2009年03月31日(火)  春はバイバイの季節

昨日の夜、娘のたまを寝かしつけるときに「何かお話ししてよ」と子守話を振ると、「バイバイのおはなし」とたま。反抗期の兆しなのか、この頃たまは「バイバイ」が口癖。親が真面目に話しかけると「バイバイ」と茶化し、しかると「バイバイ」とはぐらかし、じいじばあばに声を聞かせようと電話口に呼ぶと「バイバイ」と逃げる。

「バイバイの話ね。どんな話?」と聞くと、「ちょうちょさん とんだ」と言う。飛び立つのは確かにバイバイすることだなあと詩的なものを感じ、たまの言葉を引き取って子守話に仕立てた。保育園で習った「あーくーしゅーでバイバイバイ」というフレーズの明るい響きが好きだ。

ちょうど3月の終わりの旅立ちの季節。保育園では昨日、異動がある先生方のお別れ会があったし、遠くへ引っ越したお友だちもいる。いつもより「バイバイ」が多いことを感じているのかもしれない。保育園は今日までが1歳児クラスで、一晩明けると2歳児クラスに進級する。春休みをまたがずに学年が変わるのは不思議な感じ。着替えなどを隣の教室に引っ越し、新しい担任の先生を知らされる。

子守話51 えがおでバイバイバイ

おやつをぜんぶ たべたら バイバイ
おはながひらいて ちったら バイバイ
ことりたちが とびたったら バイバイ
おともだちが ひっこしたら バイバイ
はるがきたら ふゆはバイバイ

でも バイバイしても きえないものもある

おやつの あまいあじ
おはなの きれいないろ
ことりたちの うたごえ
おともだちを だいすきなきもち
たくさんあそんだ ふゆのおもいで

バイバイしても いっしょにいるから
えがおでバイバイバイ

春らしく、たま語の新作もいいものを収穫できた。
保育園からの帰り道、庭先にピンクの蕾がほころんだ木を見つけて、「あれはうめかな。さくらかな」とたま。「聞いてみたら?」と言うと、木に向かって、「うめですか? さくらですか?」と問いかけた。「何て言ってた?」と聞くと、「おはなです、って」。

もうひとつ、お風呂上がりのできごと。なかなか服を着てくれず、ふざけて暴れたたまの手がわたしの頬を平手打ち。「もうママ立ち直れない」と怒ってみせたが、「もうしませんから、たちあがってよ」と言われて、「立ち上がるじゃないんだけど……」。膨れっ面がゆるんでしまった。

昨日飛び立った朝ドラ「つばさ」の初回(総合 8:15〜)視聴率は17.7%。ハイビジョン(7:30〜)は1.5%、BS2(7:45〜)は3.7%で、合わせると22.9%。さらに昼(総合 12:45〜)と夜(BS2 19:30〜)の再放送分を合わせると20%台後半になり、出足は快調。放送が始まっても制作はバイバイしていない(手を離れていない)ので、視聴率がはばたいてくれると励みになる。

2008年03月31日(月)  マタニティオレンジ260 12歳のせらちゃんは同世代!?
2007年03月31日(土)  マタニティオレンジ102 保育園から美術と家庭科の宿題
2005年03月31日(木)  「またたび」の就職活動生
2004年03月31日(水)  岩村匠さんの本『性別不問。』
2003年03月31日(月)  2003年3月のカフェ日記
2002年03月31日(日)  レーガン大統領と中曽根首相の置き土産
2001年03月31日(土)  2001年3月のおきらくレシピ


2009年03月30日(月)  「シ〜ザ〜」何回?1日3回「つばさ」第1回

朝ドラ「つばさ」放送初日。映画公開前夜と同じく、なかなか寝つけず、変な夢を見たりして、7時45分からのBS2での放送には起きられなかった。8時15分からの放送を一家三人テレビの前に正座して観る。完成版を事前にDVDでチェックしているので、アンジェラ・アキさんの主題歌『愛の季節』を何度も耳にしている2歳児のたまは、「シ〜ザ〜」とサビの部分を一緒に口ずさみ、「なんでシーザーってうたってるの?」と突っ込む。seasons of loveのseasonsが、たしかに「シーザー」と聞こえる。昼の12時45分からの再放送を一人で観て、夜の19時30分からのBS2での再放送を家族で観た。さて、一日に何回シーザーを聞いたでしょう。

たまは、つばさ役の多部未華子さんの顔とつばさのタイトルロゴを覚え、家の中や外で見つけると、「ちゅばさだ」と指差す。朝ドラ前作の「だんだん」が名残惜しいらしく、「だんだんは、どうしたの?」「ちゅばさのあと、だんだん?」と気にしている。「ママはお仕事で、つばさを作っているんだよ」と教えると、「たまちゃんは、おしごとで、ちょうちょさんつくってるの」と張り合うので、「どっちもお空飛ぶね」と言った。これから半年間、「つばさ」がたくさんの人に愛されて、大きくはばたきますように。

つばさつながりで、今夜の子守話は天使の話。ちょうちょだけでなく、たまは空を飛ぶものが大好きで、ゾウもきりんも空を飛ばしたがる。「ペンギンさんそらをとぶのえいが」(『旭山動物園物語』も副題に惹かれて先日観に行ってきた。将来は空飛ぶ仕事? CAか、パイロットか、宇宙飛行士も夢じゃない? おどけて頭の上にタオルやら人形やら乗っけるのも好きなので、空飛ぶ×頭に乗っける=天使の話を作ってみた。

子守話50 てんしのわっか

まいごのてんしがないていました。
「わっかをおとしちゃったよう。
 わっかがないと おそらにかえれないよう」
そこにとおりがかったたまちゃんは 
いっしょにわっかをさがすことにしました。

わっか わっか どこにあるかな。
ママのゆびわは ちいさすぎ。
ドーナツのわっかは でぶっちょすぎ。
タイヤのわっかは おもすぎて
フラフープは おおきすぎ。
わっかはいろいろあるけれど
てんしのわっかは みつかりません。

だったら わっかをつくりましょう。
きいろいおはなをあんで はなかんむりの わっかのできあがり。
てんしのあたまにのっけたら ほら ちょうどいいおおきさ。
それに とってもよくにあいます。
「てんしのわっかとはちがうけれど
 おはなのわっかは とってもすてき」
なきべそだったてんしが にっこりしたそのとき
おはなのわっかに たいようがきらりとあたり
きんいろのわっかにかわりました。

てんしのわっかは「やさしいきもち」で できていたのです。
やさしいきもちが ぎゅっとかたまったかたちが
きらきらひかる きんいろのわっかなのでした。

「ありがとう たまちゃん」
まいごのてんしは そらにもどっていきました。
てんしのすがたはどんどんちいさくなり とおざかっていきます。
「てんしさん さようなら げんきでね」
たまちゃんが そらをみあげて てをふると
きらっきらっと わっかがきらめくのがみえました。
たまちゃんには てんしがウィンクしているようにみえました。

これで子守話は節目の50話。今年に入ってからは15話目。「年内に百話」の目標を達成するには、ひと月に5話のペースでふやしていかないと。最近は、娘よりも自分が先に寝入ってしまう。

2008年03月30日(日)  マタニティオレンジ259 一生ものの友だち、二世代目。
2007年03月30日(金)  生涯「一数学教師」の父イマセン
2004年03月30日(火)  鴻上尚史さんの舞台『ハルシオンデイズ』
2003年03月30日(日)  中国千二百公里的旅 中文編
2002年03月30日(土)  映画『シッピング・ニュース』の中の"boring"


2009年03月29日(日)  3/30スタート!朝ドラ「つばさ」は小ネタにも要注目

『パコダテ人』の古田まゆ役の前原星良ちゃんの家へ遊びに行き、朝ドラ「つばさ」のPR番組を一緒に見る。「つばさ」のハチャメチャなノリが伝わったようで、「お茶の間のドタバタが昔のドラマみたいで、懐かしい感じがするわ」とせらママ。

いよいよ、明日が放送初日。映画の封切り前夜に感じるドキドキをひさしぶりに味わっている。

第一週のタイトルは「ハタチのおかんとホーローの母」。ハタチのおかん=ヒロイン・玉木つばさ(多部未華子)のもとに、10年間家を空けていた放浪の母・加乃子(高畑淳子)が帰ってきて、家族は大混乱の巻。シリアスな話のはずなのにコミカルで、それでいて笑っているうちに身につまされてしみじみとなってしまうのが「つばさ」。家族がしっかり向き合い、一人の問題を一家の問題として受け止める玉木家のドタバタ劇は、ふざけているようで家族にとって大切なことをしっかりと教えてくれる。

見どころは挙げるときりがないけれど、「つばさ」で目が離せないのは登場するアイテムの数々。つばさの両親のなれそめにも関わっている甘玉堂名物の和菓子「あまたま」や、つばさが迷ったときの羅針盤的役割も果たす「一意専心」の看板といった基本アイテムはもちろん、一見飛び道具に見えるものに深い意味や伏線を秘めていたりするので要注意。鳶の頭・宇津木泰典の「眉間の傷レーダー」(加乃子が近づくとうずく)、放浪の母・加乃子の「ホーロー看板」、祖母・千代がフクザツな目で見る祖父・梅吉の「遺影」などは2週目以降も登場し、後々重要な意味が明らかに。額の傷ひとつ、柱の傷ひとつにもドラマを込めるのが「つばさ」らしいところで、「サンバ」もただのにぎやかしではない様子。

朝ドラらしからぬ? いや、けしからぬ? ぶっ飛んだ展開に最初は面食らうかもしれないけれど、気がつけば、つばさワールドの住人たちと喜怒哀楽を共にし、泣き笑いすることになるはず。玉木家のお茶の間のテーブル手前は、テレビの前のあなたのために空けてあります。特等席でご覧ください。

【放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)8:15〜8:30
デジタル衛星ハイビジョン (月)〜(土)7:30〜7:45
衛星第2 (月)〜(土)7:45〜8:00

【再放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)12:45〜13:00
衛星第2 (月)〜(土)19:30〜19:45 (土)9:30〜11:00(一週間分)

2008年03月29日(土)  江草さん×WADADASの広告労協飲み会
2007年03月29日(木)  ターバン野口
2003年03月29日(土)  中国千二百公里的旅 厠所編
2002年03月29日(金)  パコダテ人トーク


2009年03月27日(金)  たまとじいじ、二人旅で絆深まる。

娘のたまを花巻へ連れて行きたいとダンナ父であるじいじに言われたのが先週のこと。年に何度か用があって訪ねる花巻へ、これまでも何度か連れて行こうという話が持ち上がったのだけど、まだ早いのではと実行を見合わせていた。今回は、たまもだいぶ意思疎通ができるようになったし、週に一、二度のペースでじいじとデートをしてすっかりなついているので、「そろそろいいのでは」とあらためて打診があった。日帰りで二人で日光へ行ったこともあるし、遠くへ出かけることには、たまもじいじも不安はない様子。むしろ送り出すわたしとダンナがおっかなびっくりだったけど、花巻へ行けば知り合いも多いし、親戚の田舎に行くようなものだと考えることにした。

一応たまの意見を聞いてみると、「しんかんせんで はなまき いく」と乗ったかと思えば、「ひこうきでいく」と言い出したり、「いかない。おるすばんする」とごねたり,言うことが二転三転。「子どもの言うことなんかあてにしてたら決まらないだろ」とダンナは言うけど、わたしはたまの意志を尊重したいと言い張り、結局出発一日前の火曜日の朝に「はなまきいく。じいじとゆきだるまつくる」とたまが言ったのを受けて、はじめての二人旅が実現することになった。

たまはじいじばあばの家で前泊し、水曜の朝早くに東京を発ち、木曜の夜遅くに帰ってきた。ダンナ父は携帯電話を持たず、旅先からも電話をしない人で、木曜の夜7時を過ぎてダンナの実家にわたしが電話を入れると、「まだ帰ってないのよ。大丈夫とは思うけど」とダンナ母が言い、心配になってきたら間もなく帰宅し、「ママー、たのしかったよー。たまちゃん いってよかったよー」とはちきれそうに元気な声で電話があった。じいじによると、新幹線の長旅ではぐずらず、花巻では知人の家の子どもたちと遊んでもらい、露天風呂にも入ったらしい。吹雪で雪と遊ぶことはできなかったという。

今朝、ダンナの実家にたまを迎えに行き、バスで保育園へ向かった。名残を惜しんでじいじも保育園まで見送ってくれたが、たまとじいじの絆は二人旅でいっそう深まった様子で、母としては、うれしくもありうらやましくもあり。バスから見える薬局ぱぱすを指差して、「あれ、たまちゃんのおむつのおみせ」とたまが言った。「じいじ、こんど たまちゃんが おむつ かってあげるね」とまわりの乗客の誤解を呼びそうなことを無邪気に言うたまに、じいじは目尻を下げて苦笑していた。

2008年03月27日(木)  ブラボー!『蘇る玉虫厨子〜時空を超えた技の継承〜』
2007年03月27日(火)  『子ぎつねヘレン』地上波初登場と富士フイルム奨励賞受賞
2005年03月27日(日)  今井家の『いぬのえいが』
2003年03月27日(木)  中国千二百公里的旅 食事編
2002年03月27日(水)  12歳からのペンフレンドと3倍周年


2009年03月26日(木)  朝ドラ「つばさ」宣伝デー

3月30日から始まる朝ドラ「つばさ」の案内メールを配信。その反響に、朝ドラってすごいんだなとあらためて驚かされた。これまでも作品が放送や公開されるたびにお知らせメールを出していたけれど、返信の数も内容の熱さもケタ違い。「脚本」ではなく「脚本協力」という形での参加(脚本は戸田山雅司さん)であることなどおかまいなしに、「朝ドラおめでとう!」の興奮が続々と返ってくる。8月22日公開の『ぼくとママの黄色い自転車』の案内も添えたのだけど、返信の文面は朝ドラ一色。劇場に足を運ぶ必要のないテレビはチャンネルを合わせれば見られるし、元々視聴習慣のある人も多い。バツグンの知名度と安心感も手伝って、「観ます」の返事をしやすいのもあるだろうけれど、ここまで威力があるとは……。朝ドラおそるべし、と感心していると、「高校野球みたいなもので、控え選手でも知り合いが甲子園行ったらうれしいのだ」と言う人があり、なるほど、うまいたとえだと思った。バツグンの知名度と長い歴史を誇る朝ドラは国民的なお祭りなんだなあ。

「朝ドラの時間は家にいません」という声も多く、「週間録画します」という返信がかなりあった。「ビデオが出たら観ます」の人もいたが、調べてみると、再放送を含め、一日に5回つかまえるチャンスがあり、土曜日には一週間分まとめての放送がある。

【放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)8:15〜8:30
デジタル衛星ハイビジョン (月)〜(土)7:30〜7:45
衛星第2 (月)〜(土)7:45〜8:00

【再放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)12:45〜13:00
衛星第2 (月)〜(土)19:30〜19:45 (土)9:30〜11:00(一週間分)


朝ドラは登場するキャストや関わるスタッフの数もハンパじゃないので、関係者に当たる確率も高い。メールに寄せられた返信からも「飲み仲間がノベライズ手がけました」「宇津木万里役の吉田桂子さんのブログをサポートしています」などなど、あちこちで関係者がつながっていることが判明。行きつけの整骨院では「つばさ」のマグネットを発見。患者さんがやっているPOP制作会社で作ったものだとか。院長が川越出身ということもあり、わたしが持ち込んだ宣伝はがきを合わせて「つばさコーナー」をこしらえてくれた。「長時間の打ち合わせに耐えられるのも、ここの整骨院のおかげ。お二人も『つばさ』を支えてます」と院長とウキちゃんにお礼を言った。疲れやストレスを食べてくれる家族(とくに娘)、その娘を見てくれる保育園やダンナの両親、声援を送ってくれる友人など、いろんな人に支えられ、チカラをもらっている。関係者それぞれのサポーターを合わせたら、すごい数になるだろうな。

2008年03月26日(水)  マタニティオレンジ257 クルマが好きな女の子
2007年03月26日(月)  マタニティオレンジ100 1%のブルー
2006年03月26日(日)  ヘレンウォッチャー【都電荒川線編】
2005年03月26日(土)  映画『いぬのえいが』→舞台『お父さんの恋』
2003年03月26日(水)  中国千二百公里的旅 移動編
2002年03月26日(火)  短編『はじめての白さ』(前田哲クラス)


2009年03月22日(日)  空気を読んで使い分ける、たま2歳7か月。

またまたあっという間にひと月経ち、娘のたまは2歳7か月。「いつの間にこんなことができるようになったんだ!」と驚いてしまうのは、週末も仕事でダンナやじいじばあばに見てもらうことが多いせいかもしれない。先月に続いて、なりきり芝居の腕を上げ、保育園に登園してからお散歩に出かけるまでの「ほいくえんごっこ」、交替で「ママ役」と「赤ちゃん役」を演じる「おやこごっこ」がお気に入り。

親子ごっこの赤ちゃん役は「バブ」しか口にしてはならず、「バブ」の微妙なニュアンスで喜怒哀楽を伝える高度な技術を要求される。応援団時代の「押忍(オス)五段活用」(=「応援団のリーダー部下級生が「押忍」だけで、ごっつぁんされる喜びや先輩に怒鳴られた落ち込みや反省や疑問を表現する宴会芸」を思い出しながら、「バブ? バブ〜。バブバブ?」などとやっているが、電車の中などで「あかちゃんになって」と言われると、かなり恥ずかしい。甘えたなくせに世話焼きで、人形たちだけでなく、親の世話も焼きたがる。お節介はたま語にも現れ、わたしが風呂上がりにおむつをはかせようとすると「ママ じぶんのパンツはきな」と人の心配をし、椅子にあぐらをかくダンナに「パパたいどわるいよ。おおかみくるよ」と注意する。

体を使った遊びも好きで、風呂上がりは「おすもうさんごっこ」や「おうまさんごっこ」で大はりきり。そこからが遊びの時間のはじまりよという感じで、あいかわらず寝かしつけるのに苦労する。今日の夜、テレビのニュースで大相撲の結果をやっているのを指差し、「あ、おすもうさんごっこしてる」。それは本物です。

お調子者なところは両親に似たのか、人を笑わせるのが好きで、「たまちゃん」と言えるようになったのに、いまだに「たべる」を「ばべる」と言い続けているのは、大人がウケるのが楽しいからではという気もする。そのくせ、失敗したのを笑われると、ひどく傷ついて泣き出したりするナイーブな一面も。わたしとダンナと味噌汁の具を相談していたら、「バナナがいいんじゃない? バナナたべるとつよくなるよ」と提案してくれたのを大笑いすると、へこんでしまった。恥をネタにできるたくましさが備わればと関西人のわたしは思うけれど、東京で生きて行くなら、かわいく恥じらっていればいいのかもしれない。

もともと場の空気を読む性質があったけれど、このひと月でそれがいっそう強くなった。わたしが出かけるときの持ち物や服装やダンナと交わす言葉で「仕事か、遊びか」がわかるらしく、「仕事だから、ごねても無駄」だとわかればおとなしく見送るが、「遊びだから、ごねれば何とかなる」と判断すると、泣いてすがる。その的中率の高さには驚かされる。子どもなりに気を遣っているんだなといじらしくもあり、空気を読む子の気持ちをできるだけ汲んでやりたいと思う。

娘と過ごせる限られた時間に家事をこなすための解決策で、「お手伝い」を「遊び」にして一緒にやるようにしている。魔法の粉(=重曹)で家の中を磨いたり、バナナパンの卵割りや粉ふるいや混ぜまぜをしたり。洗濯物を畳むのも覚えて、面白がってやってくれる(畳んだ後ですぐ広げて再びたたむので効率は良くない)。家事は面倒くさくなると負担だけれど、娘が「こんなたのしいあそびはないわ」と目を輝かせてやってくれると、こちらも楽しくなって、けっこうはかどる。『トムソーヤの冒険』のペンキ塗りのエピソードと同じこと。

トイレは前進したり後戻りしたり。保育園から持ち帰るおむつがゼロ(つまり、全部トイレで済ませている)の日もあれば4枚の日も。なぜか外出先での成功率が高く、駅の「だれでもトイレ」や店のトイレでうまく行く。いつもと違うトイレに入るのが探険気分で楽しいのかもしれない。

卒乳の気配はまだなく、とんとん(=おっぱい)はすっかりお友だちで、どこか出かけるときに「とんとんも一緒に行くの?」と言ったりする。「たま、いつまでとんとん飲む気?」と聞くと、「いつまでも」。

2008年03月22日(土)  マタニティオレンジ255 ゾゾもガオも自分もわかる、たま1歳7か月
2007年03月22日(木)  マタニティオレンジ96 胴体着陸と前方回転
2002年03月22日(金)  遺志


2009年03月21日(土)  マスカラぐらいは、つけますから。

昨日、会社時代の同期だったシモゾノ君の披露宴の後に打ち合わせが入り、着替える時間もないのでパーティ仕様のまま移動した。前日に「ドレスのまま派手なカッコでうかがうかもしれません」と予告していたのだけど、現れた姿を見て打ち合わせ相手は拍子抜けした顔で、「なんだ、いつもより地味じゃないですか」。確かにドレスは黒で色数過剰の普段着より落ち着いているけれど、美容院で作ってきた髪と顔はどうなのだろう。ほぼすっぴんで仕事に出かけるわたしとしては、別人に見えるぐらい変身しているつもりなのだけど……。これだけ作り込んで代わり映えしていないのだろうかと不安になった。

自分では濃過ぎると思っていても、案外これぐらいが普通なのかもしれない。せめてマスカラぐらいは習慣にしようと思い立つ。朝ドラ「つばさ」(3/30スタートまであと9日!)の第4週に「恋は先っぽに出る」という台詞が出てくる。まつげ、髪の毛先、爪。そんなところに恋のときめきは宿る。その逆に、先っぽをないがしろにすると恋は遠のく。毛先からキューティクルが失われるように、手抜きした先っぽからときめきが逃げて行く。そんな気がする。

コピーライター時代にランコムを担当していた頃は、マスカラを欠かさず、実際につけてみた実感をコピーに表していたのだけど、担当を外れると、つける回数が減り、会社を辞めてからは、ほとんどつけることがなくなった。いくつになっても先っぽに気持ちを配る余裕を持たなくては、と何年かぶりにマスカラを買う。「つけまつ毛のような仕上がり」という商品コピーを読んで「マスカラぐらいはつけますから」などとダジャレを思いついている時点で、恋するオトメではなくオヤジになっているのが悲しい。先っぽキラリンで、オッサン化炭素(CO3)を削減しなくては。

2008年03月21日(金)  「321の会」@アスカフェ→タンタローバ
2007年03月21日(水)  MCR LABO #2「無情」@下北沢駅前劇場
2005年03月21日(月)  弘前劇場+ROGO『FRAGMENT F.+2』
2004年03月21日(日)  アドフェスト4日目
2002年03月21日(木)  「かわいい魔法」をかけられた映画


2009年03月19日(木)  米アカデミー賞オスカー像は小柄で重かった

最近映画関係者と話すと、必ずと言っていいほど米アカデミー賞の話が出る。昨日は『つみきのいえ』で短編アニメーション賞を受賞した制作会社ROBOT(ロボット)で打ち合わせ。授賞式に出向いた阿部社長も同席して、話題は自然と受賞の話になった。DVD絵本がなかなか手に入らず、いくつもお店を回ってやっと手に入れた人の話。あちこちから押し寄せるように花が届いた話。おめでたい話は、聞いているほうもウキウキする。「オスカーって重いんですか?」と何気なく尋ねたら、「受付に置いてありますよ」と社長。「ああいうのは、こうするもんじゃないでしょ」と抱き込む仕草をして、「みんなに喜んでもらわないと」。

帰りに受付を見てみたら、見過ごしそうなほどさりげなく、訪問カードを記帳するカウンターにオスカー像が佇んでいた。こんなに小さいんだ、というのが第一印象。ワインのハーフボトルより少し大きいぐらい。フルボトルを痩せさせたような感じと言おうか。囲いも何もないので、訪問者が自由に手に取り、写真を撮っている。わたしも触らせてもらった。持ってみると、思いがけない重みに腕が驚く。新生児ぐらいはありそうな……と言うと大げさだけど、2キロぐらいあるように感じた。見た目からの予測重量とのギャップが重さを際立たせるのだろうか。受賞した本人には、ことさらずしりと響くだろうなと想像する。

撮った写真を日記にのっけようかと思ったら、「オスカー像の肖像権は米アカデミー賞協会にあり、厳重に管理されている」とのこと。オスカーさんの写真を載っけるには、許可がいるということらしい。そんなところにも重みを感じる。

2008年03月19日(水)  整骨院のウキちゃん5 東京の首都は?編
2007年03月19日(月)  大木達哉さんを励ます会
2004年03月19日(金)  アドフェスト2日目
2002年03月19日(火)  パコダテ人ノベライズ計画


2009年03月18日(水)  「いかにもがさつな感じの水」という詩

「コップちょうだい」とダンナが手を伸ばしてきたので、ささっと洗ったコップを手渡すと、「水が残ってる!」と騒がれた。わたしがきちんと水を切っていなかったせいだけど、そこまで目くじら立てなくても……と思うわたし。だが、ダンナは「いかにもがさつな感じの水が残っている」とのたまい、「今のって詩みたい」と付け足したので、のけぞった。

「いかにもがさつな感じの水」が詩なのか? この人にとっての詩の基準って、詩のイメージって、どうなっているんだろう。レストランで海老が出たと言い、「海老がどうなってたの?」と調理法を聞いたら、「死んでた」と答えるような人である。「ごはん、どうしよう」と聞くと、「簡単でいいよ」「僕が作る」「外で食べよう」「カレーを食べたい」といった想定内の回答をなぎ倒して、「食べる」と即答されたのにも絶句した。「食べる」「食べない」の二択ではなく、その先を聞きたかったのだけど……。ある意味非凡な言語感覚の持ち主なのかもしれないが、詩人とは違う気がする。

「詩っていうんだったら、『君がこれまでに流した涙ぐらいの水』ぐらいのことを言えないのか」と反論すると、「君は、涙は流さない。汗なら流すけど」と言い返された。ムッとなったけど、さんずい偏の感じが4つ並んだこっちのほうがまだ詩らしさがある。でも、妻の涙を汗と並べる感性は、やっぱり詩人じゃない。

2008年03月18日(火)  『スパイダーマン』のプロデューサーの言葉
2007年03月18日(日)  DVD6作品目の『天使の卵』
2006年03月18日(土)  ヘレンウオッチャー【公開初日編】
2005年03月18日(金)  あなたのペンが「愛・地球博」にそびえます。
2004年03月18日(木)  アドフェスト1日目
2002年03月18日(月)  『風の絨毯』高山ロケ3日目 高山観光


2009年03月17日(火)  「つばさ」ドラマ・ガイドと宣伝はがき

朝ドラ「つばさ」のガイドブック(「NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 つばさ」が正式名称?)と宣伝用のはがきが刷り上がり、打ち合わせのときにいただく。映画の場合はチラシやグッズが公開前に作られるけれど、テレビでこういう盛り上がり方をするものは初めての体験で、ワクワクする。

ドラマガイドはインタビュー、ロケ日記、10週までのあらすじ、観光案内などなど盛りだくさんな内容。カラー写真もふんだんに使われていて、読み応え、見応え十分。もう少ししたら書店に並ぶ予定。白を活かしたすっきりしたデザインが店頭に映えそう。

はがきはスタッフ名が14段にわたって印刷されたバージョンがあり(数えてないけど、百人は超えてる感じ)、その中から「脚本協力/今井雅子」の名前を見つけて、このドラマのスタッフの一人なんだなあとあらためてしみじみとうれしくなった。観るものだった朝ドラに参加できたことは、ほんとに幸運だと思う。「幸運だった」と過去形にならないのは、放送が始まっても制作は続くから。スタッフもドラマの中身もノリノリな「つばさ」だけど、世間の評判が聞こえてこないときに作るのと、聞こえてきてから作るのは、また変わってくるんだろなと思う。

放送開始まであと13日!

2008年03月17日(月)  マタニティオレンジ254 仕事友 ママ友
2007年03月17日(土)  『散歩の達人』大塚 駒込 巣鴨
2006年03月17日(金)  弘前劇場公演2006『職員室の午後』
2002年03月17日(日)  『風の絨毯』高山ロケ2日目 イラン式撮影現場


2009年03月16日(月)  子ども靴もネットで

娘のたまの新しい靴が必要になった。これまでは、お祝いとおさがりで間に合わせ、普段履きの靴を買ったのは、麻布十番の商店街の靴屋で見かけて買ったカレーパンマン靴の一足だけ。その辺の店に売っているだろうと軽く考え、先週末に子守をしてくれたダンナ父に「お散歩がてら、いい靴があったら」と買い物をお願いした。ところが、土日をかけて探し回ったものの、デパートでは高級過ぎ、下町の店では靴下しかなく、そのうち「キティちゃん!」とたまが主張し始めたが、スーパーの靴売り場にはアンパンマンしかなく、手ぶらで終わってしまった。

これでは子ども靴が見つかる前に大人の靴がすり減ってしまう。どこでキティちゃんの靴を買えるのかをネットで調べようとして、「そうか、ネットで靴を買えばいいんだ」と思い至った。試着したほうがいいのだろうけど、これまでだっていただいた靴ばかり履いてきたのだ。ヤフオクで「子ども靴」を検索すると、これでもかの品揃え。「14cm」に絞り込んだ中から「新品」で即決価格が手頃なものを探してみると、わたし好みのオレンジと水玉の組み合わせを発見。一目惚れした瞬間、キティちゃんのことを忘れ、即決価格で落札する。送料(390円)とカード決済手数料(105円)を足しても市販価格よりおトク。出品者の「お子ちゃま倶楽部」さんは個人ではなくオークションストア。北海道から発送された商品が数日後に届き、箱を開けてみると、画像で見た以上にかわいい色合い。たまとのお見合いも成功し、早速家の中で履いて、キティちゃんのキの字も出さずにうれしがって歩き回っている。

身につけるものをネットで買うといえば、返品OKの通販サイトで目に留まったものをまとめて買い、とっかえひっかえ試着した上で気に入ったもの以外を返品するという達人ワザもあるらしい。今のわたしが何よりも欲しいものは時間で、店まで出向かずに買い物ができるのはありがたいのだけれど、人と会わないでモノを手に入れる便利さに慣れてしまうと、店員さんとのやりとりが億劫になりそうな気がする。面と向かって言うストレスを避けてメールで済ませるように、自分も世の中もどんどん対面指数の低い方向へ流されていくのではないか、とふと不安になる。

2008年03月16日(日)  マタニティオレンジ253 はじめて叱られて、すねる
2007年03月16日(金)  幻の魚・たかべとダンナ母語録
2005年03月16日(水)  春はお茶が飲みたくなる季節
2003年03月16日(日)  Q.生まれ変わったら何になりたい?
2002年03月16日(土)  『風の絨毯』高山ロケ1日目


2009年03月15日(日)  大麦工房のダクワーズ

わが家に届いた危険物、それは栃木の大麦工房のダクワーズ。以前購入したことから定期的に商品案内が届くのだけど、「非売品のいちごのダクワーズ」プレゼント企画に飛びつき、ひさしぶりに購入した。外はさくさく中はふわふわの皮でアーモンドクリームをはさんだダックワーズ(小さい「ツ」が入るほうがおいしそう)は好物で、あちこちのお店のものを食べたけれど、大麦工房のものが圧倒的においしい、と食べてみてあらためて思う。ブランド名にもある「大麦」の粉の香ばしさと甘さが何とも言えない。最近オーブンを新調したそうで、言われてみれば確かにいちだんとおいしく焼き上がっている気がする。4個入りの一袋が525円。税抜き125円で買える最高の幸せだと思う。

わたしに似て甘いものに目がない娘のたまに与えるのは危険だと思いつつ、喜ぶ顔も見てみたくて、ひとつあげてみると、「こんれ、おんいしいね〜」と目を見張って頬張り、瞬く間に平らげ、「もっとばべる〜」。ひとつだけよと諭すと泣き出したので、もうひとつを半分こする。泣くほどおいしいというのは、すごいこと。

プレゼントのいちごのダクワーズは、アーモンドクリームの代わりにいちごクリームがサンドされたもの。2歳児にはこちらのほうが好みのよう。「いちごダクダク」とあだ名をつけ、「いちごダクダクまたばべようね」とせがんでくる。プレゼントキャンペーンは4月末までで、3500円以上のお買い上げで一袋ついてくる。大麦工房のサイトで買うと5%引きで、はじめての人には試食セットも。大麦のチョコレートやゴーフレットやラスクもおいしい。サイトや商品案内からは、お菓子作りにかける情熱や大麦が育つ健康な大地を守ろうという企業姿勢が伝わってきて、それも応援したくなる理由。

2008年03月15日(土)  前田組「豚のPちゃん」に会いに行く
2007年03月15日(木)  マタニティオレンジ94 0歳児は病気との戦い 
2005年03月15日(火)  チラシ大好き
2002年03月15日(金)  月刊公募ガイド


2009年03月14日(土)  はずむ春!保育園のお祝い会

娘のたまが通う保育園のお祝い会に参加する。進級祝いと3歳児クラスの卒園祝いを兼ねた発表会で、入園2年目のたまは2回目。半年がかりの改修工事が終わってすっかり新しくなった園舎のお祝いも兼ねて、うれしいこと尽くしのお祝い会となった。

1歳児クラスの出し物は「ホットケーキできたかな」。園児は3グループに分かれて登場。バスの車掌さんになるグループ。マイクを手に歌うグループ。ホットケーキの材料を買いに行くグループ。最後は全員でホットケーキを食べる。歌うグループのたまは、「おおがたバスにのってます。きっぷをじゅんにわたしてね〜」の歌を一人で披露。観客を前に緊張したのか声はか細く消え入りそうで、ついには歌の途中で消えてしまったけれど、昨年は終始指をくわえていたのに比べれば目を見張る進歩(でも,家に帰って「うまくいかなかった。しっぱいした」と反省していた。上がり症だけど負けず嫌いらしい)。布のホットケーキを食べる仕草に個性が現れて、本物のように上手に食べる子もいれば、持っているだけの子もいる。たまが受け取った瞬間に投げたのには驚いた。すぐに拾ったけれど、「本物じゃなきゃイヤ」という食い意地が見えた気がした。

お祝い会の出し物を見ると、「たまがうちでやっていたあれは、これだったのか」と謎が解ける場面がいくつかあり、意味不明の歌の全貌が見えたり、ダンスの出どころがわかったりした。「キュッキュー(=ショップ99)でこむみこ(=小麦粉)買うの」と最近しきりに言っていたのは、ホットケーキの粉を買い物する場面があったからだった。

来賓を代表して近所の小学校の校長先生から祝辞。これが見事で、大人も子どもも虜にするスピーチのお手本のようだった。「おじさん、食いしんぼだからね、あれ、ぜんぶ食べたかったな」などと演目に登場したものを引き合いに出しながら全部のクラスを褒め、最後に「来年からは小学校でも英語をやります。そこで、今日はひとつだけ英語を教えます」とSPRINGを紹介。「春という意味の他に、ジャンプするという意味があります」と飛び上がってみせた。

2008年03月14日(金)  MCR第27回本公演『シナトラと猫』
2007年03月14日(水)  マタニティオレンジ93 マタニティビクスの恩師・菊地先生
2002年03月14日(木)  『風の絨毯』記者発表


2009年03月13日(金)  「過去を脚色するクセ」は職業病?

昨日観た『チェンジリング』の「子どものために戦う母親」からの連想で、わたしが小学生の頃に母が関わっていた運動のことを思い出した。当時、大阪の堺市の大半の小学校にはプールがなかった。その建設の陳情のために市役所を訪ねたりビラを配ったり署名を集めたりする活動に母は関わっていた。わたしは小学校中学年から高学年だっただろうか。チラシのなかに、ため池で溺れた子どものことが載っていたのをよく覚えている。小学校にプールがあり、水泳の授業で泳げるようになっていたら、溺死の悲劇は避けられたのではないかとビラは訴えていて、それを読んでわたしは「なぜプールが必要なのか」を納得した記憶がある。

わたしの中では、ため池に落ちた子どもを喪った母親が「悲劇を繰り返さないために」と立ち上がり、運動が広がった、というストーリーができていた。そのことを昨夜母に電話して確かめたところ、「ため池の話? なんやそれ?」という反応で、母の記憶からは抜け落ちていた。プールの必要性を説くために引用された事故なのではと母は推察し、「臨海が埋め立てられ、それまでプール代わりだった海で泳げなくなり、学校にプールが必要になった」ことが運動の始まりだったと教えてくれた。記憶を脚色してしまうのは脚本家の職業病なのかもしれない。

これは母には電話で話さなかったけれど、運動に関わっていた母をわたしはかっこいいと思っていた。母が一度だけ、「いろいろ言う人おるけどな、お母さんはこれが正しいと思ってるねん」と唐突に語ったことがあった。たぶん、誰かに何かを言われた直後だったのだろう。わたしが卒業して何年か経って、わが小学校にもプールが作られた。

きっかけが何であれ、何かを変えるための運動にはエネルギーが要る。昨日の『チェンジリング』からもアメリカの大統領選からも感じたのは、チェンジの起爆剤となるエネルギーを個人が発揮する光景が日本からは急速に失われているということ。その理由のひとつに「あきらめムード」があるような気がする。やっても何も変わらないから最初からやめておこうという気分が省エネにつながっている。わたしもその一人で、「関心を寄せる」という最小限のエネルギー消費さえ惜しんで政治や社会の混迷を眺めていたりする。忙しい、余裕がない、面倒くさい……言い訳はいろいろ思いつくけれど、自分がやらなくてはという気持ちが希薄なのだ。だから、使命感と信念を持って壁に立ち向かう人を見ると、眩しさと頼もしさを感じる。『チェンジリング』を近くで見ていた観客の女性が連れの女性に「泣き寝入りした人も大勢いたでしょうに」と話しているのを聞いて、「立ち上がるの反対語は泣き寝入りする」で、その中間に「傍観する」があるのではと思った。

2008年03月13日(木)  マタニティオレンジ252 「自由になる時間」はプライスレス
2007年03月13日(火)  マタニティオレンジ92 ダンナのおむつ替え確率
2006年03月13日(月)  ヘレンウォッチャー【ヘレンパン編】
2005年03月13日(日)  宮崎美保子さんの四角い指輪


2009年03月12日(木)  「卵」の母が「壁」に挑む映画『チェンジリング』

日比谷の日劇で『チェンジリング』を観る。冒頭の「A TRUE STORY(真実の物語)」がなかったら、ここまで救いのない話にしなくても、と脚本を責めたくなるところだけど、1928年のロサンゼルスで実際に起きた事件が原作になっている。行方不明になった子どもとは別な子どもが警察の手によって母親の元に帰され、「この子はわたしの子じゃない!」と本当のことを主張した母親が警察の手によって押さえ込まれていく。彼女の子どもを誘拐し、手をかけたらしい犯人が見つかると、今度は警察が追い込まれるのだが、母親は警察と殺人鬼の二つを相手に真実を求める戦いを続ける。相手が警察であろうと殺人鬼であろうと、母の願いはただひとつ、息子を返して欲しいということ。その強さが彼女を突き動かし続け、「彼女は生涯息子を探し続けた」という内容のテロップで映画の幕は閉じられる。

本来は最も大きな敵になるはずの犯人よりも警察との戦いの激しさ、厳しさに圧倒される。口封じのために精神病院へ送り込むという暴力は、息子を奪われた母親にさらなる追い討ちをかける。息子の存在を殺したと思われる犯人の罪と、息子を信じる母の気持ちを殺そうとする警察の罪。その二つの罪の重さを前に、「尊厳」について考えさせられた。たとえ肉体を傷つけなくても、尊厳を奪うことは殺人になるのではないかと。

それでも、アンジェリーナ・ジョリー演じる母は、子どもを信じることをやめず、その希望を杖にして、何度も何度も絶望から立ち上がり、わが子を取り戻す戦いを続ける。「卵と壁」、村上春樹さんのエルサレム賞受賞講演に登場した例えが彼女の姿に重なった。警察、マスコミという権力を前に無力な卵が体当たりする、そんな勝ち目のない孤独な戦いに挑み続ける母の強さは、子宮から産まれるのだろうか。産まれるまでの9か月を一体になって過ごした子と母は、へその緒を切り離されても、見えないへその緒でつながっているのかもしれない。わたしの頭の中には横田早紀江さんの顔が浮かんでは消え、死刑囚となった息子の無実を訴え続けて無罪を勝ち取ることに一生を捧げた斎藤ヒデさんの訃報記事や、民家に米軍機が墜落した事故で全身を焼かれた土志田和枝さんが、すでに亡くなった息子たちの無事を信じて治療に耐えた悲しい事実が思い浮かんだ。

一観客としての好奇心と職業的な興味から、映画を観終わった後、劇場を後にする人たちが口にする感想につい耳を傾けてしまう。最近の映画、とくに邦画は口当たりと消化のよいものがふえているけれど、苦くて飲み込みにくくて胸焼けを起こさせるこの作品は、後味の悪さや消化不良を残す。それを解消する薬を自分の言葉に求めるかのように、いつになく観客が饒舌になっていたのが印象的だった。

2008年03月12日(水)  豚とクローバーとオレンジのトイレットペーパー
2007年03月12日(月)  マタニティオレンジ91 歴史は繰り返す
2005年03月12日(土)  しみじみ映画『きみに読む物語』
2004年03月12日(金)  『ジェニファ』マスコミ試写開始
2002年03月12日(火)  FOODEX


2009年03月11日(水)  辞書のご近所さん

「チェンジリング」を英和辞典で調べたついでに、新明解国語辞典を引いた。「チェンジリング」は載っていなかったけれど、ひさしぶりに開いた国語辞典を眺めていると、新たな発見があって、しばらく遊んでしまった。子どもの頃、辞書である単語を引いて、説明に出ている同義語をさらに引き、一人連想ゲームのようなことを楽しんでいたけれど、今回の遊びは「ご近所さんごっこ」。並び合う単語を見て、「これの隣にこれが?」という驚きは、有名人の交友関係を聞いて、「あの人とあの人が親しいんだ?」と反応するのに似ている。こちらが予想もしないツーショットや予想を裏切る距離感が面白い。

「きふじん(貴婦人)」と「ギブス」。「ギプス」という音には上品な響きがある印象を持っていたけれど、この並びを見ると、ますますそう思う。
「おなみだ(御涙)」と「おなら」。体の上のほうから出るものと下のほうから出るものが仲良く並んでいる。
「くつずれ(靴擦れ)」と「くっせつ(屈折)」。靴擦れしたときのやりきれない気分が、単語二つから浮かび上がる。
「かなしむ(悲しむ)」と「かなた(彼方)」。この二つが並ぶと、美しい詩のようだ。
「わがはい(我が輩)」と「わかはげ(若禿げ)」。「我が輩は若禿げである」氏の顔が浮かぶ。

並べてみると確かに似ている「かなづち」と「カナッペ」、「ハイヒール」と「ハイビスカス」、「マーガリン」と「マーガレット」。取り合わせの妙がそのまま小説のタイトルに使えそうな「オニオン」と「おにがしま(鬼が島)」、「じいん(寺院)」と「ジーンズ」、「マングローブ」と「まんげきょう(万華鏡)」。この二語の間に他の単語が入り込まないのが意外で面白い。

「ちかう(誓う)」と「ちがう(違う)」、「おとり(囮)」と「おどり(踊り)」、「かくらん(撹乱)」と「がくらん(学ラン)」、「しいたけ(椎茸)」と「しいたげる(虐げる)」などは「濁点ひとつや一文字で別物になるんだな」という発見がある。「おとひめ」と「おとめ」は、一文字減らしてもイメージのギャップはあまりない。

「つばさ」のお隣は「つばぜりあい(鍔迫り合い)」。3月30日から始まる朝ドラ「つばさ」は第一週から繰り広げられる親子の鍔迫り合いもひとつの見どころだが、この二つが辞書で隣り合わせていたとは。そこで「ドラマ」を引いてみると、「トラホーム(=慢性で伝染性の結膜炎)」と「ドラマー」に挟まれ、3つ前には「トラブル」がある。病気や災難にはできればお近づきになりたくない。「映画」の前後は「詠歌」と「栄華」、3つ前には「永遠」、4つ後には「栄冠」と想定の範囲内の耳障りのいい単語が並ぶ。わが職業の「脚本」はというと、「客分(=客として待遇されること)」「客坊」「脚本」「客間」「客待ち」という並び。「客分」の前には「逆風」が、「客待ち」の後には「逆戻り」があり、浮き沈みの激しい商売をご近所さんが暗示しているようで、考えさせられた。

【お知らせ】『ぼくとママの黄色い自転車』は8/22公開

3年ぶりの映画の公開日は、奇しくも娘のたまの3歳の誕生日。この偶然は幸運の兆し? 公式サイトbokumama.jpでは特報(予告)映像も見られます。

2008年03月11日(火)  マタニティオレンジ251 一日一万アッハ(aH)
2007年03月11日(日)  『のど自慢』チャンピオン大会
2005年03月11日(金)  絶対王様公演『やわらかい脚立』
2004年03月11日(木)  岩村匠さんと再会
2002年03月11日(月)  漫画『軍鶏』


2009年03月10日(火)  『チェンジリング』取り違え事件

わたしが仕事で忙しく、娘のたまをダンナの実家に預けた先週末のこと。ご近所仲間のT氏にダンナがメールで遊びの誘いを持ちかけると、あいにく都合がつかないという返信に「一人で『チェンジリング』でしょう」と孤独な週末の過ごし方の提案があった。

チェンジリングという言葉にダンナはピンと来なかったが、「カギカッコがついているから映画のタイトルだろう」と思い、「参考にします」と返信した後で、わたしに「これ、どういう意味?」と携帯電話のメール画面を見せた。「『チェンジング』っていう映画があるけど、それと間違えているのかも」とわたしが言ったのをそのままT氏あてに送ると、「『チェンジング』ではなく『チェンジリング』です!」と怒りと呆れが混じった返信があった。

「子どもの取り違えの話なので、妻はタイトルを取り違えてしまったようです」と言い訳したが、クリント・イーストウッド監督作品を愛してやまないT氏にとって、名前を取り違えるなどケシカランのであった。「それよりT氏の『チェンジリング』(change ring)を見たいものです」と催促してオチをつけようとしたら、T氏は沈黙し、やりとりはそれっきりになった。わたしが知らなかった『チェンジリング』とは、子どもを取り違える言い伝えの言葉らしく、綴りはchangeling。Changeringではなかった。手元のライトハウス英和辞典を引くと、「取り替え子《さらった子の代わりに妖精たちが残すと信じられていた醜い子》、赤ん坊のときにこっそり取り替えられた子」とある。changelingという単語の真ん中にangelが隠れているのが神隠しの呪文めいている。

T氏への言い訳を重ねることになるが、取り違えられたわが子を取り戻すためにアンジェリーナ・ジョリー演じる母親が戦うというこの作品、実はとても注目していて、『チェンジング』という誤ったタイトルのまま「観たい作品ランキング」の上位に位置づけていた。といっても、わたしの場合、観たい観たいと言っているうちに公開が終わってしまうことが多いのだけど、「タイトルは間違っていたけど、関心は本物」を証明するためにも、近日中に観に行こうと思っている。

2008年03月10日(月)  マタニティオレンジ250 No rain,No rainbows.
2007年03月10日(土)  マタニティオレンジ90 存在することがプレゼント
2005年03月10日(木)  おうちでDVDレンタル『TSUTAYA DISCAS』
2002年03月10日(日)  循環


2009年03月09日(月)  自分の子でも知らないことだらけ

棚にある本やらDVDやらを取り出してはおもちゃにしている娘のたまが、一枚のCDを見つけ、「これ、たまちゃんがうまれたひ?」と聞いた。それは、まさにたまが助産院で産声を上げたときにかけていたオーボエ奏者渡辺克也さんのアルバム『ニュイ・アムール』(>>>2006年9月12日 マタニティオレンジ おなかの赤ちゃんは聞いている)。ituneで取り込んでMacで再生し、「たまが生まれたときの曲よ」とは教えていたけれど、たまが生まれてからCDをかけたことはない。なのに、なぜ、曲とジャケットが一致したのだろうかと謎が膨らむ。わたしの記憶から抜け落ちただけで、ジャケットを示して教えたことがあったのだろうか。子どもには動物的な勘があるのかもしれない。たとえば、「今日は仕事が遅くなりそうだから、スポット(=単発)で延長保育をお願いしようか」という考えがよぎったのを見透かすように、「きょう、シュポット」などと聞いてくる。

保育園やダンナの両親に見てもらう時間が長いということは、わたしの知らない娘がふえるということ。いつの間にか仕入れた言葉や知識を披露され、驚かされることの連続だ。今朝、保育園へ送ると、自分の引き出しからシャツを取り出し、「こうやってたたむの」と畳み方を実演してくれた。まず、袖を内側に折り曲げ、下半分を上半分に重ね、最後に縦半分に畳む。「お布団も上手に畳むんですよ。おうちでお母さんがやってるのを見ているからなんですね」と保育士さんに言われて、あわてた。うちでは取りこんだ洗濯物が山積みのまま放置されている。

「たまが突然、服を畳み始めたんですけど、おかあさんが教えてくれたんですか?」とダンナ母に電話で問い合わせると、「教えたわけじゃないんだけど、私がやってるのを見て、たまちゃんもって一緒にやってたわ」。子どもはちゃんと見てるのねえ、と二人でしみじみと感心した。「そういえば、『たまちゃん、おとなになったらワインのむ』って言ってたわよ。お宅で教えたの?」とダンナ母。ここ数か月、うちでワインを飲む機会はなかったから、それは保育園のお友だちに教わったのだろうか。わたしの行き届かないところで、娘はしっかりと生きる知恵を身につけている。

2008年03月09日(日)  マタニティオレンジ249 「野菜バイバイ」にバイバイ作戦
2007年03月09日(金)  マタニティオレンジ89 4月から0歳児保育
2006年03月09日(木)  ヘレンウォッチャー【松竹本社編】
2002年03月09日(土)  映画『カンダハール』


2009年03月08日(日)  小林涼子ちゃん初舞台『ロミオとジュリエット』

子ぎつねヘレン』の矢島美鈴役、『ブレスト〜女子高生、10億円の賭け!』の佐々木操役、『ドクターヨシカの犯罪カルテ』(坂上かつえさんと共同脚本)の藤崎莉奈役と今井雅子脚本作品にいちばん多く出演してくれている小林涼子ちゃんの初舞台『ロミオとジュリエット』を観る。東京グローブ座の客席を埋めたのは、見渡す限り女性(圧倒的に若い!)。男性率は1%あるかないかというところで、「キュン」というトキメキ音が四方から聞こえてきそうな感じ。ロミオ役の上田竜也さん、ジュリエットの従兄弟ティボルト役の長谷川純さん、ロミオの親友マキューシオ役の山下翔央さんなど乙女のハートを射抜く美男子キャストぞろいな上、小林涼子ちゃんのファンも女の子が多いそう。

脚本は数々のドラマのほか、『電車男』『7月24日通りのクリスマス』など映画でも活躍されている金子ありささん。舞台は初めてということだが、現代的な台詞回しでシェイクスピアの世界を時代設定はそのままに、今の若者に通じる話に仕立てた。休憩を挟んで3時間になりそうな大作を2時間にぎゅっと凝縮したことでテンポ良く物語が運ばれ、笑いをまぶしつつクライマックスでは場内をすすり泣きの嵐に巻き込むさすがの出来映え。その脚本に命を吹き込む役者陣も達者で、とくに若い出演者が思いのほか滑舌が良く、台詞を自分のものにしていたことに目を見張った。

お目当ての小林涼子ちゃんは、ぐっと大人っぽくなったけれど少女の可憐さも遺していて、いちだんと輝きを増していた。用意していただいた席が舞台正面の前から3列目という目が合いそうな距離で、大きな瞳に吸い込まれそうになりながら、見とれてしまった。着せ替え人形のように次々と変わるドレスはどれもよく似合い、長い手足とバレエ仕込みの美しい動きが映えた。とくに舞踏会での猫の仮装ドレスは、ロミオでなくとも恋に落ちてしまう愛らしさ。内面のキラキラしたものがそのまま瞳の輝きや表情のきらめきに現れているような涼子ちゃんの魅力は、恋にときめくジュリエットの役柄に良く合っていて、生き生きと舞台を動き回ると、ピクシーダストの軌跡が見えるようだった。初舞台の初々しさと持ち前の度胸のバランスも、愛すべきジュリエットを作り上げていた。

悲劇のラストの余韻さめやらぬなか、カーテンコールのお辞儀に出演者の感激と感謝がこもっていて、そこにまた、じいんとしてしまった。最後は、客席総立ちで拍手の嵐。

終演後、涼子ちゃんの楽屋へ。わたしのおなかが大きいときにマネージャーの宇井さんを交えてお食事をしたきりで、おなかから出てきた娘が2歳半ということは、3年近く会っていないことになる。以前イギリス旅行をしたときに、シェイクスピアの里、ストラットフォード・アポン・エイヴォンのシェイクスピア劇場で『ロミオとジュリエット』の台本の豆本と目が合って日本に連れて帰ったのだけど、それは今日涼子ちゃんにプレゼントするためだったのだ。子ぎつねヘレンを撮っていた頃、涼子ちゃんが「今、星の王子様を訳しているんです」と言っていて驚いたのだけど、それが英語ではなくフランス語で、二度驚いたことも懐かしい。舞台を観て、あらためて、また作品をご一緒したい、と心から思った。

2008年03月08日(土)  マタニティオレンジ248 十人十色のお祝い会
2007年03月08日(木)  身につまされた映画『ドリームガールズ』
2006年03月08日(水)  innerchild vol.11『PANGEA(パンゲア)』
2004年03月08日(月)  勝地涼君初舞台『渋谷から遠く離れて』
2002年03月08日(金)  言葉の探偵、『天国の特別な子ども』を見つける。


2009年03月07日(土)  イタリアの風に吹かれる会

新潟で働きながら子育てしているコピーライター時代の先輩、クリピロ様が上京するというので、代々木のイル・ペンティートというピザが自慢のお店に集まる。この店にしたのは、「イタリアの風に吹かれたい」とクリピロ様のリクエストがあったからとのこと。集まったのは、広告会社の同僚だったミチヨ様、ヤマムロ様、わたしと、ヤマムロ様の大学時代の友人でクリピロ様とは旅行仲間のカヨちゃんとスガ嬢。

クリピロ様はミチヨ様を見るなり、「おお、ニュウカン!」と歓声を上げ、「ニュウカン管理官」に変身。入管ではなく乳間で、美しき谷間をそう称する。「このごろ、すっかりニュウカンマダム(有閑ではなく乳間)よ」とミチヨ様。下着のようなキャミソールドレスの下に着けるのは「黒の水着」が自然なラインを出せるとのこと。勉強にはなるが、わたしの土管体型では参考にはできない。「産後しばらくはわたしも巨乳だったんですけど」と言うと、「いくつぐらいまであげられるの?」とヤマムロ様。「子どもがいくつ(何歳)になるまで母乳をあげられるの?」という意味の質問で、わたしもそう理解したのだけど、「2サイズぐらいは上げられるよ。BカップがDカップに」とクリピロ様。母になっても思考回路は女、ごリッパです。

満席の店内は活気にあふれ、汗ばむ陽気で、「ここをローマと思おう!」とクリピロ様。乾杯はスパークリングワイン。「泡見ると、この二人興奮するから」とヤマムロ様がわたしとクリピロ様を指差す。泡度数の低い生活をしている子育て中の二人。でも、「子どもを置いて、夜出歩くのなんて、いつぶりだろ」とクリピロ様が遠い目をして言うのを聞くと、わたしはずいぶん出歩かせてもらっているなと思う。昨秋に『セックス・アンド・ザ・シティ』の映画が先行公開されたときもクリピロ様は上京して六本木ヒルズで鑑賞した後、人一倍はじけて泡グラスを空けていたらしい。

「イタリアの風吹いてる?」と言いながら、焼きたての薄焼きピザを頬張り、よく飲み、よくしゃべる。今も広告会社に残っているミチヨ様とヤマムロ様の話は、映画やドラマの業界よりも弾けていて、映画やドラマよりもドラマティックで、『セックス・アンド・ザ・シティ』を地で行っている。広告業界はかなり不景気で、わたしがいた会社も大変な状況らしいけれど、お姉様たちは相変わらず威勢が良くて、頼もしい。

別れた彼氏から食事や貢ぎ物をされることを「手切れ金」ではなく「退職金」あるいは「年金」と呼ぶ話(つきあっていた若い頃は貧乏だった彼氏が出世して金回りが良くなると、恩返しされる)。「女は性格別に島に振り分けられる」話(「ニューハーフ島」「ボーイッシュ島」「手づくり島」「魔女島」などがあり、自己完結していて営業力がある者はニューハーフ島、自己完結しているが営業力がない者は手づくり島行きとなる。わたしは手づくりが得意ではないけれど、営業力に欠けるため手づくり島行きらしい)。興味深い女子ネタを集めて一冊の本が書けそうだし、ドラマにもなりそう。部下の男の子たちが震え上がり、得意先にも気を遣われているというヤマムロ様、そのヤマムロ様が「ミチヨ様」と呼ぶせいで、むちゃくちゃ恐ろしい人と思われてひれ伏されているミチヨ様は、そのままキャラクターに使えそう。

「パリの『ハワイ』という名のヴェトナム料理屋でコリアンに話しかけられて」というクリピロ様の思い出話も面白かった。クリピロ様が夢中で麺をすする横で、ミチヨ様は精一杯の愛嬌をふりまいて、コリアン旅行客の話し相手を務めていたらしい。クリエイターでありながら天性の営業力を発揮してしまうミチヨ嬢はニューハーフ島の住人。加齢に反比例して年々美しくなるその秘訣を聞かれて、「美は努力」と言い放つ、「オンナ力」の磨き方と活かし方の鑑のような人。先日カヨちゃんとヤマムロ様が今夜のお店に来たときにミチヨ様の噂をしていたのを、あまりの大声とその内容のインパクトにシェフが記憶していて、「もっと感じの悪い人を想像してたら、かわいい人だったんですね。お近づきのしるしに」と人数分のアイスピーチティーをごちそうしてくれた。ピザもワインもデザートも会話もおいしくて、イタリアの風をしっかり感じた。

2008年03月07日(金)  マタニティオレンジ247 ヒヤリハットで済んだ話
2007年03月07日(水)  マタニティオレンジ88 笑いの効能
2006年03月07日(火)  ヘレンウォッチャー【全国からありがとう編】
2002年03月07日(木)  誤植自慢大会


2009年03月05日(木)  2歳児の言いまつがえ

娘のたまと二人で晩ごはんを食べていたら、「パパのブラブラは?」とたまが言い出した。パパのブラブラとは何ぞや?と思考回路を高速回転させていると、「パパ、おそとでばべてくるの?」と言う。ブラブラはおかずの天ぷらのことで、「パパの分は取っておかなくていいのか」と心配しているのだった。「天ぷら」と一度聞いた音を「ブラブラ」と記憶したと思われる。

外国語や聞き慣れない専門用語などで、大人もこの手の「思い違いゆえの言いまつがえ(言い間違い)」をよくやらかす。コピーライター時代、「V6」を「G7」、「つんく」を「つっくん」、得意先の「たかの友梨」を「かたせ梨乃」と取り違える上司たちの迷言に笑いつつ、「わかるわかる」とうなずいたものだけど、子どもの言い間違いには、大人とはまた違う無邪気な素朴さがあり、それゆえ微笑ましかったり、逆にドキッとさせられたりする。

「大根おろし」を「だいこんころし」、魚の骨を「たね」と呼ぶ初歩的な取り違えは子どもならではで、「シートベルト」がうまく言えなくて「シールベット」になってしまうのもご愛嬌。だけど、洗面器をかぶってエレベーターガールの真似をして、「5かい じぶんうりばです」と言われて、「ズボンうりば」の間違いだと後でわかっても、「自分売り場」という言葉に哲学を感じたりしてしまう。そういえば、大根をすりおろす行為だって「だいこんころし」と言えなくはないし、「ほね」と「たね」だって似ていると気づかされる。

言い間違えとは違うけれど、最近娘が口にした言葉で印象深かったのが、「アメリカ」について語った言葉。「アメリカってわかる?」と知らないことを前提で聞いたところ、「しってるよ。とおいの」と的確な答えが返ってきた。自分が食べているコロッケを取られたくなくて、「パパとママは ごはんたべてな」と別なものをすすめたり、こんな言い方、どこで覚えたんだろうと驚くことを口にする。そのくせ、「たべる」はいつまで経っても「ばべる」で、「すべりだい」は「すれべだい」で、どんな大きさの鳥を見ても「ことり」で、きゅうりまでも「ことり」になっている。

今日の子守話は、ゾウさんが飛ぶ話。最近のいちばんのお気に入りが「とべないちょうちょ」の話で、次が「きりんさんそらとびたい」の話。今日はゾウを飛ばせたいと言うので、「子守話47 ゾウさんパオーン」をアレンジした。

子守話49 そらをとんだゾウ

タマゾウは ふきげんでした。
たんじょうびだというのに パパとママはようじででかけてしまい
もりのひろばで ひとりぼっちであそんでいたのです。
そこに タマゾウのおともだちのゾウたちが
パパやママといっしょに やってきました。
みんな はなにふうせんをくくりつけて うれしそうです。
ふうせんのせいで はながちょっぴりもちあがって
うれしそうなかおにみえるのでした。

タマゾウはますます おもしろくなくて いじけていました。すると 
「タマゾウ おたんじょうびおめでとう」
1ぴきめのおともだちゾウが そういって
じぶんのはなにくくりつけたふうせんを タマゾウのはなにくくりつけました。
タマゾウのはなが ちょっぴりもちあがりました。
さらに3びきのおともだちのふうせんがくわわって
タマゾウのはなは すっかりさかだちしました。

こんどはタマゾウのみぎのまえあしに 4ひきのおともだちゾウが
ふうせんをくくりつけると みぎのまえあしが ふわりとうきあがりました。
つづいてひだりのまえあしも 4つのふうせんで ふわりとうきあがりました。
2ほんのうしろあしでたちあがったタマゾウは 
おとなのゾウよりもおおきくみえました。

さあ いよいよ うしろあしです。
4つのふうせんをくくりつけると みぎのうしろあしが ふわり。
ひだりのうしろあしも 4つのふうんせんで ふわり。 
「うわあ とんだ」
ひろばにあつまったゾウたちが かんせいをあげました。
みんなのふうせんのちからで タマゾウのからだがそらをとんだのです。

まえあしとひだりあしをゆっくりとうごかしてみると
タマゾウのからだはもっとたかくとびあがりました。
おや パパゾウとママゾウが とおくからちかづいてくるのがみえます。
せっせとはこんでいるのは おおきなおおきなケーキです。
パパゾウとママゾウは タマゾウのおたんじょうびをちゃんとおぼえていたのです。

そのとき タマゾウはおもいだしました。
「おたんじょうびのプレゼント なにがいい?」ときかれて
「そらをとびたい」とおねがいしたこと。
パパゾウとママゾウは なかまのゾウたちにたのんで
タマゾウのおねがいをかなえてくれたのです。
「パパ ママ ありがとう」
そらのうえから タマゾウはまえあしをおおきくふりました。

「タマゾウ そらからのながめはどう?」
とママゾウがこえをはりあげてききました。
「さいこう。よくみえるよ」タマゾウはそうこたえましたが
うれしなみだで もりのみどりがにじんで よくみえませんでした。
したのひろばでは そらからふってきたしずくに なかまのゾウたちがびっくり。
おおきなみずたまりができて みずあびをはじめるゾウもいます。

ひろばにおりたタマゾウをかこんで
なかまのゾウたちがおたんじょうびのうたをうたい
みんなでケーキをたべました。

タマゾウのなみだあめがふったあとのそらには
なないろのにじがかかっていました。
ふうせんが そらにおえかきしたようでした。

2008年03月05日(水)  自分の仕事に値段をつける
2007年03月05日(月)  マタニティオレンジ87 プレ離乳食
2005年03月05日(土)  Uzさんの新ユニット『croon』
2002年03月05日(火)  情熱


2009年03月03日(火)  「つばさ」第一週記者試写

脚本協力で参加している朝ドラ「つばさ」の第一週完成披露の記者試写にお邪魔する。まずは15分×6回(月〜金)の90分をスクリーンで上映。『パコダテ人』の前田哲監督に「試写のときは後ろで観るとええよ。みんなの反応が見えるから」と教わったのにならって、いちばん後ろで鑑賞することに。客席の皆さんの背中の角度はおおむね前のめり(後ろに引いていると興味がないということになる)とお見受けする。ところどころでくすくす笑いが漏れ、自分と同じところで笑っている人を見つけると、うれしくなる。「つばさ」は脚本も出演者の演技も演出も住友紀人さんの音楽もノリノリで、あふれんばかりのサービス精神が「これでもか」と注がれていて、観甲斐がある。一度観ただけでは気づかないような細かいところでもかなり遊んでいるのも、小道具好きのわたしにはうれしいところ。

上映後、チーフプロデューサーの後藤高久さん、チーフディレクターの西谷真一さん、ヒロインつばさ役の多部未華子さん、脚本の戸田山雅司さんが記者会見。記者さんからの質問が次々と出て、いい雰囲気。型破りな姿勢はポスターにも現れ、ヒロインつばさが一人で微笑む「これまでの朝ドラ風」ポスターと対照的に、集合ポスターはプロレス対戦告知風で、腕組みして困った顔している朝ドラヒロインというのは、なかなか画期的。「この二面性が『つばさ』です」と後藤プロデューサー。お茶の間のシーンでテーブルの手前が空いている(誰も座っていない)のは、「そこが視聴者の席」だからと西谷さん。自分も玉木家の一員になったような気持ちで騒動に巻き込まれ、喜怒哀楽を共にすると、「つばさ」をいっそう楽しめそう。

一週目を観て、こんなにおとなしいドラマだったのかと思うほど、週ごとにパワーアップしているので、第一週目から観て、慣れていってください。そんな多部さんのコメントが笑いを誘っていた。たしかにどんどんエンジンがかかっているので、朝ドラにしてはかなりぶっ飛んでいるはずなのに、わたしが観た感想も「第一週が普通に見える」ほど。どうか途中で観て振り落とされないように、第一週第一話からお見逃しなく。春の朝ドラといえば4月スタートという思い込みがあるけれど、「つばさ」は3月30日(月)から。カレンダーにぜひ羽根マークを。

お土産に配られたのは、第一週の劇中にも登場する甘玉堂の名物「あまたま」。いい記念なので、日頃子守でお世話になっているダンナ両親に箱入りの半分をお裾分け。あとの半分をダンナと娘のたまと分けようとしたら、「たまちゃん あまたま たべないよ」。名前を聞いて、共食いだと思ったのか。1/4個を味わったあまたまは、いもあんとこしあんという好物の二重奏で、後を引く味。このところ甘いもの用の別腹が肥大傾向にあり、今日はパウンドケーキ2切れとロイズのナッティバー3本を食べてしまったけれど、あまたまなら10個は行けそう。商品化されてしまったら、増量キャンペーンに歯止めがかからなくなりそうで、危険。

2008年03月03日(月)  マタニティオレンジ245 みつけものとなくしもの
2006年03月03日(金)  ちばっちと亀ちゃんの舞台『Soulmate』
2005年03月03日(木)  南イタリア魚介料理『ラ・スコラーレ』
2002年03月03日(日)  文京区のスポーツクラブ


2009年03月02日(月)  わたしの頭の中に住んでいる人

ぽけっと道を歩いていて、ふと、おばあちゃんのことを思い出した。父のお母さんで、わたしが生まれてから幼稚園の一年目まで、すぐ近所におじいちゃんと住んでいた。わたしの一家が引っ越して、少し遠くなってしまったけれど、わたしの高校がおばあちゃんちからバスで5分程の距離にあり、高校生になってからはちょくちょく遊びに行っていた。

高校2年の夏から留学することが決まり、おばあちゃんに告げた日のこと。一年間会えなくなるのを淋しがるのではないか、アメリカなんて危ないと心配するのではないか、そんな思いから、切り出すときには少し勇気が要った。「おばあちゃん、わたし、アメリカの高校行ってくる」と言うと、「それはええことやな」とおばあちゃんは心から喜び、応援してくれた。それから一年間、おばあちゃんはわたしに、わたしはおばあちゃんに何通も手紙を書いた。おしとやかであまり自分の意見を言わない印象があったおばあちゃんが、手紙ではよくしゃべった。

そして、わたしが大学4年の冬、おばあちゃんは肺炎をこじらせて、あっけなく亡くなった。お葬式で、わたしは自分でも驚くほど泣いた。それから間もなく温泉旅行へ行き、大浴場の湯船に一人で浸かりながら、おばあちゃんはもういないんだなとしみじみと思った。

おじいちゃんに会えば、おばあちゃんを思い出したし、家族と昔のことを話せばおばあちゃんが登場したけれど、おじいちゃんが亡くなり、家族とも離れて暮らすようになり、おばあちゃんにつながる手がかりがまわりから消えていき、おばあちゃんのことを思い出さない日がふえていった。気がつけば、今年は、おばあちゃんが亡くなった12月にも、おばあちゃんの誕生日の2月にも、おばあちゃんのことが頭をよぎらなかった。その分を取り戻すように、今日、おばあちゃんの記憶が顔をのぞかせたのかもしれない。

亡くなった人のことを心にとどめておくことが何よりの供養であり感謝だと思うけれど、時間が経つと、思い出の玉は記憶の底に沈んでいき、きらめきは錆びついていく。それが淋しく、悲しい。年に何度か、そのことに思い当たって立ち止まり、きゅうんと宗を締めつけられる。その息苦しさには、いつか自分が誰かの心の中に引っ越し、やがて忘れ去られることへの恐怖が加担している。

そのとき、古い記憶を引っ掻き回した勢いで、ずっと前に新聞で読んで目に留めた詩のようなものが蘇った。「私が死んでしまったら、私の中にいるお父様はどこへ行ってしまうのだろう」。うろ覚えだけれど、そのような内容で、わたしが漠然と抱えている不安や怖れを言い当てていた。わたしは山頭火の言葉だと記憶していたのだけれど、山頭火の遺した句などを調べてみても、それらしきものが見当たらない。どなたの言葉で、正確には何と発したのだろう。

(後日談)
日記を読んだ妹より「『おじいちゃんに会えば、おばあちゃんを思い出したし』となっているけど、おじいちゃんはおばあちゃんより先に亡くなってるよ。たしか2年くらい早い。おじいちゃんが亡くなってから、おばあちゃんはカラオケやって生き生きしてたよ」と指摘があった。おばあちゃん亡き後のおじいちゃんがどうもうまく想像できないと思ったら、おじいちゃんのほうが先だったのだ。ほんと、記憶って頼りないとあらためて思った。

2008年03月02日(日)  マタニティオレンジ244 二回目のひな祭り
2007年03月02日(金)  マタニティオレンジ85 孫をかわいがるのは人間だけ
2006年03月02日(木)  シナトレ5 プロデューサーと二人三脚
2005年03月02日(水)  昭和十六年の教科書
2002年03月02日(土)  手づくり


2009年03月01日(日)  乾電池でガスが点く

思い返せば去年からガスコンロの火が点きにくくなっていた。着火までの時間が日に日に延び、ガスがずいぶん出てからボッと点くので、危うく髪を焦がしそうになったことも二度三度。掃除怠慢による目詰まりが原因だとばかり思っていたのだけど、昨日の朝、3つあるコンロがすべて何度やっても点かないという事態になり、故障を疑った。

困ったときは、まずネット検索。「ガスは出ているのに火が点かない」で調べてみると、ずばり同じ悩みを抱えた人が質問掲示板に書き込んでいて、「乾電池が切れているのでは」という回答がある。電池が切れてガスが出なくなるということがあるのか。そこで、東京ガスのサービスステーション、エネスタに電話で問い合わせてみる。「すみません。ガスが出ているのに、火が点かないんですが」。応対に出た女性に、「ガスが出てる? ガス漏れですか?」とあわてられ、「いえ、ガスが出てるではなく、ガスは出るのに火が点かない、です」とこちらもあわてて修正。「この時期ですと結露なども原因に考えられますが、最後に乾電池を取り替えられたのはいつでしょうか」との答えを得た。

最後にどころか、結婚するときに越してきて8年あまり、コンロの電池を替えたことは一度もなかった。早速取り替えてみると、あら早い。ひねると同時に火が点いて、あっさり問題解決。それにしても、なぜ電池で火が点くのだろう。ガスのくせに最後は電気頼みというのが腑に落ちない。火を点けるたびに電池を使う割に8年も持つということは、電池の貢献度は極めて低いのかもしれない。会社勤めしていた頃は家で料理するのも週末ぐらいで、ガスコンロの出番が少なかったことも電池の延命につながったのだろうか。「8年もよく持ったね」とダンナに言うと、「我々だって8年持った」。結婚生活も消耗品で、お取り替えがあるのでしょうか?

2008年03月01日(土)  マタニティオレンジ243 お気に入り絵本『わたしのワンピース』
2007年03月01日(木)  マタニティオレンジ84 「おなかの皮で風呂水」伝説
2005年03月01日(火)  ビューラー巻き巻きに挟み撃ちされる
2002年03月01日(金)  『たまねぎや』と『サムラート』

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