2009年07月31日(金)  赤ずきんのアクセサリーとノックごっこ

ひとたび足を踏み入れると、心奪われるアクセサリーの迷宮から抜け出せなくなる雑貨セレクトショップ「マリッツァ(Marizza)」で、赤ずきんのネックレスとピアスに恋をし、連れて帰ることに。パリのN2というブランドのもので、バスケットに入ったフランスパンとワインがとてもキュート。カラットを競うダイヤモンドより、わたしは食べものアクセサリーによろめいてしまう。

同じブランドの赤ずきんシリーズには「おおかみと赤ずきん」のアクセサリーもあり、おばあさんに扮したおおかみがお茶目。最近、娘のたまがノックごっこをやるようになり、「トントン」とノックの音を受けて、「誰ですか?」とこちらが問いかけると、「おおかみ〜!」とうれしそうに飛びかかってくる。「おばけ〜」「たまちゃ〜ん」などのバリエーションもあり、正体がわかったときのこちらの大げさな反応が楽しい様子。「トントン、だれですかー」と台詞を続けて一人二役をやってしまうこともあり、おかしい。

2008年07月31日(木)  ファミレスで働く
2007年07月31日(火)  マタニティオレンジ153 クッキーハウス解体イベント
2000年07月31日(月)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月30日(木)  美しすぎる運命の映画『スラムドッグ$ミリオネア』

なかなか観るタイミングがなかったが、先日会った友人が「洗面器いっぱい分泣いた」と言うのを聞いて、ついに『スラムドッグ$ミリオネア』を観た。「クイズミリオネア」で勝ち進んだ青年がイカサマを疑われ、最終問題を前にして警察で取り調べを受ける。そこで彼の人生が語られ、彼が答えを知っていた理由が明らかになる。クイズ番組、取り調べ、回想の切り替わるタイミングといいその構成といいお見事で、編集のリズムすら音楽を刻んでいるよう。ともすれば3時間を超えそうな物語を2時間に納め、観客をハラハラさせ続けるダニー・ボイル監督は、さすがあの『トレインスポッティング』を撮った人。

あの作品も走る(逃げる)場面が印象的だったが、今回の作品も主人公はひたすら走る。そのときに流れる景色の中で、彼の目に焼き付いたものが一瞬カメラのシャッターを切るように切り取られたりするのだが、いつの間にか観客は主人公の目になり、彼と同じ景色を共有する。台詞ではなくカメラワークで感情移入させるのだな、と勉強になった。

スラム育ちで教育を受けていない青年が知り得た答えは、彼がたどってきた過酷な人生で出会った出来事の中にあった。それは運命としかいいようがない……という筋書き。わたしは不幸や不運もネタにして元を取れる脚本家という職業柄、「人生に無駄なことなんてない」とよく言うけれど、それはネタにして笑えるぐらいの不幸や不運しか背負ってない人間だから言えるお気楽な人生観なのかもしれない。自分で人生を選べない者が、くぐり抜けて来た辛い過去を「運命」として受け止める重みはケタ違いで、だからこそやっとたどり着いたハッピーエンドに喝采と涙を飛ばしてしまうのだ。インド映画のお約束の踊る大団円を観ながら、幸せになって良かった、と心から祝福したい気持ちになった。観終わった後の充足感は、これまでに観た映画のベスト5に入ると思う。

幼い頃の2年間、隣人がインド人一家だったこともあり、インドにはことのほか親しみを覚えている。幼なじみだったポピーちゃんの結婚式でデリーを訪ねたのが最初で最後のインド旅行だが、そのとき、至る所で目にする物乞いの子どもたちに驚き、戸惑い、怖れすら感じた。生きることに必死な彼らの姿が劇中のスラムの子どもたちと重なった。「クイズミリオネア」はアメリカにもイギリスにも日本にもあるけれど、この番組を題材にした物語の舞台がインドでなければ、運命を引き寄せた青年の強さをここまで感動的に描けなかっただろう。

原作『ぼくと1ルピーの神様』を書いたヴィカス・スワラップのインタビューを新聞で読んだが、彼は外交官でもあり、ひらめきを得て仕事の合間に一気に書き上げたのだという。原作から映画化にあたっては大幅に変更がされているそうで、こちらも読み比べてみたい。

2008年07月30日(水)  マッシュルームにすると美味
2007年07月30日(月)  劇団ダンダンブエノ公演『砂利』
2004年07月30日(金)  虹色のピースバンド
2003年07月30日(水)  脚本家ってもうかりますか?
2002年07月30日(火)  ペットの死〜その悲しみを超えて
2001年07月30日(月)  2001年7月のおきらくレシピ


2009年07月29日(水)  24億の瞳、きらり。「瀬戸内国際子ども映画祭」

2011年開催を目指して準備を始めた「瀬戸内国際子ども映画祭」の実行委員会が東京であり、出席する(写真は差し入れで出された麹町のパティシエ・シマのチーズケーキ。MOBA アカデミアの的場朱美さん、ごちそうさまでした)。6月に小豆島で顔合わせの会があったのだけど、馳せ参じることができず、今日が初めての参加。とはいえ声をかけてくださった小豆島オリーブランドの柳生会長をはじめ、集まった方の多くが小豆島がロケ地の『ぼくとママの黄色い自転車』関係者で、はじめましての方は4名。

今日の打ち合わせは、どういう映画祭にしたいか、何をしたいか、何が参考になるか、どこが協力してくれそうか、などそれぞれのアイデアを持ち寄る会。三人寄れば文殊の知恵とはこのことで、「それなら、この人を紹介できます」「こんな活動があるんですけど」と人や情報がどんどんつながる。ゼロから作り上げる映画祭の輪郭が早くも描けそうな手応えを感じ、ワクワクする時間となった。

忙しい人たちが三々五々散った後、柳生さんと雑談。「打ち合わせの後のこの時間が、いいんだよ」と同席した娘の照美さんに話されていたが、たしかにこういうおまけの会話には、鍋の後の雑炊のような、うまみがある。柳生さんとお会いするのは二度目だが、共鳴するところが多い。

「僕はね、やりたいと思ったことは必ず実現できるんです。願っていると、そのために必要な人と出会えるんですよ」と柳生さん。「小豆島で映画祭をやりたい!」と思っていたら、ある方のお通夜で『風の絨毯』プロデューサーの魔女田さんこと益田祐美子さんと出会ったのだそう。「人と人をつなげることが得意な方だったんですが、亡くなってからもつなげてくれました」と言う。柳生さんが『ぼくママ』に関わっていることを聞いた益田さんが「それってもしかして今井さんが脚本を書いた映画?」と反応し、わたしと柳生さんがつながって、わたしも映画祭の準備に巻き込まれることになった。「傘と心は開いているときがいちばん役に立つ」という名言を教えてくれたのは益田さんだけど、心の傘=アンテナを開いている者同士が出会うべくして出会った気がする。6月の会合で柳生さんは映画祭のエクゼクティブ・プロデューサーに、魔女田さんは総合プロデューサーに任命されている。

金持ちよりも人持ちになりたいという思いを年齢を重ねるとともに強くしているが、魔女田さんを見ていると、「人脈は金脈」でもあるようで、会議の間も次々とあちこちからお金を引き出すアイデアが飛び出した。政府や各国大使館のお墨付きや協力を取りつける段取りも心得たもの。土台作りは魔女田さんマジックにおまかせできそうで、わたしは今までに関わった映画祭での経験を話したり、パブリシティを取る(記事にしてもらう)ためにこんなニュースを発信してはというアイデアをいくつか出した。

各自が得意分野で力を出し合いましょうということで、わたしは映画祭のコンセプト作りを宿題に持ち帰る。映画祭を立ち上げるというのは物語を構築するようなものだから、しっかりした共感できるテーマがあると、人物は動きやすくなる。6月の会で新聞の取材を受けた魔女田さんが小豆島を舞台にした名画『二十四の瞳』にひっかけて「24億の瞳(つまり、世界中の子どもたち)の注目を集めたい」と話したところ、記者が食いつき、「24億の瞳」という見出しが地元紙を大きく飾ったが、

24億の瞳、きらり。

というキャッチコピーが浮かんだ。オリジナルにならって、

二十四億の瞳、きらり。

とすべきか? でも、「億」がつくと「にじゅうし」ではなく「にじゅうよん」と読みが変わるので、差別化と世界を意識するという意味でも、算数字がいいのか。皆さまのご意見は? 錬金術師の魔女田さんには「24億円、きらり」を目指していただき、2年後の第1回開催を成功させたい。

【お知らせ】『ぼくママ』サイトに試写会トーク報告

『ぼくとママの黄色い自転車』公開メイン館である新宿バルト9で7月22日に行われたキャリア・マム会員限定試写会(>>>日記)。上映前のキャリア・マムの堤香苗社長と今井雅子のトークの模様がぼくママ公式サイトのニュースページに登場。やりとりのダイジェストも掲載されています。

2008年07月29日(火)  マタニティオレンジ316 はじめての雷、まだ怖くない。
2007年07月29日(日)  マタニティオレンジ152 子守すごろく
2004年07月29日(木)  クリエイティブ進化論 by MTV JAPAN
2002年07月29日(月)  中央線が舞台の不思議な映画『レイズライン』


2009年07月27日(月)  パイプ椅子でのけぞって『カムイ外伝』

松竹試写室にて9月19日公開の『カムイ外伝』を観る。ぎりぎりに滑り込むと案の定満席で、補助椅子の最前列を残すのみ。それから2時間、パイプ椅子からスクリーンを斜めに観ながら、手に汗握る展開に何度ものけぞることになった。

出産を経て少しは図太くなったものの血しぶきには弱いわたし。幸い、斬り合いがかなり多い割にはグロテスクな流血はおさえられ、飛び散る血さえも美しく見せようという心意気さえ感じられたので、目をそむける場面はなかった。とはいえ、馬の生々しい姿にギョッとなったり、後半は『ジョーズ』か!のような鮫襲撃に腰を浮かしたり、頭よりも体が先に反応する場面の連続で、パイプ椅子に座り続ける苦行も相まって、やたらと体力を消耗する。並々ならぬエネルギーを注ぎ込まれた作品なので、観る側にも気合が必要だ。

崔洋一監督×榎望プロデューサーの顔合わせは、『血と骨』の前に『クイール』がある。娘のたまがこのところ「クイールわんわん」にはまっているのだが、これをたまと観たら、ケガ人続出で「どうしたの? いたいの?」と聞き続けるだろうなと想像した。アクションと殺陣の迫力はなかなかのもので、相当時間をかけて動きを仕込んだのではと思われる。大木の枝で大車輪したり、木のてっぺんから急降下したり、大自然版シルク・ドゥ・ソレイユのような華麗な技に目を見張った。

カムイは抜け忍(ぬけにん=忍者を抜け出した逃亡者)ゆえ戦いながら逃げ続ける宿命なのだが、カムイ役の松山ケンイチの動きには人間離れしたバネと鋭さがあり、地を蹴って走る姿にも野生のたくましさがある。カムイを生きているという感じで実にいい。ヤンキー先生こと義家弘介さんの半生を描いた花堂純次監督の『不良少年の夢』、前田哲監督の『ドルフィン・ブルー』、宮崎あおいちゃんと共演した『NANA』を劇場で観たが、そのどの役にも既視感がなく、それぞれの役を自分のものにしている。今回のカムイは、持ち前の目ヂカラがとくに活きていて、その目だけで語れていた場面がいくつもあった。試写室を出るとき、あちこちから「松山君、頑張ってたね」という声が聞かれたのが印象的だった。この作品でまたファンとオファーが増えそう。

もうひとり、後半でカムイと死闘を繰り広げる不動役の伊藤英明さんがとてもよかった。刀を持ってカムイに挑みかかるときの笑ったような絶妙な表情に殺気が宿る。しかし、わたしはなぜかずっと「江口洋介」だと思い込んで観てしまっていて、エンドロールを見て、違うじゃないかと気づいた。『クイール』で主役の渡辺満を演じている小林薫さんが漁師の半兵衛役でいい味を出している。半兵衛の妻お鹿となる抜け忍スバルを演じる小雪さんは、今井雅子のエッセイが載っている友人ミヤケマイの作品集第2弾『ココでないドコか-forget me not-』の帯に推薦文を寄せている。わたしのいた広告会社が手がけていた「爽健美茶」のCMに出演していた縁で会社の新年式典にも来たことがあり、勝手に親近感。函館での珍道中もご一緒した『パコダテ人』の木下ほうかさん(ブログ開いていたのを発見)も出演。『パコダテ人』といえば、衣装デザインは小川久美子さん。京都撮影のカメラは『パコダテ人』『子ぎつねヘレン』『ドクターヨシカの犯罪カルテ』の浜田毅さん(ご一緒してないけど、『血と骨』『おくりびと』も)。

映像の美しさ、大きさが際立ち、息をのむような引き絵が何度も拝める。アクションシーンのハイスピードも効果的。とくに水辺での殺陣の水しぶきは印象的だった。島のロケは沖縄にセットを組んだそうで、海の青も山の緑も「日本にこんな色があったのか」と驚くほど深い。物語の重苦しさに比べて背景が楽園的すぎるともいえるが、めったに観られないものをスクリーンで観た、という気持ちになった。

脚本は崔監督と宮藤官九郎さん。原作(決定版カムイデン全集 カムイ伝 外伝 11巻セット13860円也)を読んでいないので、どこにクドカンらしさが発揮されているのかはよくわからなかったが、膨大な原作(『カムイ外伝』のうち15回にわたって「ビッグコミック」に連載された「スガルの島」のエピソードを原作にしているそう)を2時間に凝縮する作業は大変だっただろうなあと想像した。

ラストに流れる倖田來未の主題歌「Alive」はハイドンの「私を泣かせてください」を編曲したもので、これがツボに来た。娘を産み落とす瞬間に助産院の産室を満たしていた曲で、このメロディに触れると賛美歌に包まれるような厳かな気持ちになる。カムイら虐げられた者への慈愛とともに劇中で流れた血への鎮魂も感じさせてくれた。

事前に「娘がクイールにはまっています」のメールを送っておいた榎さんと、松竹のビルを出るときにばったり会った。「今観て来ました」と伝えると、「クイールと全然違うでしょ」と榎さん。「たしかに」と答えて駅へ向かいながら、ふと思った。崔監督の作品に出てくる人間は、逆境を乗り越えるたくましさ、図太さが共通しているのでは、と。クイールの視覚障害者しかり。ご本人も迫力のある方で、函館港イルミナシオン映画祭でご一緒したことがあるが、そのとき引っさげて来た(監修として参加)映画『田んぼdeミュージカル』の高齢素人集団にも、老いを跳ね返すパワーがあった。

2008年07月27日(日)  SKIPシティ国際Dシネマ映画祭9日目 クロージング
2007年07月27日(金)  あの傑作本が傑作映画に『自虐の詩』
2005年07月27日(水)  シナトレ2 頭の中にテープレコーダーを
2004年07月27日(火)  コメディエンヌ前原星良
2002年07月27日(土)  上野アトレ
2000年07月27日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月26日(日)  朝ドラ「つばさ」第18週は「二十歳の夏の終わりに」

神保町シアターにて成瀬巳喜男の『妻』を観る。黒地に白抜きで漢字一文字のタイトルがどーんと出て、「妻という字の中には女がある」とあらためて見た。妻の半分は女が占めるが、結婚して女が半減するともいえる。結婚10年目の夫婦のすれ違いを描き、妻の寄る辺なさが身にしみる作品。今よりも結婚した女に帰る場所がなかった時代のことだから、なおのこと夫の心がない家を守るのはやりきれない。だが、文句を言うばかりで努力しない妻にも落ち度はある。

重い話の割にところどころ笑わせてくれるが(三國連太郎演じる美大生が、とぼけたいい味!)、救いのない結末に、「夫婦って……」とため息。結婚9年目のダンナと観終わった後、感想を交わしたが、小ネタの話に終始した。「成瀬を観なさい」とすすめてくれたご近所仲間のT氏に「身につまされる内容でした」とメールしたことを伝えたら、「君もお茶でブクブクしたりするよね」とダンナ。高峰三枝子演じる妻が食事の後に箸で奥歯に詰まったものをかきだしたりお茶で口の中をゆすいだりする姿に、「これでは夫はげんなりだなあ」と上原謙演じる夫に同情したが、わたしはそんなことはしません! でも、身につまされるポイントはそこなのか、と拍子抜けし、笑った。

「愛があるのか?」と確認しあって夫婦になってしまってからは、愛はあるものとして扱われる。波風が立たない限り、在庫確認をするチャンスはない。その質や量が時間とともに変化することを大らかに受け止め、ほどよく流されているうちに10年、20年と時を重ねていくのだろう。息永く夫婦を続けるためには、向き合うことと同じぐらい、やりすごすことも大事なことなのかもしれないと思った。

折しも「つばさ」第18週は夫婦の話。恋にも仕事にも行き詰まり、家を出ると決意したつばさが放った矢は地図をそれ、向かった先は、長瀞。加乃子の異母妹である紀菜子(斉藤由貴)と、その夫で船頭の富司(山下真司)に歓迎され、傷心を癒されるつばさ。しかし、仲睦まじく見える紀菜子夫妻は互いの心が見えず、苦しんでいた。一方、つばさを心配した知秋も付き添って出かけ、束の間「子どものいない夫婦」になった竹雄と加乃子は、自分たちの将来を考えてしまう……という二組の夫婦話と並行してつばさの再生が描かれる一週間。山あり川ありの長瀞の美しい自然をお楽しみください。このところ頼もしい弟として成長著しい知秋は、富司の男っぷりに惚れ込んで肉体改造を試み(キーアイテムは薪割り!?)、腕力をつける。

演出は、4、5、7、11週の大橋守さん。タイトルは「二十歳の夏の終わりに」で、二十歳のつばさが描かれる最後の週。第18週でつばさは生まれ変わり、あらたな気持ちで第19週「太陽がいっぱいだ」へと踏み出し、物語も大きくうねっていく。第20週「かなしい秘密」は、「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。

2008年07月26日(土)  SKIPシティ国際Dシネマ映画祭8日目 いよいよ審査
2007年07月26日(木)  エアコンの電源が入らない
2005年07月26日(火)  トレランス番外公演『BROKENハムレット』
2004年07月26日(月)  ヱスビー食品「カレー五人衆、名人達のカレー」
2002年07月26日(金)  映画『月のひつじ』とアポロ11号やらせ事件
2000年07月26日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月24日(金)  映画『引き出しの中のラブレター』とラヴレター募集

松竹試写室にて『引き出しの中のラブレター』を観る。5月に公開された『60歳のラブレター』(>>>試写の感想)と同じく、ラブレター募集から生まれた映画。その昔、月刊公募ガイドをめくってはこの手の募集にせっせと応募していたわたしは、それだけでも親しみを覚えてしまう。それに加えて、ラジオで人と人をつなぐストーリーは、脚本に関わっている朝ドラ「つばさ」にも通じるものがあり、さらに函館が物語の鍵を握る舞台として登場ということで、観る前から感情移入は準備万端。『60歳のラブレター』と函館が舞台で病院内ラジオを描いた『Little DJ〜小さな恋の物語』(>>>試写の感想)を重ね合わせ、さらに函館の景色に今井雅子映画デビュー作の『パコダテ人』を思い出しながら、観た。

主役のパーソナリティは常磐貴子さん。本上まなみさん演じる同郷の親友との大阪弁のかけあいが楽しい。本場のイントネーションとリズムで喋れるこのお二人にあて書きして、大阪弁の映画を作りたい、と作品を観ながら妄想を膨らませてしまった。恋人が萩原聖人さん、ラジオ局の社長が伊東四郎さん、上司が吹越満さん。番組に手紙を送ってくる函館の少年は林遣都さん。その少年の父が豊原功補さん、祖父が仲代達矢さん……とキャストが豪華。中島知子さんの妊婦は、これまでに観た映画の妊婦でいちばん説得力があった。冴えない出稼ぎタクシー運転手を演じた岩尾望さんが、すばらしい存在感。この人がエールを贈る場面に、いちばん泣かされた。情けない男の一生懸命な姿は、飾らない分だけ真っすぐ胸を打つ。

お節介でお調子者の漁師を演じた片岡鶴太郎さんも、とてもよかった。こういうおっちゃん、いるよなあ。八千草薫さんのおしとやかなようで自分をしっかり持った母親をはじめ、登場人物は短い時間で輪郭をくっきりと見せられるように作られている。とはいうものの登場人物がけっこう多く、複数の物語が同時進行し、まいた伏線をどう回収していくのか、期待とハラハラ感が募った。だが、函館の少年一家の物語を中心にばらばらだったピースが美しく納まり、人だけでなくエピソードもつながって、安心するとともに感心した。群像劇が見事に成功している『ラブ・アクチュアリー』と同じく、「この人とこの人がつながっていたとは!」という驚きが感動になった。

手紙でつながる、ラジオでつながる。そこには、伝えたい気持ちがある。シンプルだけど、とても大切なことを問いかけようとしている作品。欲を言えば、東京の仕事に忙しい主人公が何度も函館に足を運ぶよりは遠隔操作で少年に働きどころを作ったほうが、遠く離れた相手をラジオでつなげる意味は際立った気がする。最近、映画を観ると、「自分だったらこうした」と考えてしまうのが困った癖。脚本は藤井清美さんと鈴木友海さん。藤井さんは『The Last 10 Months 〜10ケ月〜』で日テレのシナリオ登竜門優秀賞を受賞された人。月刊ドラマに載った脚本が印象に残っている。

監督は『花より男子』の三城真一さん(プロデューサーで参加している映画『花より男子ファイナル プレミアム』の脚本は、サタケミキオの名前で「つばさ」真瀬昌彦役の宅間孝行さんが書いている)。音楽は「篤姫」の吉俣良さん。主題歌はSkoop On Somebodyとこちらも豪華。

ところで、映画の仕事を何年かやっているおかげで、たいていの映画になんらかのご縁はあったりするのだが、この作品は、とくに関わりが深い。

【配給】『子ぎつねヘレン』『天使の卵』の松竹
【ロケ地】『パコダテ人』の函館
【出演者】『パコダテ人』の萩原聖人さん、ラジオドラマ「ランゲルハンス島の謎」「過去に架ける虹」の吹越満さん、朝ドラ「つばさ」の佐戸井けん太さん(タクシー運転手の上司役)、『ジェニファ』の六平直政さん(主人公の父役)。常磐貴子さんとは作品でのご縁はないが、放送文化基金賞の授賞式で同じ列に着席(ドラマ部門の本賞を「ビューティフルライフ」が受賞、ラジオ部門の本賞を「雪だるまの詩」が受賞)したので、一方的に親近感。本上さんとも作品では未対面だけど、短歌の「猫又」の会で引っかかるようにご一緒させていただいている。
【プレミア上映】去年長編部門の審査員を務めたSKIPシティDシネマ国際映画祭にて招待上映。

【ノベライズ】『ぼくとママの黄色い自転車』の原作『僕の行く道』を書いた新堂冬樹さんが映画と同タイトルで9月刊行。ちなみにこの本が「白新堂の6冊目」とのこと。『黒い太陽』などのノワール系が「黒新堂」で純愛路線が「白新堂」とジャンル分けされている。ブログのタイトルも「白と黒 blanc et noir」。

【原案】『ブレーン・ストーミング・ティーン』と『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』でお世話になった文芸社から出版された『届かなかったラヴレター』(こちらは「ウ」に点々)。中身のラヴレター募集を行っているのが、先日の『ぼくママ』試写会でご縁ができたキャリア・マム。トークをご一緒した社長の堤香苗さんと控え室でお話ししているときに、このコンクールの次回募集「届かなかったラヴレター2010」の審査をお願いされた。

というわけで、なにかとご縁がある『引き出しの中のラブレター』は10月全国公開。ぜひ、映画を観て、「届かなかったラヴレター」にご応募を。しまいっぱなしの想いを引き出して、綴ってみてください。

2008年07月24日(木)  潜在意識?『7月24日通りのクリスマス』
2007年07月24日(火)  マタニティオレンジ150 自分一人の体じゃない
2000年07月24日(月)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月23日(木)  ちいさいパーンツに憧れる、たま2才11か月。

こないだ産んだばかりのような気もするが、2006年8月22日生まれの娘のたまは、あと一か月で3才になる。2才最後のキャッチフレーズを考えるにあたり、この一か月を振り返りつつキーワードを挙げてみた。「夏の扉を開けた」。生まれて初めて髪を切ったのが6月の終わり。これは結構な事件。「どすこいバレリーナ」。足を高く上げる一発芸の「バレリーナ」が進化し、四股を踏んで「どすこい」と着地するオチがついた。

笑いを取ることにいちだんとサービス精神を働かせるようになり、お風呂上がりには両肩から下ろしたタオルを胸の前でクロスさせ、「ちゅばさのおばあちゃん」(千代がいつも着ている着物のつもり)とおどける。四角いお皿を直角に組み合わせて、「パソコン」という一発ギャグも編み出した。器用に皿を動かして開閉させ、ノート型パソコンのつもり。「お笑いに目覚めた」一か月でもあった。

以前、2歳児のネーミングセンスについて日記に書いたが、皿からパソコンを連想するやわらか頭には驚かされる。近所の東洋大学の入口にある噴水を見て、「みんなシャンプーしてるね」。「こないだばったり会ったお友だちが99(=ショップ99)に今日もいたらびっくりだね」と言うと、「99にモーモいたらびっくりだね」と切り返す。そりゃあ牛がいたらびっくりだ。この後、「99にじーじいたらびっくりだね」と続き、言葉遊び好きはわたし譲りのよう。「コピーライター入門」、いや、むしろ、わたしのほうが刺激をもらっている。

ダンボールに詰めていた絵本を棚に並べるようになったおかげで、絵本を手に取ってくれることもふえたけど、やっぱり映像が大好き。ビデオで観るか、パソコンでYouTubeを観るか。「なんかみるー」はすっかり口癖になった。とりわけ、「クイールわんわんに夢中」。『子ぎつねヘレン』『天使の卵』のプロデューサーの榎望さんと『子ぎつねヘレン』『ぼくとママの黄色い自転車』のドッグトレーナーの宮忠臣さんが参加し、『天使の卵』の戸田恵子さんが出演されている映画『クイール』にはまり、毎日のように「クイールわんわんみる!」とせがんでいる。

あんまり何度も観るものだから場面の順序や台詞を相当覚えてしまい、怖い蛇と小林薫さんが出る場面が近づくと隠れ、自転車を指差して「これ、障害物」とクイールに教える場面では、「これは しょうがいぶつじゃないよ。じてんしゃだよ」と画面に突っ込み、「あなたは うんめいの こよ(あなたは運命の子よ)」と劇中の台詞を突然口走る。「映画のビデオで英語を学ぶ」の日本語版といった感じで、言葉が豊かになるのはうれしいけれど、ビデオ漬けは心配。朝ドラ「つばさ」にも反応するようになり、今朝は「ゆうかちゃん、こなかったね」と言っていた。出ていない登場人物のことを気にしたのは初めて。

自転車のスピードを知った」、これは最近のビッグニュース。半年ほど言い続けていた二人乗りの夢がかない、もっと乗りたいと泣きじゃくるほど夢中になった。お友だちの家から借りた電動ママチャリを返すのが怖かったが、3日間乗って気が済んだのか、返した後はあっさりした反応だった。スピード狂なのか、「飛び出し注意」は頭の痛い問題。車道に向かってドンキホーテのように駆け出すことが度々あり、そのたびに寿命の縮む思いをしている。川越のカフェの店内から飛び出したときには、わたしの悲鳴も飛び出した。通行人に体当たりしていなかったら車にぶつかっていた。「つばさ」の人出に命拾いした格好だが、どうやったら車の怖さをわかってくれるのだろう。

いろいろと候補を挙げたが、選んだのは、「ちいさいパーンツに憧れる」。わたしが忙しかったせいもあり、トイレトレーニングが後退したたまは、プールのシーズン到来でやる気を向上。さらに、かわいいパンツを買って「おむつが外れたら、はこうね」と言い聞かせると、「ちいさいパーンツ」と自分に喝を入れるようになった。便座に座りながら、「でんしゃに のってくるよ。いま おりてきた」などと実況するので、出る感覚はつかんでいる様子。日によって、朝から夜までおむつがカラカラの日もあれば、一度もトイレでしない日もあり、成果にはムラがあるけれど、意欲はかつてなく高まっている。3才までに外れるかしらん。

あと一か月といえば、今井雅子の6本目の脚本長編映画『ぼくとママの黄色い自転車』の公開も8月22日。公式サイトもリニューアルし、宣伝の露出もふえていく模様。わたしも、いまいまさこカフェのトップページにもバナーを貼りつけたり、試写会の感想を書いてくださっているブログにお邪魔したり。自分が関わった作品は、手をかけた分だけ愛しいわが子のようなもの。たまも『ぼくママ』も、愛されて、伸びる夏になりますように。

2008年07月23日(水)  神楽坂の隠れ家で、英語で映画を語る。
2007年07月23日(月)  マタニティオレンジ149 ダンボールハウス
2005年07月23日(土)  映画『LIVE and BECOME』・バレエ『ライモンダ』
2004年07月23日(金)  ザ・ハリウッド大作『スパイダーマン2』
2003年07月23日(水)  チョコッと幸せ


2009年07月22日(水)  『ぼくママ』キャリア・マム試写会&『愛を読むひと』

新宿バルト9にて、働きたい女性のためのコミュニティサイト「キャリア・マム」の会員限定『ぼくとママの黄色い自転車』(公式サイト、リニューアルしました)試写会。キャリア・マム代表取締役の堤香苗さんと上映前にトークということで、45分前に会場入りし、顔合わせと打ち合わせ。神戸出身の二児の母でフリーアナウンサーの堤さんは、さすが空気を作るのがお上手で、あっという間に和やかに打ち解けられた。キャリア・マム取締役の井筒祥子さんとコーディネイターの宮入美由紀さん、宣伝のトルネードフィルムの田中久美子さん、共同テレビの井口喜一プロデューサーと本番までのおしゃべりが弾んだ。

トークの時間は15分。開始が少し遅れたので、正味は10分強ぐらい。堤さんのリードに乗せられて気持ちよく、「原作を脚本化するにあたって」「キャストのイメージは?」などについて話す。原作『僕の行く道』の著者である新堂冬樹さんのことを「『黒い太陽』などを書かれている……」と紹介したが、奇しくも「黒い太陽=日食」の日であり、ちょうど公開一か月前。公開日が娘の3才の誕生日に重なること、生んだ直後に原作を読んで、「子どもと引き裂かれるなんて想像できない。でも、もしそうなるとしたら……と考えて脚本を練った」話をする。原作から大きく変わったのは、同行するのがネコではなく犬になり、移動が新幹線ではなく自転車になった点だと話し、ドッグトレーナーは『子ぎつねヘレン』でキツネに演技させた人だと紹介。「『子ぎつねヘレン』を観られた方?」と客席に尋ねると、かなりの数の手が挙がって驚いた。阿部サダヲさんのファンの方々でしょうか。

最後に見どころを聞かれて、小豆島の美しさを挙げた。ロケにずいぶんご協力いただいているが、絵になる風景の数々をお借りしている。この作品を観て、小豆島を訪れたくなってくれたらうれしい。そして、朝ドラ「つばさ」の宣伝もさせていただく。「つばさ」と『ぼくママ』は、人を信じるあたたかさが似ていると思う。

いよいよ上映。スクリーンで観るのはこれで3度目で、答え合わせは一段落し、だいぶ冷静に観られるようになった。毎回客席の反応が少しずつ違うのが興味深い。観終わった後、堤さんは「泣きました〜」と涙で鼻声になったまま次の打ち合わせへ。出口で観客の皆さんをお見送りしていると、何人かの方が声をかけてくださった。大志が旅先で出会う人たちが「ありがとう」と大志に声をかけるところを「あなたの印象に合っていた」とうれしい言葉もいただく。

トークの模様はキャリア・マムのサイトに掲載されるそう。堤さんはブログ「堤香苗のほんねのはなし」でも早速取り上げてくださっている。

せっかくバルト9に来たことなので、『愛を読むひと』を観て行くことに。レディースデーということもあって、満席。原作のドイツ語題は『Der Vorleser』で英題は『The Reade』。日本語版も『朗読者』と直訳だが、映画では『愛を読むひと』と名づけたのがうまい。読むことが愛情表現そのものであり、読むという行為で愛の強さと深さを物語る作品。女は誰でもピロートークが大好きだけど、「順番を変えましょう」とケイト・ウィンスレット演じるハンナが提案したことから、朗読は愛撫の意味合いを強める。15才のマイケルが最初に本を読み聞かせたきっかけは、彼女が「読んでよ」とせがんだからだが、英語では「I'd rather listen to you」、あなたが読むのを聞きたいというのが可愛い。

前半はいちばん多い衣装はヌードというほど入浴やベッドの場面が多い。中年にさしかかったハンナの裸は艶かしいというよりは生々しく、一人で生きる女の孤独や悲しみや疲れを宿し、マイケルの若さとたくましさが際立つ。親子ほどに年が離れた二人は互いを埋め合うように恋に落ち、逢瀬を重ねる。言葉での説明を排し、なるようになったと描かれ、観客もまたそう受け止める。

これでもかと肌を重ねる前半があるから、指一本触れるどころか互いの顔を見ることもできない後半が活きてくる。そのとき、読むという愛情表現が真価を発揮する。マイケルの朗読のたたみかけは、物語の伝承者となった人々が各自の物語を口ずさみながら行き交う『華氏451』のラストを彷彿とさせ、美しく力強く愛を謳う名場面となっていた。彼の朗読が彼女の人生の終盤にもたらした奇跡と呼んでいいような変化にも心を動かされた。定冠詞の「the」で涙を誘われたのは初めてのことだ。生きることは世界を知ること、その喜びが彼女が「the」を口にする場面に凝縮されていた。

生きること、愛することの重みと苦しみ、その中に光る希望を求めようとする人の悲しみ。ひたひたと問いかけることの多い作品だった。観終わって立ち上がるとき、隣に座っていた初老の夫婦の夫が「原作では書き置きの意味がわからない場面があった気がする」と話しているのが耳に入り、勝手にその場面を頭の中で思い浮かべて、また涙を誘われた。原作をずいぶん前(ヤシガニ脱走騒動があった日だから2003年9月)に友人から強く勧められながらまだ読めていないのだが、ぜひ手に取ってみたくなった。

また、劇中でマイケルがユダヤ人強制収容所を歩く場面があり、アウシュビッツを訪ねたときのことを思い出した。以前日記に書いたこともあるが(2002年10月21日(月) アウシュビッツの爪痕)、旅行記代わりの絵日記がどこかにあるはずで、掘り出したいと思っている。東ドイツにあった収容所を訪ねたのが中学一年のときで、その頃に『アンネの日記』にはまり、日記を熱心に書くようになったのだが、ホロコーストを取り上げた作品にアンテナを向けてしまうのもそのせいかもしれない。

予告編では『ぼくママ』が流れた。テイストは違うけれど、愛する人の嘘を尊重して守ろうとする『ぼくママ』の一志(阿部サダヲ)と『愛を読むひと』のマイケルの一途で不器用な姿が重なった。

2008年07月22日(火)  マタニティオレンジ314 おっぱい「まだ でる!」たま1才11か月
2007年07月22日(日)  マタニティオレンジ148 ダブルケーキに仰天!たま11/12才
2005年07月22日(金)  万寿美さん再会と神楽坂阿波踊り
2002年07月22日(月)  10年前のアトランタの地下鉄の涙の温度


2009年07月21日(火)  一目惚れの恋のその後

7月6日の日記に書いた、恋に落ちたチェストのその後。家具ショップのWA-PLUSさんとメールをやりとりし、「ONE WOOD」というシリーズの「TEL CHEST」(電話台)を購入することに。玄関の靴箱横のスペースがチェストとぴったり同じ幅42センチ、奥行き35センチというのも、ここにいらっしゃいと言わんばかりで、これも何かの縁。一目惚れの顛末を日記に書いたことを報告したところ、「家具職人の中にも毎日お昼に『つばさ』を欠かさず観ている人がいます」などと話も弾み、オンラインでのやりとりながら家具同様あったかみのある対応で楽しい買い物となった。

チェストは間もなく九州を発ち、今週中に東京のわが家に到着する予定。待ち受けるこちらは長旅の恋人を迎えるような気持ちで大掃除にいそしんでいる。そもそもわが家には物に対して収納が足りない、ということで、急遽本棚を購入。楽天市場で数百点を見て回り、東急ハンズや西武ロフトへも足を運んだ結果、「今うちにあるのがいちばんいい」という結論に至り、同じものをリピート購入。スライド書棚ルート600Sという商品で、幅60センチ×高さ180センチ×奥行き30センチに驚くほどの数の本やCDが納まる。扉にCD受けがついていてディスプレイ収納できるのもすぐれもの。ただ、CD受けのでっぱりの分だけ奥行きがプラスされ、実際には奥行き32センチ。この2センチが大きく、棚の鼻先すれすれでドアが閉まることになった。前に買ったときは完成品が届き、CD受けをつける作業は不要だった気がするし、棚を受けるビスも安っぽくなったが、その成果がコストダウンに現れ、前回より一万円ほど安く買えた。

大量の本、CD、ビデオの類いをスライド書棚に移動したついでに、床に積み上げた資料の整理に手をつける。原稿のプリントアウト、参考資料の本やDVD、脚本の山……。朝ドラ「つばさ」は最終週の第26週までのホンがそろったが、一週につき検討稿、準備稿、完本と少なくとも3冊あり、週によっては4冊、5冊あり、百冊級の大所帯になった。つるつるの表紙の完本はガラス戸のディスプレイラックにずらりと並べ、あとのものはダンボールに納めて押し入れへ。かさばるけれど、朝ドラに関われる機会も最初で最後かもしれないので、とっておくべし。

『パコダテ人』の感想文やらコンクール時代の応募原稿やらタイムカプセルのように懐かしいものが次々と掘り出され、つい手が止まってしまう。探していて見つからなかったピンホール眼鏡や書きかけの手紙も発掘。「返したはずだけど」と言い張った本が出てきて、焦ったりする。

資料の底のそこかしこから小石がゴロゴロ出てくる。娘のたまが外から持ち帰ったものらしい。家の片隅で三途の川計画が進んでいたとは。泥棒が入っても気づかないほど散らかっているという自負があったが、異物を持ち込まれても気づかないのだった。でも、この数日の掃除の成果で、万年雪が解けるように少しずつ床が見え始め、体感床面積が拡大しつつある。「恋をしてキレイになる」とはよく言ったもので、わたしの場合は家の中がキレイになった。

日記に書いたその後といえば、7月8日の日記で絶賛した『築城せよ!』はテアトル新宿にて7/18(土)〜8/7(金)までの3週間、18:55より上映中。名古屋上映は名古屋駅前のミッドランドシネマとMOVIX三好の2館で月末まで上映が延長。

また、6月30日の日記に書いたEric Gowerさんは、やはり探していた本人だった。ブログに書き込んだところメールが来て、オンライン上で再会を果たし、興奮を分かち合っている。

そして、7月5日の日記でお知らせしたキャリア・マム会員限定『ぼくとママの黄色い自転車』試写会トークは、いよいよ明日。どうなりますやら、ご報告はまた日記にて。

2008年07月21日(月)  マタニティオレンジ313 なす術なし!の手足口病
2007年07月21日(土)  体に寄り添う仕事用の椅子
2005年07月21日(木)  日本科学未来館『恋愛物語展』
2004年07月21日(水)  明珠唯在吾方寸(良寛)
2002年07月21日(日)  関西土産
2000年07月21日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月20日(月)  渋谷はるのおがわプレーパーク5周年

3連休は遠出をせず、東京の中で過ごした。娘のたまと休日をじっくり一緒に過ごせるだけでも十分な贅沢。土曜日は荒川自然公園へ行き、夕方にはお友だちのまゆたんちの自転車を借りて、念願の二人乗りに初挑戦。借りたままの自転車で日曜日もご近所をサイクリング。スピードを上げて景色が流れるだけで、見慣れた界隈が見違え、冒険気分を味わえる。夜は「夏の思い出に」というダンナの発案で焼き肉屋へ。たまは焼き肉屋は初めてだったけど、マザー牧場で肉を焼いたときほどは興奮しなかった。

そして、今日は、友人のY家に誘われ、代々木公園の一角にある「渋谷はるのおがわプレーパーク」の5周年のお祭りへ。プレーリーダーがいて、子どもたちと遊具や遊びを作り出していくという話は聞いていたけれど、ここまで自由で創造的な公園だったとは、と驚きの連続。5周年記念ケーキは、木で作った「5」(クッキーを貼り付けてある)のまわりを皆で持ち寄ったカップケーキが取り囲むというもの。わたしたち一家が着いたときには、あらかたケーキが行き渡った頃だったので、最初はびっしり敷き詰められていたのだろう。

ステージで演奏を披露したのは、隣の公園で練習していたというウクレレ道場の皆さん。「ハメハメハ大王」の歌に一同ノリノリ。その後、「何する? 水遊びする?」とY夫人。どこかの生け簀になっていたのをもらい受けたというたらい舟がプール。中の泥を洗うのも、ホースを引っ張ってきて水を入れるのも、子どもたちが勝手にやる。たまは水が冷たすぎたのか、シャワー攻撃にびっくりしたのか、すぐに出てしまい、木の車を引っ張る遊びを始めた。知らない子が乗りこんでは、下りていく。

ステージでは楽器を演奏する大人を子どもが取り囲み、木陰では談笑する婦人たちの姿が。ベビーベッド(雨ざらし)もあり、そこで子どもを昼寝させたりオムツを替えたりもする。なんと大らか。東京にこんなところがあったのか、とカルチャーショックを受けた。普段は工具と木材が出ていて、好きずきに遊具や椅子を作れるのだそう。遊具も新しいのができたと思ったら古いのを壊すという柔軟さがあり、常に変化し続けているのだとか。「去年はウォータースライダーを作ったんだけど、子どもたちの悲鳴がうるさすぎて近所迷惑になっちゃって、取り壊しちゃったの」とY夫人。

「5周年の記念手ぬぐいを作ろう」のコーナーでは、白い布に思い思いにスタンプをペタペタ。その隣には「はるプレ図書館」と称して、本(これも雨ざらしなのか、ページが膨らみきっている)が10冊ほど。その中にプレーパークの活動報告書を見つける。東京では世田谷などにもあるらしい。「自分の責任で自由に遊ぶ」というのが、プレーパークの精神だそう。こういう公園で遊ぶかどうかで人生観が変わるのではないかと思えてくる。

子どもの頃、自宅の庭の砂場を基地にして、海賊ごっこや探険ごっこをしたのを思い出した。海賊の船や旗を手づくりしたりもした。与えられた遊具や遊びを使うのではなく、ない遊びを生み出す経験が、一生ものの発明や発想のチカラを鍛えてくれた気がする。

着いたときには初めての場所に戸惑って硬くなっていたたまは、2時間ほどいるううちにすっかりこの公園が気に入り、最後はアスレチックに大はしゃぎ。実にいい顔になっていた。自然の木にロープをくくりつけたブランコの強度は? 「事故があっても自己責任」というのがプレーパークの考えだそうで、過保護指数の高い文京区で実現するのは難しいかもしれない。

少し足を延ばして、代々木公園のドッグランを冷やかすと、『クイール』にはまっているたまは、これまた興奮。ポニーに乗れるコーナーもあるのだそう。

代々木公園から徒歩でY家へ向かい、早めの夕食を御馳走になる。Y家には9才のミナミちゃん、たまと同い年で7月生まれのアオチンがいて、最初は3人で遊んでいたが、いつの間にか、アオチンとたまの二人きりで会話しながら遊んでいた。お揃いのリュックとお弁当箱を用意してもらい、おもちゃの食べものを詰め込んでピクニックごっこ。たまより50日ほどお姉さんのアオチンは、朝ドラ「つばさ」のファンで、今いちばんの関心事は「ゆうかちゃん」。「ラジオぽてと」「まなせさん」などとつばさ用語がすらすら出てくる。「わすれないで きせつはかわっても〜」と主題歌のサビを「シーザーズラー」まで歌ってくれたのには、びっくり。Y夫妻も初めて聞いたそうで、「この子なりにお客さんにサービスしてるんだなあ」。

夕食のメニューはお好み焼きと聞いていたが、お好み焼きが登場する前に次から次へと御馳走が出される。見事に整頓された部屋とともに感心し、それにひきかえわが家は……と反省。「たまちゃんちにも きてね」とたまが約束してしまったので、お返しにご招待できるよう、掃除にいっそう力を入れなくては。

2008年07月20日(日)  映画祭と日常を行き来する通勤審査員
2005年07月20日(水)  立て続けに泣く『砂の器』『フライ,ダディ,フライ』
2002年07月20日(土)  トルコ風結婚式
2000年07月20日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月19日(日)  朝ドラ「つばさ」第17週は「さよなら おかん」

昨日、荒川自然公園で「おむつが外れていない子はプールに入れません」と言われたときの娘のたまは、世の中にはどうにもならないことがあると知った顔をしていた。よっぽど悔しかったのか、今日は朝から積極的にトイレを知らせるようになり、「これでパンツになれるね。ちいさいパンツ!」と主張している。

また、昨日の夕方、たまは念願の親子二人乗りを初体験した。つばさのお仕事が終わったら、お友だちのまゆたんの自転車を借りようねと話していたのだが、「ママ ちゅばさのおしごと おわったのに じてんしゃ わすれてるでしょ」とせっつかれ、あわてて借りに行ったのだった。自転車に乗りたいと言い続けてきたたまの興奮は相当なもので、「おそら とんでいるみたい」(電動自転車の加速は、たしかにふわっと体が浮く感覚がある)と大はしゃぎ。いったん家に戻ったが、「もういっぺん」とせがまれ、再び乗りに行き、戻ってからが大変だった。「またのる。もっとのる」とぐずり、床にひっくり返って泣くこと半時間。「もう暗いから明日ね」と言い聞かせ、「せっかく楽しかったのに、そんなに泣いたら、楽しかったことが消えちゃうでしょ」と嘆いたが、泣き募るばかり。自分が乗りたいだけでなく、「だれかがのっちゃうよ」と心配する行き過ぎた独占欲が怖くなったが、本人もどうしていいのかわからず泣くしかないのだろうなあと思い、泣くにまかせた。

人生なんて、思うようにいかないことの連続だけど、折り合いをつけるようになるのが、大人になるということなのだなと、2才にして人生の壁にぶつかっている娘を見て思った。

「つばさ」第17週「さよなら おかん」では、二十歳の挫折が描かれている。台風の夜、濁流から父を助けたのと引き換えにリハビリ中の足と逆の足を痛めてしまった翔太(小柳友)は、チーム復帰が遠のいてしまう。励まそうとするつばさ(多部未華子)との温度差が二人の関係にひびを入れ、つばさもまた失意を味わう。家の中でも外でもいつも誰かのために動いていたつばさが、初めて家族から手を差し伸べられる立場に。何を信じていいかわからないときの家族の支えが光る。

また、恋がうまくいかないときには仕事を頑張ろうとするもの。台風のときの災害報道に感銘を受けたこえど会前会長の城之内房子(冨士眞奈美)が大口スポンサーに名乗りを上げ、新番組を立ち上げることに。真瀬(宅間孝行)からインタビューを任されたつばさは、房子の怒りに火をつける事件を起こしてしまう。恋にも仕事にも行き詰まったつばさは、おかんである自分を捨てるために、初めて川越を離れる決意をするという一週間。この後ラジオぽてとを揺るがす脅威となる房子の登場にご注目。千代役の吉行和子さんと大の仲良しという冨士さん、後々の二人のからみもお楽しみに。

すでに登場しているサッカーボールの携帯ストラップがキーアイテムに。また、「らくらくおそうじ センジュくん」が悲しみを象徴するアイテムとして登場。千手おそうじグッズを背負ったバカバカしい姿から、すっきりお掃除したくてもできない胸の内の苦しみが伝わると、やりきれなさがいや増して涙を誘う。この場面、先日のファンミーティングでも宅間さんが「泣けるんですよ。あの場面をネタに一晩飲みました」と語っていた。他にも新生活応援グッズやつばさ応援グッズなど加乃子がらみのアイテムが活躍。

第17週も「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。演出は第8週、9週、15週の福井充広さん。続く第18週「二十歳の夏の終わりに」は長瀞(ながとろ)が舞台で、第10週に登場した紀菜子(斉藤由貴)とつばさが再会。そして第19週「太陽がいっぱいだ」では、ついにサンバの謎が明らかに。ますます目が離せない展開の「つばさ」を引き続きお楽しみください。 

2008年07月19日(土)  世界は広くて狭い! SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008開幕
2007年07月19日(木)  忘れ物を忘れる速度
2005年07月19日(火)  会社員最後の日
2002年07月19日(金)  少林サッカー
2000年07月19日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月18日(土)  荒川自然公園に驚いた

このところ、娘のたまとじいじ(ダンナ父)のデートコースになっている荒川区立の荒川自然公園。「たまがいつも遊んでいるところを見ておくべし」とダンナ父に言われ、わたしとダンナも初めて訪ねることになった。わが家からはバスとモノレールと都電を乗り継いで、最寄り駅の荒川二丁目駅まで約40分(都電一日乗車券700円がお得)。いろんな乗り物に乗れるのがうれしくて、たまは大はしゃぎ。

素晴らしいとは聞いていたものの、とにかく広く、施設や遊具が充実。都会ではなかなか見られないカブトムシを間近で見られるコーナーでは、「取られたりしないのかな」とお節介な心配をしつつ、無料開放とはなんと贅沢なと感激した。

国蝶のオオムラサキの観察園では、卵からかえったばかりの幼虫から成長した蝶までを見ることができる。写真の蝶はおとなしいなあと思ったら死んでいた。でも、そのすぐそばでは、小さな幼虫たちがせっせと葉っぱを食べていた。

白鳥と鯉が泳ぐ池を通り過ぎ、すべり台のある遊び場を越えると、浅くて広いプールがあり、そこが今日のお目当て。早速たまを水着に着替えさせようとしたら、「おむつが外れていない子は入れません」とライフガードのお姉さん。たまは「……」と絶句し、納得いかない顔。この悔しさをバネにトイレトレーニングに燃えてほしい。

気を取り直して交通園へ。ここは、信号機や横断歩道があり、交通ルールが学べるほか、乗り物を借りて走らせることができる。三輪車、補助輪つき自転車、自転車、豆自動車、さらにはゴーカートまで! 飽きっぽいたまは乗り物を取っ替え引っ替え。

「プールいく」と未練がましくぼやくので、水辺コーナーで水遊び
をさせることに。くるぶしぐらいまでの水が流れる岩場を貸し切りプールにして、歩いたり水を蹴ったり腹這いになってワニ歩きをしたり。たまは十分満足だった様子。

それにしても、「こんな場所があったのか」と感心しきり。公園にはあちこちに花が咲き、その世話をする人の姿もよく見られた。案内したり質問に答えたりしてくれるスタッフも至るところにいる。ボランティアの方も多いのか、立ち働く人が目立ち、たくさんの人の手に支えられている公園だと感じた。働く人も遊ぶ人も生き生きとしていて、躍動するような空気を作っている。公園は生き物だなあとつくづく思った。

2008年07月18日(金)  マタニティオレンジ312 『JUNO』を観て思い出した9か月
2004年07月18日(日)  ニヤリヒヤリ本『ニッポンの誤植』
2000年07月18日(火)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月17日(金)  一年ぶり!SKIPシティ国際Dシネマ映画祭

去年、国際長編部門の審査員を務め、とても刺激的な経験をさせてもらった埼玉県川口市のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭。早いもので、あれから一年経ち、ただいま第6回を開催中(今年は7月10日〜20日)。関係者パスを用意していただいているので、できるだけ足を運ぼうと思いつつ、開催一週間目の今日になってようやく行けることになった。

おめあては、去年のクロージングパーティで仲良くなった藤村享平君の短編『アフロにした、暁には』。彼は函館港イルミナシオン映画祭のシナリオコンクールで市長賞300万円をせしめていて、同じコンクールの受賞者という縁で声をかけてくれたのだけど、その後で月刊シナリオに載っていた受賞シナリオ「引きこもる女たち」を読んだら相当面白くて、これからどんな作品を作っていくのか楽しみな青年。

短編の上映は午後だけど、せっかくなので、午前の長編も観ることに。『神の耳』(God's Ears)というアメリカ作品(予告編はこちらで)。ボクシングに打ち込む自閉症の青年ノア(マイケル・ワース監督自ら主演)が、ポールダンサーのアレクシアと恋に落ちるという純愛もの。あらすじを見ただけでは「裸同然で男を誘惑する職業の女が障害を持った男の純真さに惹かれる」ありがちな話という印象を受けたのだけど、二人が惹かれあっていく過程がとても丁寧で、本当に恋の始まりを見守るようなドキドキ感があった。アレクシア役のマーゴット・ファーレイが、ポールダンサーの妖婉さと素顔の優しさと聡明さという両面を実に自然に演じていて、それも作品の魅力になっている。

ダイナーで「卵なんてどこで食べても同じ」とうそぶくアレクシアに、離れたテーブルから鶏の蘊蓄を聞かせるノアという出会いから互いを意識し始める二人。ノアが「母親を迎えに行く」旅行にアレクシアが仕事仲間のキャンディとともに同行したことで、二人の距離はぐっと縮まるが、旅先で会うノアの叔父や祖母のキャラクターやそこで交わされる会話もとてもチャーミングだった。「2秒あれば人生は変えられる。Yes,I willというだけの時間がある」といった説得力のある台詞がちりばめられていて、それでいて語りすぎない。ラストでアレクシアが「LIVE NUDE」(生ヌード)の看板が掲げられた店を後にする場面、振り返ると、「LIVE」だけが目に入り、「生きろ」というメッセージになるのは、とてもすがすがしい。脚本を書いているのも監督で、編集もこなしたとのこと。なんてマルチな才能なんだ! 

終映後のQ&Aで監督は「コミュニケーションの映画を作りたかった」と話していたが、まさに、人と人がつながるというのはどういうことか考えさせられる作品だった。以前、「障害者と性」をテーマにした映画を作ろうとして、結局企画が立ち行かなくなったことがあったが、そのときのテーマもやはりコミュニケーションだった。その映画でやろうとしたことは、わたしが考えた以上にうまく、自然に、この『神の耳』に込められていた。タイトルの由来は劇中のノアの台詞で明かされるが、「誰にも自分の言葉が届いていないと思っても、神様は聞いてくれている」というような意味で、この言葉もとても心に残った。

「ノアを鶏博士にしたのはなぜ?」という質問には、「自身も鳥好きだから」と監督。「鶏は翼があっても飛べないので、その閉塞感の意味も込めた」とか。また、アメリカ映画によくある「貨物電車の通過待ち」の場面は、意図したものかという質問には、「撮影中に偶然貨物電車が通りがかり、監督の直感で使うことにした。通り過ぎて行く人生にたとえられると思った」とのこと。

出口で監督をつかまえ、「ダイアローグがとても良かった」と伝え、「鉄道好きだそうですが、日本の鉄道は楽しんでいますか?」と聞くと、「JR is great」という返事だった。写真に一緒に写っているのが、終映後に合流した藤村君。

藤村君とお昼を食べようと2階のシネマカフェ(映画祭期間中、地元の川口のイタリアンレストランがカフェを開店)へ移動する途中、「これ知ってます? すごいんですよ」と藤村君が映像ミュージアムを指差し、通り抜けていくことに。パンフレットや映像での紹介は見ていて、気合の入った施設だなあと思っていたが、先日訪ねたNHKスタジオパークが広々となったような贅沢な空間に最新の機材がずらり。

「お天気コーナーやってみませんか」と係の人に声をかけられ、挑戦。カメラの前に立つ姿が画面に合成される。「地図を指差しながら話してください」などと、かなり細かい演技指導が入る。わたしはノリノリ、藤村君はカメラには弱いことが判明。「歌のお姉さんもありますが」とすすめられるが、こちらは見本を見せていただき、演技は辞退する。

その隣は「空飛ぶ絨毯」の合成映像コーナー。小学生と思われる女の子二人が世界一周に続けて恐竜時代へタイムスリップ。これまた「パンチとキックで恐竜をやっつけて」などと細かい演技指導があり、大忙し。見ているのは楽しいけど、絨毯の上の二人は恥ずかしそうだった。

他にもムービーカメラの操作を学べるコーナーもあり、いたれりつくせりな映像ミュージアム。夏休みに親子で行ってみても楽しそう。

シネマカフェでお昼を買って、一階のおひさま燦々の下でランチ。藤村君とは去年のパーティで会ったきりだけど、今回の短編の製作話(函館の賞金を映画製作に使っている。えらい!)や脚本の話(商業映画は興行を考えて、若い男女を出す必要がある!というとこで盛り上がる)など、話題はいくらでもある。カレーもなかなかおいしく、去年食べたカレーパンもおいしかったのを思い出した。

さて、いよいよ短編上映。藤村君の『アフロ〜』の前に『ブランコ』『太陽の石』を上映し、合計85分の短編1(予告編もこちらで)というプログラム。

『ブランコ』はフリーのCMディレクター藤田峰人さんの初監督作。小学生の頃「ブランコ」というラジオドラマに衝撃を受けたわたしは、ブランコが出ているだけで心が揺れてしまう。まだかすかに揺れているブランコを見て、「誰かいたんだ」なんて情を描くというところは、ブランコらしくて心憎い。ブランコが物悲しいのは、あのきしみの音と、人が去っても揺れ続けるせいかもしれないと思ったりする。ブランコにかわるがわる座るカップルの会話がオムニバス形式で綴られ、その会話もそれぞれ興味深く、舞台劇のような味わいもある。短編にしては長い48分というある程度の時間をかけているので、もうひとひねりあると、より見応えのあるものになった気がする。それぞれのカップルが実はつながっていた、のような驚きが用意されているのではと期待が膨らんでしまった。わたしも広告業界から脚本の世界に飛び込んだので、広告出身の才能に、大いに共感と期待。今後の作品に注目したい。

『太陽の石』の遠藤潔司監督は75年生まれで、これが初監督作品。「影絵で映画をやろう」と思いつき、人集めを始めたもののなかなか集まらず、少しずつ支援の輪を広げていったそう。「とにかく影絵でやるんだ!」という真っすぐな想いが伝わってくるような作品で、太陽のかけらのような赤い石を拾う主人公の少年の気持ちに寄り添って観た。「デジタルだからできた」という影絵の表現が素晴らしい。あごから滴る滴で、少年が泣いているのだとわかったり、ところどころドキッとしたり、ハッとしたりする場面がある。発見と言ってもいいかもしれない。シルエットにすることで見えることがあるんだなと。音楽も監督がつけたそうで、これもデジタルだからできたという。

少年の横顔の美しさが印象的だったが、Q&Aのときに少年を演じた高岩彩さんが登壇し、女の子だとわかった。監督が脚本を相談していた脚本家さんの姪っ子だそう。男の子のように髪をばっさり切ったことについて、「男の子の気持ちでやりたかった」と答え、役者魂を見せていた。『太陽の石』はロサンゼルス国際短編映画祭(去年「つみきのいえ」が出品された映画祭だそう)にも出品しているとのこと。

『アフロにした、暁には』は、事前に「シュールですよー」と藤村君本人から釘を差されていたのだけど、驚きよりも、「わあ、藤村君らしい」という納得が勝った。彼の作品は去年もこの映画祭の短編部門にノミネート(数百本の応募から2年連続で勝ち抜くとは、強運と実力の証)されているのだけど、わたしは見逃してしまっているので、映像を観るのは初めて。でも、函館のコンクールの受賞脚本と、今日観た映画には同じ匂いを感じた。ぶっ飛んだ設定を、ありそうに思わせてしまうのは、登場人物の存在感のチカラなのか。キャラクターと台詞がうまいというか独特というか、テクニックとは違う光るものがある。カセットコンロがライター代わりとか、泡風呂に入る彼女の脛毛を剃ってあげる男とか、細かいところが面白い。アフロにして映画を観に行ったら後ろの客が困る、怒るという場面、わたしもまわりもかなり受けていたけど、この作品を思いついたのは、「映画を観てて、頭が邪魔なヤツがいる」ということだったとか。

もうひとつ、藤村君の作品は、セックスがとても当たり前な顔して登場する。あるけれどないものとして描く「避ける派」でもなく、描くからには意味を持たせる「掘り下げる派」でもなく、食事の場面のように普通のこととして描いていて、無駄な力が入っていないところが、かえってユニーク。ぜひ、『引きこもる女たち』の脚本も自ら監督して、映像にしてほしい。

アフロになるダメ男役の柄本時生さんは、柄本明さん(『ぼくとママの黄色い自転車』の岡山のシーンで、正太郎じいちゃんを熱演)の次男だそう。なんともいえないとぼけた味わいがあった。去年同じくクロージングパーティで仲良くなった西田薫さん(去年の日記を読み返したら、西田さんがまず声をかけてくれて、藤村君を紹介してくれたのだった)も出演していて、「お元気そう!」をスクリーンで確認し、なんだかうれしかった。

短編映画を観る機会はなかなかないのだけど、短編こそスクリーンで味わうのはいいものだ、と感じる。3監督そろってのQ&Aも三者三様の映画への姿勢がうかがえて、聞きごたえがあった。

映画祭事務局の木村美砂さんとも一年ぶりに再会。映画祭スタッフの方にbukuのエッセイ連載を読まれている方もいたりして、故郷で歓待を受けたような楽しい一日となった。

2008年07月17日(木)  最近食べたお菓子
2007年07月17日(火)  マタニティオレンジ147 働くお母さんの綱渡り
2005年07月17日(日)  阿波踊りデビュー
2004年07月17日(土)  東京ディズニーシー『ブラヴィッシーモ!』
2000年07月17日(月)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月14日(火)  「好き!」を見せるとトクをする

隙を見せると損をすることが多いけれど、「好き!」の意思表示をすると、トクすることが多い。かかりつけの整骨院のウキちゃんの元には、「おいしいもの大好き!」(実は好き嫌いが多く、食べられないものがかなりあるのだけど)と声を大にして言っている成果で、患者さんが次々と食べものを持って来る。治療のついでだけじゃなく、食べものだけを届けに来る人も後を絶たない。そのたびにウキちゃんは「わあ! これ食べたかったんですよ!」と小躍りして喜ぶので、おいしいものが手に入ったら「ウキちゃんに食べさせてあげたい」と思う皆さんの気持ちがよくわかる。

わたしもけっこう「好き!」を言いふらしているので、甘いものやハートの形のものが集まってくる。昔からの友人だけでなく初めて会う人が、いまいまさこカフェのギャラリーを見て、わたしの甘いもの好きやハート好きを知り、「こんなの知ってます?」と差し出してくれる。合体してハート型のチョコレートになることもある。

日曜日、朝ドラ「つばさ」のファンミーティングでNHKへ行った帰りのこと。朝から「ブーブーのりたいよー」と言い続けていた娘のたまのリクエストに応えて、タクシーに乗った。原宿駅までだとあっという間なので、「代々木まで行くと、いくらぐらいかかりますか」と運転手さんに尋ねたら、「千円ぐらいかな」。だったらと山手線でひと駅先の代々木駅までお願いした。わが家は自家用車を持たないので、たまにとってタクシーに乗ることは非日常。すっかり興奮しておしゃべりになっていると、「お嬢ちゃん、いくつ? おしゃべり上手だね」と運転手さん。「この子、ずっとタクシーに乗りたがってたので、よっぽどうれしいみたいです」と言うと、「よーし、じゃあ、おじさん、ワンメーターで代々木まで行っちゃう」と運転手さん。「え、いいんですか」と驚いていると、途中でメーターを切ってしまった。わたしは感激しきりだったけど、たまはおまけのありがたみがよくわかっておらず、お礼も言わずにタクシーを降りてしまった。日本交通無線番号135番の運転手さん、ありがとうございました。

「好き!」は幸運を呼び寄せる魔法の呪文みたい。今日の子守話も魔法のお話。あいかわらず、たまには不評で「やめて〜」と逃げてしまった。
子守話88「まほうつかいのたまちゃん せんたくもののまき」

たまちゃんが まじょに でしいりして まほうを おそわりました。
「まほうは よくきく くすりだけど
 かしこく つかわないと どくに なるよ」と 
まじょは こわい こえで たまちゃんに いいました。
たまちゃんの まほうの ききめは たった3かですが
たまちゃんは まじょの ことばも 3かで わすれてしまいました。

あるひ たまちゃんは ママの おてつだいが
めんどうくさくなって せんたくものに まほうをかけました。
「ちちんぷいぷい。せんたくもの おりこうさんになあれ」

おりこうさんになった せんたくものは じぶんで
せんたっきの ドアをあけて そとに とびだし
いちもくさんに ものほしだいまで かけていきました。
そでのながいシャツが ものほしざおを もちあげると
シャツたちは するすると さおに そでを とおしていきます。
そのあいだに ブラウスは ハンガーに とびついて ひっかかり
くつしたとズボンは われさきにと たこあしに ぶらさがりました。
みんなで いっせいに とりかかると あっというまでした。

せんたくものたちは おひさまに あたって かわくと 
さおや たこあしや ハンガーから はなれて へやに とびこみました。 
シャツや ブラウスや ズボンは ふたつおりになったり よつおりになったり
じぶんで じぶんを きれいに たたみました。
くつしたは あいてを みつけて くるりと まとまりました。

らくちん らくちん。
たまちゃんは まほうの ききめに だいまんぞくでした。

ところが こまったことになりました。
おりこうになりすぎた せんたくものたちの
いやいやが はじまってしまったのです。
たまちゃんが シャツを きようとすると
「やあだよ」とシャツは にげていきました。
ズボンは「おむつと くっつくのは やあだよ」。 
くつしたは「どろんこに なるのは やあだよ」。
たまちゃんは むりやり シャツをきて ズボンをはいて
くつしたを はきましたが げんかんを でるまえに
「ほいくえん いくの やあだよ」と みんなが にげだして
たまちゃんは はだかんぼに なってしまいました。

やれやれ ほいくえんまで いくのも ひとくろうです。
まほうの ききめが つづく 3かかんが
なんと ながく かんじられたことでしょう。
いつも たまちゃんに てを やいている ママの きもちが わかって
たまちゃんは すすんで おてつだいするように なりました
「あら たまちゃんに まほうが かかったみたい」と
ママは おおよろこびです。

2008年07月14日(月)  英国ロイヤル・バレエ団 日本公演2008『眠れる森の美女』
2007年07月14日(土)  マタニティオレンジ146 コンロの火を消した犯人
2002年07月14日(日)  戯曲にしたい「こころ」の話
2000年07月14日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月13日(月)  ちびっ子総立ち!東京大学奇術愛好会のマジックショー

先週の土曜日、近所の公民館で開かれた東京大学奇術愛好会のマジックショーに出かけた。今回で第5回で、初回の2005年を観て以来、毎年できる限り足を運ぶようにしている。今年は、保育園へ向かう道すがらの店先に貼られた告知ポスターを娘のたまと見つける遊びをしながら、指折り数えて当日を待った。

はりきりすぎて開場時間の7時を開演時間だと勘違いして会場に乗り込んでしまったが、7時半になると畳に座布団を敷き詰めた会場は親子連れでぎっしり。マジックへの期待で目がらんらんの子どもたちの熱気はすごい。前座で町内会の世話役らしいおじさんが「がまの油売り」をコミカルに演じ、子どもたちは大受け。いよいよマジシャンの入江田翔太さんが登場すると、「あんた知ってる!」の声が飛んだ。去年、新しいレモンを切った中からお札を取り出すというマジックで驚かせてくれた人。

ジャケットを後ろ前に着て登場した入江田さん。「ぼく、ファッションセンスがないって言われるんですよ」。会場からボランティアを募り、袋に入ったネクタイから一本を選んでもらうことに。女の子が選んだのは、蛍光のグリーンのネクタイ。はたして、入江田さんがジャケットを裏返すと、身につけているのは、なんと同じ色のネクタイ! 「ええーーーーーーっ!」の声とともに、子どもたちが一斉に立ち上がった。

「今日は、靴下も同じ色でそろえてきました」と足を上げて、靴下をアピールしたあと、カップ&ボールのマジックを披露。カップをたたくとボールが出てくる、そのボールも同じく蛍光グリーン。やっているうちにボールが靴下になってびっくり。入江田さんが足を上げると、靴下をはいていた足がいつの間にか裸足に! 「あれは、さっきと逆の足とちゃうかな?」と同じクラスのカナコちゃんのママ(関西人)が後ろからささやき、「なるほど。その手があったか」などと話していたら、カップからネクタイが出てきて仰天。いつの間にネクタイを外したのか! カップの中からオレンジジュースの入ったトールグラスが現れるのも不思議不思議。

他に手元のカードが一枚ずつそでの中を通り抜けるマジック、ちびっ子3人が選んだカードを次々と当てるマジックなどを披露。去年と同じくレモンから千円札が出てくるマジックも。切り目を隠しているのだろうか。2回見ても、さっぱり種がわからない。一年経って、去年よりも動きがこなれていた入江田さん。ショーの後、子どもたちにサインを求められ、「今もらっとくといいかもね。今度世界大会に出るんですよ」と話していた。健闘を期待したい。

マジシャンといえば、友人の城光一君もかなりの腕前。以前二人でカウンターの店で食事して、テーブルマジックを独り占めで見せてもらったが、贅沢な時間だった。大阪のNHKで番組制作をしている彼が作った「その時歴史が動いた」の「戦国のゲルニカ〜大坂夏の陣、惨劇はなぜ起きたのか」の回は、今でも検索してこの日記(2008年6月26日)にやってくる人が多い。仕事でもマジシャンぶりを発揮している様子。

今日の子守話はマジックにちなんで、魔法のお話。なぜか、たまは怖がって、不評だった。
子守話87 まほうつかいのたまちゃん れいぞうこのまき

たまちゃんが まじょに でしいりして
まほうを おそわりました。
まほうつかいの たまごの たまちゃん。
まほうの ききめは たったの 3かです。

さあて なにに まほうを かけようかな。

たまちゃんが さいしょに まほうを かけたのは
れいぞうこでした。

ちちんぷいぷい れいぞうこの なかの
たまちゃんの すきなもの
たまごを うんで どんどん ふえろ。

じゅもんを となえて どれどれと
れいぞうこを あけてみると
だいすきな プリンの となりに たまごが ひとつ。
わってみると なかから プリンが でてきました。
そのプリンを たべている あいだに
れいぞうこの プリンが また たまごを うみました。

バナナも りんごも チョコレートも 
たまごを うんで れいぞうこの なかは たまごだらけ。
だいすきな おやつを たべほうだいです。

ところが こまったことが おきました。
たまちゃんの きらいな にんじんや ピーマンも
たまごを うんで しまったのです。
たまちゃんの まほうが へたくそだったのでしょうか。
にんじんを いやいやたべても
れいぞうこの にんじんは なくなりません。

「さあ たまちゃん これを たべなさい」
ママが ホットケーキを やいてくれました。 
ほんのり あかくて あまあい ホットケーキです。
こんなに おいしい ホットケーキを
たまちゃんは たべたことが ありませんでした。
「その あかいろは にんじんの いろよ」と ママが いったので
たまちゃんは めを まんまるくしました。
ホットケーキには すりおろした にんじんが はいっていたのです。
まるで ママが にんじんに おいしくなる まほうを かけたようでした。

たまちゃんは すっかり にんじんが だいすきになって
「もっと もっと たべる!」といいましたが
まほうの ききめが きれて にんじんは もう ふえませんでした。

2008年07月13日(日)  マタニティオレンジ311 東京ディズニーシーでパークデビュー 
2002年07月13日(土)  『寝ても覚めても』『命』
2000年07月13日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月12日(日)  朝ドラ「つばさ」第16週は「嵐の中で」&「ラジオぽてとin渋谷」

昨日の川越参りに続いて、今日は渋谷で開かれた「つばさ」ファンミーティングにお邪魔する。子守の都合がつかず、娘のたまを連れて行くことに。会場は親子連れが多く、ほっとしたが、始まるなり、たまは「ちゅばさ どこ?」を連呼。「つばさ、見にいこうね」と話していたのだが、つばさ=玉木つばさに会えると期待してしまった様子。多部ちゃんはビデオレターで何度か登場したが、たまは本物を所望。そこまでファンになっていたとは知らなかった(後でじいじばあばに報告するときも「ちゅばさ テレビだったの」)。

今回は「ラジオぽてとin渋谷」ということで、真瀬昌彦役の宅間孝行さん、丸山伸子役の松本明子さん、浪岡正太郎役のROLLYさん、ロナウ二郎役の脇知弘さんが登場。まず、寸劇で幕が開いた。つばさがベッカム一郎とラジオで共演する初日のラジオぽてとという設定で、二郎が気象情報コーナーをやっているブースの外では、あとの3人がベッカムの番組に大受け。放送を終えた二郎が出てくると、「よし、戦略会議だ。この波に乗って、ラジオぽてともメジャーになるぞ」と真瀬。すかさず、歌を作って売り出せば、と算盤を弾く伸子。だが、浪岡の考えた旋律は、つばさがいない淋しさで暗く沈み、「それじゃあメジャーはダメじゃー」と二郎が突っ込む。伸子に「くだらない」と言われた二郎は「日本一くだらないラジオ局ですから」と開き直る。儲けることしか頭にない伸子は「ラジオぽてとの金庫番ですから。といっても、金庫は空っぽですけど」。だったらグッズ作る金もないのでは、と「♪集金だ〜」「♪スポンサー探し〜」とミュージカル風に出て行き、二郎も「♪街ネタ探し〜」。浪岡は「やはり、地道に精進するしかありませんね」と一同を見送ってギターを鳴らし、お茶目に舌を出す……という2分ほどの内容。

続いて、ぽてとメンバーのトーク。司会は埼玉放送局の結城さとみアナウンサー(たぶん……)。後藤高久チーフプロデューサーも参加。関西出身の後藤さんはかなり話し上手なのだけど、同じく大阪・高槻出身のROLLYさんの面白さが炸裂で、イントネーションもかなり大阪弁が出ていて、ノリノリでお話しされているのがよくわかった。『ロッキー・ホラー・ショー』を3回、『星の王子様』を2回観に行ったファンとしては、ROLLYさんの素のおしゃべりをたっぷり聞けて、大満足。ROLLYさんは宅間さんを「いじめっ子のジャイアンキャラ」だと位置づけ、「パン買って来いとか言わないでくださいよ」などと言っているらしい。控え室でのおしゃべりもとても楽しそう。「みんな自分の楽屋に帰らないんですよ」という松本さんの言葉にも、メンバーの仲の良さがうがかえる。

各自がお気に入りのシーンを紹介するコーナーでは、まず脇さんが放送したばかりの第15週「素直になれなくて」でつばさに「なんで僕じゃなくてつばさちゃんなんだよ」と本音を漏らすシーンを。演出(福井充広さん)から注文された通りに演技した後で「今までのこと忘れて、素でやってください」と言われて、納得のいく演技になったそう。

松本さんは、第12週「男と女の歌合戦」の「あなた」熱唱のシーンを。スクリーンとスピーカー音声で再生すると、あらためて歌のうまさが際立つ。松本さんが少女時代に田川陽介さん(夫の良男役)のファンクラブに入っていたのは、びっくり。ここで登場した息子の隼人役の下山葵君が妙にトーク慣れしているのも、びっくり。「松本さん、どうなんだろと思ってた」「うちの母親に似ていて「やりやすかったです」と言う下山君に、「お前、上から目線だな」と隣から宅間さんが突っ込む。

ROLLYさんが選んだのは、第10週「愛と憎しみの川越」で、ブロッグ塀を壊して玉木家の庭に乱入する場面。撮り直しがきかない一発勝負のこの一瞬で「できるだけ派手に、しかも足は地面と直角に」を狙ったとか。家に帰って何十回も再生し、よくやったと自賛したというのがお茶目。スクリーンで観ると迫力もお茶の間の数倍で、会場は大いに沸いた。

宅間さんは、第9週「魔法の木の下で」の優花と心を通わせる場面。抱き上げた瞬間、「くさい!」と優花が逃げる演技に、「あれはアドリブ?」と視聴者からの問い合わせが多数あったそう。優花ちゃん役の畠山彩奈ちゃんの演技がそれほど真に迫っていたということ……と話題は真瀬より優花に集中。

最後に多部ちゃんが選んだのは、第10週の頭でラジオぽてとメンバーが川越キネマに優花ちゃんを迎える引っ越しを総出で手伝う場面。その理由をビデオレターの中で「ぽてとメンバーのもうひとつの家族らしさがよく出ているから」と多部ちゃん。彼女らしい(つばさらしい)選択。「僕は手伝えよ、と思いましたけど」と後藤さん。この場面の最後でつばさと伸子は座っておしゃべり。その後ろで荷物を運ぶ二郎が転んでいるのだが、転んだのはアドリブだとか。ROLLYさんは「本当は冷蔵庫ぐらい一人で運べますが、あの場面は重いフリをしていたんです」(たしか実家が電気屋)と勝ち誇るが、「あれ? さっき、あれは重かったって言ってなかったっけ」とすかさず真瀬さんが突っ込む。

ROLLYさんが「受けを取った場面」として紹介されたのが、第15週で真瀬が「お電話代わりました」と受話器を奪う瞬間。肘鉄を食らった浪岡の眼鏡が吹っ飛び、あわててかけ直しているのだけど、わたしは見落としていた。スローモーションで観ると、ますますおかしく、会場は大爆笑。眼鏡が飛んだ瞬間、ROLLYさんの頭の中では「ここで演技をやめるべきか、続けるべきか」の二択がよぎったが、「おいしくなるかも」と判断して続行。よく見ると、真瀬もつばさも顔が笑っているのだが、「ぽてとが話題になって喜ぶ場面だからいいでしょう」と宅間さん。「高槻出身のROLLYさんには、すぐにかけ直すんじゃなくて、這いつくばって探してほしかったな」のような突っ込みをすると、「やってましたね、あれは」と負けず嫌いなROLLYさん。あの一瞬で?? 松本さんの「もう一回観たい〜」に応え、結局3回再生。

多部ちゃんが再びビデオレターで登場し、これから20週までの特別ダイジェストを上映。川越の重鎮、城之内エンタープライズを仕切る房子(冨士真奈美さん)が登場したり、真瀬と翔太のつかみあいがあったり、真瀬の胸で泣くつばさがあったり、竹雄と麻子が怪しい仲になったり、包丁がぎらついたり……短い時間に「!」の連続で、会場は「ええっ」とどよめいた。これからの「つばさ」もますます目が離せません。

最後はROLLYさんのギターに合わせて「あなたが好き」を合唱。ファンミーティングのことを略して「ファンミ」と呼ぶそうだが、三位一体ならぬ「ファンミ一体」ないい雰囲気。今日集まった方のつばさ熱は相当なもので、「川越へ行かれたことのある方?」の問いかけに、ほぼ全員と思われる数の手が一斉に挙がった。川越で開催中のつばさ展ではスタジオセットの再現も見られるそうで、これを目当てにまた行ってみたい。

会場を出て、スタジオパークへ。撮影日には上からセットをのぞけるコーナーがあるが、今日は撮休日。つばさ出演者のサインはそれぞれの役者さんの個性が出ていて、読み物としても面白い。たまがいちばん喜んだのは、「おかあさんといっしょ」のビデオコーナーと飲食コーナーの横浜豚まん(280円。大ぶりで予想以上においしい)だった。

さて、明日からの第16週は「嵐の中で」。8、9週で登場した横矢みちる(山本未来)が再び登場。彼女が取材している河川敷に住むホームレス(永島敏行)が実は翔太(小柳友)の父で、父子をつなげようとするつばさ(多部未華子)と拒む翔太(小柳友)の関係に波風が立つ。さらに、真瀬に思いを寄せるみちる、つばさをますます意識する真瀬も加わり、川もあふれる、思いもあふれる一週間。小豆の煮え方から台風接近を察知した竹雄(中村梅雀)は、防災で存在感を発揮しようと試みるが、防災グッズの「防災くん」を売りさばくことを思いついた加乃子(高畑淳子)に相手にされず、心穏やかでない。

今週のキーアイテムは「ぬか床」。漬け物から家族の秘密が明らかになるというのも、「つばさ」ならでは。

停電中の玉木家のドタバタぶりは健在。ラジオの男のお茶目な台風ネタにもご注目。今週も本筋の重苦しさを小ネタのバカバカしさが救っています。タイトルは「嵐の中で」。打ち合わせで「台風一家」というタイトルを提案したら、笑いだけは取れた。子どもの頃、ニュースで「台風一過」と聞くたびに、台風の親子を想像した人は多いのでは。演出は1〜3週、6週、10週、14週の西谷真一チーフ・ディレクター。続く第17週「さよならおかん」は再び今井雅子増量週間。

2008年07月12日(土)  ログ解析〜みなさんどこから飛んで来るの?
2005年07月12日(火)  『子ぎつねヘレン』打ち上げで ipodをゲット
2003年07月12日(土)  15年目の同窓会
2002年07月12日(金)  『真夜中のアンデルセン』小原孝さんのピアノ収録
2000年07月12日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月11日(土)  川越でおいしいものと「ちゅばさ」探し

朝から「つばさ」第15週「素直になれなくて」の感想が続々。ベッカム一郎(麒麟の川島明)とロナウ二郎(脇知弘)の漫才に泣かされた方、多数。見逃した方は、NHKオンデマンドでつかまえる手も。涙の雨の後は、台風で暴風雨が吹き荒れる第16週「嵐の中で」。つばさや翔太や真瀬の心にも、嵐が吹き込む予感……引き続きお楽しみください。

「つばさ」の脚本開発が一段落つき、他の仕事が動き出す前の今週末は、娘のたまと遊ぶことに。「どこ行く? 川越行こっか?」と候補のひとつに挙げたら、「かわごえ いく!」とノリノリ。ゴールデンウィークにじいじに連れて行ってもらったのが楽しかった様子。ちょうど電話をかけてきたじいじも誘って、3人で出かけることに。「かわごえ ひと いっぱい いるよ。ちゅばさ いっぱい いるよ」と先輩ぶって教えてくれた。


東武線の川越駅に着くなり、「あ! ちゅばさだ!」とポスターに駆け寄るたま。今や積水ハウスのCMを見ても「ちゅばさ」と指差すほど、多部ちゃんセンサーは発達。加えて、ひらがなはまだ読めないのに「つばさ」のタイトルロゴも識別でき、今日はこのあと行く先々で「ちゅばさ」を発見することになる。


巡回バスで蔵造り通りまで出て、まずはトイレ。川越まつり会館の外にある身障者対応トイレには、子ども用便座がついていて感激。子連れ外出の強い味方! 無事用を足せて、よし、しばらくオムツが持つぞと喜んでトイレを出ると、「大丈夫ですか?」と女性が駆け寄ってきた。いつの間にか、たまが非常用ボタンを押していたようで、こちらは平謝り。もう一人、後から飛んできた男性職員さんが女性職員さんから報告を聞いた反応が「大丈夫だったんだ? 良かった」というあたたかいもので、恐縮しつつ、川越の人の優しさに触れられる場面となった。

トイレから駐車場を抜けたすぐ先からは菓子屋横町。前回来たときに気づかなかったワゴン車でスコーンを売る楽楽カフェに目を留める。「スコーンには目がないんです」と名乗りを上げてバナナチョコスコーンを買う。その場であたためてもらい、併設されたアウトドアのテーブルでいただく。お店の顔のゴールデンレトリーバー君がずっと狙ってて可愛かった。

その向かいは同じ名前のベーカリー楽楽(サイトもあったかみがあって素敵!)。気になってのぞいてみると、なんとまあわたし好み。内装にふんだんに使われた木とパンの色がいい感じに溶け合って、ブラウンのグラデーションのようなあたたかな店内。どのパンもとてもおいしそうに見え、実際とてもおいしかった。パンを買った人にサービスされるドリンクとともに、建物の庭先にあるベンチでいただく。

菓子屋横町探険をさらに続けると、こんなのぼりが。「15分では観られない川越がある」。うまいコピー。飴細工の実演販売、量り売りの金平糖、駄菓子屋さん……懐かしさと楽しさがまじりあって、ウキウキしてくる。ノスタルジーのないたまは、「べべ(=せんべい)ばべたいよー」を連呼。


以前食べた「亀どら」がおいしかったのを思い出し、亀屋さんへ。たまが「亀どらのつばさ」ののぼりを指差し、「あったよ」と教えてくれた。試食したうぐいす豆亀どらが気に入ったので購入。ここでもお茶サービス。「ひるたま」紹介のポスターの下でお茶を飲む、わが家のあまたま(=甘えん坊たま)。亀屋さんでは、あまたまそっくりな「あんこ玉」が亀どらと並んでよく出ていた。

時の鐘がある鐘つき通りを歩いていて、たまがいきなり興奮してつかんだのが、ふかしいもとあんこを薄い皮で包んだ「いも恋」。前回わたしと来たときに食べておいしかったのを思い出したのか。じいじと3人で分け合って食べる。たまがむさぼるように食べるのを見て、「これは『いきなり饅頭』ってやつだ。今度作ってあげるよ」とじいじ。


かなりの勢いで食べ続けているので、お昼は食べなくてもいいかなと思っていたら、「大八 勝山」という店の前で「ちゅる ばべる」とたまが言い出し、店内へ。名物の川越ラーメン(いもの素挙げが乗った醤油ラーメン)と紫いも餃子(紫いもを練り込んだ皮で特許を取っている)を注文。ともに、いもが入っている以外はオーソドックスな味だけど、旅先の食事らしくて、よい。たまはラーメンに入ったコーンを熱心に食べていた。お店の人が子連れに優しく、ありがたかった。


再び蔵造り通りを歩いていると、「あれ、甘玉堂じゃないか?」とじいじが指差したのは、陶器を扱う「やまわ」というお店。「ここがロケ地です!」と主張していない奥ゆかしさが老舗らしい。ここもあまたまに似た「くらたま」というお菓子を扱っているが、2時過ぎですでに品切れだった。店の中から奥の蔵にかけてトロッコの線路が続いていて、今は使われていないレールの間に手書きのタイルが埋め込まれているのが愛らしい。前に川越に来たときはトロッコの線路に気づかなかったが、今回はあちこちで線路跡を見つける楽しみがあった。

終始「ちゅばさ」探しに活躍したたまは、歯科医院の入口に置かれたバスケットの中の「つばさ」をガラス戸越しに発見。建物の全景写真を撮りそびれたが、元は川越で最初のデパートだったそう。その向かい辺りにあるりそな銀行川越支店の洋館も美しい。


もうひとつ、前回来たときに気になっていたのが、パリの香りがする石造りのカフェ エレバート(CAFE ELEVATO)というカフェ。ゆったりした椅子のカウンター席で、子連れ入店には不向きと言えるが、たまを膝に乗せてアイスカフェオレを飲む。置かれているグッズもセンスがよく、居心地のいい空間。新宿三丁目のカフェ・ユイットがトップスビルとともに幕を閉じてしまった(最後にもう一度と思っていたら、6月28日に閉店していた)喪失感を和らげるかのように、ここと楽楽ガーデンカフェに出会えたのは収穫だった。お気に入りのカフェがあることは、その街を訪ねる理由になる。

「呉服かんだ」というお店の店先に子ども用の草履がセールになっていたのが目に留まり、買い求めようと店内へ進むと、今度は子ども用のじんべいと目が合った。白地にスイカ模様のものに一目惚れしたが、90センチサイズだと来年はきついし、110センチサイズだと今年はぶかぶかだし……と迷っていたら、子犬模様の100センチを見て、たまが即決。さっさとレジへ持って行ってしまった。「これはまけられないのか」とじいじが交渉したら、割り引いてくださり、いい買い物ができた。家に帰って着替えたたまはすっかり気に入り、町内のマジックショーに着てでかけた。

2008年07月11日(金)  マタニティオレンジ310 「きー」ときどき「あれ?」
2007年07月11日(水)  マタニティオレンジ145 皆様のおかげの空の旅
2004年07月11日(日)  ヤニィーズ第7回公演『ニホンノミチ』
2002年07月11日(木)  映画『桃源郷の人々』
2000年07月11日(火)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)


2009年07月10日(金)  リチャード・ギアが「ヘァチ」と呼ぶ謎『HACHI 約束の犬』

「あのハチ公物語がハリウッド映画に!」と映画関係者の間でも話題の『HACHI 約束の犬』。先日新宿ピカデリーにて『築城せよ!』(7/8の日記にて紹介。おすすめです!)を観たとき、初めて予告編を観たのだが、リチャード・ギア演じるロマンスグレーの大学教授がHACHIを「ハチ」ではなく「ヘァチ」と呼ぶのがツボに入り、泣ける映画のはずなのに笑いをこらえることに。というのも、最近「カバは英語でヒポパタマス」だと知った娘のたまが「たまは英語で何ていうの?」と聞いてきて、「たまはTAMAよ」と最初のAをAPPLEのAにして発音すると、「テァマ」とうれしがって繰り返したことを思い出してしまったから。隣の席で観ていた友人アサミちゃんに後で事情を話すと、「うちの甥っ子も、幼稚園の頃英語を習い始めて、玉子をテァマーゴって呼んでた」とアサミちゃん。

オリジナルのハチ公物語に敬意を示して日本語の名前にしたのだろうとは想像するが、劇中ではどういう経緯で「ヘァチ」と呼ばれるようになったのかが気になり、ちょうど試写状が届いていたマスコミ試写で確かめることに。受付で『子ぎつねヘレン』の宣伝担当だった清宮嬢と数年ぶりに再会。

以下、ネタバレが気になる方は読み飛ばしていただいて……。

「ヘァチ」の謎は、迷子の子犬の首輪についていた「八」という数字の名札にちなむものだった。犬を拾った教授が友人の日系人に「八」の札を見せ、「ラッキーな数字だ」と教えられて気に入り、それを名前にする。英語での映画化にあたり「名前はハチにすること」という縛りがあり、その設定が成立する理由を考えたのだろうか……と脚本開発の背景を想像した。納得してしまえば、「ヘァチ」が不自然に聞こえることはなく、あとはHACHIの仕草やHACHIが引き起こす事件のひとつひとつに笑いつつ、物語に引き込まれていった。そして、迫り来る悲劇の結末がわかっているだけに、教授とHACHIの絆が深まるほど、切なさをかき立てられるのだった。

犬の映画はズルい。犬を飼っていた人は、劇中の犬に「うちの犬」を重ねて観てしまうから、共感度数が数割増になる。HACHIの場合、ハリウッド映画でありながら、日本人になじみの深い秋田犬であるところも、さらにズルい。わたしが中学生の頃から十年あまり飼った雑種のトトは柴犬っぽい顔立ちだったけれど、HACHIの顔がしばしばトトにだぶった。犬らしい芸当をやらず、ボールを投げても取ってこないところもそっくりで、HACHIを見ていると、20年以上前の記憶がどんどん呼び起こされ、家の外で抱きしめて眠ったときのトトの体のあたたかさを思い出したりした。母を怒らせて閉め出されたときだったか。愛想よくシッポを振ることはしない代わりに、わたしの笑顔も涙も同じように受け止めてくれる寄り添い上手だった。

トトと一緒に思い出したのは、チャコのことだった。愛らしい顔をした茶色い小型犬で、うちに迷い込んだのを一週間ほど預かる間にもらい手がみつかり、歩いて10分ほどの距離の家で飼われることとなった。ところが、うちの母になついてしまったチャコは、しばしば夜中に脱走し、うちの玄関先で「入れてよ」と言わんばかりに甲高い声を上げた。母はとりあえず家の中に上げ、一緒の布団で添い寝してやり、朝が来ると申し訳なさそうに新しい飼い主に電話をかけていた。そんな感傷を抜きにしても、会いたい人に向かってひた走る犬の一途さは涙を誘う。昔の傑作長尺CMで、ひたすら走る犬を追ったものがあった。お酒の広告だったか、コピーもナレーションもほとんど入っていなかった気がするが、観るたびに泣けるCMだった。犬があれば、コピーはいらず、台詞もいらないのかもしれない。

記憶の箱の蓋が開くたびに温かい涙がこみあげ、40度以上のお湯で落とせるマスカラが流れてしまうのではと心配になったほど。8月22日公開の今井雅子の6本めの長編映画『ぼくとママの黄色い自転車』は「今年いちばん泣ける映画」というふれこみで、こちらも愛らしい犬が登場するが、「8月8日(ハチでそろえて、覚えやすい!)公開のHACHIに涙を持って行かれないか?と心配したり、「HACHIで犬映画需要が高まれば、ぼくママにも追い風になるかも」と思い直したり。

さらに、駅で教授を待ち受け、飛びつくHACHIの姿が娘のたまに重なり、困った。毎日6時15分に保育園へ迎えに行くわたしが現れるタイミングを、時計を読めないたまは感覚で測る。あの子のママが来たから、次はわたしのママの番という風に。駅の出口から吐き出される乗客一人一人の顔を確かめるHACHIの顔を見ていると、たまもこんな顔をしてわたしを待っているのだろうかと胸がしめつけられた。たまは最近『クイール』にはまり、毎日のように「わんわん みる」とせがむのだが、クイールが悲しげな顔をすると、「ママがいいようって いってる。たまちゃんみたい」などと言う。そんなことも思い出されて、涙ダムはますます決壊するのだった。

『HACHI』を観て、なるほどと思ったのだが、教授が急に還らぬ人となって引き裂かれたのは、「HACHIと教授」だけではない。HACHIよりも、もっと長い時間を彼とともにして来た家族もまた引き裂かれる悲しみを味わい、背負う。その部分の膨らませ方はとてもハリウッド的で、後日談で回想をサンドイッチするスタイルもこれまたハリウッドお得意の手法なのだけど、家族を膨らませたことでサンドイッチスタイルが効いているという図式はハリウッド的脚本の王道といおうか模範解答といおうか……ピースはぴったりはまっているけれど、予定調和ともいえて、ないものねだりだけれど、そこは物足りなく感じた。

もうひとつ、HACHIのフルネームが「HACHIKO」となっていて、ところどころで「HACHIKO」が出てくるのだが、「HACHIKOありき」だと知らない海外の人が観たときに「このKOは何ぞや?」とならないのか、気になった。エンディングで「実際のハチ公は……」と日本での実話が紹介されるので、劇中でもHACHIKOとしたほうがつながりが良かったのだろうか。「モデルとなった日本のHACHIはハチ公と呼ばれ……」とナレーションで解決する方法もあったような……などと代案まで考えてしまうのは困った職業病だが、リチャード・ギアが子どものように号泣したという脚本は、出演者(もちろんHACHIも含めて)の熱演に支えられ、いっそう感動的な映画に仕上がっている。渋谷のハチ公を見る目が数倍優しく温かくなるのは間違いなし。パンフレットを読んで知ったのだが、ハチ公像は第二次世界大戦中に「鋳潰」されたものを1948年に地元有志が再建したものだという。その辺りのことは日本版の『ハチ公物語』に描かれているのだろうか。こちらも観たくなって調べてみると、「『HACHI 約束の犬』公開記念 期間限定スペシャルプライス」の廉価版DVDが7月29日に発売とのこと。

2008年07月10日(木)  脚本家デビュー9周年
2007年07月10日(火)  マタニティオレンジ144 離乳食も食いだおれ
2005年07月10日(日)  12歳、花の応援団に入部。
2003年07月10日(木)  三宅麻衣「猫に表具」展
2002年07月10日(水)  『朝2時起きで、なんでもできる!』(枝廣淳子)
2000年07月10日(月)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)


2009年07月09日(木)  1962年の広告ウーマン『その場所に女ありて』

映画と鉄道を愛するご近所仲間のT氏から「神保町シアターで成瀬巳喜男特集がありますから、ぜひ」と熱い推薦状と資料が届いた数日後、今度は「京橋のフィルムセンターで広告業界を描いた映画の上映があります」とメールが届いた。1962年の東宝作品『その場所に女ありて』(鈴木英夫監督)と1958年の大映作品『巨人と玩具』(増村保造監督)。「どちらも当時の俊才監督の手によるものです。この監督達の名前は知っていて損はありません。広告業界の人が見たら、これはどうしょうもなく全く違う世界なんでしょうけれど、もう半世紀近い昔の日本のこととして見れば、これはこれで面白いと思います」とのことで、まずは『その場所に女ありて』を観た。

最初はバカでかいタイプライターやそれを扱う「幹事長」と呼ばれる女社員の男言葉や事務所のような座席配置といった違和感に気を取られてしまったが、司葉子が演じるコピーライター上がりの営業職のヒロイン律子に乗っかって観始めると、律子が広告代理店のコピーライターだった頃の自分や同僚の姿に重なり、いつしか時代の違いよりも「昔も今も同じ」という想いが勝っていた。

「数字を上げたい」得意先と「表現」にこだわる代理店との攻防、競合他社とのコンペでの仕事争奪戦、その戦い方をめぐる社内での駆け引き……自分が体験した出来事と重ね合わせ、緊張感や焦燥感が生むサスペンスに引き込まれ、はらはら、どきどき、きりきりと大忙しの鑑賞となった。(以下、ネタバレがあるので、8/26(水)7:00pm〜の回を観る予定の方はご注意を)

広告表現は進化しても人間は進歩していないのだなと感じさせるエピソードがいくつか。たとえば、キャッチコピーが決まらないアートディレクターの倉井(なんと山崎努!)に相談され、律子が即興で答えたコピーが採用となり、その広告が賞を取る(今で言うADC賞のようなものだろうか)が、ゴーストライターである律子の名前は当然クレジットされず、アートディレクターは自分一人の手柄にし、受賞を手土産に転職を決めるというエピソード。実力がないゆえ先行きに不安を感じ、アルバイトでコピーを書いてくれと律子に頼む情けなさが、とてもリアルだった。クレジットから名前を外された誰かがくさるとか、自分の仕事を大きく見せて引き抜かれたものの後が続かないとか、そういう話はゴロゴロしていたが、それをやってしまうクリエイターにも「自分を売れるうちに高く売りたい」という野望や将来の不安がある。映画ではその部分も実に説得力ある台詞で描いていた。

もうひとつ、広告キャンペーンのコンペでの競合代理店が取った「相手の代理店に抜け駆けでアイデアを出させる」というずるい手も、決して映画のために誇張されたエピソードではなく、アルバイト感覚で他社のプレゼンを手伝うという話はけっこうある。そういうアイデアがコンペを勝ち抜いて世に出てしまって、コマフォトや宣伝会議に載ったりTCC賞やADC賞を取ったりしたら、クレジットはどうなるんだろう、などと余計な心配をしてしまう。

仕事でも麻雀でも男と互角に渡り合える律子は、よりによって製薬会社のコンペを競う競合代理店の担当営業の坂井(なんと宝田明!)と恋に落ちて一夜を共にする。だが、坂井は律子の会社のチーフデザイナーにコンペ用のアイデアを出させていた。最終コンペに勝ち残った両社のレイアウトを見せられたときに、律子はチーフクリエイターの裏切りを見抜くと同時に坂井が勝つために卑怯な手を使ったことを知ってしまう。

律子に問いつめられたチーフクリエイターは辞表を出すと約束するが、それを会社ではなく「私に出してね」と言う律子が何ともカッコ良く、惚れ惚れした。人を責めるのではなく、失敗を悔いるのでもなく、立ち止まらずに前へ進み続ける。広告の人間はこうでなくちゃ、時代に置いて行かれる。

その後、アイデアが律子から競合へ漏れたとあらぬ疑いをかけられ、解雇をほのめかされたときも、律子はチーフクリエイターの裏切りは自分の胸に秘め、自身の潔白と仕事への情熱を訴えて会社に留まろうとする。弱音を吐かなかった律子がこのときばかりは男連中を前に「女が一人で仕事だけの七年はご想像以上のものがあります」と切実に訴えるのだが、半世紀前の広告業界で女性が働くということは、今とは比べ物にならない窮屈さや重苦しさがあっただろうと想像する。わたしのいたマッキャンエリクソンという会社は外資系のせいか、若い女子も好き勝手発言出来る空気があったけれど、組合の担当で広告労協の女性会議なるものに関わったとき、平成の世になってからも、女泣かせな話はいっぱいあった。

脚本は鈴木英夫監督、升田商二という男性二人だが、仕事を背負って生きる女のしんどさがとても丁寧に描かれている。ただ、酔いつぶれて坂井の部屋に運び込まれて、互いの気持ちを確かめ合う場面で「僕の気持ちは決まっている」と言われて、「愛してるってこと?」と律子が答えたのが、強がりの鎧を一気に脱いだ気がして、もったいなく感じた。その前にネックレスを外す仕草だけで女モードのスイッチが入ったことを見せてくれたように、ここは潤んだ目でうなずくだけのほうがときめいた気がする。さらに欲を言えば、仕事一筋だった律子が坂井と一夜を共にした後の恋の高まりをもう少し見たかった。本当なら毎日でも会いたいのにコンペ準備でお互いそれどころではない。残業の合間にせつない電話の一本でもあれば、ようやくコンペ案の提出日に得意先で再会できた喜びと、その直後の失望の大きさが増したと思う。全体的に女は生き生きとしてたくましく、男はだらしなかったり情けなかったり。森光子と児玉清が演じる律子の姉とそのヒモの二人にも、それは象徴されていた。

広告業界を映画で観るのは面白い。T氏におすすめされたもう一本、『巨人と玩具』もぜひ観てみたい。こちらも1回めの上映は終了していて、2回目は8/20(木)7:00pmから。

2008年07月09日(水)   ダニに噛まれたり 毛虫にかぶれたり
2007年07月09日(月)  マタニティオレンジ143 はじめてのお泊まりに大興奮
2003年07月09日(水)  LARAAJI LARAAJI(ララージララージ)
2002年07月09日(火)  マジェスティック


2009年07月08日(水)  『築城せよ!』がヒットすれば、日本映画の未来は明るい。

打ち合わせの帰り、銀座界隈から有楽町へとぶらぶら歩きながら、なんと多くの映画館があり、多くの映画がかかっていることだろうと思った。

年に数百本観るツワモノがいる一方で、何年も映画館へ足を運んでいないという人もいる。年に数本止まりが大多数で、月に一本なら観ているほうかもしれない。そんな限られた中の一本に選ばれるのは熾烈な競争だなあ、と作り手の一人として切実な気持ちになった。

ある映画制作会社の社長さんが以前「何行く?と友人や家族で話題になったとき、候補に挙がるのは3本まで。そこに入ってないと勝負にならない」と話されていたことも思い出した。

わが身を振り返れば、6月に映画館で観た作品はなく、今月は『風の絨毯』プロデューサーの魔女田さんこと益田祐実子さんが代表を務める仕事人集団・平成プロジェクトの最新作『築城せよ!』を新宿ピカデリーで観たのみ。『スラムドッグ$ミリオネア』も『グラン・トリノ』も『剣岳 点の記』も観たいけれど、一番終了が迫っている作品を優先させた。観たいリストのうち、あといくつ、スクリーンでかかっているうちにつかまえられるだろうか。

その『築城せよ!』は、6月20日公開で、新宿ピカデリーでの上映は当初2週間の予定だった。その間に駆けつけるのは厳しいかなあと危ぶんでいたら、口コミ人気に加えて、『徹子の部屋』に宮大工・勘助役の阿藤快さんが出演されて制作風景が紹介され、上映期間が延長されることに。

「7/9までは確実にやります」と古波津陽監督(クレジット映えするカッコいい名前。波田陽区にも似てるけど)から案内メールがあり、何とか滑り込めたのだが、帰りがけに受付で「いつまでやっていますか」と聞いたら、「17日までは確実に」とのお返事。間に合う方はぜひ!の気持ちを込めて、鑑賞の感想を。携帯で撮ったピンぼけ写真は、ロビーに飾られていた甲冑とダンボールのシャチホコ。 

60分サイズの『築城せよ。』を観て、あまりの奇抜さにぶっ飛び、上映会場にいた古波津監督をつかまえて「最高!!」と伝えたのが、2006年の暮れ(>>>2006年12月12日(火)  あっぱれ、『築城せよ。』!)。その上映会自体は、『私、映画のために1億5千万円集めました。―右手にロマン、左手にソロバン!主婦の映画製作物語』を読んだ古波津監督が「こんな映画を作ったのですが、宣伝の知恵をお借りしたい」と魔女田さんに連絡を取ったところ、持ち前の行動力でシアターサンモールを借りて実現させたものだった。

そこで話を終わらせず、愛知工業大学の記念事業と結びつけて、「『築城せよ。』を劇場版長編にしよう」と思い立った上にあれよあれよという間に形にしてしまったのが、魔女田マジック。その実行力はもちろん、先立つ物(=製作費)を調達した錬金術に脱帽。この不景気に、大口ドカンではなく小口の出資先を説得して回り、3億5千万円を積み上げた。朝日新聞の別刷りbe一面のフロントランナー欄を「平成プロジェクトの益田祐美子」が飾る日も遠くない気がする。

こう書くと、とんでもない豪傑を想像されそうだけど、魔女田さんは、わたしを紹介するときに「今井さんとはウマが合うの。レズみたいな感じ」などと爆弾発言をして相手を面食らわせるような人。天才というより天然で、無意識のうちにまわりを天災に巻き込むところが、いかにも魔女。『築城せよ!』の中で「頼りないぐらいがちょうどよい。手助けせんと人が集まり、心がひとつになる」といった台詞があったが、これは魔女田さんのことではなかろうか。

映画の成立については、先日ひさしぶりに連絡を取り合ったシネマジャーナルの景山咲子さんが立ち会った監督と魔女田さんのインタビューが詳しいので、こちらをぜひ。魔女田さんの顔を覚えておくと、スクリーンの中に見つける楽しみが。こんな登場の仕方も、さすが魔女。

さて、映画の内容について。公開時の新聞批評に「設定が奇抜な割に出来事が想定内」だと書かれていたが、エピソードに「あるある」というリアリティが宿っていたからこそ、「現代に蘇った戦国武将がダンボールで城を建てる」という突飛な設定に感情移入して観られた。数百年の時を超えて現代に迷い込んだ侍の戸惑いやドタバタを愛せるからこそ、彼の晴らせなかった恨みに心を寄せ、悲願の城を建てるために民と心を通わせようとする姿を応援したくなるのだった。

はまり役を配したキャスティングも、そのリアリティを支えていて、とくに殿様の霊に乗り移られる役場職員の「ふらぼん」(=ふらふらしたぼんぼん)を演じた歌舞伎役者の片岡愛之助さんの二面性がお見事。よく通る声と歌舞伎の所作の美しさに殿様の説得力が宿っていた。

江守徹さん演じる敵役の町長は、さすがの存在感。それでいてお茶目。海老名はなさんの建築科学生、その教官の藤田朋子さん、ふせえりさんの役場職員と女性も生き生きしていてチャーミング。各登場人物のキャラクターづけがうまく、一人一人が取る行動が実に自然で納得でき、悪役も愛せるところがわたし好み。

ちりばめられた小ネタと伏線が楽しく、ところどころに光る台詞があり、よく練られた脚本に感心した。日本らしい物づくり精神や故郷への思い、輪廻転生思想なども盛り込まれ、『築城せよ。』から長編らしい大きな物語に飛躍した『築城せよ!』。海外の映画賞で評価された短編と同じく、こちらの劇場版も世界に打って出て欲しい。

特筆すべきは、ラスト近くの絶景の息をのむ美しさ。ここ数年観た映画で最も美しく、映画らしいスケールのあるシーンで、これだけでもスクリーンで観る価値あり。欲を言えば、もう少し長く観たかった。あと5秒あれば、盛り上がった涙が落ちた。

しかし、その後、まさか烏に泣かされるとは。ダンボールと烏にこれほどの意味と愛情を込めた映画も珍しく、それらに注ぐ目線が優しくなってしまっているの自分に気づいて、不思議な余韻を味わっている。

宣伝にお金をかけられない映画は、存在を知られる前にひっそりとスクリーンから消えてしまいがちだが、この作品は、見過ごすのがもったいない掘り出し物。物語も井戸の底で眠っていた霊が眠りから覚めるという掘り出し物の話だし、撮影のために実際にダンボールで高さ25メートルの城を建てたエキストラやボランティアスタッフの底力を見せた点でも掘り出し物。

民が心をひとつにすればダンボールで城が建つように、一人一人が力を合わせれば、オリジナルでこれだけパワーのある映画を作れるのだ、と勇気が湧いてくる。今月の一本、この夏の一本に選んでも、損のない作品。これがヒットしたら、日本映画の未来は明るいと思う。

皆の者、築城せよ! 愛知、大阪他、全国で公開中。

2008年07月08日(火)  同級生さっちゃんと19年ぶりの再会
2007年07月08日(日)  マタニティオレンジ142 布の絵本とエリック・カール絵本のCD
2005年07月08日(金)  いまいまぁ子とすてちな仲間たち
2000年07月08日(土)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月07日(火)  彦星は一年ぶりの会津の酒!「第5回 天明・七夕の宴」

大塚にある『串駒』にて、一年ぶりの「天明」の会。会津坂下の曙酒造さんがお酒をひっさげて参上し、それを極上の肴とともに心ゆくまで味わう。今宵が5回目で、過去の日記をたどると、わたしは第1回、第4回についで3回目の参加。写真は発泡した澱酒の瓶を開け、しぶきを見守る蔵元の鈴木氏。

2008年07月06日(日)  串駒 天明(曙酒造)七夕宵宮の会
2005年07月07日(木)  串駒『蔵元を囲む会 天明(曙酒造) 七夕の宴』

今回通されたのは本店から数件離れた串駒房会場。ご近所仲間のT氏の大学時代の友人のH氏・W嬢カップルと折り紙名人のT2氏、T氏の鉄道仲間の飲み鉄氏と大きな年輪テーブルを囲む。H氏、W嬢、T2氏とは数年前に串駒で同席(>>>2005年09月27日(火)  串駒『蔵元を囲む会 十四代・南部美人・東洋美人』)して以来。飲み鉄氏とはSL只見号で同席(>>>2004年10月23日(土) SLに乗ったり地震に遭ったり)して以来。テーブルの全員が只見線のSLに乗ったことがあり、T氏推奨の日本映画を観たことも一度や二度ではないという顔ぶれ。共通の話題には事欠かず、お酒が入ると、ますます話が弾んだ。

ご両親の出身地ということで会津に肩入れされている飲み鉄氏は、「ようこそ会津へ」のバッヂをつけて参加。「極上の会津へ」の観光パンフレットを配り、「たまちゃんにどうぞ」とあかべこのぬいぐるみをお土産にくださる(日記を読んでくださっているそう)。さらにわが家のファミリーネームの駅名が刻まれた貴重な昭和52年の硬券(駅員さんがハサミを入れる硬い切符)まで頂戴する。

名物の店主は、初めて見たときから見事なまでにイメージが変わらず、今宵も仙人のような風貌と引き笑いは健在。「よく5回も続いたもんですよ」と自虐的ぼやき口調のオヤジトークも相変わらず。「私も党を作ろうと思ってるんです。民に酒と書いて民酒党」(後で知ったのだが、実際に民主党がそういう名前の店を出してすぐに畳んだことがあったとか。店主はご存知だったのかな)などとのたまい、似顔絵入り串駒給付金を発券。

さて、毎回かなりレベルの高い音楽や芸能のサプライズが登場するのが串駒会の魅力のひとつ。今回はナポレオンズのボナ植木さん(背の高い眼鏡のほう)と声帯模写の丸山おさむさんが登場。丸山さんの紹介でボナさんがカードマジックを披露。その前に、まず腕まくり。ちょうど目の前で目を輝かせているわたしと目が合い、「好きなマークと数字は何ですか?」。「ハートの7」と答えると、なぜかそのカードがいちばん上に。さらに、カードに名前と電話番号を書き入れ、折り目をつけ、真ん中に押し込むと、いつの間にか一番上に上がっている。20センチの至近距離でも何が起きているのかさっぱりわからなかった。カードは裏面にボナさんのサインを入れてもらい、記念にいただく。「せっかくですから電話番号も書いてください」と言ったら、律儀に書いてくださった。ほんとに通じるのかな。「ナポレオンズを二人で呼ぶと金がかかりますけど、一人なら酒飲ませればやってくれますから」と店主。洋酒のナポレオンがコンビ名の由来だそうだが、日本酒もいけるらしい。丸山おさむ氏にも何かやってとお願いしたら、「よそで言わないでくださいよ」な物真似を披露してくださった。

さて、今宵のメニュー。まず、お酒は、
1 天明 純米仕込み一号五百万石
2 央 純米吟醸 黒ラベルKN 中汲み澱絡み 無濾過本生原酒
3 天明 純米 みずほ 無濾過 瓶火入れ瓶囲い
4 天明 純米吟醸 美郷錦 無濾過 瓶火入れ瓶囲い
5 天明 さらさら純米
6 央 袋垂れ 純米吟醸 白ラベルN 山田錦 無濾過本生原酒
7 天明 純米大吟醸 中取り 亀の尾 無濾過本生原酒

酒の肴は、
い 枝豆(早生茶豆)
ろ みねおか豆腐の胡桃みそ
は 鮭の田舎焼き
に 季節のサラダ(会津地物 天明さんのトマト)
ほ ソーメン 七夕仕立
へ ワタナベ黒豚 肩ロースステーキ(鹿児島産)

と 酒の友&胡瓜(会津地物 天明さんのきゅうり)
ち 会津産みずほ米のおむすび
り 味噌汁

会津地物のトマトときゅうりは生命力ほとばしる採れたて。胡桃みそ、鮭の田舎焼きは、素朴で奥深い味。素材の力を活かした串駒さんの肴は、日本酒が進む。鹿児島産の黒豚の登場に、飲み鉄氏は「会津と仲が悪いはずなのに、なぜ?」。「やっつけろってことでしょう」と解釈して平らげる。去年は遅めの昼食を食べたせいで胃が本調子ではなかったけれど、今年は絶好調。日本酒を飲むのは、去年のこの会ぶりではというほど久しぶりで、彦星様に再会する気持ちで喉がときめいた。市販されていない業務用専用という1番の「天明 純米仕込み一号五百万石」がいちばんわたし好み。酸味が強く、ワインのような味わい。3と6もすいすい飲めて、食事が進んだ。3は新米として食べられる極早稲種「瑞穂黄金」を使ったお酒。同じお米で作ったお酒とおにぎりを同時に味わう。チェイサーが仕込み水というのもなんとも贅沢。

去年の回で蔵元の鈴木夫人の話に繰り返し登場した「五ノ井酒店のごん太君」は今年、ご本人が参上。「どんな人なのかなと思ってたんですよ」と話しかける。100キロ級の大きな体に、愛らしい目で、まさにごん太君。一年前に話に聞いて、一年経って姿を確かめるというのも、七夕の会ならでは。

2008年07月07日(月)  この夏の目玉作品『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』
2007年07月07日(土)  マタニティオレンジ141 5人がかりで大阪子守
2005年07月07日(木)  串駒『蔵元を囲む会 天明(曙酒造) 七夕の宴』
2002年07月07日(日)  昭和七十七年七月七日
2000年07月07日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月06日(月)  恋に落ちて、掃除する。

昨日、日付が変わる頃、恋をしてしまった。今日は、その相手のことばかり考え、仕事が手につかない。写真を見ては、素敵、とため息。遠く九州のほうにおられるその方は、WA-PLUSという「和モダン家具」ショップのチェスト氏。「一本の木(ONE WOOD)から生まれる形」がコンセプトで、年輪がくっきりな刻まれたお顔は品とセンスの良さが滲み出ていて、惚れ惚れ。これまで出会ったどんなチェストとも違うこの存在感、今すぐわが家にお呼び寄せして、一緒に暮らしたい!

ちょうど、そろそろ脚本開発が一段落する朝ドラ「つばさ」のお仕事記念に何か買い物をしようと思っていた矢先。宝石には興味ないし、洋服にはシーズンがある。家具なら家族みんなで永年楽しめそう。

しかし、どこに置こう、と狭い上にちらかり放題でますますスペースがないわが家を見回し、まずは掃除が必要だと思い至る。チェスト氏も遠路はるばるやって来て、こんな汚い家に押し込められては不本意かもしれない。欲しいものがあるとき、「お金を貯めてから」はよくあるけれど、「場所を貯めてから」の壁にぶちあたった。

少し前に人づてに存在を知ったそうじ力研究会によると、掃除には力があり、幸運を呼び込むという。逆に言うと、掃除をしていない家にはマイナスパワーがはびこっているらしい。そうじ力の基本は「換気」「すてる」「汚れ取り」「整理整頓」「炒り塩」だそうで、「換気」と「汚れ取り」は心がけているものの、「すてる」と「整理整頓」は相当努力が求められる状態。娘のたまが床の障害物をよけ続けた結果、段差に強くなったのは不幸中の幸いだけど、急な来客があってもとてもお通しできない状態。

そういうわけで、WA-PLUSのサイトを開いたまま、チェスト氏の写真を励みに掃除と整理整頓に励んでいる。他にも積み木のパッチワークみたいなチェストがあり、こちらもまた強烈な誘惑。

2008年07月06日(日)  串駒 天明(曙酒造)七夕宵宮の会
2004年07月06日(火)  拝啓トム・クルーズ様project
2003年07月06日(日)  池袋西武7階子ども服売場
2002年07月06日(土)  とんかつ茶漬け
2000年07月06日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年07月05日(日)  朝ドラ「つばさ」第15週は「素直になれなくて」

「つばさ」第14週「女三代娘の初恋」はいつにも増して反響があり、とくに劇中劇の「婦系図」を楽しまれた人が多かった様子。映画と鉄道を愛するご近所仲間のT氏からは、〈鏡花の「婦系圖」が出てくるとは思いませんでした! 映画の「婦系図」もいろいろ名作がございますよ。野村芳亭(田中絹代と岡譲二)、マキノ雅広(山田五十鈴と長谷川一夫)、衣笠貞之助(山本富士子と鶴田浩二)、三隅研次(万代昌代と市川雷蔵)…。どれも美男美女の組み合わせです。ある意味日本メロドラマの代表作。こちらも機会がありましたら是非どうぞ〉とのこと。こんな風に「つばさ」をきっかけにわたしの世界も少しずつ広がって、楽しませてもらっている。

さて、第15週では、第1週の第一声から美声で酔わせてくれている人気芸人ベッカム一郎(川島明)がついに姿を現すことに。ベッカム一郎の配役が決まったとき、わがダンナに「麒麟の川島明が出るんだよ」と報告したら、「麒麟の相方はシマウマか?」とボケた反応が返ってきたが、麒麟はお笑いコンビ名で、相方は、『ホームレス中学生』を書いた田村裕。「つばさ」の劇中では、ベッカム一郎の相方はロナウ二郎(脇知弘)で、この二人がコンビを解消した事情が第15週で明らかに。タイトルは「素直になれなくて」。シカゴのあの名曲を連想して、切ないイメージを足し、またしてもうまく名づけたものだとプロデューサーのネーミングセンスに感心。

全国放送に進出したつばさとベッカムとのラジオ共演にもご注目。大きな世界を見てしまったことで、足元にある大切なものを見失いかけたつばさを家族や仲間、そして最後はラジオそのものが引き戻す一週間。ささやかな日々をコツコツと積み重ねることが、大きな力になるというのは、コミュニティ放送だけでなく、和菓子の商いにも主婦業にもいえることで、子育てもそうだなあと実感。

演出は、第8週「親子の忘れもの」、第9週「魔法の木の下で」の福井充広さん。8、9、12週「男と女の歌合戦」に続いて4度目の今井雅子増量週間。「脚本協力 今井雅子」のクレジットが月〜土の毎日(通常週の6倍!)出るので、オープニングタイトルにもご注目。次回増量週間は第17週「さよならおかん」。第16週「嵐の中で」も恋の嵐が吹き荒れるドキドキの週なので、引き続きお楽しみください。

【お知らせ】7/22新宿バルト9で『ぼくママ』試写トークに出演

今井雅子脚本の6本目の長編映画『ぼくとママの黄色い自転車』は、いよいよ8月22日公開。その1か月前に「ママする主婦する自分する 働きたい女性のためのコミュニティサイト」キャリア・マム会員限定特別試写会を開催。上映前に、キャリア・マム代表の堤香苗さんと今井雅子のトークが決定。どんな話になるのか、わたしも楽しみ。

7月22日(水)11:10開場/11:30トークショー/11:50開映
新宿バルト9にて
40組80名様をご招待


他に7/21の大阪試写会に30組60名様、7/24の名古屋試写会に25組50名様をご招待。いずれもお子様連れOK。応募(7/13まで)はこちらへ。キャリア・マム会員限定なので、会員でない方は登録が必要。

2008年07月05日(土)  マタニティオレンジ309 ビデオより、輪になってあそぼ!
2007年07月05日(木)  桃とお巡りさん事件
2003年07月05日(土)  柳生博さんと、Happiness is......
2000年07月05日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)


2009年07月04日(土)  整骨院のウキちゃん8 ノオッ!プリーズ!サンキュー!編

今井雅子日記の隠れた人気連載「整骨院のウキちゃん」、このところウキちゃんがかなり人間の掟を学習してしまってカルチャーショックを受ける機会が減ったせいでお休みしていたが、相変わらず整骨院通いは続いている。娘のたまを保育園へ迎えに行った帰りに子連れで寄ることが多く、先日、ウキちゃんがたまの診察券を作ってくれた。たまがいつも背伸びをしてわたしの診察券を箱に入れたがるのを見て、気をきかせてくれたらしい。

たまは大好きなウキちゃんに会いたくて、喜んでついてくるが、わたしは院長と助手のウキちゃんの掛け合い、さらに患者の皆さんを交えた会話を楽しみに通っている。ウキちゃんがダイエット話をしていると、「ウキちゃん、腰に浮き輪ついてるんです」と口をはさむ院長は、口が減らない患者さんに「ウキちゃん、口にテーピングしといて」と軽口で命じる。長屋のようなにぎやかなおしゃべりをうつぶせで聞きながら、肩凝りのついでに頭の凝りもほぐしてもらっている。

「頭の中のレコーダーを回せ」というタイトルで先日提出した「月刊ドラマ」8月号掲載の「セリフと寄稿」の原稿に、「会社を辞めてフリーになった今は、電車やカフェで過ごす時間がめっきり減ったが、整骨院で肩こりをほぐされながらテープを回す。うつぶせで施術されているので、台詞から人物を想像する練習になっている」と書いた。字数の関係でこのくだりを削ることになってしまったが、今のわたしにとって整骨院は格好の台詞収集の場。今日、隣のベッドで舌好調だった患者氏と院長のやりとりが、最高におかしかった。

患者「雷門のバス停に行ったらよ、外人のでかい女が、三人かけられるベンチを横向きで二人で占領してたんだよ。それで俺がノオッ!って言ってやったんだ」
院長「外人さん相手に、ビシッと言ったんですか」
患者「だって詰めりゃもう一人座れるんだよ。ベンチの横にいたんだよ。びっこのばあさんが」
患者「びっこは放送禁止用語ですけど」
患者「とにかくよ、かわいそうじゃない。それでノオッ!って言って外人さんどかして、プリーズ、サンキューって座ってもらったんだよ」
院長「ちょっと待ってください。そのおばあさん、日本人ですよね」
患者「ああ、そうだよ」
院長「だけど、プリーズ、サンキューですか」
患者「そうだよ」
院長「その外人さんもびっくりしたでしょうね。雷門に行ったら雷オヤジがいて」
患者「近頃はみんなガツンと言わないだろ。一人ぐらいうるさいのがいねえと」

隣のベッドでうつぶせになって笑いをかみ殺しながら、おいくつぐらいの方なんだろうと想像する。声の調子や言葉遣いからは高齢だと思われるが、やたらと他人を年寄り扱いするので、実は若いのだろうかと予想が揺れる。患者氏は雷門バス停のおばあさんの話を続けて、

患者「今日は4がつくババアの日だから、でかけてたんだな」
院長「ババアの日って……巣鴨の4の日のことですか」
患者「4の日はババアが多くて、バスなんか大変なことになってるよ。こないだも急ブレーキかけたら、杖ついて立ってたばあさんが腰でスピンして飛んできたからな。運転手に言ってやろうかと思ってよ。バスの前んとこに『4の日』って貼っとけって」

とバスの運転手をしかった後、話題は公園での健康体操に移った。

患者「公園でばあさんたちが体操してんだよ。人よりちょっとでも長生きしようと思ってさ、いじらしいじゃない」
院長「でもそのひとたち、年下なんですよね?」
患者「戸籍抄本とったわけじゃねえけど、八十過ぎてるってことはないだろ」

それを聞いて、隣の患者氏が八十を超えていることがわかった。

患者「俺は無駄なおしゃべりしてるヤツを見ると、注意するんだよ。口の体操はよそでやってくれって」
院長「口の体操……うまいこと言いますねえ」
患者「体操するときは、集中しろってんだよ。いじらしくやってるばあさんの横で、老いらくの恋だかなんだか知らねえけど、毎日しつこくしゃべりかけて邪魔している野郎がいるから、昨日注意してやったんだ。いい加減にしろって」
院長「話しかけられて困ってるって相談されてたんですか?」
患者「いいや」
院長「じゃあ、もしかしたら、その人、おばあさんのお知り合いだったかもしれないじゃないですか」
患者「知らねえよ、そんなこと。でも、今日はそいつ、現れなかった」

いいなあ、この怖い者知らずな独走ぶり。こんな威勢のいい80代を脚本に書いてみたい。「明日は休みか? 行ってらっしゃい」と院長とウキちゃんに威勢良く告げ、患者氏は風を切って出て行った。「いつ来たら、さっきの人に会えるんですか?」と思わずウキちゃんに聞いてしまった。

「整骨院のウキちゃん」バックナンバーはこちら。
2007年11月06日(火)  整骨院のウキちゃん1 伝説の女編
2008年01月08日(火)  整骨院のウキちゃん2 首都得意なんです編
2008年02月08日(金)  整骨院のウキちゃん3 となりのトトロ編
2008年02月20日(水)  整骨院のウキちゃん4 「ティ」ってどうやって打つの?編
2008年03月19日(水)  整骨院のウキちゃん5 東京の首都は?編
整2008年03月24日(月)  整骨院のウキちゃん6 ナターシャは白いごはんが大好き編
2008年06月25日(水)  整骨院のウキちゃん7 赤道ぐらい知ってますよ編
【お知らせ】『ぼくママ』ノベライズ予約受付開始

ノベライズ版『ぼくとママの黄色い自転車』(小学館文庫)が完成し、見本誌が到着。新堂冬樹さんの原作『僕の行く道』の映画化脚本(今井雅子)を藤田杏一さんがノベライズ。間もなく書店に並ぶ模様。ぜひご予約を。原作(文庫版が出て売れ行き好調だそう)と読み比べるのも、「ここが変わったのか」の発見があって面白いです。

2008年07月04日(金)  マタニティオレンジ308 パパのせつない片想い
2007年07月04日(水)  肉じゃがと「お〜いお茶」とヘップバーン
2006年07月04日(火)  2年ぶりのお財布交代
2005年07月04日(月)  今井雅之さんの『The Winds of God〜零のかなたへ〜』
2003年07月04日(金)  ピザハット漫才「ハーブリッチと三種のトマト」
2002年07月04日(木)  わたしがオバサンになった日
2000年07月04日(火)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)


2009年07月03日(金)  なぜかショップ99で話しかけられる

取り置き期限が昨日までの図書館の予約図書を取りに行くのを忘れていて、今朝電話をかけた。
「すみません。取りに行けなかったんですが……」
と切り出して、はて、こういうときは、何と続けるのだろうと適切な言葉を探したものの見つからず、
「流れてしまったでしょうか」
と言ってしまってから、質流れのようだと思った。だが、応対した男性は動じることなく、
「確認してみますね」
と明るい声で受け止めて、電話を離れた。
待つこと数十秒、再び電話口に現れた男性は、
「ありました! 流れていませんでした!」
と電話の向こうから声を弾ませた。どうやら「流れる」という表現を気に入ってくださった様子。
「よかった。流れていませんでしたか」
「いやー、危なかったです。流れる直前で止めました!」
電話の向こう側とこちら側で「流れる」を連呼しあううち、「流れる同盟」のような連帯感が生まれ、顔を知らない図書館員さんに親しみを覚えてしまった。

見知らぬ人との小さな企みごとは楽しい。先日、ショップ99で娘のたまが「コンコンほしい」と真空パックのゆでトウモロコシを手にしたときのこと。原産国を見ると「中国」となっていた。できれば国産がいいのだけど……とためらっていると、「中国産? 微妙だねえ」と心の中を見透かされたように声がした。見ると、わたしよりひと回りぐらい年上の女性が親戚のおばちゃんのような気安さで話しかけていた。思わず「そうなんですよねえ」と応じていると、すぐそばに皮のついた生のトウモロコシがあるのに二人同時に気づいた。こちらは国産。「ひげつきにしたら?こっちのほうが楽しいよ」と言い残し、彼女は店の奥へ消えたが、会計を終えて店を出るときにまた会った。「どっちにした?ひげつき?」と聞かれて、「はい、ひげのほうに」と答え、二人で満足そうにうなずきあった。99円のトウモロコシ一本の買い物がちょっとした冒険に思われて、愉快だった。

なぜかショップ99で話しかけられることが多い。たまが売り場を歩き回りながら「ママ、ぎゅうにゅうかおうよ」などと声を張り上げていると、「お手伝いしてるんだ?えらいねえ」と買い物客から声がかかる。幼子連れなので声をかけやすいのかもしれないが、コンビニではレジのおばちゃんとしか言葉を交したことがない。99は棚が密集していて、通路が狭く、人と人の距離が近いせいだろうか。

うちの近所の99の特長なのかもしれず、コンビニと99の違いを断じることはできないのだけど、99は「よろずや」に近いという感覚がある。まだコンビニなど知らなかった子どもの頃、親戚の田舎町を訪ねたとき、小さな間口の店に野菜からおもちゃまで並んでいる光景が不思議だった。そこは近所の人たちのくつろぎと情報交換の場でもあった。あのよろずやの匂いを99に感じてしまう。コンビニと品揃えに大きな差があるわけではないのに、この違いは何なのか。レジに焼き芋があるせいだろうか。

【お知らせ】「つばさ」が切手になりました

アンジェラ・アキさんの主題歌『愛の季節』とともに「つばさ」のオープニングを彩る佐内正史さんのスチール写真がフレーム付き切手に。購入はエンタメポストへ。佐内さん、映画『ジョゼと虎と魚たち』の劇中で使われた写真も撮られているのですね。お会いしたことはないけれど、「つばさ」のクレジットで「タイトルバック制作 佐内正史」「脚本協力 今井雅子」が隣り合わせになることが多いので、勝手に親しみを覚えています。

2008年07月03日(木)  マタニティオレンジ307 シール貼り放題!段ボールハウス 
2007年07月03日(火)  マタニティオレンジ140 七夕に願うこと
2005年07月03日(日)  親子2代でご近所仲間の会
2000年07月03日(月)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)


2009年07月02日(木)  「胸が痛む」のではなく「おっぱいが泣く」という感覚

先日、じいじばあばの家にお泊まりして帰ってきた娘のたまが、「たまちゃん、ないたの。ママがいいようって」と言った。最近たまは自分が泣いたときの気持ちを後から振り返り、整理し、言葉にしてくれる。泣いているときは大人だって冷静にはなれないが、子どもなりに泣く理由に思いを馳せるというのは面白い。

「たまちゃん、泣いちゃったの」とわたしが聞き返すと、「ちいとんもないたの ママがいいようって」とたまが言ったので、ドキッとした。ママのおっぱいを「とんとん」と名づけたたまは、自分のを「ちいとん」と呼んでいる。とんとんには友だちのような親しみを感じているようだが、ちいとんにも感情があるらしい。もしかしたら、自分の分身のように思っているのかもしれない。

「胸が痛む」「胸が苦しい」といった喩えがあるけれど、比喩ではなくほんとうに「おっぱいが泣く」のか。子どもは詩人だなあとしみじみ思った。

何気ない鋭い一言にハッとさせられる一方で、子どもらしい無邪気な言葉には和ませてもらっている。「ママのちゅばさのおしごとおわったらねえ、ほいくえんごっこする」と言ったり、絆創膏とバンドエイドが合体して、「ばんそこエイド」という新語が生まれたり。でたらめな電話番号にかえて、「お客様がおかけになった番号は現在使われておりません……」という機械音声の応答に、「おかけ? おかけがないの? そう? そっか、そっか、しょうがないねえ」と相槌を打っていたりする。先日は、おむつを換えながら「どうしてトイレでしなくなったの?」と問いかけたら、童謡「おもちゃのチャチャチャ」の替え歌で「おむつでチャチャチャ」を歌い出した。

匂いを取るのが脱臭剤なら、力を抜いてくれるのは脱力剤か。柔軟剤の働きもあり、娘の言葉のおかげで、幾分ふんわり仕上げになれている気がする。

今日の子守話は、布団の中でたまと交わした一問一答をそのままあんこに使ったお語。やりとりの中で「夢はどこにもない。生きていることそのものが夢」というセリフが生まれて、シェークスピアみたいだと唸ってしまった。遠くにある夢を探して、ないないと嘆くより、近くにある夢を感じられたほうが幸せかもしれない。そんなことを思っていたら、最近新聞で読んだ興味深い記事を思い出した。地球に戻った宇宙飛行士(向井千秋さんだった気がする)が、地上に降り立って、「重力がある」ことに感激し、感謝したという話。重力のない世界を体験した人ならではの実感だなあと感心したが、人として生きるということは、重力のある世界に暮らすということなのかもしれない。その発見で会話のあんこをはさんだ。

子守話86 「たまちゃんの てつがく」

たまちゃんは 2さいです。
そらの うえから ちじょうに やってきて まだ2ねん。
だから ちじょうに ながく くらしている ママが 
すっかり わすれてしまっていることを まだ おぼえています。

そんなたまちゃんと おはなししながら
ママは そらの うえに いたころの とおい むかしを
おもいだします。

「たまちゃん、どうして泣いちゃったの?」
「だって、こころが、あっち」
「心があっち?」
「うん」
「心ねえ。たまちゃんの幸せって、どこにあるのかな?」
「(上を指差し)こっち」
「こっちって、どこ?」
「あたまのうえ」
「頭の上?」
「きのうのあしたの、あしたのきのう」
「昨日の明日の明日の昨日……じゃあ、夢はどこにあるの?」
「どこにもないよ」
「じゃあ、たまちゃんは、なんで生きてるの?」
「ゆめじゃないかねえ」

たまちゃんと おはなしを していると
ママは ふわふわした きもちになって
たまちゃんより さきに ねむってしまいました。

そして しあわせな ゆめを みました。

2008年07月02日(水)  マタニティオレンジ306 雨の日も風邪の日もビデオ三昧
2007年07月02日(月)  マタニティオレンジ139 マジシャン・タマチョス
2006年07月02日(日)  メイク・ア・ウィッシュの大野さん
2005年07月02日(土)  今日はハートを飾る日
2004年07月02日(金)  劇団←女主人から最も離れて座る公演『Kyo-Iku?』


2009年07月01日(水)  2才10か月で「夏の扉」を開ける

会社勤めをしていた頃、髪を切って出社したら、ひとつ違いのアートディレクター男子のソエちゃんが「今井ちゃん、夏の扉を開けたね」と声をかけた。それを聞いて、まわりにいた「松田聖子を聴いて大きくなった」世代の同僚たちが、「今井、切ったんだ?」と振り返ったが、『夏の扉』がリリースされて10年以上経つのに共通言語になってるってすごいねえと感心し合った。深夜の残業時に誰かがパソコンで聖子ちゃんをかけると、フロアに残っている人たちが次々と口ずさみ、いつしか大合唱になり、「なんでみんな歌えるの?」と驚き合ったこともあった。

そんなことを思い出したのは、娘のたまが生まれて初めて髪を切り、夏らしいすっきりショートになったから。生まれたとき、産道内を旋回してとんがった頭に髪がぐるぐる巻きに張りついてポンパドール夫人状態で生まれてから2才10か月。髪は腰あたりまで伸びた。「切らないの?」「どうして伸ばしてるの?」といろんな人に聞かれたが、ここまで伸ばしたら3才の七五三まで……と思ううちに、また夏がめぐってきた。子どもは汗をかく。加えて、たまは最近お風呂を嫌がり、パスすることも度々。髪からすえた匂いを放つようになり、ダンナの両親からも「切ったら?」とせっつかれるようになった。

たま本人は長い髪を結わえるのを気に入っていたようだけど、保育園の先生からも「たまちゃん、切ったほうがいいわよ」と言われたらしく、自分から「かみ、きる」と言い出した。「かみきりやさんで きる」と言っていたのだが、美容院に連れていける日を待っているといつになるかわからない。わたしも中学校に上がるまでは親に切ってもらってたよな、と思い出し、「ママの髪切り屋さんで切ろっか」と聞くと、あっさり「いいよ」。先週の金曜日、二人きりの夕食の後に「じゃあ、今切る?」「うん」。

最初にハサミを入れるときにはそれなりのためらいがあったけれど、たまは何の感傷もない様子で、「もっと きって」と催促してくる。こちらもザキザキ、ジョキジョキと遠慮の取れたハサミで切り進めるうち、『ほたるの墓』のせっちゃんのようなおかっぱ頭になった。短いほうが子どもらしい愛らしさがあって、母娘ともに気に入った。

ダンナにもダンナ両親にも好評で、保育園の先生方からも「たまちゃん、切って可愛くなりましたね」と褒めていただいたのだが、たまは、「たまちゃんね、まえはかわいくなかったねっていわれたの」。どうやら「可愛くなった」と繰り返し言われるうちに「前は可愛くなかったのか」と深読みしたらしい。子どもながら、なんともフクザツな乙女心。ずいぶん大きくなるまで伸ばしたんだなあと感じた。

さて、25センチの髪は、どうしようか。筆にしても、使うのはもったいないし、飾っておいても埃をかぶりそう。「よく針刺しの中に髪入れたりしてるよね」とダンナに言うと、「たまの髪に針を刺すの?」の顔をしかめられた。それもそうだ。だったら、小さなぬいぐるみの中に入れようか。それはそれで変に命が宿りそうな不気味さがある。カツラに寄付するには短いし……今のところ、ヘアーゴムでしばった束をたまが振り回して遊んでいる。

2008年07月01日(火)  マタニティオレンジ305 トイレトレーニングは「まだ!」
2007年07月01日(日)  マタニティオレンジ138 いつの間にか立ってました
2005年07月01日(金)  ハートがいっぱいの送別会
2003年07月01日(火)  出会いを呼ぶパンツ
1998年07月01日(水)  1998年カンヌ広告祭 コピーが面白かったもの

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