2007年09月03日(月)  お金を恵むのではなく

いつもは古新聞になってからまとめて読む新聞を、今日はなぜか当日のうちに手に取り、宮あおいちゃんと将くんの兄妹が写っている番組広告を目に留めた。TBSの特番「未来の子どもたちへ 地球の危機を救うお金の使い方」内で案内役を務めているよう。あおいちゃんがわたしの映画脚本デビュー作『パコダテ人』で主役のひかるを演じた縁で将くんとも何度か会ったことがあり、二人のことを親戚のおばちゃんのような気持ちで見ている。以前読んだあおいちゃんのインタビューに将くんとインドを訪ねたときのことが語られていて、その模様は兄妹の共著『たりないピース』にも綴られているのだけれど、自分の考えと感性をしっかり持って世の中を見つめている姿勢をとても頼もしく思った。とってつけたように取材先へ派遣されるのではなく、日頃から意識を向けている兄妹を通して伝えられる問題提起には地に足ついた力強さがあるのでは、と期待してチャンネルを合わせた。

同じ百円でも使い方によって地球を豊かにする力になる、というメッセージをさまざまな視点から訴える二時間番組。二時間じっくりテレビを観る機会などめったにないのだけれど、「地球の大事なおはなしなんだから背筋を正して観なくちゃ」と思ったのか、一歳ほやほやのたまもわたしの膝の上で神妙に観ていた。というか、赤ちゃんは寝る時間なのだけど……。とはいえ、子どもが生まれて、これまで以上にこれからの地球のことをまじめに考えるようになったのは確かで、わが子の幸せを願うように、この星に生まれた子どもたちが命を精一杯輝かせられることを願う。

ねたあおいちゃん将くん兄妹は、アジアで最も貧しい国とも言われているバングラデシュを訪ねて現地の子どもたちと出会い、自分たちに何ができるかを探っていた。自分だったらこうしたい、相手にとってはどうだろう、という想像力をめいっぱい働かせる二人に乗っかって、わたしも一緒に考える時間を持った。地面に落ちた米つぶをゴミごと拾い集め、その日の食料を得るような暮らしを見ると、日本で騒がれている格差の縮尺が小さく感じられてしまう。どうしても抜け出せない貧困がそこにある。けれど、番組を見ながらわたしが考えていたのは、日本に住むある人のことだった。学生時代にお世話になったその人は今、失業し、毎日の生活費にも困っている。恩はあるし、お金を差し出すのは惜しくないけれど、果たしてそうするべきなのか。友人たちに頭を下げて回るよりも確実に日銭を稼ぐ方法があるのに、その人は働こうとしない。お金が続く限り、それを使いつぶす生活をしてしまうことが想像される。お金を差し出すことは、まだ若くて体力もあるその人の可能性をつぶしてしまうことになるのではないか。「面接に着て行くスーツを買いたいと言われたら、気持ちよく出せるんだけど」と共通の知り合いに言うと、「そう言ってお金を受け取ったら、スーツには使わないだろうなあ」と苦笑した。そんなことが頭に引っかかっているところに、「お金を恵むことは簡単だけど、その人のために活かすことが難しい」というメッセージを番組から伝えられて、身につまされた。

番組の中では、仲良くなった少女にお金を渡す代わりにあおいちゃんと将くんは悩んだ末に本を贈った。勉強し、生きる力をつけるために。消えるお金は空しいけれど、新しい価値を生み出すお金の使い道には意味がある。同じく番組で紹介されていたノーベル平和賞受賞のグラミン銀行総裁、ムハマド・ユヌス氏がはじめた「マイクロクレジット」という融資制度は、担保を持たない女性たちに元手を貸し出すことで自立を促している。借りたお金で仕入れた鳥が卵を産み、はじめて自分の手でお金を稼いだ女性の表情のなんと豊かなこと。98%という驚異的な返済率は、貧困にあえぐ人々が求めているのは現金そのものではなく、人生を変えるきっかけなのだと物語っている。富める国であっても貧しい国であっても、豊かさは誰かから恵まれるのではなく、自分で自分に恵むべきものなのだ。自分の手で豊かさをつかめることが人生の豊かさなのではないか、と思った。

2004年09月03日(金)  下高井戸シネマで『Big Fish』

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