2009年04月13日(月)  子どもそっちのけで親が夢中に!アイビーズ

昨日ご近所仲間の会の会場を提供してくれたK家夫人のキョウコちゃんにプレゼントしてもらって、「アイビーズ」というものの存在を知った。極細極短(直径1ミリ長さ3ミリのような小ささ!)のストロー状ビーズを突起のついた台に点描の要領で並べて行き(中が空洞なので、点描ではなく丸描?)、仕上げにアイロンをかけると、あら不思議、ビーズが溶けてくっつきあい、板状のオブジェが完成する。アイビーズはアイロンビーズの略だろうか。

面白そうだけど、この細かいビーズが床にちらばったら片付けが大変だと敬遠して、2歳児娘のたまの目につかないところに置いたのだが、めざとく見つけた上に、「これ、かたまるの?」と聞いてきた。どうやらキョウコちゃんから使い方を説明されたときにわたしが「へーえ、固まるの?」と驚いたのをばっちり覚えていた様子。たまの目は「やってみたい」の好奇心でらんらんと輝き、箱を開けるしかなくなった。

対象年齢は6歳以上で、たまはビーズをつかむことはできるが、台に立てる器用さはない。ところが、大人の無骨な指だと小回りがきかず、ビーズを立ててはなぎ倒すの繰り返しで、もどかしいほどはかどらない。顔つきが険しくなるのを自分でも感じながらムキになっていると、母親をビーズにとられて面白くないたまがちょっかいをかけてきて、振り出しに戻る。「もう、ママがやってるのに!」と思わず声を荒げ、たまは泣き出す始末。ううむ、おもちゃに親が夢中になって子を泣かせてしまうとは。昔リリアン、今アイビーズ?

キャラクターを作れるセットになっていて、図柄見本が同封されているのだけど、デザインは自由自在。たまのリクエストに応えて「おうち」と「ハート」を作り、最後にネームプレート代わりに「タマ」を作った。ほどよくビーズ感を残して固めるアイロンがけの塩梅が難しく、くっつきが足りないとビーズがバラバラになってしまうし、溶けすぎるとのっぺりする。3作目がいちばんうまくできた。熱で変質するといえば、子どもの頃プラバン(=プラスチック板)に油性マジックで絵を描き、オーブンで焼いてアクセサリーを大量生産したけれど、あの感覚にも似ている。あとひとつぐらい作れそうな量のビーズが残ったが、つきあいきれないたまが「ねる」とぐずり、おもちゃをしまった。

最近の子守話は、たまが主人公の「ニュースたま」。テレビのヘッドラインニュースの口調を真似て今日の出来事を報道し、「♪ニュ〜スたま」とジングルをはさむと、たまはご満悦で「おもしろい」と相づちを打つ。自分が世界の中心になっていないとつまらないという性格は困ったもので、朝ドラ「つばさ」は「たまちゃんでてないから、おしまい」となる。でも、今日は初めて「あした、つばさみようね」と歩み寄りを見せてくれた。

子守話54 ニュースたま

きょうもたまちゃんはほいくえんでたくさんあそんだもようです。トイレもしっかりできて、おむつは1まいですみました。
♪ニュ〜スたま

たまちゃんはばんごはんのおでんのウィンナーひとりで3ぼんもたべました。おデブよほう、いちだんとよこにおおきくなるでしょう。
♪ニュ〜スたま

たまちゃんとママはビーズのおもちゃであそびはじめましたが、ママのほうがむちゅうになって、たいくつしてしまいました。
♪ニュ〜スたま

たまちゃんはまちくたびれて、はやくねようよとなきました。ねむかったのでおふろもはみがききもやめました。
♪ニュ〜スたま

それでは きょうはここまで。たまちゃんはたのしいゆめをみて、あしたのあさはママと「つばさ」をみるよていです。
♪ニュ〜スたま

2008年04月13日(日)  マタニティオレンジ267 子どもは遊びの天才
2007年04月13日(金)  マタニティオレンジ106 慣らし保育完了 
2006年04月13日(木)  ヘレンウォッチャー【「子ぎつねヘレン」の夕べ編】
2005年04月13日(水)  お風呂で血まみれ事件
2002年04月13日(土)  パーティー


2009年04月12日(日)  一年ぶりにご近所仲間の会全員集合

食べることとしゃべることが好きで、会うとあっという間に半日経ってしまう時間泥棒なご近所仲間の会が、メンバーのY家のロンドンからの一時帰国に合わせて開かれる。メンバーにとっては家族行司と同じぐらい優先度の高い会なので、「打ち合わせが重なったらどうしよう」と心配したが、セーフ。「日本にいる限りは駆けつける」と宣言していた大阪在住・出張続きのミキちゃんも無事参加でき、去年の春の一時帰国(2008年3月30日(日)マタニティオレンジ259 一生ものの友だち、二世代目。)以来、一年ぶりの全員集合となった。

会場は去年と同じくK家。3時スタートで、和風アフタヌーンティー。さつま揚げ、菜の花、若たけのこ、牛肉のタタキ、ふきの煮たの……といった和食メニューと、イギリス土産のクラッカー&チーズがテーブルに並ぶ。わが家が持ち寄ったのは、季節は過ぎたけれど「おでん」。近所にあるおでん種専門店でゲソやらぎんなんやらごぼうやらの練り物各種をちょこちょことビニール袋いっぱいに買い込み、行きつけの豆腐屋さん「太田屋」で、がんもどき各種を仕入れた。

うちではおでんを作ったことがないので、昨日の晩に試作。ネットで調べてみると、流派がいろいろありすぎて、「何でもいいのだ」という結論に。「薄味で素材の持ち味を引き出す」「沸騰させない」「大根など味がしみにくいものは先に」「練りものは煮すぎない」「はんぺんは火を止める直前」などのアドバイスを得て、我流で2種類作ってみる。だし醤油を薄めたバージョンと、だし+こんぶ茶+塩の関西風バージョン。これで大根と袋(これまたレシピいろいろなので我流で。合い挽き肉、細かく切ったしいたけ、たけのこ、ごぼう、すりおろした人参とれんこん、桜えびと胡麻、軽く塩と黒みつを混ぜ、油抜きした寿司揚げに詰める)をことこと煮て、味を比べると、関西風が圧勝。というわけで、あらかじめ煮た大根を持参し、あとはK家の台所で関西風おでんを作らせてもらう。ワインから日本酒に移った頃に出すと、昼間のお酒によく合って、好評だった。

株大暴落の話、イギリスでは「産むとすぐ退院」する話(Y夫人のイズミさんは第2子マイちゃんを夜中に病院で産み、歩いて帰宅したそう)、日本の幼稚園おいくらの話(東京は3万前後が多いよう)、夫婦で水着姿を見たことある・ない話……なんてことのない話題をつなげているうち日が暮れた。

食後のデザートは日本橋高島屋で買って来た村上という金沢のお店の和菓子。いろんな種類の中から、どれがいいかなと品定め。「関西の『さくら餅』は、東京では『道明寺』っていうんだよね」「じゃあ、東京の『さくら餅』は、関西では何?」という話になり、そういえば、このタイプは大阪では食べなかったなあということで、東京版さくら餅をいただく。ぎゅうひがもっちりしていて、幸せ〜。「年を取ってからは和菓子だねえ」と一同しみじみ。とくにロンドンに住んでいるY夫妻は大きくうなずいていた。

4歳から1歳まで4人の娘たちは一年前よりは打ち解けた雰囲気。うちのたまは恥ずかしがり屋なのか、一人だけ輪から外れて親をやきもきさせたが、長時間の会の終わりのほうにはキャッキャと明るい声を上げていた。ホスト役のK家のまゆたんが3歳児ながら全員に目配りして気を遣っていたのには感心。もてなし上手のK夫妻に負けないホスピタリティーを見せてくれた。帰るときは、「たまちゃん、またね」とY家の長女ユキちゃんが手を振り、たまも一生懸命振り返し、ご近所さんの会2代目の親睦も深まった様子。2世代で旅行もしたいねと話す。

おくりもののやりとりも互いの好みを心得ていて、親戚づきあいのよう。Y家からはイギリス土産の子ども用の手提げと紅茶、K家からはアイロンで固まるおもちゃのビーズ、鉄道と映画を愛するT氏からはレトルトカレーと絵本2冊(『おならうた』と『とこちゃんはどこ』)、『シネマ大吟醸』という本をいただく。たまのいちばんのお気に入り絵本『やこうれっしゃ』をプレゼントしてくれたT氏、鉄道以外の絵本にも目が利くらしい。たまの今のブームが「おなら」であることまで見抜いたか。『シネマ大吟醸』は著者・太田和彦氏のサイン入り。太田氏セレクトの映画作品を集めた「昭和の原風景」を神保町シアターにて4/11〜5/8まで上映。読んで、観て勉強しなさいの親心。

【お知らせ】明日からの「つばさ」第3週は「家族の周波数」

いよいよヒロインつばさがコミュニティ放送の立ち上げに巻き込まれ、お仕事が動き出します。のひに「ラジオぽてと」となる川越市初のコミュニティ放送、2週での仮称は「川越演奏所」。放送を送信所に出力する施設を演奏所と呼ぶのですね。初対面のつばさをいきなりイモ呼ばわりする高飛車な社長の真瀬昌彦(宅間孝行)とつばさのかけあいは、早くも名コンビの予感。のちにつばさの同僚となるシングルマザーの丸山伸子(松本明子)、売れない芸人のロナウ二郎(脇和弘)も初登場。ロナウ二郎の逃げた相方とは、つばさが毎朝聴いている「ベッカム一郎の朝イチ!豪快シュート」の売れっ子芸人ベッカム一郎(川島明)。ショートギャグのツンドラ級の寒さに、逃げられたのも納得!?

真瀬ら家賃滞納3人組が下宿しているのは、川越キネマという元映画館で、大家はヒロリンこと斎藤(西城秀樹)。2階が下宿で1階が共同スペース。ビリヤード台の大テーブルは、ラジオ開局後は会議机兼作業机としても活躍。

3週では開局に向けての「ラジオの周波数」探しと並行して、母・加乃子(高畑淳子)が10年ぶりに帰ってきたことで知秋(富浦智嗣)が変調をきたし、不協和音が響く玉木家の「家族の周波数」探しが描かれます。どんな人と人にも、きっとつながれる周波数がある! 赤いてぶくろ、名前の縫い取り(刺繍)などのおふくろアイテムにもご注目。

連続テレビ小説「つばさ」(月)〜(土)放送中
【放 送】総合・デジタル総合 8:15〜8:30
     デジタル衛星ハイビジョン 7:30〜7:45
     衛星第2 7:45〜8:00
【再放送】総合・デジタル総合 12:45〜13:00
     衛星第2 19:30〜19:45 (土)9:30〜11:00(一週間分)

2008年04月12日(土)  マタニティオレンジ266 保育園保護者会にパパ会長
2007年04月12日(木)  『ドルフィンブルー』と『ヘレンケラーを知っていますか』
2002年04月12日(金)  背筋ゾーッ


2009年04月11日(土)  〈学術標本の殿堂〉東京大学総合研究博物館小石川分館

小石川植物園を訪ねるたびに気になっていた赤がアクセントの白いレトロな洋風建築。人が入っていくのを見たことがなくて、てっきり使われていないと思っていた。天井は高そうだし、レストランにしたら素敵なのではと勝手に想像していたが、現役の博物館であることを今日知る。植物園の中からは行けず、いったん出て入り直す形で、入口は奥まった場所にあった。植物園は入場料330円がかかるが、博物館は無料。


「東京大学総合研究博物館小石川分館」の名称が上質の紙にエンボス加工で刻まれたリーフレットは、〈交通・通信技術の発達とともに地理的な「世界」が縮体されていく一方、知の「世界」は加速度的に拡大され、高度に細分化され、その先端的な広がりの全貌を把握することあもはや容易ならざることとなっている〉などと文章も格調高い。

元々は東京医学校(東大の前身)の中心建築で赤門の近くに建っていたのを移築した建物で、アクセントになっている赤い塗装は赤門や医学部の煉瓦校舎との視覚的な連続性を意識したものらしいとリーフレットの説明で知る。建物の中は時間が止まったような、というより時間を閉じ込めたような空気に包まれ、空間そのものが大きな展示物であるような厳かさに満ちている。余分なものはなく、置かれているひとつひとつが「そこにあるべきもの」として注意深く配置され、調和しているような感覚で、小川洋子さんが書く博物館を想像した。


「驚異の部屋-The Chambers of Curiosities」と銘打った常設展示は、「東京大学の学術標本や廃棄物を現代アートの文脈から再構成」する試みで、学術的な説明をあえて排除している。オブジェのように佇むきのこ。骨格標本のユーモラスな立ち姿。薬草を詰めた瓶の数々が息をひそめて並ぶガラスケースには、美しく重厚な存在感があり、何かを企んでいそうな危うさを漂わせる。確かに説明は要らない。見ているだけで、ドキドキし、ワクワクし、驚きと発見があり、想像をかきたてられ、「学術」と「芸術」がとても近いところに生息するものなのだと気づかされる。2歳児の娘のたまも神妙な顔と好奇心の眼で展示物のひとつひとつに見入っていた。

日曜日の午後だというのに貸し切りのようにひとけはなく、実に贅沢な時間。あの人を連れて来たら喜びそうだなと友人の顔が浮かぶ。一階のテラスに出て、目の前にひらける日本庭園をぼけっと眺めるのもいい。生ける絵画のような絶景を窓枠に納めるよう計算したような建物の立地にもアートを感じ、リーフレットにある〈学術標本の殿堂〉という表現に納得した。

東京大学総合研究博物館小石川分館
木・金・土・日・祝日 10:00-16:30開館
文京区白山3-7-1
丸ノ内線茗荷谷駅から徒歩8分 都営三田線白山駅から徒歩15分

2008年04月11日(金)  マタニティオレンジ265 トントン、おっぱい入ってますか。
2007年04月11日(水)  ロバート・アルトマン監督の遺作『今宵、フィッツジェラルド劇場で』
2004年04月11日(日)  日暮里・千駄木あたり
2003年04月11日(金)  ちょっとおかしかった話
2002年04月11日(木)  ネーミング


2009年04月10日(金)  『生者と死者』(泡坂妻夫)と「生と死」コラム

推理作家の泡坂妻夫さんの訃報を知ったのは、2月5日付の読売新聞「編集手帳」欄。「あわさかつまお」が本名「あつかわまさお」(厚川昌男)のアナグラム(=つづり替え語)であることも記事で知った。作家でありながら、和服の家紋を描く紋章上絵師という職人であり、プロ級の腕前の奇術師。加えて落語にも造詣が深いことを、亡くなってから知った。自作の落語(滑稽噺、廓噺から人情噺まで)とエッセイ、さらには奇術指南まで豪華演目が目白押しで「一冊の寄席」として楽しめる『泡亭の一夜』を読んで、徹底した遊び心とサービス精神にあらためて目を見張った。

わたしがこの作家を知ったのは、新聞の書評欄に「消える短編小説」と紹介されていた袋とじ小説の作者としてだった。袋とじ状態では短編小説、袋とじを解くと長編小説になる(しかも読後感は別物)という。面白いことを考えるなあと興味をそそられ、早速購入した。袋とじという性格ゆえ、借りるわけにも古本を待つわけにもいかない。内容はうろ覚えなのだけど、袋とじ部分を切るときにドキドキしたことと、「短編ではこうだったけど、長編ではこうつながるのか」を確かめながら読んだことは印象に残っている。仕掛けで読者を驚かせ、楽しませるのは、いかにもマジシャン作家らしい。

タイトルは何だっけと「泡坂妻夫 袋とじ」で検索すると、『生者と死者 ―酩探偵ヨギガンジーの透視術』だった。刊行は1994年10月となっているから、入社2年目のことだ。生者だった作者が死者になったのを機に思い出したタイトルが、そのものずばりとは、マジシャンにトランプのカードを当てられたよう。

折良くといおうか、新聞を整理していたら、4月7日の朝日と読売の一面コラムが「生と死」を語っていた。

読売の編集手帳は、「過去から現在に至る人類の総数」について読者から問い合わせがあったという話。もうすぐ一歳になる子どもの寝顔を眺めていて、「この子の母親になれたのは人類で私ひとり」と気づいた若い母親が、「何分の1」の分母に思いを馳せた問いだという。わたしも娘を見ながら、「よくぞうちへ来てくれた」と感謝と歓迎の気持ちがこみあげたりするけれど、これほどのスケールで巡り合わせの奇跡を考えたことはなかった。記事にも引用されているが、「およそ一千億」(アーサークラーク著「2001年宇宙の旅」の一節より)分の1の幸運。

一方、朝日の天声人語は、103歳の母親を看取った女性から投稿された「あっぱれな旅立ち」というエピソードを紹介。亡くなった母の日記から出てきた一枚の紙に「あの世で長いこと私を待っている、大事な人に電報を打ってあります。待ちかねて迎えに出ていることでしょう。喜びも半分、不慣れで心細さもありますが、待つ人に会える楽しみもあります」と綴られていた。すべてを受け入れた、なんという穏やかな心境。記者が「透明な境地」と例えたように、さざ波ひとつ立たない澄みきった湖面を想像させる。今年一月に102歳で亡くなったひばば(ダンナの祖母)は、「なかなかお迎えが来なくて」と口癖のように言っていたけれど、このような心持ちで旅支度をしていたのだろうか。

生まれるのも死ぬのも一度ずつ。どちらも不思議なことだらけだけど、鏡のように照らし合わせてみると、見えてくるものがある。

2008年04月10日(木)  マタニティオレンジ264 「きのこのこのこ」と「ワァニ」
2007年04月10日(火)  マタニティオレンジ105 産後の腰痛とつきあう
2004年04月10日(土)  大麒麟→Весна(ベスナー)
2002年04月10日(水)  なぞなぞ「大人には割れないけど子供には割れる」


2009年04月09日(木)  心に橋をかける映画『The Harimaya Bridge はりまや橋』

今井雅子脚本の6本目の長編映画『ぼくとママの黄色い自転車』でご一緒した東映の木村立哉さんが昨年プロデュースしたもうひとつの作品、日米韓合作『The Harimaya Bridge はりまや橋』を試写で観る。英語教師として高知に暮らしたことのあるアロン・ウルフォーク監督の長編映画デビュー作。その題材と舞台に日本を選んだのは、そこで過ごした時間が監督の人生に大いなる影響を与えたことを物語っている。

わたしも高校時代にアメリカ留学をした一年間に、それまでの16年間で得た世界観を塗りかえるほどの刺激と衝撃を得た。映画長編デビュー作『パコダテ人』でしっぽをモチーフに個性や差別を描いたのは、肌の色の違いを超えて「わたしはわたし」だと発見した経験がベースになっている。また、長編3本目の『ジェニファ 涙石の恋』は、主演のジェニファー・ホームズが日本に留学したときの経験が原案の日米合作映画で、「外国人から見た日本」という視点は『はりまや橋』に通じる。

もうひとつ、『はりまや橋』に興味を抱いたのは、英語教師として高知に滞在した黒人青年ミッキーの設定。画家としての才能も発揮し、子どもたちに絵の指導もしていた彼が不慮の事故で亡くなるところから物語は始まるのだが、主人公である彼の父ダニエルは、息子が日本人女性と結婚し、二人の間に子どもがいたことを知る。黒人の青年が日本を去った後に混血の子が残るという筋書きが、わたしがガーナの脚本家John Sagoe氏とメール交換で脚本を開発した『Pacific Chocolate』と似ているのだ。

『パシチョコ』の場合は、跡継ぎのいないガーナの王様(ガーナにはたくさんの王様がいるらしい)が、かつて日本留学中に恋仲になった日本人女性との間に息子がいることを聞きつけて日本を訪ね、血はつながっているが心のつながりのない彼と心を通わせていくストーリー。ガーナ人との混血の青年はチョコレート色の肌をしていて、家具工房で働いている(ガーナは木工が盛んで、ラストは彼がガーナへ渡って指導をする)。子どもたちにも手ほどきをしていて、「チョコレート先生」と慕われているのだが、「芸術家で先生」というところは『はりまや橋』のミッキー青年に重なる。

John氏は確か3年前の東京国際映画祭直前に「来週東京へ行く」とメールをくれたのが最後で音信不通となり、パシチョコ企画は止まっているのだが、「先にやられてしまった」という気持ちと、「どんな風に仕上がっているのか」の好奇心が湧いたのだった。

実際に本編を見てみると、『はりまや橋』と『パシチョコ』の大きな違いは「心の壁」のスケールだった。ともに親子が溝を埋める話だが、『はりまや橋』のほうが溝は深い。青年ミッキーが日本へ行くのを父ダニエルが猛反対したのは、ダニエルの父つまりミッキーの祖父が太平洋戦争中に日本軍の捕虜として悲惨な死を遂げたから。父を殺した国に息子が夢を見ることは、ダニエルにとっては裏切りだった。だが、喧嘩別れした息子との仲を修復する機会のないまま、息子は日本で命を落としてしまう。

残された父にできるのは、息子が生きた証、日本で描き遺した絵を集めることだった。その目的のためだけにダニエルは日本の土を踏む。息子が現地の人の心に遺したあたたかなものには見向きもせず、絵という物を集めることだけに血眼になるダニエルは、
観客には憎むべき人物に映り、もどかしさや憤りさえ呼び起こす。だが、その心が少しずつ解きほぐされ、離れ小島になっていた彼の心は日本へ向かって開かれる。そして、彼が現れたことによって心をかき乱された人々も、それぞれの答えを導き出し、穏やかさを取り戻していく。

黒人や外国人への偏見ももちろん描かれているが、それは「心の溝」の代表例のようなもの。人と人を隔てている「わかりあえない、わかりあいたくもない」という拒絶や諦めは、相手を知らないことから始まり、親子の間であっても「知りたくない、聞きたくない」という失望が溝を生む。そこから一歩踏み出したとき、心と心の間に橋が架けられることを『はりまや橋』は静かな感動とともに伝えてくれる。橋を渡るほんの少しの勇気があれば、人と人も、国と国も、わかりあえる、つながれる。そんな希望を届けてくれる作品だった。

役者陣の熱演も光っていた。ダニエル役のベン・ギロリさんは、この作品のエクゼクティブ・プロデューサーでもあるダニー・グローヴァーさんと、スピルバーグ監督の『カラーパープル』以来23年ぶりに兄弟役で共演。教育委員会の原先生役の清水美沙さんの英語の演技には説得力があった。ミッキーの妻、紀子を演じた高岡早紀さんは見とれるほどきれいで(『さよならCOLOR』の原田知世さんを観たときのような感動!)、切なさが美しい。主題歌『終点〜君の腕の中〜』も歌っている教育委員会職員・中島役のmisonoさんは、くるくる変わる表情がなんともキュートで、たちまちファンになってしまった。彼女を見てジュディマリのYUKIちゃんを連想したら、公式サイトの「好きなアーティスト」に「YUKI」と名前があって、納得。

The Harimaya Bridge はりまや橋』は、高知での先行上映に続き、新宿バルト9ほかで6月13日よりロードショー。日本にこんな風景が遺されていたのか、と感動を覚える高知の空や坂や緑は、ぜひスクリーンで。『ぼくママ』と同じくティ・ジョイ配給なので、予告編では『ぼくママ』を観られる可能性大。

2008年04月09日(水)  マタニティオレンジ263 こどものあそびば『ピアレッテ』
2007年04月09日(月)  人形町の『小春軒』と『快生軒』と『玉英堂彦九郎』
2004年04月09日(金)  五人姉妹の会@タンタローバ
2002年04月09日(火)  東京コピーライターズクラブ


2009年04月08日(水)  Q-potのお菓子なアクセサリー

4月2日の読売新聞で、パリコレの見本市会場の古い建物の柱をホイップクリーム風に飾り付けてケーキのように仕立てた写真が目に留まった。訪れる黒ずくめファッション関係者をアリに見立てたお茶目な演出。手がけたのは、アクセサリーを出品していた日本人デザイナーのワカマツタダアキさん。プチフールやマカロンを象ったアクセサリーもパリッ子の注目を集めたという。

ワカマツさんが手がけているアクセサリーブランドの名前、キューポット(Q-pot)に見覚えがあった。ずいぶん前にバナナチョコのアクセサリーが紹介されている記事に興味を持ち、携帯電話のメモ帳に記してあったブランドだ。早速サイトへ飛んでみると、ホイップ、シュークリーム、アイスクリーム、マカロン、チョコレート……目移りしそうなおいしそうなスイーツが指輪やらピアスやら携帯ストラップやらになっている。しかも、これはと思ったものは、ことごとくsold out。バナナチョコの指輪も売り切れていて残念。

いちごのホイップの指輪とビスケットのピアスと指輪が「在庫あり」だったので注文し、待つこと数日、今日商品が届いた。いちご指輪はおもちゃみたいだけどピンクのストーンがアクセントで、コドモじゃないわよと主張。ビスケットのピアスと指輪は木でできていて、かなりかわいい。しかし、思った以上にデカイ。確かにデカイと説明があった気がするけど、ここまで主張しているとは……。オレオクッキーより大きいのではなかろうか。舞台に立つような機会があったときの、とっておきにするべきか。先日買ったPhilaeのクッキーネックレスと組み合わせてもいいかも。

4月28日にはQ-pot初のムック(その名も「Q-pot」)が宝島社から出るそうで、こちらも注目。1380円で豪華付録の“Q-pot.チョコっとエコバック”(チョコレートのポーチの中からチョコレートのエコバックが登場。写真はこちら)がついてくるとはお値打ち。いまいまさこカフェの壁紙にも似ているし、これは買わねば。

ちょうど前原星良ちゃんから先日家にお邪魔したときに置き忘れた娘のたまのスプーンが届く。星良ちゃんが作ったフェルトのケース(どんぐりのアップリケつき)とソフトクリームの髪留めがオマケで同封されていた。「アイスね! かわいー! つける!」とたまは大はしゃぎ。お菓子アクセサリー好きはしっかり遺伝。ダイニングテーブルにもお菓子なシールがペタペタ。


【お知らせ】『いい爺いライダー』東京上映会

崔洋一監督に「おれらでも映画やれるべか?」と聞き、「やれる、やれる。本気でやるなら協力するよ」と言われて、北海道の素人高齢者集団が本気で作ってしまったのが2003年の『田んぼdeミュージカル』。(函館港イルミナシオン映画祭で拝見)したが、出演者の元気良さと計算では出せない味わいに観客一同ぶっ飛んだ。

第2弾『田んぼdeファッションショー』(05年)に続き、シニア暴走族が町の合併に反対して爆走する第3弾『いい爺いライダー~easy RideR the Tanbo~』(08年)が「第17回スポニチ芸術文化大賞」を受賞。優秀賞の綾小路きみまろ氏の中年パワーを爺いパワーで押さえた快挙。その贈賞式の前日に急遽東京で上映会が開催されることになったと脚本を書かれた知人の斎藤征義さんよりご案内が届いた。2008年の「地域づくり総務大臣表彰」にも選ばれ、爆音を轟かせて絶好調な『いい爺いライダー』をスクリーンで観られる貴重な機会、ご興味とお時間がある方はぜひ。

日時:4月16日(木)17時開場 入場料1200円
会場:渋谷ユーロスペース(東急本店近く) 
舞台挨拶:原田幸一(主演) 伊藤好一(監督) 崔洋一(映画監督・総合指導) 奥泉光(作家・特別出演)

2008年04月08日(火)  はじめてのJASRAC使用料
2007年04月08日(日)  東京都知事選挙
2005年04月08日(金)  懐かしくて新しい映画『鉄人28号』
2004年04月08日(木)  劇団ジンギスファーム「123」
2002年04月08日(月)  シナリオに目を向けさせてくれた「連載の人」


2009年04月07日(火)  溶けたプラスチック入りインドカレー

打ち合わせを終えた帰り道、新しくできたインドカレー屋の前で足を止めた。今夜は娘を預けているし、ダンナの帰りも遅い。一人分の夕食をテイクアウトのカレーで済まそう。

うちに帰る頃にはナンもカレーも冷めていたので、レンジで温め直す。ナンは皿に移したが、カレーを皿に移すのを「洗い物が増える」からと横着した。プラスチック容器をレンジにかけて大丈夫なのだろうかと一瞬疑問が頭をかすめたが、「コンビニのお弁当もチンしているではないか」を根拠にレンジで2分。取り出そうとして、後悔した。容器の丸い口が楕円形にゆがみ、変形している。

あわてて皿に移し、2種類あるうちのほうれん草カレーを口につけると、明らかにプラスチックの味がする。もう一方のマサラカレーはさほど気にならないので、そちらだけを食べることに。だが、マサラカレーだけ無傷ということはあるまい。バターと生クリームで誤摩化されているだけだ。平らげてからプラスチックの味がこみ上げてきて、「まずい」と思った。空腹のあまり冷静さを失っていたけれど、これは食べてはいけなかったのである。

「プラスチックを食べてしまった!」とあわて、「どうしよう」と焦ったが、後の祭り。溶けたプラスチックが体の中で固まったりしないだろうか。職業柄、たちまち想像力スイッチが入り、胃壁に張りついたプラスチックをリアルに思い浮かべてしまう。子どもの頃、幼なじみのヨシカに「チューイングガムは飲み込んでも外に出て行かへんねんで」と脅され、ガムを飲み込むくせのあったわたしは、それまでに胃に納めた大量のガムが胃壁にベタベタイボイボとくっつく図を想像し、心底震え上がった。ヨシカは「あと、トマトの皮も」と言ったので、赤い皮も張りつき、グロテスクな眺めとなった。

忘れかけていたその恐怖がプラスチックとともに蘇った。プラスチックの材料は石油だっけ。でも、合成着色料も石油ではなかったか。だったら、少々口にしても健康を脅かすことはないか。でも、有害物質が溶け出していたら……。生命の危機に瀕すると、人間の頭は高速回転するものだと感じる。

こういうときは、とりあえずネットに聞いてみる。「溶けたプラスチックを食べた」で検索すると、同じ失敗をした人がたくさん見つかり、まずは安心。「電子レンジで変形することがあっても、よっぽどの高熱でなければ溶けない」という意見がある。歪んだプラスチック容器をよく観察すると、ところどころ透けるぐらい薄くなっていて、溶けたように見えるのだが、「変形」だと解釈することにしよう。でも、明らかにカレーは石油臭い味がしたのだが、「プラスチックの匂いを味だと勘違いするケースがある」らしい。万が一、プラスチック溶液が口に入ったとしても、「食品に使われるプラスチック容器は安全性をチェックしているので、命を脅かすような有害物質は基本的には使われていない」という。ちなみにコンビニのお弁当などに使われるプラスチック容器は「レンジOK」の材質なのだとか。

質問掲示板に駆け込んだ「プラスチック食べちゃった人」が寄せられた回答にお礼を書き込めているということは、「命に別状なし」の何よりの証拠。「大丈夫そうだ」と気が大きくなると、気分も良くなったが、命が縮む思いを味わって、カレーも味わうどころじゃなかった。皿洗いをケチるものじゃないなと反省。

2008年04月07日(月)  マタニティオレンジ262 たま大臣の記者会見
2007年04月07日(土)  G-up Presents vol.5『アリスの愛はどこにある』
2004年04月07日(水)  2人で150才の出版祝賀会
2002年04月07日(日)  イタリア語


2009年04月06日(月)  『韓流「女と男・愛のルール」』(朴チョンヒョン)

物を書く仕事をしている縁で、書物を贈られる機会が多い。わたしも自著を贈った経験があるけれど、贈る側からすると、すぐさま読んで感想を聞かせて欲しい、できればネットなんかで宣伝もして欲しい。書籍の売り場争奪戦は、映画の小屋争奪戦以上に厳しく、話題にならない本はどんどん淘汰され、売り場から撤退させられてしまう。せっかく口コミしてくれるなら、早ければ早いほどいい。

それがわかりつつ、一月下旬に届いた朴チョンヒョン(漢字で表記すると、チョン=人偏に宗、ヒョン=玄)さんの『韓流「女と男・愛のルール」』に手をつけずにひと月経った頃、著者ご本人から「本届いていますか? お礼がまだですが」と彼らしいストレートでお茶目な問い合わせのメールがあった。早速あわててページをめくると、面白さと読みやすさもあり、数時間で読みきれた。なんだ、これぐらいの時間ならもっと早く取れたのに、と申し訳なさも手伝って、大急ぎで感想をまとめ、「わたしの日記でも紹介しますね」と書いたのが、2月20日。それからあっという間にまたひと月。朴さん、ごめんなさい。

朴さんに会ったのは昨年のこと(>>>2008年11月01日(土)「恋愛地理学」の朴教授)。朴さんの研究仲間であるツキハラさんの上京に合わせて、ツキハラさんの友人たちが集まった会にダンナとともに同席した。ちょうど朴さんがこの本の原稿を執筆中のことで、登場するエピソードのいくつかを披露してくれたのだけど、なかでも「韓国人は記念日好き」という話が印象に残った。わたしが大の記念日好きで、誕生日や結婚記念日はもちろんのこと「出会った日」や「初めてデートした日」をしっかり記憶し、歳月がめぐってもそれを思い出し、相手にも同じことを求めるがゆえに軋轢を生むことがある。その被害者であるダンナは、「韓国の女性とつきあったら、うちの嫁以上に面倒くさそうだ」と思い、わたしは「韓国の男性なら、わたしの記念日好きにつきあってくれるかも」と思ったのだった。

実際に読んだ本のなかでも、最も興味を惹かれたのが、この「記念日好き」話。バレンタインデー、ホワイトデーにちなんで、韓国では毎月14日に恋人たちの記念日が設定されているという。記念日信仰者のわたしでさえ、1歳までは毎月祝っていた娘の月誕生日を最近は忘れがちなので、恋人と月に一度の記念日を祝おうと思ったら、かなり高熱な恋愛温度と強度な恋愛体力(忍耐力)が必要になる。キムチとプルコギで蓄えたスタミナが恋愛にも活きているのだろうか。

とくに面白かったのは、恋人がいない男女が黒ずくめの服装で黒いものを食べて独り身をアピールする4月14日の「ブラックデー」。朴さんが来日してから生まれた記念日で、何も知らない朴さんがたまたま黒を来て入った店で黒いものを食べ、ふとまわりを見たら辺り一面真っ黒で何事かと慌てたという。本人の口からすでに聞いた話だったけれど、本を読みながら、また笑ってしまった。「世にも奇妙な物語」とか短編映画にそのままできそうなヘンな光景だ。

ホワイトデーのひと月後にブラックデーをぶつけるのは、「白黒つけたがる」韓国流の現れにも見えて興味深い。本の中では、「グレーでいようとする」日本流との対比で「韓流白黒のつけ方」が描かれていて、なるほどお隣の国なのに真逆だなあとカルチャーショックを受けた。たとえば、5人グループの中で2人が仲違いをした場合、日本では当事者同士は絶縁しても、あとのメンバーとのつきあいは続く。A子と喧嘩したB子は、B子以外の3人とはこれまで通りつきあいを続けるし、B子もA子以外の3人との縁は切らない……というのはよくあるパターン。ところが、韓国では、「A子派とB子派にグループが分裂」するのだという。どっちつかずの自分を許せず、立ち位置をはっきりさせてしまうらしい。ううむ、ここにもキムチ・プルコギパワー。日本流では「A子ともB子とも仲良くする」ことに疑問や葛藤を感じないのは、「なあなあ」という曖昧さがクッションになっているからかもしれない。

他に興味をそそられたのは……。

「韓国人は口喧嘩するけど手を出さない」という指摘。日本人は言葉にする前に傷つける行為に走ってしまう、その背景に「怒りをぶつけるボキャブラリーが貧困だから」という説は新鮮。

韓国の母の息子への溺愛ぶりは、身につまされて読んだ。韓国の男性と結婚した日本の女性は、家庭に干渉する姑の越権行為に辟易としてしまうらしい。溺愛度なら日本のわがダンナの母も負けておらず、「あなたはいいわねえ、毎日あの子に会えて」などと真顔で言われたりする。彼女にとっては息子は永遠の恋人で、嫁はライバル。口出しもしたいし、手出しもしたい。わたしの場合はダンナ母に「まいりました」と白旗を上げたうえで、いろいろと教えてもらったり助けてもらったりしている。息子への愛のお裾分けをいただくつもりでつきあうのが、嫁姑円満の秘訣かもしれない。

「秘密」の取り扱いの日韓の違いも面白かった。秘密を「言うな」と言われたらその約束を守ろうとする義理の日本人に対し、韓国人は言うべき相手との情を優先させる。隠すにせよ打ち明けるにせよ秘密のやりとりには感情の動きが伴うので、脚本を書く上で(ドラマを転がす上で)はとても大事な要素。でも、日韓では、そのタイミングや相手が変わってくる。女友達の秘密を黙っていた妻を夫がなじる(夫婦の絆のほうが親友の絆に勝るという判断)くせに、女友達が泊まりにきたときには、妻は夫とではなく女友達と寝るのが普通なのだというから一筋縄ではいかない。

脚本といえば、朴さんは日本のテレビドラマをかなり見ていて、日韓恋愛観の違いを見比べる材料にもしている。本文中にもいくつかのドラマが引き合いに出されているが、脚本家の名前を明記していたのは好評価。テレビのドラマ欄でも脚本家の名前が記される機会は少ないので、わたしが所属する日本シナリオ作家協会はクレジット表記に躍起になっているという事情とあわせて、朴さんにはお礼を伝えた。

「今井さんとダンナさんも登場していますよ」と朴さんに教えられていたので、どんな風に書かれているのかしらんと期待して探してみたら、「プロポーズのなかったカップル」として登場。韓国の男は愛の言葉を臆面もなく口にし、プロポーズにも気合いを入れて白黒つけるが、日本の男はプロポーズさえ出し惜しみする。その日本代表に抜擢されていた。ううむ。

するっと読めるけれど発見盛りだくさんな『韓流「女と男・愛のルール」』。興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。

他に大阪出身でコピーライターから脚本家に、という経歴がわたしと似ている友人の川上徹也さんから『仕事はストーリーで動かそう』が、わたしが脚本を書いたラジオドラマ『アクアリウムの夜』に出演された秋元紀子さんの友人、井上豊さんから5月刊行予定の『冒険リクタウミ』が届いている。近いうちにご紹介したいと思う。

2008年04月06日(日)  ギャラリー工にてマッキャンOB『Again』展
2007年04月06日(金)   エイプリルフールと愛すべき法螺吹き
2002年04月06日(土)  カスタード入りあんドーナツ


2009年04月05日(日)  新聞広げて宝探し

一歩も外へ出ず、家にこもってパソコンに向かう。気分転換に、たまった新聞の整理をする。ネットで記事を読める時代ではあるけれど、新聞を広げる時間には代えられない。森の中から木の実を探すようなワクワク感も、深海に眠る真珠を掘り当てる興奮も、視界に納まりきらない見開きの新聞紙から見つけ出すという行為あってこそと思う。ダンナが「バサバサとうるさい」と非難するほどの音が立つので、かなりのスピードでめくりながら目を走らせているのだけれど、アンテナに引っかかる記事は、どんなに小さくても、「ここですよ」と知らせて光っているみたいに目に留まる。

今日の宝探しで拾った小さな記事は……。

3月21日(土)朝日。毎週楽しみに読んでいる落合恵子さんのエッセイ「積極的その日暮らし」。根つきのセリの根っこを水を張ったグラスに挿して、伸びたセリをまた料理に使ったり、人参の頭から出る葉っぱを楽しんだり、生ごみになるはずの野菜から生まれる窓辺の緑たちが、「人生のちょっとした煩い」を吹き飛ばしてくれるという言葉に共感。『人生のちょっとした煩い』を書いたアメリカの女性作家を「キッチンテーブルライター」のひとりと紹介している。書斎を持たず、子どもが食べたクッキーのかけらが散らかっているような台所のテーブルが仕事場。わたしもそれだ、とわがキッチンの窓辺の森を眺めながらうなずき、「キッチンテーブルライター」の呼び名を気に入る。

3月30日(月)朝日。「先生からのサプライズ」と題した投書。小学校卒業を間近に控えた6年生に担任の先生が6年分の同窓会をプレゼント。1時間目は1年生のクラスの同級生と、2時間目は2年生のクラスの同級生と集まり、一日をかけて6年間を振り返ったという。何て粋な贈りものだろう。

4月2日(木)読売夕刊。くるくる回る部分がいちごにペイントされたカナダ・バンクーバーを走るセメントミキサー車の写真。そういえば、アメリカで食べたいちごは長細かった気がする。日本だったらいちごよりタケノコかな。

4月3日(金)朝日。明治・大正の記事データベース。1879(明治12)年の記事には自転車が登場している。1925(大正14)年の記事では、不景気で菊池寛の収入が激減。1922(大正11)年の献立には「豚肉と野菜のカレー」や「焼きナスのマヨネーズソースかけ」が登場。未成年の飲酒禁止は1922(大正11)年からで、1889年(明治22)年に「13歳の少年がそば7杯、酒を6合」無銭飲食して警察に突き出されているが、飲酒は問題になっていないのが興味深い。

2008年04月05日(土)  桜吹雪舞う鎌倉
2007年04月05日(木)  消えものにお金をかける
2004年04月05日(月)  シンデレラブレーション
2002年04月05日(金)  イマセン高校へ行こう!


2009年04月04日(土)  朝ドラ「つばさ」第2週は「甘玉堂よ、永遠に」

つばさ第1週の放送最終日の6日目。BS2で観て、総合で観て、一週間分まとめて放送を観る。娘のたまの「たま語」のつばさ語録も一週間でずいぶん収穫できた。30日の初日から「シ〜ザ〜」と主題歌に合わせて歌い、「なんでシーザーっていってるの?」と突っ込み、わたしが「ママはお仕事で『つばさ』作ってるんだよ」と教えると、「たまちゃん、おしごとで、ちょうちょさんつくってるの」と張り合っていたが、毎日毎日何度も観るものだから、次第に「つばさ」を「ママを横取りするライバル」視するようになった。「ちゅばさ、おわり〜」とテレビを止めようとしたり、「たまちゃんでてないよ」と訴えたり、「だんだんがいいよ」と前作を引き合いに出したり。「だんだん」と言えば、竹内まりやさんのナレーションが「また明日。だんだん」と締めくくることが多かったが、たまはそれが印象に残っているらしく、「つばさ」の放送が終わると、「ちゅばさっていわないの?」と不思議がる。

昼から四ツ谷駅近くの土手で花見。同席した皆さん、「つばさ、観てますよー」。スタッフに面と向かって悪口言う人はいないだろうから贔屓点は加算されているだろうけれど、「面白い」「ヒロインが可愛い」などと好意的。「家事の描写が細かくてリアル」と細かいところをよく観てくれている人も。作り手の意図や意欲がけっこう伝わっていることに、ほくほくする。

「つばさ」は一週間ごとの「パッケージ感」を意識していて、毎週月曜日の入口と土曜日の出口をしっかり作り、サブタイトルもその週にふさわしいものを吟味してつけている。第1週「ハタチのおかんとホーローの母」に続いて、第2週は「甘玉堂よ、永遠に」。この週も小ネタがいろいろ登場。斎藤清六さん演じる中古機械のブローカー・田中さんが紹介する和菓子製造機の「あずき2号」。わたしのご近所仲間で鉄道ファンのT氏は「あずさ2号が登場するのですか!」と興奮したが、「あずさ」に横棒一本足して「あずき」である。鉄道といえば、西武鉄道と東武鉄道が競い合うように「つばさ」ラッピング電車を走らせているのが話題になっているが、つばさの弟・知秋が「鉄道ファン」らしきものを愛読しているのも見逃せない。どうやら知秋は「鉄」の様子。知秋を演じる冨浦智嗣君は、わたしのまわりの主婦の間で話題沸騰。声といい、動きといい、想定外なところが「気になる〜」「くぎづけ〜」となるそう。

今後も度々登場する「一見おふざけ、でも重要」アイテムとしては、一週で外箱だけ登場した「センジュくん」。掃除道具を千手観音状態にした便利なんだか不便なんだかわからない代物。つばさの母・加乃子が一攫千金を目論んだものの大量の在庫を抱え、玉木家で場所を取ることに。こういう売れないものに夢を託してきた結果、加乃子の借金は膨らんでしまった模様。2週ではセンジュくんを実演販売する加乃子も見られ、放浪の10年間の生き様がうかがえる。

そして、これまた「一見おふざけ、でも重要」なサンバダンサーが玉木家のお茶の間に登場。何度も見ると感覚が麻痺してくるけれど、初めて見ると度肝を抜かれるかもしれない。畳の上を踊り歩くサンバダンサーは、なんともシュール。

連続テレビ小説「つばさ」
【放送】
総合・デジタル総合 (月)〜(土)8:15〜8:30
デジタル衛星ハイビジョン (月)〜(土)7:30〜7:45
衛星第2 (月)〜(土)7:45〜8:00
[再放送]
総合・デジタル総合 (月)〜(土)12:45〜13:00
衛星第2 (月)〜(土)19:30〜19:45 (土)9:30〜11:00(一週間分)

2008年04月04日(金)  アートフェア東京で名久井直子とミヤケマイ作品集の話
2007年04月04日(水)  マタニティオレンジ104 ママ友さん、いらっしゃいませ。
2004年04月04日(日)  TFS体験入学
2002年04月04日(木)  前田哲×田中要次×松田一沙×大森南朋パコダテ人トーク

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