2009年11月19日(木)  鴻上尚史さんの『恋愛戯曲』ついに映画化

いつか目を覚ますかもしれないという希望を抱いて、今井雅子の書棚で眠り続ける企画たち。そのひとつ、鴻上尚史さん作・演出の『恋愛戯曲』が、映画化の羽を得て、旅立って行った。 わたしが脚本家デビューして何年も経たない頃に、戯曲から映画化脚本をおこす仕事に関わらせてもらったのだが、なかなか映画化の道が拓けなかった。でも、その後もプロデューサーと鴻上さんは粘り強く道を探り、ついに実現させた。その熱意に拍手。脚本は結局鴻上さんが書かれたのか、わたしの書いた脚本は採用されなかったけれど、原作そして鴻上さんの一ファンとして、映画化作品を応援したいと思う。 雲の上の人だった鴻上さんとの打ち合わせは夢のようだったし、2006年の舞台再演時には劇場パンフレットで鴻上さんと対談もさせてもらったし(>>>2006年05月19日(金) 鴻上尚史さんと「恋愛」対談)、楽しい思い出をたくさんもらったので、とても親しみを覚えている。 『恋愛戯曲』は魅力的なキャストを得て、ただ今撮影中とのこと。どうか力強く羽ばたいて、たくさんの人に届いてほしい。

2008年11月19日(水)  美しさを感じる心
2002年11月19日(火)  白い巨塔


2009年11月18日(水)  「黙らせろ」と言われても

デニーズで娘のたまと二人で夕食。なるべく外食は避けようと思っているのだけど、今日は一日中パソコンに向かい、冷蔵庫も空っぽで、買って帰るか外で食べるかの選択となった。

デザートにカシスのシャーベットを注文したのが失敗だった。「半分こね」と言い含めたのに、わたしに似て食い意地の張っているたまは独り占めしようとし、譲ればいいのをわたしも横取りしようとし、最後の一口をわたしが食べた瞬間、「うわ〜〜〜〜ん」と店内に響き渡る声で泣かれてしまった。

泣くほどのことじゃないでしょとなだめ、店員さんの視線が背中に刺さるのを感じつつ、さっさとお茶を飲んで引き上げようとお茶を流し込んでいると、「なんで黙らせないんだ!」と客のおじさんに抗議を受け、たまはさらに泣く。すみません、すぐ出ますから……とひたすらぺこぺこ謝りながら席を立った。待ち合いロビーに保育園で同じクラスの女の子を見つけると、たまはぴたりと泣き止んだが、彼女の一家が呼ばれて席に案内されると、離れたくなくて、また泣いた。やれやれ。

わたしも子どもを産む前は「なんでいつまでも泣かせてるんだろ」と不快に思ったり腹を立てたりしたけれど、黙らせる方法があればとっくに試しているのだ。ちゃんと叱ってるし、なだめているし、決して手をこまねいているわけではないし、そこに怒鳴りこむのは火に油を注ぐだけだ。わたしにも泣かせた責任はあるし、静かな食事を邪魔してしまったことは申し訳ないし、わたしたちが悪いことは確かなのだけど、もう少し大らかさが欲しいと願うのは贅沢なのだろうか。なんだか淋しいなと思ったら、わたしも泣きたくなった。

小豆島へ行った帰り、高松郊外のお風呂屋さんでもたまが洗い場で転んで大泣きして、地元のおばあちゃんに叱られたことがあった。でも、そのとき、その人は「いつまでも泣かせていると母親の器量が疑われるよって」とわたしを叱った上で、泣きじゃくるたまに「どうしたどうした?」と声をかけ、「痛かったんか? よしよしもう大丈夫」となだめ、わたしの援軍になってくれた。問題を分かち合って解決をはかろうとしてくれたお節介が心強く、ありがたかった。

ただでさえ子どもに泣かれて孤独を味わっているところに「黙らせろ」と突き放されると、母親は絶望的に孤立する。「一緒に黙らせよう」と分かち合ってもらえたら、母親は孤立しなくて済む。

何を食べたんだか忘れてしまうほどくたくたになって帰宅し、「たまちゃん、泣くんだったらもうデニーズには行けないね」と娘をなじると、「そうだねえ。ドラえもんのおみせにしよっか」とけろっとして言う。デニーズがダメなら、ココス。そんな問題じゃないんだってばと力がぬけた。

2006年11月18日(土)  アーロンバシャ(Aaron Basha)のBaby Shoes


2009年11月17日(火)  八百屋さんで「ママください」と父のホック

朝食は大阪土産の551蓬莱の豚まん。前回京都駅で行列に屈して買いそびれた雪辱を果たし、堺の実家から持って来たビニール袋に厳重に梱包してにおい封じをして東京に持ち帰った。ほかほか蒸したてではなくチルドにしたのもにおい対策でもあり、新幹線の車内で手を伸ばしたくなる誘惑を断つためでもある。かわりに中華ちまきを新幹線車中での夕食に。海鮮味と、栗としいたけと鶏肉。二つで700円超えとは、けっこういい値段だった。コストパフォーマンス的にも、551といえば、やっぱり豚まん。

わたしが大阪へ発つとき、顔をぐしゃぐしゃにしてぐずった娘のたまは、その後は機嫌良くやっててくれたらしい。昨日は保育園の帰り、パパとなじみの八百屋さんに立ち寄り、「ママください」と言ったとか。それだけ聞くと切ない話でもあるが、明るく弾ける調子だったそうで、しっかり八百屋さんの笑いを取ったというからたくましい。留守番で父と娘の絆も深まるのは、いいことだ。

父と娘といえば、昨日の朝、わたしのワンピースの背中のファスナーが「開いているで」と父イマセンが指摘した。しょっちゅう考え事をしているせいか、ファスナーが途中で止まることがよくある。脚本を学ぶ200人ほどの学生さんを前にパネルディスカッションをやったとき、拍手で迎えられて壇上に来てから気づき、あわてて「ファスナーを閉め忘れるというト書きで登場人物のそそっかしさを描ける」とネタにした。昨日もそのときと同じワンピースだったが、父のおかげで中学生にだらしない大人を印象づける失態を免れた。

帰宅してそのワンピースを脱ぐとき、普段自分では面倒くさがって省略するファスナーのてっぺんのホックが引っかけられているのに気づいた。父にファスナーを上げてもらったのも初めてだった気がするが、がさつなおっちゃんという印象の父がホックをきっちりと留めたことが意外だった。40年近く父娘をやっていても、新鮮な驚きがある。

2007年11月17日(土)  出張いまいまさこカフェ6杯目 「脚本で食べていく」
2006年11月17日(金)  関西映画『メアリ』!?
2005年11月17日(木)  『天使の卵』ロケ見学4日目 電車でGO!
2002年11月17日(日)  学園祭


2009年11月16日(月)  金蘭千里中学校講演「宝物はあなたの中にある!」


大阪にある私立の金蘭千里中学校にて講演。『子ぎつねヘレン』も応援してくださった今井雅子ファンの方のご紹介というわけで、その方が持参されたヘレンちゃんを手に記念撮影。

2年生の皆さんに「宝物はあなたの中にある!」をテーマにお話。先生方の他に父兄の方も何名か。地元大阪出身で、今日は実家のある堺から泉北高速に乗って天下茶屋で堺筋線に乗り換えて来ました、と大阪弁で語り始めると、親近感を持ってもらえた様子。


講演の内容は2年前に大学生を前に話した内容(>>>2007年10月26日(金) 愛知工業大学で「つなげる」出前講義
)をアレンジ。前回は作品ごとに「アイデアをどう結びつけたか」を話したが、今回は事前に授業で『子ぎつねヘレン』を観てくれているとのことで、ヘレンを引き合いに出しながら、「原作から脚本、映像になるまで」を説明したり、脚本開発や撮影の裏話を披露したりした。最初に刷った脚本で役者さんを口説き、決まった役者さんに合わせて脚本を書き直すこと(これを「あて書き」と言う)、ロケハンに行ったら太一とヘレンの家出先に想定していたゲームセンターがなくて、代わりに貨車でどうかと提案されたことなどを話す。


脚本家にとって大事な「つなげる力」は、「引き出しを使いこなす力」と言える。その引き出しの中身は、日々のちょっとした心がけで充実させることができる。それは、好奇心と想像力を掛け合わせて、「おもしろい!」と感動すること。感動したことは記憶に刻まれる。外国語もそう。丸暗記よりも、そうか、なるほど、と感心しながら覚えたほうが身につく。「L'arc en ciel」はフランス語の「虹」で、分解するとarc(アーチ)とciel(空)になる。空にかかるアーチで虹かあとうなずいたら、もう忘れない、


好奇心と想像力のアンテナを張っておくと、おもしろいことや出会いがどんどんあるし、どんどんつながる。金蘭千里中学校は進学に熱心な学校らしいが、おもしろがって学んだことは、受験を乗り切るだけじゃなくて、一生ものの財産になってくれると思う。


最後は『ブレーン・ストーミング・ティーン』の中にある言葉「宝物はあなたの中にある!」で締めくくる。

質疑応答の口火を切ったのは校長先生。「自分の意図したメッセージがうまく観客に伝わらなかった場合、どう感じるか」という質問に「作品は受け取ってくれる人がいて完成する。いろんな見方があっていいし、感想から発見すること、学ぶことも多い」といったことを答えた。

続いての先生は「中学校時代はどんな生徒でしたか」「作品を書くための専門知識はどこから得ますか」。中学校時代はソフトボール部の万年補欠で、週末は試合応援ばかり。でも、クラブ活動は最後まで続けなさいという母の方針で、続けたことが根気強さを養ってくれた。文化祭では脚本を書いたり演出したりした。作品に必要な専門知識は、たとえば『子ぎつねヘレン』なら獣医監修の方がついて、用語などは助けてもらえるが、幅広く知識を身につけるためには新聞を読むのがいちばん、と答える。

生徒さんの質問トップバッターは「小心者で人前で話すのが苦手」だという男の子。でも、手を挙げて真っ先に質問する勇気はさすが。わたしが中学生の頃はみんなの前で声をあげるのが極端に苦手だったが、「活発な人を輪の外から眺めている気持ち」を知っていることは、わたしにとっては大事なこと。恥ずかしいと思うのは自分を否定されるのを怖れるからで、裏を返せば、それだけ自分が好きということ。その気持ちも大切にしてほしい。

彼が「『つばさ』観てました」と言ってくれたのに乗じて、年末放送の総集編とスピンオフの宣伝をさせてもらった。

生徒さんのお母さんからは、母親からどんな風に育てられたかという質問があった。何事も最後までやり通せと言われて、続けることの大切さをたたきこまれたこと、中学一年のときに当時の東ドイツに連れて行かれたことがその後の人生に大きな影響を与えたことを話す。でも、後から思ったのだが、母がしょっちゅう「あんたはおもろい子や」と言ってくれたことが、わたしに自信をくれたように思う。ここにも「面白がることが力を伸ばす」法則が生きている。

質問に反射神経で答えるときの脳内は、ブレーン・ストーミング状態。自分の回答を客観的に聞きながら、へーえと思ったりする。

他には「スランプのときはどうしますか」という男の子からの質問。あまりスランプはないが、やる気が出ないときは無理して書こうとせず、まったく違うことをやって気分転換する。そうすると、また書きたくなる。仕事で一緒になった出演者の印象を聞いてくれた子もいた。

「仕事は楽しいですか」と質問した女の子がいて、そのシンプルさが印象に残った。「楽しいです」と答え、「仕事を楽しくするのもつまらなくするのも自分次第です」と付け足した。彼女は「どうやったら今日の話のような心を打つ言葉が出て来るんですか」と二つ目の質問をした。たとえば、「傘と心は〜」の言葉は、『風の絨毯』プロデューサーの益田祐美子さんが英語を教わっていたときの例文だったと紹介。日々の経験の中でわたしの心を動かした言葉が、彼女の心にも何かを残せたとしたらうれしい。

講演の後に校長室で歓談しているところに、生徒さんたちが次々と訪ねてきたとき、サインではなく握手を求めたのは彼女一人で、「仕事が楽しいのはいいことです」とあらためて言い、しばらく握手の手を離さなかった。もしかしたら、彼女は自分の毎日を楽しくする方法を探しているところなのかもしれない。

時計を持っていなかったので時間がよくわからなかったが、質疑応答も含めて2時間近くだったような……よくしゃべった。

校長室にて、中学校と高等学校の校長を兼ねる辻本賢さんと歓談。気さくでとても話しやすい方。わたしのサインを求めに来た女の子たちに「入れ入れ」と手招き。校長先生と生徒さんの距離が近い。今も教壇に立ち、公民を教えているとか。下敷きやらノートやらペンケースやらに生徒さんの名前と「宝物はあなたの中にある!」と今日の日付と今井雅子のサインを書き入れた。お母さんが質問してくれた生徒さんが来たので、USJの短編小説「クリスマスの贈りもの」の小冊子にお母さんあてのサインを入れて手渡した。

校長先生は映画青年だったそうで、学生の頃、早朝の映画館を借り切って自分の好みの作品を自主上映し、そこでの一年分の収益をつぎこんで無料上映会を開いたりしていたとか。あたたかみのある自慢の校舎は卒業生が設計を手がけたそうで、ゆったりとスペースを取った階段に「赤絨毯を敷いて結婚式挙げたらええと思うてるんですよ」。

学校はホーム、卒業生を含めた生徒とその家族、職員とその家族は大きなファミリーだと考える校長先生。その精神は、障子張りのパネルを開けると登下校する生徒が見える校長室のたたずまいにも見て取れる。わたしもまた帰ってきたいと思える素敵な学校だった。

2008年11月16日(日)  『七人は僕の恋人』→シブヤさんの結婚パーティ
2007年11月16日(金)  三丘スポーツ史3に『寄り道ブドウ』掲載
2006年11月16日(木)  映画『フラガール』に拍手
2005年11月16日(水)  『天使の卵』ロケ見学3日目 ミラクル


2009年11月15日(日)  エクスプレスカードで大阪へ

まわりからすすめられ、JR東日本のエクスプレスガードに入る。年会費が1000円かかるが、割引料金で新幹線の切符が買えて、出発前で発券前なら何度でも変更可能で、乗った回数に応じてグリーン車にアップグレードできるという。後から送られてくるICカードを使えば、料金はさらに割引になり、チケットレス乗車ができて、スイカと重ねて使うこともできるらしい。

今日の大阪出張が、エクスプレスカードデビュー。ICカードは未着なので、ネットで予約したチケット(e特急券+乗車券)をエクスプレスカードを使って駅券売機で受け取ることに。いきなり丸の内側の改札でつまずく。「ここはJR東海の改札なので、こちらの券売機では引き換えられません。八重洲口側におまわりいただくか、スイカで入って精算してください」とのこと。スイカで入り、券売機でチケットを受け取る際に「スイカまたは乗車券があれば入れてください」の指示が出たので、入れた。これで精算ができたことになるらしい。入場券料金がかかったのかどうかは不明。おっかなびっくりだったが、なんとかチケットは入手でき、領収書も出てきた(領収書はオンラインでも出力できる)。

この部分を読んだご近所仲間で鉄道ファンのT氏より以下のような指摘をいただいた。

東海道山陽新幹線の「エクスプレス予約」自体はJR東海とJR西日本の展開するサービスなので、「JR東日本のエクスプレスカード」という記載、大手町側の改札はJR東日本管轄なので東海のチケットの発券ができないのであって記述が逆、事実とちょっと違うものなのでご指摘させて頂きます。

エクスプレス予約は東海と西日本の2社で運営していますが、それぞれ対応するクレジットカードを発行しており、JR東海は「エクスプレスカード」というカード、JR西日本は「J-Westカード」というカードを発行しています。(それぞれICカードの「Toica」、「ICOCA」が対応しているのですが、あまり 複雑になるのでここでは割愛)

エクスプレスカード:
http://expresscard.jp/

J-Westカード:
http://www.jr-odekake.net/j-west/

類推するに、いまいさんはJR東海の「エクスプレスカード」に入会されたのかなと思います。


とのこと。自分の入ったカードの正体もよくわかっていなかったとはお恥ずかしい。上記日記の「JR東海」と「JR東日本」を逆にしてお読み頂きたい。

また、JR東日本のVIEWカード保有者もモバイルSuicaにしている場合のみ、東海道山陽新幹線のエクスプレス予約が可能となる特約(1,050円年会費別途必要)があります。

VIEWエクスプレス特約:
http://www.jreast.co.jp/MOBILESUICA/use/ex-ic/howto.html

東京と関西圏で行動することの多い、いまいさんの行動パターンを考えると、東海道新幹線に乗車すること以外にメリットのない東海のエクスプレスカードに入会するより、東日本のVIEWカードでモバイルSuicaにするか、西日本のJ-Westカードに入会し、ICOCAを持つことのほうが便利でお得だったと思い、事前に聞いて頂ければ…。と、少々残念です。

なお、東京での在来線の利用や、大阪での在来線の利用がある場合は、EX-ICサービスよりもe特急券のほうが安価になる場合などありますので、今後詳しくなってくださいね。


とのことで、鉄道のことならT氏に聞け、を怠ったことを反省しつつ、今後入会を検討される方はご参考になりましたら。

お弁当を吟味する時間があまりなく、駅弁は深川弁当。茶色のグラデーションだったが、なかなかしっとりとおいしかった。このあと大阪で一時から始まった打ち合わせが終わったのは、8時。しっかり腹ごしらえしておいて正解。

移動のおともは『毒笑小説』(東野圭吾)と『からくりからくさ』(梨木香歩)。一冊目を読み終えて二冊目にさしかかった頃に新大阪に着いた。

打ち合わせの後、お好み焼き屋でコースをいただく。餅やらキムチやら豚やら海鮮やら。こんなに粉もんを食べ尽くすのはひさしぶり。大阪やあと感激する。締めの汁ものにまでちっこいお好み焼きが浮かんでいた。

2008年11月15日(土)  陶芸教室の成果
2007年11月15日(木)  マタニティオレンジ204 最近の目覚ましい成長
2005年11月15日(火)  『天使の卵』ロケ見学2日目 旅人気分
2004年11月15日(月)  「トロフィーワイフ」と「破れ鍋に綴じ蓋」
2002年11月15日(金)  ストレス食べたる!


2009年11月14日(土)  11月は締切ラッシュ

来月発売の「月刊シナリオ」作家通信(脚本家の近況を綴るコーナー)の原稿を書く。一年に一度ペースで依頼があり、作品の宣伝をするチャンスをいただいている。今回はUSJサイトで公開している短編小説「クリスマスの贈りもの」と1/21発売の『ぼくとママの黄色い自転車』DVD、脚本協力した朝ドラ「つばさ」総集編の年末放送とその前に放送予定のスピンオフの脚本を書いたことを案内した。

今月は3か月に一度の池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuと、2か月に一度のJR社員向け定期購読誌「クリエイティブ21」の締切が重なった。2と3の最小公倍数は6だから、半年に一度のこと。bukuに連載中のエッセイ「出張いまいまさこカフェ」は12月18日発行の次号で14杯目。「クリスマスの贈りもの」執筆で味わった「原作者のキモチ」について綴っている。一方、クリエイティブ21は11月発行号に第一回〈「書き鉄」スイッチ〉が掲載され、あと5回、一年間の連載予定。第2回は車内アナウンスをネタに「声色いろいろ」というタイトルで原稿を練っている。どちらも11月下旬締切なので、これぐらいにだいたい固めて、何日か発酵させて、締切前に起こして最後の仕上げをする。

さらに年賀状代わりに発行している毎年新聞のネタと文面もそろそろ考えないと。

本業の脚本の締切も重なり、コメディ路線の短編映画と朝ドラ「つばさ」スピンオフ(9分半の短編2本)を決定稿に向けて磨いているところ。

2008年11月14日(金)  百均ブログ探偵と『江戸宵闇妖鉤爪』
2007年11月14日(水)  マタニティオレンジ203 サロン井戸端「お金で買えないもの」
2006年11月14日(火)  マタニティオレンジ29 読書の秋
2005年11月14日(月)  『天使の卵』ロケ見学1日目 なつかしの京都
2004年11月14日(日)  『バニッシング・ポイント』@ルテアトル銀座


2009年11月13日(金)  「クリスマスの贈りもの」に帯コメント!

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの期間限定サイト「Limited Christmas」で読める今井雅子の初めての短編小説4編「クリスマスの贈りもの」、お読みいただけましたでしょうか(こういうときは文体もあらたまります)。

公開されて今日で2週間ですが、思った以上に評判が良く、脚本作品よりも反響があることに驚いたり戸惑ったりしつつも素直に喜んでいます。USJのクルーの皆さんにも評判上々なのは何より。自分たちが働く舞台をいっそう好きになってくれれば、ゲストの人たちにもっと特別な瞬間をプレゼントできそう。


ユンソナさん、SHEILAさん、近藤夏子さん(キャンペーンソング「全部がプレゼントだ〜クリスマスの贈りもの」を歌っています。タイトルも連動!)、和希沙也さんに帯コメントを寄せていただきました。それぞれ自分の言葉で作品の感想を語られていて、感激。帯をクリックすると、コメントの全文を読めるので、ぜひ「クリスマスの贈りもの」ページへ(2010/1/17追記:2010/1/6サイト終了にともない、縦書き文庫に引っ越して再公開)。

プレスツアー用に作った小冊子の増刷版(地元大阪の幼稚園などで配られるそう)にもユンソナさんのコメントが入りました。無事お子様からパパ、ママの手に渡って物語が届きますように。


2009年11月12日(木)  もはや「森ガール」ではない!?

朝の情報番組で「森ガール」なる言葉を知る。昨日の「リア充」といい、知らない言葉が多い。広告会社勤めを続けていれば、情報にアンテナを張った同僚たちから即座に伝わっただろうことが、こもり型フリーランス仕事をしていると、知るまでの時差が生じる。

「森ガール」とは「森のそばに住んでいそうな女の子」を指し、彼女たちが身にまとうものにその特長があらわれるらしい。原色ではないナチュラルな(森にありそうな)色使い、体をしめつけないゆったりしたライン、森の動物たちを思わせるふわふわ、もこもこした肌触りを好むという。森と相性のいいおとぎ話に出てくる世界観も好む。たとえば、赤ずきん。

テレビ画面に映っていたものも、もしかしたらそうかもしれないが、わたしがここ数年愛用しているfranche lippee(フランシュリッペ)のファッションは、まさに森ガール風。Baby Jane Cacharel(ベイビージェーンキャシャレル)の日本撤退にショックを受けたとき、失望を埋めるかのように目の前に現れたこのブランドの、「着られる絵本」のような服に一目惚れしては、ワードローブに加えている。春には「不思議の国のアリス」をモチーフにしたワンピースの大人用と子ども用を微妙にデザインの違うおそろいで買い求めた。情報番組によると「親子で森ガール」という人たちも見受けられるらしい。

森ガールは人が集まる繁華街や夜のにぎわいよりも静かで穏やかな時間を好み、家でお茶をするのがいちばん落ち着くのだという。それはわたしにも言えること。

わたしって、森ガールだったのか!

そう思ったとき、記憶の底から浮かび上がった情景は、会社でひとつ後輩の男の子と会話しているわたしの姿。5つほど下の新入社員の女の子たちを「あの子は○○系ギャル」などと分類したのち、「わたしは何系ギャル?」と聞くと、その男の子は「今井ちゃんは、もはやギャルではない」。あれから10年あまりの歳月が経っているし、とっくにギャルでないなら、当然もはやガールではない。

森ガールでないとしたら、森女?

なんだか、森の奥でスープをぐつぐつ煮ている魔女みたいだ。

2008年11月12日(水)  いろんな思いがぐるぐると『ぐるりのこと。』
2007年11月12日(月)  寝耳に水
2006年11月12日(日)  マタニティオレンジ27 川の字 朝の字
2004年11月12日(金)  何かと泣ける映画『いま、会いにゆきます』
2002年11月12日(火)  棗
2000年11月12日(日)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2009年11月11日(水)  生まれる前の記憶の追伸

朝ドラ「つばさ」の撮りきりセレモニー後のキャスト・スタッフ集合写真を「みせて」と娘のたまが手をのばした。百人以上が集まった写真だから一人一人はずいぶん小さく写っているのだが、その中から「ちゅばさ」「ゆうかちゃん」とお気に入りの登場人物を見つけて行く。「ちゅばさのおじいちゃん」と指差したのは竹雄役の中村梅雀さん。「おじいちゃんじゃなくて、お父さんよ」と訂正すると、「このひと あまたまどう つくってるんだよ」と教えてくれる。「甘玉堂じゃなくて、あまたまだよ」と正したが、惜しい。靴に砂が入ったときに「くつに おすなば はいっちゃった」と言うのと同じく、意味はわかっているのかもしれない。

「つばさ」の放映中は内容がわかってるんだかいないんだかという感じだったが、放映が終わってから言葉が追いついてきて、「ちゅばさとなかよしのしょうたくん」と言ったりする。実はわかって観てたんだなあとうれしくなる。

言葉が追いつくといえば、以前日記に書いた生まれる前の記憶をときどき話してくれる。「たまちゃん おなかのなかでも おゆび すっていたのよ」と言うので、「そんなに長く吸ってるなら気が済んだでしょ」とわたしが言うと、「まだ きは すんでない」と妙に正しい日本語で言い返す。指を吸い続ける言い訳なのかなとも思うが、エコー写真を撮ると、いつも指をくわえていたのは事実だ。「かたが でなかったんだよね」とも言う。超特急で子宮口全開まで進みながら、頭はもう出ているのに肩が引っかかり、その数センチを進ませるのにあと数時間を費やした。「ママを ぎゅって おしてたのよ」とも言うから、たまもたまなりにお産を進めていたらしい。

この話をすると、「うっそー」「へーえ」などと最初は驚かれ、やがて「神秘ねえ」としみじみされる。ノストラダムスの大予言と同じく、言葉をどう解釈するかで「そうとも取れる」という範囲のことかもしれないが、生まれる前から記憶があるということに、やすらぎを覚える人は多い。

2008年11月11日(火)  四半世紀前の「今」の『昔も今も笑いのタネ本』
2007年11月11日(日)  マタニティオレンジ202 子育て戦力外の鈍感力
2006年11月11日(土)  ウーマンリブvol.10『ウーマンリブ先生』
2003年11月11日(火)  空耳タイトル
2002年11月11日(月)  月刊デ・ビュー


2009年11月10日(火)  「リア充」と朝日歌壇

たまった新聞をまとめて読む。新聞ではなく旧聞である。毎日ちょこちょこ目を通せばいいのに、それをさぼって、古新聞が雪崩を起こしそうなほどたまった頃に格闘の決意をする。ばっさばっさとページをめくってもけっこうな時間がかかる。日記も同じく、ためてしまう。この日記を書いているのは約3週間後の11月24日。「新聞整理」というキーワードを手がかりに記憶を掘り起こしている。

「リア充」という言葉を新聞に教わる。リアルな生活が充実していること、の意味らしい。恋愛なりサークル活動なりバイトなり、生身の人間の実感に、ネット上でのつながりや楽しみと区別してわざわざ名前がつく。そういえば、5、6年前に、友人が「ネットの友もリアルの友も大事」と言い、そういう区分けがあるのかと驚いたが、彼女の中では当時すでに二つの生活が並行して存在していた。

自分が手がけた作品をネットで知らせ、反響をネットで知るわたしの場合は、ネットとリアルは分けられるものではなく、密接に結びついている。ネット上で知り合う人とは作品が仲人になる場合が多いし、ネットの生活の充実とリアルな生活の充実は連動している。USJの期間限定サイトLimited Christmasに書き下ろした短編小説は、長年応援してくれた友人の熱意で実現した仕事で、ネットでの広がりをメールで分かち合うことで、また友情をあたためあうという、まさにネットとリアルの掛け合わせだ。

リアルかバーチャルかということを考えつつ新聞を整理していて、朝日歌壇はどちらだろうと思う。インターネット応募はできず、ハガキで出して紙面で確かめるアナログな世界であるが、応募者同士のつながりはリアルではなく、紙面を共有する縁はバーチャルなものだ。けれど、新聞の活字のもたらす効果か、短歌の向こうに生身の人間や生活を感じる。

ホームレス歌人の公田耕一さんとアメリカの獄中から投稿する郷隼人さんが気になり、朝日歌壇観察を続けている。2009年08月03日(月) 応援団と朝日歌壇と子守話はエールつながり以来日記に綴っていなかったので、ひさしぶりの観察記を。

8月16日 公田さん、郷さんともに採用。
馬場あき子選
マクドナルドの無料コーヒー飲みながら方代さんの伝記読み継ぐ (ホームレス)公田耕一
精魂をこめて造園せし我の禅ガーデンは踏み躙らるる (アメリカ)郷隼人
高野公彦選
朝顔もラジオ体操も〈白熊〉もみーんな懐かしい祖国(くに)の夏休み
公田さんのマクドナルドの歌は高野さんにも選ばれていて、「方代さんの伝記」とは「田澤拓也著『無用の達人 山崎方代』か」と選者の推測がコメントされている。
この日は他に、
大寺も我も等しく青時雨回廊に添ふ水音聞くなり
(飯田市)福岡重人 
に心惹かれた。「毎回点字の応募」と選者・永田和宏さんのコメント。

8月30日 この日は郷さん採用、公田さんの歌は見当たらず。
辞書もあり、三食・洗濯(ランドリー)・医療にシャワー全て無料(フリー)のわれらの暮らし

9月7日
瓢箪の鉢植えを売る店先に軽風立てば瓢箪揺れる
公田さんの歌を見つけると、ほっとする。歌が届くことで、安否確認をしている。
点訳の朝日歌壇の今届きなぞりてさがす公田耕一(都留市)長田美智子
この人の歌に、そうそう、と共感。この後約一か月の朝日歌壇が行方不明。毎週月曜の朝日歌壇だけは目を通し、切り抜いて別にまとめてあるのだが、公田さん、郷さんともに掲載されていない場合は切り抜かないので、もしかしたらそういう週が続いたのかもしれない。

10月12日以降、郷さんの採用は続くが、公田さんが姿を見せなくなった。
ソルダッド山の禿げたる稜線に月の船出づ絵本の如き (アメリカ)郷隼人

10月19日  
日本より一日早し秋分の日も真珠湾攻撃慰霊日も
「ひとり寝の子守唄」など呟きて寝床(バンク)より観る月の光(かげ)かな

10月26日 
獄中死遂げたる人が二人共我と同居したことがあった 
夏時間おわり標準時となりぬただそれだけのこと秋は来にけり


11月2日
銀舎利のご飯を常に夢みるは我も山頭火のようなもの

11月9日には郷さんも姿を見せなかったが、興味深い歌があった。
菜菜ちゃんがママになったとアテネから写真が届く「美菜(ミイナ)エレニ靖子」(横浜市)宮本真基子
佐佐木幸綱選第10席のこの歌について、〈安楽死の詠み人 孫の名に「再生」〉の見出しでコラムがあり、オランダで10年、がんと闘った後、97年に安楽死を選択、52年の生涯を閉じたネーダーコールン靖子さんのことが紹介されている。歌にある「菜菜ちゃん」は靖子さんの娘、「美菜エレニ靖子」さんは孫となる。靖子さんは朝日歌壇の常連であり、「臨終を看取った知人が作歌ノートから筆写、ファクス投稿し、選者全員が採り、共選の星印が四つついた」という。その歌、
座すことの叶う日再び来ることを祈りて入りし三たびのオペ室
に覚えがあった。掲載時に見たのか、その後どこかで紹介されていたのが目に触れたのか、一度読むと記憶にくっくり刻まれる強い歌だ。そうか、この歌を詠んだ人の娘さんがお子さんにお母さんの名を……。ここにもバーチャルなはずなのにリアルな生の実感がある。「没後10年余、遺族との連絡を保った歌友の存在に心打たれた」とコラムにあるが、常連だった頃から知る人にとっては感慨もひとしおだろう。巻頭に家族の肖像写真が付されているという遺歌句集『オランダはみどり』も手に取ってみたくなった。

そして、公田耕一さんはどうしていらっしゃるのか。

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2004年11月10日(水)  トレランス二人芝居『嘘と真実』
2002年11月10日(日)  黒川芽以フォトブック

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