパークプレイス大分 097-528-7678
9.26 【大分】 日田シネマテークリベルテ 0973-24-7534
8.22 【鹿児島】 鹿児島ミッテ10 099-8

2008年09月10日(水)  さすらいの「書き鉄」
2007年09月10日(月)  マタニティオレンジ174 ご近所さんちで2歳児の会 
2006年09月10日(日)  マタニティオレンジ5 卵から産まれた名前
2005年09月10日(土)  『チャーリーとチョコレート工場』初日
2004年09月10日(金)  原始焼『七代目寅』in English?
2002年09月10日(火)  大槻ケンヂ本


2009年09月09日(水)  エッセイの文体とはその人自身なのではないか

女流作家の桜庭一樹さんが新聞の対談で「一日一冊読む」とさらりと語られていて、ともすれば週に一冊も読めないわが身を反省した。少し仕事が落ち着いたので、この3日愛で3冊読んでみる。まずは『きりこについて』(西加奈子)と『カツラ美容室別室』(山崎ナオコーラ)を続けて。どちらも書評で目をつけていて、二人ともそれぞれ気になる作家さん。西さんは『きいろいゾウ』はとてもすんなりと入り込める作品だったし、山崎さんが新聞の日曜版に連載していたエッセイ「指先からソーダ」(同タイトルで単行本になっている)を毎週楽しみにしていた。そんな二人が旅行に行くほどの仲良しだと先日美容院で読んだFIGAROの読書特集で知り、続けて読んでみたのだった。淡々とした文体の底に流れるあったかいものや比喩の面白さに、二人が親しくなった接点があるのかなと想像したりした。

西さんは何と言っても擬態語擬音語を駆使した大阪弁のリズムが心地よく、全体は大阪弁で書かれているわけではなく時々紛れ込むのだけど、わたしは自然と大阪弁に翻訳して読んでいて、体に文章がしみこんでくる。物語の中で発揮されるたくましい想像力がとても好ましく、読み物としても楽しい。ヒロインである「ぶす」のきりこの顔を頭に思い描きながら読み、この作品は映像化は難しいだろうし、しても映画のきりこは小説ほど愛されないだるなと思った。とてもぶすだけど愛せるヒロインを成立させるのは読者一人一人の補正作業あるいは補強作業が必要で、そのきりこは一人一人の頭の中にしか存在せず、最大公約数的なきりこは誰からも愛されないだろうという気がする。でも、もしも観客一人一人の補正・補強作業を可能にする余地を残した、それこそ小説の中の言葉にあるように「奇跡」の顔の持ち主をキャスティングできたら、劇場で観てみたい。その奇跡を共有するという体験に思いを馳せて、わくわくした。

ナオコーラ(英語で表記するとnao-cola)さんの小説を読むのは初めて。エッセイと同じく簡潔で無駄がない、けれど鋭く心に残る文章を積み重ねながら、この人にしか作れない世界を形作っている。とくに大きな事件は起こらず、けれど登場人物たちにとっては一日の数時間あるいは一週間の数日を止めるような出来事がいくつか起こり、人間関係が少しずつスライドしながら組み変わって行くさまが興味深い。見落としそうな日常のささいなことの愛おしさをすくいとるのがとてもうまい人だと思う。

そして、今日は『手紙』(東野圭吾)を読んだ。『天使の卵』と同じ頃に沢尻エリカさん出演で映画化されていた作品だけど、映画にも小説にもまだ触れていなかった。同じ作者の『秘密』にも唸らされたけれど、本当に構成がお見事。東野さんの作品が次々と映像化されるのがよくわかる。切り取って絵になる場面、鮮やかで劇的な展開、ラストに用意されている驚き点点脚本家が映像化にあたって苦労して膨らませるところを小説が先に提示してくれている。

『手紙』の素晴らしさは、手紙を出す側の気持ちと受ける側の気持ちの温度差の変化がドラマになっていること。返事を待つ身の切なさ、見たくない手紙を破り捨てる心の痛み、そのどちらにも気持ちが加担でき、きりきりと胸を締めつけられる。強盗殺人犯の兄を抱えてしまったことで人生を狂わされる弟を追いかけてくる手紙の重みは、読み手の肩にものしかかるような重苦しさを実感させる。どうして文字を追いかけるだけで、こんなに息苦しくなるのか。読者に鏡を突きつける小説だと解く井上夢人さんの解説もすばらしい。打ち合わせへの移動の車中で読み始め、打ち合わせが終わって近くの紅茶専門店のカウンターで続きを読み、残りの数十ページを帰りの電車で読み切った。本はどこへでも連れて行けて、どこへでも連れて行ってくれる、本当にその通り。

三者三様の小説を読み、作家が違えば文体が違うということに、あらためて感じ入った。それは声や間の取り方や話の運び方が違うように「呼吸」のようなもので、真似されたり交じり合ったりしないものなのだろうなと思った。

ちょうど今日の打ち合わせは、新しいエッセイ連載の編集者との顔合わせだった。「FAXでいただいた原稿をこちらで推敲し、打ち込んで確認します」というやり方にわたしは戸惑い、議論になった。こちらとしては素材ではなく完成原稿をお渡しするつもりだし、指定された文字数で納めるので、最初から推敲、編集する前提でいられると困りますと訴えた。「無駄な表現は省き、わかりにくい言葉はカッコ付きで説明を加えたい」という趣旨のことを言われたので、「そのように指示していただければ自分で再考して修正しますが、勝手に手を加えられると文体が崩れます」と食い下がった。

こちらがFAXで送った原稿を編集者が打ち直すということにも抵抗があった。メールでの受け渡しではないので必要な作業なのだが、それによって編集者の頭が整理される利点もあると言う。打ち直すと、確かに、こうすればもっといい文章になるという方向性が見えるのは確かだが、それで手直しをすると、編集者の文章になってしまうのではないか。

そもそもどうしてメールを使わないのかという議論も交じって話は堂々巡りしたのだけど、突き詰めると「自分の文体へのこだわり」の違いなのかなと重い至った。「原稿を送りますから適当に編集してください」とおまかせされる方は、この編集者のやり方には何の違和感も覚えないし、「これでどうだという原稿を送るので、よっぽどのことがない限り尊重していただきたい」と主張するわたしには、原稿を一から打ち直されること自体に抵抗を覚える。

一言一句変えてくれるなということではなく、書き手の文体を尊重して欲しいのだということをただわかって欲しかったのだ。脚本にももちろん文体はあるのだけど、それは撮影のための設計図としての使命を担うから、より使い勝手のいいように直される宿命を負っている。けれど、エッセイは書き手の内面が文章に映し出されたものであり、その文体は小説以上に書き手自身を現しているとわたしは思う。だから、いじることが前提と言われると、聖域を侵されるような気がして、ムキになった。それだけのことだけど、千疋屋フルーツパーラーに不似合いな熱さで言い募り、編集者を閉口させてしまった。

2008年09月09日(火)  腰痛は気功で治せるか
2007年09月09日(日)  マタニティオレンジ173 父母連総会で区長と話そう 
2005年09月09日(金)  アンティークボタンの指輪


2009年09月08日(火)  昭和芸能舎『長ぐつのロミオ』

朝ドラ「つばさ」の打ち上げに、ちょうどそのとき放送中の第20週で竹雄を「過去からの刺客では」と怯えさせる谷村鉄次役を好演した及川いぞうさんがいらしていた。特長のある渋い声とあまたま似の丸い頭ですぐにわかり、話しかけたところ、「今度芝居やるんですよ」とチラシを渡されたのが、昭和芸能舎公演の『長ぐつのロミオ』。作・演出を見て、「羽原大介さんじゃないですか!」。わたしの大好きな『パッチギ!』や『フラガール』を書かれた羽原さんの舞台を一度見たいと思っていたので、ぜひ行きます!と社交辞令ではなく即答した(>>>8月14日の日記)。

お芝居好きの元同僚アサミちゃんと、アサミちゃんに輪をかけたお芝居通で演劇フリーペーパー「プチクリ」の発行人の一人(そしてアサミちゃんはプチクリのデザイナーでもある)の広告マン、ヤマシタさんも誘い、三人で新宿スペース107へ向かった。一名分を招待にしていただく。及川さんとマネージャーの柏谷さんに感謝!

補助椅子も出て満席。初めて観た昭和芸能舎のお芝居、まずはコント仕立てで鑑賞マナーの注意があり、早くも劇団のサービス精神をうかがわせる。発泡スチロールの箱を抱えた魚河岸ルック集団のダンスの決めのポーズで箱を合わせると、蛍光塗料で書かれたタイトルが浮かび上がる。

劇団名を新宿芸能舎から昭和芸能舎にあらためたそうだが、まさに昭和の匂いプンプン。出てくる歌謡曲や洋楽が、ヤマシタさんやアサミちゃんの中高生時代、わたしの小中学生時代の懐メロで、どの曲も口ずさめる。劇団名のもうひとつの柱である「芸能」をこれでもかと見せてくれるのも特長で、物語の端々で歌やダンスが披露されるのだけど、それぞれがちゃんとエンターテイメントとして楽しませてくれる。突然歌い出す、踊り出す芝居では、その唐突さと中途半端さに観客が椅子に張りついて硬直してしまう場合も多い。でも、「笑いを取りに行く物真似ダンス」「キレを見せるダンス」とそれぞれの立ち位置がはっきりしていて、笑えるものは笑い、見惚れるものは見惚れ(ディスコシーンでのダンスの振付けは、ダンス単体として観ても十分見応えがあった)ることができた。

ショーで遊べるのは、ストーリーの幹がしっかりしているためで、そこはさすが羽原さんの脚本。築地市場の移転問題という題材を膨らませ、移転推進派と反対派の対立に恋と祭りを絡めて起伏をつけた物語で、観客をぐいぐい引き込む。数多い登場人物それぞれにもしっかり光を当て、見せ場を作るという見事な目配り、筋運び。理想と現実、本音と建前、強がりと心細さ……誰もが持ち合わせる強さと弱さ、その間にある揺れが丁寧に描かれていて、どの登場人物にもじわじわと感情移入してしまう。

物語の運びも歌と踊りもラストの祭り神輿も、最初から最後まで息をつかせず、舞台の上は常に全力投球。暗転がなく、場面の切り替えが実に鮮やかで、2時間を超える長尺なのに退屈する暇はなかった。出演者一同そろってのにぎにぎしい挨拶の後「続いて、次回公演『モスクワ』の予告を行います」の告知。「モスクワオリンピックの幻の種目、男子シンクロ」がモチーフであるらしく、いきなり男性陣が海パン姿で再登場して踊り出したのに面食らいつつ、大いに受けた。これでもかのサービス精神、あっぱれ!アサミちゃんとヤマシタさんも大いに気に入り、「モスクワ」もすっかり観に行く気になっていた。

出演者は皆さん威勢がよく、気になる人が続々。贔屓目もあり、及川さん演じる吉野屋のオヤジはダントツに光ってた。もちろん、頭のてっぺんだけではなく……とネタにしていいのやら。でも、「禿げ散らかす」というセリフでしっかり笑いを取っていた。「そこまで禿げ散らかしても、わからないのか?」のようなひどい言われようをされ、「ぐずぐずしてたら髪がなくなって禿げ散らかせなくなる」と言い返す喧嘩に、妙なおかしみを誘われた。禿げ散らかす、なんともインパクトのある言葉だ。

及川さんの息子役を演じたゆかわたかしさんは、森岡利行さん(監督・脚本の『女の子ものがたり』を公開中)主宰のストレイドッグの公演でおなじみだった湯川崇さん。はじけた役どころがよく合っていた。主役のロミオこと博己を演じた佐野大樹さんは、見たことあると思って過去の日記を検索したら、『やわらかい脚立』に出演。日記内検索機能のついた日記をつけていると、自分が忘れていたことを思い出してくれるので、便利便利。まさに脳みその出張所。脳内ハードディスクの検索はできないけれど、日記に書き出しておくと、記憶を掘り出せる。

というわけで、今日の公演の出演者を後々のために記しておきましょう。ロミオの姉役の藤田美歌子さん、オカマのヨッチャン役の渡邊慶人さんが印象に残った。

長ぐつのロミオ

【出演】

★築地市場

魚勝グループ 博己:佐野大樹(*pnish*)
       波子:藤田美歌子
       勝男:松林慎司
社員 哲也:高橋稔  
   鮎子:康実紗  

★場外市場

吉野家グループ 吾郎:及川いぞう     
        樹里:福下恵美
        修仁:ゆかわたかし

チーム月島軍団 トシオ:浦島三太朗
        マッチ:アフロ後藤   
        ヨシオ:渡邊慶人

★六本木ゴージャス 

成田真佐江:中川絵美
小根村:笠原紳司

ゴージャスガールズ ルミネ:神谷奈々江   
          パルコ:鹿島由香
          リカ:高橋梨佳   
          マユ:藤森麻由     
          メグメグ:若原めぐみ

黒服1:佐々木恵太郎   
黒服2:熊谷淳司
黒服3:藤沼豊   
黒服4:池田恵美

伝説の振付師 ヨーコ:ちかみれい
常連客 亜矢:涌澤未来

【スタッフ】
照明:太田安宣(ロンブル)
音響:山本能久(SEシステム) 
舞台監督:赤坂有紀子
振付:井上陽平(ILKスタジオ)
宣伝美術:田久保宗稔(mt-w design works)
企画協力:星久美子(ラ・セッテ)
 制作:奥井美樹
制作補:鄭光誠
協力 シバイエンジン
企画製作:昭和芸能舎

2008年09月08日(月)  マタニティオレンジ331 おばけごっこ トンネルごっこ
2007年09月08日(土)  対岸のタクシー
2006年09月08日(金)  マタニティオレンジ4 男の子か女の子か?
2005年09月08日(木)  文芸社パンフレットの取材
2004年09月08日(水)  東銀座の『台湾海鮮』
2003年09月08日(月)  「すて奥」作戦


2009年09月06日(日)  朝ドラ「つばさ」第24週は「あなたを守りたい」

ホンづくりをしているとき、打ち合わせのたびに残り週が少なくなり、「あと少しですねえ」「あんなに長いと思ってたのにねえ」としみじみとした感慨が挨拶になった。きついマラソンのゴールが見えてきたときの安堵感と淋しさを味わいつつ、悔いのないゴールをとラストスパートをかけていた。長年朝ドラを見ていると、途中までは調子良く飛ばしていたのに、後半で疲れちゃったかなという印象を受ける作品があったりする。力尽きたか、愛が尽きたか。「つばさ」に関していうと、最後まで惜しみなく力と愛を注いでいた、と自信を持って言える。それが出来上がった作品に表れ、観る人に伝わりますように。

明日からの第23週は、「あなたを守りたい」。家族を、仲間を、甘玉堂を、ぽてとを……守りたい人やものがある分だけ、人は強くもなるし、迷いや惑いを抱えて弱くもなる。けれど、守りたい存在があることが幸せなんだなと感じられる週。「毎回楽しみにしています」という人がちらほらいる完成台本ショット、今回は互いを守りあう玉木家をイメージ。週の中盤にも家族が抱き合う場面があるのだけど、5人組のぬいぐるみが一人見当たらず、4人のハグになった。でも、4人という数も今週の玉木家を象徴しているといえる。仲間が去ったぽてとを守ろうと孤軍奮闘するつばさと真瀬、そして優花の「もうひとつの家族」にもご注目。ただでさえ大変なぽてとに揺さぶりをかけるのは、城之内房子(冨士眞奈美)。彼女が登場すると画面に釘づけになるという声多し。

演出は1〜3週、6週(斎藤と加乃子)、10週(紀菜子あらわる)、14週(大衆演劇)、16週(台風)、19週(ビバマリア)の西谷真一チーフ・ディレクター。続く第25週「最後のラブレター」と2週連続で「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。最終週の第26週まで、どうぞお楽しみください。

ご感想は、ぜひ公式掲示板へ。賛否両論にぎやか。公式サイトトップページからどうぞ。サイトもコンテンツ充実で、こちらも力と愛を惜しみなく投入。

2008年09月06日(土)  マタニティオレンジ330  『ちょうちょう』熱唱! はじめてのカラオケ
2007年09月06日(木)  マタニティオレンジ171 苦し紛れの雨カバー
2006年09月06日(水)  マタニティオレンジ2 着たいがない!
2004年09月06日(月)  シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?
2002年09月06日(金)  ミナの誕生日


2009年09月04日(金)  「しましま みいつけた」ごっこ

福音館の月刊絵本を取りはじめて二年目。去年はこどものともの名作を求めやすい形で復刊した「えほんのいりぐち」を届けてもらい、今年は2、3歳児対象の「こどものとも年少版」を毎月楽しみにしている。月によって食いつきのいい本と興味を示さない本があるのだけど、当たり外れがあっても一冊410円。食わず嫌いせず、いろんな作者の本に触れさせたいし、わたしも触れてみたい。最初は振り向きもしなかった本が、何か月か経ってお気に入りに昇格することもある。

8月号の「しましま みいつけた」は配本されたその日から気に入り、何度も読み聞かせをせがまれた。シャツのしましま、ネクタイのしましま、ストローのしましま、しまうま、うり、横断歩道、床屋のポール,バーコード……身の回りには、なんとたくさんのしましまがあることかと目を開かされる。この絵本に出会って以来、「うちの街にこんなに理髪店があったのか!」と驚くことになった。トリコロールのポールを見つけるたび、「しましま、あった!」とたまが教えてくれる。

さらに面白いのが、バーコード。レジを通す商品一般についているのは理解していたが、それを打った生協のレシートにもバーコードがついている。単行本も商品だからもちろんバーコードがついているが、それを借りるために図書館で貼られるシールにもバーコードがついている。「ピッ」と読み取るものにはバーコードがついている。ということは、先日の総選挙の投票ハガキにも、もれなくついていた。

大人がそうだと認識しないものでも、子どもの目には「しましま」に映る。電車の天井のアルミ(?)も、服の布地の織目も。チカチカするなあとしか思ったことのなかったパチンコ屋の電飾も「あ、しましまだ!」。世の中は、しましまと、そうでないものに分かれているというシンプルで新鮮なルール。「しましま みいつけた」ごっこは、おおらかな気持ちにくれる。

ひさしぶりの子守話は、バーコードのお話。
子守話93「しましま どこどこ」

しましまの えほんを よんだ たまちゃんと ママが
しましま さがしを はじめました。

くろと しろの しましまは バーコード。
えほんにも ジュースにも レシートにも おもちゃにも ついてるね。

バーコードには 「じょうほう」が はいっているんだって。
なまえや ねだんや どこの くにで つくられたか などなど。

おうだんほどうは どうろにつけた バーコードみたい。
なまえは おうだんほどう。おねだんは うんと たかそうだね。
みんなが しんごうを まもって どうろを あんぜんに わたるように
あんないするのが おしごとです。

じいじの あたまは ちょっと バーコードに にてるね。
じいじの バーコードには なんて かいてあるかな。
たまちゃんが だいすきです だって。

しまうまの しましまは くねくねの バーコード。
とおい みなみの くにから やってきたんだって。
なかよくしてねって きっと バーコードに かいてあるね。

ママが おいしゃさんで とった レントゲンの しゃしんも
しろい ほねが しましまに なって バーコードみたい。
げんきですって かいてあるかな。

あっちこっちに バーコード。
しましまが はなしかけてくるよ。

2008年09月04日(木)  佐瀬寿一さんと『はだしになって』
2007年09月04日(火)  愛すべき映画『Little DJ〜小さな恋の物語』
2004年09月04日(土)  文京ふるさと歴史館
2002年09月04日(水)  暑い日の鍋


2009年09月03日(木)  IKEAのある暮らし

IKEA(イケア)の名前を知ったのは1998年のことだから10年以上前になる。映画祭と同じ会場で開かれるカンヌ国際広告祭でクセのあるCMを連発している家具屋として記憶した。あちこちの国にあるらしく、国によって読み方が「イケア」だったり「アイケア」だったりした。先日ビデオで観たアメリカ映画『理想の恋人.com』では「アイケア」と発音していた。

そんなイケアが日本に上陸したとき、わたしはまだ広告会社に勤めていて、イケアのローンチ広告の競合プレゼン準備を近くのチームがやっていた。あのコンペには勝ったのだったか負けたのだったか。イケアと聞くと、コピーライター時代の記憶をくすぐられる。

『パコダテ人』で子役だった前原星良ちゃんの母、せらママから「今井さんは絶対好きよ! ぜひ行きましょう」と誘っていただいていたイケアに、ついに行く機会を得た。捨てても捨てても物があふれているわが家にこれ以上雑貨を持ち込んではいけない、と心に言い聞かせて出かけたものの、いざショールームに足を踏み入れると、「かわいい」「ほしい」を交互に繰り返し、気がつくとあれもこれもと手に取ってしまう。「こんな色、他にないよね」と夢中にさせる色使いの罪なこと。これでお値段が高いとブレーキになってくれるのだけど、「これぐらいなら」と財布の紐を緩めさせる絶妙な価格設定。「子どもが小さいうちに、こんなベッドカバーがあったら」なんてせらママが言うものだから、そうよねえと手が伸びる。

カフェテリア形式のランチがこれまたそそられるメニュー。広い店内を歩き回るので、空腹が何よりのおいしさ増強剤に。元気を盛り返して、また歩く。おひさまの形のランプシェード、写真を入れられる戸棚のドア、お絵描き用のロール紙ホルダー……面白いなあと心惹かれるけれど、大きい物は我慢我慢。結局、カーテンとベッド&枕カバーと細かいものをちょこちょこ買って、一万円でおつりが来た。買い物というより、物が手元に残るレジャーの感覚。

わたしが行った新三郷店はJR武蔵野線新三郷駅から徒歩数分の距離。すぐ近くにはCOSTCO(コストコ)があって、どやっという迫力の業務用サイズの商品群を受け止めるカートは、通常の四倍はあろうかという大きさ。座布団大ピザが1400円也。サイズ感覚が狂って、ちょっとしたミクロアドベンチャー気分。金銭感覚もおかしくなりそう。ここではぐっと我慢して、娘のたまにパンツと靴下を買うにとどめた。ハーシーズのチョコレートがけプレッツェルに惹かれたけれど、1キロを超える大袋を食べきれる自信はなく、食べ切れたとしたらそれはそれで怖いので、断念。

帰宅して、早速わが家をイケアで彩る。カーテンは長さは一種類で、すそをマジックテープで調節する。こういうところが安さのヒミツなんだろう。わたしが買ったものはすそに模様があるので、「お好きなところでカットして縫い直してください」とのこと。そんな芸当はできないので、長いまま斜めに垂らして使うことに。洒落た天蓋風になり、物置となっているベッドの上のごちゃごちゃ隠しにもなり、一石二鳥。カーテンひとつで部屋の印象ががらりと変わったのには、びっくりした。たまもかくれんぼができて大喜び。「これいいじゃん!」と柄も気に入った様子。


カーテンレールには色とりどりのリボンでくくりつけ、裾にはポップな色づかいの動物たちがぞろぞろ。

ちょうど書き上げたフリーペーパーbukuに連載中のエッセイ「出張いまいまさこカフェ」13杯目に添える写真の背景にも動物柄を借りる。邪魔をしに来たたまの手もアクセントに入れた。今回のタイトルが「母と子と映画」なので、これはこれでよし。小さな手と動物イラストで子ども感が高まった。

カーテンと同じ動物柄の枕&掛け布団カバーも購入。「たまちゃんのおふとん」と中に入ってごろごろ。たまが生まれた頃、白いレースじゃなくて絵本の挿絵みたいな子ども部屋用のカーテンや布団はどこで売っているんだろとネットで探し回ったけど、そうか、イケアにあったのか。

ランチョンマットや食器も楽しい色づかい。値段は予想した半値ぐらい。だから、お友だちの分も二つずつ。

袋ものの口を止めるクリップが30本で99円也。底がマグネットで中身が見える小物入れ(こんなのが欲しかった!)は3つで1480円。おたまの絵が壊れたので、新しいのを探してたら、パスタ用や平たいのやフライ返しとセットになって698円。持ち手つきのざるも498円。物はしっかりしていて、安っぽさは感じさせない。

こうなると、あれもこれも買いそろえたい、買い替えたい衝動にかられてきて、帰ってくるなり「次はいつ行こう?」とうずうずしている。

2008年09月03日(水)  マタニティオレンジ329 アンパンマンがミッキーのおうちへ行く話
2007年09月03日(月)  お金を恵むのではなく
2004年09月03日(金)  下高井戸シネマで『Big Fish』


2009年09月02日(水)  やっぱり面白かった『南極料理人』

先日の日記(2009年08月28日(金) 『映画とたべもの』と「レシピに著作権がない」問題)に「すごく観たいし、関わっている人がうらやましい」と書いた『南極料理人』をテアトル新宿で観る。ロビーではペンギンのボーリングピンなどかわいい撮影小道具がお出迎え。上映15分前で最前列を残すのみの盛況。徒歩3分のバルト9『ぼくとママの黄色い自転車』の入りはいかがか、と気になる。

冒頭、雪煙に視界が曇る一面の氷野原にドームから駆け出してくる男たち。「もうイヤなんです!」と逃げ出す若い隊員に追いつき、「お前が強くなるしかないんだ!}と年配隊員が肩を揺さぶる。スポ根ノリの熱い映画なのかと思わせておいて、次のシーンでお茶目にオチをつけ、なるほど。この作品の力の抜き具合を知ると同時に、食べものだけでなくてムードもおいしそうだと身を乗り出した。

「とにかく食べものがおいしそうなのよ」「ラーメン食べたくなるのよ」とすでに観た人が口々に言うので、食材が限られた極北の地ならではのB級グルメが目白押しかと思いきや、堺雅人演じる料理人が腕をふるうメニューの数々に目を見張った。乾物と冷凍野菜、自家栽培のスプラウト類でこれだけの食事を作れてしまうとは。手抜き主婦のわたしに任されたわが家の食卓よりも豊かではないか。南極での食事と言えば、味気なくそっけないものを勝手に想像していたので、これには驚いた。映画的な脚色がどこまでされているのか、本当にこんな感じなのか、原作の体験記『面白南極料理人』を読んでみたい。

食事はもとより南極観測隊の生活についてはほとんど知識がなく、それゆえに「個室はこうなっているのか!」「トイレはこうなっているのか!}「電話があるのか!」などといちいち新鮮に驚くことができた。「平均気温マイナス57℃ 日本との距離14000km 究極の単身赴任!」と公式サイトにあるが、異文化体験をのぞくような面白さがある。今や海外旅行は珍しくないけれど、観測隊員として派遣される人の数はとても限られていて、そうそう遭遇できるものではないから、その土産話に興味が湧くのは当たり前。ずいぶん昔、幼なじみのフミちゃんのダンナさんが観測隊で南極へ行くということを実家の母が興奮気味に電話してきたが、稀少価値でいうと「甲子園出場」以上だろう。

日本に残した家族や恋人との物語が挟まれると、季節感のない観測隊の毎日に、時の流れが感じられる。家族とのやりとりのベタベタしない感じがリアル。毎日顔を合わせる隊員同士もだんだん家族になっていくが、家族ならではの「必要最小限のことしか言わなくてもわかりあう」感じが良く出ている。逆に、最初は「おう」「おうおう」で通じあっていた恋人との電話の会話が時間とともにぎこちなくなっていき、遠距離恋愛の終焉を感じさせるところもうまかった。この若き隊員の恋の結末は、とても好き。劇場映画初監督の沖田修一監督が脚本を書いているが、自然なセリフがとてもいい。達者な役者さんの力なのか、演出がうまいのか、絶妙な間で笑いを確実に取っていたのはお見事。雪と氷の世界なのに、滑らない。

欲を言うと、料理人以外はどういう仕事をしているのか、あまり描かれていなかったけれど、見やすい長さだったし、料理がメインなのだから、いいのかもしれない。車両担当さんは具体的には何をするのだろう。料理については、思った以上の眼福を味わわせてもらった。ラーメンもさることながら、ローストビーフのジューシーな肉汁にはおなかが鳴った。湯気までおいしそうといえば、去年観た『しあわせのかおり』。もしかしてカメラは同じ芦澤明子さんではとエンドロールに注目したら、当たり。この人の撮る食べものは、スクリーンを通しても鮮度が落ちない。

2008年09月02日(火)  マタニティオレンジ328 買い物ごっこ
2007年09月02日(日)  マタニティオレンジ170 せらちゃんのおさがり
2004年09月02日(木)  「とめます」と「やめます」
2002年09月02日(月)  My pleasure!(よろこんで!)


2009年09月01日(火)  防災ずきんを防空ずきんと呼んでしまう

9月1日は防災の日だということを娘のたまが保育園に通っているおかげで、ここ数年思い出させてもらっている。毎年この日には園で防災訓練があり、お迎えのときは父兄は引き渡し訓練をする。いつものお迎えと違うのは「すでに先生方が荷物をまとめてくださっている」ことと「父兄のフルネームを名乗る」ことと「3才未満の小さい子はおんぶして帰る」こと。

たまは3才になったのでおんぶの必要はないのだけど、おんぶして帰ることにすると、背負った途端、泣き出した。「あさも おんぶが よかったよー」。昨日はわたしの仕事が遅くなるのでじいじばあばの家にお泊まりしたのだが、ぐっと我慢していた淋しさが、おんぶされた安堵で一気に吐き出されたらしい。泣きじゃくるたまをおんぶであやしながら家路についた。

防災訓練では何をやっているのか、これまでわからなかったが、今年は「かじになると えんちょうせんせいが バケツもってきて くれるんだよ」などと報告してくれる。これは火事のときの消火訓練か? 家に帰ると、タオルや座布団を頭にかぶり、「ぼうさいずきーん」と遊び出したので、ずきんをかぶる練習をした様子。防災ずきんは今年から園に常備することになり、どこで売ってるんだ、と探し回った挙げ句、楽天にてメール便で送ってくれるものを見つけて購入した。「防災ずきん」という言葉がどうも使い慣れず、つい「防空ずきん」と言ってしまう。同年代の保育園の先生も「防空ずきん」とつられて、「世代かしら?」と笑い合う。防空ずきんもなじみがあるわけではないのだけど……。

2008年09月01日(月)  『ブタがいた教室』と『ヤング@ハート』
2007年09月01日(土)  第2回ユニバーサル映画祭
2004年09月01日(水)  年を取らない誕生日
2003年09月01日(月)  「うんざりがに」普及運動

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