2007年07月11日(水)  マタニティオレンジ145 皆様のおかげの空の旅

4泊5日の子連れ帰省を終え、最寄り駅にある関西空港行バスの停留所まで母に車で送ってもらう。券売機で切符を買っていると、ベンチにいたご婦人がにこにこと微笑みかけてきた。会釈を返すと、「イヨダです」と名乗られる。大阪のわが家はわたしが高校生のときに隣の町内に引っ越したのだけれど、それまでに住んでいた町内のご近所さんだった。東京行きの同じ飛行機に乗ることがわかり、バスを待つ間から移動のバスの中、空港での待ち時間までご一緒させていただく。わたしとイヨダ夫人が二人きりになった機会はほとんどなかったから、ご近所住まいをしていた年月に交わした会話の何倍分もの話をしたことになる。イヨダ夫人は三人の男の子たちの出産話を昨日のことのように振り返り、息子さんそれぞれの近況を語り、共通の知り合いである懐かしいご近所さんについて知っていることをひとつひとつ聞かせてくれた。思い出話と今の話が行ったり来たりし、わたしの中のイヨダ夫人が目の前の夫人になったり二十年前の若奥様になったりしているように、夫人の中のわたしもときどき中高生に戻っているのだろうなと想像しながら、連想ゲームのように「そういえば、あの人は今」「そういえば、そんなことが」と話をつないでいく。

イヨダ夫人は「たまちゃん、かわいい」と何度も言い、空港では「これ、たまちゃんに」と大阪土産のチーズケーキまで持たせてくれ、荷物を半分引き受けてくれ、わたしがお手洗いに行く間はたまを抱っこしてくれた。一人で大きな荷物と子どもを抱えていたら諦めていたであろうお土産の買い物もできた。

座席まで荷物を運んでもらって、席が離れているイヨダ夫人とは機内では別々だったが、行きはヨイヨイだったたまが帰りはずいぶんぐずり、50分のフライトがひどく長く感じられた。前後左右は出張と思しきビジネスマンの方々。だが、皆さん、そろいもそろって寛大な態度を示され、救われる。右隣のおじさまは「お騒がせしてすみません」と謝ると、「いいんですよ、子どもは」と笑顔を返してくれ、羽田に着陸したときも「ゆっくり支度してくださいね。こっちは家に帰るだけで急ぎませんから」と涙が出そうなやさしい言葉をかけてくださった。後ろの席の紳士は、座席の隙間から手をのばしてこちょこちょして笑わせてくれたり、うちわであおいでくれたり。降りる際に「遊んでくれてありがとうございました」と振り返ってお礼を言うと、「こちらが遊んでもらってたんです」。自分が逆の立場になったときに、こんな気のきいたことが言えるだろうか。まわりの乗客の反応によっては、「もう子連れで飛行機に乗れない!」となっていたかもしれないけれど、いい方々に取り囲まれて幸運だった。

2004年07月11日(日)  ヤニィーズ第7回公演『ニホンノミチ』
2002年07月11日(木)  映画『桃源郷の人々』
2000年07月11日(火)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)

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