2009年08月16日(日)  朝ドラ「つばさ」第21週は「しあわせの分岐点」

くよくよしないことが取り柄だと心得ているので、「あのとき、あっちの道を選んでいれば」と後悔したり、選ばなかった人生と選んだ人生を比べたりということは滅多にしない。でも、「つばさ」の打ち上げの最中に、「もし、この仕事を受けていなかったら、今ここにはいなかったんだなあ」としみじみとなった。脚本家であるからには脚本として作品に関わりたいし、結果的に脚本協力となった映画『子猫の涙』と『犬と私の10の約束』も、当初は自分の脚本でというつもりだった。自分の脚本でない仕事に一年あまりの時間と労力を注げるだろうか。その間に他の大きな仕事が来たら、チャンスをみすみす逃すことになってしまう。でも、朝ドラの制作に関われるチャンスなんて、最初で最後かもしれない……。数日間考えて、答えを出した。その結論が正しかったと自分に胸を張れるように仕事をしたい。そう願って、力を尽くした。

他の朝ドラの現場は知らないけれど、一生に一度の朝ドラが「つばさ」でよかった、とつくづく思う。「手を抜いている人を見たことがない」と打ち上げの挨拶でチーフディレクターの西谷真一さんが語ったが、ひたむきで熱い人たちがそろっていた。「こんなに人があったかい現場も珍しい」という声もよく聞かれた。そのあったかさは人恋しさの現れでもあり、キャストもスタッフも、淋しがりやで人なつこい、気遣いの人が集まっていた。人と人はわかりあえる、そのことを諦めたくない人たちが、「つばさ」ワールドを作り上げた。

明日からの第21週のタイトルは、「しあわせの分岐点」。分岐点といえば、「つばさ」は、いわゆる朝ドラの定番らしいトーンで作ることもできたし、そうしたほうが安定した視聴率を取れたかもしれないけれど、あえてチャレンジを選んだ。家を守る母ではなく家を捨てた母。夢を追うヒロインではなく、夢を封じてきたヒロイン。その逆転母娘が再会し、26週かけてお互いや周囲に起こす化学変化が絆に昇華していく、というエネルギーの要ることをあえてやっている。わたしが打ち合わせに参加するようになったときには、すでに世界観もテーマもできていたけれど、そのときから、放送が始まって以来も、制作チームがやろうとしていることは一貫している。「思い残すことはありません!」とも西谷Dは爽やかに言い切った。選んだ人生を肯定し、真っすぐに前を向いていく、「つばさ」チームの潔さと強さを今あらためて思っている。

打ち上げ前の撮りきりセレモニーで、玉木竹雄役の中村梅雀さんは、「家族の絆を諦めちゃいけないってことが最後まで描かれている」と語った。「起きてしまったことは変えられないけれど、物語の続きは自分たちの手の中にある」「選ばなかった人生を悔やんではいけない」「人生は元取るようにできている」など、言葉は違っても、「つばさ」は、今自分が立っている場所を受け入れ、そこから次へ踏み出すエールを送ろうとしている。玉木家最大の危機につばさは、家族は、どう立ち向かうのか。どうぞご注目ください。演出は、4、5、7、11、18週の大橋守さん。

そして、続く第22週「信じる力」は「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。つばさの幼なじみのお隣の万里(吉田桂子)の成長と友情をお楽しみに。

【お知らせ】『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』ラジオ初登場

『ぼくとママの黄色い自転車』の紹介でなにかと引き合いに出される『子ぎつねヘレン』。映画から生まれたいまいまさこの絵本も頑張っています。 『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』がNHK新潟放送局のアナウンサーによるラジオの朗読コーナー「絵本の庭」(朝ドラ「つばさ」の「おはなしのへや」みたいな番組のよう)に登場。 8月13日に新潟地区限定で放送されました。こちらで朗読を聴けます。 Macでは再生できませんでしたが……聴かれた方、感想をお知らせくださいね。

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