消えてゆく小さなこと


消 え て ゆ く 小 さ な こ と

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1902年10月31日(金)

イイお顔をできなくなって
写真が嫌いになりました
鏡に笑顔を試さなくなりました

何か言われないように
誰かの後ろにそっと半分だけ顔をのぞかせて
立つようになりました

悲しい目が写らないように
ちょっとつぶってみたりして

そんな頃の写真をいとおしく見ています
今はもっとひどいから


1902年10月30日(木)

日向に寝そべっていた犬の背中は
どきりとするほど熱い
日陰は嫌いなの?

冷たい水を飲む犬の舌先から落ちる滴が
眩しくきらめく
銀色をして命あるように

夏って こういうものだった
命あることを ぎらぎら感じるものだった
お前のほうが よくわかっているんだね


1902年10月29日(水)

あなたの笑顔は夏の陽射しをこぼすでしょう
白い砂粒をばらまくでしょう
潮の香りをTシャツに 私の向かいに座って
氷をいっぱい入れた濃いアイスティーを
グラスいっぱい飲み干すでしょう

私はあなたの後ろの海を眺めるのでしょうね


1902年10月28日(火)

迎えなければいけない
夏のど真ん中から来るものを

明日のわたしは
夏の笑顔になっているだろうか


1902年10月27日(月)

一足ずつさらさらと沈んで
熱い砂の快感がくるぶしまでくる
パラソルをぬける風に
どこかのココナツの香り
夏は煌いて記憶の底にあるのに

アスファルトの熱射も
コンクリートの熱風も
強い人間だけを生き残らせる

自信のない弱者になって
夜 ほっと息をするだけ


1902年10月26日(日)

真夏の海のど真ん中に出てしまえば
太陽なんか怖くもない
そのことを忘れていないだけでも
救いようはあるのだけれど
私を引っ張り出してくれる力を
何処に忘れてきたのかを思い出せないでいる


1902年10月25日(土)

白いレースのカーテンの向こうは
薄ぼんやりした世界
突き刺す夏の陽射しもなく
黒々とした木陰もない
熱風も梢をゆっくり通り抜ける
光の足らない涼しい部屋からみる景色は
意識のはるか向こうの世界のようで
命の壮絶さを感じぬ世界
今汗の中にいるだろう人と越えられぬ隔たり
こんな生き方 いつまでするつもり


1902年10月24日(金)

朝の冷たい森を一番に抜けてきたのは誰?
露にぬれた野苺をつんで
山査子の一枝を折って
焼きたてのパンを香らせて

ルリの声
青い靄の中
軽い足音がきこえて

ノックしたのは わたし


1902年10月23日(木)

朝だろうが夜だろうが
私が何を届けても
あなたには届かない

一人でこもる暮らしを
何時になったら広げるの?
通りすがりの野良猫を眺めて
自由を確かめても
寂しさは埋まらないのに


1902年10月22日(水)

曇って月が見えないと思っていたら
遅くなって 低い空に赤い月が出たのを見た
こんな時間に出るんだ
知らなかった
不気味に赤い月
海の底ではどんな風に見えるの
新しい命は月光にむかって
静かに旅立つだろうか


1902年10月21日(火)

一人では酔えない
ワインではつまらない

にぎやかなお喋りと笑いと
時に誰かの辛辣なスパイスと
窓を開けて風を確かめる人がいなければ
パーティーにならない

今夜は曇って月もない
電話もメールもできません


1902年10月20日(月)

風蘭が咲き始めました

夜陰に首を衝き立てて唸る白き竜

異次元からの甘い吐息

アラビアの香り


1902年10月19日(日)

一人でワインを開けてみようか
誰もいない夜というのは
とどのつまり
一人暮らしとは別のもの
予定もなくつまらないだけ
チーズの味の良し悪しよりも
サラダのトマトの冷たさよりも
風の音だけ気にかかる


1902年10月18日(土)

私の青の夜の海
月の満ち 潮の大きく
新しい夢 抱けるでしょうか


1902年10月17日(金)

あなたが読んでいる本がずっと気になっていました
何を読んでいるの?
尋ねたかったけれど言い出せないままでした
茶色のブックカバーを眺めているだけでした

今でも鮮やかに その茶色が目に浮かぶ
あなたの真剣な額とならんで

私の居ない世界でした


1902年10月16日(木)

冷たい麦茶と塩のきいた大きなオムスビと 
他愛ないおしゃべりで からから笑って
ただ楽しく時間が過ぎていった

ずっとそんな関係で いたかった


1902年10月15日(水)

エンピツを借りるとき IDは自分では決められない
他の人はどうやって決めているんだろう
語呂合わせが上手くいったら?

私は何度も試してはキャンセルして
覚えなくてもいい番号
打ち込みやすさ重視です
一本の指が勝手にすらすら打ってくれる階段
だから語呂合わせがない
だからちょっと味気ない気もします


1902年10月14日(火)

時差ぼけ解消のカギは太陽 とあった
脳は太陽光に当たって 朝の認識を修正する
体内時計の朝と 日光と出会う時刻のズレが少ないほど
時差ぼけがラク と

夏の午前中に日が差し込むのが苦手で
東の窓の雨戸やカーテンをなかなか開けないのが
天然ぼけの一因かも


1902年10月13日(月)

年賀状をただやりとりし続けているだけというような
解消されても何の問題も残らないけれど
どちらも切り出さないだけというような
そんな関係のような

どちらもそう感じている関係 かもしれません


1902年10月12日(日)

最後まで諦めるな とよく教わるけれど
うまく諦めることも教えてほしかった
大事だと思う

諦めることが下手なために
ただ苦しみを増やしているだけ
そんな人生 たくさんあるでしょう

諦めることは負けを意味し 負けは人生の不幸せ 
というような図式を教え込むこと
変えていかないといけないと思う


1902年10月11日(土)

薬が効いて
発作のような咳がやっと鎮まった

しずかな夜だ
しずかな夜の気配をしみじみと胸に深く吸えること
しあわせだ


1902年10月10日(金)

君の声を聞きたいのです
いつも疲れ果てた溜息を洩らす君の 
元気な声を

雨の日の君は少し楽そうだから
だから雨を待っているのです

からだ 大切にしてください


1902年10月09日(木)

そのコーヒーゼーリーは
ひどく甘くて 薄くて
まるでただの黒砂糖の濃い液のようで
その安っぽい味わいが
妙に懐かしい蒸し暑いけだるさと
洗練のない夏のざわめきを
一匙ごとに残してゆくのです

郷愁という言葉を以って


1902年10月08日(水)

いくら待っても何も変わらない
見つけようもない
脱皮したのですか
脱出したのですか

元気に抜け出たことを祈っています
自由になった身で新しい風に吹かれ
行く先が決まらなくとも 新しい土地へ
もうすでに発ったのかもしれませんね

いつまで立っていてもしかたないですね 私も


1902年10月07日(火)

さくらんぼが豪華です
大粒できれいで赤くてやわらかです
とても甘い 
昔の 少しの硬さと酸っぱさがありません

青春のせつなさのような
きゅっとしたさくらんぼがすきだった
少し思い通りに行かない感じが好きだった
小さくても 張りつめてきらきらして見えた

今のさくらんぼは
思い通りに仕上げた上等のお菓子のように思います
だから つまらない
期が満ちて やわらかに熟して 満面の笑みのような芳香は
時として つまらない


1902年10月06日(月)

しあわせ探し という言葉
あまり好きではありません

探すものなの?
探して見つけ出すものなの?
探せば見つかるものなの?

感じるものでしょう?
きっといつも傍にあるはず
小さなのじゃいけないの?

あ、うれしい も
あぁ 楽しい も
あ、かなしい も
あぁ さみしい も
それは しあわせ と思います

あふれて止まらない涙でも 小さなチクッでも
いつも何かをふるっと感じる心をもっていられることは
しあわせなことと思います

石になった心が不幸せです


1902年10月05日(日)

心の内の魂のいろいろ
現れては潜み
語り合いたいのと
会えない


1902年10月04日(土)

紫陽花もまだみずみずしいのに
おしろい花が咲いていました
へんだよ


1902年10月03日(金)

シンプルで美しい生き方をしたいのです
そういう人になりたいのです
部屋を見てその人がわかるような
そういう部屋にしたいのです


1902年10月02日(木)

慌ただしいこと 騒々しいこと から抜け出て
一人で静かに居ようとしても 難しいね

いろんな人のそれぞれのサイクルが噛み合わない歯車
不協和音なら我慢すればいいけれど
歯が欠けてしまったりするのは痛々しい

横から手を貸して上手く噛み合わせようとする人は
力がいってしんどそうだしね

初っ端から火花を散らしそうな硬さでなく
少しやわらかな歯車をもちませんか
噛み合ってのち 徐々に固まってゆくような

あるいは円やかに磨耗し苔むしてゆくような


1902年10月01日(水)

わたしたちは 動物に生まれたのですから
動くコトを抱えているのが常なのですから

植物になりたいと いつか誰かが言ったコトバを思いながら
ワタシモ ソウカナ と思いながら生きています

記憶から消したガウラがひとつ揺れていました




天窓より          


−ともすれば消えそうになる自分を見失わぬよう−       

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− ささやかに −          

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日付は通し番号として記しています         


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