消えてゆく小さなこと


消 え て ゆ く 小 さ な こ と

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1904年02月29日(月)

夢の中で夕日を見た
海に沈んでゆく瞬間のオレンジ色だった
小島か岬か 水平線の左端に低く黒いシルエット
小さな金色の海とコンパクトな入日
水平線に落ちるというより 入り江に入るというような
そんな掌の蜜柑のような 荘厳というより日常的というような
どきんとするより 懐かしさでほっとする感じの

私はどこか高層階の広くて でも高級な建物ではなく 
少し雑然としているだだっ広さのある
何かもの悲しげな 人のあまりいない
いる人もてんでばらばらな 
そんな場所にいた

床から天井まで一面のガラスの前で
待っていたわけでもないのに
その一瞬に出会った
殆どの人はどこか違う所を見 話していた
窓際で外を見ていた人は あと一人
疲れた風体のおじさんだけだった
ふだんならきっと近寄りも話もしないひと
でも金色の欠片が完全にひいたとき
目が合って微笑みあって別れた
黙ってそれぞれの場所へ

夢の中で私が戻った場所はよくわからない
でも楽しい場所ではなく 不安と安堵の入り混じる
知らない親子のたくさんいるそんな部屋
黙って部屋の隅の床に座るだけでした

何かから逃れ出てきた人たちの場所だったかもしれない


1904年02月28日(日)

からだが老いる魔法があったけれど
魂が老いる魔法もあるかもしれない
そういう毒もあるかもしれない

毒に触れ禁断の沢を彷徨う魂
眼も心も靄のようにかすみ
求めるものなどみつからない

苦い葉を噛みしだいて嗚咽で夜を明かすとき
かすかに星が瞬くかもしれない
月が沢の水に降りるかもしれない

茨をつかんでよじ登らねば
明るい尾根には出られないよ


1904年02月27日(土)

見えてないのか見ない振りしてるのか
あなたが黙っているのは口論したくないから
自分に都合の悪いことをとやかく出されたくないから
だから物分りよく大人しくしている


1904年02月26日(金)

なかなか手をつけずにいた仕事 やっと取り掛かった
細々とした一つ一つの手続きの煩雑さにうんざりしながら
それでも気づけば一応のメドがたつ
こういうことの重なりで物事は進むとは分かっているけれど
気合を入れるまで時間がかかる
又出かけなくてはならなくなった


1904年02月25日(木)

人のために祈ることはあっても
自分の祈りを忘れていたことに
気づいた

知らぬうちに祈っていた
それはやわらかな気持ち
自分の真実を知る気持ち
何かを求める気持ち

自分のいたらなさに気づくことが始まりとなる
自然に祈った気持ちが始まりとなる


1904年02月24日(水)

前は美しいサイトに憧れて通った
空も夕日も花も動物も
愛情一杯に見つめられて
惚れ惚れと溜息の出る写真
やわらかな色に溢れ優しい絵に満ちて
言葉の端正な姿勢のよいサイト

でも最近疲れています
隙なく整いすぎるということに
はみ出しも狂いもなく
すべて読みどおりに進むことに

何かわからぬ期待をもたせてくれる
そんな夢をほしいのに


1904年02月23日(火)

突然ざわざわと寒気がして
寂しさに押し潰されそう

淋しくなり恋しくなり懐かしくなる
たぶんそれが人の自然の気持ち

そのやわらかさに涙が出る
きっと優しくなれた気がする
ひとに声をかけたくなる


1904年02月22日(月)

しーんとして 
人の気配がない
本当に誰もいなくて
寂しさだけがだんだん大きくなってゆく

こんなこと あったかな 昔あったかな

人の声に慣れっこになって
疎ましくなって
どこか一人の場所へ行きたいと願った日

でも今 何かが違うと感じている
どんな懐かしいものよりも
人の声が懐かしい気がする

我侭なんだね


1904年02月21日(日)

かさかさと音立てる落ち葉を見なかった気がする
襟立てて歩く風の街を思い出せないまま
たんぽぽをみつけそうだ
そんなふうにして 
人生が足早になってゆくのだろう


1904年02月20日(土)

整理しましょうよ
机も箪笥も棚も引き出しも
中にあるのは過去ばかり
もういいでしょう?

ガラスの花瓶に
いい花をたっぷり入れて
それを『今』とすればいい


1904年02月19日(金)

誰かに会えるといいなと思うのに
誰にも会いには出かけない
電話もメールもいらなくて
会いたいのは夢の中
でも
もうあの人にもあの人にも
来年は年賀状はやめようと思う
誰に会いたいのか わからない
何に出会えるのか わからない
期待もしないで過ぎてゆく


1904年02月18日(木)

部屋にずっといる
ただ座っている
窓辺にもよらず
庭も歩かず
動かないからだは
とても重く感じる
思い切り飛び跳ねられるだろうか
青い花が咲くときには


1904年02月17日(水)

空を見つけた 稜線を見つけた
広い踊り場の大きなガラスの向こう
駅のホームの向こうはるかに
高いビルをこえてはるかに
なつかしい形の山
此処からこんなに見えるなんて
夕日の落ちるとき このベンチにいたい
確かめながら階段を下りる
毎日でも来たい


1904年02月16日(火)

やっぱりね
あれで終えたと思ってるんだ
あれっきしのことで解決できたつもりなんだ
つまらないひと


1904年02月15日(月)

楽しげに歩く人になりたいよ
たぶんそれが 綺麗な歩き方
楽しみをみつけて生きる
何にでも楽しみはみつかるはず


1904年02月14日(日)

なんと勘の悪い人だろう
それとも厭味かな
それとも気づいていなかった
陰で微妙以上の私の変化を
それにしても あまりにあまりで
ちょっと言葉をつげません


1904年02月13日(土)

威張った花を並べた写真集は嫌いだ
タイトルに騙されて買ってしまった

花は威張らない
そういうふうに写真家が撮ったのだ

自然に生きる花は
凛としても偉そうにしない
虫や鳥や風の助けをかりるのだもの
ひとりでだって生きてゆけるのだもの
誰にも威張る必要などないのだもの
だから 威張らないのに


1904年02月12日(金)

たわわに花の咲き誇る大樹に憧れていた
苗木も若木もはやくはやく大きくなれと願っていた
でも今日 ある写真を見て思った
若木たちがなよやかに
そのまだほっそりした枝に
まばらに白い花を咲かせて並んでいるのは
なんともいえず儚げで はにかんだ少女のようだと
ほのかに艶かしく 夕暮れの幻のようだと


1904年02月11日(木)

あなたの夢の
傍には誰がいるのでしょう
一人で叶える夢よりも
誰かが傍にいるほうが 
きっと幸せだと思います


1904年02月10日(水)

大人になれば何でもできるよ
いいえ
大人になればできなくなるよ
思いっきり甘えること

だからそんな人を
子どもの心を持ったひとといったり
大人げないといったり

でも本当はみなそうしたいのに へんだよね
でも大人になってしまえば 難しいよね


1904年02月09日(火)

ちょっとした油断怠慢
大雑把に考えた報いとして
ああ、もううんざりする
気の遠くなる膨大な作業が
目の前に 現れる
仕方ないね
捨てるわけにもいかないのだもの
きっちり手入れしないとならないのだもの
ちまちまととりあえず端からとりかかって
何も考えずご飯も食べず延々とやってました
どこまで進んだかなんて考える余裕もなく
気づけば風は冷たくなって部屋は少し冷えていて
でも ほぼ終わっていました
細部に渡り点検して その不思議に驚いたり
あの膨大な量はどこへ消えたんでしょうね

美味しいカステーラを食べたい気分


1904年02月08日(月)

大きなイベントの前には
必ず有頂天になる人がいて
すべての功は自分の力と思っている

もっと周りを見てください
黙々と貴方を支え続けた人たちを
忘れてはいけないのに


1904年02月07日(日)

噛み合わぬ会話を平然と
いつまで続けるのだろう
月が昇り星がまわり花がかわる

通り過ぎる風だけが
何もかも知り 何もかも伏せ
湖面に影をのせてゆく


1904年02月06日(土)

春の色あふれても
花屋の花はまっすぐだ
笑いもしない歌いもしない
ウェーブもスウィングもしない
お行儀よくじっと黙って
ガラス箱から出られない
やさしい風を待っている

わたしは風花を待っている


1904年02月05日(金)

いつの間にか心の奥にできたつながり
思いもよらず懐かしい姿を見かけて
嬉しかった


1904年02月04日(木)

希望というものを捨てないで生きていってほしい
へこむことはあっても嘆かないで生きていってほしい

夢というものは
明日ではなくて もっと先に叶うものだと
きれいな目でいてほしい

貴方の心に水の原風景を
命をささえる水音を


1904年02月03日(水)

美しい建物の 
やわらかな光の空間へ

厳かと幸せのふりそそぐ
あたたかな想いに満たされる場所へ

確かめに行ったのですね


1904年02月02日(火)

君の大らかな笑い声に
ほっと救われる
いつも
何を話すわけでもないけれど
心の底から楽しそうだね


1904年02月01日(月)

私は計算ができない
損得勘定ができない
でも正邪の直感はもっていると思う




天窓より          


−ともすれば消えそうになる自分を見失わぬよう−       

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− ささやかに −          

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日付は通し番号として記しています         


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