消えてゆく小さなこと


消 え て ゆ く 小 さ な こ と

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1905年09月30日(土)

お上手なこと を良しとする集団に
やっぱり馴染めない
もう辞めようと思う

固定観念の評価を見たいのではない
使い古された表現に興味はない
人それぞれの感動をみたい
新鮮な驚きをほしい


1905年09月29日(金)

腹立たしさを鎮められないでいる自分を持て余している

ひたすら写真を見る
動物の赤ちゃんの写真
意地悪もずるいこともしらない目
涙が出そうな気持ちになる

人はそのまま大人になれないのか

あの猫はどうしただろうか


1905年09月28日(木)

今年の秋は気持ちよく始まったのですか?
どこの金木犀も見事で
遠目にどっさり実った大きな蜜柑の木に見えるほど
濃いオレンジに香っている


1905年09月27日(水)

写真を見れば晴れやかだから
幸はおすそわけをすればいい
運ばれてゆくめでたさは
喜びの色合いをより一層やわらかく輝かせるだろう
何時でもどうぞという気持ち


1905年09月26日(火)

本当にのんきで融通の利かない人たち
ピンポイントで目の前のことしか頭にない
頭に浮かばないから話さない
話さないから伝わらない
いろんなことが蜘蛛の巣のように絡み合っているのに
少しの回り道で別の道もあるのに
人から良い智恵も借りられるのに


1905年09月25日(月)

大輪の薔薇を育てる人は
思い切りのいい人だと思う
たっぷりの肥料で休ませる前に
大胆に株を小さくする
私にはできないこと

こぼれ種や綿毛をかわいいと思う
とんでもない場所に芽吹いた知らぬ双葉を
抜けずにいる

だから私は大輪の薔薇を育てられない


1905年09月24日(日)

それは貴方のポーズでしょうか
プライドからくるレジスタンスでしょうか
客寄せパンダにされていると思ったのか
それともお情けという態度に耐えられないのか
或いは集客力の実力で一泡吹かせたいと思うのか
対等だという自己主張なのか
作品を並べることに嬉々としていたのに
次のオファー 断わりそうですね


1905年09月23日(土)

そのとろりとした まどろむような香りが好き
昔窓辺で見ていた海の風景を思い出させる
春霞の下 遠くに大型船がゆっくり往き来していた

大きなマグカップに珈琲を注ぐ
その重みを窓辺に運びながら
黒インクと便箋を使おうかと考えている


1905年09月22日(金)

芒の銀穂のような髪をしたDOLL
少年なのか少女なのか
青年の 否 年老いぬ 魔法使いかも知れぬ

人形作家といわれる人の作品
でもナマの人間より
瞳の奥に揺れる光があるのです
ちりめんや紬に体温があるのです
その不思議なウインドウの前でしばし見とれていた
DOLLは 何処を見ているのだろう と


1905年09月21日(木)

金木犀の香り流れる街角の
雨は吉祥 
幸多からんことを


1905年09月20日(水)

リンスの香りの中にふと
和らぐものを思い出した
この季節になると懐かしくなる香りを思い出した

moonstone のようなそのボトルの
眠るような曖昧さが好き
そこに立つ魂のやわらかな戸惑いが好き
その香りのまろやかさに私はいつも優しくなれる
守護霊に包まれる安堵で


1905年09月19日(火)

秋が深まってゆく
秋の兆しを見つけるのも好きだし
秋らしさに出会うのも好きだけれど
秋そのものは好きじゃない
深まってゆく秋はさびしい
わたしには その先に
いそいそと待つ楽しみがない
秋をゆったり慈しむ深さが
今の私の心にはない
大きな実りを感謝するゆとりがない


1905年09月18日(月)

誘われて神社の秋祭りを途中から見に行った
ここの神輿を見るのは何年振りだろう
ライトを浴びた神輿から
金や紅白のクラッカーがはじけて
不思議な感じがした
当世風というのでしょうね
去年もこんなだったとあなたは言った
去年一人で来て 初めから終りまで全部見たと言った
うすぼんやりとした雲の合間に
星がひとつだけ目立って光っていた
寒くない夜だった


1905年09月17日(日)

そうだよね
そんなに簡単に会えるわけない
でも無性に会いたくて
一日中待っていた
会えるわけないのに ずっと

ぼんやり手を止めてばかり いた


1905年09月16日(土)

はじめ宝塚ジェンヌの人の名を貰っていたその馬は
新しくフォークテール(民話)という名をもらった
昔そんな話を聞いたことを
ふと思い出した

その頃は何気なく聞いていた
というより どちらかと言えば
地味な名前に聞こえた
だってレースに出るんでしょう?
強そうに聞こえない
その後どう生きたのだろう

でも今思う
その馬は多分 女の子だったのでしょうね
なんて綺麗な名前の響きだろう
広い牧草地をのびやかに駆け
悠々とレースをして
今はきっと優しいお母さんになっているのだと

スーホの馬のように
哀しいことにはなっていないと


1905年09月15日(金)

通りに人影は無く
雨風の音だけ
鳥さえ飛ばない
今日は寂しい窓辺
本当に寂しい窓辺

紛らわせて誤魔化すのでなく
本当に忘れられるのは
労働の汗によって
ではないかと思う


1905年09月14日(木)

あなたが居ないこと忘れて
当たり前のように声を予期して
ぼんやりとした錯覚を繰り返し
自分に立ち返って壁の時計を見る
存在の記憶というのは
薄れるのだろうか


1905年09月13日(水)

フラメンコって面白いかもと想いながら
ナシゴレンランチに満足し
明日はカレーを食べたいなと考えている
いったい今の私の頭の中は
どうなっている


1905年09月12日(火)

ずっと山盛りの仕事で
ゆったり窓辺に立てなかった

肌寒い雨の午後
通る人影はなく
ただ淋しい

あなたは天気を気にしないひとでしたね
今もけろっと笑っていると信じています
ずっとそうであってほしいと 祈っています


1905年09月11日(月)

突然に燃え立つ気持ち
突然に何か新しいこと
エネルギッシュに床打ち鳴らすフラメンコなど
始めてみたくなる


1905年09月10日(日)

カーテンをくぐって入ってくる空気に
指先が冷たくなってきて
今日はいったい何月の気配?
そう思っていた

カーテンを開けてみると
雨が降り始めていた
音もなく細い雨
これは11月の雨だと思う
冬がそこに潜んでいるように
かなしい色
鈍い銀色をしている


1905年09月09日(土)

窓から
冷たい空気と甘い香りが流れ込む日
それは十月の特権で 
(きん)のかぐわしさ

(きん)は冷たくなく甘いものと思える日
ひとりの時間をとても長く思える日


1905年09月08日(金)

哀しみも悔いも転化できる昇華できる
埋められないのは後ろめたさという気持ち
何時までもどうしようもなく残ってしまうから

後ろめたさに落ちないために迂闊に動かない
後ろめたさに突き動かされて猛然と動く
人に言ったことを自分がしないのは後ろめたいから

そんなところでしょうか

私は人より後ろめたさの強い人間なのかもしれない


1905年09月07日(木)

君はその頃
華奢な子どもだったのだ
気持ちの透き通った少年だったのだ
ふるえる心をもっていたのだ

活発な少年時代の
自分でも気付かぬハートを
誰も見ていなかったのだ
わたしは傍にいただけだった
古い写真が教えてくれた


1905年09月06日(水)

頭の芯にまとわりついて離れないこの甘い空気
ほんの少しずつの塊を
絡み合う枝々の奥にみつけた
明るいオレンジの数粒ずつが
私をみつめた


1905年09月05日(火)

君の血液型を 意識したことなかった
オモテに見えるかたちは
あまりに違うと感じていたから

でも
君が残したこの小さなものたちに
君に潜むものを見た
キチョウメンという一面

たぶん 
君自身も気付かないだろうけれど


1905年09月04日(月)

ひとつひとつ
片付けながら
封印している

あなたには見えないけれど


1905年09月03日(日)

朝から寒い 
冷たい雨が降り出した
いろいろのものを無造作に押し込めたまま
もう何年も雑然となっている本箱を
突然がさがさ整理している

何でこんなもの残しているんだろう
何でこんなものあるんだろう
記憶に欠片も無いものもある

君の残した字があった
誠実な字だった
ずっと君と生きていたのに
何も知っていなかった
わたしが知ろうとしなかったのかも知れない

雨はいつも優しさを残すものだね


1905年09月02日(土)

高島野十郎 という画家をはじめて知った
真っ直ぐ通った芯があるような 静謐な絵だった
その芯は天に向かっているように見えた
日本画ではないのに 
床の間に飾る掛け軸のような
静かに見入ってしまう絵だった
燃え上がったり揺らめいたりする心ではなく
真っ直ぐにひたむきに見つめる眼を感じる絵だった
それでも冷たくはなく
温かみのある色だった
生涯独りで 本当は野に果てたかったのだという

展があれば 足を運びたい絵だった


1905年09月01日(金)

いつもよく出会うひとと
一度もすれ違わなかった日
何か物足りない
少し寂しい




天窓より          


−ともすれば消えそうになる自分を見失わぬよう−       

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− ささやかに −          

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日付は通し番号として記しています         


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