2004年11月14日(日)  『バニッシング・ポイント』@ルテアトル銀座

■フィリップ・ジャンティ・カンパニーの『バニッシング・ポイント』を観る。チラシで知って気になっていたのだが、昨日打ち合わせで会ったプロデューサーが「今日観てきたんですよ」と言うまで忘れていた。「日曜までですよ」と言われ、調べてみると、東京公演は今日の14時の部を残すのみ。前売り券は売り切れで当日券は1時間前から発売とある。1時にル テアトル銀座に着くと、エレベーターホールにはすでに行列。一人ずつ受付に呼ばれ、自分で席を決めてチケットを購入する。20分並んで順番が回ってきたときには、最後列か左右の補助椅子席しか残っていなかったが、ここまで待ったからには観る。通路に椅子を置いているので、人が通るたびにぶつかって椅子が動き、肩身の狭い思いをするが、我慢がまん。■幕が開き、いきなり日本語の台詞が出てきたのには驚いた。「あなたが見ているのは私ではなく、あなたの内面かもしれない」といった作品のテーマを告げる。全体的には台詞はほとんどなく、ところどころ入るやりとりは英語だったり日本語だったり。不気味な人形、意志を持ったように躍動する巨大ビニール、首だけの「おじいちゃん」……見たことないものが次々出てくる。チラシからはサーカスのようなものを勝手に期待していたのだが、肉体的というより精神的離れ業という感じ。「バニッシング・ポイント」とは遠近法で言う消失点。重力や遠近感や常識やいろんなものが消える。頭マッシロ状態で『舞台の魔術師』の魔法にかかり、舞台空間を浮遊するパフォーマーのように空想の世界をたゆたうのが、心地よい楽しみ方かもしれない。■いちばん感動したのはカーテンコール。満席の会場から沸き起こる拍手と「ブラボー!」のかけ声は、楽日ということもあり、なかなか鳴り止まない。それを受け止める出演者とスタッフの胸中を想像し、なんて幸せな仕事だろうと思う。そして、何度目かのカーテンコールで見せた、遠近法を覆すとっておきのサプライズ。最後の最後まで遊び心を忘れない姿勢に、いっそう大きな拍手が贈られた。このあと名古屋(11/18 愛知厚生年金会館)、山口(11/20・21 山口情報芸術センター)、大阪(11/23 12:30/17:30 シアター・ドラマシティ)、松本(11/26 まつもと市民芸術館)、新潟(11/28 新潟市民芸術文化会館・劇場)公演が続くそう。

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