2009年02月28日(土)  およめさん、チューしてたね。

会社時代の同期の結婚パーティに出ようと、玄関でブーツを履いていると、奥の部屋で遊んでいた娘のたまが、飛び出して来て、抱きつき、泣きつき、出られなくなってしまった。仕事だとわかっているときは、泣いても無駄だとわかって引き下がるのだけど、2歳児の察しの良さで「今日は泣けばなんとかなる」と思ったらしく、しつこく泣きすがる。「この状態で置いて行かれては困る」という子守役のダンナの視線も感じ、連れて行くことにした。

子連れで大丈夫だろうか、でも行けば何とかなるか、と向かった先は広尾のWALNUTというお店。入口を入ると、元同僚が次々と現れ、年賀状で顔を見ているたまのことも歓迎してくれた。奥へ進むと同期集団が立ち飲みしているコーナーがあり、壁際のチェストの上にたまを座らせた。パンやサラダやパスタなど、たまはせっせと食べ、お店のトイレでもしっかり用を足し、いろんな人にかわるがわるだっこされ、ずいぶんくつろいでいた。

新郎ナカジ君は、同じく同期のシモゾノ君とともに、わたしの結婚パーティの司会を務めてくれた。シモゾノ君の発案で、秋田の保存協会から借り受けたナマハゲ姿というインパクトのある司会だった。わたしの本『ブレーン・ストーミング・ティーン』の広報部長を自認して、知り合った女の子たちに本を渡して広めてくれた。合コンの名手で、あまりに回数を重ねたために、ついに以前合コンで会った女の子と別な合コンで再会し、「東京は一巡した」と思ったという。そのせいかどうか大阪支社に転勤し、そのまま会社をやめて、大阪の企業に転職した。

そんなナカジ君と新婦のなれそめが合コンだったのか聞きそびれてしまったけれど、元レースクイーンという彼女は心身ともに健康そうなハツラツとした美人さん。新婦をキャンペーンガールに仕立てたビールのポスターを同期のアートディレクターのトオヤマ君とヒダイ君が作り、壁に張り巡らせていたのけれど、あまりの自然さに「え、これ、お店のポスターじゃないの?」という反応が見られた。

去年の秋に初めて披露宴に出て以来、たまは「およめさん」に興味津々で、お店に向かう前から「およめさんどこ?」。新婦のドレスに目が釘づけになり、新郎新婦のなれそめとバリ島での結婚式の模様を納めたビデオを食い入るように見つめ、とくに結婚式での誓いのキスに、まばたきもしないで見入っていた。

最近ダンナのチュー攻撃が激しくなり、たまはこのしつこいキス魔をパパとは別な「チュウマン」というキャラクターとして位置づけ、「チュウマンこないで」と拒絶したり、機嫌がいいときは「チュウマンとあそぶ」と歩み寄りを見せたりしている。そんなたまにとっては、「ここにもチュウマンがいる!」という驚きの瞬間だったのかもしれない。結婚パーティにつきもの(?)の「だっこチュー」コールを浴びての新郎新婦のキスにも身を乗り出していた。

よっぽど印象に残ったのか,家に帰ってからも、「およめさん、チュウしてたね。いっぱいチュウしてたね」とたま。おみやげのハートの缶入りチョコレートをうっとりと眺めながら、「またけっこんしきいこうね。およめさんみようね。ハートもらおうね」。ハートのおすそわけ、たくさんごちそうさま。ナカジ君、お幸せに。

2008年02月28日(木)  魔法にかかって初TOCCA
2007年02月28日(水)  推定年齢
2006年02月28日(火)  絵本『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』打ち上げ
2005年02月28日(月)  フリーの人の確定申告
2004年02月28日(土)  「ブレーン・ストーミング・ティーン」著者贈呈本
2003年02月28日(金)  2003年2月のカフェ日記
2002年02月28日(木)  ヘンな弟よっくん


2009年02月27日(金)  魔法の粉ごっこ

明日マンションの配水管に水を通す作業があるので、水まわりをきれいにしておこうと思い立つ。娘のたまにボロ布を与え、「魔法の粉ごっこをしよう」と呼びかけると、その魅惑の響きに騙され、「まほうのこなごっこ、する!」と乗ってきた。京都のスーパー家事執行人メグさんが置いて行ってくれた魔法の粉=重層を洗面台にふりかけて、ゴシゴシ。心を込めて磨くと心の中も磨かれて精神状態にもよろしいらしい。面白くなってきて、ドアについた手垢もゴシゴシ。

掃除をしながら、いろんな話をする。もうこんなにしゃべれるのか、いつの間にこんなことを覚えたんだろ、と驚かされる。「アメリカ」と口にしてしまい、「アメリカ、知らないよね」と言うと、「アメリカ、しってるよ。アメリカ、とおいの」。いつ誰に聞いたのか、世の中を知る手がかりをどんどん仕入れて溜め込んでいる。

子どもの記憶力といえば、「断片を読む力」に感心する。タイヤの欠片だけでメーカー名を突き止める鑑識ばりの観察力と推理力で、たとえば、お菓子の袋の切れ端を見て、それを食べたことを察してしまう。わずか数センチの切れ端で、模様も何もないのに、「ひばばのクッキー」などと具体的なお菓子の名前に結びつける。文字情報をまだ持たず、写真を撮るように記憶しているゆえ、一部から全体を想像する力が優れているのだろうか。そういうわけで、ボロ布の出所もすぐに見破ってしまい、「たまちゃんのふく、きらないで」「パパのパンツ、イヤ」などと注文がつく。

後日談だが、土曜日、待てど暮らせど配水管作業の方は現れず、お知らせのチラシを確認したら、一週間ずれていた。子どもの記憶力はたのもしく、親の記憶力は心もとない。

2008年02月27日(水)  25年ぶりに再読『まぼろしのペンフレンド』 
2007年02月27日(火)  平成18年度確定申告
2005年02月27日(日)  1975年のアカデミー賞映画『カッコーの巣の上で』
2002年02月27日(水)  世の中は狭い。いや、世界が広くなったのだ。


2009年02月26日(木)  「小さい子どもには焼き肉」だったのか!

「文京区立保育園児の食生活状況報告書」なるものを娘のたまが通う保育園から持ち帰る。保育園に子どもを託している家庭の食生活調査の結果をまとめたもので、各設問の回答分布が円グラフになっている。アンケートに答える家庭はきっちりしている傾向があるともいえるが、子ども(幼児)が朝8時までに起床している家庭が95%、親に至っては朝8時までの起床が99%。朝食を8時までに済ませている家庭が87%。朝ドラに合わせて起床し、9時に朝食を終えるわが家の生活を見直さねばと反省する。興味深かったのは、「どのような場所で外食しますか」の設問。「ファミリーレストラン53%」は予想通りだったけど、2位の「焼肉屋21%」が僅差で「回転寿司20%」に勝っていて、「鉄板=火傷=危険」と思っていたわたしは、「小さい子どもには焼き肉だったのか!」と驚いた。

わが家では子連れで焼き肉屋に行ったこともなく、子どもが生まれてからは家で焼き肉をしたをしたこともなかった。去年の秋にマザー牧場へ旅行したときに鉄板で肉を焼いたのが、たまにとっては人生初焼き肉で、そのときの印象が強烈だったのか、マザー牧場を「おにくぼくじょう」と覚えている。うちにある加湿器のギザギザを指差し、「おにくぼくじょう」と言ったのは、ギザギザが肉焼き網に見えたせいらしい。先日越後湯沢へ行って焼き肉屋の前を通りがかったときにも、しきりと「やきにく!」と訴えて、つられてわたしも焼き肉気分が高まってしまったのだけど、調査報告書を読んで、クラスのお友だちから焼き肉屋に行った話を聞いたのかもしれないと想像した。

リクエストに応えてホームプレートで焼き肉をしてみると、アツアツのプレートに手を出すこともなく、おとなしく肉が焼けるのを待ってくれた。親にとっては並べて引き上げるだけなので、こりゃラクチン。子どもは高級肉よりウインナーを喜んでくれるのもありがたい。いいことを覚えてしまい、今日も今週2度目の焼き肉。

2008年02月26日(火)  マタニティオレンジ241 英語の歌を日本語で
2007年02月26日(月)  500円の価値
2005年02月26日(土)  ブラジル物産展
2002年02月26日(火)  数珠つなぎOB訪問


2009年02月25日(水)  もういくつ寝ると朝ドラ「つばさ」スタート


脚本協力で参加している朝ドラ「つばさ」のスタッフジャンパーとTシャツが出来上がり、記念にひとつずついただく。片面に「TUBASA 09」、もう片面につばさが働くことになる「ラジオぽてと」の名前と周波数があしらわれていて、そのまま街でも着られそうなデザイン。オンエア開始はまだまだ先だと思っていたら、「だんだん」が始まり、「次だな」と思っていたら、あと数日で一か月前。打ち合わせのたびに「来ますねえ」「早いですねえ」とドキドキが高まっているところ。映画や単発ドラマの場合、公開あるいは放送のずいぶん前に本作りは終わっているので、世に出る頃にはスタッフは散ってしまっている。ところが連ドラの場合は、第1話が始まるときにはまだ後ろのほうの回の本を作っているので、打ち合わせをしながら「もうすぐですねえ」とカウントダウン気分を味わうことになる。連ドラは『快感職人』しか経験していないわたしには、これが新鮮。

3月30日に始まってからは、「始まりましたねえ」となり、聞こえてくる評判に一喜一憂しながら続きを作っていくことになる。それが半年続くのもまた朝ドラならでは。どんなにロングランの映画でも半年続くということは、なかなかない。そして、一ファンとしてではなく、一スタッフとして朝ドラを観るのも、初めての体験。「ひとみ」以来、娘のたまは8時15分になり、主題歌が流れてくると、朝ドラ始まるよーをアナウンスしてくれている。「だんだんはじまるよー」が「つばさはじまるよー」に変わり、一緒に観るのが楽しみだ。「つばさ」ってちゃんと言えるかな。

2008年02月25日(月)  マタニティオレンジ240 布おむつ歴半年
2007年02月25日(日)  マタニティオレンジ83 風邪の置き土産
2006年02月25日(土)  半年ぶりの美容院
2002年02月25日(月)  信濃デッサン館


2009年02月24日(火)  「ひつじが1匹」から「ひつじが100匹」までのお話

娘のたまを寝かしつけるのに毎晩苦労している。一日中保育園に預けられているので、6時にお迎えされて、晩ご飯を食べて、お風呂に入って、そこからが母親と遊べるゴールデンタイム。「良い子は寝る時間」の9時を過ぎた頃からエンジンがかかり、「ねんどする」「おうまさんする」「おうちおうちする」「えほんよむ」となる。

10時半を過ぎると、無理矢理布団に寝かしつけ、子守話を聞かせると、親のほうはうとうとしてくるのに、たまはますます目が冴えて起き上がり、また遊び始めてしまう。ようやく寝かしつけに成功したときには、疲れて一緒に寝入ってしまい、締切前なのに10時間睡眠を取り、翌朝になって、「しまった! 昨夜のうちに仕上げるはずが……」と青ざめる始末。

寝かしつけに効きそうなことは、いろいろ試してみた。熱めのお風呂に長めに入ったり(たまは子どものくせに熱い湯に強く、親が先にゆでだこになる)、人形を寝かしつける遊びをさせたり(布団に誘導するには効果的)。古典的な「ひつじが1匹、ひつじが2匹……」もやってみた。数えるだけだと芸がないと思い、「ひつじが1匹、ぽーんととんだ。ひつじが2匹、くるりととんだ。ひつじが3匹、ころんでとんだ……」と変化をつけ、途中で「そろそろ寝たかな」と中断して顔をのぞきこんだところ、「ひつじ、どうなったの?」と目をぱっちり見開いて聞かれた。どうやらいつもの子守話のひとつだと思っていたらしい。

百匹のひつじの百種類のジャンプを考えてみよう、という頭の片隅にあった計画が急浮上したのは昨日。目の前にやらなきゃいけないこと(昔は試験勉強、今は締切前の原稿書き)があるのに、すぐに取りかかる気分になれず、普段しないこと(昔はジグソーパズルの箱を引っ張り出してきた)をしたくなる。それで、魔が差したように、「ひつじが百匹」のことを思い出したのだった。

せっかくだから、数え歌っぽく、それぞれの数字にちなんだ理由や描写でジャンプさせようと考え、やりだしてみると、気分転換(あるいは現実逃避)のつもりが、一日がかりになってしまい、日をまたいで今日になっても「42匹目のひつじ、夜逃げだと、子どもに聞かせるにはまずいか」などと唸り続け、新聞に目を通すと、「二階建て」「三角屋根」「二重飛び」などの数字が入った単語が目に飛び込み、そうなると、辞書を引きたくなり、またしても一日費やしてしまった。

もっといいものがあれば差し替えたいものもあるものの何とか百種類のジャンプがそろい、完成披露することに。子守唄っぽいメロディもつけて、「いちばんめのひつじは いちばんぼ〜しみつけて と〜んだ〜」(詩では「ひつじ」で止めたけえど、歌うと「ひつじは」となった)と10匹目まで歌ってみると、「おもしろい」とつかみはいい感じ。うれしくなって、ひつじを飛ばし続けると、「13びきめのひつじは」のところで突如、「あなた!」とたま。以後、「14ひきめのひつじは」「あなた!」「15ひきめのひつじは」「あなた!」……。わたしが四苦八苦して考えた歌詞は、「あなた!」の一言で片付けられてしまった。絶妙なタイミングで「あなた!」が決まるのが快感なのか、たまは身をよじって大受けしながら、「ママ このうた おもしろいね。どこで おぼえたの?」。ガックリ。ママは寝込みます。

子守話48 ひつじが百匹

1ぴきめのひつじ いちばんぼしみつけて とんだ
2ひきめのひつじ にかいのまどから とんだ
3びきめのひつじ さんかくやねのうえから とんだ 
4ひきめのひつじ よんほんあしふんばって とんだ
5ひきめのひつじ ごひきごぼうぬきで とんだ
6ぴきめのひつじ ロケットみたいに とんだ
7ひきめのひつじ ななほしてんとうみつけて とんだ
8ぴきめのひつじ はちまきしめて とんだ
9ひきめのひつじ きゅうかんちょうおいかけて とんだ 
10ぴきめのひつじ じゅうじのほうがくに とんだ 

11ぴきめのひつじ じゅういさんこわくて とんだ
12ひきめのひつじ じゅうにがつのクリスマスに とんだ
13びきめのひつじ いちみとうがらしからくて とんだ
14ひきめのひつじ いしころですべって とんだ
15ひきめのひつじ じゅうごやおつきさんみて とんだ
16ぴきめのひつじ いろをぬられて とんだ
17ひきめのひつじ いないないばあして とんだ
18ぴきめのひつじ いちかばちかで とんだ
19ひきめのひつじ ジュークボックスでうたって とんだ
20ぴきめのひつじ にじゅうとびしながら とんだ

21ぴきめのひつじ にほんいちたかく とんだ
22ひきめのひつじ ニンニンにんぽうつかって とんだ
23びきめのひつじ ににんさんきゃくで とんだ
24ひきめのひつじ にしのそらまで とんだ
25ひきめのひつじ にごったかわこえて とんだ
26ぴきめのひつじ ふろがつめたくて とんだ
27ひきめのひつじ ふなつきばのうえ とんだ 
28ぴきめのひつじ にわとりおいかけて とんだ
29ひきめのひつじ にくやさんこわくて とんだ
30ぴきめのひつじ さんじゅうそうひきながら とんだ

31ぴきめのひつじ サイコロなげて とんだ
32ひきめのひつじ サニーレタスばたけを とんだ
33びきめのひつじ みみかじられて とんだ
34ひきめのひつじ さんじゅうしきどりで とんだ
35ひきめのひつじ サンゴしょうまで とんだ
36ぴきめのひつじ さむくてこごえて とんだ
37ひきめのひつじ みなみかぜにのって とんだ
38ぴきめのひつじ サンバをおどって とんだ
39ひきめのひつじ さくらさくはるに とんだ 
40ぴきめのひつじ しじゅうからおいかけて とんだ
  
41ぴきめのひつじ よいしょこらしょと とんだ
42ひきめのひつじ しにものぐるいで とんだ
43びきめのひつじ よみちがこわくて とんだ
44ひきめのひつじ ししまいかぶって とんだ
45ひきめのひつじ よこむきになって とんだ
46ぴきめのひつじ しろいおしろのうえ とんだ 
47ひきめのひつじ よなかにこっそり とんだ
48ぴきめのひつじ よわむしのくせに とんだ
49ひきめのひつじ しくはっくして とんだ 
50ぴきめのひつじ ごじゅうのとうまで とんだ

51ぴきめのひつじ こいのぼりにこいして とんだ 
52ひきめのひつじ ごじゆうにといわれて とんだ
53びきめのひつじ ごじゅうさんつぎまわって とんだ
54ひきめのひつじ ゴシゴシあらわれて とんだ
55ひきめのひつじ ごうごうあらしのなか とんだ
56ぴきめのひつじ ゴロゴロかみなりなって とんだ
57ひきめのひつじ こなゆきまうなか とんだ 
58ぴきめのひつじ ごはんのゆめみて とんだ
59ひきめのひつじ ごくごくふつうに とんだ
60ぴきめのひつじ むれからはなれて とんだ

61ぴきめのひつじ ろくちょうめのいちばまで とんだ 
62ひきめのひつじ ろくにみないで とんだ 
63びきめのひつじ ムササビみたいに とんだ
64ひきめのひつじ むしばがいたくて とんだ
65ひきめのひつじ ろっこつケガして とんだ
66ぴきめのひつじ ろくろっくびにびっくりして とんだ
67ひきめのひつじ むなさわぎがして とんだ
68ぴきめのひつじ ロバとかけっこして とんだ
69ひきめのひつじ ロックのリズムで とんだ
70ぴきめのひつじ なわばしごつかって とんだ

71ぴきめのひつじ なないろのにじのうえ とんだ
72ひきめのひつじ なにくわぬかおして とんだ
73びきめのひつじ なさけないかっこうで とんだ
74ひきめのひつじ ななしのかかしと とんだ 
75ひきめのひつじ しちごさんうれしくて とんだ
76ぴきめのひつじ なむあみだぶつとなえて とんだ
77ひきめのひつじ なぞなぞのこたえがわかって とんだ
78ぴきめのひつじ なっぱはっぱさがして とんだ  
79ひきめのひつじ ななくさたべながら とんだ  
80ぴきめのひつじ ハレーすいせいみたいに とんだ 

81ぴきめのひつじ はいしゃさんこわくて とんだ
82ひきめのひつじ ハチにさされて とんだ
83びきめのひつじ はみがきがイヤで とんだ 
84ひきめのひつじ はしのうえはしって とんだ 
85ひきめのひつじ やこうれっしゃおいかけて とんだ
86ぴきめのひつじ ハローとあいさつしながら とんだ 
87ひきめのひつじ バナナのかわですべって とんだ
88ぴきめのひつじ はちじゅうはちやに とんだ 
89ひきめのひつじ ハックションとくしゃみして とんだ
90ぴきめのひつじ くれないのそらを とんだ

91ぴきめのひつじ くいにくいついて とんだ
92ひきめのひつじ きゅうにあわてて とんだ
93びきめのひつじ くさいおならして とんだ
94ひきめのひつじ きゅうしょくおいしくて とんだ 
95ひきめのひつじ きゅうこうれっしゃおいぬいて とんだ 
96ぴきめのひつじ くろひつじにあこがれて とんだ 
97ひきめのひつじ きゅうなさかみちで とんだ
98ぴきめのひつじ くやしさバネにして とんだ
99ひきめのひつじ きゅうきゅうしゃおいかけて とんだ
100ぴきめのひつじ ひゃくめんそうしながら とんだ

2008年02月24日(日)  マタニティオレンジ239 通せんぼごっこで「くぐる」ことを発見
2007年02月24日(土)  マタニティオレンジ82 たま6/12才と応援団
2006年02月24日(金)  金曜日の夜の開放感
2005年02月24日(木)  だいたい・キラキラ・インドネシア語
2002年02月24日(日)  PPK


2009年02月23日(月)  第81回アカデミー賞わが家の反応

外国語映画賞『おくりびと』、短編アニメーション賞『つみきのいえ』、日本作品のダブル受賞に沸いた第81回アカデミー賞。『おくりびと』の撮影の浜田毅さんは、わたしの映画脚本デビュー作『子パコダテ人』、長編4本目の『子ぎつねヘレン』、2時間サスペンスドラマ『ドクターヨシカの犯罪カルテ〜診察室に犯人が来た』(坂上かつえさんと共同脚本)と3本でご一緒しているので、「浜田さん、良かった!」というのが最初の感想。浜田さんの撮影作品では『血と骨』も3年前、第78回の外国語映画賞の日本代表に選ばれている。『パコダテ人』の撮影現場で振っていた誘導灯に負けない輝きを放つおでこから「デコピカル」のあだ名が加わったタージンこと田嶋啓次さんも、制作進行で参加している。

本木雅弘さん演じる主人公の妻役の広末涼子さんは脚本協力した映画『子猫の涙』でも存在感を放っていたし、こちらも脚本協力で参加している次期朝ドラ「つばさ」でヒロインのお祖母ちゃん・玉木千代を演じる吉行和子さんの銭湯のおばちゃん役も良かった。少なからずご縁のある方々の関わった作品という親しみも手伝って、良かった良かったと繰り返し呟いた。『つみきのいえ』を制作したロボットは、成立にはいたらなかったけれど、いくつか企画開発に関わったことがあり、このところもちょくちょくお邪魔している。去年の秋、『つみきのいえ』の絵本が出たときにいただいて、同名の映画があることを知ったのだけど、作品は未見。今回の受賞で映画も絵本も一躍脚光を浴びることになりそうで、ロボットさんも良かった良かった。

その『つみきのいえ』の絵本、迫る水から逃れて上へ上へと建て増しした積み木のような家とそこに住むおじいさんを描き、家と記憶と家族の思い出を重ねたお話。静かだけれど、水がにじむように心にじんわりとしみ入る感動があり、年齢を重ね、何かを喪う経験を多く持っている人ほど、ぐっと来るものがあると思う。けれど、2歳児には大切な記憶が水に沈む切なさはまだよくわからないらしく、一度読んで聞かせたところ、積み木だけ、おうちだけで遊ぶほうが楽しいわとそっぽを向かれてしかった。ところが、アカデミー賞での受賞を伝えるニュースで自分の家にある絵本と同じ絵がテレビ画面に現れたのを見つけるなり、「つみきだ」「つみき どうなったの?」と身を乗り出し、絵本とかわるがわる指差して、はしゃいでいるではないか。センチメンタルを味わうにはまだ早くても、ミーハー精神はしっかり宿っているのだった。

ところで、『おくりびと』で重要なモチーフとして登場する「石文(いしぶみ)」。以前、向田邦子さんのエッセイを読んで、いつかどこかで使ってみたいと思っていたので、映画に現れたとき、やられた、と思った。脚本の小山薫堂氏も向田邦子さんのエッセイで知り、いつかと温められていたのだという。昔の日記に書いていたはずだと掘り出してみると(2007年6月1日 「石文」という恋文)、石文をモチーフにした小さな話まで書いていた。書いた本人も読むまで忘れていたが、プロットのような文体なので、その頃声をかけられた『世にも奇妙な物語』に提案したのかもしれない。わたし好みの甘い話だけど、引っかからなかった理由もそこにある気がする。同じところに目をつけて生まれたエピソードが、方や世界の頂へ飛び立ち、方や過去の日記に埋もれていた。娘用の子守話に仕立て直してみようかしら。

2008年02月23日(土)  マタニティオレンジ238 たま1歳半 ママ1歳半
2007年02月23日(金)  シュークリーム・ランキング
2006年02月23日(木)  金メダ○
2005年02月23日(水)  飛騨牛パワー合同誕生会
2002年02月23日(土)  連想ゲーム


2009年02月22日(日)  なりきり芝居で女優開眼!?たま2歳6か月

娘のたまは、今日で2歳6か月。朝起きてトイレで用を足し、今日が誕生日のわたしの母に電話口で「ハッピーバースデー ディア おおさかばあば〜」と歌ったあと、子ども椅子をひっくり返した「電車」に乗り込んで車掌さんごっこを始めた。「つぎは〜せんごく〜せんごく〜」などと言いながら、リズミカルに左右に揺れ、一人で機嫌良く遊ぶ傍らで、わたしは、朝食の支度。この一か月でトイレと一人遊びがずいぶんうまくなって、だいぶラクさせてもらっている。おむつはまだ外れないけれど、トイレでの成功率が上がったので、保育園から持ち帰るおむつが減るにつれて、おむつを買いに行く回数も減った。

一人遊びがうまくなったのは、自分を遊び相手にできるようになったということ。一人で車掌と乗客を演じたり、ぬいぐるみたちのお世話ごっこをしたり(保育園に持って行くタオルを掛け布団と敷き布団にして、ぬいぐるみをねかしつけたりする)、想像力を働かせて遊べるようになった。アンパンマンばかりかトントン(おっぱい)まで友だちに加えてしまう頭の柔らかさは、さすが子どもだなあと思う。1月末に大阪に帰ったとき、わたしの実家に着いて、「トントンもおおさかきたんだね」と歓声を上げたのには、「来てないと困るがな」と突っ込んでしまった。おっぱいをねだられるたびにわたしが「いまでかけてます」「まだ保育園から帰ってません」などとはぐらかしてからかっていたのが膨らんで、たまの頭の中でトントンは自在に動き回れる生き物になったらしい。

「たまちゃんじゃないよ。あかりちゃんよ」と別な女の子になりすます遊びも始まった。あかりちゃんの出所はいまだに不明だけど、いつも洋服をくれる「みなみちゃん」になりすますこともある。たまちゃんでもあかりちゃんでもみなみちゃんでも、変わるのは名前だけで性格までは演じ分けられていないところがご愛嬌。「じゃああかりちゃん、たまちゃんのパパとおふろ入る?」と聞くと、「あかりちゃんのパパだよ」と親まで変身を求められる。

このところのお風呂遊びは「ほいくえんごっこ」。わたしの誘導にしたがって、登園してからの生活を演じる。「おはよう。みんないるよ、まず手を洗ってね」と言うと、手を洗い、タオルで手を拭く。朝のおやつを食べ終えて、ブロック遊び。隣で遊んでいるのは誰というのも、ちゃんとたまの頭にある。「○○ちゃんはブロックあそびしないよ」とお友だちの性格もよくわかっている様子。「じゃあ散歩にいきますよ」と声をかけると、お友だちや先生の分の帽子や上着を出してきて、着せて回る。帽子のゴムをかけたり、上着の前を留めたりと芸が細かい。出かける前に胸を張ってトイレへ行進。わたしをトイレに見立てて腰掛け、用を足すふりをする。この表現力は『ガラスの仮面』北島マヤばり顔負け、コメディエンヌの才能もあるぞと親バカぶりも成長(増長)中。


朝食の後、わたしが仕事する間、たまはパパと公園に行き、帰りにケーキを買ってきた。誕生日の記念にお皿に字を描こうと思い、冷蔵庫を開けてペンになるものを探す。いつのものかわからないチョコレートは古すぎたのかうまく溶けず、黒みつでは色が薄すぎ、チューブのバジルペーストで「たま2.5」と描いた。2歳5か月にも見えるが、まあ誤差だ。子育ては小さなことにこだわらないことが大事。たまは割り箸を筆にして黒みつお絵描きを楽しんだ。

わたしがパソコンに向かっていると一人で遊んでくれる物わかりの良さに甘えて、ずいぶん仕事をさせてもらっている。でも、我慢をさせていることもわかっている。原稿をひとつ片付けられたので、夜は一緒に布団に入り、好きなだけ子守話を聞かせることに。「カンガルーする」と言って、おなかの上にぺたっとのっかってきたので、最初は「カンガルーさん ぴょん」のお話。「カンガルーちゃん、ママの袋から飛び出さないように、しっかりつかまりなさいよ」。ぴょんぴょんはねがら動物園を探険。お友だちの動物たちを訪ね歩いた。続いて、「ぞうさん パオーンのおはなして」のリクエスト。お誕生日にちなんだお話にしてみた。

このところ定番の「きりんさん とべないの」のお話や「ちょうちょさん とべないの」のお話が続き、最後はいまいちばんのお気に入りの「パパひとりぼっち」のお話。パパが家に帰ったらママもたまちゃんもいなくて、パパが一人でお留守番しながらカレーを作る。いいにおいがしてきたところでピンポーンと鳴り、ママとたまちゃんが帰ってきて、みんなでカレーを食べるというお話。話すたびにピンポーンでやってくる人が増えて、じいじやばあばや保育園のお友だちもやってくる。たまちゃんが帰ってくる前に郵便屋さんがパパあてのラブレター手紙を届けて、パパがはりきるあまりにカレーが辛くなったところにバナナや豆腐を届けてくれるお客さんが現れたり、おばけが来たり、ピンポンダッシュで逃げて行く人も。「あ、ぎゅうにゅうがないよ。かいにいこう。コンビニちかくにあるよ」。カレーを食べる前、日付が変わる頃に寝ついた。

子守話47 ゾウさんパオーン

あるひ パパゾウとママゾウとタマゾウが もりへあそびにでかけました。
「パパはおしごと ママはおせんたくをしてくるから
 タマはここであそんでいてね。
 なにかあったら、あいことばはパオーンよ
 パオーンとないたら あつまりましょう」
ママがそういって パパゾウとママゾウは
もりのあっちとこっちへいってしまいました。
タマゾウはしばらく ひとりであそんでいました。
おともだちのこどもゾウたちは パパやママといっしょで
おおきなプレゼントまでもらっているのに
タマゾウだけひとりぼっちでした。
「パパもママも いそがしいんだ。タマゾウのこと すきじゃないんだ。
 きょうが タマゾウのたんじょうびだってこと わすれているんだ」
タマゾウは かなしくて さびしくて パオーンとなきました。
すると、パオーン、パオーン。
パパとママのこえが もりのおくのほうからきこえました。
タマゾウがこえのするほうへ むかってみると
そこは いちめんのおはなばたけでした。
おはなのかおりにまじって ごちそうのいいにおいがしました。
「パパとママだけ こんなたのしいところにいて ずるい」
タマゾウが はなをまるめて すねていると
あたまのうえから はなびらがふってきました。
ながいはなで はなびらのシャワーをふらせているのは
パパゾウとママゾウです。
「おたんじょうび おめでとう」とパパゾウ。
「タマゾウにないしょで パーティのじゅんびをしていたのよ」とママゾウ。
みると タマゾウのおともだちのゾウたちが
パパやママといっしょに ぞろぞろとあつまってきました。
みんながもっていたおおきなプレゼントは 
タマゾウにあげるたんじょうびのおいわいだったのです。
タマゾウは びっくりして うれしくて なみだがでてきました。
はなびらのシャワーが なみだをかくしてくれて よかったとおもいました。

2008年02月22日(金)  アンチエイジングディナーで合同誕生会
2007年02月22日(木)  マタニティオレンジ81 母になっても女心はある
2006年02月22日(水)  史実の63年後に観る映画『白バラの祈り』
2002年02月22日(金)  生みっぱなしじゃなくて


2009年02月21日(土)  電話でタイムスリップ

電話でタイムスリップ。先日放送したラジオドラマみたいだけど、過去を分かち合った人からのひさしぶり電話は、ほんとうに時間をポーンと飛び越えさせてくれる。大阪の高校の体操部で一緒だったミホから「今みんなで飲んでるねん」と電話があり、そこに集まっている5人の同期とかわるがわる話した。高校を卒業して以来に声を聞く子もいたのだけど、「ひさしぶりー。わかる?」と言われる間に記憶再生装置が起動し、彼女の顔を映し出してくれた。映像は高校生当時のもので、彼女と話しているわたしも高校生に戻っていた。

あの頃の年齢の2倍以上の歳月を生きてきたのに、中身は何にも変わってない気がする。だけど、外側はずいぶん変化を遂げた。それでも、顔を合わせれば、「変わってへんなあ」と言い合うのだろう。声を聞くと、無性に懐かしくなって、顔を見たくなった。

2008年02月21日(木)  バレンタイン月間&確定申告週間
2007年02月21日(水)  三島由紀夫レター教室
2006年02月21日(火)  何かとツボにはまった映画『燃ゆるとき』
2005年02月21日(月)  『逃亡者の掟』(人見安雄)
2002年02月21日(木)  映画祭


2009年02月19日(木)  生まれる前の記憶

娘のたまを産んだとき、助産院の畳の部屋にはヘンデルの『私を泣かせてください』を奏でるオーボエの荘厳な音色が満ちていた。もちろんCDからではあるが、名作『フランダースの犬』の教会を彷彿とさせるような神々しさを感じさせ、誕生の場面にふさわしい曲だ、と極限状況の中でわが選曲センスに満足した覚えがある。そのメロディを鼻歌で口ずさんでいると、「なんのうた?」とたまが聞いてきた。「たまちゃんが生まれた日の歌よ」と答え、「た〜ま〜ちゃんが〜う〜ま〜れた〜ひ〜」と即興で歌詞をつけて歌ったところ、「たまちゃんがうまれたひのうた、うたって」とせがまれるようになった。行き当たりばったりの作詞なので毎回微妙に歌詞は違うのだけど、子どもながらに自分のことが歌になっていて、しかも自分を歓迎する内容であることがうれしいらしく、いい顔をして聴いている。

おなかの中にいたときのこと、生まれたときのことを子どもは覚えているという。それを聞き出すのは、子どもが記憶を言葉で語れるようになった後で、最初の頃の記憶が上書きされる前が良いらしい。「チャンスは一度きり。二度は聞けないのよ」とも言われた気がするけれど、2歳を過ぎた頃から何度か、お風呂に入ったときに「覚えてる?」と聞いてみた。母親学級で聞いたような「ふわふわしたおはなばたけみたいなところにいた」「そらのうえからママをえらんだ」のような神話のような記憶を期待したのだけど、「おぼえてない」「わかんない」と肩すかしを食らってきた。

それが、「たまちゃんが生まれた日」の歌の成果なのかどうか、「覚えてる?」と聞くと、「おぼえてる」と返事が返ってきた。そして、頭の上に両手を万歳し、「たまちゃん パカってうまれたよ」と続けた。頭から生まれたのは事実だし、安産だと言われたのも確かだけど、本人に「パカって」と言われると、「いやいやそれなりに大変だったのだよ」と言いたくもなる。でも、2歳児相手にむきになってもしょうがない。人生で最初の記憶がラクチンであるということが、この子の楽天的な性格に貢献しているのかもしれない、と喜ぶことにした。

「トントンもたまちゃんといっしょにでてきたの」とたまは言う。トントンとはおっぱいの愛称。たまにとってはいい遊び相手で、きょうだいのような存在になっている。「トントンは最初からママのとこにいたよ」と反論しつつ、「いや待てよ。おっぱいという栄養飲料貯蔵庫として機能し始めたのは、たまが生まれてからだから、たまが言っていることは事実の暗喩だ」と思ったりもする。何気ない言葉の中にものすごい真理が潜んでいる気がして、さらなる金言に期待が膨らむ。「たまちゃんうまれたとき パパがいたの」「そうよ、覚えてるの? パパは仕事を抜け出してきたのよ」。いいぞ、その調子。すると、たまは続けて、「ゾウさんもキリンさんもいたの。シマウマさんもいたの。アンパンマンもいたの」。そこでわたしは思い出した。「子どもが作り話をできるようになってから聞き出しては、遅い」と言われていたことを。残念。

でも、ゾウやキリンやシマウマやアンパンマンがあの畳の部屋にひしめきあっているところを想像したら、楽しくなったので、子守話にしてみた。

子守話46 たまちゃんがうまれたひ

たまちゃんがうまれたひ
どうぶつたちが どうぶつえんをぬけだして やってきました。

キリンさんもは ながいくびに みんなからのプレゼントを
いっぱいつるして とどけてくれました。
ゾウさんは ながいおはなのシャワーで 
たまちゃんのからだをあらってくれました。
ことりたちは おいわいのうたを うたってくれました。
シマウマさんは ふかふかのおふとんに なってくれました。

どうぶつたちは たまちゃんの さいしょのおともだちでした。
ママのおなかにいたとき ゆめのなかで たまちゃんは
どうぶつえんにあそびにいって どうぶつたちとあそんでいたのです。
どうぶつえんにつれてってと たまちゃんが
パパやママにおねがいするのは そういうわけなのです。

2008年02月19日(火)  マタニティオレンジ237 赤ちゃんのときに生まれてきたんだよ
2007年02月19日(月)  近くて遠いアカデミー賞
2005年02月19日(土)  青春京都映画『パッチギ!』
2004年02月19日(木)  ツマガリのアップルパイ
2002年02月19日(火)  償い


2009年02月18日(水)  クッキーになった、ひばば102歳。

1月17日にダンナのおばあちゃんが亡くなって、ひと月経った。娘のたまと百歳違いだから、102歳。最後に会ったのは昨春のことで、耳が不自由なほかは、ゆっくりだけれど自分で歩き、ちょこっとケーキを食べ、紅茶を飲み、百歳を超えているようには見えないほどしっかりしていて、お茶目でかわいらしいおばあちゃんだった。「なかなかお迎えが来なくて」とおどけるように言うのが口癖だった。「長生きしてくださいね」と返しつつ、親しい友人もほとんど先に逝ってしまい、長い余生を持て余しているようにも思われて、フクザツな気持ちになった。だから、訃報を聞いたとき、もう会えないんだなという思いとともに、おばあちゃんはほっとしたかもしれない、と想像した。天国には懐かしい人たちがたくさん待ち受けているから、淋しい思いはしないだろう。

2006年11月26日 マタニティオレンジ33 百年前の赤ちゃん
2008年5月10日 ひばちゃま、あーちゃまと「平和」な休日


たまは、生まれてから2度おばあちゃんに会いに行き、だっこしてもらった。一緒に撮った写真を見ると、「ひばば」と指差していたけれど、最後に会って半年以上経っているので、「ひばば覚えてる?」と聞くと、首を傾げた。けれど、おばあちゃんが大好きだったという鎌倉五郎本店の『鎌倉半月』というお菓子を「ひばば、クッキーになったのよ」と言ってすすめると、「ひばばのクッキー」と神妙な顔をして食べ、何かを感じ取ったようだった。

おばあちゃんが亡くなって一週間後、大阪へ帰ったときのJALの機内誌に、新潟の大家族の写真が載っていた。「お父さん、お母さん、子ども、じいじ、ばあば、ひばばね」とわたしが写真を解説すると、「たまちゃん ひばば いたね」とたまが言った。「いるね」ではなく「いたね」と過去形になっていて、ひばばが遠くへ行ったことを2歳児ながら理解したんだなと思った。

そのことを子守話にしてみた。

子守話45 ひばばのクッキー

あるひ テーブルのうえに ちいさなはこがありました。
「これはなに?」とたまちゃんがママにきくと
「ひばばのクッキーよ」とママがいいました。
「たまちゃん、ひばばおぼえてる?」とママにきかれて
「うーん わかんない」とたまちゃんはこたえました。
ひばばは じいじのママで パパのおばあちゃん。
たまちゃんは ひばばに なんどかあいにいきましたが
それは2さいになるまえのことで よくおぼえていなかったのです。
「ひばば とおくにいっちゃったの。 もうあえないの。
 ひばば クッキーになったのよ」とママがいいました。
たまちゃんとママは ひばばのクッキーを はんぶんこしてたべました。
ほんのりあまいにおいを かいだとたん
たまちゃんは ひばばにだっこされたひのことを おもいだしました。
「かわいこちゃんですねえ」そういって ひばばがわらうと 
しわくちゃのかおが いっそうしわくちゃになりました。 
「ママ たまちゃん ひばば おぼえてる」とたまちゃんはいいました。
「ひばば やさしかったよ。ひばばのクッキーみたいに やさしかったよ」
「そう。ひばばのこと おぼえていようね」
「うん。たまちゃん ひばばのこと おぼえてる」
ひばばのやさしいかおをおもいうかべて
たまちゃんとママは ひばばのクッキーをたべました。
とてもおいしいクッキーでした。

2008年02月18日(月)  イタリアン風味の塩せんべい
2007年02月18日(日)  東京マラソン2007
2004年02月18日(水)  父&ダブルまさこでディズニーシー
2002年02月18日(月)  函館ラ・サールニュース


2009年02月17日(火)  桜えび×すりおろし野菜のやきやき料理

このところ、すごい勢いで桜えびを消費している。サラダにスープに大活躍で、いい味が出てカルシウムも取れて重宝しているのだけど、いちばん出番が多いのが「やきやき料理」。お好み焼きの亜流のようなこのジャンルが誕生したきっかけは、冷蔵庫に山芋と卵しかなかったある日のこと。卵を割り、山芋をすり下ろし、なけなしの桜えびと青のりを混ぜて焼いたら、なんとまあおいしいこと。以来、作るたびに具を変えたりして、やきやきを楽しんでいる。桜えびと並んで、青のり消費寮もふえた。

ほうれん草や小松菜を細かくして加えると(冷凍しておくと、すりおろせる)、緑色のやきやきになる。葉っぱぎらいの娘もだまされて、ほくほくと頬張る。人参のすりおろしも合う。干しえびに干しイカや粉がつおを加えると、磯の風味が豊かに。鮭のほぐし身を入れたことがあったけど、あまり合わなかった。しっかり味を蓄えた具でないと、埋没してしまうらしい。

山芋の代わりにダイコンをすりおろした大根やきやきは、醤油が合うおいしさ。大根だけだとしゃばしゃばしていて固まらないので、小麦粉を加える。もちもちした食感は、中華の大根餅。片栗粉のほうが合うかもしれないし、米粉もよく合いそう。大根やきやきのときは、天かすを入れると食感も味も良くなる。ベーコンも合うんじゃないかと思う。

やきやきが続いて、ひさしぶりに本家お好み焼きを食べたくなり、作ってみたら、キャベツをみじん切りする作業に疲れた。フードプロセッサーを使っても、何度も入れ替えないと終わらない。それに比べて、すりおろしの何とラクチンなこと。次はレンコンで行ってみようと思う。

2008年02月17日(日)  東京マラソン2008当日
2007年02月17日(土)  マタニティオレンジ80 はじめての風邪
2006年02月17日(金)  学生新聞「キャンパス・スコープ(campus scope)」取材
2005年02月17日(木)  魔女田さんの新作『平成職人の挑戦』
2004年02月17日(火)  オーマイフィッシュ!


2009年02月16日(月)  ロシアの首相みたいなドコモフケイキー氏

リーマンショックや円高のしわ寄せが脚本家にもやって来た。企画が飛んだは元々よくある話だけど、飛んだ飛んだがふえた気がする。準備する企画も減っているのか、去年の秋あたりから、バッタリと仕事が舞い込まなくなった。月に一件は「初めまして」と見知らぬプロデューサーから電話がかかってきて、スケジュールの打診をされたものだけど。脚本家が足りない、誰でもいいから誰かつかまえろというほど景気のいい時代ではなくなっているらしい。

知り合いの映画関係車は「どこも不景気だね」とぼやく。テレビ局の人も「どこも不景気だねえ」。わたしが務めていた広告会社も大変で、元同僚は「どこも不景気」と口をそろえる。会社を辞めても再就職先探しに難航して、「どこも不景気」を肌で感じるという。誰に会ってもドコモフケイキーの合唱。ドフトFスキーにも似て、ロシアの首相みたいだなと思っていたら、頭の中でイメージが膨らみ、ドフトエフスキー氏が動き出した。ちょっぴり赤ら顔の大柄の白人で、髪の毛も表情も淋しそうで、大きな背中を丸めて不景気そうに歩いている。

ドコモフケイキー氏が幅をきかせている今日この頃、なんとか途切れずに書くことを仕事にできているのはありがたいこと。選考委員を務めた毎日映画コンクールのスタッフ部門2次選考会の模様を、今年最初の連載エッセー、池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuに連載中の「出張いまいまさこカフェ」に綴る。次回で11杯目。3月下旬配布予定のbuku20号に掲載。

2008年02月16日(土)  東京マラソン2008前日
2007年02月16日(金)  マタニティオレンジ79 旅行気分の谷中界隈 
2006年02月16日(木)  『WEL-COME to パラダイス』と少年山賊団
2005年02月16日(水)  不思議なピンクの水、「ナーガ」水。
2002年02月16日(土)  パコダテ人@スガイシネプレックス


2009年02月15日(日)  あおいちゃん元気元気!『その夜明け、嘘』

青山円形劇場にて『その夜明け、嘘』を観る。宮崎あおいちゃん、吉本菜穂子さん、六角精児さんの三人芝居。同じ場所で『パコダテ人』を上映したのが2002年のキンダーフィルムフェスティバル。あれから6年半、あおいちゃんは朝ドラヒロインと大河ドラマ主演を務め、すっかり国民的女優になった。『篤姫』の余韻さめやらぬうちに舞台に立ち、映画『少年メリケンサック』公開。どちらもはじけまくって、いい意味で『篤姫』を裏切ってくれて、親戚のおばちゃん的親近感で見守る身としては、ますます目が離せない。

『相棒』シリーズの鑑識役の印象が強い六角精児さん、吉本菜穂子さんともに舞台で観るのは初めて。あおいちゃんは『星の王子様』ぶり。作・演出の福原充則さんの作品を観るのも初めて。新鮮な顔ぶれが見せてくれた『その夜明け、嘘』は、夜を駆けるママチャリの疾走感そのままにスピード感あふれる展開で、気持ちよく楽しめた。スランプで逃げる漫画家(あおいちゃん)と一緒に逃げるアシスタント(吉本さん)、追いかける編集(六角さん)という三人の話を主軸に、漫画家とアシスタントが立ち寄ったファミレスの人間模様や、漫画家の作品に登場するカップルの物語が絡み、さらに別れたカップルがそれぞれの田舎に帰った後の展開まで描いたかと思うと、編集の妻と幼子の話も加わり、ファミレス店主がろう城した模様を伝えるリポーターとキャスターが登場する。それらの話がチャンネルを切り替えるように入れ替わり立ち替わり現れる。

感心したのは、観ていて一度も「今はどのモードなのか」と迷子にならなかったこと。演じ分けた役者さんも達者ぞろいだったけれど、脚本もよく練られている。大胆なシーンのジャンプがうまく決まるたびに、「あそこからここへよく飛べたなあ」と離れ業を見るような心地よさがあった。初日を含めて今日が3度目という人によると、ずいぶんテンポが上がったというから、観客の反応を見た上で映画でいう編集作業をして、つなぎを改良しているのかもしれない。

舞台を横切って客席の外に飛び出し、違うドアから駆け戻って来る(外でも全力で走っているので大変らしい)あおいちゃんが元気いっぱい。全身をめいっぱい使ったオーバーな動きも楽しくて、本人もノリノリで演じているのが伝わってきて、観ているこちらもハツラツとした気持ちになってくる。少年メリケンサックのはじけっぷりもかなりのものらしく、早く観てみたい。

観劇に誘ってくれたのは、『パコダテ人』で大泉洋さん演じる古田はるおの娘、まゆ役を演じた前原星良(まえはらせら)ちゃんとせらまま。パコのときは幼稚園児だったせらちゃんも、もう中学生。パコをビデオで観た人がせらちゃんを見たら、メリケンサック状態だねえと話す。一緒に楽屋にお邪魔して、あおいちゃんにご挨拶。舞台が終わっても元気元気で、充実がにじみ出ていた。

【今日のおやつ】スパイラルカフェのシフォンケーキ

お芝居の前に、中国家庭料理希須林でお昼。今日も行列の大人気で、食後のお茶はスパイラルホール1階のカフェに移動。日替わりシフォンケーキはキャラメルとプラリネ。プラリネという言葉に弱いので、これをチョイス。甘すぎず、軽やかで、ペロリ。テーブルから企画展を眺められるアートな雰囲気気は、このカフェならでは。

2008年02月15日(金)  対岸の火事の後日談
2007年02月15日(木)  マタニティオレンジ78 遅速を愛す哉 
2002年02月15日(金)  ゆうばり映画祭3日目


2009年02月14日(土)  駅から歩いて湯沢高原スキー場

雪を見たい、と娘のたまが言う。今年の東京はなかなか雪が降らない。1月に大阪の実家へ帰ったとき、風に舞う雪をほんの数分見ただけだ。タイミング良く「駅から歩いて行ける湯沢高原スキー場」の話を聞いた。子どもが遊べるファミリー用ゲレンデもあるという。今朝起きて、「今日行ってみよう」と思い立ち、10時38分に上野を出たら、12時前に越後湯沢に着いた。

トンネルを抜けるたびに雪国が待ち受けているのを期待したけれど、越後湯沢に降り立っても、風景は茶色まじりで一面の銀世界ではなかった。駅で買った笹だんごを食べながら、歩いてゲレンデを目指す。道路の雪は解けていて、すべる心配はない。路肩に積もった雪も今朝の小雨で解けたせいか、固まって氷のようになっている。雪を触ったたまの感想は「かたい」。絵本で読んでいるふわふわの雪と違うのが不満な様子。


下調べなしに来たので、ファミリーゲレンデの場所もわからず、ロープウェイで上ってみる。ウィンドブレーカーをソリ代わりにしてたまを乗せて引っ張ると、「こわい」。雪だるまを作ろうと呼びかけると、「さむい」「おなかすいた」。ロープウェイの駅から歩いてすぐのところにある「Alpina(アルピナ)」というイタリアンレストランへ行ってみると大正解。本店は湯沢町の岩原スキー場にあるラ・ロカンダ・デル・ピットーレというピッツェリアで、雰囲気といい接客といい味といい、ゲレンデでこんな食事ができるとはと驚くレベル。大きな窓から銀世界をのぞみながら、焼きたての石釜ピザと釜焼きラザニアを楽しむ。大満足で店を出たのだけど、後で「絶景と極上イタリアンコース」なるもののチラシを発見。前菜・サラダ、スープ、ピザ、パスタ、肉料理、デザート、コーヒー又は紅茶がロープウェイ往復料金込みで3500円。ロープウェイが1500円だから、これはお値打ち。知っておれば……と予習不足を悔やむ。年中無休とのことで、緑の季節に来ても良さそう。越後湯沢へはお得な日帰りパックもあるようだし、次回はもう少し予習して行ってみよう。

ロープウェイで麓に下りると、その目の前がファミリーゲレンデだった。ソリを借り、歩いて坂を上って滑る。すべり台みたいで喜ぶかと思ったら、「こわい」「つめたい」「べちょべちょ」。たまがいちばん喜んだのは、大きなお風呂。風呂上がりに濡れた靴下を履くのをいやがり、わが子のひ弱さを思い知らされた。

越後湯沢で感心したのは、土産屋といい飲食店といい、どこもおいしそうな雰囲気を醸し出していること。駅とゲレンデを結ぶ道を歩く間に立ち寄ってみたいお店がそこかしこにあった。名物「もちぶた」を食べてみたかったけれど、たまが寝てしまったので夕食を食べずに帰る。新潟県中越地震を忘れないために地元の青年部が雪で作ったオブフェにろうそくの明かりを灯すところをちょうど見ることができた。東京とはまったく違う風景と空気に触れて、日帰り旅行なのに、ずいぶん遠くへ行ってきたような気分を味わった。

2008年02月14日(木)  火事と水回りクリーニングの木曜日
2007年02月14日(水)  松井久子監督の第三作を応援する会
2006年02月14日(火)  一度泊まってみたいチョコレートのホテル
2005年02月14日(月)  5年ぶりにケーキを焼く
2002年02月14日(木)  ゆうばり映画祭2日目


2009年02月13日(金)  Philaeのクッキーネックレス

「ハリーウィンストンって知ってる?」と先日ダンナに聞かれた。ウィンストン・セーラムなら知ってる。昔コピーを書いていたタバコのSalemを作っているR.J.レイノルズの本社があるところ。でも、ハリーウィンストンは知らない。答えはジュエリーブランドで、「ティファニーより憧れらしいよ」と知ったばかりのくせにダンナはイバった。贈ってくれる人がいないから、縁がないのである。

言われてみれば、ジュエリーブランドには相当疎い。宝飾欲が低いのだ。宝石を見ても憧れのため息が出ない。その代わり、ケーキの形のピアスにはときめく。ブランドでいえば、アーロンバシャ(Aaron Basha)のBaby Shoesにはハートを鷲づかみされた。宝飾欲が低い代わりに雑貨欲が高いから、かわいいカタチや面白いモチーフに惚れる。

雑貨欲を満たしつつお値段もかわいいジュエリーになかなか巡り会えずにいたのだけど、先日ネットで見つけたPhilae(フィラエ)というフランスのブランドのネックレスに一目惚れした。その名も「クッキーネックレス」と「ドーナツネックレス」。本物みたいなクッキーやドーナツが誘惑していて、思わず食いついた。クッキーがいいかドーナツがいいか、迷った末にクッキーを選んだ。

今日届いた包みを開けると、画像で見る以上に実物はクッキー感があり、ドーナツも欲しくなってしまった。誰に会うわけでもないのに早速つけて、鏡の前でニマニマしている。Philaeは1999年にイブ・サンローランがスポンサーとなり、ナタリーとオーシリーというデザイナー姉妹が立ち上げたブランドだそう。

クッキーネックレスに出会ったのは、ナルミヤインターナショナル会長だった成宮俊雄さんが手がける雑貨小物のネットショップMarizza(マリッツァ)。何年か前に辰巳琢郎さんの誕生パーティーにお邪魔する機会があったとき、知らない人だらけでオロオロしていたわたしに居場所を作ってくださったお茶目なおじさまが成宮さん。マリッツァが仕入れる雑貨にも、チャーミングな人柄がうかがえる。色使いが楽しいFanny fouks、童話の世界をモチーフにしたデザインがユニークなN2など、雑貨感覚で集めたくなるアクセサリーの宝庫。sold outになっているものも多いけれど、ちょくちょく再入荷、新作入荷しているので、こまめにのぞきたくなる。行くと、見たい商品がありすぎて、ついつい長居をしてしまう。仕事にならなくて困っている。

2008年02月13日(水)  マタニティオレンジ236 保護者会で問題解決 
2007年02月13日(火)  マタニティオレンジ77 一年先を想像する 一年前を振り返る 
2004年02月13日(金)  ウィーリー・ウォンカのチョコレート工場
2002年02月13日(水)  ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 1日目


2009年02月12日(木)  ハンブルク・バレエ×ジョン・ノイマイヤー『人魚姫』

「ハンブルク・バレエの『人魚姫』観ない? 振付はノイマイヤーよ」と友人カヨちゃんよりお誘い。ハンブルク・バレエもノイマイヤーも知らないけれど、人魚姫には思い入れがある。市村正親さんが『BARアンデルセン』のマスターとアンデルセンの世界の一人芝居を演じる『真夜中のアンデルセン』という実験的な音楽劇ドラマを作ったことがあり、劇中で取り上げたのがこの物語だった。深夜番組にしては高視聴率だったけれど、シリーズ化はされず、次は『雪の女王』をやりたいという目論みは叶わなかった。でも、最初で最後の一本が人魚姫だったのは正解だったと、今日のバレエを観て、あらためて思った。

アンデルセンだと思われる「詩人」が第一幕冒頭から登場し、彼が語り部の役割を担って物語を運んでいく。上下する曲線で海底と地上を表現するなどシンプルだけど明快な美術は洗練された現代アートを見ているよう。衣装も気合いの入ったクラシックバレエと比べると、エコか、というほど軽量。王子に至ってはメインの衣装が水着で、これまでに見たどんな王子の衣装よりもロイヤル感がない。ヒマさえあればゴルフの練習をしている王子という描き方も画期的。

魔法をかけられて人間の足を手に入れる前の人魚姫をどう表現するのか興味があったが、空気が海水に見えるほど、人魚姫の「泳ぎ」はすばらしかった。男性ダンサーにリフトされて伸びやかに泳ぎ回るときはもちろん、二本の足を地につけているときさえ、海底を泳いでいるように見える。しなやかにくねる動きはまさに魚を思わせた。足を得た人魚姫が陸に上がると、一歩を踏み出す痛みが、ちゃんと見える。人間の体をうまく使いこなせないもどかしさも、手に取るようにわかる。人間の体がどれだけ雄弁に語ることができるかを見せられているようだった。

跳躍の高さや回転数よりもストーリーを表現することに身体を駆使した振付は、ラストにもよく表れていた。悲しみに沈む人魚姫の動きは静かになっていくが、伝わって来る感情が観客の心を動かしていく。それが膨らみきったところで、泡になって天に召される場面が訪れる。シンプルに徹した舞台装置はここからの逆算だったかと思えるほど、星くずのようなきらめきの静謐な美しさが際立った。

しばしの余韻を割って湧き起こった拍手と「ブラボー」の声が鳴り止まず、カーテンコールが繰り返された。手を取り合ってお辞儀を繰り返す出演者たちの手応えも伝わって来て、舞台と客席が心地よい興奮を分かち合った。振付のノイマイヤー氏が登場すると、拍手はいっそう大きくなった。

巨匠ノイマイヤーの名をバレエに疎いわたしは知らず、コピーライター時代に仕事をしたイラストレーターと同じ名前だ、いやあれはルーマイヤーだというお粗末な知識だったが、作品を観て、「女心がわかる」「胸が締めつけられる」という評判に納得した。あらすじをよく知っているせいもあるけれど、バレエのヒロインにこれほど感情移入したのは初めてだった。身体の動きのひとつひとつに感情が宿り、人魚姫の海よりも深い悲しみが胸を刺す痛みとなって伝わってくる。バレエは踊るのではなく演じるのだ。バレエダンサーの表現力の豊かさに目を見開かせてくれたジョン・ノイマイヤーの名は、今日の舞台とともにわたしの脳裏に刻まれた。名前にイマイが入っているのも親近感。

劇場を出て、並びの席で鑑賞した元同僚のヤマムロ嬢、タカトモ嬢と東急百貨店本店前のビストロVIRONで夕食。ここのパンが好きだけど、食事をしたのは初めて。シャンパンで乾杯し、ワインを飲み、パンをちぎり、カスレを食べ、バレエを語る。「今井が飲みかけの日本酒を手土産にうちに遊びに来たのを思い出して、こないだ爆笑したよ」とヤマムロ嬢に言われ、「ああ、ありましたね。ハーフボトル事件」と笑う。こういう時間が書き続ける力をくれる気がする。ちょうど仕事が空いた谷間の晩に、いい栄養を蓄えられた。

2008年02月12日(火)  マタニティオレンジ235 好きなものがいっぱい
2007年02月12日(月)  MCR LABO #1「運命」@shinjukumura LIVE
2006年02月12日(日)  『子ぎつねヘレン』完成披露試写
2005年02月12日(土)  浸った者勝ち映画『ネバーランド』
2004年02月12日(木)  本のお値段
2003年02月12日(水)  ミヤケマイ個展 MAI MIYAKE EXHIBITION2003


2009年02月11日(水)  はじめてのケータイ小説印税

ケータイで読める電子書籍書店ケータイ読書館に『ブレーン・ストーミング・ティーン』が並ぶようになって半年あまり。初めての印税支払いがあった。ケータイ小説バカ売れにはほど遠いささやかな金額ではあるけれど、ダウンロードして読んでくださった読者の存在を確かめられて、うれしくなる。

ケータイで読んでみようと思われた方は、左のQRコードから、または下記の方法で。月額コースのポイントでの購入で、1ダウンロードは300ポイント(円)。

【NTTドコモ】
■対応機種
FOMA 90x/851/80x/70xシリーズ(L,M,NKを除く) mova 506/505シリーズ
■アクセス方法
iMenu→メニュー/検索→コミック/書籍→小説→ケータイ読書館

【au】
■対応機種 CDMA 1X WIN(EZアプリ BREW®)対応機
■アクセス方法
Ezメニュー→トップメニュー→カテゴリーで探す→電子書籍・コミック・写真集→総合→ケータイ読書館

【SoftBank】
■対応機種 3G端末 70x/80x/90xシリーズ(NK,MO,SEを除く)
■アクセス方法
Yahoo!ケータイ→メニューリスト→書籍・コミック・写真集→電子書籍→ケータイ読書館

読んでくださった方は、ぜひ感想をお聞かせください。

読者の反応が気になり、張り合いにもなるのは、娘のたま相手の子守話も同じ。今日は「ちょうちょさんがとぶおはなし」「ペンギンさんのすべりだいのおはなし」のリクエストに応えて、二つ。たまの最近のお気に入りはペンギンとちょうちょ。ちょうちょは年末からのブームだけど、ペンギンは1日に上野動物園で見て以来。映画『旭山動物園物語』を見せたら、喜ぶだろうか。

子守話44 ペンギンさんのとっくん

たまちゃんがこうえんにいくと
すべりだいに ペンギンさんがいました。
なんきょくのうみの こおりのやまのすべりだいを
じょうずにすべれないのが くやしくて
こっそりれんしゅうにきたのです。

ペンギンさんはこわがりで すべりだいのてっぺんで
ぶるぶるふるえていました。
だいじょうぶよ。すなにおちてもいたくないよ。
たまちゃんがこえをかけると ペンギンさんは
ゆうきをだして えいっとすべりました。

ペンギンさんは おしりではなくおなかをすべりだいにつけてすべります。
びゅうんとスピードがでて すなばに かおからつっこんでしまいました。
あいたたたとペンギンさんはべそをかきました。
でも ひとりですべれて とくいそうでした。

こおりのやまも ゆうきをだしてすべってみるよ。
そういって ペンギンさんは なんきょくにかえっていきました。

ペンギンさんのまねをして たまちゃんも 
おなかをすべりだいにつけて すべってみました。
びゅうんとスピードがでて すなばに かおからつっこんで 
すなだらけになってしまいました。
ペンギンさんのきもちは ちょっぴりわかったけれど
おなかですべるのは これっきりにしようとおもいました。


子守話43 とべないちょうちょ

たまちゃんがあるいてくると ちょうちょがないていました。
「わたし はねがあるのに とべないの。
 おとうさんも おかあさんも おねえちゃんも おにいちゃんも
 みんな じょうずにとべるのに。
 わたしだけ とべないから ひとりぼっちになっちゃった」

れんしゅうをしてみたら とべるようになるよと たまちゃんはいいました。
けれど はねをどんなにがんばってうごかしても
ちょうちょのからだは うきあがりませんでした。

かみひこうきみたいに いきおいをつけたら 
とべるかもしれないと たまちゃんはおもいました。
でも たまちゃんのてからはなれたちょうちょは ぼとっとおっこちて
いたたたたと またないてしまいました。

たまちゃんは ちょうちょに たかいたかいをしてあげました。
それから ちょうちょをかたにのせて すべりだいにのぼりました。
すべりだいのしたにさいている しろいはなのまわりを
ほかのちょうちょが ひらひらととんでいるのが みえました。

たまちゃんは ちょうちょをおうちにつれてかえりました。
2かいのベランダからみおろすと にわをとぶちょうちょたちは 
ちいさなてんてんのようでした。

たまちゃんは どこにいくときも ちょうちょといっしょでした。
とうきょうタワーにも いっしょにのぼりました。
こんなにたかいところには どんなちょうちょも のぼってこれないでしょう。

とべないちょうちょは すこしずつ げんきになっていきました。
たかいところにいるときとおなじぐらい
じめんをちょこまかあるいているときも たのしそうでした。

そして あるひ ちょうちょは そらをみあげて いいました。
「とべなくても たのしいことがいっぱいあるって
 たまちゃんが おしえてくれたから
 いまは この とべないはねが きらいじゃないよ」
そのことばをきいて たまちゃんは うれしくて
きもちが ふわりとかるくなりました。
こころに はねがはえたようでした。

2008年02月11日(月)  100人抜きの皇居外周ジョギング
2007年02月11日(日)  切り抜く代わりに書き抜き新聞記事
2004年02月11日(水)  口福の餃子
2002年02月11日(月)  こどもの詩


2009年02月10日(火)  加湿器で焼き肉 洗面器でエレベーターガール

テーブルの下に置いてある加湿器のペンタ君の前にかがみこみ、娘のたまが突然「おにくぼくじょう」と言い出した。即座には意味がわからなかったけれど、黒いしましまが焼き肉の鉄板に見えたらしい。なるほど似ている。去年の秋に訪れたマザー牧場で見た牛より羊より馬より、焼き肉が印象に残っているたまは、マザー牧場を「おにくぼくじょう」と呼んでいる。

子どもは大人以上によく観察し、記憶している。それが、物を見立てる遊びに現れる。今日はお風呂の中で洗面器をかぶって、「なんかいにいきますか?」と聞いてきた。エレベーターガールのつもりらしい。そういえば、エレベーターガールの帽子って、てっぺんが平らになっているのがときどきある。それをどこかで見て覚えていたのではないだろうか。エレベーターに乗り込んで、たまみたいな女の子がエレベーターガールやってたらおかしいだろうなと想像して、今夜の子守話ができた。大人の真似してお仕事して、失敗もするけど感謝もされるのは、おさるのジョージ風。

子守話42 ちいさなエレベーターガール

てっぺんがたいらな あかいぼうしを 
あたまに ちょこんとかぶって
わたし エレベーターガールみたい

デパートのエレベーターにのりこんで
「いらっしゃいませ なんかいを ごりようですか」

おきゃくさんはびっくり
だって エレベーターのボタンより ひくいところで
エレベーターガールの こえがする

「3かいをおねがいします」とおきゃくさん
「かしこまりました」とエレベーターガール
ぴょんと とびあがって 3のボタンをおした

「5かいをおねがいします」とおきゃくさん
「かしこまりました」とエレベーターガール
だけど とびあがっても 5のボタンにとどかない
しかたがないから おきゃくさんが おしてくれた

8かい おもちゃうりばで とまったままのエレベーター
ひらいたドアのむこうは ちいさなエレベーターガールの すきなものだらけ
おきゃくさんごめんなさい もうすこし みていたいの

くだりはじめた エレベーター
まいごのおとこのこが のってきた
えーんえーんと ないてばかり ことばは まだうまくはなせない
こまったこまった おとなたち だけど 
ちいさなエレベーターガールには おとこのこのいいたいことがわかる

エレベーターをおりて おとこのこのてをひいて
いっしょにおかあさんをさがしにいった
ぶじ おとこのこのおかあさんを はっけん
「ありがとう ちいさなエレベーターガールさん」
さいごにひとつほめられて とってもいいきぶん

でも ほんもののエレベーターガールになるには まだまだ
おうちで おにんぎょうあいてに れんしゅうしましょう 

2008年02月10日(日)  誕生日ケーキ三昧
2007年02月10日(土)  秘密のトンネル
2005年02月10日(木)  「香盤表」の由来
2002年02月10日(日)  ペンネーム


2009年02月09日(月)  福福(200929)の日

39回目の誕生日がやってきた。2月9日で29歳を祝ったのが、つい数年前のことのように感じるけれど、あっという間に10年。「肉の日」と語呂が覚えやすいせいか、肉のアイコンつきのお祝いメールが携帯に次々と届く。「河豚の日」「服の日」でもある。

大阪出身でコピーライターで脚本家とわたしとは何かと共通点が多い友人の川上徹也さんからは「ブックの日」とお祝いメール。『仕事はストーリーで動かそう』など、このところ出版づいている川上さんは今日「ブックの日」関連イベントに出席するのだとか。肉、服、ブック。好きなものが語呂合わせになっているのはうれしい。そういえば、エッセー「出張いまいまさこカフェ」を連載している池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuは、毎月29日を「bukuの日」と呼んで映画の割引をやっている。

会社勤めしていた頃は、座席にプレゼントが届き、同僚がランチやディナーをごちそうしてくれ、一日中誕生日気分に浸れたけれど、フリーになると、いつもの日とあまり変わらない。朝、保育園に送る途中で娘のたまがハッピーバースデーを歌ってくれ(ちゃんと「ディアママ」になっていた)、その足で打ち合わせに向かい、打ち合わせを終えて帰宅すると、8時。急いでパスタをゆでると、ゆであがるのを待ち受けたかのように、「ウンチでた」。トイレへ連れて行くと、誕生以来最大と思われる規模の噴火の後で、どこから手をつけていいか途方に暮れる状態。ダンナと手分けしてトイレ掃除班と風呂で洗い流し班に分かれた。あたふたとトイレ掃除をしながら、ウンチパニックに見舞われる誕生日なんて今年限りかもしれないと思うと、楽しくなってきて、笑ってしまった。

とんだ誕生日プレゼントだったねと少々伸びたパスタを平らげ、「そうだ、冷蔵庫にいちごがあった」と取り出すと、「じゃあ、あれを出そうか」とダンナ。「たま、さっき練習したでしょ」とうながされて、冷蔵庫の奥に隠してあったケーキの箱を取り出し、たまに渡すと、「おたんじょうびおめでとう」と小さな手で差し出してくれた。思いがけないプレゼントにほろりとしていると、今度は奥の部屋に二人して引っ込み、オレンジの花束を持って戻ってきた。これまた贈呈の仕方を二人で示し合わせていたらしい。たまはサプライズのたくらみをちゃんと理解していて、そのときが来るまでナイショにしていた。2009年の誕生日は、「不(2)」意打ち「食(9)」らったの日となった。

mixiの2月9日生まれコミュニティをのぞくと、「2009年2月9日は福福の日」という書き込みがあった。2つのケーキを3人で分けて、台所にオレンジの花を活けて、福福。

2008年02月09日(土)  プレタポルテ#2『ちいさき神の、つくりし子ら』
2007年02月09日(金)  マタニティオレンジ76 母になってはじめての誕生日
2006年02月09日(木)  倉カルミネにて2006年の誕生日
2004年02月09日(月)  今年もハッピーバースデー
2003年02月09日(日)  何才になっても祝うのだ
2002年02月09日(土)  シモキタ(下北沢)


2009年02月08日(日)  もうひとつの人格? あかりちゃん登場

確定申告に一日費やす間、ダンナの実家で娘のたまを見てもらう。帰ってきて、夕食を食べるまでは「たまちゃん」だったのだが、お風呂を入る前に突然「わたし、あかりちゃんよ」と言い出した。「あかりちゃんて誰?」と聞いても、「わたし、あかりちゃんよ」。あかりちゃんなんてお友だちはいないし、読んでいる絵本にも登場しないのだけど、保育園の絵本に出てきたのだろうか。本人があかりちゃんだと言い張るので、こちらもつきあうしかない。

「じゃあ、あかりちゃん、たまちゃんのパパとお風呂入る?」とダンナがお風呂に入れた間も「あかりちゃん」になりきり、「あかりちゃんは、えらいね。たまちゃんはシャンプーいやがるんだよ」と言うと、いつもは抵抗するシャンプーにも耐えてみせた。なかなかの女優魂。

お風呂から出てからも、あかりちゃんごっこは続いた。間違って「たまちゃん」と呼ぶたびに、「あ、あかりちゃんだったね」と訂正していたが、時間が経つと本人も混乱してきて、自分のことを「たまちゃん」と呼んでしまい、元のたまちゃんに戻った。

あかりちゃんがどこから出て来たのはわからずじまい。「赤ちゃん」がなまったのだろうか。どうして突然別の女の子になったのだろう。わたしも小さい頃、「〜のつもり」と別人になりすます遊びをやったけれど、2歳の頃からやっていたのだろうか。もうひとつの人格とか乗り移りとか、怖いものじゃなければいいけど。

2008年02月08日(金)  整骨院のウキちゃん3 となりのトトロ編
2007年02月08日(木)  マタニティオレンジ75 授乳しながらランチ&シネマ
2006年02月08日(水)  クリピロ様セネガル行ってらっしゃい会
2005年02月08日(火)  映画『不良少年の夢』試写会
2004年02月08日(日)  FRIDAYの亀ちゃん
2002年02月08日(金)  フライングワイン


2009年02月07日(土)  『パパ ママ バイバイ』と講談「哀しみの母子像」

朝刊2紙と夕刊1紙。あっという間に古新聞になってたまるそれを何日かに一度、バサバサとまとめて目を通し、目に留めた記事を切り抜く。ひとつの見出しに立ち止まる時間は数秒だけど、アンテナを張っている記事とは目が合う。「32年前 横浜の米軍機墜落事故知ってますか 母子の無念講談に」という東京版の見出し(2月1日朝日)が目に飛び込んだ瞬間、もしかして、と思い出したのは、子どもの頃に繰り返し読んだ絵本だった。

米軍機が民家に突っ込み、幼い兄弟が亡くなるが、重症を負った母親は子どもたちの無事を信じ、もう一度会えることを励みに苦しい治療に耐える。1歳だった弟の康弘君が息を引き取ったときの言葉がタイトルになった『パパ ママ バイバイ』。同じ著者・早乙女勝元さんがベトナム戦争で孤児になった女の子を描いた『ベトナムのダーちゃん』とともに、幼なじみのヨシカと何度も読んでは、「ひどい話やなあ」「かわいそうやなあ」と嘆きあった。

調べてみると、『パパママバイバイ』の刊行は1979年3月。わたしが9歳のときだ。本を読んだのは小学校3、4年の頃だった記憶があるから、本が出てすぐに読んだのだろう。本はわが家にあったものなのか、ヨシカの家にあったものなのか。米軍機墜落が77年9月27日で、兄弟の母親・和枝さんが亡くなったのが事故の4年後。絵本の中では、和枝さんは生きる力を振り絞っていた。けれど、和枝さんが亡くなった日のことは記憶に残っている。「宮崎緑さんが泣きながらニュースで言うてた」と知らせてくれたのもヨシカだった。

そんな記憶のかけらを拾い集めながら新聞記事を読んだ。和枝さんの父・土志田勇さんと講談師の神田香織が知り合い、「事故のことを講談にしてもらえたら」と頼まれてから3年。その間に土志田さんは亡くなってしまったが、約束の講談がついに完成し、7日に初披露するという。主催は憲法行脚の会で、土井たか子さんのトークもあると書かれているのを見て、これは行けということだと縁を感じた。土井さんとは5年前にお会いする機会があり(2004年8月26日(木) 土井たか子さんと『ジャンヌ・ダルク』を観る)、それ以来ご無沙汰していた。

そして、当日の今日。講談が始まるぎりぎりに会場に着くと、ほぼ満席。講談は横浜の海の見える丘公園に立つ「愛の母子像」の風景で始まり、回想を経て現在に終わる。もう一度わが子を抱きたいという願いを形にした母子像と、それがかなわなかった現実の対比が哀しい。平和な暮らしを一瞬で奪った墜落事故。自衛隊のヘリコプターが軽症のアメリカ兵だけを救助して現場から去ったこと。全身を焼かれるような治療の苦しみ。多くの人から善意を差し出されての皮膚移植。事故から1年4か月経って子どもたちの死を知らされたこと。それでも生きる希望を奮い立たせ、子どもたちの分も生きようとしたこと。絵本の記憶をたどりながら聞いたが、絵本が刊行されてから亡くなるまでの間に、さらに辛い出来事があったことを講談で知った。心理療法がうまくいかず、最後は精神病患者扱いされ、呼吸困難のために喉に差し込まれた器具で会話もままならず、心の叫びを聞き届けられない形で和枝さんは亡くなっていた。この世の中に、これほどの無念があるのかと打ちのめされ、呆然となった。

休憩を挟んで、神田さん、土井さん、漫画家の石坂啓さんのトークとなった。和枝さんたちが犠牲となった事故では9人が死傷、他にも市民が犠牲になった米軍機墜落事故があるという。だから米軍基地や安保条約や自衛隊はけしからん、と頭ごなしに否定する論調には飛躍を感じてしまったが、和枝さんたちの死から何を学べばいいのか、平和な暮らしを守るとはどういうことか、考える機会をもらった。わたしの中でも風化していた事故に、親になった今再会したのも、何かの縁かもしれない。娘のたまは2歳で、3歳と1歳で亡くなった兄弟の間の年齢。かわいい盛りの子ども二人を奪われ、幸せな暮らしを奪われ、未来を奪われた和枝さんの絶望を想像すると、やりきれない。何の罪もない市民がなぜこんな目に遭わなくてはならないのか、その無念と怒りを忘れないでいたい。わたしの座席の足元で昼寝の寝息を立てるたまを見ながら、そう思った。


会場は、三田駅からすぐの「女性と仕事の未来館」。初めて訪れたけれど、木をたくさん使ったあたたかみのあるインテリアの明るい雰囲気が気に入った。2階にあるカフェの店員さんに聞くと、厚生労働省の建物なのだそう。「Makiba Style」という店名は、お役所センスなのか。好きなデザートを3種類選んだ盛り合わせが499円。ケーキセットにすると、ドリンクが199円でつけられる。食事メニューも充実していて、ここは穴場。おむつ替え台と子どもトイレがそろった広々トイレもあり、たまは大喜びだった。

2008年02月07日(木)  映画『歓喜の歌』に感きわまる
2007年02月07日(水)  マタニティオレンジ74 子育て中の美容院とエステ
2004年02月07日(土)  二人芝居『動物園物語』


2009年02月06日(金)  倍速カレンダー

シモの話で恐縮だが、ひと月前、正月明け早々に近所の婦人科に駆け込み、「不正出血です!」と訴えた。その朝に出血に気づき、悪い病気だったらどうしよう、仕事はキャンセルかなどと考えていたら目の前の仕事も手につかず、ネットで調べてみても安心材料は見つからず、「医者に診てもらうのがいちばん」と家を飛び出したのだった。

診察の結果は、「月のものです」。拍子抜けしたわたしに、「前回はいつだったんですか?」とお医者様。「よく覚えていませんが、ついこないだだった気がします」と答えると、「ちゃんとつけといたほうがいいですよ」と基礎体温表を渡され、ストレスや疲れで生理不順が起きているのかもしれませんから経過を見てくださいねと送り出された。安心を手に入れると、数千円の検査費は高くついたなとケチくさいことを思ったりした。

そして、再び「月のもの」がやってきた。基礎体温表はほったらかしだったけれど、不正出血騒動が記憶に刻まれているので、前回がいつだったかは覚えている。「ついこないだ」と思っている間に、きちんと4週間の時が流れていて、おかしいのはわたしの体ではなくて時間感覚だったことがはっきりした。カレンダーが倍速で過ぎていっているような感じで、1月中に書くはずだった年賀状を、今頃になって書き始めている。

時間に流されていると、日々刻々と変わる娘の成長も倍速で飛ばして見ることになりかねない。娘のたまと向き合う時間は大切にしなくてはと思う。このところ、たまのお気に入りは「パパのおるすばん」の話。パパが一人で留守番してカレーを作っているところに、お土産を持ってママとたまが帰宅するという展開。日によってお土産がコロッケだったり豆腐だったりみかんだったりするので、コロッケカレーにしたり、豆腐をカレーにまぜたり、カレーの後にみかんになったり。ママとたまが時間差で帰宅するパターンもある。

子守話41 パパのおるすばん

パパがおうちにかえると ママもたまちゃんもいませんでした。
パパはひとりでおるすばん。
ばんごはん なにたべようかなと れいぞうこをあけると
おにくがちょっぴりと いろんなやさいがちょっとずつ。
そうだ カレーをつくろう。
おにくをいためて やさいをいためて ぐつぐつにこんでいると、 
ピンポーン。ママとたまちゃんが おかいものからかえってきました。
うわあ おへやのなかが とってもいいにおい。
きょうのばんごはんは カレーだよ。
たまちゃんのおみやげは コロッケだよ。
パパとママとたまちゃんは おいしいコロッケカレーをたべました。

2008年02月06日(水)  『看護』4月号に「玉稿」掲載
2007年02月06日(火)  マタニティオレンジ73 ひろくてやわらかい床を求めて
2004年02月06日(金)  ミニ同期会
2002年02月06日(水)  電車にピップエレキバン


2009年02月05日(木)  焼き鳥屋で会社の同窓会

広告会社のコピーライターをやめて、3年半。会社を辞めていちばん淋しいのは、飲み会が減ったこと。残業が毎日のことだったから、晩ご飯は大抵同僚と食べていた。残業中の残メシのこともあれば、仕事が終わってからの帰りメシのこともあり、何日かに一度はお酒が入り、仕事の打ち上げやら歓送迎会やら飲み会はちょくちょくあった。会社をやめてフリーになったとき、そういうつきあいがバサッ、ドサッとなくなってしまった。

だから、保険会社や冷凍食品協会の仕事で組んでいたアートディレクターのフジモトさんから飲み会の誘いが来て、飛びついた。恵比寿にある牛タンと焼き鳥のお店『りん』に集まったのは、フジモトさんとわたしの他に、オオツカ君、オバタさん、イシワリ君とフジモトさんの5人。オバタさんとわたしが女性、オオツカ君とわたしがコピー出身で、あとの3人はアート。同じ頃に会社にいたけれど、今は全員辞めて、あちこちに散っている。

フジモトさんとわたしは誕生日がひと月違いで、10歳違い。2月9日にわたしが29歳になった翌月の3月9日にフジモトさんが39歳になった年、保険会社の仕事でロサンゼルスへロケに行った。「空でスカイ?」「雪でスノー」「砂糖でシュガー」などと英語ダジャレを言い合って、笑ってばかりの毎日だった。10年も前のことなのに、昨日のことのような気がする。わたしのダンナが年下だと思い込んで「フジモトくん」と呼んだほど見た目は若々しいくせに、オッサン化炭素(CO3)の放出量は半端ではなく、「地下一階は近いかい?」「墓地にぼちぼち行くか」などとぼやいては、周囲をオッサン化炭素中毒に陥らせていた。

フジモトさんとは、冷凍食品協会の仕事で中国の冷凍食品工場をマイクロバスで訪ねて回ったこともあった。当時はほうれん草の残留農薬問題で大騒ぎになっていたけど、去年の餃子事件に比べたら、まだ警戒レベルは低かった。工場を案内してくれた人たち、皆さんどうしているだろう。

同窓会をするたび、自分の昔を知っている人は、脳みその出張所だなあと思ってしまう。本人が覚えてないことを覚えていてくれ、何年も忘れていた名前を思い出させてくれる人たち。脳みその奥深くに沈殿していた記憶がかき回され、ゆっくりと浮き上がってくるのが面白い。

元同僚との同窓会で盛り上がるのは、思い出話ともうひとつ、今の会社の噂。広告業界はかなり厳しい時代になっていて、われらが古巣も例年になく苦労を強いられている様子。脚本家でなくなって、もう一度会社員になるとしたら、またあそこで働きたいと思うぐらい好きな会社なので、頑張って欲しい。

フジモトさんが年末に行ったコスタリカのリゾートの写真を見せてもらったり、「確定申告は青色と白色とどっちでやるべき?」話をしたりするうち、5時間が過ぎて、終電の時間になった。5人の中で、いちばん最近会社を辞めたのがオバタさんで、「話し相手がいなくて、毎日淋しいのよ〜。また相手にしてよ」と言うのを聞いて、わたしも辞めたとき、そうでしたと話す。一日に使い切るべき言葉が使い切れなくて、生ゴミみたいに腐ってガスがたまっていく感じ。時間が経つと慣れるけれど(言葉分泌量が減るのか?)、やっぱり飲み会でワイワイやるのは楽しい。

【今日のおやつ】古賀音だんご みたらし

いただきもののみたらし団子。幡ヶ谷にあるふるや古賀音庵というお店の名物「古賀音だんご」のみたらし味。説明書きに「たった一日しかもちません(中略)本物が持つ美味しさは一日のはかなさのなさに、と拘り続けてまいりました」とある。その姿勢にほれぼれし、昨日いただいたのだから、急いで食べなくては、とまず3本。止まらず、ひと箱5本ぺろりと平らげる。だんごもたれも上品でやさしくて、これは危険。ブレーキがかかりません。

2008年02月05日(火)  マタニティオレンジ234 牛乳を飲みたい
2007年02月05日(月)  マタニティオレンジ72 出産ドキュメント
2002年02月05日(火)  3つの日記がつながった


2009年02月04日(水)  映画になった『鴨川ホルモー』

2007年に読んだ約100冊のなかで、5本の指に入る面白さだった『鴨川ホルモー』が、ついに映画化。読んだときは、「映像化は難しいかなあ」と思ったけれど、同じ筆者・万城目学さんの『鹿男あおによし』がドラマ化されたのを観て、ホルモーもひょっとしたらと思ったら、暮れに映画館で予告に遭遇。映画化されるんだったら、脚本やりたかったなあと悔しがりつつ、原作ファンとしては早く観たくてウズウズする気持ちでマスコミ試写に駆けつけた。

原作を知ってから映画を観ると、「あの人物が、あの場面が、形になってる、動いてる」という嬉しさと同時に、「想像したよりよかった」「想像してたほうがよかった」と一喜一憂してしまい、純粋にストーリーを楽しむことより、そちらの答え合わせに忙しくなってしまう。この作品の場合、役者さんがかなりイメージに合っていたことで、すんなりと物語の世界に入っていけた。舞台である大学は母校であり、ロケも大学やその近辺で行われているので、これもイメージ通りだったのだけど、懐かしさをかき立てられて、学生時代の思い出がやたらと蘇り、そちらのほうで頭が忙しくなってしまった。どこからかトランペットの音がいつも聞こえているボックス(部室)。立て看板に囲まれたキャンパス。住人が仙人に見える百万遍寮(ロケ地は吉田寮)。生活力のなさを物語る男の下宿も、服装も髪型も会話も自転車の乗り方もコンパのノリも、こんな感じだったなあとうなずきながら観てしまった。三十路近い役者さんが学生役を演じても不自然にならず、むしろリアリティを感じさせる。荒川良々さん演じるような年齢不詳、時代も超越しているような先輩は確かにいた。

「ホルモー」という音ありきで原作が生まれたという話を聞いたことがある。この響き、よほどキャッチーなのか、2歳半の娘が試写状を見て、「これなに?」と聞くので、「ホルモーだよ」と答えると、それ以来「ほるもぉ〜〜〜〜」と連発している。伸ばして、繰り返したくなる中毒性があるらしい。「ホルモー」ありきで生まれた謎のサークルが闘う競技のルールも彼らが執り行う儀式もすべて架空のもの。だけど、新歓で誘われた新入生たちは怪しみつつも入ってしまい、抜けられなくなり、時が経つと、次の獲物を狙って新歓の歴史を繰り返す。活動内容は違えど、わたしが4年間をどっぷり過ごした応援団にも似たところがあった。ビールを真っ先に飲んだ一人だけが先輩の名刺を頂けるとか、灯油のポンプで酒を飲まされる(北のSS=サッポロソフトと南のSS=薩摩白波という二大アルコールが君臨していた)とか、酒の飲み方は常識離れしていたし、関係者にしかわからない歌や挨拶や儀式があった。「普通の大学生活を送りたい」と言って去っていく仲間も多かったけれど、「どうせ4年しかいられないんだし、この状況を楽しもう」という人や、抜けることも面倒になった人は残った。大学のクラブ活動という閉じた世界だけに通用する価値観って確かにあったなあと振り返り、不思議でへんてこだったけど、あんな4年間は二度と体験出来ないなあと感傷に浸った。

現実にはありえなくても、あの気分はすごくわかる。それが『ホルモー』。原作を読んでなくても、京都で大学生活を送ってなくても、学生時代特有の「あれは何だったんだろう」的没頭や熱中や迷走を体験したことがある人は、『ホルモー』に昔の自分を重ねられると思う。大人になれば壁でないものが学生時代は壁である(その逆もしかり)。登場人物たちを動かす理由や感情のひとつひとつに、受験から解放されて就職活動はまだというモラトリアムな学生らしさがよく出ていた。

監督は『犬と私の10の約束』の本木克英さん、松竹のプロデューサーは『子ぎつねヘレン』でお世話になった矢島孝さんと、企画開発で本作りをご一緒したことのある野地千秋さん。さらに主役の安倍明役は『ジェニファ 涙石の恋』主演・荒木隆志役の山田孝之さん。安倍とあやしげなサークル青竜会に同期入部する三好ブラザーズの兄役に『快感職人』で橘隼人役だった斉藤祥太さん。さらに『天使の卵』で美術教師役だった甲本雅裕さんも出演……という贔屓を差し引いても、十分楽しめる作品。でも、原作を読んでから観ると、より楽しめると思う。

【今日のおやつ】クリスピー・クリーム・ドーナツ

東銀座にある松竹の試写室からの帰り、有楽町イトシア地下のクリスピー・クリーム・ドーナツで、行列初体験。一時期のような長蛇にはなっていないものの平日の昼でも25分待ち。一個だけ買おうと思っていたら、並んでいる途中でオリジナル・グレーズドが一人一個配られた。できたてのおいしさは、格別。それですっかり満足してしまったものの、行列から抜けては食い逃げになるので、2個買って、カロリー増強。

2008年02月04日(月)  マタニティオレンジ233 子守話5「こんにちは さようなら 雪だるま」
2007年02月04日(日)  マタニティオレンジ71 「鼻からスイカ」伝説
2002年02月04日(月)  福は内


2009年02月03日(火)  嫉妬しました『60歳のラブレター』

いいらしいよと前評判を聞いていた『60歳のラブレター』を観る。撮影は芦澤明子さん。お会いしたことはないのだけど、昨年公開された『しあわせのかおり』の中華料理を実においしそうに撮った人。その香り立つ湯気に感心して、今年審査を務めた毎日映画コンクールのスタッフ部門の撮影賞にこの人を推した。同じく昨年公開の『トウキョウソナタ』の撮影もこの人。なんでもない家の中や道が持っている張りつめた感じやさびしげな感じをうまくとらえていて、空気を切り取るのがうまいなと感じた。毎日映画コンクールでの貴重な体験以来、監督や脚本以外のスタッフにも注目するようになり、映画を観るときの楽しみが増えた。

プロデューサーは、わたしの映画デビュー作『パコダテ人』を送り出し、『しあわせのかおり』でも芦澤さんと組んでいるビデオプランニングの三木和史さん。『村の写真集』『しあわせのかおり』とハートウォーミングな作品が続いている。今回はタイトルからして、わたし好み。観る前から「これ、書きたかったなあ」と思っていたけれど、観てみると、『三丁目の夕日』や『キサラギ』の古沢良太さんの脚本が実によくできていて、「かなわないなあ」と出来映えに嫉妬した。3組のカップルを描き分けつつ絡めて、それぞれに感情移入させ、見せ場を作り、伏線を回収しながら盛り上げていく。これだけの短時間にこれだけのエピソードと感動をまとめたのはお見事。脚本の古沢さんは73年生まれだけど、監督の深川栄洋さんはさらに若くて76年生まれ。その世代が60歳の映画を作ったことも興味深い。

登場人物の平均年齢の高さや抱えているものの重さの割に軽やかさを感じさせるのは、作り手の若さのせいなのかもしれない。日本映画が中高年の恋を描くと野暮ったくなりがちなのだけど、この作品は洋画のような憧れを味わわせてくれる。原田美枝子さん演じる地味な専業主婦があか抜けていく様はハリウッド映画のシンデレラストーリー風でもあり、実際彼女は美しく輝いていて、観ていてワクワクした。年を取っても、ネズミ色なんか着ないで、カンヌのビーチを散歩してたフランスのおばあちゃんみたいに花柄のワンピースをフリフリさせた下から原色のタイツをのぞかせて颯爽と歩くんだ、とわたしは勝手に自分の未来を思い描いているけれど、この映画を観て、日本の中高年がAラインのワンピースをこぞって着るようになったら楽しいなと思う。

中村雅俊さん演じる定年サラリーマンも、イッセー尾形さんと綾戸智恵さん演じる魚屋夫婦も、戸田恵子さん演じる翻訳家も、井上順さん演じる不器用な医師も、こんな人いそうだなあと思わせて、それぞれの恋の描き方もとても自然だった。イッセーさんの味のある言い回しに、『つばさ』での語りと謎の「ラジオの男」役がますます楽しみになった。

観終わってから、三木さんに「よかったですよ」と電話し、「三木さんのキャラであんな素敵な作品を作るなんてねー」とからかうと、「何言うてんですか。僕はロマンティストですよ。ガハハハ」と笑っていた。ガハハハという感じではないけれど、アハハ、クスッと笑えるところもたくさんあって、老若男女に愛される作品になる予感。5月ロードショーとのこと。

今日は節分。わたしは祖母の誕生日の2月4日を節分だと記憶していたし、子どもの頃は4日に恵方巻を食べていた記憶があるのだけど、いつの間にか3日が節分になっている。近所にある大阪鮨の恵方巻とさぼ天の「えびカツ恵方巻」を家族3人でかぶりながら、60歳はまだまだ先だなあと思った。

2008年02月03日(日)  雪の日の恵方巻
2007年02月03日(土)  映画『それでもボクはやってない』と監督インタビュー
2004年02月03日(火)  東北東に向かって食らえ!
2003年02月03日(月)  納豆汁・檜風呂・山葡萄ジュース・きりたんぽ
2002年02月03日(日)  教科書


2009年02月02日(月)  川端康成の『片腕』風子守話

娘のたまとお風呂に入っていたら、「これ ケェコのあんよ。たまちゃんのあんよ こうえんいってるの」と言い出した。言葉が達者になってくると、言うことも文学的になってくる。足だけ切り離して遊びに行くとは川端康成の怪談『片腕』のよう。今日の子守話は、たまを置いて公園へ行った足の話。ビジュアル的にグロテスクな気がして、帽子をかぶせてみた。下半身だけの人物が登場する話を以前『世にも奇妙な物語』の企画に出したけれど、ワイセツな感じがしたらしく、却下された。わたしが書けばイヤラシくならないと思うのだけど、映像にするとやっぱり怖いだろうか。

子守話40 たまちゃんのあし

たまちゃんがおひるねしているあいだに
みぎあしとひだりあしが こっそりふとんをでて 
くつをはいて そとにでかけました。
あしだけがあるいていると みんながびっくりしてしまうので
あしのうえに むぎわらぼうしをかぶりました。 

ぼうしをかぶったあしとすれちがっても
ふりかえるひとはいません。
ぼうしのしたからあしがのびているなんて だれもおもわないのです。

たまちゃんのあしは こうえんへむかいました。
いつも もっとあそびたいのに パパやママが
おうちにかえるじかんですよといって 
たまちゃんをつれてかえってしまうのです。

けれど あしだけであそぶのは たいへんでした。
ブランコは ぐらぐらして うまくのれません。
てがないと くさりをつかめないのです。
すべりだいのとちゅうでとまっても てでこげないので 
しゃくとりむしのようにくねくねとすすむしかありません。
やきゅうのボールがとんできて なげられないので 
けりかえすと いやなかおをされてしまいました。

やっぱり あしだけであそびにきても つまんないや。
みぎあしとひだりあしは たまちゃんのうえはんぶんが
ねむっているおふとんへ かえっていきました。
すっかりくたびれて へとへとだったのに
みぎあしとひだりあしが もとどおりにくっついたとたん 
たまちゃんはめをさまして げんきよく おきあがってしまいました。

おひるねがおわって たまちゃんはこうえんにあそびにいきました。
ブランコもすべりだいも じょうずにできましたが
みぎあしとひだりあしは ねむくてしかたありません。
こんなひにかぎって たまちゃんのパパとママは
なかなかむかえにきてくれないのでした。

2008年02月02日(土)  マタニティオレンジ232 ごちそうを人一倍楽しむ方法
2007年02月02日(金)  マタニティオレンジ70 子連れで江戸東京博物館
2005年02月02日(水)  しましま映画『レーシング・ストライプス』
2003年02月02日(日)  十文字西中学校映画祭
2002年02月02日(土)  歩くとわかること


2009年02月01日(日)  『指人形 笑吉』はすごかった!

「谷中でそっくり指人形作ってくれるとこがあるらしいよ。しかも、その人形で人形劇やってくれるんだって」とダンナが谷中に住む知人から聞きつけ、娘のたまのそっくり人形が人形劇を演じる光景を想像し、「そこ行こう!」と話している矢先、朝のテレビでその『指人形 笑吉』が取り上げられた。おじいちゃんの顔した人形の体当たりのギャグにたまは釘づけになり、「ここ いく!」。一家の思惑が一致し、谷中へ向かうことになった。

団子坂の交差点から谷中に向かって坂を上り、左手のせんべい屋で醤油せんべいを買って、すぐ先の角を左に曲がって、看板を目印にすぐ右へ。細い路地の奥にある一軒家に着くと、表で一服していたおじさんが「ちょうど今からやりますよ」。3人以上そろったら約30分の演目を上演。お代は一人五百円。小学生以下無料。途中からの人は心付けでとなっている。親指と中指で操る指人形のパントマイムに合わせて、先ほどのおじさんがちょこっと味のある解説をつけ加える。登場人物はほぼすべて笑吉じいちゃんだけど、演目によって人形を使い分けている。それぞれにふさわしい顔つき、手つきがあるのだ。「笑い上戸」「酔っぱらい」「朝帰り」に続いて、3匹の魚を釣り上げてカゴに納める「魚釣り」、瓦せんべいを空手で割る「瓦割り」(割ったせんべいは観客にふるまわれた)。しわくちゃの足が見え隠れする「ウォーターボーイズ」は「生涯現役」の横断幕でしめくくる。一瞬の早業の「剣玉」、頭の上で棒をぐるぐる回す「曲芸」、ラストの「五十年後の冬のソナタ」では頭にカゴをかぶせあい、実に自由自在に動く。芸達者なコメディアンぶりに、人形であることを忘れてしまうほど。

たまは最後までおとなしく見ていたけれど、ぽかんと口を開けてあっけに取られ、笑うにはまだ早かった様子。予想以上の面白さに感心しきりで拍手をしたら、驚きには続きがあり、千円で描いてくれる似顔絵の素早さとうまさに目を見張った。彩色もお見事で、これはもう名人芸。合間に額の汗をぬぐったりして、どこまでもお茶目な笑吉画伯だった。

人形劇が演じられる雛壇には歴代首相や芸能人のそっくりさんを始め、指人形がずらり。こちらを使った演目も見てみたい。そっくり指人形は人気殺到で、6年分注文がたまっていて新規の受注は止めているとか。6年経てば、たまの顔も変わってしまっている。次回は似顔絵目当てに来てみよう。

帰りは5分ほど歩いて谷中の商店街で谷中メンチ(メンチカツ)を買って食べ、バスに5分揺られて上野動物園へ。北風が吹きすさぶ動物園、暖房の効いた屋内展示が大人気だった。

今日の子守話は、動物園で会えなかったきりんの話。「きりんさんがそらとぶはなし」は、たまからのリクエストだけど、今日きりんがいなかった理由については、「キリンさんころんじゃったの。バラバラになったの」と物騒な推理をしていた。

子守話39 そらをとんだ きりんさん

そらをとびたいようと きりんさんがためいきをつきました。
たまちゃんは きりんさんにはねをつけてあげましたが
からだがおおきすぎて うまくとべません。

おかしいな。あんなにおおきいひこうきは そらをとべるのに。
たまちゃんは きりんさんをひこうきにのせてあげようとおもいつきました。
けれど きりんさんのきっぷは うっていませんでした。

たまちゃんは がっかりしているきりんさんの えをかいてあげました。
とてもじょうずにかけたので そのえを コンクールにだしました。
それは ひこうきのかいしゃがひらいたコンクールでした。
いっとうしょうになったえを ひこうきにかいてくれるのです。

たまちゃんがかいた きりんさんのえが いっとうしょうになって
きりんもようのひこうきが そらをとぶことになりました。

きりんひこうきが はじめてそらをとんだひ。
たまちゃんときりんさんは くさのうえから みあげました。
きりんさんは ながいくびをぐーんとのばして みていました。
とんだ とんだ とんだ。
まるでじぶんがそらをとんだように きりんさんはおおよろこびしました。


【今日のおやつ】イルホウレンソウの「黒糖のドライフルーツケーキ

2008年に出会ってはまったお取り寄せイタリアンのイルホウレンソウは、パスタはもちろんスイーツも優秀。ガトーショコラがとてもおいしかったので、ドライフルーツケーキも取り寄せてみたところ、洋酒にしっかり漬け込んだ木の実がどっさり。1000日漬け込んでいるそうで、いい仕事してます。生クリームを添えてどうぞと説明書きにあったけれど、ハーゲンダッツのバニラを合わせてみたら相性バッチリ。2歳児の娘も「うめ〜」ともりもり食べていたけど、かなりお酒が効いているので、大人の味。イルホウレンソウ、初めて購入の方には割引があるのでお見逃しなく。

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