2008年09月26日(金)  スーパー家事執行人Mさんの仕事っぷり

京都からSMAPのコンサートを追っかけて上京中のMさんは、2夜続けてコンサートを堪能し、今日は終日フリー。わたしも執筆を休み、娘のたまの保育園を休ませ、平日の休日を楽しむことに。

いつもはベーグルを持ち帰る近所の『白山ベーグル』の店内で朝食。カリッと焼いたベーグルに、クリームチーズやツナ(または卵)をつけて食べる。ベーコンとサラダと飲み物がついて580円。食べながら、Mさんがお手伝いしている高級ゲストハウス『仁寿殿(じじゅでん)』の朝ごはんの話に。Mさんは「自分にできるお手伝いはひととおり何でもやっている」らしく、もちろん得意の料理をふるって朝食も作っている。野菜たっぷりボリュームしっかりの体に良さそうなメニューに、地元のおいしいパン屋さんのパンと、ゲストハウスのマダムがこだわって選んだ「京都でいちばんおいしいコーヒー」がつくのだとか。金閣寺の近くにある隠れ家的なゲストハウスとのことで、サイトで拝見したお部屋も素敵。(※サイト情報によると、パンとコーヒーのコンチネンタルブレックファーストは通常500円で、年内はオープン記念で無料。季節野菜のポタージュや卵料理のついたフルブレックファーストは1500円)

「いまいまさこカフェ」読者予約特典「Mさんのケーキ」
11月5日Mさんより「仁寿殿マダムが日記で紹介されているのを知って喜んでいるよ」とメールあり。お友だちに日記読者がいらっしゃるそう。そこで、予約時に「いまいまさこカフェ日記を見て」と申し出ていただいた方に、Mさんのお手製ケーキをごちそうしますの大盤振る舞い。後を引く幸せをぜひ。ちなみに「あんたの書いている関西オバンばりの小姑Mは他人のようですぜ。仁寿殿で優雅に朝食をサービスするMちゃんと同一人物とは思えません」と本人から抗議あり。宿泊すると、麗しいMさんにも会えるかも。

Mさん自身は、自宅でときどき知人友人を招いて「ワンデーレストラン」なるものを開いているのだけど、口コミで広がって、京都の食通たちをうならせているという。町家を自分で改装している自宅は日々進化中で、そのうち「心ばかりのお礼をいただく」ようなゲストハウスもやりたいとのこと。

わが家に来て以来、掃除炊事に大活躍のMさん。小石川植物園に案内したところ、植物にもかなり詳しいことがわかった。「わたしは昔、絵を描いてたからねー。デッサンでよう描いたから植物の名前はたいがいわかるんや」。青い実を拾って、「これ、クルミやで。置いとくと、茶色くなってシワシワになるから、見ててみ」。足元の銀杏に「茶碗蒸し一年分!」と歓声を上げ、一面のハコベ(だったと記憶)を見て、「これでお茶作りたい」。これは染料になる、これも食べられる、などと大はしゃぎ。「ここがうちの庭やったら、まるごと使いきったるで」。

お昼ご飯にベーコンときのこのパスタ、夕食にブリの照り焼きとカボチャの煮物と里芋のサラダを作ってもらう。「うちの調味料で、こんな味が出せるの?」と驚く出来映え。たまが前のめりになってむしゃぶりつき、「うめ〜」ととろける。これではまるで普段ろくなものを食べさせていないみたいではないか。食卓はうるおい、キッチンはピカピカ。高級家事代行サービスをお願いしても、こうはいきますまい。

【お知らせ】『犬と私の10の約束』(脚本協力)DVD本日リリース

脚本協力した映画『犬と私の10の約束』のDVDが本日リリース。スクリーンで見逃した方も、もう一度観たい方もぜひ。

作品と今井雅子の関わりについては、過去の日記、2007年08月09日(木) ちょこっと関わった『犬と私の10の約束』をどうぞ。試写を観た感想は2008年01月29日(火) 母の気持ちで……映画『犬と私の10の約束』(脚本協力)に。

犬10は脚本協力という形だったけれど、それなりの時間を費やした作品で、手をかけた分、思い入れがある。自分の関わった作品が映画館で大々的にお披露目された後、手に取れるサイズになって手元に届くと、「おかえり」という気持ちになる。

2006年09月26日(火)  マタニティオレンジ11 ひるまないプロデューサーズ
2005年09月26日(月)  『東京タワー』(リリー・フランキー)でオカンを想う
2004年09月26日(日)  新木場車両基地 メトロ大集合!撮影会
2003年09月26日(金)  映画の秋
2002年09月26日(木)  ジャンバラヤ
2001年09月26日(水)  パコダテ人ロケ4 キーワード:涙


2008年09月25日(木)  ロハス(LOHAS)より愛せるセコ(SECO)

SMAPのおっかけで京都から上京しているメグさんが昨日からわが家に宿泊中。宿賃代わりに家政婦を買って出て、食事を作ったり食器を洗ったり掃除をしたりしてくれている。その昔高級クラブでバニーガールをやりながら客の食べ残した皿をなめてソースの味を覚えたというメグさん。料理の腕前はそこらの名店に引けを取らず、自宅でときどき開くワンデーレストランでは味にうるさい食通京都人をうならせているとか。掃除のプロでもあり、メグさん襲来に備えて必死でわたしが片付けた台所を見て、「ひどいことになってますなー」。ヤシの実洗剤やらスポンジやらを買って来て、「こんだけ汚いと燃えるわあ」とゴシゴシやり始めた。ステンレスのシンクも重層と酢の手づくり洗剤で「ピカピカに磨き上げたるでー」と意気込む。

ダイニングキッチンはわたしの仕事場でもある。食卓でパソコンに向かっている2メートル先でメグさんが「なんやこれ?」「こんなもん使ってるんかいな」「ようこんなんでやっていけるわ」「どうしたらこんな汚れになるんや。信じられへん」「これ細菌やん.食中毒菌やで」「目的地にたどり着くまでが大変やな。チョモランマや」などと反応するたび、「しょうがないでしょ」「いいから、置いといて」「すみません」などと反抗していると、仕事はまるではかどらない。何を言われてもしょうがない惨状を招いたこちらの落ち度はあるのだけど、押さえ込まれると面白くない。汚くて散らかっていて探しものが見つからない台所を「わたしはこれが使いやすいの!」と意地を張り、余計に疲れる。ありがたいけど、ほっといて。この感覚、どこかで……とデジャブを覚えたら、ダンナ母がうちの台所に立ったときの,手と同じぐらいよく回る毒舌に当てられたときのあの感じ。13才年上のメグさんとは、わたしが大学生の頃から二十年近いつきあいになるが、いつまで経っても追いつけない手強い姑のような存在。チクチク、グサグサと引き換えに台所はくすみが晴れたようにピカピカに磨き上げられ、ガンコな茶渋もすっきり。圧力鍋に顔が映り込んだのにはたまげ、かないませんなあと白旗上げて降参した。

メグさんにはゴミ出しについても厳重注意を受け、「ここに置いてあるフタは何の意味があるん?」「捨てるんかとっとくんかどっちや!」などと突きつけられること数十回。「もったいなくて、物を使い切らないとなかなか捨てられない」と言い訳すると、「それはわかる。私もロハスな人間やから」と珍しく同意された。「そのロハスって言葉、わたしダメなんだけど」と言い返すと、「私も別に好きちゃうで」とあっさり意見が一致。ロハスという言葉が出回った頃からなんだか違和感を覚えていたのだけど、何がイヤなのかいまだにはっきり特定できていなかったわたしは、「ロハスっちゅう言葉は、なんかかゆい」というメグさんの台詞に「それや!」と飛びついた。物を無駄にしないとか、自然を愛するとか、ゆったり生きるとか、その精神には共感するのだけど、さりげなく日々の生活に取り入れていることの頭文字をつなげて「ロハス(Lifestyle of Health and Sustainability)」なんてもったいぶった名前をつけることにムズムズする。企業が「ロハス宣言」したりデパートが「ロハス展」をしたり、商業のにおいが強くなるほど、野にひっそり咲く花を額縁に飾って展覧会に押し上げてありがたがっているような不自然さを感じてしまうのだった。

「エコって言われても抵抗感じないのに、なんでだろね」とわたしが言うと、「森永なんとかっちゅう経済学者(たぶん森永卓郎?)がセコって言うてたけど、私はそれやな」とメグさん。セコいとエコをかけて、セコ(SECO)!? この言葉は、なぜか愛せる。わたしもその一員のつもりなのだけど、捨てられないものがあふれ返るだけで、「環境にええていうても、カビ生やしたら健康に悪いし」「中途半端がいっちゃんタチ悪い」とメグさんにしかられている身では、エコの部分が抜け落ちた「セコいだけのセコ」のよう。

2007年09月25日(火)  すごい本『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』
2003年09月25日(木)  ディズニー・ハロウィーン
2002年09月25日(水)  宮崎・日高屋の「バタどら」
2001年09月25日(火)  『パコダテ人』ロケ3 キーワード:遭遇 


2008年09月24日(水)  トマトジュースのレシピで泣かせる『味覚日乗』

「トマトジュースのレシピで読者を泣かせてしまう」。先日読んだフリーアナウンサーの堤幸子さんの本(『堤信子の暮らしがはずむちょっといい話 主婦アナのマルトク生活情報ブック』)で紹介されていた『味覚日乗』に心惹かれ、手に取った。

「かまくら春秋」という月刊誌に9年にわたって連載されたエッセイをまとめたもの。読んで、たまげた。日々の何気ない暮らしの営みを綴った文章が、どうしてこうも格調高いのか。「桜は、なんと光の似合う花でしょう」。凛とした口調に、こちらの背筋も伸びる。栽培大豆の歴史を語り、「人類は、努力家揃いですね」。料理の工夫を述べて、「頭は生きてるうちに使います」。「塩とは、なんとすばらしい物質でしょう」などという表現に、台所にあるものが、そこで営まれる家事という行為が、崇高なものに見えてくる。摘み草をする効能については、「つまり風土そのものを味わうのです。なんという印象的な一体感でしょう。風土の生理と人間の生理は、実は一つなのですし……。教育的意義に就いては、一生の幸・不幸を支配するほどの深意がひそんでいたと思います」。

「『雛祭り』それは心のふかみに、ぼんぼりで照らし出されるように、私を慈しんでくださった人々の顔がよみがえる旬日です」ではじまる雛祭りの思い出の美しいこと。「自分によきことを願う、大人達の心を子供が感じとらぬはずがあるでしょうか」と言われれば、親への感謝と子への慈しみが同時に沸き起こり、「当節“面倒くさい病”が蔓延し、重症者も見かけます。(中略)年中行事を商売の色にこれ以上染めず、私共の手許へかえしたほうがよいのではないでしょうか。かたちから入って、こころをとりもどす方法もあるのです」の提案に激しく膝を打つ。

そして、待っていました、トマト・ジュースの作り方は、「手づくりのすすめ」と題したエッセイの中にあった。「思うに、夫婦別れを胸に、梅干しを漬け、塩昆布を炊き、らっきょうを漬ける光景を見たことはなく、夫婦喧嘩の翌日炊きましたという煮豆を食べたこともなく、冷えた心で肴の煮干しを吊るす人を見たことがありません」「日常茶飯の手業の背景は、推測以上に心の深淵に属し、投影そのものと思います」「深淵にたたえられていたものへの敬意と感謝をなおざりにしていた長い歴史が、こと、ここに至って、あってあたり前とされてきた女の水源を枯渇させているのではないでしょうか」とたたみかける三つの文は、随筆を超えて、もはや哲学の領域。

夫婦喧嘩した直後に背中を向け合って梅酒を漬けた身としては肩身が狭い思いをしつつも、梅酒を漬けている間に平常心と日常を取り戻したことも思い出し、「深淵か」としみじみとなる。そして、このトマト・ジュースの随筆の締めくくりの一文は、「人が愛ゆえに、作ったり、食べさせてもらったりする日々。過ぎてしまえばなんと短いことでしょう」。これはもう手抜き主婦のわたしでもぐぐっとこみ上げるものがある。一食でも多く家族に手料理を食べさせたい、しかも喜んで。そんなやる気を起こさせてしまう威力のある、すごい殺し文句。

巻末の藤田千恵子さんの解説に「トマトジュースのレシピで読者を泣かせてしまうのは、古今東西の料理研究家では髄一、辰巳先生だけなのではあるまいか」とあり、堤信子さんの紹介文の出典を知る。著者が母であり料理研究家である辰巳浜子さんから「家庭料理を作り続けることは、単なるルーティンではなく、愛情という礎の上で行われる、『たゆまぬ努力』だ」ということを受け継いだ、と語るこの解説もすばらしい。「葉も皮も、才覚で美味に使って」大根を一本食べきる話が本文に出て来たが、野菜をおいしく食べ切るように、解説の最後の一行まで味わい尽くせた。

あとがきによると、『味覚日乗』というタイトルは、かまくら春秋社の伊藤玄二郎さんがつけたという。「日乗とは、平凡気な日常を書き重ねるという意味」というが、主婦業そのものが「味覚」を「日乗」することだなあと感じ入った。一食を重ね、日を重ね、月を重ね、季節を重ね、年を重ねる。消耗されるのではなく蓄積される響きがある「乗」という漢字に、労われる思いがする。

97年にかまくら春秋社より刊行され、2002年にちくま文庫となり、わたしが手に取ったものは2005年の6刷版。今でも版を重ねているのではないだろうか。解説にもあるけれど、「今日もちゃんと台所に立とう」という気持ちをこれほど奮い立たせてくれる本を他に知らない。

2005年09月24日(土)  DVDプレーヤーがやってきた
2002年09月24日(火)  アメリカ土産の「Targetスーパー」のカード
2001年09月24日(月)  『パコダテ人』ロケ2 キーワード:対決 


2008年09月23日(火)  さつまいもの町、川越。

さつまいもが大好きで、ダンナの実家では「いもねーちゃん」と呼ばれ、「雅子にはイモの天ぷらが何よりのごちそうだ!」とどっさり揚げてもらっている身としては、さつまいもの町として有名な川越にはぜひ行かねばと思っていた。あちこちの雑誌に載っていた川越情報の切り抜きを集めるばかりで、なかなか行く機会を逃していたのだけれど、いざ行くと決めたら池袋から30分。家を出て1時間も経たない距離に、小江戸・川越はあった。

駅からてくてく歩いて、ひょいと入ったお寺で、かわいい子猫がお出迎え。なぜか川越は猫が多い町でもあった。猫もイモが好き?

お寺の中にある団子屋さんの行列に誘われて並ぶ。一人で10本20本と買い求めて行く人たちがいて、飛ぶように売れている。2歳児のわが娘・たまも、顔をしょうゆだらけにして、一本ぺろり。団子屋はそこらじゅうにあって、どこでもたいてい一本80円。

蔵造り通りの町並みをひやかしながら歩いていると、イモはもちろん栗やあんこや豆の誘惑が次々とふりかかり、試食だけでおなかいっぱい、幸せいっぱい。いろんな種類の豆を気前良く食べさせてくれる豆屋さん、サイコー。名物らしい「きな粉豆」と甘納豆をお買い上げ。


ここにも、猫発見、蔵が並ぶ昔ながらの町並みになじむよう、クロネコヤマトのお店も蔵造り通り仕様。

路地の左右からなつかしいお菓子が誘いかける駄菓子屋横町も、これまた楽しい。お店の人たちも威勢がよくて、縁日みたいな雰囲気。

氷川神社にお参りし、観光協会に寄って、ポスターで知った「たま」というお店の場所を聞くが、今日は開いていない様子。さらにてくてく歩いて、町のシンボル的な「時の鐘」へ。正面にあるうどん屋さんに入り、3時の鐘を聞く。

いも天ぷら、いもうどん、いもそうめん、いもの甘煮などのいも尽くし。これだけいもを食べても、まだ食べたい。次回は「いも懐石」に挑戦してみようと思う。
川越駅までの道も、歩いているといろんな発見があり、楽しい。レトロなカフェやら、どんな味がするのか興味をそそられるお煎餅の看板やら。2歳児の探検にも打ってつけの町だとわかった。

2007年09月23日(日)  オフコースを聴いて思い出すこと
2006年09月23日(土)  マタニティオレンジ10 誕生日コレクション
2005年09月23日(金)  今日は秋分の日
2001年09月23日(日)  『パコダテ人』ロケ1 キーワード:事件


2008年09月22日(月)  「せつない」が言葉になった、たま2才1か月

娘のたまが2才の誕生日を迎えて、はや1か月。いまだに日によって「あまちゃん1才」と言ったり「あまちゃん3才」と言ったり、いまだにチョキはできないし、「たま」も言えない。「タ」だけでなく「ピ」も苦手で、「チンポーン」と大声の効果音つきでチャイムを鳴らす。「ピ」と言えないので、周囲は爆笑、親は苦笑。まわりが受けると、余計に調子に乗って「チンポーン」を連発。陽気な三枚目路線を突っ走っている。

バスの降車ボタン、エレベーターの階数ボタン、ウォッシュレットの操作ボタン、押せるボタンは手当たり次第押す。自宅のインターホンについている警報ボタンを押してけたまましい警報が鳴り響いたことも二度三度。ご近所さんに何と言い訳しようかとハラハラしたけれど、誰も「どうしましたか?」と駆けつけてくれず、意味がないことも判明した。

いつも何かしら口ずさんでいて、「ちょうちょ」「ぞうさん」「おもちゃのチャチャチャ」「ぶんぶんぶん」「バナナがいっぽんありました」「ねんねんころりよ」に加えて、「大型バスに乗ってます〜」という「バスごっこ」の歌と「しまうまのしまをぐるぐる取って〜」という「しまうまぐるぐる」、「おうまのおやこ」がレパートリーに加わり、「崖の上のポニョ」もだいぶ歌えるようになった。保育園では保育士さんが一日中歌ってくださっている。毎日聞いて体にしみこんだ歌が次々と顔を出し、いつの間に覚えたの、と驚かされる。「ぶんぶんぶん ママがとぶ」や「アンパンマンのおやこは なかよしこよし」「たまちゃんはいいこだ ねんねしな」など替え歌にして遊ぶことも覚えた。マイクをにぎってカラオケのまねごとをして、最後に「サンキュ」と言いながらマイクを持ち上げる。どこでそんなこと覚えたのか。わたしの鼻歌にも「なんの うた?」と興味を示し、部屋が静かだと「おんがく」とリクエストする。

たま語銀行に書き留めきれない勢いで日々進化している言葉は抑揚が豊かになり、「ひっぱんないで」「たま、まだ たべてないよ」などと感情を込めて言うようになった。一人で受話器に向かって「もしもし? あまちゃんよ。げんきよ。こうえんいこねー」などとべらべらしゃべっている。この一か月は、「さびしい」を訴える表現がふえて、今まで我慢していたんだなあと反省した。打ち合わせで遅くなる日が続くと、朝保育園で別れ際に「きょうは ママ くる?」と聞いてくる。休日にわたしがパソコンを打ちたいときはパパが散歩へ連れ出すのだが、「そろそろ帰ろうか」とパパが言うと、「ママ まってないよ」と切ない声で言ったりするという。

今日は夕方から打ち合わせが入ったので、昼間は保育園に預けず、仕事を忘れてじっくり遊ぶことに。ちょうど風邪気味だったこともあるけれど、体よりも心をいたわってあげたかった。後楽園ラクーアまで散歩すると、メリーゴーランドを指差し、あれに乗ると言い出した。7月に東京ディズニーシーでカルーセルに乗せたときは、またがった途端「かえる」とべそをかいたので、怖いからやめとこうよと諭したのだけど、乗ると言ってきかない。月誕生日プレゼントのつもりで乗せると、怖がるどころか、手を振る余裕。こんなところにも成長は現れている。

2007年09月22日(土)  マルセル・マルソー氏死去
2006年09月22日(金)  マタニティオレンジ9 赤ちゃんとお母さんは同い年
2005年09月22日(木)  innerchild vol.10『遙<ニライ>』
2003年09月22日(月)  花巻く宮澤賢治の故郷 その3


2008年09月21日(日)  「プロポーズ・アゲイン。」と『最後の初恋』

「プロポーズ・アゲイン。」というプラチナの新聞広告にあった「よい夫検定」の問題。「初めてのデートの場所は?」とダンナに投げかけると、「うるさい」と答えが返って来た。ど忘れよりもタチが悪い。落第者は妻にプラチナを贈って出直しましょう。宝石にあまり興味がないわたしは、プラチナよりもプラスティックのほうが好みだけど。

かつての恋人は妻という名の家政婦となり、今や母という名の乳母も兼ね、恋は遠い昔に置き去りにされている感がある。結婚何年目かのある日、突然「いとおしい」と言われて頬を赤らめたら「うっとうしい」の聞き間違えだった。ずっと恋していたいわたしには淋しいことだけど、結婚とは生活の重力に引っ張られて地に足をつけていくことなのかもしれない。せめて恋の時代を通り過ぎても、別な形の愛情に置き換わっていることを願う。

家族は愛情が前提の単位だから、それを失った相手のために食事をこしらえたり洗い物をしたりするのは苦痛になる。給料の出ない家事という奉仕にどれだけ前向きに取り組めるかは、家族への愛情のバロメータになるかもしれない。

わがダンナは家事逃れの天才で、「君の入れてくれた風呂が好きだ」とのたまってまで風呂掃除を押しつけようとする。「君の入れてくれた珈琲が好きだ」なら乗せられて一杯煎れるけれど……。「わたしが食事を作ったんだから、あんたがお皿を洗ってよ」と言うと、「君が汚したんだから,君が洗ってよ」と言い返され、憤怒のあまり絶句したこともある。お風呂もお皿も洗い物はダンナという結婚当初の約束は、「聞いてない」。以前、夫婦で大石静さんにお目にかかる機会があったとき、ダンナは「武士」というありがたいあだ名を頂戴した。

子どもが生まれてからも武士ぶりは健在だったけれど、最近変化が現れだした。お手伝いも遊びになる娘のたまに巻き込まれる形で家事に手を出すようになったのだ。洗濯機から洗濯物を運び出すリレーごっこやお風呂ゴシゴシごっこを父娘で楽しそうにこなしている。

感謝や思いやりがあれば夫婦はやっていけると聞くけれど、毎日顔を合わす相手に興味を抱き続けられるかどうか、これがすごい挑戦なんじゃないかと思う。感謝や思いやりを向けることは努力で何とかなっても、関心をコントロールするのは難しい。ダンナとは知り合って人生の半分ぐらいになるけれど、これだけ一緒に過ごしてきても、初めて知る一面があるのが面白い。「子はスパイス」だと思う。

さて、今日の日記の内容にも関連して、宣伝をひとつ。9月27日公開の映画『最後の初恋』の劇場用パンフに今井雅子のエッセイが登場。映画に登場するモチーフにからめてエッセイを競演するという企画で、わたしがいただいたお題は「嵐・海」。母であり、妻である前に女でありたい。生活に埋もれているそんな女心に揺さぶりをかけるのは、嵐の海……。劇場で手に取っていただけたら幸いです。原作は『きみに読む物語』『メッセージ・イン・ア・ボトル』のニコラス・スパークス。嵐の海で恋に落ちる二人はリチャード・ギアとダイアン・レイン。

2006年09月21日(木)  マタニティオレンジ8 赤ちゃん連れて映画に行こう
2003年09月21日(日)  花巻く宮澤賢治の故郷 その2
2002年09月21日(土)  アタックナンバーハーフ


2008年09月19日(金)  広告会社時代の同期会

3年前まで勤めていた広告会社、マッキャンエリクソンで同期入社したナカジ君が転職することになり、同期を中心にした送別会が開かれた。打ち合わせが長引き、会社が入っている青山一丁目のビルの一階にあるカフェ246に着いたのは、12時前。ビニールカーテンの外を嵐が吹きすさぶオープンテラスでそのまま二次会が続いていて、主役のナカジ君を含めて8人の同期に会うことができた。同期が集うのは、ナカジ君が大阪支社に転勤になったとき以来、約2年ぶり。平成5年に入社したときは15人いた同期もナカジ君が抜けて、あと3人となった。広告業界は入れ替わりが激しく、転職組の中には3社目に移った人もいる。

この同期、すごく仲が良くも悪くもなく、ノリが良くも悪くもなく、恒例の新卒パーティ(新卒社員が企画、主催して社員にパーティ券を売る)も、なんとなくやらなかった。それでいて、誰かが異動したり結婚したりすると、同期で集まろうとなり、会うと楽しかったり懐かしかったりして、また近々やろうよと言いつつ、あっという間に2、3年過ぎる。他社からマッキャンに中途入社した社会人同級生も「同期」に勧誘しているので、同期会を開くたびに、集まる同期が増えていたりする。なんともマイペースな集団なのだけど、そのゆるさが、年を経るごとに心地よく感じられる。内定式や入社式が遠い思い出になるにつれ、同期会は、「ただいま」と帰る場所になっていく。

同期入社のアートディレクターのヒダイ君が、入社して間もなく同期で行った一泊旅行の写真を持ってきていた。FIT(フィット)というスポーツ宿泊施設でテニスをしている皆の若いこと。ピタピタのスパッツをはいて逆立ちしているわたしも、恥ずかしいぐらい幼い。モノクロで撮ってカラーで焼くとセピアカラーになると教えてくれたのはヒダイ君だけど、その手法で焼き付けられたセピア色の思い出が余計に懐かしさをかき立てて、照れくさいような眩しいような思いで、じっと見入ってしまった。

2004年09月19日(日)  2代目TU-KA


2008年09月18日(木)  マタニティオレンジ333(最終回) 魔の二歳児 魔法の二歳児

知恵がつき、言葉が達者になり、わがままも口答えもいっちょまえになって親の手に負えなくなってくる「魔の二歳児」。その悪魔の「魔」は魔法の「魔」でもある、という投書を新聞で見つけた。いつの間にこんなことができるようになっていたの、と目を見張る魔法のようなことが確かに次々と起こる。

パソコンインストール用のCDが床に転がっているのを見つけたわが娘たまは、封筒からCDを取り出し、わたしの作業椅子に飛び乗り(これもいつの間にか危なっかしくなくなった)、Macの右側にある溝にすいっと滑り込ませた。しまじろうのお試しDVDを観るときにわたしが取る手順をちゃんと見て覚え、真似している。厚さ2ミリほどの溝にCDを通すなんて器用なこともできるようになったのか、と驚いた。

大阪でいとこ兄妹のシュンちゃんとトモちゃんに「大阪にはうまいもんがいっぱいあるんやで〜」という振りつきの歌を教わったのだけど、そのときはまったく動きについていけなかったのに、昨日の朝保育園に向かう道で突然上手に踊り出した。「大阪にはうまいもんがいっぱいあるんやで〜 たこやき ぎょうざ お好み焼き 豚まん」という一番では、ほっぺたにたこ焼きを作り、耳の後ろに手を当ててぎょうざを作り、頭の上下を両手ではさんでお好み焼きを作り、最後に鼻を指で押し上げて豚まんを作る。「大阪にはうまいもんがまだまだあるんやで〜 カニ道楽 くいだおれ もんじゃ焼き なんでやねん」では、カニの手、くいだおれ人形のたいこを叩く仕草、もんじゃを焼く真似に続いて、右手を前に突き出して「なんでやねん」のポーズ。今はなき「くいだおれ」がこんな形で娘に受け継がれることに感激し、「豚まん」「なんでやねん」をうれしがって繰り返す三枚目な姿に大阪人の血を感じた。

ところで、産後のマタニティブルーにひっかけて「マタニティオレンジ」と題して子育てにまつわるあれこれを書き綴ってきたけれど、1才の誕生日を過ぎ、2才の誕生日を過ぎ、まだオムツでおっぱいとはいえ娘はもはや赤ちゃんではなくなり、わたしも、もはや産後ではなくなった。ちょうど333とゾロ目になった今日をマタニティオレンジの最終回にしようと思う。会社を辞めて脚本に専念しようと思った矢先に縁あって首をつっこむことになった子育ては、想像した以上にネタの宝庫で、毎日のように書きたいことがあった。子育て中の人は自分と重ねて泣き笑いし、子育てが一段落した人は昔を振り返り、「今井さんと同じときに子育てしたかった」と言ってくれる人もいた。子どもを授からなかった友人は、「自分が子育てしていたらこんな感じかなあ」と想像しながら成長を見守ってくれた。日記を読みながら一緒に喜んだり心配したり面白がったりしてくれた人たちの反応に励まされて、オレンジな気持ちのまま今日まで来られた。マタニティオレンジ期は卒業しても、娘の話題はこれからも日記をにぎわせるはずだし、たま語銀行への貯蓄も続けるつもり。おもろいことも大変なことも、いっぱいあるんやでえ。まだまだあるんやでえ。

2005年09月18日(日)  和歌山・串本の干物
2004年09月18日(土)  愛以外は証明できる宇宙飛行士
2003年09月18日(木)  夢も人もつながる映画『夢追いかけて』
2002年09月18日(水)  月刊ドラマ


2008年09月17日(水)  湯気の中にかおりが見える映画『しあわせのかおり』

『パコダテ人』のプロデューサー、ビデオプランニングの三木和史さんの最新作『しあわせのかおり』を試写で観た。中華鍋を熱する炎がボワッという大きな音とともに青く揺らめいて立ち上がるオープニングにつかまれる。このボワッ!がけっこうな音量で、劇中で火が点くたびにわたしは座席で飛び上がることになった。よく熱した中華鍋を卵液が踊るように滑りながら固まりかけていく様も、画面いっぱいに映るとすごい迫力。包丁さばきも大胆なジャーッと炒める手つきも豪快で、中華を作るってアクションだったんだなあと気づかされる。

とにかく出てくる料理がひとつひとつ実においしそう。中谷美紀演じる百貨店の出店交渉担当がお昼目当てに一週間通い、一日交替で「山定食」「海定食」を注文するモンタージュは、あれも食べたいこれも食べたいと目が迷い箸状態になった。しっかりとカメラにとらえらえた湯気の中に、タイトルにある「しあわせのかおり」が本当に見えるような気がしてくる。

今作と同じく三原光尋監督、藤竜也主演、三木和史プロデューサーが組んで上海国際映画祭で最優秀作品賞を射止めた『村の写真集』同様、悪い人は出て来ず、写真の代わりに料理を通して登場人物が心を通い合わせる過程をじっくりと描いている。食事を作ることは「好き」を伝えることで、嫌いな人のために料理を作るのは苦痛なのはもちろん、まず自分が自分を好きという精神状態でいることがとても大切。わたしはそう考えるので、料理の腕を上げるうちにヒロインの顔つきが変わり、藤竜也演じる師匠の王(ワン)さんに認められていく過程を面白く観た。

説明をしすぎないというか、あえて空白を残しているように感じられる場面もあって、ここは食い足りないのではと思ったりもしたけれど、料理の満腹感とのバランスを考えるとちょうどよかったのかもしれない。体にやさしくおいしいものを食べた後のように、あたたかなもので満たされたような「しあわせ」がしみじみと広がる作品だった。

出口近くで「今井さん」と呼び止められて振り返ると、『パコダテ人』でご一緒した石田和義さん。CM制作会社から映画の世界に飛び込み、パコでアソシエイトプロデューサーとしてスタートを切り、今はヒットメーカーのROBOTにいる。そういえば、『村の写真集』にも関わっていたはず。石田さんに紹介してもらって縁ができたROBOTで何度かすれ違ったことはあったのだけど、やっと今日お茶する時間を持てた。お互いやパコ関係者たちの近況を話す。石田さんにとってもわたしにとっても初めての映画だった『パコダテ人』は、格別に思い入れ深い故郷のような作品。石田さんは、『死神の精度』に続き、超大作『K−20 怪人二十面相・伝』を手がけていて、金城武づいている。

2004年09月17日(金)  『浅草染太郎』のお好み焼き
2003年09月17日(水)  Virginie Dedieu(ビルジニー・デデュー)
2002年09月17日(火)  宮崎映画祭『パコダテ人』上映と手話


2008年09月16日(火)  マタニティオレンジ332 大阪行く! 大阪また来る!

NHK奈良主催の万葉ラブストーリーがらみで、娘のたまを連れて大阪にちょくちょく帰る機会が出来、今回で4回目。これまでと違って今回は「おーかー いく!」(大阪行く!)とちゃんとわかっていて、何日も前から楽しみにしていた。保育園でも「おーかー いく!」と保育士さんに触れて回り、少し前に大阪に行ったお友だちに「おーかー いく?」と聞いていたという。

6月に会って以来、3か月ぶりの大阪じいじばあばは、急に言葉がふえたたまとのやりとりを面白がり、よく笑った。広い床、広い庭、玄関先で飼っているメダカ……東京の家にはないあれこれに、たまの目はランラン。マイカーのハンドルを握らせてもらい、じいじがなぜか持っていたマイクを握って持ち歌を次々と熱唱した。

ダンナの弟夫妻のところの3才のハルくん、わたしの妹夫妻のところの5才のシュンくんと3才のトモちゃん、3人のいとことの交流も楽しんだ。今日はわたしの中学時代の同級生、ハルちゃんのところに昨年10月に生まれたケンタくんと初対面。「あかちゃん くる?」と楽しみにしていたのに、自分と同じぐらい大きな男の子に気後れして、泣きべそをかいていた。ケンタくんは写真で見ていた以上のきりりとした美男子。今度帰ってくるときには一緒に遊べるかなあ、とお土産にいただいたマダムシンコのバウムクーヘンを食べながらハルちゃんと話した。

3泊4日の間には「おうちかえる!」と突然言い出すこともあったけれど、いざ帰る時間になると、「おうちかえらない!」。「おーかー またくる!」と繰り返しながら大阪を後にした。子連れでの帰省は今のところもっぱら飛行機。新幹線で3時間もじっとさせておくのは大変、飛行機なら泣いても一時間というのがその理由だったのだけど、新幹線のほうがラクなのではと思えてきた。泣かれても逃げ場がない飛行機と違い、新幹線なら車内を歩いて気を紛らわせることはできる。乗っている時間には2時間ほどの差があるけれど、空港までの距離、空港での待ち時間、空港内の移動を含めると、所用時間はどっこいどっこい。値段も新幹線のほうが安いし、便数も多いし、次回は陸路で帰ろうか。空港バスと並走していた白地に青いラインの泉北高速鉄道の車両を指差して、たまは「しんかんせん!」と歓声を上げていた。

2005年09月16日(金)  棚橋荘七個展 A+Tアート青山 横山KAN事務所
2003年09月16日(火)  『冷凍マイナス18号』キャンペーン開始

<<<前の日記  次の日記>>>