2004年09月18日(土)  愛以外は証明できる宇宙飛行士

人をつなげる名人・小山理子さんより「宇宙飛行士に会いませんか」とお誘いをもらい、NASA出身のアニリール・セルカン氏に会う。東大で建築を教えながら、日本を拠点に宇宙研究に携わっていて、日本語はペラペラ。たぶんあと3か国語は軽くしゃべれそうな感じ。情報処理のレベルというか、視点の引き具合というか、思考のスケールがとにかく桁違い、この人の頭の中がすでに宇宙! いつも友人たちと交わす会話とはまったく次元の違う話題が繰り出され、刺激的な時間となった。

4時間ほどの会話の中で、何十回と質問をされる。「銀河系の写真ってのは、誰がどこからどうやって撮った?」「宇宙人はなんで緑色?」「人類はどこからはじまった?」「自分の姿も自分の声も一生客観的に見れないのに、どうして本当の自分がわかる?」「戦争のたびに博物館から盗まれる巨大な石(その石には人類のはじまりを記述したコードが刻まれていたりする)。誰がどこへ運んで行く?」「ピラミッドは何のために作られた?」などなど。質問を投げかけては、大きな目でわたしたちの反応を待つセルカン氏。答えを投げ返すと、「どうして?」「なぜ?」「その根拠は?」とまた質問が返ってきて、宇宙論というより哲学論のよう。ちょっと禅問答的でもあり、しっかりつかまっていないと振り落とされる。質問ラリーに食らいつきながら、お酒を飲みながらこんなに頭を使ったことないなあと思う。

質問の合間に「面白いものを見せてあげましょう」と、三浦折り(宇宙に大きな平面を運ぶために工夫された紙の折り方)やモンゴルの奇岩写真を見せてくれる。はるか昔、学研の『ムー』を読んでいたわたしが「たしか火星にピラミッドがありましたね」と言うと、「そのピラミッドは火星の赤道にあたる位置にある」と興味深い反応。「ピラミッド」という単語は度々登場、宇宙と深い関係にあるらしい。「エネルギー」という言葉も頻出。人間も宇宙もエネルギーでできている、という見方ができるとのこと。ちなみに今年新聞で読んだ「NASAが火星の岩に『スシ』『ワサビ』と名前をつけた」件については、「ほんと? 普通はラテン語の名前なんだけど」という反応だった。

「なんでも聞いてくれたら証明するよ」と言われて、アートディレクターの三浦氏(三浦折りとは残念ながら関係ありませんとのこと)が「人はどうして恋に落ちるんですか?」。この質問にセルカン氏は、「ごめん。それだけは答えられない。愛以外は何でも証明できるけど」。火星にもノーベル賞にも近い宇宙飛行士の答えとしては、できすぎのような台詞。

めったなことでは出会えない人だけど、接点も発見。セルカン氏は映画の構想を持っていて、シナリオを準備中とのこと。さらにチラシを見て気になっていたホワイトマンの『プレゼン・ラジオ』」(2004年1月27日〜2月1日)に出演していたことも知る。ホワイトマンのことは、カフェグルーヴの浜田寿人さんからも聞いていたので「浜田さん知ってる?」と聞くと、「もちろん」とつながった。浜田さん、小山さん、わたしは『風の絨毯』つながり。セルカン氏の日記には「人間の世界が広がるのは教育より人間関係」とある。人と人のつながりも宇宙みたいに果てしなくて興味が尽きない。

2003年09月18日(木)  夢も人もつながる映画『夢追いかけて』
2002年09月18日(水)  月刊ドラマ

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