2009年04月02日(木)  御伽話な法螺話が気持ちいい『フィッシュストーリー』

伊坂幸太郎原作×中村義洋監督作品第2弾『フィッシュストーリー』を観る。前作『アヒルと鴨のコインロッカー』を気に入った伊坂氏から中村監督に映画化をお願いしたのだとか。伊坂幸太郎作品はわたしもいくつか読んでいるけれど、一読者として心底楽しみながら、一制作者として「映像化は難しそうだなあ」といつも感じる。だから、前作で原作者を唸らせ、次につなげた中村監督の力量にわたしも唸ってしまう(脚本は前作が中村監督と鈴木謙一さん、今作が林民夫さん)。『チーム・バチスタの栄光』に続いて公開中の『ジェネラル・ルージュの凱旋』も海堂尊原作2連発。

中村義洋監督がデビュー作『ローカルニュース』をひっさげて函館山ロープウェイ映画祭(翌年から函館港イルミナシオン映画祭に改名)に現れたとき、わたしは初めてシナリオの賞をもらい、授賞式のために映画祭に参加していた。『ローカルニュース』の設定のバカバカしさと登場人物の愛らしさに「こういうのも映画なのか」と驚き、同じ1970年生まれの監督がその後脚本家としても活躍するのをひそかに眺めていたのだけど、ここ数年はとくに注目作が続き、ますます目が離せない監督になった。

そんな中村義洋監督の最新作に朝ドラ「つばさ」でご一緒している多部未華子さんが出演とあって、これは観ねばと池袋シネ・リーブルへ向かったのだった。ちょうど連載エッセイ「出張いまいまさこカフェ」11杯目が載ったbuku(池袋シネマ振興会のフリーペーパー)が3月下旬に出たばかり。表紙は多部さんで、『フィッシュストーリー』のインタビューと出張いまいカフェを続きで読める。


さて、期待十分の作品の中身は……。原作はまだ読んでいなくて、あらすじの情報はチラシだけ。早過ぎたパンクバンド「逆鱗」の最後のレコーディング曲(1975年)が時代を超えて誰かの人生に影響を与え、最後は2012年の地球滅亡の危機を救うという壮大なストーリー。』時代がどんどん飛ぶということで、ついていけるかしらと不安になったが、一度も混乱することなく物語に入っていけた。

忘れられた「逆鱗」の最後の曲『フィッシュストーリー』は、無音の間奏部分に女性の悲鳴が聞こえるという噂とともに呪いマニアの間で生き残るが、消された間奏部分には元々何が入っていたのか? 意味不明とも哲学的とも取れる『フィッシュストーリー』の歌詞の出典は? 歌に影響を受けた大学生は、合コンで出会った霊感の強い女子大生の予言通り人類滅亡の危機を救う人物となれたのか? 冒頭から何度か出て来る「正義の味方ゴレンジャー」の意味するものは?……それまでの約100分でちりばめられた数々の謎や伏線のパズルのピースが一気につながるラストが実に気持ちいい。

多部さん演じる「眠りこけてフェリーを下り損ねた名門私学理数系の修学旅行生」の伏線も見事に回収され、人類滅亡の絶望が晴れるのと観客の頭の中の疑問符が吹き払われるタイミングがうまく合って、目の前がすっきりと開けたような爽快感。それは伊坂幸太郎作品の読後感によく似ていて、ラストは原作とは変えているらしいけれど、作品の持つ空気の映像化に成功していると感じた。

見逃せないのは、作品で重要な役割を演じる音楽の説得力。『フィッシュストーリー』が力のある曲でなかったら、「誰かの人生を動かす埋もれた名曲」であることが嘘っぽくなってしまう。伊坂氏が多大な影響を受け、強い絆で結ばれているという斎藤和義氏の音楽がなければ、この映画は成立しなかったと思う。劇中で何度聴かされてもしつこさを感じさせず、むしろ病み付きにさせる旋律と歌詞(伊坂氏との共同作詞のよう)。加えてボーカル役の高良健吾さんの声に哀しみと色気があって、ゾクゾクした。

タイトルのフィッシュストーリーとは、法螺話のこと。「逃した魚はでかかった」と釣り人の話は大きくなりがち、というのが語源らしい。その連想もあって、ティム・バートン監督の『ビッグフィッシュ』を観終えたときの何ともいえない幸せな気持ちも思い出した。自分たちの曲はきっと売れないとわかりつつも、もしかしたら誰かの心に届いて、その人生を変えて、何年か後に人類を救うかもしれない。そんな法螺話のような未来を語るバンドメンバーが愛おしい。その「ありえない未来」が映画という嘘の中でかなったとき、人生バンザイな気持ちになった。めぐりめぐって、まわりまわって、何が起こるかわからない。だから、人生はやめられないし、明日が今日より楽しみになる。彗星が地球に衝突する直前の地球を舞台に、法螺話で御伽話をこしらえてしまう伊坂幸太郎氏にもあらためて感心した。

ところで、彗星が地球にぶつかって人類滅亡の危機といえば、わたしが一晩に二度読むほど惚れた『終末のフール』を連想させる。調べてみると、原作『フィッシュストーリー』は、後に単行本『終末のフール』に納められる連作短編を小説すばるに連載していた終盤、「演劇のオール」(2005年8月号)と「深海のポール」(2005年11月号)の間、2005年10月号の小説新潮に掲載されている。単行本『フィッシュストーリー』には他に4編が所収されているから、原作は短編らしい。ぜひ近いうちに読まなくては。『終末のフール』も中村義洋監督なら映像化できるかも。

2008年04月02日(水)  マタニティオレンジ261 「お母さん、しっかりしてください」と歯医者さん
2007年04月02日(月)  21世紀のわらしべ長者
2005年04月02日(土)  アンデルセン200才
2002年04月02日(火)  盆さいや


2009年04月01日(水)  (ホームレス)公田耕一氏と(アメリカ)郷隼人氏

毎週月曜の朝日新聞朝刊に掲載される朝日歌壇からこのところ目が離せない。掲載された歌の作者名の上には(東京都)のように所在地が記されるのだが、(ホームレス)公田耕一という作者が昨年の暮れ頃に現れた。すでに(アメリカ)郷隼人という常連がいて、漢字ばかりの地名の中でカタカナ4文字が異彩を放っていたのだが、編集者が(住所不定)ではなく(ホームレス)の表記を選んだことで、カタカナ所在地作者が双璧を成すことになった。

(アメリカ)郷隼人氏の作品は、わたしが見る限り100%ではないかと思われる高い掲載率を誇り、三十一文字の私小説を連載で読みながら主人公の郷隼人氏を少しずつ理解している。どうやらアメリカで服役中で、その年月は数十年を数えるらしいが、その一週間、一週間は短歌の投稿で刻まれている。塀の内から塀を越え海を越えた歌が毎週のように掲載され、読者は彼の無事を知るが、作者本人は朝日新聞を読み、掲載の有無を確かめる手だてはあるのだろうか。

一方、(ホームレス)公田耕一氏の三十一文字私小説も、ときどき休みの週はあるけれど、作者の人となりを想像するのに十分。赤いきつねと迷った挙げ句に朝日を買うという内容の歌があったりする。2月頃に「連絡求む」の記事が朝日新聞に載った際に紹介された「選に漏れた歌」によると、体を悪くされている様子。その記事を追って「ホームレス歌人の記事を他人事のやうに読めども涙零しぬ」という歌が掲載された。読者からのお便り欄にも反響があり、さらに「連絡を取る勇気がない」との申し出があったという続報が載り、それでも(ホームレス)公田耕一氏の投稿と掲載は続き、ますます朝日歌壇から目が離せなくなるのだった。

そして、一昨日の朝日歌壇を開いて、あっとなった。

温かきコーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えし
コーヒー啜る   (ホームレス)公田耕一

囚人の己が〈(ホームレス)公田〉想いつつ
食むHOTMEALを   (アメリカ)郷隼人


気になる二人の作品が並んで掲載されている。公田氏と郷氏のそれぞれに思いを馳せ、「公田氏の上には屋根がなく、郷氏の上には屋根があるのだろうか」などと考えたことはあったけれど、二人の一方がもう一方を想う場面を想像したことがなかった。「あの人はあたたかいものを口にしているのだろうか」と思いやる郷氏への返事のように、公田氏はカイロ代わりに抱いて冷めたコーヒーを詠んでいる。今週も公田氏は赤いきつねの代わりに朝日を買っただろうか。アメリカからのメッセージが家なき人に届きますように。もしかしたら、近いうちに公田氏の歌に郷氏のことが詠み込まれるかもしれない。(アメリカ)と(ホームレス)が短歌を通じてつながった瞬間に興奮を覚えた読者はわたし一人ではないだろう。二人のカタカナ詩人を見守るたくさんの読者と、わたしもやわらかくつながっている気がする。

今日は春の嵐で夕方から雷雨。娘のたまは雷が珍しいらしく、窓の外がピカッと明るくなるたびに不思議そうに見ていた。というわけで、今夜の子守話は雷一家のお話。たまは気に入ったのか、終わるたびに「かみなりのはなし」と再演をせがみ、3回繰り返して聞かせた。
子守話52 かみなりかぞく

そらがピカッとひかって 
ドンガラガッシャンとおとがして
あめがザーザーふっている。
どうして こうなっているか わかる?
そらのうえで かみなりのかぞくが おおげんかしているから。

ピカッとひかるのは かみなりママの てかがみ。
かみがたが うまくきまらなくて 
あさからずっと かがみとにらめっこ。
「おい いつまで やってんだよ! 
 はやく ばんごはんを つくってくれよ!」
おなかをすかせた かみなりパパが おこりだして
たいこをたたいて ドンドンドンドン。そうしたら
「もう しずかにしてよ! べんきょうできないよ!」
かみなりにいちゃんも おこりだして
あしをふみならして ドンドンドンドン。そうしたら
「うるさくって でんわがきこえない!」
かみなりおねえちゃんも おこりだして
かべをたたいて ドンドンドンドン。そうしたら
「しずかにしないと ごはんつくらないわよ!」
ばくはつあたまのママも いかりがばくはつして
なべをたたいて バンバンバンバン。そうしたら
たなのものがゆかにおっこちて ドンガラガッシャン。
ねんねしていたかみなりあかちゃんが めをさまし
エーンエーンとなきだして あめがザーザーふりだした。

2008年04月01日(火)  今井雅子作品『これコレ』と『アテプリ』届きました
2007年04月01日(日)  歌い奏で踊る最強披露宴
2004年04月01日(木)  「ブレーン・ストーミング・ティーン」刊行
2002年04月01日(月)  インド料理屋にパコの風


2009年03月31日(火)  春はバイバイの季節

昨日の夜、娘のたまを寝かしつけるときに「何かお話ししてよ」と子守話を振ると、「バイバイのおはなし」とたま。反抗期の兆しなのか、この頃たまは「バイバイ」が口癖。親が真面目に話しかけると「バイバイ」と茶化し、しかると「バイバイ」とはぐらかし、じいじばあばに声を聞かせようと電話口に呼ぶと「バイバイ」と逃げる。

「バイバイの話ね。どんな話?」と聞くと、「ちょうちょさん とんだ」と言う。飛び立つのは確かにバイバイすることだなあと詩的なものを感じ、たまの言葉を引き取って子守話に仕立てた。保育園で習った「あーくーしゅーでバイバイバイ」というフレーズの明るい響きが好きだ。

ちょうど3月の終わりの旅立ちの季節。保育園では昨日、異動がある先生方のお別れ会があったし、遠くへ引っ越したお友だちもいる。いつもより「バイバイ」が多いことを感じているのかもしれない。保育園は今日までが1歳児クラスで、一晩明けると2歳児クラスに進級する。春休みをまたがずに学年が変わるのは不思議な感じ。着替えなどを隣の教室に引っ越し、新しい担任の先生を知らされる。

子守話51 えがおでバイバイバイ

おやつをぜんぶ たべたら バイバイ
おはながひらいて ちったら バイバイ
ことりたちが とびたったら バイバイ
おともだちが ひっこしたら バイバイ
はるがきたら ふゆはバイバイ

でも バイバイしても きえないものもある

おやつの あまいあじ
おはなの きれいないろ
ことりたちの うたごえ
おともだちを だいすきなきもち
たくさんあそんだ ふゆのおもいで

バイバイしても いっしょにいるから
えがおでバイバイバイ

春らしく、たま語の新作もいいものを収穫できた。
保育園からの帰り道、庭先にピンクの蕾がほころんだ木を見つけて、「あれはうめかな。さくらかな」とたま。「聞いてみたら?」と言うと、木に向かって、「うめですか? さくらですか?」と問いかけた。「何て言ってた?」と聞くと、「おはなです、って」。

もうひとつ、お風呂上がりのできごと。なかなか服を着てくれず、ふざけて暴れたたまの手がわたしの頬を平手打ち。「もうママ立ち直れない」と怒ってみせたが、「もうしませんから、たちあがってよ」と言われて、「立ち上がるじゃないんだけど……」。膨れっ面がゆるんでしまった。

昨日飛び立った朝ドラ「つばさ」の初回(総合 8:15〜)視聴率は17.7%。ハイビジョン(7:30〜)は1.5%、BS2(7:45〜)は3.7%で、合わせると22.9%。さらに昼(総合 12:45〜)と夜(BS2 19:30〜)の再放送分を合わせると20%台後半になり、出足は快調。放送が始まっても制作はバイバイしていない(手を離れていない)ので、視聴率がはばたいてくれると励みになる。

2008年03月31日(月)  マタニティオレンジ260 12歳のせらちゃんは同世代!?
2007年03月31日(土)  マタニティオレンジ102 保育園から美術と家庭科の宿題
2005年03月31日(木)  「またたび」の就職活動生
2004年03月31日(水)  岩村匠さんの本『性別不問。』
2003年03月31日(月)  2003年3月のカフェ日記
2002年03月31日(日)  レーガン大統領と中曽根首相の置き土産
2001年03月31日(土)  2001年3月のおきらくレシピ


2009年03月30日(月)  「シ〜ザ〜」何回?1日3回「つばさ」第1回

朝ドラ「つばさ」放送初日。映画公開前夜と同じく、なかなか寝つけず、変な夢を見たりして、7時45分からのBS2での放送には起きられなかった。8時15分からの放送を一家三人テレビの前に正座して観る。完成版を事前にDVDでチェックしているので、アンジェラ・アキさんの主題歌『愛の季節』を何度も耳にしている2歳児のたまは、「シ〜ザ〜」とサビの部分を一緒に口ずさみ、「なんでシーザーってうたってるの?」と突っ込む。seasons of loveのseasonsが、たしかに「シーザー」と聞こえる。昼の12時45分からの再放送を一人で観て、夜の19時30分からのBS2での再放送を家族で観た。さて、一日に何回シーザーを聞いたでしょう。

たまは、つばさ役の多部未華子さんの顔とつばさのタイトルロゴを覚え、家の中や外で見つけると、「ちゅばさだ」と指差す。朝ドラ前作の「だんだん」が名残惜しいらしく、「だんだんは、どうしたの?」「ちゅばさのあと、だんだん?」と気にしている。「ママはお仕事で、つばさを作っているんだよ」と教えると、「たまちゃんは、おしごとで、ちょうちょさんつくってるの」と張り合うので、「どっちもお空飛ぶね」と言った。これから半年間、「つばさ」がたくさんの人に愛されて、大きくはばたきますように。

つばさつながりで、今夜の子守話は天使の話。ちょうちょだけでなく、たまは空を飛ぶものが大好きで、ゾウもきりんも空を飛ばしたがる。「ペンギンさんそらをとぶのえいが」(『旭山動物園物語』も副題に惹かれて先日観に行ってきた。将来は空飛ぶ仕事? CAか、パイロットか、宇宙飛行士も夢じゃない? おどけて頭の上にタオルやら人形やら乗っけるのも好きなので、空飛ぶ×頭に乗っける=天使の話を作ってみた。

子守話50 てんしのわっか

まいごのてんしがないていました。
「わっかをおとしちゃったよう。
 わっかがないと おそらにかえれないよう」
そこにとおりがかったたまちゃんは 
いっしょにわっかをさがすことにしました。

わっか わっか どこにあるかな。
ママのゆびわは ちいさすぎ。
ドーナツのわっかは でぶっちょすぎ。
タイヤのわっかは おもすぎて
フラフープは おおきすぎ。
わっかはいろいろあるけれど
てんしのわっかは みつかりません。

だったら わっかをつくりましょう。
きいろいおはなをあんで はなかんむりの わっかのできあがり。
てんしのあたまにのっけたら ほら ちょうどいいおおきさ。
それに とってもよくにあいます。
「てんしのわっかとはちがうけれど
 おはなのわっかは とってもすてき」
なきべそだったてんしが にっこりしたそのとき
おはなのわっかに たいようがきらりとあたり
きんいろのわっかにかわりました。

てんしのわっかは「やさしいきもち」で できていたのです。
やさしいきもちが ぎゅっとかたまったかたちが
きらきらひかる きんいろのわっかなのでした。

「ありがとう たまちゃん」
まいごのてんしは そらにもどっていきました。
てんしのすがたはどんどんちいさくなり とおざかっていきます。
「てんしさん さようなら げんきでね」
たまちゃんが そらをみあげて てをふると
きらっきらっと わっかがきらめくのがみえました。
たまちゃんには てんしがウィンクしているようにみえました。

これで子守話は節目の50話。今年に入ってからは15話目。「年内に百話」の目標を達成するには、ひと月に5話のペースでふやしていかないと。最近は、娘よりも自分が先に寝入ってしまう。

2008年03月30日(日)  マタニティオレンジ259 一生ものの友だち、二世代目。
2007年03月30日(金)  生涯「一数学教師」の父イマセン
2004年03月30日(火)  鴻上尚史さんの舞台『ハルシオンデイズ』
2003年03月30日(日)  中国千二百公里的旅 中文編
2002年03月30日(土)  映画『シッピング・ニュース』の中の"boring"


2009年03月29日(日)  3/30スタート!朝ドラ「つばさ」は小ネタにも要注目

『パコダテ人』の古田まゆ役の前原星良ちゃんの家へ遊びに行き、朝ドラ「つばさ」のPR番組を一緒に見る。「つばさ」のハチャメチャなノリが伝わったようで、「お茶の間のドタバタが昔のドラマみたいで、懐かしい感じがするわ」とせらママ。

いよいよ、明日が放送初日。映画の封切り前夜に感じるドキドキをひさしぶりに味わっている。

第一週のタイトルは「ハタチのおかんとホーローの母」。ハタチのおかん=ヒロイン・玉木つばさ(多部未華子)のもとに、10年間家を空けていた放浪の母・加乃子(高畑淳子)が帰ってきて、家族は大混乱の巻。シリアスな話のはずなのにコミカルで、それでいて笑っているうちに身につまされてしみじみとなってしまうのが「つばさ」。家族がしっかり向き合い、一人の問題を一家の問題として受け止める玉木家のドタバタ劇は、ふざけているようで家族にとって大切なことをしっかりと教えてくれる。

見どころは挙げるときりがないけれど、「つばさ」で目が離せないのは登場するアイテムの数々。つばさの両親のなれそめにも関わっている甘玉堂名物の和菓子「あまたま」や、つばさが迷ったときの羅針盤的役割も果たす「一意専心」の看板といった基本アイテムはもちろん、一見飛び道具に見えるものに深い意味や伏線を秘めていたりするので要注意。鳶の頭・宇津木泰典の「眉間の傷レーダー」(加乃子が近づくとうずく)、放浪の母・加乃子の「ホーロー看板」、祖母・千代がフクザツな目で見る祖父・梅吉の「遺影」などは2週目以降も登場し、後々重要な意味が明らかに。額の傷ひとつ、柱の傷ひとつにもドラマを込めるのが「つばさ」らしいところで、「サンバ」もただのにぎやかしではない様子。

朝ドラらしからぬ? いや、けしからぬ? ぶっ飛んだ展開に最初は面食らうかもしれないけれど、気がつけば、つばさワールドの住人たちと喜怒哀楽を共にし、泣き笑いすることになるはず。玉木家のお茶の間のテーブル手前は、テレビの前のあなたのために空けてあります。特等席でご覧ください。

【放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)8:15〜8:30
デジタル衛星ハイビジョン (月)〜(土)7:30〜7:45
衛星第2 (月)〜(土)7:45〜8:00

【再放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)12:45〜13:00
衛星第2 (月)〜(土)19:30〜19:45 (土)9:30〜11:00(一週間分)

2008年03月29日(土)  江草さん×WADADASの広告労協飲み会
2007年03月29日(木)  ターバン野口
2003年03月29日(土)  中国千二百公里的旅 厠所編
2002年03月29日(金)  パコダテ人トーク


2009年03月27日(金)  たまとじいじ、二人旅で絆深まる。

娘のたまを花巻へ連れて行きたいとダンナ父であるじいじに言われたのが先週のこと。年に何度か用があって訪ねる花巻へ、これまでも何度か連れて行こうという話が持ち上がったのだけど、まだ早いのではと実行を見合わせていた。今回は、たまもだいぶ意思疎通ができるようになったし、週に一、二度のペースでじいじとデートをしてすっかりなついているので、「そろそろいいのでは」とあらためて打診があった。日帰りで二人で日光へ行ったこともあるし、遠くへ出かけることには、たまもじいじも不安はない様子。むしろ送り出すわたしとダンナがおっかなびっくりだったけど、花巻へ行けば知り合いも多いし、親戚の田舎に行くようなものだと考えることにした。

一応たまの意見を聞いてみると、「しんかんせんで はなまき いく」と乗ったかと思えば、「ひこうきでいく」と言い出したり、「いかない。おるすばんする」とごねたり,言うことが二転三転。「子どもの言うことなんかあてにしてたら決まらないだろ」とダンナは言うけど、わたしはたまの意志を尊重したいと言い張り、結局出発一日前の火曜日の朝に「はなまきいく。じいじとゆきだるまつくる」とたまが言ったのを受けて、はじめての二人旅が実現することになった。

たまはじいじばあばの家で前泊し、水曜の朝早くに東京を発ち、木曜の夜遅くに帰ってきた。ダンナ父は携帯電話を持たず、旅先からも電話をしない人で、木曜の夜7時を過ぎてダンナの実家にわたしが電話を入れると、「まだ帰ってないのよ。大丈夫とは思うけど」とダンナ母が言い、心配になってきたら間もなく帰宅し、「ママー、たのしかったよー。たまちゃん いってよかったよー」とはちきれそうに元気な声で電話があった。じいじによると、新幹線の長旅ではぐずらず、花巻では知人の家の子どもたちと遊んでもらい、露天風呂にも入ったらしい。吹雪で雪と遊ぶことはできなかったという。

今朝、ダンナの実家にたまを迎えに行き、バスで保育園へ向かった。名残を惜しんでじいじも保育園まで見送ってくれたが、たまとじいじの絆は二人旅でいっそう深まった様子で、母としては、うれしくもありうらやましくもあり。バスから見える薬局ぱぱすを指差して、「あれ、たまちゃんのおむつのおみせ」とたまが言った。「じいじ、こんど たまちゃんが おむつ かってあげるね」とまわりの乗客の誤解を呼びそうなことを無邪気に言うたまに、じいじは目尻を下げて苦笑していた。

2008年03月27日(木)  ブラボー!『蘇る玉虫厨子〜時空を超えた技の継承〜』
2007年03月27日(火)  『子ぎつねヘレン』地上波初登場と富士フイルム奨励賞受賞
2005年03月27日(日)  今井家の『いぬのえいが』
2003年03月27日(木)  中国千二百公里的旅 食事編
2002年03月27日(水)  12歳からのペンフレンドと3倍周年


2009年03月26日(木)  朝ドラ「つばさ」宣伝デー

3月30日から始まる朝ドラ「つばさ」の案内メールを配信。その反響に、朝ドラってすごいんだなとあらためて驚かされた。これまでも作品が放送や公開されるたびにお知らせメールを出していたけれど、返信の数も内容の熱さもケタ違い。「脚本」ではなく「脚本協力」という形での参加(脚本は戸田山雅司さん)であることなどおかまいなしに、「朝ドラおめでとう!」の興奮が続々と返ってくる。8月22日公開の『ぼくとママの黄色い自転車』の案内も添えたのだけど、返信の文面は朝ドラ一色。劇場に足を運ぶ必要のないテレビはチャンネルを合わせれば見られるし、元々視聴習慣のある人も多い。バツグンの知名度と安心感も手伝って、「観ます」の返事をしやすいのもあるだろうけれど、ここまで威力があるとは……。朝ドラおそるべし、と感心していると、「高校野球みたいなもので、控え選手でも知り合いが甲子園行ったらうれしいのだ」と言う人があり、なるほど、うまいたとえだと思った。バツグンの知名度と長い歴史を誇る朝ドラは国民的なお祭りなんだなあ。

「朝ドラの時間は家にいません」という声も多く、「週間録画します」という返信がかなりあった。「ビデオが出たら観ます」の人もいたが、調べてみると、再放送を含め、一日に5回つかまえるチャンスがあり、土曜日には一週間分まとめての放送がある。

【放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)8:15〜8:30
デジタル衛星ハイビジョン (月)〜(土)7:30〜7:45
衛星第2 (月)〜(土)7:45〜8:00

【再放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)12:45〜13:00
衛星第2 (月)〜(土)19:30〜19:45 (土)9:30〜11:00(一週間分)


朝ドラは登場するキャストや関わるスタッフの数もハンパじゃないので、関係者に当たる確率も高い。メールに寄せられた返信からも「飲み仲間がノベライズ手がけました」「宇津木万里役の吉田桂子さんのブログをサポートしています」などなど、あちこちで関係者がつながっていることが判明。行きつけの整骨院では「つばさ」のマグネットを発見。患者さんがやっているPOP制作会社で作ったものだとか。院長が川越出身ということもあり、わたしが持ち込んだ宣伝はがきを合わせて「つばさコーナー」をこしらえてくれた。「長時間の打ち合わせに耐えられるのも、ここの整骨院のおかげ。お二人も『つばさ』を支えてます」と院長とウキちゃんにお礼を言った。疲れやストレスを食べてくれる家族(とくに娘)、その娘を見てくれる保育園やダンナの両親、声援を送ってくれる友人など、いろんな人に支えられ、チカラをもらっている。関係者それぞれのサポーターを合わせたら、すごい数になるだろうな。

2008年03月26日(水)  マタニティオレンジ257 クルマが好きな女の子
2007年03月26日(月)  マタニティオレンジ100 1%のブルー
2006年03月26日(日)  ヘレンウォッチャー【都電荒川線編】
2005年03月26日(土)  映画『いぬのえいが』→舞台『お父さんの恋』
2003年03月26日(水)  中国千二百公里的旅 移動編
2002年03月26日(火)  短編『はじめての白さ』(前田哲クラス)


2009年03月22日(日)  空気を読んで使い分ける、たま2歳7か月。

またまたあっという間にひと月経ち、娘のたまは2歳7か月。「いつの間にこんなことができるようになったんだ!」と驚いてしまうのは、週末も仕事でダンナやじいじばあばに見てもらうことが多いせいかもしれない。先月に続いて、なりきり芝居の腕を上げ、保育園に登園してからお散歩に出かけるまでの「ほいくえんごっこ」、交替で「ママ役」と「赤ちゃん役」を演じる「おやこごっこ」がお気に入り。

親子ごっこの赤ちゃん役は「バブ」しか口にしてはならず、「バブ」の微妙なニュアンスで喜怒哀楽を伝える高度な技術を要求される。応援団時代の「押忍(オス)五段活用」(=「応援団のリーダー部下級生が「押忍」だけで、ごっつぁんされる喜びや先輩に怒鳴られた落ち込みや反省や疑問を表現する宴会芸」を思い出しながら、「バブ? バブ〜。バブバブ?」などとやっているが、電車の中などで「あかちゃんになって」と言われると、かなり恥ずかしい。甘えたなくせに世話焼きで、人形たちだけでなく、親の世話も焼きたがる。お節介はたま語にも現れ、わたしが風呂上がりにおむつをはかせようとすると「ママ じぶんのパンツはきな」と人の心配をし、椅子にあぐらをかくダンナに「パパたいどわるいよ。おおかみくるよ」と注意する。

体を使った遊びも好きで、風呂上がりは「おすもうさんごっこ」や「おうまさんごっこ」で大はりきり。そこからが遊びの時間のはじまりよという感じで、あいかわらず寝かしつけるのに苦労する。今日の夜、テレビのニュースで大相撲の結果をやっているのを指差し、「あ、おすもうさんごっこしてる」。それは本物です。

お調子者なところは両親に似たのか、人を笑わせるのが好きで、「たまちゃん」と言えるようになったのに、いまだに「たべる」を「ばべる」と言い続けているのは、大人がウケるのが楽しいからではという気もする。そのくせ、失敗したのを笑われると、ひどく傷ついて泣き出したりするナイーブな一面も。わたしとダンナと味噌汁の具を相談していたら、「バナナがいいんじゃない? バナナたべるとつよくなるよ」と提案してくれたのを大笑いすると、へこんでしまった。恥をネタにできるたくましさが備わればと関西人のわたしは思うけれど、東京で生きて行くなら、かわいく恥じらっていればいいのかもしれない。

もともと場の空気を読む性質があったけれど、このひと月でそれがいっそう強くなった。わたしが出かけるときの持ち物や服装やダンナと交わす言葉で「仕事か、遊びか」がわかるらしく、「仕事だから、ごねても無駄」だとわかればおとなしく見送るが、「遊びだから、ごねれば何とかなる」と判断すると、泣いてすがる。その的中率の高さには驚かされる。子どもなりに気を遣っているんだなといじらしくもあり、空気を読む子の気持ちをできるだけ汲んでやりたいと思う。

娘と過ごせる限られた時間に家事をこなすための解決策で、「お手伝い」を「遊び」にして一緒にやるようにしている。魔法の粉(=重曹)で家の中を磨いたり、バナナパンの卵割りや粉ふるいや混ぜまぜをしたり。洗濯物を畳むのも覚えて、面白がってやってくれる(畳んだ後ですぐ広げて再びたたむので効率は良くない)。家事は面倒くさくなると負担だけれど、娘が「こんなたのしいあそびはないわ」と目を輝かせてやってくれると、こちらも楽しくなって、けっこうはかどる。『トムソーヤの冒険』のペンキ塗りのエピソードと同じこと。

トイレは前進したり後戻りしたり。保育園から持ち帰るおむつがゼロ(つまり、全部トイレで済ませている)の日もあれば4枚の日も。なぜか外出先での成功率が高く、駅の「だれでもトイレ」や店のトイレでうまく行く。いつもと違うトイレに入るのが探険気分で楽しいのかもしれない。

卒乳の気配はまだなく、とんとん(=おっぱい)はすっかりお友だちで、どこか出かけるときに「とんとんも一緒に行くの?」と言ったりする。「たま、いつまでとんとん飲む気?」と聞くと、「いつまでも」。

2008年03月22日(土)  マタニティオレンジ255 ゾゾもガオも自分もわかる、たま1歳7か月
2007年03月22日(木)  マタニティオレンジ96 胴体着陸と前方回転
2002年03月22日(金)  遺志


2009年03月21日(土)  マスカラぐらいは、つけますから。

昨日、会社時代の同期だったシモゾノ君の披露宴の後に打ち合わせが入り、着替える時間もないのでパーティ仕様のまま移動した。前日に「ドレスのまま派手なカッコでうかがうかもしれません」と予告していたのだけど、現れた姿を見て打ち合わせ相手は拍子抜けした顔で、「なんだ、いつもより地味じゃないですか」。確かにドレスは黒で色数過剰の普段着より落ち着いているけれど、美容院で作ってきた髪と顔はどうなのだろう。ほぼすっぴんで仕事に出かけるわたしとしては、別人に見えるぐらい変身しているつもりなのだけど……。これだけ作り込んで代わり映えしていないのだろうかと不安になった。

自分では濃過ぎると思っていても、案外これぐらいが普通なのかもしれない。せめてマスカラぐらいは習慣にしようと思い立つ。朝ドラ「つばさ」(3/30スタートまであと9日!)の第4週に「恋は先っぽに出る」という台詞が出てくる。まつげ、髪の毛先、爪。そんなところに恋のときめきは宿る。その逆に、先っぽをないがしろにすると恋は遠のく。毛先からキューティクルが失われるように、手抜きした先っぽからときめきが逃げて行く。そんな気がする。

コピーライター時代にランコムを担当していた頃は、マスカラを欠かさず、実際につけてみた実感をコピーに表していたのだけど、担当を外れると、つける回数が減り、会社を辞めてからは、ほとんどつけることがなくなった。いくつになっても先っぽに気持ちを配る余裕を持たなくては、と何年かぶりにマスカラを買う。「つけまつ毛のような仕上がり」という商品コピーを読んで「マスカラぐらいはつけますから」などとダジャレを思いついている時点で、恋するオトメではなくオヤジになっているのが悲しい。先っぽキラリンで、オッサン化炭素(CO3)を削減しなくては。

2008年03月21日(金)  「321の会」@アスカフェ→タンタローバ
2007年03月21日(水)  MCR LABO #2「無情」@下北沢駅前劇場
2005年03月21日(月)  弘前劇場+ROGO『FRAGMENT F.+2』
2004年03月21日(日)  アドフェスト4日目
2002年03月21日(木)  「かわいい魔法」をかけられた映画


2009年03月19日(木)  米アカデミー賞オスカー像は小柄で重かった

最近映画関係者と話すと、必ずと言っていいほど米アカデミー賞の話が出る。昨日は『つみきのいえ』で短編アニメーション賞を受賞した制作会社ROBOT(ロボット)で打ち合わせ。授賞式に出向いた阿部社長も同席して、話題は自然と受賞の話になった。DVD絵本がなかなか手に入らず、いくつもお店を回ってやっと手に入れた人の話。あちこちから押し寄せるように花が届いた話。おめでたい話は、聞いているほうもウキウキする。「オスカーって重いんですか?」と何気なく尋ねたら、「受付に置いてありますよ」と社長。「ああいうのは、こうするもんじゃないでしょ」と抱き込む仕草をして、「みんなに喜んでもらわないと」。

帰りに受付を見てみたら、見過ごしそうなほどさりげなく、訪問カードを記帳するカウンターにオスカー像が佇んでいた。こんなに小さいんだ、というのが第一印象。ワインのハーフボトルより少し大きいぐらい。フルボトルを痩せさせたような感じと言おうか。囲いも何もないので、訪問者が自由に手に取り、写真を撮っている。わたしも触らせてもらった。持ってみると、思いがけない重みに腕が驚く。新生児ぐらいはありそうな……と言うと大げさだけど、2キロぐらいあるように感じた。見た目からの予測重量とのギャップが重さを際立たせるのだろうか。受賞した本人には、ことさらずしりと響くだろうなと想像する。

撮った写真を日記にのっけようかと思ったら、「オスカー像の肖像権は米アカデミー賞協会にあり、厳重に管理されている」とのこと。オスカーさんの写真を載っけるには、許可がいるということらしい。そんなところにも重みを感じる。

2008年03月19日(水)  整骨院のウキちゃん5 東京の首都は?編
2007年03月19日(月)  大木達哉さんを励ます会
2004年03月19日(金)  アドフェスト2日目
2002年03月19日(火)  パコダテ人ノベライズ計画

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