2009年07月01日(水)  2才10か月で「夏の扉」を開ける

会社勤めをしていた頃、髪を切って出社したら、ひとつ違いのアートディレクター男子のソエちゃんが「今井ちゃん、夏の扉を開けたね」と声をかけた。それを聞いて、まわりにいた「松田聖子を聴いて大きくなった」世代の同僚たちが、「今井、切ったんだ?」と振り返ったが、『夏の扉』がリリースされて10年以上経つのに共通言語になってるってすごいねえと感心し合った。深夜の残業時に誰かがパソコンで聖子ちゃんをかけると、フロアに残っている人たちが次々と口ずさみ、いつしか大合唱になり、「なんでみんな歌えるの?」と驚き合ったこともあった。

そんなことを思い出したのは、娘のたまが生まれて初めて髪を切り、夏らしいすっきりショートになったから。生まれたとき、産道内を旋回してとんがった頭に髪がぐるぐる巻きに張りついてポンパドール夫人状態で生まれてから2才10か月。髪は腰あたりまで伸びた。「切らないの?」「どうして伸ばしてるの?」といろんな人に聞かれたが、ここまで伸ばしたら3才の七五三まで……と思ううちに、また夏がめぐってきた。子どもは汗をかく。加えて、たまは最近お風呂を嫌がり、パスすることも度々。髪からすえた匂いを放つようになり、ダンナの両親からも「切ったら?」とせっつかれるようになった。

たま本人は長い髪を結わえるのを気に入っていたようだけど、保育園の先生からも「たまちゃん、切ったほうがいいわよ」と言われたらしく、自分から「かみ、きる」と言い出した。「かみきりやさんで きる」と言っていたのだが、美容院に連れていける日を待っているといつになるかわからない。わたしも中学校に上がるまでは親に切ってもらってたよな、と思い出し、「ママの髪切り屋さんで切ろっか」と聞くと、あっさり「いいよ」。先週の金曜日、二人きりの夕食の後に「じゃあ、今切る?」「うん」。

最初にハサミを入れるときにはそれなりのためらいがあったけれど、たまは何の感傷もない様子で、「もっと きって」と催促してくる。こちらもザキザキ、ジョキジョキと遠慮の取れたハサミで切り進めるうち、『ほたるの墓』のせっちゃんのようなおかっぱ頭になった。短いほうが子どもらしい愛らしさがあって、母娘ともに気に入った。

ダンナにもダンナ両親にも好評で、保育園の先生方からも「たまちゃん、切って可愛くなりましたね」と褒めていただいたのだが、たまは、「たまちゃんね、まえはかわいくなかったねっていわれたの」。どうやら「可愛くなった」と繰り返し言われるうちに「前は可愛くなかったのか」と深読みしたらしい。子どもながら、なんともフクザツな乙女心。ずいぶん大きくなるまで伸ばしたんだなあと感じた。

さて、25センチの髪は、どうしようか。筆にしても、使うのはもったいないし、飾っておいても埃をかぶりそう。「よく針刺しの中に髪入れたりしてるよね」とダンナに言うと、「たまの髪に針を刺すの?」の顔をしかめられた。それもそうだ。だったら、小さなぬいぐるみの中に入れようか。それはそれで変に命が宿りそうな不気味さがある。カツラに寄付するには短いし……今のところ、ヘアーゴムでしばった束をたまが振り回して遊んでいる。

2008年07月01日(火)  マタニティオレンジ305 トイレトレーニングは「まだ!」
2007年07月01日(日)  マタニティオレンジ138 いつの間にか立ってました
2005年07月01日(金)  ハートがいっぱいの送別会
2003年07月01日(火)  出会いを呼ぶパンツ
1998年07月01日(水)  1998年カンヌ広告祭 コピーが面白かったもの


2009年06月30日(火)  『1Q84』の話題からエリックさんにたどり着く

こないだまとめて読んだはずなのに、いつの間にか未読の新聞が山積みになっていて、それをまたまとめて読む。6月25日朝日オピニオン面、天野祐吉さんの「CM天気図」に「地球の出」の話。「月の地平からゆっくり昇ってくる地球」という風に「かぐや」から眺めた地球の映像を紹介している。そうか、月から見れば地球はまた昇るのか……。考えたこともなかったそのことを知り、そのうれしさだけで今日の元は取ったような気分になる。ぜひ想像だけでなく映像を見てみたい。「JAXA・NHK」とあるからCMではないのだろうか。

6月27日朝日別刷りbe「サザエさんをさがして」には、「人の痛みは見えません。痛度計があればいいな、と思っていました」と日本リウマチ友の会の長谷川三枝子会長の話。温度計(体温計)ならぬ痛度計。痛みの当事者でないと出てこない言葉だと感じ入った。

折しも「月刊ドラマ」の「セリフとト書き」欄に寄せた原稿(7月中旬発行の8月号に掲載)に、「実感のある言葉を脳内ハードディスクに蓄積することが大事」ということを書いた。身近な家族や知り合いの日常会話、たまたま居合わせた他人の何気ない言葉を頭の中のレコーダーを回して録音する方法を紹介したが、新聞にも無数の名言がちりばめられている。

このごろは新聞を開くと必ずといっていいほど『1Q84』の話題を目にする。「読んでみなくてはわからない」「紹介しきれない」と皆さん書かれているものの、連日の書評を積み重ねると、読んだような気になり、現物を手にする頃にはハングリーマーケットの裏返しの満腹状態になってしまいそう。映画『アメリ』を観たときのように答え合わせにならなければいいのだけど……と思いつつ、読者ごとに視点や印象が異なるのが面白く、つい記事を拾ってしまう。

村上春樹作品で最後に読んだのは、高校時代ぶりに再読した『ノルウェイの森』で、その前は『海辺のカフカ』だった。『海辺のカフカ』を読んだときに、「わたしは昔の作品のほうが好きだ」とあらためて思ったのだが、『パン屋襲撃』『1973年のピンボール』『TVピープル』を好んで繰り返し読んだ。

『ノルウェイの森』以来遠ざかっていた村上作品に『TVピープル』で再会したのだが、それを教えてくれたのは、通っていた京都の大学の近くにある古民家に暮らすエリック・ガワーさんというアメリカ人のフリージャーナリストだった。彼が日本語の小説を読むのを手伝うというアルバイトを知人から引き継ぎ、いくつかの短編を一緒に読んだ。他の小説は何を読んだか記憶が飛んでしまったが、『TVピープル』の記憶だけが突出している。これが最初の一篇だったのかもしれない。外国人は村上春樹が好きなのか、という発見とともに、その作品を楽しんだ。つっかえつっかえながらも漢字を読めるのだから、エリックさんの日本語レベルは相当なものだった。政治にもとても興味があり、わたしよりも日本の政治家をよく知っていた。趣味も多彩で、アルバイトというより、こちらが広い世界を教えてもらっている感覚だった。

そんなわけで、『1Q84』の記事を見るたびエリックさんを思い出し、今どうしているのだろうと気になり、「Eric Gower」で検索してみると、『日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?―普通の日本人が金持ちになるべきだ』『 エリックさんちの台所 (海外シリーズ)』『 英文版 エリックさんの新・和食 - The Breakaway Japanese Kitchen : Inspired New Tastes [Illustrated] (ハードカバー)』と3冊の著書にヒットした。本を出していることは意外ではないし、一冊目はエリックさんらしいと思ったが、料理の著書があるとは意外。料理本の紹介から行き着いたThe Breakaway Cookというサイトで、顔写真のエリックさんに再会する。20年近い歳月が経っているので、最初は「こんな顔だったっけ」と思ったが、しばらく眺めているうちに、だんだんエリックさんに見えてきて、そうだ、やっぱりこの人に違いないと確信に至った。

劇団Motherにいた宮村陽子のことをアメリカ人の友人が「Yoko Miyamura」で検索して発見し、「女優になっていたとはビックリ!」とメールが来た、というエピソードを彼女に聞いたことを思い出したが、エリックさんが料理研究家になっていたとは驚いた。彼が京都を去った後、彼の友人のこれまたエリックさんが新しい住人となり、わたしは引き続き日本語教師となった。2号さんは料理好きで、毎回レッスンの後にランチをふるまってくれたのだが、1号さんも料理をする人だったのか。

京都を去ったエリックさんは鎌倉のほうへ引っ越した記憶があるが、今は日本を離れてアメリカにいるらしい。おいしそうな料理とレシピが並ぶブログを眺めながら、書き込んだら驚いてくれるかしら、とドキドキしている。

2008年06月30日(月)  『蘇る玉虫厨子』洞爺湖サミットへ!
2006年06月30日(金)  中国語版『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』
2002年06月30日(日)  FM COCOLOで『パコダテ人』宣伝
2001年06月30日(土)  2001年6月のおきらくレシピ
2000年06月30日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)


2009年06月29日(月)  涙は世界でいちばん小さな海

昨日の夜、娘のたまがお風呂に入るときに泣き(このところ毎回ぐずる)、お風呂上がりに「たまちゃんの なみだ すっぱいよ。なめてみて」と言ってきた。「すっぱいじゃなくて、しょっぱいだよ」と訂正しながら、映画『子ぎつねヘレン』でヘレンが太一の涙をなめてあげた場面を思い出し、連想の糸をたどって「涙は世界でいちばん小さな海」という言葉を思い出した。

脚本を書き始めた頃、コンクール入賞が縁で初めてディレクターから「ラジオドラマのプロットを書いてください」と声がかかり、大はりきりで書いた。今だったら本命の一本に注力して、保険でもう一本という出し方をするけれど、当時は「やる気を見せることが何より大事!」だと鼻息を荒くし、10本ほどを送りつけた。帯に短し襷に長しの10本で、どれも採用には至らなかったが、その中の一本に「世界でいちばん小さな海」の話があった。この言葉を発見して、何かで使いたくてしようがなかったのだ。コピーライターとして勤めていた広告会社の仕事でも提案した覚えがある。

10年ほど前の出来事ですっかり忘れていたけれど、2才児のしょっぱい涙に思い出させてもらった。「世界でいちばん小さな海」というタイトルに惹かれているので、ドラマでも小説でも何か作品にしてみたい。まずは手っ取り早く、子守話で。一昨日の土曜日、子守のあてがなく、自宅でたまを見ながら原稿を書いていることになったのだが、たまは朝から「じんじゃ いく」と呪文のように唱え続け、「後でね」「これ終わったらね」と言っているうちに日が暮れ、それでも「じんじゃ」と食い下がっていた。罪滅しの気持ちを込めて。ママが約束を破ったお話。もうひとつは、遠い海へ去った友だちの話。

子守話84「せかいでいちばんちいさなうみ その1」 

こんどの にちようび うみに つれていってあげるねと
たまちゃんの ママは やくそくしていたのに
おしごとで うみに いけなくなって しまいました。
「ママの うそつき」
たまちゃんは かなしくて なみだが こぼれました。
なみだは しょっぱくて うみの あじが しました。

ひとつぶめの なみだで たまちゃんは 
きょねんの なつに いった うみを おもいだしました。
ふたつぶめの なみだで たまちゃんは 
さかなが あしの あいだを すりぬけた くすぐったさを おもいだしました。
さんつぶめの なみだで たまちゃんは 
うきわで なみに ゆられた きもちよさを おもいだしました。

「たまちゃん ごめんね」と ママが だきしめて
たまちゃんの なみだは かぞえきれなくなりました。
「いいの たまちゃんは いま うみに いるから。
 せかいで いちばん ちいさな うみで あそんでるの」と
たまちゃんは いいました。
すると ママの めからも なみだが ふってきて
たまちゃんの ほっぺたに ちいさな うみが できました。
ほんものの うみは つめたいけれど
おふろみたいに あったかい うみでした。

子守話85「せかいでいちばんちいさなうみ その2」

たまちゃんが かっていた かめの タートルが 
にげだして いなくなってしまいました。
「きっと タートルは ふるさとの うみに かえったのよ」と 
ママが いいました。
タートルのことを おもいだしていたら
たまちゃんは なみだが ぽろぽろ こぼれてきました。
「ママ なみだが しょっぱいよ」と
たまちゃんは なきながら いいました。
「なみだは せかいで いちばん ちいさな うみだから」と
と ママは いいました。
タートルの いる とおい とおい うみが
たまちゃんと つながった きが しました。
これから なみだが こぼれるたびに
たまちゃんは タートルのことを おもいだすでしょう。


ちなみにボツになった「世界でいちばん小さな海」のプロットを読み返すと、テーマは「誰の心にもある優しさ。悪人になりきれない人間」で、「タクシーに乗り合わせた妙な4人の交流」と一行コピーがある。老婆をひき逃げしたタクシー運転手が、老婆を後部座席に乗せて走っていると、逃走中の強盗と迷子の5歳児が乗り込んで来て……というドタバタ珍道中もの。死んだと思った老婆が息を吹き返し、大人二人を説教すると、おばあちゃんっ子の二人は号泣。それを見た5歳児が「なみだはせかいでいちばんちいさなうみなんだよ」と言い、タクシーが海へ向かう頃には家族のように打ち解けているという話。

2008年06月29日(日)  マタニティオレンジ304 「たらちねの母」と「たらちねの女」
2007年06月29日(金)  マタニティオレンジ137 おっぱいより朝ごはん
2002年06月29日(土)  パコダテ人大阪初日
2000年06月29日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)


2009年06月28日(日)  朝ドラ「つばさ」第14週は「女三代娘の初恋」

全26週156話の「つばさ」は半分にあたる第13週第78話までが放送終了。ストーリー上は前半後半と分けているわけではないけれど、明日の第14週第79話から後半となる。

第14週のタイトルは「女三代娘の初恋」。妻になっても母になっても女であるように、母になっても祖母になっても娘なのだなあとタイトルを見て思う。子どもの頃、母の恋を聞き出すのが好きだった。見合い結婚だった父とのドタバタコメディのようなデートの話に何度も笑ったが、わたしが生まれる前に他界していた祖母の恋の話もよく聞かせてもらった。何をするにも熱く激しく、恋愛もそうだったらしく、会ったことのない「恋するおばあちゃん」にかっこいい人という印象を抱いている。そんなわけで、第14週で千代の恋が明らかになるのは、なんだかうれしい。女に年齢制限はないのに、日本のドラマや映画は、おばあちゃんの恋を封印してしまっている傾向がある。とくに朝ドラでおばあちゃんを恋する存在として描くのは、珍しい気がする。

キーアイテム(アイテムなのか?)は大衆演劇。鏡花原作の「婦系図(おんなけいず)」を翻案した大衆演劇をラジオぽてとのイベントで上演するのだが、それに乗せて玉木家の千代(吉行和子)、加乃子(高畑淳子)、つばさ(多部未華子)の女三代の初恋を描いてしまうという「つばさ」の中でもとくにアクロバティックな展開。舞台用の台本に本番の大胆なアドリブが加わり、それでいて筋の通った一本の芝居に見えて、それが劇中劇として機能する……という脚本が組み上がっていくのを、魔法を見るような思いで見ていた。これまた離れ業な演出は、1〜3、6、10週を担当したチーフディレクターの西谷真一さん。

人物相関図、練習風景など、お芝居がらみの小ネタも満載。どの登場人物が劇の中でどの人物を演じるか、キャスティングの過程やそれぞれのキャラクターの活かし方にニヤリとさせられる。演出を買って出るのは、なんとあの人。演出モードの彼女の新境地も楽しいし、つばさワールドの住人の新たな魅力をそこかしこに発見できる一週間。着物姿のみなさんも新鮮で、つばさも真瀬も麻子も和装がよく似合う。川越キネマのホールで演じられる大衆演劇の本番は、ナマで見たい!と思わせる気合の入った熱演。のど自慢のときからさらに進化したホールにも注目。

新しい登場人物は、品のある渋い存在感を放つ葛城清之助(山本學)。文化振興財団の理事長としてラジオぽてとに現れる彼には、別な顔が……。葛城さんに注目して観ると、よりハラハラ感が高まって楽しめるかも。

続く第15週「素直になれなくて」には、「ベッカム一郎の朝イチ! 豪快シュート」のベッカム一郎(麒麟の川島明)が、ついに登場。今井雅子のクレジットも毎日出るので、第14週から引き続きお楽しみください。

2008年06月28日(土)  読んで満腹『おとなの味』(平松洋子)
2006年06月28日(水)  ロナウジーニョとロナウドは別人?
2002年06月28日(金)  シンデレラが出会った魔女の靴


2009年06月26日(金)  江ノ島の大道芸人「のぢぞう」さん

遺伝というものがどの程度あてになるのかわからないけれど、娘のたまを見ていて「わたしの子だなあ」と感じるのは、「芸好き」なところ。マジックや大道芸を見るのがわたしはとにかく好きで、出先のデパートや路上で遭遇すると予定を大幅に変更して見入ってしまう。「愛・地球博」でもいちばん心惹かれたのはそこかしこで繰り広げられていた大道芸だった。その趣向を引き継いだのか、たまは素人手品に歓喜し、シルク・ドゥ・ソレイユに身を乗り出し、わたしはその場にいなかったけれど、猿回しを見たときには異様な興奮ぶりだったという。

先日江ノ島へ遊びに行ったとき、わたしが条件反射的に大道芸に足を止め、ダンナに肩車されたたまがまばたきを忘れたかのように釘づけになり、そのまま最後まで見ることになった。「のぢぞう(野地蔵)」さんという大道芸人で、最初はパントマイム風のパフォーマンスをされていたが、夕方で観客がまばらだったことから、例外的という口調で「しゃべります」と宣言し、トークを交え出した。最初は風船で動物等を作る芸で、見始めてすぐに、目が合って、かもめをいただいた。それから大きな糸巻きのようなコマを空中に上げる芸や、空中の定位置を動かないトランクを引っ張るパントマイム芸があり、観客のカップルをアシスタント役に巻き込んでのジャグリング芸。このカップルに贈った「ハートの止まり木に止まった二羽のキスバード」の風船がとてもかわいかった。

印象に残ったのは、最後の催眠術。観客から引っ張ってこられた若い男性4人が「催眠術」にかかって、「背もたれ90度倒し空気椅子」の状態で静止する。バランス力学的にこんなことが可能なのか、とこちらは瞠目した。間の取り方が絶妙で、何ともいえない味があるのぢぞうさん。気になって調べてみると、江ノ島の方で、横浜大道芸倶楽部というアマチュアサークルの事務局長さんとのこと。

大道芸といえば、20年ほど前に旅行先のニューオーリンズで見た光景が忘れられない。観客から募ったボランティア13人を地面に這いつくばるお祈りのポーズで並べ、何が始まるのかと思ったら、黒人の男の子が助走をつけて、その上を前方宙返りで飛び越えてしまった。走り幅跳びでも驚く距離を前宙で! あまりのことにしばし呆然、その後で拍手喝采。相撲でいえば座布団を投げたくなる気分でドル札を帽子に放り込んだ。

さて、のぢぞうさんにもらった風船のかもめをたまはすっかり気に入り、わらしべ長者の少年よろしくぶんぶん振り回して江ノ島を後にしたのだが、そのとき大声で歌っていたのが、「とんぼのめがね」。たまは、かもめではなくとんぼだと思った様子。というわけで、今夜の子守話は、「かもめかもね」のお話。風船は日に日に張りを失い、やがてすっかりしぼんで、かもめに見えなくなってしまった。風船がしぼむのは物悲しいけれど、生き物の形をしていると、なおさら哀愁を感じる。

子守話83「かもめかもね」

だいどうげいにんの おにいさんが たまちゃんに
みずいろの ふうせんで つくった とりを くれました。
「これは かもめよ」とママは いいましたが
たまちゃんは かもめを しりません。
「みずいろだから とんぼさんだ」
たまちゃんは そういって 
とんぼのめがねの うたを うたいだしました。
「とんぼの めがねは みずいろめがね
 あおい おそらを とんだから とんだから」
みずいろの ふうせんは
「とんぼかもね。でも、かもめかもね」と
こまった かおを しながら 
たまちゃんに ぶんぶん ふりまわされて
そらを とんでいました。

そのひから まいにち たまちゃんは
みずいろの ふうせんと あそびました。
おさんぽも おかいものも いっしょに でかけます。
「とんぼさん とんぼさん」と たまちゃんが よぶたびに
「かもめかもね」と みずいろの ふうせんは こたえました。

ふうせんの なかの くうきが すこしずつ ぬけて
みずいろの ふうせんは しょんぼりして いきました。
たまちゃんが ぶんぶん ふりまわしても
もう そらを とびまわる げんきは ありません。

あるひ ママが ずかんの ページを ひらいて いいました。
「たまちゃん これが かもめよ。
 ほら ふうせんの とりさんに よくにているでしょう」
たまちゃんは やっと みずいろの ふうせんが
とんぼじゃなくて かもめだと わかりました。
そして 「かもめさん かもめさん」と はじめて
ほんとうの なまえで よびかけました。
でも ふうせんは すっかり くうきが ぬけて
ぺしゃんこになって ゆかに ひっついていました。
「かもめかもね」とは いってくれませんでした。

2008年06月26日(木)  知らなかった、大坂夏の陣『戦国のゲルニカ』 
2007年06月26日(火)  マタニティオレンジ136 サロン井戸端
2004年06月26日(土)  映画『マチコのかたち』


2009年06月25日(木)  眞木準さんのコピーが大好きだった

朝刊でコピーライターの眞木準さんが亡くなったと知る。享年60才。まず名前の活字が目に飛び込んだが、まさか訃報記事だとは思わなかった。

コピーライターとして広告会社に入社したものの、コピーのことを何もわかっていなかった頃、TCC(東京コピーライターズクラブ)のコピー年鑑や月刊誌のコマーシャルフォトや宣伝会議に載っているコピーを片っ端から読んで、いいコピーとはどういうものかを研究した。「これ好き」と思ったコピーが、かなりの確率で眞木準さんの書いたものだった。「わたしは、この人のコピーが好きだ」と学習するまでに時間はかからなかった。その好みは、コピーライターの経験を積んでからも変わらなかった。

いちばん好きだったのは「恋が着せ、愛が脱がせる」という伊勢丹のコピー。恋愛とファッションの関係をこんなに的確に、そして美しく、品よく、さらには伊勢丹というブランドらしさも匂わせて、短く鋭いコピーに閉じ込めてしまった。この一行で、いろんな恋を思い出したり、思いめぐらせたりしてしまう。そんなチカラを秘めたすごいコピーだった。

TCCコピー年鑑の記念号で、会員が「自分の書いたいちばん好きなコピー」を挙げる特集があって、眞木さん本人は何を選んだかと注目したら、「夏野(娘の名前)」と書かれていたように記憶している。その年鑑が手元にないので確かめられないけれど、わたしの記憶が正しければ、出産どころか結婚もしていなかったその当時は、マイベストコピーに娘の名前を選ぶということが変化球のように感じられた。でも、今は、むしろ素直で素敵だと思える。お話しして、人柄に触れてみたかった。

「お話しして」と書いてみて思い出したのだけど、眞木さんとお話しする機会が一度あった。宣伝会議賞というコピーのコンテストで入賞したとき、その授賞パーティにいらしていて、名前を呼べば振り返るようなすぐ近くに憧れのその人がいた。審査員の一人だったのだろうか。会場で出会った他の受賞者に「眞木さんのファンなんだけど、声かけようかな、どうしよう」と相談し、「迷ってないで、声かければいいじゃない」と背中を押されたことは覚えているのに、声をかけたのか、かけなかったのか、結果が記憶から抜け落ちている。おじけづいて逃げたのかもしれないし、言葉を交わしたとしたら、舞い上がって、頭の中がマッシロになったのだろう。

コピーライターから脚本家という道に進んでしまったけれど、眞木準さんの書くコピーから受けた刺激は、今脚本を書く上でも活きていると思う。言葉を面白がる、それが、言葉を面白くする。そんなことを片想いの師匠に教わった。感謝を込めて、合掌。

2008年06月25日(水)  整骨院のウキちゃん7 赤道ぐらい知ってますよ編
2007年06月25日(月)  割に合わない仕事
2005年06月25日(土)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学最終日
2002年06月25日(火)  ギュッ(hug)ギュッ(Snuggle)
2000年06月25日(日)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)


2009年06月24日(水)  江ノ島の思い出「たまえのしまをゆく」

少し前に友人セピー君とわが家で江ノ島へ遊びに行ったときにセピー君が一眼レフで撮った写真が、CDに焼いて送られてきた。CDのタイトルが「たまえのしまをゆく」というのがチャーミング。写真を再生しながら楽しかった初夏の半日を懐かしく振り返った。

まずは江の電長谷駅近くのDAY'sというカフェで腹ごしらえ(このバーガーの写真はわたしが撮ったもの。ボリューム満点!)。子連れにも感じが良く、対応も慣れていて助かった。



セピー邸へ向かう途中の海で、娘のたまは野生に帰り、大はしゃぎ。おむつまでびしょびしょになりながら波とたわむれ、波打ち際の海草を見て「おばけー!」と逃げ回っていた。絵本『うみべのハリー』でハリーが海草をかぶった姿をみんなが「おばけ」と言う場面があるけれど、それを覚えていたのかも。セピー君の写真がきれいなので、大きめサイズで。

成就寺で紫陽花を見てから、江の電で江ノ島へ。モーターボートに乗った後、エスカー(有料エスカレーター)を乗り継いで山頂へ。道すがら、「じゃこさつまあげ」「じゃこアイス」「じゃこお好み焼き」「じゃこ餃子」などじゃこ尽くしの誘惑のなか、「じゃこコロッケ」を食べる。


最近整備されたという山頂は花いっぱいで楽園のよう。わたしが「ここでお茶したい!」と一目惚れしたロンカフェ(LON CAFE)というフレンチトースト専門店は一時間待ち。名前を告げて、展望台へ。ここでもたまは再び野生に帰り、ぐるぐると走り回り続ける。待望のロンカフェは期待に違わぬ雰囲気と味で大満足。時間が止まったような、いつまでも佇んでいたい気持ちのいいお店だった。

山頂から帰るときに、「のぢぞう」さんという大道芸人のパフォーマンスをやっていて、くぎづけになってしまった。この話は、また日をあらためて。

2008年06月24日(火)  カレーとコーヒーとチョコレート
2007年06月24日(日)  マタニティオレンジ135 うっかりケーキでたま10/12才
2005年06月24日(金)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学7日目
2004年06月24日(木)  東京ディズニーランド『バズ・ライトイヤー夏の大作戦』
2000年06月24日(土)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/27)


2009年06月23日(火)  人脈が金脈を呼ぶ魔女田式錬金術

朝ドラ「つばさ」の案内メールの返信で、「女が作る映画誌」シネマジャーナルの景山咲子さんからひさしぶりに連絡をいただいた。映画『風の絨毯』の公開のときにプロデューサーの益田祐美子さんに紹介されて、もう5年経つ(>>>2003年5月18日(日)風じゅーの風よ、吹け!)が、先週土曜日に公開された映画『築城せよ!』のインタビューで益田さんに再会し、そのことを日記に書いた際に「今井さんのお名前を出しました」と報告してくださったのだった。

早速、シネマジャーナルのスタッフ日記の2009年6月第2週をを訪ねてみると、「『築城せよ!』の古波津陽監督とプロデューサー益田祐美子さんのインタビューに同席」とあり、益田さんを「脚本家の今井雅子さんが魔女田さんと呼ぶように、魔法のような微笑でお金を生み出す錬金術師」と紹介している。魔女田さんとあだ名をつけたのは『風の絨毯』で益田さんとともにプロデューサーを務めた山下貴裕さんで、せっせと広めているのはわたしだが、日記のこのくだりを読んで、思わず吹き出してしまった。というのも、先日の今井雅子日記(>>>2003年6月19日(金) 報酬系とドーパミンと子守話80話)で『築城せよ!』公開をお知らせしたなかで、わたしは「プロデューサーの魔女田さんこと益田佑美子さんの錬金術にも磨きがかかり」と書いていたから。一卵性双生児のような表現の一致が景山さんと以心伝心のようで、おかしくなった。

思わぬところで、思わぬ形で人と人をつなげてしまう魔女田さん。さらにすごいところは人脈と金脈をつなげてしまうところ。「金持ちより人持ち」になりたいとわたしは思っているけれど、魔女田式錬金術では、「人持ちは金持ち」の法則が成立する。今回の『築城せよ!』では製作費3億5千万円を集めてしまったが、約800社にお金を出させたのもすごいけど、断られたのが一社というのも、これまたすごい。「キスがいい? 寄付がいい? って聞くと、みんなあわてて寄付してくれる」と冗談のようなことを本気で言う。

シネマジャーナルの『築城せよ!』インタビューでもプロデューサーというより魔女的な発言を連発。「映画は作るときはお金がかかるけれど、維持費がかからないんですよ」などと目のつけどころが面白い。自主映画の『築城せよ。』を劇場版にしようと思い立ち、実現するまでの思考回路と決断の早さと行動力も人間離れしている。天然ボケキャラも含めて、天然記念物として保護したい。古波津監督が吸引力バツグンの魔女田パワーにびっくりしながら巻き込まれていった様を想像していたら、こちらも愉快になり、ますます『築城せよ!』を観たくなった。


今日の子守話は、戸田幸四郎さんの『リングカード・どうぶつ』がヒント。表に動物のイラスト、裏に名前が日本語と英語で書いてあるカードで、「いたちはウィーズル(weasel)だって」などと娘のたまと親子でふむふむ見ているうちに、「かば」の英語名が「ヒポパタマス(hippopotamus)」だと知った。「ヒポパタマスの中に、『たま』が入っているね」と言うと、たまがうれしがって「ひぱたます」と舌足らずに繰り返したので、英語を使いたがるカバの話を即興で作って聞かせた。外資系の会社に勤めていたこともあって、やたら英語を混ぜる人はまわりにずいぶんいたけれど、ある日「中途半端に英語ができる人ほど、不用意に英語を使いたがる」と帰国子女の友人に言われて、気をつけて観察してみると、本当にその通りだと納得した記憶がある。言葉はコミュニケーションの道具。使っても使われるな、の教訓を込めて。

子守話82「おバカなカバのヒポパタマス」

たまちゃんが みちばたで カバさんに あいました。
「こんにちは カバさん」と あいさつすると
「わたしは カバではなく ヒポパタマス ですけど」と
ヒポパタマスと なのる カバさんは ふんぞりかえって いいました。

「まちがえて ごめんなさい」と たまちゃんが あやまると
「きにしないでください。ネバーマインド」と
ヒポパタマスと なのる カバさんは もっと ふんぞりかえって いいました。
ふんぞりかえりすぎて せなかが いたくなって
「あいたたた アウチ!」と いいました。
カバさんの いうことは たまちゃんには はんぶんぐらいしか わかりません。

「えいごを しらないなんて シリーですね。おバカさん」
ヒポパタマスと なのる カバさんは そういって さかだちしました。
「カバさんが さかだちしたら おバカさんだ!」と たまちゃんが いいかえすと
「わたしは ヒポパタマスですから さかだちすると スマタパポヒです」と
カバさんは すずしい かおで いいました。

たまちゃんは なんだか つまならなくなって
「バイバイ カバさん」と てを ふって たちさりました。
「なんだ えいごを しゃべれるじゃないですか。またね。シーユー」と
ヒポパタマスと なのる カバさんは さいごまで
たまちゃんの しらない ことばを つかいたがりました。

ヒポパタマスと たまちゃん。なまえは ちょっと にているけれど
ざんねんながら おともだちには なれませんでした。

2008年06月23日(月)  念ずれば、柿の葉寿司 
2007年06月23日(土)  「イラン・ジョーク集」のモクタリさんと鎌倉ナイト
2005年06月23日(木)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学6日目
2000年06月23日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/27)


2009年06月22日(月)  手は焼けるけど世話も焼きたい、たま2才10か月。

イヤイヤとイジワルに拍車がかかり、娘のたまは、あと2か月で3才(ということは、『ぼくとママの黄色い自転車』もあと2か月で公開)。とどまるところを知らない間の2才児ぶりは3才になれば落ち着くのだろうか。口もずいぶん悪くなり、最近の口癖は「もう、しらないよ」と「たまちゃん、わるいよ」。親のほうが「知らないよ」と突き放したくなるが、思い通りにならないと、「しらないよ」とそっぽを向く。「わるいよ」もこっちの台詞だが、食事のときにわざとお行儀の悪いことをして、自分から「たまちゃん、わるいよ」と開き直る確信犯。不良と書いて「ワル」と読む、に憧れているのか。

記憶力と言葉が発達したおかげで、親を言い負かすこともふえた。「ママ、さっき○○っていったじゃない」と理屈で追い詰められることも、しばしば。食べものに関しては一時間前に聞いた話だってしっかり覚えていて、「きょう ベーグルちゃんがとどいたって いってたよね?」と冷蔵庫を探りにくる。

まだオムツで、トイレトレーニングはすっかり後退。ゴールデンウィークに母乳を卒業した途端、指吸いが復活して、いつ見てもチュパチュパ。昨日偶然テレビをつけたら地元のケーブルテレビの保育園訪問で、たまの保育園が映ったのだけど、昼寝の時間に指を吸っているのは、たまだけだった。「赤ちゃんだねえ」とからかうと、「たまちゃん、あかちゃんよ」とこれまた得意の開き直り。そのくせお世話ごっこが大好きで、人形たちのお母さん役や先生役をやりたがる。人形をオイルサーディンのように並べ、布団代わりのタオルをかけ、トントンとたたきながら寝かしつけてあげていたりする。手は焼けるけど、世話も焼きたいお年頃。

今日の子守話は、日曜日に保育園の前を通り過ぎたときの会話がヒント。たまが「きょう ほいくえん おやすみなんだよ」と言い、「お休みの日の保育園は何しているのかな」と応じた自分が保育園を擬人化したのを面白く思ったのだが、たまは「ほいくえんは おやすみしているよ」と自然に答えた。「おやすみする」という動詞がアクティブな響きに聞こえて、「日曜日の保育園ではみんな何をしているんだろう」と想像した。『おもちゃのチャチャチャ』の保育園版のようなお話。

子守話81「にちようびの ほいくえん」

きょうは にちようび。ほいくえんは おやすみです。
おやすみの ひの ほいくえんは だれもいなくて とっても しずか。

と おもったら 

おやおや にぎやかな こえが しますよ。
ちょっと のぞいて みましょうか。

だれも いない はずの きょうしつで
つみきあそびを しているのは おにんぎょうの ぽぽちゃんたちです。
ぽぽちゃんたちは いつも ほいくえんの こどもたちが
つみきで あそぶのを うらやましいなあと おもっているのです。

つみきあそびに あきると ぽぽちゃんたちは おせわごっこを はじめました。
「わたし おかさん やりたい!」「わたしも」「わたしも」
みんな おかあさんやくを やりたくて しかたありません。

おすもうごっこで ゆうしょうした
あかい かみのけの ぽぽちゃんが おかあさんやくに えらばれました。
そして いつも こどもたちに されているように
ほかの ぽぽちゃんを だっこしたり 
ごはんを たべさせたり ふくを きがえさせたりしました。

おせわごっこの つぎは おにわに でかけます。
ベランダから すべりだいを すべりおりて すなばに ちゃくち。
すなの プリンや ケーキを つくって パーティごっこです。
ぽぽちゃんたちの ようふくも ぬので できた てと あしも 
あっというまに どろんこに なりました。

みんなが やってくる げつようびまでに 
もとどおりの きれいな ぽぽちゃんに ならなくては なりません。
ベランダに もどって せんめんだいで ジャバジャバ プールあそびです。

どろが おちて きれいになると こんどは みずを とばします。
みんなで わになって ぐるぐる まわれ まわれ。

まわりつかれたら おひるねの じかんです。
きょうしつで ひなたぼっこしながら ぽぽちゃんたちは すやすや。
ねむっている あいだに ようふくも からだも すっかり かわきました。

おひるねから さめると ぽぽちゃんたちは はこの おうちへ かえります。
それから げつようびの あさまで もうひとねむりするのです。

2008年06月22日(日)  マタニティオレンジ302 英語も飛び出す、たま1才10か月
2007年06月22日(金)  マタニティオレンジ134 わが家語
2005年06月22日(水)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学5日目
2004年06月22日(火)  はちみつ・亜紀子のお菓子教室
2003年06月22日(日)  不思議なふしぎなミラクルリーフ
2002年06月22日(土)  木村崇人「木もれ陽プロジェクト」
2000年06月22日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)
1998年06月22日(月)  カンヌ98 3日目 いざCMの嵐!


2009年06月21日(日)  朝ドラ「つばさ」第13週は「恋のバリケード」

今日は父の日。日頃娘のたまの子守でお世話になっているダンナ父にお礼をと思い、「今からうかがおうと思いますが、いらっしゃいますか」と電話。切ったついでに大阪の父にも電話しようと思い立ち、かけてみると、「おう」と気のない返事。声もいつもと感じが違うが、「お父さん?」と聞くと、「ふむ」と答える。落ち着きのない父の妙な落ち着きが気になる。

わたし「雅子だけど」
父(電話)「どうした?」
わたし「そっちこそ、なんちゅうしゃべり方してるん?」

こちらは大阪弁だが、父のイントネーションはなぜか標準語。

わたし「もしかして……巣鴨のお父さん?」
父(電話)「ああ。そうだよ」

なんと、「父」違い! 大阪の父にかけたつもりが、よくかけるダンナの実家の番号を無意識にプッシュしていたらしい。電話を切ったと思ったら、またわたしからかかってきたので、ダンナ父は「おう」「どうした」というそっけない応対となったのだった。「なんちゅうしゃべり方」を責められるべきはこちらのほうで、電話の前で平謝りだったが、嫁のそそっかしさには慣れているダンナ父は今さら驚かず、電話の向こうで苦笑していたようだった。

さて、明日からの朝ドラ「つばさ」第13週は、玉木家の父・竹雄(中村梅雀)とお隣の宇津木家の鳶の頭・泰典(金田明夫)が対立。川越キネマに下宿を始めた翔太(小柳友)、翔太にまだ想いを残す万里(吉田桂子)、万里に想いを寄せる知秋(冨浦智嗣)……の化学反応で、仲良しの宇津木家と玉木家が『ロミオとジュリエット』のモンタギュー家とキャピュレット家のような犬猿の仲に!? さらに泰典、佑子(平岡由里子)、加乃子(高畑淳子)の遠い過去が明らかになり、ますます混乱。ご近所ネタでよくぞここまで話が転がるものだと打ち合わせに出ながら感心(毎回目からウロコではありますが、この週はとくに)した、「つばさ」の中でもとくに「つばさ」らしい熱烈でパワフルな一週間。

タイトルは「恋のバリケード」。バリケードがタイトルになる朝ドラも珍しいけど、本気の朝ドラ「つばさ」の場合は、バリケードが比喩では終わらない。今週のキーアイテムは、「バリケード」、そして「傷」でしょうか。毎週いろんな人をつなぐ働きをするヒロインつばさ(多部未華子)は、愛の力で傷を手当てしているとも言えるかも。過熱した騒動の後は、余熱でほんのりあったかい気持ちに。演出は第12週から2週連続の大杉太郎さん。

これまで朝ドラを観ているときは意識していなかったけれど、春からの前期は26週156話、お正月をはさむ後期は25週150話あるので、前期放送の「つばさ」は早いもので(と毎週書いている気がするけど)、第13週が終わると折り返しとなる。マラソンと同じく、「ここまで来たか」の感慨を味わうとともに、「あと半分」と気が引き締まる。

【おしらせ】出張いまいまさこカフェ12杯目掲載「buku」配布中

先日の日記(2009年06月18日(木)「出張いまいまさこカフェ」を支える「感想力」)にも書いたけれど、6月19日発行のbuku21号に掲載された12杯目で「出張いまいまさこカフェ」は連載3年。今回のタイトルは「映画鑑賞で相性診断」。タイトルに絡むくだりの部分で、「おや」となる。文字校正したときに見落としていた、余計なひと文字が……。やはり校正は声に出して読まなくては。気づかれた方、ここだな、と苦笑してやってください。

他の記事も読み応えたっぷり。インタビューは『ごくせん』本城健吾役の石黒秀雄さん(表紙写真も)と『ディア・ドクター』西川美和監督。池袋の映画館などで配布中。毎月29日に持参すると、池袋の映画館で映画が1000円割引に(1冊で2名まで)。

2008年06月21日(土)  親目線で観た劇場版『相棒』
2007年06月21日(木)  マタニティオレンジ133 おおらかがいっぱい
2005年06月21日(火)  『子ぎつねヘレン』ロケ見学4日目
2002年06月21日(金)  JUDY AND MARY
1998年06月21日(日)  カンヌ98 2日目 ニース→エズ→カンヌ広告祭エントリー

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