消えてゆく小さなこと


消 え て ゆ く 小 さ な こ と

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1902年07月31日(木)

冷房効き過ぎの部屋にいてすっかり体が冷え切った
夏なのに手先が冷たい 全然エコじゃない
熱いスパイスティーが飲みたくなって
スーパーのスパイス売り場をのぞいてみた
以前あった瓶入りのクローブが パウダーになっていた
ほかのも ホールやシード、スティックが消えて
パウダー瓶に替わったものが多い

便利かもしれないけれど つまらない
異国の草木、実や種という不思議さが好きだったのに

どんな花になるのかといつも思っていたクローブの蕾
シナモンスティックと一緒に香りをたっぷり効かせた
甘いミルクティーが大好きなんだけれど
少し躊躇って 今日はパウダーは買わなかった
明日もう一度考えてみよう


1902年07月30日(水)

湿った空気の底を
燕が行き交う
一気に引く線のように
長く迷いのない細い弧
ひらりとかわす体の裏を見たくて
だまって一羽を見続けている

幸せを運ぶようには見えなくて
空を切り裂く仕事にしか見えなくて
暗くなるまで見ていたけれど
いつのまにか消えていた


1902年07月29日(火)

壊れることを怖れていたが
この世に壊れないものがあるだろうか
変わらないものはあるだろうか
それは大切にされるものだろうか

時が止まらない以上
全てのものに変化があって
だからイトオシイ

ひと自身が変わるのだもの
ひとの心は 行きつ戻りつを繰り返すのだもの


1902年07月28日(月)

気をつけよ
うすい刃先
ねじれたもの
くすんだもの
きらめきすぎるもの
軽すぎるもの

手にとって
ほんものに触れてみて
しまい込む前に


1902年07月27日(日)

DIAMOND ROSE
期待の蕾を開くか
記念日になるのか
胸騒ぎだけが続く
守護として
わたしの肌に触れるだろうか


1902年07月26日(土)

ともすれば消えそうになる自分を見失わぬよう
小さなことを書き続ける
消えてゆく小さなことを連ねる
この胸に重ねる


1902年07月25日(金)

月の砂漠を銀の鞍で旅した
あの丘は何 こちらは何
名をもつ場所の砂の色は
銀にも藍にも果てしなく続いて
影は細く長く揺れた

遠い日の 散歩のような旅


1902年07月24日(木)

静かに降る諦めの時間のうちに
エネルギーを貯めておかないと
突然さしこむ強烈な光に倒れてしまう
誰の援助も受けられない日を覚悟して
砂漠の夜を旅する計画を立てておこう
一袋のあまい水を用意して

月の砂漠はやはらかか
風はやさしく届くのか


1902年07月23日(水)

子どものころ 雨の日は大嫌いでした
退屈きわまりない
外に出て濡れるのが嫌だったし
廊下の薄暗さは楽しくないし

今は雨の日はどこかほっとしている
仕方ない という諦めと
うまくやっていけるようになったから


1902年07月22日(火)

西へ東へ忙しい人いますね
本当に忙しい
何処へ行くのも時間を急いて走ってまわる
わたしの何倍もの距離と時間
人生の密度が高いんでしょうね

私はぽかんとまっすぐに歩いてるだけだ
何が残るのかなぁ
何か残るでしょうか


1902年07月21日(月)

見え隠れする影と
ほんの数歩のすれ違い 
ほんの数分 ほんの数軒
出会い損ねて掴み損ねて離れたまま
声をかけようか迷うけれど
きっと丁寧な黙礼が返るだけ
周りのそ知らぬ振りの視線には平気だけれど
あとの話を思いつかないので また


1902年07月20日(日)

雨の合間の青空がつきぬけて高くて
大きな雲の動きが速くて
私はどこにいるのかわからなくなった
街中の一角なのに
歩いているのは私のことなど知らぬままの人たちなのに

見上げればいつも何か返してくれるものが
そこにある


1902年07月19日(土)

あなたが部屋に並べた鉢植えは
ずいぶん減ってしまいました

みな本当は外へ出たかった
道行く人に声をかけられたかった
毎日のお天気を感じていたかった
主の遅い帰りを待つのにくたびれた
せめて来客があれば気も紛れたでしょうに

さびしくなった窓辺
どうしますか


1902年07月18日(金)

途中にはさまれる休みの無い6月は 
楽しい計画も立てられないけれど
振り回されることもないので
志を実行するにはいい

着実に物事を進めるスキルの無い私には
時間が静かに降ってくるこの月は
優しさに満ちている

夏の前に決めてしまわねばならぬことがある
新しいことの始まりを両手で迎えるために


1902年07月17日(木)

紫陽花重すぎ 涙溜めすぎ
蒸し暑い国の寺院の池の あの湿気の底の
睡蓮を見よ
なんとからりと元気なこと

好きではないけれど


1902年07月16日(水)

あれもこれもあの人もこの人も
私の中で流れは次第に合わさって
オーロラのように一本になってゆく
色の定まらぬままゆれ動いては
私を惑わす

私はどんな色をしているのだろう
あの光の中のひと色にあるのだろうか


1902年07月15日(火)

ウソツキ ほらふき 見栄っ張り
見てもいないことを見たように話す
してもいないのにしたように話す
相手次第で180度違う話
人の話を自分の体験にして話してまで
話題の中心にいたい?
自分の頭で考えることがまるきりなくて
退屈というばかり

そんな人に付き合ってる気持ち全くありません
思い直した私が馬鹿だった
私はやっぱり貝になる

自分の頭でしっかり考えてる人の言葉に
私は深く動かされる


1902年07月14日(月)

パキパキの黒とか白とか深紅というのが苦手だ
少しひかえたグレイやオフホワイトやローズがいい
きっと何でも 100% みたいなものがダメなんだ
金メダル みたいなことがダメなんだ

神経がすごく疲れる
その先のゆとりがなくて
終点駅のホームの先端の あのイキドマリみたいで
息がつまる

いつか果てあるけれど今は
どこまでも続いているようなものが 好き

登りつめてしまったようなものは 苦手だ


1902年07月13日(日)

ぐずだから
今日はこれを片付けよう と仕事を一つに決めないで
これとこれ と二つ決めておけばいいんだ
そうすれば そのうちの一つだけは進んでいくかもしれない


1902年07月12日(土)

部屋の模様替えをして掃除して
広くなって軽くなった気がする

夏が本気になる前に自分の気持ちを軽くしたかったから
真新しい軽い風をたくさん呼び込んで
違う場所にいる気持ちになりたかったから

一歩進んだ気持ちになれた
明日はもっと何か出来そうな気がする
仕事を山ほど思いつきそう
それは少し楽しいことだ


1902年07月11日(金)

また一つ新しいことが始まるのだから
あふれて持ちきれないものは
心にだけ残して捨てていこう
無理に押し込めても
石のように固まって重くなるだけだから


1902年07月10日(木)

クロスの形のパールをみました
天然の湖水パールだそうです

不思議でした

思い出したのは ブラック・ジャック
体に残された医療ミスのメスが
硬い鞘のようなものに包まれていた
それは神業の手もかなわない
人間の体の不思議でした
必死で刃物を包み続けた体の神秘

貝はどうやってクロスを作ったんでしょうね


1902年07月09日(水)

風に揺れる白い花を見なかった
すももやガウラやどうしていたのだろう
暑い日盛りに猫といっしょに行ってしまった
灼けた屋根と乾いた地面を残して
ミルクの皿を残して

夕顔の香るまで
ほてりを静める風を待とう


1902年07月08日(火)

私の時計は風時計
働き者のおじいさんの時計ではなく
何時起き出すのかいつ眠るのか
人を翻弄するのか癒すのか
諭すのかもしれない時を流し続ける
きっと風時計
たまに凪いだり
私の鼓動に重なったり


1902年07月07日(月)

新聞の見出し字に美しい言葉を見るのが好き
言葉を生業とする人の作り出す清々しい言葉が好き
本のタイトルも好き

風着(かざぎ)
その衣は風を纏う気持ちになれるのだろうか
その本を買って作りたいと思った


1902年07月06日(日)

苦手な人達の共通項に
いのししというものが浮上
少しナゾが解けた気がする
その人を嫌なのじゃなくて
その人の中の
いのししが苦手だったのです


1902年07月05日(土)

今さら という言葉
思い切って呟いてみれば 
不意にストンと胸に落ちて
涙になる

もっと使えばよかったんだね

決断して
自分に褒美か罰か逃亡か

イマサラ何だ 
イマサラどうなる
でもトリアエズ トニカク 
そう思えたらそれでいい


1902年07月04日(金)

はっきりしない気持ちは梅雨空に似て
クレマチスの潔さも藤のやはらかさもなく
ジャーマンアイリスの楽しさも
カラーのほのぼのも消え失せた


1902年07月03日(木)

残念 という気持ちは一番苦しい

悲しみはまぶたで
幸せは口もとに
怒りは脳天で
とにかく昇華してゆくのだけれど
いつか透明な懐かしい感覚になるのだけれど
残念という気持ちは
何時までも苦く胸にくすぶり消えない

真正面に向き合いたくない気持ち
背を向けて振り返らずに
無理やり前だけ向いていようとしても
胸に残り続ける

今まで ずっとそうだったけれど
残念なことがあまりに続いて
何となく付き合い方を得たような気がする
何とか胸に抱いていけそうな気がする


1902年07月02日(水)

オーダーでない一点もの が好き
どこかにハンドメイド
人の手の技あることの伝わるもの
ケアにつながる


1902年07月01日(火)

夜の列車旅はどうですか
個室の窓は怖くないですか
どんな景色を見たのでしょう
目を凝らして闇を見続けても
見えるのは自分の顔ばかりかもしれない
記憶に残るのは単調な響きと振動ばかりかもしれない
揺れながら喜びと悲しみに出会えますよう祈っています
よい旅でありますように




天窓より          


−ともすれば消えそうになる自分を見失わぬよう−       

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− ささやかに −          

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日付は通し番号として記しています         


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