2007年11月06日(火)  整骨院のウキちゃん1 伝説の女編

近所にオープンした整骨院に8月から通っている。気持ちがよくて、体調がよくなるほかに、楽しみなのが、おしゃべり。院長(三十代男)と天然ボケの助手のウキちゃん(二十代女)のかけあいは漫才のようで、つい噴き出してしまう。そこにわたしや他の患者さん(カーテンに隔てられて顔は見えない)も加わって、長屋の立ち話のようになる。

日頃から「頭のテープレコーダー」を回し、ネタの仕入れに余念がないわたしにとって、助手のウキちゃんの際立ったキャラは、ネタの宝庫。その面白さを一言で言い表わすと、「意表を突かれる」ところにある。実生活で出会ったことがなく、ドラマや映画でもお目にかかったことがなく、頭を捻っても産まれそうになく、飛び出すネタは予測不可能。そんな天然記念物級キャラを徒歩五分で拝めるとは、ありがたい。

拝むといえば、ウキちゃんには「鎌倉で拝まれた伝説」がある。待ち合わせで立っていたら、大仏を見に来たおばあさんが手を合わせたのだという。事実ではなく誰かが始めた作り話らしいが、「聞いた人が皆、真に受けてしまう」うちに伝説となってしまった。整骨院の二軒隣にあるインドカレー屋のインド人も、ウキちゃんを見ると「ナマステ」と手を合わせる。これは院長が目撃した、とまことしやかに語られている。

大仏に間違われるほどスケールが大きなウキちゃん、体は縦にも横にも大きく、迫力では院長を優にしのぎ、ときどき「院長です」と勝手に名乗る。院長が「何かあったら連絡してよ」と言い置いて留守にしても、「何かあっても絶対連絡しねーし」と言い返し、「あたしも人生考えちゃいますよー。院長についてきちゃっていいのかなーとか」と患者に愚痴ったり、言いたい放題。でも、上には上がいて、院長とウキちゃんが働いていた前の整骨院でウキちゃんに「最低!」呼ばわりされたニキちゃん(男)は、「やったね。最低ってことはこれ以上悪くならないってことだね。あとは上がる一方だよ」と喜んだとか。整骨院の笑いのレベルはけっこう高いのかもしれない。

顔のパーツも大きく、「ロシア出身」の噂もあるウキちゃん。院長は「オホーツク海を渡って水揚げされたんですよ」と真顔で言う。「水揚げされたときからは、だいぶ日本語もうまくなったんですけど」。とはいえ、ウキちゃんの言葉づかいは独特。とくに接続詞の使い方が怪しい。「部屋探してんですよねー。ドームのそばは高いし。ないしは、院長と住むか」。「ないしはって何だよ!」と家庭を持っている院長が突っ込む。巨人ファンで東京ドームが好きなウキちゃん。ドームを見ると、「わたしってまだまだ小さいなあ」と思うのだそうだ。ドームを見下ろせる部屋に住むのが夢らしい。

やることなすことでっかいウキちゃん。整骨院のすぐ近くにあるお肉屋さんの牛タタキがおいしいですよ、と教えてあげたときのこと。
「軽く表面を凍らせて、薄〜く切って食べるのがおすすめです」とおすすめしたら、
「ここ、包丁置いてないんで、まるかぶりですね」と豪快。
また、パソコンがうまくつなげなくて、コールセンターに電話したときのこと。「マックですか、ウィンドウズですか」と聞かれて「ノート型です」と答え、相手を絶句させた。勘違いや思いこみのスケールも、半端じゃない。
整骨院の自動ドアを「オートドア」と誰かが言ったとき、「ウォーター=水」と知った瞬間のヘレン・ケラーのように「オートって自動って意味っすかー!」と感動に打ちふるえ、「じゃあオートバイって何だと思ってたの?」と院長に突っ込まれると、「商品名」と答えた。居合わせた女子高生に「常識」と言われ、「お前、何でも知ってんな」とウキちゃんはいたく感心したとか。その会話、ライブで聞きたかった。

日々、伝説を生産中のウキちゃん。自分たちだけで笑っているのはもったいないので、「ブログ書いたら」とすすめている。「今日の猫村さん」ならぬ「今日のウキちゃん」の四コマ漫画も人気が出そう。それを一話一分ぐらいの超ショートムービーにして……。プロデューサー様方、いかがでしょう。

2003年11月06日(木)  よかったよ、ガキンチョ★ROCK

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