2013年01月22日(火)  共にバカになれる幸せ

図書館で、娘のたまが「これよみたい!」と借りた「三つ子ちゃん(Les Triples)」というフランスの子育て漫画。漫画といっても大きさといい装幀といいクラシカルで格調高い面構え。

「大事な子供たちへの愛のメッセージですから、それにふさわしい、昔ながらの布の背つぎを施したとても立派な本にしました」と作者のニコル・ランベールさんの言葉。顔写真が、あらかわいい、と思ったら、ファッションモデル出身。

シリーズになっていて、借りたものは「3」とある。フランスでは新聞か雑誌かに連載されて大人気の様子。三つ子ちゃんはいたずら放題、だけどママはどこまでもエレガントってところがお洒落。

そして、序文で紹介されているポール・ヴァレリーの言葉が素敵。
「愛、それは共にバカになれることである」!

2011年01月22日(土)  卵割り名人、たま4歳5か月。
2010年01月22日(金)  数字で大人ぶる、たま3歳5か月。
2009年01月22日(木)  「お世話」大好き、たま2才5か月。
2008年01月22日(火)  マタニティオレンジ224 たま17/12才
2007年01月22日(月)  「気持ちはわかる」間違い集
2006年01月22日(日)  センター入試・英語に挑戦
2005年01月22日(土)  変わらない毎日。変わらない大統領。
2002年01月22日(火)  夢


2013年01月17日(木)  ロゴ3連発「つばさ」「てっぱん」「たま」

昨年12月27日の朝ドラ「てっぱん」オフ会で、娘のたまの「てっぱん&つばさ親善天使」任命式をやっていただいた。

ファンの方々に負けないぐらい放送もDVDも観ていて、作品を愛する気持ちも人一倍強いたまだけど、式本番は緊張なのか照れなのかふてぶてしく海老反り。

たまが親善天使名刺用に描いた「つばさ」「てっぱん」のオリジナルロゴをあしらった特製名刺も作っていただいた。

「つばさ」は魚をつかまえた鳥を俯瞰で。



「てっぱん」はお好み焼き。


おまけに、「たま」ロゴ。こちらは卵を産む鳥。


なかなか思い切った構図。たまの将来の夢は「えかきやさん」だそう。絵描きは絵を描くだけで、絵描き屋さんは描いた絵を売って商売する、という明確な違いがあるらしい。

2011年01月17日(月)  ♪あいさつは好きのはじまり
2010年01月17日(日)  「どーもくんのうた」と「おおさかじいじごっこ」
2009年01月17日(土)  押井守ワールド炸裂!舞台『鉄人28号』
2008年01月17日(木)  マタニティオレンジ221 薬を飲ませるべきか
2007年01月17日(水)  夢のお告げ!? 小さな鳥の物語
2003年01月17日(金)  Lunettes du juraの眼鏡
2002年01月17日(木)  HAPPY


2013年01月15日(火)  岐阜発ドラマ「父の花、咲く春」とカミのご縁

本日情報解禁。

岐阜を舞台にしたNHKの地方発オリジナルドラマ「父の花、咲く春〜岐阜・長良川幇間物語〜」を書きました。

「間をたすける」と書いて「幇間(ほうかん)」。男芸者の父を訪ねる青年をNHKドラマ初主演の桐谷健太さんが演じます。

NHKの作品紹介ページ(こちら)に「作者の言葉 いつか花咲く春へ」を寄せています。

演出は今井雅子が脚本協力で参加した朝ドラ「つばさ」第25週「最後のラブレター」の松園武大さん。というわけで「つばさ」ファンはことさらご注目。

この作品、オリジナルということで、岐阜でのシナリオハンティングが原作。幇間を題材にするところだけは決まっていたものの、あとはプロデューサー、演出とともにシナハンで見たこと感じたこと考えたことが脚本の根っこになりました。

作品にとっても実りの多いシナハンでしたが、魅力的な取材先の方々との出会いに恵まれ、好奇心を刺激され続けた旅となりました。

とにかく気持ちのいい人の多い街でした。挨拶、人生の先輩との距離感、道案内……様々な場面で、さりげなく心地よい言葉やしぐさが自然に出てくる人達に出会えました。人口におけるさわやか人比率がかなり高い街でした。

岐阜の宝を掘り起こして光を当てようという活動をしている方々のお話もうかがえ、その成果のひとつでもある「長良川おんぱく」の開会式に立ち会えたことも、ありがたい経験でした。堺親善大使として、故郷堺のいいところをどう発信していくか、のいいヒントをもらいました。

写真は、美濃の手すき和紙で作られた「水うちわ」。



シナハンに付き添ってくれ、幇間や芸妓舞妓についてわかりやすく説明し、お座敷の楽しみ方を教えてくださった「NPO法人花の会」の小野崎隆賢さんに、いただきました。

なぜ「水うちわ」というのでしょう。

「水のように透明で繊細な外観や、船遊びの際に長良川の水につけて扇いだという説話から」だと栞にはあります。この透明感と、濡れても破れない強さを出すために特別なニスが使われているのだとか。

きれいな和紙を漉くために漂白剤でゴミを白くしてしまえば簡単だけど、「雁皮の繊維についた塵を、冷水の中、手で一つずつ丁寧に取り除き、長時間かけて、原料の下準備を行います」とのこと。ごまかいしのない仕事に、和紙職人のプライドと意気込みを感じます。

ところで、再現不可能かと思われていた伝統の水うちわを再生できたのは、水うちわに最適な、薄くて強い雁皮紙を「家田紙工」という会社がプロデュースしたからだとか。

この家田紙工さんの手がける紙製品の数々に、偶然、岐阜シナハンの少し前にfacebookで出会っていました。大好きアンテナの響くところがよく似ているヒバナ・エンタテインメントのプロデューサー木村美砂さんが「いいね!」をしていた「カミノシゴト」のfacebookページで紹介されていたのです。

紙好きのわたし、夢中になって、色とりどりの和紙に彩られた障子や、クリスマス気分満載の窓に貼る雪の結晶(スノーフレーク)などを眺めて、「いいね!」を押していました。

シナハンで美濃の和紙の里会館を訪ねたとき、そのカミノシゴトのfacebookページで見た写真の「本物」が目の前に! 思わず「知ってるー!」と興奮の声を上げてしまったのですが、その中に、すでに名前を記憶していた家田紙工さんの手がける紙製品もあったのでした。

小さなことだけど、めぐりあうべくしてこの作品を手がけることになったのですよ、とカミにささやかれたような出来事でした。

長良川に舟を浮かべての芸者遊びも提唱されている小野崎さん。シナハンは秋で、舟の季節は終わっていましたが、次に岐阜を訪れるときには、舟でお座付きや鵜飼を眺めつつ水うちわで涼を取る……そんな風流な過ごし方もよいですね。

2012年01月15日(日)  新幹線ホームでチュー
2011年01月15日(土)  おしりにしっぽをつけたつもりが……。
2010年01月15日(金)  アテプリの脚本家さんとつながった
2009年01月15日(木)  身長5ミリで体重500グラム増
2008年01月15日(火)  マタニティオレンジ220 わんわん
2007年01月15日(月)  マタニティオレンジ59 人間ドライヤー
2005年01月15日(土)  ノンストップ『Mr.インクレディブル』
2004年01月15日(木)  谷川俊太郎さんと賢作さんの「朝のリレー」
2003年01月15日(水)  ひつじの国 ひつじの年
2002年01月15日(火)  ノベライズ


2013年01月12日(土)  たまちゃん、まいごじけん。

保育園の文集の原稿を書いて来てくださいと言われ、たまと二人で書こうと思っていたら、締切が迫り、「たまちゃん、まいごじけん」という短編を大急ぎで書いた。

迷子になって「えーんえーん」と泣いているたまちゃんに、おまわりさんが「どうしたの?」と聞くなかで、たまが今の保育園に移ってからの2年間の思い出を振り返る内容。プリントアウトし、余白にぬり絵原画とたまからの手書きメッセージを添えた。



「うち、親が書いちゃったの」と後でクラスメートのお母さんに言うと、「それでいいのよ。子どもは子どもで書くページがあるんだって」とのことで、ほっ。

似顔絵の原稿依頼もあり、それはたまに描かせたのだけど、それも親が描くことになっていたそうで、後日描き直しをお願いされることになった。

幼稚園は卒業アルバム、卒業文集担当になると親が大変と聞くけれど、うちの保育園は先生がやってくださるので、ありがたい。

2012年01月12日(木)  buku終刊「また逢う日まで」
2011年01月12日(水)  「おさかなは、つかまったときに、もう、かわいそうなんだよ」
2010年01月12日(火)  「クリスマスの贈りもの」を縦書き文庫に引っ越し
2009年01月12日(月)  陶芸家・檀上尚亮さんの個展
2008年01月12日(土)  boofoowooの服
2007年01月12日(金)  『半島を出よ』(村上龍)
2002年01月12日(土)  アボルファズル・ジャリリ 


2013年01月11日(金)  緑も子どもも育つ、えこふ市場のベンチボックス。

今の家に引越す前、近所のベーグル屋さんで読んだ雑誌で「おうち特集」をやっていて、「緑も子どもも育つ家」というのが紹介されていた。陽当たりのいいリビングで、グリーンが伸びやかに葉っぱを広げていた。

こんな家にしたい、と思った。

今、引越した先の窓際に二つ並べたベンチボックスが居場所の鉢植えたちは、冬の間もサンルーム状態でたっぷり陽射しを浴びて、すくすく育っている。



ベンチボックスは、ECOFF(えこふ)という村おこしNPOがやっているえこふ市場というオンラインショップで見つけた。四万十産の檜の間伐材で作られていて、ベンチにもなって、収納も頼もしい上に、檜の香りが続く。それでいてお値段はひかえめ(購入時から少しだけ値上がりして、現在は4980円+送料800円)。

気に入って、ついつい人に教えたくなり、去年facebookでたびたび紹介したら、facebookだけでなく、年賀状でも「わたしも買いました」の声が。

わが家も、もうひとつ、もうひとつと買い求めて、3つ目を注文するとき、「気に入って、3つ目です」と書き添えたら、「ささやかなおまけを送りました」とまな板になりそうな板が一緒に送られてきた。まな板はすでに同じくえこふで買い求めた後だったので、たまがおままごとに使って喜んでいる。

先日、たまが「えーっと、あのいすのき、なんだっけ?」と言った。「檜?」と言うと、「そうそう、ひのき。それ、きょうのてれびでやってたよ」。木の名前を香りと手ざわりとともに覚えるって、なんだかいいなと思う。

緑も子どもも育つ、ベンチボックス。お客さんが多い日にも重宝します。

2012年01月11日(水)  朝起きると水道が止まっていた
2011年01月11日(火)  魔法が解けた2年目の「クリスマスの贈りもの」
2010年01月11日(月)  ロケ地から届く海の幸山の幸
2008年01月11日(金)  民営化・日本郵便のヒット作
2007年01月11日(木)  マタニティオレンジ58 フライングパンツ
2006年01月11日(水)  Salyuさんの『風に乗る船』
2003年01月11日(土)  おっと!ホットサンド
2002年01月11日(金)  親孝行


2013年01月10日(木)  大人女子のアニメタイム第2弾「どこかではないここ」

制作会社のキュリオスコープさんからの年賀状に「大人女子アニメタイム第2弾」のお知らせ。どうやら情報解禁になっているよう。全3話のうちの第2話「どこかではないここ」の脚本を書かせていただいた。

原作は、『プラナリア』に納められている山本文緒さんの短編。山本文緒さんの小説は、『パイナップルの彼方』を入社して間もなく、ということは20年ほど前に会社の先輩に熱烈に薦められて以来、目に留まると手をのばして、読んでいる。とりわけ『みんないってしまう』が好きで好きで、何人に薦めたかわからない。もともとは松竹の映画プロデューサーに薦められたように記憶している。



そんなわけで「どこかではないここ」もずいぶん前に読んでいたのだけど、初めての山本文緒作品、しかもアニメ、おまけに声をかけてくださったキュリオスコープの菅原花子プロデューサーは「『ビターシュガー』を観て、ぜひこの人にと思いまして」ということで初仕事、とドキドキ要素満載。

でも、打ち合わせは初回からとても和やか、スムーズ。アニメを手がけるワオワールドの村上匡宏さんとは、以前わたしが講師をやりかけた学校の講師紹介ビデオを撮影するときにお会いしていて、思いがけない再会。NHKエンタープライズのプロデューサーは、「おじゃる丸」でご一緒している松井妙さん。そんな偶然にも助けられ、初めてのようで初めてではない居心地のいい顔合わせとなった。

それでいて、打ち合わせは毎回いい意味でスリリングだった。アニメの手法についてよくわかっていないことも多いわたしは、「登場人物が正面を向いていると、セリフに合わせて口を動かさなくてはならないから枚数がふえる」ことも知らなかった。そういうときは「背を向けさせる」ことで解決する。

一方で、アニメは実写のようななめらかな動きが難しいと思っていたら、「まず実写を撮ってからアニメを起こす」方法が取られ、ハウススタジオを借りて、脚本に沿って役者さんに演技をしてもらった。そのメイキングだけでもドラマとして成立してしまうのだけど、あくまでそれはアニメの線をつかむためのものらしい。出来上がったアニメと元の実写を比べて観られると面白いなと思う。

背景などは実写を活かすところもあるようで、どんな風にアニメと融合するのか、とても楽しみ。主人公の主婦・真穂の声は木村多江さん。第一回目の打ち合わせからイメージキャストとして一同が共有していただけあって、アフレコは素晴らしかったとのこと。立ち会えなかったのが惜しまれる。

放送は3月を予定。三本立てで、あとの2作品は「人生ベストテン」(原作:角田光代)と「夕餉」(原作:山田詠美)。これまた原作がどんなアニメになっているのか、興味津々。

2012年01月10日(火)  部屋探しでいちばん大事なもの
2011年01月10日(月)  夢中で食べてお代わり!『食べちゃいたい』(佐野洋子)
2010年01月10日(日)  「豊かな暮らし」ってこんな暮らし?
2008年01月10日(木)  マタニティオレンジ219 「かわいい」が聞きたくて
2007年01月10日(水)  マタニティオレンジ57 鏡っ子たまちゃんとダスキンちゃん
2005年01月10日(月)  オペラシアターこんにゃく座『森は生きている』
2004年01月10日(土)  ラブリー「ニモ」!


2013年01月09日(水)  お年賀と初打ち合わせと新年会

3週間に一度講師が回って来るシナリオ講座研修科昼間部の、年始第一回目。
事前に提出されたプロット一本とハコ書き一本を講評。

秋まで受け持っていた基礎科では、わたしがしゃべりすぎていたので、研修科では、なるべく受講生の皆さんに意見を出してもらうようにしている。脚本が書けるためには、読めなくてはならない。鉱脈を嗅ぎ当てる力も、無駄を見抜く力も、読むことで養われる。皆さんの意見を聞くと、わたしも勉強になるし、それぞれの目のつけどころから作家性もうかがえる。

「脚本をお借りしたお礼に、お年賀です」と、受講生の一人に持ち重りのする紙袋を渡された。きっと甘いものに違いないと勝手に決めつけ、「この後の打ち合わせでいただきます」。夕方からの新年初打ち合わせで包みを開くと、予想通り、甘いものが現れた。文明堂のカステラ。10切れをわたしとプロデューサーと演出の三人で夕飯代わりにいただきながら、本直し。

秋の取材旅行に始まったオリジナルドラマ脚本開発も、最後の詰めの段階。オリジナルなので、少し進んでは、検証したいこと、検討したいことが出て来る。トンネルを慎重に掘り進む感じ。幸い最初からこっちだと当たりをつけた方角を変えることはなく、こっちの道で合っているぞという安心感を抱きながらの前進。それでも脇道を掘りすぎて道をそれかけてしまったり、出口はもう少し見晴らしのいい場所に、と欲が出たり。撮影まで時間のない中、ぎりぎりまで粘らせてもらっている。

「僕は、時間をかけただけ、いい本にする自信がある」
何年か前、大先輩の伴一彦さんと飲んだときに、そう言われたのが印象に残っている。そのとき、わたしが「時間をかけると、こねくり回して、余計な直しをしてしまう」と言ったことを受けての言葉だったように記憶している。余計なところを削ったり足したりしてしまうのは未熟さゆえで、場数を踏むうちに、どこを彫刻すればいいかの勘とセンスが磨かれていく……ということが、ようやくわかってきた。

それはプロデューサーも演出も同じで、慣れたスタッフが集まると、「ここをこうすればよい」という正解への近道は簡単に導き出される。そうして意見が一致したときに「普通はそうだよね? でもそれでいいんだろうか」と疑ってみるところに鉱脈がある。普通はこっちだとわかった上で、あえて道を踏み外して、裏道から出口を目指すと、思いがけない風景が広がる。そういう冒険に必要な勘とセンスも、経験を積む中で身に着けていくしかない。

書いても書いても、作っても作っても、学べることにはきりがないのが、脚本家の面白いところ。



ドラマといえば、昨晩はBSプレミアムドラマ「そこをなんとか」の脚本開発打ち上げを兼ねた新年会。プロデューサー、演出、脚本、法律監修が顔を合わせ、春から夏にかけての怒濤の日々を振り返り、互いを労った。そこなんは視聴者の反響も良く、出演者もスタッフも「参加できて良かった」と笑顔で言い合える作品になった。

肝心の作品の話より、なぜか腐女子話に花が咲き、懐かしの漫画タイトルが次々と飛び出し、『風と木の歌』を読んだ読んだと盛り上がった。4、5、8、9話の脚本を担当された横田理恵さんの話題の守備範囲の広さと好きなものを語るときのパワーに感心。横田さんとプロデューサーの後藤さんと演出の一色さんが組んで「1985年のクラッシュギャルズ」というラジオドラマを作り,NHK-FMの青春アドベンチャーで現在放送中。横田さんのトークには、プロレス技にも通じるパンチ力があるのだった。

話し足りないうちにお開き。続きはまた今度、となった。一緒に作品を作った人と、おいしいお酒が飲めて、また会いましょうと別れる。そんな出会いの積み重ねも脚本家の財産になる。

2012年01月09日(月)  新聞広告から人形劇!
2011年01月09日(日)  志布志市志布志町志布志の志布志市文化会館
2010年01月09日(土)  あの頃の2倍+α生きて子連れ脳トレ同窓会
2009年01月09日(金)  同じところをぐるぐる
2008年01月09日(水)  マタニティオレンジ218 ミキハウスの服
2007年01月09日(火)  マタニティオレンジ56 男の人が歌う子守歌
2004年01月09日(金)  ヨシミン(井野上豊)
2002年01月09日(水)  見えなかったB


2013年01月08日(火)  あなたの塩をいただいています(イランの挨拶)

来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ (権中納言定家)

タイトルに惹かれ、今年最初に手に取った短編集『日本語の冒険』(阿刀田高)の中に、「塩」が登場する和歌が出てきて、年末に贈られた塩のことを思い出した。

友人の木村美砂さんが製作を手がけたドキュメンタリー映画『しおのかぞく』を一家で見に行った(>>>2011年11月20日(日) 映画『ひとにぎりの塩』とたこ焼き宴の「食」)のが縁で、わが家もすっかり能登の塩のファンになったのだけど、木村さんは、ご塩(縁)が高じて、楽天市場にしおのかぞくというお店を出すに至った。

年末にわが家で食事会を開いたときに、木村さんと、映画の宣伝をお手伝いした縁でそのまま「しおのかぞく」にも関わっている栗原さんにも声をかけたのだけど、そのときにお土産にいただいたのが「桜塩」と「中島菜塩」のセットだった。



「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」で知り合った音楽家の小室ひろさんが買い求めて来た小川町の無農薬大豆で作ったざる豆腐にかけたら、完璧な組み合わせ。究極の豆腐と究極の塩、これぞ究極の贅沢と舌鼓を打った。

ぱらぱらっとふり入れてご飯を炊いてもよし、塩豚を仕込むのに使ってもよし、蒸し野菜の味つけにもよし。塩は長持ちするので、いいものを使うに限る。

この食事会には、イラン生まれ、生まれ育ちのS君もいて、「イランでは、お世話になっています、というのを『あなたの塩をいただいています』と言うんです」と教えてくれた。塩がとても貴重なものであることがうかがえる言い回し。子どもを褒めるのに「この子は塩っぽい」とも言うらしい。塩が足りているということが、幸せのバロメーターなのだ。

そういえば、salaryの語源も塩で、その昔は塩で給料が支払われたってことよね、などと塩談義もおいしくいただいた。塩には蘊蓄話が似合う。

話は戻って、藻塩の歌。年末にこの和歌をさっと頭から取り出せたら良かったな、と思いながらページをめくったのだった。権中納言定家は藤原定家のこと。

2012年01月08日(日)  檀上尚亮展→ミヤケマイ展
2011年01月08日(土)  雑煮がお正月を運んで来る
2010年01月08日(金)  上杉祥三さん作・演出『アセンション2012』
2008年01月08日(火)  整骨院のウキちゃん2 首都得意なんです編
2007年01月08日(月)  マタニティオレンジ55 ランドセルの紳士
2006年01月08日(日)  『ブレスト〜女子高生、10億円の賭け!』放送
2003年01月08日(水)  ベトナム料理
2002年01月08日(火)  Georg Jensen


2013年01月07日(月)  「80代はあの世とこの世に股をかけている感覚」の高田氏

今井雅子ファン最高齢、昭和ひとケタ生まれの高田氏が亡くなった。

高田氏とは、どういう人物であったか。
絵本『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』にならって、誰かが亡くなると、その方がのこしてくれたものを数えるようにしている。

放送文化基金のパーティで知りあった余語先生の幼なじみとして紹介された高田氏から受け取ったものは、両手の指では足りないけれど、「老いとのつきあい方」に集約される。

高田氏の奥様が家を空けると、余語先生や同年輩の友人たちと集まった(2004年10月02日(土)「平均年齢66-1才」若返りの会)。

「家内がニュウヨークへ行きますので、その間に又パアテイしようと思いますが如何でしょうか。若し遊びにおいで頂けるようでしたらハッピイです」
こんな招待状が届き、出前の釜飯をいただきながら昼下がりをおしゃべりで過ごすと、
「お陰様で1歳ほど若返りました、何故か解りませんが今井さんと話しをすると若返る様です、多分人助けのオオロラ?が放射されているのかも知れません(この歳で1歳はたいへんなのです)」
とお茶目なお礼状が届いた。

この集まりは、後に「洗濯の会」と名づけられた。恐妻家の高田氏をからかって、鬼の居ぬ間に何とやらをもじった名前だった。

2006年の8月に、わたしの娘のたまが生まれると、秋に余語先生と会いに来てくれた。そのときの印象を「小生はただ物珍らしそうにイエス様とお合いした様な気持ちで赤ちゃんを眺めるのみ」と振り返り、「次にお目にかかる時はこのスクスク組とシワシワ組のかわりように驚き世の諸行無常を嘆くことを必ずと覚悟致しております」と手紙を寄越してくれた。

出会った頃から年を経るごとに、高田氏にとっては「死」は身近なものになった。風邪を引いてなかなか治らなかったときの心境を「お棺の中で寝ている様」と綴り、体調が回復したのでまた新たな絵の制作に取りかかろうと思っているが、「『とし』ですので、まあ子ぎつねへレンがミルクをのむ様な気持で自然に自分が楽しめれば」と語った。洗濯の会への招待状でも、「気楽なパーティであの世行き乗客専用車にまぎれ込んだ面白味もあるかもしれません」と冗談にしていた(2007年05月28日(月) 高田さんからの招待状)。

2008年春、80を超えた高田氏と余語先生と一緒に植物園で一日を過ごした(2008年05月03日(土) 80BOYS AND BABYの会)ときは、今までになく老い語録が飛び出した。「70代と80代では感覚ががらりと変わる」のだそうで、80を超えて、思うところがあったのかもしれない。

「80過ぎた者に、元気ですかなんて聞いちゃあいけませんよ。どこかしらガタが来てますから。生きてるだけで大変なことなんです。故障しているのがわかっている車に走れますかと聞くようなものです」

では、なんと聞けばいいのでしょう?

「調子はいかがですか、と聞かれたら、なんとか生きてますと答えます。でも、そうすると、お元気そうで、なんて言われるんですよねえ。そろそろお迎えが来そうですなんて言うと、いやいやまだまだなんて言われるんですけど、そこで話が終わっちゃうんです」



では、どう反応すればいいのでしょう?

「いつ頃来るんですか、どうやって来るんですかって聞いてもらえたら、話が続くんですけどねえ」

2009年の年の暮れ、余語先生の家で集まったとき(2009年12月30日(水) 「162歳コンビの会」と「40にしてマドワーズの会」
)は、「生き長らえたとして、せいぜいあと10年」とおっしゃっていた。2012年の暮れになくなったので、実際は、10年よりもずっと短かった。でも、出会った頃も同じことを聞いた気がするので、ずいぶん長い間、死というものをそばに置いて見つめていたのだろう。

「最大あと10年」の遺された時間を使って絵を描くために、高田氏は額縁を大量に購入していた。その数、三百枚! そんなに描けるんですかとわたしは驚いたが、額縁を買うことで、自分を追い込む目的もあったようだ。それを聞いて、お茶目な余語先生は「まさに、がくっぶち人生」とからかっていた。

三百枚の額縁は、どうなったのか。
何枚ほど、絵が埋まっただろうか。

朝起きて、今日はこの世かあの世かと確かめるところから一日が始まる、と話されていた高田氏。階下から奥様に朝食の支度ができたと告げられ、今行くと二階から返事をしたけれど、そのまま姿を表さなかったらしいと余後先生が知らせてくれた。「80代はあの世とこの世に股をかけている感覚」なのだと話されていたが、重心の位置をすっとずらすように、あの世側へ移動してしまったのだろう。

高田氏に会うと、いつも奥様の話になった。愛の反対は無関心のルールをあてはめると、留守の間も奥様が気になってしょうがない高田氏は、愛妻家だったことになる。その奥様と最後にいつもの何気ない会話を交わせたことも、微笑ましく思える。

出会った頃から「そう長くはないでしょうから」と飄々と語っておられた高田氏。そうは言いつつ長生きされる気もしていたけれど、来るべき日は来てしまった。わたしは、まだまだ高田氏のように、死を身近に受け入れる心境にはなれないけれど、老いるという境地について、実に具体的で生々しい感覚をたくさん教えてもらった。

高田氏は、わたしの作品を「迷い人救出作戦的物語」と呼んでくれた。便箋何枚にもわたって、戦争を繰り返してはならないという想いを綴ってくれた。あと数年早く生まれていたら戦争に取られ、あと数年遅く生まれていたら戦争を知らなかった自分たちの世代こそが戦争を語り継ぐべきだ、と語っていた。いつか今井雅子作品に取り入れてもらえたらという願いを受け止めつつも、いまだ戦争に真正面から取り組めてはいない。でも、わたしが書くとしたら、戦争が終わった頃に青春が始まり、高度成長とともに戦争が遠い過去になって行く日本を憂う、高田氏のような人のことかもしれない。

2012年01月07日(土)  東京ドームのローラースケート
2011年01月07日(金)  今日新宿で再会することになっていた
2010年01月07日(木)  秋からの朝ドラ「てっぱん」に参加します
2008年01月07日(月)  両親元気で留守がいい
2007年01月07日(日)  蓬莱の豚まん 日本一世界一551
2002年01月07日(月)  カレーライフ


2013年01月06日(日)  手紙のお年玉

「ぱぱとままに、てがみのおとしだま、あげるね」と元旦から言われていて、ようやく受け取った。



 ままはがんばったから いちおくえん
 ぱぱもがんばったから おくえんだよ
 これが てがみのおとしだまだよ
 ままもぱぱも よくがんばりました
 いつまでもだいすき ずっとだいすき
 ままぱぱだいすき
 たまより


「ぱぱはおくえんだけど、ままはいちおくえんだからね」と言っているので、「一億円は億円より一つ上の値打ちがある」と思っている様子。親にとっては、値段をつけられないプライスレスなお年玉。

一億円あれば何が買えるのか、何ができるのか、6歳児にはピンと来ないだろうけれど、「億=いっぱい」のノリで、最近やたらと使いたがる。保育園で仕入れたのか、「ガイ」という単位も口にする。億、兆、京、垓の「垓」だ。

億よりは小さいけれど、「万」も大好き。「ぶんきょうくって、なんにんいるの? まんいるの?」などと使いたがる。

そう言えば、先日バスに乗っていたら「満七十歳以上の方は……」というアナウンスが流れ、「まんななじゅっさい! まんって、カメトメよりもながいきじゃん!」と大声で驚いていた。『おじゃる丸』に登場するカメ姉妹の亀田カメは1111歳、亀田トメは1112歳。千の上は万だとわかっているので、カメトメより長生きだと驚いたわけだが(ちなみにスぺシャル『銀河がマロを呼んでいる』に登場する、カメトメそっくりなカメ姉妹の亀頼みカメは11111歳、亀頼みトメは11112歳なので万年生きてることになる)、「満七十歳の満は、まるまる七十歳ってことよ」と説明して落ち着かせた。

そして、親子漫才のてっぱんネタ。
「うちの子、すごいんですよ。5ケタの足し算ができるんです。たまちゃん、1+5+万+十は?」
「いちごまんじゅう!」

2012年01月06日(金)  2012年はカフェめぐりと読書
2011年01月06日(木)  【届かなかったラヴレター2011】募集開始
2010年01月06日(水)  twitterの面白さは、餅シチューの冷めない距離感。
2008年01月06日(日)  インフルエンザか?の発熱
2007年01月06日(土)  マタニティオレンジ54 いとこ対面
2004年01月06日(火)  引っ越したお隣さんと舞い込んだ鳥
2002年01月06日(日)  非戦

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