2007年03月02日(金)  マタニティオレンジ85 孫をかわいがるのは人間だけ

妊娠・出産に際して数々の忘れがたい言葉を贈られた。友人で医師の余語先生に言われた「孫をかわいがるのは人間だけ」は印象的な言葉のひとつ。動物が子どもをかわいがるのは本能だが、孫に特別な感情を寄せるのは人間ならではなのだという。三つ先の駅に住む義父母は、娘のたまの誕生を心から歓迎し、よくかわいがってくれる。血を分けた孫だからこその愛おしさはもちろんあるのだろうが、他人の孫をかわいがれるのもまた人間ならではだと最近つくづく思う。

たまを抱っこして街を歩いていると、すれ違う年配の方々が顔をのぞきこみ、声をかけてくれる。「あら、髪が豊かでいらっしゃること」「もう何か召し上がっていますか」「どれぐらい経ちましたか」「今日はお出かけ日和ですわね」。文京区という土地柄か、上品な言葉使いの方が多い。わたしは人と話すのが好きなので、相槌を打ちながら「お子さんを九人もお育てになったんですか」「曾孫さんがいらっしゃるんですか」などと感心したり、「この子はバスの揺れが好きなんです」「メガネを見ると、パパの仲間だと思うみたいです」などとわが子の解説をしたりする。まだ言葉を話せない子どもと部屋に二人でこもる時間が長いので、他愛のないおしゃべりはいい気晴らしになる。

今日、友人宅へ遊びに行こうと駅へ向かっていたら、突然かばんが重くなった。見ると、おばあさんがかばんにぶらさがっている。ぶらさがっているように見えたのは、身長150センチのわたしよりさらに小柄な方だったからで、「あたしが持ちますよ。あなた大変だから」とわたしのかばんの紐に手をかけ、引っ張っているのである。「大丈夫です」と言っても、「どこにも持って行きやしませんから」と引かない。おばあさんのことは疑っていないけれど、肩に掛けた紐を外して受け渡しするのも面倒だし、恐らくわたしのほうが体力も腕力もある。「ほんとに大丈夫です」と重ねてお断りすると、とても残念そうな顔をされたので、「そのかわり、あやしてやってください」とお願いした。一緒にいる理由ができて、改札を抜けるまで並んで歩いた。

出産以来、新聞でも街の掲示板でも「地域の子どもをみんなで育てよう」といった呼びかけが目に留まるようになった。街のじいじばあばに見守られているという安心感は、わたしにはとても心地よくてありがたい。

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2005年03月02日(水)  昭和十六年の教科書
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