2004年09月06日(月)  シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?

今月3日発売の月刊シナリオ10月号で「シナリオライターになりたい人のためのコンテンツを用意する」と宣言したので、急遽1回目を書いている。前々からやろうやろうと思っていたのだけど、自分を追い込まないとなかなかやらない。

さて、プロのシナリオライターをめざす人たちから少なからず寄せられる「デビューさせてください」メールには毎回驚かされる。デビューは自分でつかむもので、チャンスは転がっている。他力本願で万が一デビューできた後はどうするつもりなのか心配。ただし、チャンスをつかむにはコツが要る。「何度コンクールに出しても落ちます」「どうやったらうまくなりますか」といった質問には、幸運にもデビューできた一人としてアドバイスしようと思う。シナリオライターになるためのトレーニング、略してシナトレ。シナリオにちなんで、めざせ連載47回!?

アテネオリンピックを見ていて思ったのだが、シナリオコンクールは採点競技に似ている。自分の持てる力を原稿用紙何十枚という舞台でアピールする。そこには「練習で積み重ねてきた力」と「本番で実力を爆発させる力」の両方が必要になる。日頃の積み重ねについては次回以降にお話しするとして、今回は後者について思っていることを。最近シナリオコンクールの審査に関わるようになったが、「ぶっつけ本番でーす」という作品が多すぎる。体操競技に例えたら、「たった今、技が完成」「この内容で演技するのは今日がはじめて」状態で大会に臨んでいるようなもので、これでは勝てない。

入選確率を上げるためには、採点競技であることを意識して、自分の演技(作品)を客観的に見ることが必要だと思う。パソコンで打ち終えて出力したままポストへ直行という原稿はケアレスミスの宝庫で、減点の対象になる。誤字脱字ぐらいと侮るなかれ、採点ランクが1つ落ちるぐらいの覚悟で校正したほうがいい。応募者本人も読み返していない原稿を、読む気にはならない。誤字脱字出現率と作品の完成度が反比例するのも事実。

わたしはコンクール応募時代、必ず友人や家族に読んでもらい、意見を取り入れて修正したものを出した。自分の主観だけではひとりよがりな脚本になりがちで、人が読むと理解されなかったり誤解されたりする部分が出てくる。大事なのは「直すことで作品をパワーアップさせる」こと。「ここ、わかんなーい」「この台詞、なんか違う」と言われたら、単に削るのではなく、もっと面白い代案を考える。この経験は、デビューしてからとても役に立っている。プロの世界では初稿に何度も直しを重ねて決定稿に持ち込んでいく。直しを「引き算」ではなく「足し算」にできるかどうか(原稿的にも気持ち的にも)が、プロに求められるとても大切なことのように思う。

というわけで、これからコンクールに出す人は、少なくとも自分自身で読み返し(声に出して読むと、台詞のリズムがつかめるのでおすすめ)、余裕があればまわりの人にも読んでもらい、抜かりなくブラッシュアップを。コンクールの第一関門はデビューして日の浅い新人ライターが審査することが多いので、まわりの人たちが「面白い!」と太鼓判を押した作品であれば、2次審査に進める確率は高くなるはず。

2002年09月06日(金)  ミナの誕生日

<<<前の日記  次の日記>>>