2007年01月17日(水)  夢のお告げ!? 小さな鳥の物語

 間もなく生後5か月になる娘のたまは、よく眠るようになったとはいえ、夜が明ける前には必ず目を覚ます。授乳をすると、すぐまた眠りに落ちてくれるけれど、そこからは眠りが浅くて、次は2時間ほどしか持たない。だから明け方のわたしは夢うつつの状態でいることが多く、そういうときの頭の中は、ぬか床をかき混ぜるようにゆっくりと攪拌されるのか、底のほうに沈んでいた記憶が不意に掘り起こされたりする。
「鳥の話、書いたことがあったな」と今朝思い出した。
 ある企業のPRビデオの企画で書いたストーリー。一言ではくくれない多様な情報サービスを提供するその企業の「見えない価値」を「見えるカタチ」にするために、みんなの幸せを思って知恵を絞るけなげでちっぽけな鳥というキャラクターを考えた。個々のサービスを紹介しながらブランドイメージを築いていきましょうという提案だったが、コンペ(競合)で敗れてしまった。なかなか愛らしい鳥のキャラクターも開発したのだが、それも日の目を見なくて残念。
 コピーライター時代から書き散らしているので、こんな風に埋もれてしまったストーリーはたくさんある。ありすぎて、わたしの記憶の中でさえ埋もれてしまっているほど。でも、どうして鳥の話を思い出したのだろう。何かの啓示か予兆だったりするのだろうか。鳥を飼いなさいとか、赤い羽根の募金をしなさいとか。あるいは、この鳥のように体は小さくても大きな志を持ちなさいという夢のお告げなのか。それとも単純に、こないだ鳥鍋をして、鳥、鳥とはしゃいだことが潜在意識をつついたのかもしれない。
 こんな話だった。
(企画書用に書いた形なので、具体的なサービスを想起させる内容を盛り込んであり、実際は企業の名前やスローガンも入っている)

小さな鳥の物語

 あるところに、小さな鳥がおりました。鳥はもっと立派になりたくて、知恵のある長老鳥に相談しました。
「人々を豊かに、幸せにしなさい。その幸せなキモチがあなたを大きくしてくれるでしょう」と長老鳥は言いました。
 でも、どうやって? 
 鳥はちっぽけで、力もありません。お金も持っていません。
「空を自由に飛べる翼があるではないか。それに、もうひとつ、心の中にも翼がある」
 長老は力強く言いました。翼をはためかせ、想像力をはたらかせなさい、と。どんなちっぽけな鳥でも、夢見る力は無限大です。
 さっそく、鳥は考えました。
 どんなとき、人々は豊かな、幸せな気持ちになるのだろう。
 探し物が見つかったとき。欲しかった物が手に入ったとき。あきらめていたことが実現したとき。困っていた問題が解決したとき。もちろん、自分のしたことを誰かが喜んでくれたとき。
 鳥は翼をはためかせ、自分が役に立てそうな人を探しに行くことにしました。

 コウノトリに魅せられた会社員がいました。コウノトリの住む町に移り住む夢がありましたが、毎日の忙しさで夢を忘れかけていました。
 別な場所では、結婚を間近に控えた恋人が喧嘩していました。二人は遠く離れて住んでいて、すれ違いばかり。果たして無事結婚できるのでしょうか。
 ベビーベッドに赤ちゃんを寝かしつけているお母さんは、ため息をついています。ついこの間まで大きな会社で働いていた自分が懐かしいようです。
 この人たちを豊かに、幸せにするにはどうすればいいのでしょう。
 鳥は仲間の鳥たちに相談しました。みんなの想像力が集まると、面白い思いつきが次々と飛び出しました。
 鳥はその思いつきを自分の羽に託して、空に放ちました。羽を風に乗せるとき、小さな声で何やら唱えました。自分に素直に、思いのままに、飛んでいけますようにというおまじないの言葉です。鳥たちには当たり前のことですが、人間は大人になるにつれこの気持ちを忘れてしまうようです。

 おや、誰かが羽を手に取りました。
 コウノトリに魅せられた会社員です。羽を手にした瞬間、けわしかった表情がやさしくなりました。忙しくて考えるゆとりのなかったコウノトリの里のことを思い出したようです。
 うつむきがちだった会社員が空を見上げると、次から次へと羽が落ちてくるのが見えました。ひとつ手に取るたびに、会社員は何かに気づき、ひらめき、希望や勇気が湧いてきました。
 足取りの軽くなった会社員は、自分の欲しい羽をどんどん手に取り、集めていきました。すると、どうでしょう。背中に翼が生えてきました。自分の思いのままに進む力を手に入れたのです。
 翼をはためかせ、会社員はコウノトリの里まで飛んでいきました。

 遠く離れた恋人同士は、喧嘩の電話を切った後、それぞれの住む町の空を見上げ、ひらひらと舞い降りてくる羽に目を留めました。
 羽を手にした二人は、どちらからともなく仲直りの電話をしました。結婚式の計画が再開したようです。電話をしながら、二人はひとつ、またひとつ、羽を集めていきます。話が弾んで、とても楽しそうです。
 若い二人には、自分たちの家で将来レストランを開きたい、という夢がありました。でも、広い土地を買うゆとりはありません。
 そのとき、落ちてきた羽を手に取った二人の頭の中に、緑に囲まれた一軒家が思い浮かびました。
 都会の真ん中じゃなくて、電車に何時間か揺られた先なら、大きなレストランも夢ではない、と二人は気づいたのです。空気と水のきれいな場所なら、自家製のおいしい野菜を看板料理にできるかもしれません。
 微笑む二人の背中に、天使のような翼が生えてきました。距離を乗り越えて夢をかなえる力を二人は味方にしたようです。

 ベビーベッドのそばでため息をついていたお母さんは、窓から部屋に舞い込んだ羽を手に取りました。外の世界へと誘いかける手紙のようでした。子どもが生まれるまでは大きな会社で朝から晩まで働き通しでしたが、赤ちゃんがくれたこの時間を使って、何かしてみよう、という気持ちが湧いてきました。
 ずっと前から興味のあったファッションの勉強をしてみたい。そう思ったとき、別な羽が風に運ばれてきました。羽を手に取ると、ひとまわり若い学生たちと並んで授業を受けている自分の姿が目に浮かびました。安心して赤ちゃんを預けられるところも、子育てをするお母さんたちが意見を交わせる場所も、ちゃんとありますよと羽は教えてくれました。
 なんだ、その気になればいろんなことができるんだ、とお母さんはうれしくなりました。一日中家に閉じ込められていると思っていたけれど、自分で自分の翼を押し込めていたようです。大きく深呼吸すると、ぐーんと翼が伸びました。

 空高くからこの様子を見ていた鳥は、たいへん喜びました。自分の思いを託した羽が、誰かをちょっぴり豊かにしたのです。会うことはなくても、どこかの誰かの幸せな生活と関わっている、そう思うと、ほこらしい気持ちでいっぱいになるのでした。
 おや、ひとまわり、体が大きくなったようです。 

2003年01月17日(金)  Lunettes du juraの眼鏡
2002年01月17日(木)  HAPPY

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