2009年06月18日(木)  「出張いまいまさこカフェ」を支える「感想力」

少し前、新聞で酒井順子さんが「編集者に求められるのは『感想力』だ」という趣旨のことを書かれていて、紙面を前に大きくうなずいてしまった。身を削って書いた原稿への反応を、送った本人はドキドキそわそわしながら待つ。「受け取りました」だけのそっけない返事だと、「で、どうだったの?」「ダメだったのかしら」と気になるが、その報告さえ来ないと「100時間かけた労作が黙殺!」「よっぽどコメントに困っているのか」と気を揉んだり、気に病んだりする。

よくあることで、相手は単に忙しかったり忘れていたりするのだが、こちらが思うほど原稿が重く扱われていないことは物語られる。そんななかで心のこもった「感想」が送られてくると、「砂漠にダイヤモンド!」のきらめきを放ち、「この人の仕事が最優先だ!」という気持ちになる。ダメな原稿を褒めて欲しいのではなくて、こちらが原稿を書いた心意気を相手が引き受けたことが伝わる一言が欲しいのだ。

いい感想をくれるといえば、エッセイ「出張いまいまさこカフェ」の連載でお世話になっている池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuの編集者・北條一浩さん。原稿を送ると、「受け取りました」の返信とともに、毎回短いけれど気のきいた感想を送ってくださる。「面白かった」だけでなく、どこがどう面白かったか、具体的に書いてあるので、ありがたい。たとえば、

「オレオクッキー」と「大気圏」という比喩がすごく面白いです。「なるほどな」というより、むしろ「オレオクッキー」や「大気圏」について考えさせられるというか。言ってる事、わかりますか(笑)?

これは〈オレオクッキーにたとえれば、クッキーの部分が打ち合わせ、クリームが執筆。それぐらいホン作りに占める打ち合わせの比重は大きい〉〈白紙の状態から方向性を探る企画段階の打ち合わせでは、「どんなホンにしようか」を念頭に置きながら、核心から少し離れた大気圏あたりの話をすることが多い。(中略)そんな雑談のなかに、「それで行こう!」と光る発見があり、一気に大気圏突入となることはよくある〉というくだりを面白がってくれたもの。同じメールの中で、感想に続けて、

「いただいた原稿でまったく違和感ないのですが、1点だけ。「ハコ書き」とは何か、そこだけサラッと、カンタンな説明というか形容をつけていただけるとうれしいです。その分、文字数が増えても、どこかで調整していただいてもどちらでもかまいません。あくまで一般の、業界外の人にも読んでほしいので。

と修正の依頼があったが、こういう心配りのきいた書き方をされると、「喜んで!」と快く直しに取りかかれる。北條さん自身が原稿を書く人で、bukuではインタビュー記事も担当されているので、書き手の立場がよくわかるのだろう。わが身を振り返ると、人の原稿にどれだけの敬意を払えているだろうか。北條さんの感想力を見習いたい。

6月下旬発行のbuku21号に掲載される「出張いまいまさこカフェ」12杯目は、前回書いた毎日映画コンクールのスタッフ部門2次選考会の続編で、タイトルは「映画鑑賞で相性診断」。北條さんからの感想は〈丁々発止の選考の様子から、「シネマお見合い」にストンと落すところがとても面白かったです。しかし、濃い時間を過ごされましたね!〉。bukuは3か月に1回発行だから、12杯でまる3年連載が続いたことになる。毎回気持ちよく乗せてくれる編集者の感想力の賜物だ。

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