2008年02月19日(火)  マタニティオレンジ237 赤ちゃんのときに生まれてきたんだよ

先日、小児科へ行ったときのこと。同じ保育園の年長クラスの女の子が、たまを見つけて「この子は赤ちゃんのときにうまれてきたんだよ」と先輩風を吹かせて言った。「あんただって、そうだよ」とすかさずお母さんに突っ込まれていたけれど、ああ、これって子どもの感覚だなあと懐かしくなった。

自分のまわりが世界のすべてだった頃、赤ちゃんはずっと赤ちゃんで、パパとママはずっと大人で、おじいちゃんとおばあちゃんはずっとお年寄りだという感覚があった。自分にも赤ちゃんの頃があったことは写真を見て知っていたはずだけれど、2歳なら2歳、3歳なら3歳、今の自分がずっと続いているように思っていた。誕生日で年がひとつふえるということも、ケーキに灯るキャンドルの数でわかっていたはずだけれど、「ケーキを食べられて、プレゼントがもらえる」ことに気を取られて、毎年一歳ずつ年を重ねていけば、自分もやがて大人になり、お年寄りになるということまで想像は及ばなかった。自分の親や祖父母にも子どもの頃や赤ちゃんの頃があったと理解するようになったのは、いつからだったのだろう。妹の長男である甥っ子が「お母さんのお母さんがばあば」という事実に混乱していたのは四才頃だっただろうか。

いくつになっても親は親で、子は子という感覚を知るのは、もっと後になる。覚えているのは、小学3年生のとき、担任の先生が「母親にしかられた」と話したのを聞いて驚いたこと。先生という大人にも親がいて、子どもみたいに叱られることが不思議だった。もしかしたら、はじめての子育てを体験してみて、ようやく「いくつになっても……」が実感できたと言えるかもしれない。「赤ちゃんのときに生まれてきた」頃から見てきた母親は、子どもがどんなに大きくなっても、「赤ちゃんのときに生まれてきた」頃の気持ちで、はらはらしたりおろおろしたりしてしまうんだろう。

今夜の子守話は、「ゾウさんの話とキリンさんの話、どっちがいい?」とたまに選ばせたら、当然ゾウさんを選ぶかと思いきやキリンさんを選んだ。ゾウさんの話が続いたので、他の話を聞きたくなったのだろうか。選択肢の人差し指か中指を指差しさせて選ばせているが、なんとなくではなく明らかに意思を持って「コッチ」という勢いで指を差す。キリンがお題ということで、以前発見した「キリンと踏切が似ている」をネタにしてみた。マラソン後でわたしもあちこち筋肉痛だけれど、テーピングが効いたのか、今のところシップのお世話にはなっていない。

子守話11 ふみきりん

キリンさんが せんろのわきをとことこあるいて
えきまでやってくると えきいんさんがよわっていました。
「どうしたんですか えきいんさん」
キリンさんが ながいくびをかしげて ききますと
「ふみきりが こわれて うごかないんですよ」とえきいんさん。
でんしゃがくるたびに せんろに人がはいらないように とおせんぼしているのですが
えきいんさんのうでをめいっぱいひろげても 
ふみきりのかわりにはなれません。
「だったら わたしが ふみきりになりましょう」
とキリンさんがいったので えきいんさんはびっくり。
「わたしのながいくびをたおせば だれもせんろにはいれませんよ。
 それに わたしのこのいろ。ふみきりによくにているでしょう」
えきいんさんは キリンさんのしんせつを ありがたくうけることにしました。

さっそく1だいめのでんしゃがちかづいてきます。
キリンさんはおじぎをするように
ながいくびをたおして みちをふさぎました。
キリンさんのふみきりは だいせいこう。
とおくからでもよくめだつし 
いつものふみきりが ちょっとりっぱになったかんじです。
「あれ キリンさんのふみきりだ」
「ふみキリンだ」
こどもたちも ゆびさして おおよろこび。

2だい、3だい、4だい、5だい……。
でんしゃがくるたびに ながいくびをたおして またおこす そのくりかえしです。
6だい、7だい、8だい、9だい……。
キリンさんがつかれてくると えきいんさんが 
リンゴやバナナをたべせてくれました。
キリンさんはまたげんきになって ふみきりのしごとをつづけました。

キリンさんが18だいめの でんしゃをみおくったとき
ちょうど ふみきりのしゅうりがおわりました。
ふみきりがうごくようになったので
キリンさんのふみきりとこうたいです。
キリンさんは くびがすっかり くたくた。
「キリンさん おつかれさま。
 おかげで だれもけがをすることなく たすかりました」
えきいさんは キリンさんのくびにシップをはってあげました。
えきいんさんのくびにはるときは1まいですが
キリンさんのながーいくびのはしからはしまでシップをならべたら
なんと18まいになりました。
キリンさんがおじぎをしたのとおなじかずです。
「またふみきりがこわれたときは よろしくおねがいします」
とえきいんさんがいいました。
「ふみきりがこわれないことをいのっています」とキリンさん。
くびはこりこり、もうこりごりです。
ふみきりってたいへんなしごとだなあとつくづくおもいながら
キリンさんはせんろぞいのみちをかえっていきました。

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2004年02月19日(木)  ツマガリのアップルパイ
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