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2010年12月31日(金)
2010年いろいろ十傑

観た順。ベストワンには★印。

■映画(これは五傑)
 『Dr.パルナサスの鏡』
 『ハート・ロッカー』
 『第9地区』
『スローターハウス5』
 『スティング』

■演劇
 『富士見町アパートメント』(AプロBプロ
 『農業少女』
 『御名残四月大歌舞伎』
 『ザ・キャラクター』
 『八月花形歌舞伎』
『聖地』
 『自慢の息子』
 『じゃじゃ馬馴らし』
 『母を逃がす』
 『M』

■ライヴ
 『THEE SCENE』
 JAMIE CULLUM
 矢野顕子
 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
 THEM CROOKED VULTURES
 eastern youth
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
 MANIC STREET PREACHERS
 『武満徹トリビュート』(その1その2
 METROFARCE

■その他、境界があいまいなもので非常に印象に残ったもの
 山川冬樹の2本(『黒髪譚歌』『Pneumonia』
 『BLANK MUSEUM』の2本(『デレク・ジャーマン BLUE NIGHT』『LOOKING FOR THE SHEEP day1』
 『あいちトリエンナーレ 2010』
 『わたしのすがた』(1回目2回目
 『パブリック・ドメイン』



2010年12月30日(木)
『抜け穴の会議室〜Room No.002〜』

Team申『抜け穴の会議室〜Room No.002〜』@PARCO劇場

2010年芝居おさめ。初演は観ていません。しかしこれ、漣さんあてがきのようだったよ…!蔵之介さんとの年齢差みたいなものが自然に観られた。初演では仲村トオルさんだったんだよね、この役…どんな感じだったんだろう?

しかし前川さんは面白いなー。Team申前作の『狭き門より入れ』ではキリスト教、こちらは仏教的な思想。ふたりの男が部屋にいる。彼らはどうやら転生待ちの立場で、前世で縁があった間柄らしい。前世の記憶がないふたりは「先生」「部長」と呼び合い、部屋の蔵書をめくり、これ迄の人生を復習する……。

転生の度に貸し借りをつくる。前世でやり残したことの続きが出来る、傷付けたひとを来世で助けることが出来る。自分が決めたことのようで神さま(のような存在)が決めている。その方が気楽だと思うか、ひと(神?)任せなんてイヤだと思うか。逃げても逃げてもその手を逃れることが出来ないと思うか、自分で何かを決められるなんて、自分がひとを救えるなんて思い上がりだと気付くことが出来るか。

どちらにしても、そう思わないと生きていけないひともいるのだ。自分が存在している意味を見出すために、必死で探す。こういうことがあってもいいと思えるのも悪くない。

蔵之介さんと漣さんのテンポよい台詞のやりとり、同一セットの中で繰り広げられる、さまざまな前世での出来事。展開が読めるところはあれど、ふたりの芝居のうまさと謎解きとは離れたところに着地するストーリーは気持ちのよいものでした。

あ、あと『母を逃がす』を観たあとにこれ観るとあ〜と思うところがあった。親と子供の思いは擦れ違うばかりだ。それが判らないまま死んでしまうのは悲しいけれど、多分そういうことが殆どだ。遺された者が考えていくしかない。そしてまた生まれ変わり、お互いそれに気付かないまま会う時が来たら、やりなおせることがあるかも知れない。

こういうことがあってもいいと思えるのも悪くない。

ラストシーンの漣さんの表情が素晴らしかった。それ迄意識的に冷静に観ようと務めていたが、ここでもうダメだった。個人的には人生は一度っきりで充分、もう沢山と思っているが、あの表情にはそれを揺らがせるだけの力があった。「やっぱりまた人間をやりたい(記憶がおぼろなのでニュアンスは違いますがこんな感じのこと)」と言って、来世への扉を開けて出て行った部長の表情、そしていつかの人生で先生と擦れ違い、そのまま渋谷の雑踏へ消えていく老いた部長の表情には、人生のつらさはかなさが凝縮されていた。

数日前の本番中に漣さんは怪我してしまったそうで、若干足をひきずっておられました。あと一公演、無事に終えられますように。



2010年12月29日(水)
TOKYO No.1 SOUL SET

TOKYO No.1 SOUL SET@LIQUIDROOM ebisu

ひいーこちらは5時間超、流石にへとへとですがな。いやー面白かった。

入場すると七尾旅人くん演奏中。弾き語りだけど殆ど即興かな?自分の曲もどんどん変えてってるみたいでした。ギターにシンセ、エフェクターをどんどん足してって、効果音もヒューマンビートボックスもやるで〜って。出番がAFRAの次だったようなので意識したのかな(笑)。電気「虹」のカヴァーがすごくよかった!改めて原曲の詞(いやこれ卓球一世一代の詞だと思う…ううう……)、メロディの美しさを思い知る。原曲のメロディから半音下げたりする唄いまわしが、旅人くんのハスキーな声とよく合っていた。そして付け加えられた「そう まるで 虹のように」と言うフレーズが、詞の世界をより開いた状態にしていた。そのくりかえしに思わず涙ぐむ。これ自分のライヴでもやってるの?卓球と仲良かった縁で憧れの川辺ヒロシに会えたなんて言ってたけど(笑)。また聴きたいよー!

続いてneco眠る。Drsの子の脱退が決まっており、現メンバーでは最後のライヴだったそうです。いやーすごくよかったよー!Bの子はこないだ観た時と同じ様相(服は着てたが)で、暴れまくってサンバイザーと首にしてるチェーンが飛んでいく度拾って被りなおすってのを何回やったか。近くにいた初めて観たらしい子は「どうしても被ってたいんだ…」と呟いていたよ……そしてこんななのに演奏全然ヨレないのな。あー巧くてやることはバカってバンド、だいすきー!しかしDrsの子が抜けるのは痛い。すごくいいんだものー!ああ勿体ないなー…Gの子が「僕らは僕らで続けていくし、彼も自分のバンドでやっていくのでどちらも応援してやって」とMCで言っていた。Bの子がDrsの子の見せ場をつくるべくいろんな気配りをしていたのが印象的、あんなバカやってても実は心根の優しい子なのかも知れん。最後はハケたメンバーを呼び戻して、皆で肩組んでご挨拶。これからどうなっていくのかな。またライヴ聴きたいー。

そして原田郁子さん。発表は個人名義だったけど、おんなの子4人編成(Perc、Key、Steelpan、Dance)になってました。皆鳥みたいなかぶりものしててかわいい。全員楽器をとっかえひっかえ、ヴォーカルは原田さん。曲間を殆ど空けず演奏を続けていく。ライヴと言うより美術館で観るパフォーマンスのよう。マイクを通してはいるものの、繊細な微弱音が非常に綺麗に拾われている。皆静まり返って聴き入る。PAはZAKさんでした。

曽我部恵一BANDは自発的に観ることはないのだが(行くイヴェントやら対バンでだけ観ている)知ってる曲ばかりだったなあ、こういう場ではツカミがいい曲を選んで盛り上げようとちゃんと考えているのでしょうね。

で、ソウルセット。ええと、出演バンド中いちばん音がわるかった(苦笑)これ結構よくあるんだけど、何でだろう?ヒロシくんのトラックとはなちゃんのベースが爆音なのは大歓迎なんですが、ビッケが何言ってるか全然聴き取れないこと多いんだよねー。どうにかならんか……。俊美は元気そうにしてました。コメントもありましたがここには書かない。それを気遣いスベると言う珍しいビッケも見られました(笑)。この日「Innocent Love」「Jr.」聴いたときはなんとも言えない気分になったなー。ずっと同じではいられないもんだよね。いつもこれが最後と思っておかねばなあ。しかし来年もやりたいと言ってくれたので、12月29日は空けておくよー。いいライヴおさめでした。

そういえばいつからかヒロシくんはアナログ使わなくなったけど、今ループってどう組んでるんだろう?



2010年12月27日(月)
『乾いた花』『30th Anniversary<おメトロ祭り>オーラス2010』

『乾いた花』@新文芸坐

『さらば、二枚目スター 池部良さん お別れ上映会』の中の一本。先日武満徹トリビュートで聴いた音楽が凄まじかった『乾いた花』が上映されると言う絶好のタイミング。これを映画館で観られる機会はなかなかないでしょう!

と言う訳で出掛けていくと激混み。平均年齢60歳↑かな…立ち見も出ていました。ロビーには献花台も用意されており、往年の池部さんファン、映画ファンが押し寄せた感じ。すごいー。早めに行ってよかった…。

かなり傷んだフィルムですと断りがあったのですが、それがまた1960年代のモノクロ映画を今観てる!とテンションあがる要素になったりして。いやしかし格好いい映画だった…池部さんも加賀まりこさんも格好よかった……。池部さんはすごいメイク濃かったんですが、モノクロ撮影のためそうしたのか、ご自分の演技プランのうちだったのか?この時40代半ばだったそうですが、役の年齢は30代だったそうなので。

あたりまえなのだが、自分が知っているその姿よりも皆さん若い。そして粋。加賀さんがもう!ちょー美しい!小悪魔!当時のファッション、ヘアメイクも堪能。佐々木功さんがチンピラの役で出ていたんだけどちょーかわいかった…ハーフの子みたい。このひとがその後宇宙戦艦ヤマトのうたを……。そして竹脇無我さんがワンシーンくらいのちょい役で出ていた。モノクロならではの陰影と、撮影アングルに凝った映像美も素晴らしかったー。

で、音!花札をカチカチと切る音からタップ音に移行しホーンが炸裂する。うわーこれかー!先日オーチャードで聴いたものは木板のタップボードでしたが(熊谷さんは基本木板の上で踊りますし)こちらは多分リノリウム。花札のトーンと合わせてあるのでしょうが、効果音と音楽の自然な融合であり乍らちょーアヴァンギャルド。ストーリーに並走し、要所要所で爆発を起こすその緊張感!いやあすごかった…大友さん有難う、すごいもの聴かせてもらいました。

そして驚いたのが、終盤の見せ場で「ディドとエネアス」のアリアが使われていたこと。これ、菊地さんがPTAでもやってるオペラです。知らなかったのでビックリした!こんなところでも繋がっていたのか。

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上映後に篠田正広監督のトークショウ。進行も立てずおひとりで話されたので講演会のよう。どこ迄書いていいかな…(苦笑)政治的な話も盛り沢山。以下大丈夫そうなところを箇条書き。

・原作は石原慎太郎の短編。今石原はマンガにおけるセックス、過激な描写を取り締まろうなんてことしてますがね(笑)これ(『乾いた花』)なんか、当時映倫にひっかかってお蔵入りになっちゃったんだよ(8ヶ月干された後に公開され、ヒットしたそうです)。博打のシーンばっかりで、背徳的だとか言われて

・これは成人指定だろう、上映出来ないって言われた。そしたら石原が「篠田を叱る会」って題した試写をやろう、マスコミに見てもらおうと言い出して、上映会をやることになった。1963年12月12日。開始後数分もしないうちに記者がどんどん出て行く。なんだよ観てくれよとひとりを捕まえると、「小津安二郎監督が亡くなったそうなんです」……忘れもしない

・池部さんは舞台『敦煌』で失敗して休んでいたところだった。プロンプがついていたのに台詞につまって立ち往生してしまうことがあって、降板して落ち込んでいた。そこに私が『乾いた花』に出演してくれないかと交渉に出掛けて行った。池部さんは「皆俺のこと何て言ってるか知ってるか?」と言い、私は「はい、池部は三行以上の台詞は憶えられない、と」と答えた(笑)「そんな俺に何で出演依頼に来るんだ、ひやかしか?」「映画監督は出演者と心中するつもりでいつも撮っています。ダメな映画になるような俳優に出演を依頼するなんてことは有り得ません」

・そして池部さんは台本7ページ分の長回しを一発で決めた。台詞がふたことみことの加賀まりこの方が噛んじゃったんだよ。緊張していたんだね。しかし二回目にOKを出した

・池部さんはいろいろとプレッシャーもあったのか、撮影中どんどん痩せていった。「映画は疲れるねえ、俺痩せちゃったよ。ベルトがこんなにあまってる」と言う池部さんの前に跪いて、衣裳部から持ってきた裁ちバサミであまった部分を切ってやった。あれはホモセクシュアルのような気持ちだったな(笑)でもそれくらい信頼関係と言うか絆があった

・池部さんは「いるだけでいい」俳優。脚は長いし立ち姿もいい、絵になった。この才能は努力して得られるものじゃない。台詞は練習すればいいけど、あの存在感はね。彼は最初東宝のシナリオ部にいたんですよ。でもあの姿、ほっとける訳がない。俳優になれと引き抜かれた。彼が来ると、撮影所の女性が皆見学に来ちゃうんだよ

・音楽は武満徹と高橋悠治。花札の表面にはロウを塗ってあるので、切るとカチカチ音が鳴る。そこから映画が始まる……武満はクセナキスの作曲法をやってた高橋と組んだ。高橋は数学で作曲するんです。ドレミで表現出来ない音楽をやりたかった。読売交響楽団で、芥川也寸志の指揮で録音した。芥川は東京芸大(当時は東京音楽学校)出でガチガチのクラシック畑の人間だったが、やりたいと言ってきた。譜面に起こせない曲をどう指揮して録音したか?ストップウォッチを持って時間を計り乍ら、腕を時計の針に見立てて0秒、15秒、30秒、45秒…とカウントしていったんだ(笑)

・この話はこの夏にボストン大学の映画芸術のクラスで話してきたばかり。あの花札、任天堂が作ったんだって話した(笑・冗談かと思ったけど、任天堂は実際に花札も作ってるそうなので本当の話かな?)こんなに年数が経っても、彼らの音楽は外国でも興味を持たれ研究されている

・池部さんと原さんのディープキスのシーンね、実相寺監督に「篠田…てめえこのやろう」って言われたよ(笑)と言う訳で原さんがいらしてます

原知佐子さん(実相寺昭雄監督夫人)が飛び入り、会場がどよめく。

篠田●実相寺監督はTBSのもうエラいさんなのに、松竹ヌーヴェルバーグにすごく興味を示してましたね。それで僕らとも交流があった。しかしあのシーンのことは(笑)言われたなあ
原●まあ、暗くて殆ど映ってませんけどねっ。まーそれにしても今観ると自分でも気持ち悪いくらい声が高いわね(笑)でも、池部さんはねえ、本当に素敵な方で
篠田●あらっ。(実相寺監督に)言いつけちゃうぞ
原●もういないから…
篠田●いや、俺ももうすぐ行くからあっちで
原●あら、それでは宜しくお願いします(笑)
篠田●あの頃一緒に映画を作ってた連中は皆死んじゃったなあ。私も来年80ですからね(どよめき)

人生の先輩方の粋な会話ににっこり。こういうふうにカラッと自分の行く末を話せるようになりたいものです。いやでも篠田さんも原さんもまだまだお元気でいてくださいね。ふたりとも実年齢聞くとビックリするくらいシャキッとされていて格好よかったです。

その他、東宝と松竹のスタジオの違いとか、五社協定、文芸プロダクションにんじんくらぶ等当時の話が沢山聴けました。面白かった!

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『30th Anniversary<おメトロ祭り>オーラス2010』@O-EAST

『PAST FUTURE ANIMATORS STANDS ON GAIA』CAPTAIN YEARS ANTHOLOGY BOX発売記念、30周年記念のしめくくり。いやはや4時間やりました。それでもずっと通して瑞々しいヨタロウさんの声、素晴らしい!七色の声とよく言われますがその表情の変化も衰え知らずです、ホントすごいわ…今回の一連のリイシュー作業やら何やら大変だったでしょうに、ライヴの進行もざんざか務めて文字通り八面六臂の活躍。メリィさんが「今年の活動はひとえにヨタロウ氏のがんばりです」と仰ってましたよ。そういうメリィさんも『STANDS』ジャケ写の衣裳とか着てんだよ!何それおなおしなし?すげー!「でもきっと脱ぐのが大変」だって(大笑)

OAにはお祝いに駆けつけてくれたいろいろな方たち。GUNちゃんと西村さんによる面影兄弟「おみそしるあっためてのみなね」も聴けました(笑)一色さん率いるジャック達のMCのユルさと演奏のギャップに驚いたりしつつ、青山さんがグランドファーザーズで出たのにキャーとなり、さあいよいよ本編です。

「30周年を迎えますます混迷を極めるメトロファルス、どんなバンドなんでしょうねまったく」。ホントにね…こうやって新旧曲一挙に聴くとわけわかんなくなるよ(笑)チャバネ(かわってねー。てかライヴで叩くの観られたの初めて!すっごい歓声飛んでたよ)とバカボン(バリバリトニー・レヴィンルックで来たよ!)のリズム隊を聴けたのも嬉しかった。彼らが加わってやった「Beating Drum」「Harvest Moon」辺りはもーバリバリのどプログレですんごい格好いい!「こんな曲をね、バンドブーム真っ只中にやってた訳ですよ。誰もついてこないよね」なんて言うヨタロウさんに「ずっとついてきてるよ!」とフロアから声が飛んだのも微笑ましい。

ニューウェイヴ時代あり、プログレ時代あり、ケルティック時代あり、ヨタロウさんの演劇仕事(松尾スズキ、井上ひさし)の曲もあり。それらが同列で演奏されても違和感がないメトロファルスマジック。4時間で網羅出来る筈ないわな、あっと言う間に時間は過ぎた。ホント唯一無二のバンドだわ…ヨタロウさんの声の力は勿論大きいけど、それをメリィさんとGUNちゃんの柔軟な演奏力がバッチリ支えているからと言うのもあるだろうな。そして当時ならではのシンセの音も、今鳴ると懐かしいと思いはすれど古いとは感じない。しかしAKIさんも仰ってたけどバカボンが入った時の安定感は半端なかったですわ…この時はGUNちゃんもギターに戻ってのびのび弾いてたような感じがしました。うーん、いいもの観た。バカボンヴォーカルの「ですぺらWALK」も聴けたし!(泣)

ゲストは続々、良明さんも上野洋子さん(今回は本人名義で来たね・笑)も!音楽を手掛けたアニメ『それでも町は廻っている』からも紺先輩(矢澤りえかさん)が駆けつけて、唄うわ演奏するわ、カオスのステージ上。ヨタロウさん気配りの鬼と化し皆の見せ場を作る。BOSSIさんの娘さんもコーラスで登場、「小学生の頃から知ってるよ」。バンドに歴史あり。「宵闇峠地五郎変化」恒例闇鍋アドリブ合戦では、初参加の青山さん目が泳ぎまくり顔がちょー真顔になる(笑)しかし弾き出せばもーそりゃ格好いい演奏。ここらへん年季と言うかどんだけ場数を踏んでるかがものを言いますね。メリィさんなんかワンコーラス毎に新旧ロックその他の名曲フレーズを織り込みまくり、それがスムーズに音に融け込んでいく。引き出しの多さとスキルの高さに脱帽。サラッとこんなんやられた日にゃあ…ああなんて贅沢なんだ!

アンコールになってからも、コクーンでのリハを終えたくものすカルテットの面々の飛び入りが。ここらへんステージでヨタロウさん「来たの!?」みたく驚いていた(笑)長年やってるからこその人脈と人徳ですなあ。昔からの友人たちもいれば、最近参加するようになったひとたちも。愛されてるなー。ここにHONZIもいてほしかったな。きっとあっちから観てくれて、ヴァイオリンを弾いてくれてたよねと夢想するくらいは許してもらおう。いつかは皆あっちに行くけど、まだまだメトロのひとたちにはこっちにいてほしい。もうちょっと待っててね。

(セットリストは今探し中)



2010年12月26日(日)
『まちがいの狂言』

『まちがいの狂言』@世田谷パブリックシアター

いやー、ようやっと観られました。「ややこしや〜」でも有名、五年振り、四度目の上演。再演が重ねられる訳もわかったー、すごく面白かったー!

シェイクスピアの『間違いの喜劇』翻案ものですが、作劇の妙もあり、狂言の演出とも相性がいい。と言うか、そう書いた高橋康也さんと、演出した萬斎さんの腕もすごいんですよね。コロンブスの卵のようなもので、舞台に載っているものはいとも容易に構成されているように見えるけど、実際そう見えるような状態にしているってのがすごいよー。太郎冠者のアホの子っぷりも、この作品の召使い=道化と言う役割にしっくりハマる。まるで狂言で上演されることをシェイクスピアが予見して書いたかのようにすら感じられる作品に仕上がっているのです。

混乱にも規則があり、どちらがどちらの石之介か、太郎冠者かが観客には見分けられるようになっている。黒草の主従は上手側黒幕から、白草の主従は下手側白幕から入退場する。違う出身の街のひとと会話しているときは、必ずどちらかが面をつけている。そして両者が舞台上にいる時、声を発しているのは萬斎さんと石田さんだったと思う。姿は面で隠すと言う手法、声は同一。これですんなり同じ顔、同じ声だと言うことを了解出来ます。

蜷川さんが演出したオールメールの時もそうだったけど、こういう観客の想像力を信用してくれている舞台はとても楽しい。そしてそれには、演者の力がとても大切。あの時高橋洋さんと清家栄一さん、本当に双子のようだったもの。顔の造作は決して似てはいないのに。

一族の離散、そして再会と言うこころ暖まる幕切れも、年の瀬に観てほっこりしました。



2010年12月19日(日)
『M』

東京バレエ団『M』@東京文化会館

まさかミシマモチーフで泣くとは。すごすぎた……。圧倒的な美は、失笑に傾きかねない極端なマッチョイズム、グロテスクさをも呑み込んでしまう。涙が出たのは美しさに感動しただけでなく、恐怖すら感じたからだ。歓喜ではなく、畏怖の涙。

三島由紀夫没後四十年の節目でもあります。一時間弱の作品何本立てかのバレエ公演が多いなか、休憩なしの二時間弱、一作品上演。なのに全く集中力が切れず、時間が過ぎるのが惜しい程でした。振付師としてのベジャールは周知ですが、改めて演出家としてのベジャールの凄まじさをも思い知らされました。選曲を含めた音楽、照明、美術、衣装プランの粋を結集して舞台芸術をたちあげる、その美意識!日本の、三島の美を彼が翻訳するとこうなるのか。

その美は聖と俗が表裏一体。ミシマエロスと美の象徴である聖セバスチャンが見えない存在と愛し合うソロ(天から降ろされる鏡にその姿は映し出される。この鳥瞰はベルトルッチの『1900年』を思い出した。天界に見守られてのセックス、エロティック!しかもその天界からの視線=観客の視線として提示されるのだ)と、裸(実際には肌色のアンダーウェアを履いていたが、これ、規制がなければ本当のところは着衣一切なしでいきたいところなのだろう)の男性ダンサーがムカデのように連なる群舞と。衣裳はぴったりしたタイツやシースルー、男性ダンサーは上半身に何も纏わずダンサーの身体の線をくっきり見せる。鍛え上げられた肉体そのものを目の当たりにして息をのむ。その身体の描く線の美しいこと!

少年三島の手をひく老婆(三島の祖母にあたる)は、少年の「イチ、ニ、サン!」の声に続けて「シ!」と叫び、IV=シ=死の姿を現す。狂言回しでもあるシは舞台の進行役も務め、少年に寄り添いやがては死へと導く。少年は豊穣の海と戯れ海上の月の膝枕で眠り、仮面の告白を経て禁色を眺め、金閣寺を燃やし、やがては桜舞い散るなか楯の会に見守られて割腹する。少年から流れ出た血は、シの手によって数々のシーンに現れた登場人物たちへと流れていく。ディノ・オルヴィエーリ「J'attendrai(待ちましょう)」が流れるなか、彼らは潮騒が響く波へと消えていく……。

シを踊るのは、この作品のために復帰した小林十市さん。復帰と同時に引退公演でもありました。以前十市さんが、自分のことをこう表現していました。「彼(ベジャール)のダンサーだったんだ!」。ベジャールバレエ団に所属していた、ではなく、ベジャールの振付を踊っていた、でもなく、“ベジャールのダンサーだ”と。このことが印象に残っていました。舞台上の彼は、ベジャール作品を踊る喜びに溢れている様子で、そのピュアな振る舞いがIV=シ=死によく似合っていました。キレのあるターン、軽やかなジャンプ。ブランクなど微塵も感じさせないフレッシュな踊り。そしてシは言葉も使うことが出来ます。終盤の「立てー!」と言う台詞は、身体表現に声も含まれる役者のものとして活きていました。気迫のこもった素晴らしいシでした。

少年がまたすごくて。あの子いくつくらいだったんだろう…無邪気に走り回るシーンはともかく、割腹する時のあの毅然とした表情、流麗な所作!割腹の場面は扇を開く、と言う所作で表現されるのだが、死をこれ程美しく表現されてしまっては……正に三島の人生のような矛盾。そして声変わりしていない高音での「武士道とは、死ぬことと見つけたり」。あまりにも鮮烈。

「女」を踊った上野水香さんも素晴らしかったな…特にソファの場面。プロポーションの美しさ、鍛錬された動きの数々、それを静止させた時のキープ力。イチ、ニ、サンを踊った初演メンバー、高岸さん、後藤さん、木村さんも、初役の聖セバスチャン(ナルシシズムが薄めな分その若い美しさが際立っていた)を踊った長瀬さんも輝いていました。

カーテンコール、何度あったことか。最初数えてたけど途中から放棄した(笑)。十市さん、いい顔してらっしゃいました。客電が灯る。席を立つ。その時カーテンの内側から拍手が湧きました。それは何度も、何度も続きました。

Mishima、Maurice、Mayuzumi、Mer、Métamorphose、Mythology、Mort。11月に三島は自決し、ベジャールが亡くなり、ジョルジュ・ドンもフレディ・マーキュリーもこの世を去った。十市さんの本名は十一。キーワードは連なり、作品は演じられ、ひとびとの記憶に残ることで永遠になる。

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その他。

・打ち上げは東京文化会館のロビーで行われるようで、終演後にはもう綺麗なグラスや食器、ドリンクやデザートが並べられていた。おいしそうだった(笑)

・終演後のプログラム売り場はバーゲン会場のようになっていた(笑)しかも結構はやめに完売していた。二日間だけの公演だし、ここらへんの予測はつけづらいですよねえ

・音楽は黛敏郎、選曲の中の一曲はサティの「Je te veux(あなたがほしい)」。六日前、四日前に出てきたキーワードにまた出会うことになった。偶然にしても驚く

・マニックスの面々はミシマフリークとして有名(多分日本人より詳しい…絶対に私より詳しい……)。特にジェイムズは『薔薇刑』を持っていたり(しかも復刻版じゃない最初に出たやつらしいで…)、自分たちの写真集(ミッチさん撮影。これホントいい写真集です)で『聖セバスチャンの殉教』構図を模して撮った写真に“MISHIMA”とコメントしたりしている。
先月の来日中も、ミッチさんにミシマスポットを教えて!と迫っていたそうです(笑)。あーこれ、ジェイムズに見せてあげたかった!ジェイムズ得意の日本語「イチ、ニ、サン、シ!」も台詞にあったし、何より西洋文化をベースにしたミシマ翻訳と言うところで、楽しめる部分も多かったのではないかなー。いつか観てほしいよ!



2010年12月18日(土)
『美しきものの伝説』

さいたまネクストシアター『美しきものの伝説』@彩の国さいたま芸術劇場 インサイド・シアター

第一回公演同様、大劇場のステージ上に作られたインサイド・シアター。演技スペースをコの字型に客席が囲みます。一列目は舞台と同じ高さで、以降結構な段差で客席が組まれているので、後ろの席から観ると舞台を見下ろす形になる。思えばこの、狭い空間で縦に積む客席と言うのは、かつて蜷川カンパニーの若手が拠点にしていたベニサン・ピットがそうだった。

今回は『真田風雲録』のような、泥と言う仕掛けはない。これは演者の動きを封じると言う意味での枷ではあったが、その分役者の身体の力量不足を隠し補う仕掛けでもあった。今回はそういった手助けがないので、やはり役者の動きと言うものが気になる。和物なのでちょっとした所作も目につく。それにつられて台詞回しにもなかなか厳しい部分もあったが、この発展途上も、このカンパニーを見ていく楽しみでもある。

蜷川さんによると、リストラを敢行したとのこと(鈴木裕美さんが以前このことを“大量虐殺”と称していたなあ・苦笑)。確かにこの若いカンパニー、環境としてはとてつもなく恵まれているのだ。技術的に巧い役者は確かにいたのだが、それだけでは歯痒い。前回に続き、1960年代の名作を上演するにあたって、“ヒリツク”ような緊張感がほしい。熱を持った演者を、静謐な演出が捉える関係は、観ていてとても視界が晴れ渡るような気分でした。いいものを観た。

大正デモクラシー真っ只中の時代、赤旗事件と大逆事件から連なる“美しきものの伝説”。時代背景が頭に入っていないと苦戦します(泣)。モデルとなった実際の人物からちょっと名前を変えている上、あだ名で呼び合う場面も多いので、登場人物を把握するのにちょっと時間がかかった。あとあれだ、恋愛事情がややこしい(笑)。誰が誰と出奔したとか誰が誰と同時につきあってて刺されたとか誰と誰が離婚して誰とくっついたんだっけかーと言う…休憩時間に配布されたパンフを読みふける(笑)。

大杉栄とともに虐殺された妻・野枝の役はなかなか難しかったと思います。ちょっとした違いで、この女、アホかも知れん…となるか、まっすぐに生き、自分の感覚をいかに大事にしていたかとなるか。松井須磨子も、平塚らいてうも、神近市子も。こうやりたい、と言う意気込みは伝わりました。

客演の四分六役・飯田邦博さんが素晴らしかったなあ。多くの同志を見送り、弔った堺利彦にあたる人物。美しい言葉に溢れる戯曲ですが、希望を踏みにじられても悲しさを湛え闘い続ける彼の台詞がいちばん響きました。

蜷川演出は、ツカミは勿論のこと、ラストシーンが素晴らしかった。知らずのうちに死へと近付いている、あの日の栄と野枝。眩しく輝く白い衣裳のふたりの背後に迫る影は、最初は憲兵隊に見える。奥行きを活かしたこの演出には恐怖で身震いしました(比喩でなく)。しかし近付くにつれ、彼らは革命途中で死んでいった同志たちであることが判る。死に魅入られた光景を描かせたら、蜷川さんの右に出るひとはいないと思う。



2010年12月15日(水)
『DAVID BYRNE ART EXHIBITION』『ア・ラ・カルト 2』

『DAVID BYRNE ART EXHIBITION』@VACANT

芳名帳のふたり前がおおともっちだった。ニアミス☆ にしても大友さんパワフルですなあ、この日SuperDeluxeでライヴだった筈だけど、リハ前に来たのかな(とか思ってたら突発性難聴(追記:その後「急性低音障害型感音難聴」と判明したそうです)になってしまったそうで、しばらく安静だそうです。おだいじになさってください)。

アーカイヴ作品もよかったですが、新作が断然面白いです。鑑賞時の環境音を自分で作れる!平面作品もすっきりとしたスペースでじっくり観られます。ひとが少ない時間帯に行くのがおすすめ。

1Fがアーカイヴ&ライヴスペース。トーキングヘッズ関連もこちら。『Speaking in Tongues』アナログ盤(ロバート・ラウシェンバーグが手掛けたこれ。CDでも昨年初回生産限定盤で復刻されました)や映画の方の『True Stories』(きゃー)等のアートワーク、関連書籍、映像作品が閲覧出来ます。スクリーン二面にそれぞれ違うものを流しているので、全部観るには結構時間が必要。パスポート制だったしリピートしたいなあ。期間中ライヴやトークショウ等のイヴェントも行われるそうです。

2Fがメイン会場。サウンドインスタレーションと、レンティキュラーズ、写真作品。階段をのぼっていくと、スタッフの方がギターの音を調整し始めました。私が入場した時には他に鑑賞者がいなかったので、リセットしてくれたようです。感謝。これが世界初演の『Guitar Pedal Installation』。これ面白かったー!ご本人が設営にいらしてたそうだけど、これのセッティングをちゃんとやりたかったからなのかも。

1本のギターがいくつくらいかなー…100個以上はあったかな?(追記:96個だそうです)整然と並べられたエフェクターに繋がれています。2つがループ用で、最初に鳴らしたフレーズが延々繰り返されるよう入りっぱなしになっています。エフェクターの前には「WALK ON ME. うえを歩いて。」の文字。踏み放題だー。やっぱりまずはFUZZから踏みますわなあ(笑)。あとはエフェクターの名前を見て適当に(わからん)踏みまくり、だんだん訳の判らん音になる。いやしかしこれラッキーだったわ、ひとが沢山いるとどんどん踏まれて上書きされちゃうもんね。

さて、鑑賞BGMが出来上がりました。結構なノイズになった(笑)。これを聴きつつ平面作品を観るぜー。振り返った位置から時計回りに進みます。

まずは『Blob』シリーズ3点。レンティキュラーズと言うホログラムのような加工が施された写真作品です。1枚に3つのオブジェが収められており、観る角度によって姿を変えるもの。その3つのオブジェってのが、脳とパン、とか、骨とくだもの、みたいな組み合わせなんですね。それが意外にも洗練されたシェイプで、グロテスクさを感じる反面、人間の器官のユニークさにもハッとさせられます。ひとの中身って外科医でもやってない限り見る機会ないものねえ。

『Political Flesh』はオブジェを撮影した写真作品、ブッシュ父子、フセインのビニールマスク。ブッシュにフセインが挟まれた配置になっています。これが3mくらいあるの、デカい。ヤだわー(笑)。フライヤーで紹介されていたゴアのマスクは来てなかったような?

『Corporate Signs』もレンティキュラーズ。いろんな企業(日本の企業もあったよ)の看板文句が、角度を変えれば違う言葉になっています。どれもアイロニカルだなー。でも愛嬌がある。冷笑的な感じではなく、チャームがある。

で、最後に『Bush of Ghosts Reject』シリーズ。『MY LIFE IN THE BUSH OF GHOSTS』アートワークのアウトテイクスをインクジェットプリントしたものです。こちらは一転、ストレートな美しさ。甘いフォーカスの中に濁った影と鮮やかな光、溢れる色。透過光で表示したものを反射光としてプリントしたものなので、モニタを介したかのような画面であり乍ら印刷ならではの風合いが活きている。複製される程に限定感の増す不思議さ。ウォーホール以降の複製芸術のことを考えて、思えばデヴィッド・バーンってまさにそのN.Y.カルチャード真ん中だったわ、と思ったりしました。そういえば1Fには『TVパーティー』のDVDも置かれていた。

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『ア・ラ・カルト 2 〜役者と音楽家のいるレストラン〜』@青山円形劇場

いいリニューアルになってます。以下ネタバレあります。

テーマ曲等は一新。バンドのメンバーには変更がありません。バンドピットが一箇所でなく、ミュージシャンが円形のステージをぐるりと囲むような配置になっていました。林さん以外の3人は曲によって移動、出入りも比較的自由なんだけど、林さんのピアノはAブロック前の入り組んだ位置なのでハケることが出来ず。始まったら演奏がないパートでもそのままピアノの前に座ったまま(笑)、お芝居を楽しんでらっしゃるようでした。

ガッチリしたお芝居はちょっと減ってたかな。日替わりゲストとの即興コーナー(一応台詞は渡されたメニューに書かれているらしい)やフリートークが増えています。高泉さんがホステスだと言うことをしっかりアピール。山本さんや本多さん、レギュラーゲストの中山さんがガッチリ(時々ちょっとたよりなく・笑)彼女をサポートしている。台本はずっと高泉さんが書いていたので、彼女の作品の根底にずっとある“ラ・ヴィータ”は変わりません。

別れがあれば出会いもある、人生は続く、その先がある。

かつて遊◎機械の作品には、崩壊する家族を繋ぎ止めようとするこどもの情景が描かれた。そして家族が壊れても、別れた父親と娘はクリスマスに会う。娘は父親の幸せを願っているが、もう一緒には暮らせないことをドライに受け止めてもいる。そうやって育ったこどもたちは、伴侶と出会い、別れ、その後の人生を生きていく。こうした面が『ア・ラ・カルト2』にはより色濃く出ています。それでも最後には心温まるラストシーンが待っています。

あの女の子は出て来ない。あの老夫婦も出て来ない。でも、タカハシはやってきた。彼が現れた時の、円形の客席に浮かんだハッと言う空気、それに続いた笑顔は忘れられない光景になりそうです。旧友に会ったかのような、客席のひとたちの表情。皆不安だったんだろうな。全く違うものでもいいと思っていたけれど、やっぱり嬉しかった。ノリコさんが出て来ることはないと判っていても。

この日の日替わりゲストは篠井英介さん。篠井さんが年相応の男性の役を演じる方が緊張すると言うと、高泉さんもそうそう、オジサンの役をやる方が楽で!と応え、そうそう、僕もオバサンの役の方が!とひとしきり盛り上がり、是非ちゃんと芝居でやりあいたいわね、と言うような話をしていた。思えば同世代、やってきたフィールドも近い。もう四半世紀以上のつきあいになるのではないかな。こういう会話を聴けたのもなんだか嬉しかった。そういえば篠井さん、この日が誕生日だったんだよね!今後の出演情報についてもだけど、自分のことはホンット話さないよねえ、謙虚な方です。

そしてこの回を選んだのは、そりゃもう篠井さんが絶対ゴージャスドレスでシャンソン唄うだろ〜と思ったからで。当然ですヨ!サド侯爵夫人ばりのウィッグとドレスでサティの「ジュ・トゥ・ヴ(Je te veux)」を唄ってくださいましたよ!「夢に出るぞ〜」とか言って(笑)。客席の男性陣をもてあそんでおりました。ちょっと下ネタをアドリブで入れていたけど篠井さんが唄うと品がなくならない…ウィットに富んでるからカラッと笑って聴ける。いやー素敵でござった、眼福。いいお歳暮を頂いた気分です。

そうそう、アドリブ芝居のところで、「最近は草食系の男が気になるのよ」「例えば誰とか?」「あらた」「…古田?」「ちがっ!ちっがうわよー!何言ってんのよー!」となって爆笑。そんな全力で否定せんでも高泉さん。そしてナイスツッコミ篠井さん。

これがまた20年続くかは判らない。でも、来年も是非観に行きたいです。またあのカンパニーがひとつひとつ積み重ねていくのなら、それを観ていきたい。



2010年12月14日(火)
『武満徹トリビュート〜映画音楽を中心に〜』続き

『武満徹トリビュート〜映画音楽を中心に〜』@オーチャードホール

15分の休憩を挟み、片山さん、大友さん、菊地さんのトークショー。大友さん、やりきった!って感じでぼんやり気味でした。いい顔してらっしゃいました。で、トークの方はと言うとこれまたピットイン仕様で、もう脱線脱線、誰か仕切ってくれ!(笑)しかしその脱線話が面白いんだよね…片山さんがなんとか修正、ハタと菊地さんが進行役を。

菊地●おおともっちは武満作品、何が最初だった?
大友●僕はよくある、NHK-FMの『現代音楽のゆうべ』(『現代の音楽』のことらしい)
菊地●それ全然普通じゃないよ(笑)
大友●えっ、そうかな?
菊地●普通じゃない(笑)片山さんは?
片山●それこそ『怪談』なんだけど、音にやられてだんだん具合悪くなっちゃって、まさにさっき演奏された「耳無し芳一の話」の前辺りで卒倒しちゃって担ぎ出されちゃったの(大笑)。ちゃんと聴けたのは数年後ですね
菊地●武満作品って、ドラマや映画の音楽もいろいろやっていたから、知らないうちに聴いてるよねきっと。俺は実家の近所に映画館があったから、それかな。ビートルズ前夜だよね。ビートルズ以降、ロックはこどもが自分のお小遣いとかでドーナツ盤を買いにいける、直接音楽にアクセス出来るようになった。でもそれ以外は映画音楽を通してアクセスしてた。映画音楽が全て。現代音楽、ラテン、ジャズ、歌謡曲……そういうのがごちゃっといっぺんに入ってくる。その原風景みたいなものが、今回のトリビュートの自分のパートには反映されていると思う

とまあこんな感じ。他にもいろいろ面白かったんだけど何せ脱線が多いのでまとまらん…大友さんと菊地さんが話すと男子中学生のヨタ話と妙齢の女性の井戸端トークみたいになるよねー(笑)。

さて第二部、菊地セット。本人曰く「黛敏郎の『題名のない音楽会』」な趣。それにしても…初心者を連発して謙遜しておられましたが、あの編集力は流石です。武満作品への敬意が伝わる、刺激的なステージになりました。曲毎の解説も気が利いていて、前述の「原風景」をマッシュアップと言う形で表現したのだとすんなり受け取ることが出来ます。力業のようでいて見事に武満トリビュートに昇華されており、菊地作品の秘密を探るヒントにもなる。「菊地成孔を通した武満徹作品」と言うプレゼンテーションとして成立しており、非常に興味深いものでした。

「クロス・トーク」でのバンドネオン譜がプレイヤーからしても無理がない運指になっていることから、ちゃんとバンドネオンに触った上で作曲しているのだろうとか、「コロナ」の図形楽譜(この日使われた図形楽譜は、こちらで紹介されているものとちょっと違うもので、長方形で1枚1色、5枚分でした)を「戦隊ものみたいなんですよね…ブルー、レッド、イエロー、グレー、ホワイト…」とか、お話も面白い。難解にもとられそうな武満作品に楽しく接することが出来て、こちらもニコニコ。テープ演奏のパートをCDに焼いてCDJで操作したり(「クロス・トーク」)、「これをエレクトリックピアノで演奏するのって、多分初めての試みではないでしょうか」(「ピアニストのためのコロナ」)と、アップデートにもそつがない。

お話と言えば、『怪談』とマッシュアップした『砂の女』のストーリー説明がふるってたよ。「砂丘がアリ地獄みたいになってて、滑り落ちちゃうんです。落ちた底には家があって、な〜んと岸田今日子さんが住んでるんですよ!で、岸田今日子さんと一緒に暮らさなきゃならなくなるの!こわいでしょ〜っ?」…いや、菊地さんが言うとすごく楽しい映画に聞こえるよ……。

武満さんが最初に感銘を受けた音楽ジャンルはシャンソン、と言うところからの「枯葉」や、武満さんとおない歳のゴダール(『アルファビル』)、エッセイに登場した映画(『8 1/2』)、武満作品(『他人の顔』)とワルツ3曲の再構成は一見混沌としているけれど、そこから浮かび上がるのはどーしよーもなく菊地成孔。楽曲だけでなく武満さんのバイオ、著作にも及ぶこの探求+まとめっぷりを一ヶ月でって…逆にすごいわ。それがPTAメンバーの演奏で聴けるってのも嬉しい!

本編最後に演奏された「L.A., New York, Paris, Rome, Helsinki」はもともと『ナイト・オン・ザ・プラネット』のために作られたものの、ジャームッシュ監督に却下された曰く付きの曲。「ジャームッシュの公式な声明は出ていませんが、『映画が負ける』と言ったって話もあるとか。晩年の曲ですが…まるでこどもに返ったような無邪気さを感じますね」。ハープとマリンバが交互に響き、美しいメロディがゆったりと流れる。降るような星空を眺めているみたいな気分(外は雨だったけどね)。そんでその星空って冬の夜空なんだけど、心のなかはあったかーくなるような曲と演奏。いい夜。

大友セットの「乾いた花」にもA-Saxで参加した菊地さんのことや、かつて「コロナ」を演奏、発表したジム・オルーク(このインタヴュー面白い)が大友セットに参加していたことや、ストリングスアレンジを手掛けた江藤直子さん(大友セット)と中島ノブユキさん(菊地セット)の仕事っぷり等、ホンット豪華メンバーの盛り沢山の内容だった故言及しきれてない箇所がいっぱいありますが勘弁してー。きっとどこかに詳しいひとがもっとちゃんとしたレポートを書いてる筈!探してください。私も探します。ひとの感想が読みたい。

あーホント面白かった。何度も言うが再演の機会があるといいなー。



2010年12月13日(月)
『武満徹トリビュート〜映画音楽を中心に〜』

『武満徹トリビュート〜映画音楽を中心に〜』@オーチャードホール

第一部:大友良英プロジェクト
『どですかでん』
『燃えつきた地図』
『乾いた花』
「翼」
「○と△の歌」
『怪談』より「耳無し芳一の話」

トークショー:片山杜秀、大友良英、菊地成孔

第二部:菊地成孔プロジェクト
弦楽四重奏のための「枯葉」
ピアニストのためのコロナ
2つのバンドネオンとテープ音楽のための「クロス・トーク」
映画『アルファビル』より「Valse Triste」〜映画『8 1/2』より「E Poi(Valzer)」〜映画『他人の顔』より「ワルツ」
「武満トーン with マンボ」〜「京マチ子の夜」
『怪談』へのオマージュ(『怪談』と『砂の女』のマッシュアップ)
映画のための「L.A., New York, Paris, Rome, Helsinki」
encore
「めぐり逢い」

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えーとこれで合ってるかな?『怪談』へのオマージュがどこに入ってたかちょっと怪しい。この流れだったと思うんだけど…。

菊地さん曰く「生前交流もあった(文通してたんだよね/そう…当時はほら、メールなんてないから)武満ラヴァーのおおともっちと、武満初心者の僕。僕は一夜漬けならぬ一ヶ月漬けです」な武満徹トリビュート。いやー面白かったー!再演あればいいのにー!面子が面子だし、武満徹生誕80周年と言うタイミングもあったので、今後は難しいかなあ。しかし一回限りだからこそ、でもあった。

あらゆるフィールドから演者を招聘し、音源再現に即興を持ち込んだ大友さんと、自身の楽曲と武満の楽曲とのマッシュアップを試み、自身のバンドで演奏した菊地さんと言う全く違うアプローチの二部構成と言うのもよかった。そしてどちらもいつもの大友さんと菊地さん。ちょーっとだけ菊地さんがかりてきたねこみたいだったかな、これも貴重ですな。だいたい大友さん、数日前にTwitterで「衣装まよってるなう」なんて書いてて、オーチャードホールだから盛装?ひょっとして初めてスーツの大友さんが見られる?なんておろおろしてたんですが、出てきてみれば普段と全く同じ(笑)。件のツイートの後に「ちなみに、3つ持ってるパーカーのどれにするかまよってるなう」て続けてたらしいけど見逃してたよ。一瞬残念と思った反面ホッともしました、ははは。

あ、それで思い出した。菊地さんの方はスーツではあったけどノータイでちょっとラフな感じ。盛装のPTAメンバーを見て「きみたちなんで盛装なの…カジュアルでって言ったじゃない……俺だけ浮いちゃうよぉ」なんてぼそぼそ言ってて、ここでかりてきたねこ度がますます上がったんだ。Ss演奏したのもレアだったし(楽器もかりものだったとか)、ちょっと音が安定していなかったところや歌のピッチがズレるところもあったりして、おお?どうした?みたいな。マウスピースを気にもしていたし。珍しく緊張していた感じもしたし。しかし流れにのればやっぱり菊地さんなのであった。

そんな訳で大友セット、剥き身のおおともっち。ギターを携えてニコニコと登場、メンバーが揃ったところで「じゃ、はじめましょっか」。素で話してますけどそれマイク通ってます……もうずっとこのノリで、「○○を知ってるひとどのくらいいますか?(と客席を見渡そうとする)…あ、見えないやピットインじゃないから」とか言っててもう面白過ぎた。『どですかでん』で幕開け。ウクレレユニットパイティティと近藤達郎さんのハーモニカをフィーチュア、まずは武満作品の美しいメロディを提示。続いてPTAの弦楽カルテットと大友さんのTTによる『燃えつきた地図』、一気に即興度が増す。Sachiko Mのサイン波、相当な微弱音なのにすっごく綺麗に聴こえる!そういやオーチャードって、三階席にいても、ステージ上で針を落としたら聴こえるんじゃないかって程音の返りがいいんだった。

白眉は『乾いた花』。「冒頭の賭場のシーンですね。すごく格好よくて…もとの作品もタップの音を使っていて、いつかステージで再現したいと思ってて…でもわたしにはタップダンサーの知り合いなんていなくて(笑)でも、去年、出来たんです、タップダンサーの知り合い!(満面の笑み)そうだ、これで出来る!と思って!」あはははは、熊谷さんを紹介してくれて有難うカヒミさん!熊谷さんのタップからリズム出し。静かに、しかし膨大な打撃音が低く地を這うように滑り出す。そこへ芳垣さんが並走、アイコンタクトでブレイクを決めた時にはぶわっと鳥肌立った!ブレイク後間髪入れずTTとギターのノイズ、一瞬の空白にサイン波がドロップ、沈黙にぱっと咲くカヒミのウィスパーナレーション。大友さんのキュー出しで音が動く動く、ヘンな例えだけどバスケットボールの試合みたいなスピード感。攻守がコンマ何秒かで入れ替わり、パスを受け取った演者は一気に走る。ホールの鳴りもいい!どこ迄も走っていけそうだ、曲がいきものになって、演者がそれにドライヴしてる。いつ迄でも続けられるんじゃないの…ああでもここで終わりかな、フェイドアウトしていく、照明も落ちていく……とそこでニヤッと笑った大友さんが腕を振った!続行のサインです。熊谷さんの「うへっ」って笑い声が聴こえたよ(笑)。そして再びのフェイドアウト、エンドマークはカヒミが刻む、「こんな悪い夜、好きよ」。……「くくっ」と笑った熊谷さんが身体の力を抜いて姿勢を正し、一瞬の沈黙。……割れるような拍手!

「えへへ、あんまり楽しかったんで延長しちゃった。照明さん段取り破ってごめんなさい」と大友さん。……これはホントすごかった、再演の機会があればいいのに!

浜田真理子さんの芳醇なうた「翼」「○と△の歌」でしっとりとクールダウン。保湿…ううう、うるおい。この緩急織り交ぜた構成も素晴らしかったなあ。

そしてラスト、『怪談』より「耳無し芳一の話」。この作品では、楽曲だけでなく録音、音効も全部手掛けたと言う武満さん。映画音楽としては残されている録音されたものを聴けばいいけれど、ライヴで再現するならば音が発せられた過程も作品として見せたい、舞台作品として成立させなければと思った、と言うようなことを大友さんは仰ってました。果たして舞台上に現れたそれは、田中泯の踊りと西原鶴真の琵琶語り、「物音」の飴屋法水を招くと言うもの。平家の怨霊としての田中さん、芳一を体現する西原さんの応酬はそらもう夢に出そうな凄まじいもんでしたが、個人的には効果音を発する存在として飴屋さんを迎えたってのが大友さんすごいと言うか流石と言うか。過去何度か「物音」として大友プロジェクトに参加している飴屋さんですが、今回はまさにドンピシャといったところ。実際それがパフォーマンスとしてズッパマリだったと同時に、音程を捉えた効果音を発しているように聴こえた(実際そうだろう)ところに恐れ入りました。

もうこの作品、聴きどころ見どころあり過ぎて途中からどこ見ればいいかわかんなくなったよ!目と耳が10個くらいほしかったよ…(泣)うわーんこれも再演してほしいー。

その飴屋さんの音出しはと言うと、まつぼっくり?や陶器を擦り合わせたり、箱に果物を入れて振ったり、陶器に硬貨を落としたり、鐘(これが唯一楽器っぽいと言えば楽器ぽかった)を鳴らしたり。このタイミングと音程が絶妙。多分聴くひとが聴いたらちゃんと譜面に起こせると思う。他パートと合わせても不協和音にはならないと思う。終盤は骨壺を出してきて、マジックで文字を書き出した。「おばけ も」迄しか読み取れない、何て書いてある?おばけもいる?おばけもおどる?おばけもいっぱい?終演後ご本人のツイートで「おばけ もののけ ひと」と書かれていたと知る。その後しばしの間を置き、カナヅチでパーン!と粉砕してしまった。白い煙が立ち上る。隣のSachikoさんの方に迄破片が飛び散って、Sachikoさん笑ってはった…(苦笑)しかし音出しとしてはある種の解放感すらありました。ここからクライマックス、と言う絶妙のブレイクになった。

骨壺は多分本物だろう。飴屋さんならそうだろう。となると、あの中に入っていた骨は、数年前亡くなったお父上のものだろう。割れた骨壺の破片と、中に入っていたであろう骨らしきもの(と言うか、あれは骨だ。きっと。本物の遺骨だ)を机に落として音を作る。琵琶法師の耳は奪われ、怨霊は闇へ戻っていく。客席にも戸惑いみたいなものがあった。もうポカーン気味です、あまりにもすごいもの観ちゃったので…音が消えて大友さんがにっこり笑うのが見えて、我に返ったように拍手と歓声。撤収作業に入っている飴屋さんに田中さんが笑顔で話しかけていた。飴屋さんは抜け殻のようになっており、うまくコミュニケーションがとれていないようだったけど、そこらへんは田中さんも了解しているようで、そのまま退場していった。

丁寧に楽曲解説と演奏者について話す大友さん、すごく嬉しそうで楽しそうだった。このメンバーで、武満作品を演奏出来ることを心底喜んでいるのが伝わってきて、こちらもニコニコして観てしまった。反面演奏はテンションパツパツに終始、すごい緊張感。すごく体力使った、どっと疲れた。

ど、どうしよう、長い!終わらん!菊地さんの方は明日以降に書きますわ…眠い。



2010年12月12日(日)
『砂町の王』

THE SHAMPOO HAT『砂町の王』@ザ・スズナリ

ううー、引き続き「誰かの願いがかなうころ あの子が泣いてるよ〜♪」な話です。し、しんどい。流れとしては『立川ドライブ』に近い。場面転換も多い。サスペンス的な要素もある。凄惨な場面の描写が丁寧で長い。以下ネタバレあります。

誰かの願いは誰かが死ぬこと。泣いてるあの子は失意と恐怖の中殺される。人生の最後の一瞬が、絶望であることの恐ろしさ。途中どんなにつらいことがあっても、今際の際が温かいものであれば生きてきた甲斐もあったと思えそうだが、これはあまりにも惨い。そして、これはきっと決して珍しいことではない。それにしても、あの殺人に到る迄の描写のしつこさ(そして殺人シーンそのものは見せないと言う丁寧さ)…おまえ見てきたんかと言う。赤堀さんてこういうの書くのホンットうまいけど、その描きっぷりがどんどんしつこくなってきてる。ここ迄つっこんで描写するようになってきてるのか…と身震いする程。

過去作品では、既に死んでいるひとを扱うことは多かった。そのひとの不在を確かめようとする、残されたひとたちの右往左往。今回は、ひとが死に至る迄の過程が描かれる。ここも『立川ドライブ』を思い出させる。そして多分、その不在を思い、右往左往する残されたひとたちと言うのが、今回の作品にはひとりもいない。それがまた恐ろしい。彼は誰にも気に留められることなくこの世からいなくなってしまったのだ。

赤堀さんは光を描く。それがどんなちいさな光であっても描く。決して排除しない。光の描写はシンプル。余計な説明がいらないと言うことなのだろう。いつの日か、説明をしなければこのことが光であると言うことすら判らなくなる時がくるのだろうか。

今回も光はかろうじて残っている。そして、やはりこちらも光で幕を降ろす。夫婦のなにげない会話に微笑む、生まれてくる新しい命があることを知って胸の辺りが温かくなる。これらは普通のことであってほしい。彼らが知らないうちに、彼らのすぐ近くで起こっているどす黒く恐ろしいものにとりこまれないでほしい。ひたすらそれを願って暗転の中暗闇を見つめる。光を決してなくさないことはそれこそ、赤堀さんの願いなのかも知れない。それでは、その陰で泣いているひとがいるのだろうか?ここ迄考えることになる。

赤堀さんが光を描かなくなった時のことを考える。その時彼の劇世界はどう変貌するのだろう。今後が怖い。今の時点では、見続けようと思っている。

しかしこれ、ホンを書きあげる迄の過程だけでなく、稽古の過程を考えても気が滅入る…そんなん観客が考えても意味ないのだろうが。役者さんたちもしんどかっただろうなあ、特に日比くん。村岡さんも。圧倒されるを通り越して具合が悪くなる勢いでした。なんでこんなもん日曜の午後に観てるんだろうと迄思ったよ!いやあキツかった……。ナトリウムライトを使ったオレンジ色の風景の不気味さ、真夏の熱を真冬に感じる錯覚、と演出面でも効果的なものが沢山ありました。

あ、あと久々に、劇団公演で飛び道具ではない役(笑)の赤堀さんを観た。

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時間が出来たので急遽シモキタにとんでって、当日券でなんとか観ることが出来ました。今回の公演、気付くのが遅かったので予定がたてられなかったんだよー(泣)。DMも来ないしメルマガも来ないしチラシも折り込みで一度も見なかった(今日劇場で初めて実物手にとったよ…)。当日配布のリーフレットにいつもは載っている、赤堀さんのコメントがないのも気になりました。まあこれは単純に書かないと判断したからないのかも知れないけど。制作が大変なのかなと妙なところが心配になってしまった…作品がよかっただけに公演に気付かないひとがいたら残念だな。

来年『沼袋十人斬り』が改訂版として再演が決まったのが嬉しい。公演中止日にあたって観られなかった(振替日も結局中止になった)のでね…時期が時期なんで、またインフルエンザには気を付けてくださいマジで。楽しみに待ってるよー。



2010年12月11日(土)
『黴菌』

『黴菌』@シアターコクーン

ネタバレあります。

一幕がかなりキツくて(内容が。ホンも演者も迫真なので尚更)こりゃ相当どんより劇場を出ることになりそうだな…と思っていたところ、ケラさんは意外にも光が差す幕切れを用意していました。これ迄だったら全滅も有り得る流れだったので(『消失』とか…あと一部『男性の好きなスポーツ』辺り)、そういう意味ではこの終幕を描いたケラさんの心情に興味がわきました。

伝わらない思い、息の詰まる人間関係、ひとの心を破壊する人体実験。極端な『賢者の贈り物』の物語でもあります。誰かが幸せを目指してやったことが、誰かを不幸にする。誰かを思ってやったことは、当人には届かない。因果応報、しかしそれは罰を受けたい当人にではなく、周囲のひとに災いを及ぼす。光は差すが、そのちいさな光だけでこの後の何十年を生きていけるか。それでも、ここで幕を降ろしたところに、作者の思いがあるように感じました。

チェーホフ『桜の園』を連想させます。没落していく名家、認められない作家(これは『かもめ』か)、幼い兄弟の死。この三男の死によってバラバラになった家族の絆が、最後の最後に少しだけ修復する。長男とその息子との間にある齟齬も、ある事件がきっかけで少しだけ溝が埋まる。あるひとはあるひとにとって黴菌だが、あるひとからすると薬にもなる。そして皆が、相手のことを丁寧に窺っている。だからちょっとしたひとことの裏にある思いを掬いとることが出来るし、憎まれ口の裏にある愛情に気付くことが出来る。

それを一切掬いとらないのが、登場人物中いちばんの善人(のように見える)渋澤だったと言うのも興味深い。ほんっといいひとなんだけどね。最後の方では出て来るだけで「……皆、渋澤から逃げて!」と思うようになったもんね……(笑)。

で、その渋澤、仲村トオルさんなんです(笑)いやーズッパマリですよ、面白過ぎた……。ホンットこのひとの舞台はハズレがないなー!ケラさん有難う、仲村さんにこんな役書いてくれて!公演前に読んだシアターガイドの鼎談で、北村さんや生瀬さんが「基本あてがきですよね。あー俺ってやっぱりこういうふうに思われてるんだって…仲村さんが羨ましい」なんて言っていたのにウケた……北村さんは見たい北村さんだったし、生瀬さんは見たい生瀬さんだったよ(笑)。しかしそこにはあーそうそう、こういう役ぴったり!と言うだけでなく、その役の意外な一面――本人が見せている筈がない――も描かれているのです、それを書いたケラさんもすごいが、それを演じる北村さんも生瀬さんもすごい。こどものように泣きじゃくる末っ子北村さん、それをしっかり力付ける次兄の生瀬さん、ふたりを優しく、しかしおろおろしつつ包み込む長兄の山崎さん。あのラストシーンは心温まるものでした。

この物語には、一瞬の安息を手に入れたひとの陰で、涙を流すひとがいます。その人物のひとりを演じた池谷さんが出色。そして、彼らにも何かしら手に入るものがあります。それだけが救い。そう描いた、登場人物に対するケラさんの愛情も感じました。

惜しいと思うのは、登場人物が多いと感じられてしまったこと。ストーリーには全員不可欠なのですが、どうしても「もうちょっと描写がほしい」と感じられてしまう人物が出て来る。その辺りが勿体なかった、皆が魅力的だっただけに。ここらへんの歯痒さ、ケラさんの作品には必ずある。それぞれを丁寧に描くと、上演時間がもっと長くなる訳だしねえ(苦笑)。いやーそれにしても、演者が皆素晴らしかった。

とても悲しいことだけど、全部が手に入るひとなんていないのだ。そして、手に入らないものは、なにものにも替えられないものなのだ。仕方がない、仕方がない。それでもひとは生きていける。

あーなんか宇多田ヒカルの歌を思い出した…誰かの願いがかなうころ あの子が泣いてるよ〜♪(泣)

よだん:長谷川さんが舞台上で刺されるのを見るの、二度目だ(苦笑)しかしこのひとはとっくりとかパンタロンみたいなボトムとか、昭和なファッションが似合う……今が旬のひとらしいのに!(笑)



2010年12月05日(日)
『面影ラッキーホール と 前野健太』

WWW & DAX present『面影ラッキーホール と 前野健太』@Shibuya WWW

つもる話などをしていて遅刻、前野健太とDAVID BOWIEたちは最後の3曲だけ聴けましたがこれが結構よくてしまったと思ったー。前野さんの歌とキャラクターもさること乍ら、DAVID BOWIEたちの演奏も格好いい。二胡のメンバーとかもいて、編成も面白い。『ライブテープ』での、弾き語りのイメージが強かったので、バンドだとこうなるのかと…うわーまたの機会があったらガッツリ観ます、すみませんすみません。

久々都内での面影は、T-saxとFlのおねえさんが戻ってきていました。TpとTbのおにいさんらはここ数公演変わらず。KinKi Kidsのサポートに出て行ったきり帰ってこないひとたちはまだ忙しいんだろうか…(笑)しかしTbのひとすごくいい演奏するんですよね。ソロもバリッとしてて格好いい。滑舌いいTbと言うか。ガンちゃんのコーラスもよく聴こえて、何げにこれがすごい効果的なんだなと言うのにも気が付けた。WWW、音がいい。

てゆーかやっぱうまーい。歌もうまいし演奏もうまーい。この手の音楽って歌や演奏がしょぼかったらつまらないもの。しょぼい歌じゃ歌詞の世界に入り込めないし、下手なファンクじゃ踊れないし。イロモノバンドのイメージがありますが(それでもいいんだが・笑)ライヴがこれだけ楽しめるのは、うまいのが前提で、しかもそれをオラオラ調で見せないからなのではないかと。と思うのは終演後であって、ライヴの最中はそんなん考える暇もなくゲラゲラ笑って踊ったり唄ったりします。は〜マニックスばりにシンガロングしてしまったよ…。

と言えば、今回曲間のアッキーのMCがなんかうまいこと…次の曲に繋がるようになってて、しかもその内容がアッキーとは思えないような(…)常識的と言うかいいひと?みたいなところがちょろっと顔を出しててうわっと思った。電車内でおこったことに対する優しくて悲しい視線。だからと言ってその思いが誰かを救う、と言う訳ではないんだけど。そう思っててもどうにも出来ないけど、気が付いてるひとはいるよ、と言うか。

実際こういうところを察知出来ないとああいう歌詞は書けないと思うけど(以前トークイヴェントで、リサーチもすごくするとは言っていたけど)、そのシッポを見せたのって珍しいと思った。どうした……。今回の対バン、「日本最高峰の吟遊詩人2組が対峙する至高の時間」なんてコピーついてたけど、これ茶化してない、茶化してない!ホント痛くて素晴らしいよ!

なんて言うんですか、人魚姫を思い出したね!何も言わず相手の無事と幸せを祈って、でもそれは誰にも気が付いてもらえなくて、海の泡になっちゃうんですよ!アッキーが!(しらふで言ってます)言ったもん勝ち見せたもん勝ちアピールしたもん勝ちのこの世の中でな…アッキー、輝いてるよ!は〜見習おう。

そして、曽我部バンドのテレフォンラブとかでコールアンドレスポンスや携帯出しての振り付けは出来ないのに、面影だとなんでこーてらいなくパチンコとかオイオイとかコレがコレなもんでとか皆と同じ振りで存分に踊れてしまうのだろうかと言う話をした。むしろ積極的です。この日のコールアンドレスポンスはやはりの梨園ネタでした。むべなるかな。

ファンク de 演歌な様相の新曲2曲(しかもまたその物語っぷりがすごい。聴き入っちゃう)も披露して、やる気が感じられたよ!レコーディングは進んでるのかな。リリース楽しみだー。

その他。
・アッキー第一声が「少女時代でーす」、続けて「ララララララ〜♪」と腰を振る。それはKARAです
・「神聖かまってちゃんと対バンする予定だったんだけど、もっとフレッシュなバンドとやりたいと断られた」そうです。「かまってちゃんにもかまってもらえなかった」(爆笑)
・WWWはシネマライズ地下から座席とっぱらって仕切り入れただけって感じで、段差も残してあるのですごく観やすかった。ライズの姿がまんま残っていたことも嬉しかったな。音もよかった!



2010年12月04日(土)
『極東最前線〜花咲ける愉楽地獄〜』

eastern youth『極東最前線〜花咲ける愉楽地獄〜』@Shibuya CLUB QUATTRO

と言う訳で、しばらくお休みに入るイースタンユース。クアトロパンパンのぎゅうぎゅう。9月の極東での様子がいろいろとあれだったもんで、気になる面もあったりしてな…吉野さんどんどん痩せていくし。しかしライヴは素晴らしく、いつも素晴らしいけど、いろいろ思うところあり過ぎてたまりません。MCでも言ってたけど、自分らのペースでゆっくりやっていって頂ければ。ラーメン屋でラーメン食べずに餃子を食べる、そんな流儀。ひとりでも大丈夫だ、ひとりでも、全然大丈夫だ。

対バンはBEYONDS。復活してからの何本かは観てるんだけど、この頃って歌ごころ満載のたおやかモードな時期だったのですね。それが…今回……。ジョン・ライドンのような発声とモリッシーのような挙動、ちょ、谷口さん、ちょうエモいー!リハからこうだったそうですよ…そりゃ息も切れるがな。ギター持たなくなって歌に専念してるからか、その独特なヴォーカルスタイルが全開です。め、目が離せん…愛らしくすら見えてくる……。歌はもうそらバシバシに心に響くんですが、挙動がそれを惑わせ、歌に集中力注ぎ込んでるからか曲間MCになると言葉がかなりあやしくなり、見れば見る程混乱する(笑)。歌の威風堂々っぷりとMCのはにかみ屋ひとみしりさんなギャップが激し過ぎる。

どるさん曰く「あなたのフロアにいる課長ルックス」。Tシャツインだったしな…。やばい…このままでは谷口さん、自分内でハマケンと同じマンチカンチームに入ってしまいそうだ。どうしよう!そしてCD-Rもっと沢山焼いてください。「bedside yoshino(これも正式名称よう憶えてなかったようで、ベッド、ベッドサイド?みたくつまってた・笑)のCDは一枚一枚あなたに届けます、って魂がこもってるようだけど、僕らのはちゃっちゃと焼いてはいはいってレーベル書いてってる感じです」なんて言ってたけど、それでもすくねーよ!(笑泣)もうないよーて言ってるひと沢山いたよ!いやー素晴らしかったです。

で、イースタンユース。クアトロに初めて出たのは…とかクアトロ初めて行ったのはそれこそBEYONDSだったと思う、とか、感慨深げに話しておられました。……うー、なんか、言葉にならん。いつかまた聴けるときを待っています。その間自分は自分のことをがんばるよ……。

そうは言ってもニノさんのことは書いておく(笑)。こないだから続くスーパーマーケット探訪コーナー、今回は鮮魚売り場に「海老ークリスマス!」と書いてあったと言う話に大ウケ。そこから大喜利、「今年のクリスマスとかけて、昨今の芸能事情ととく」そのこころはー?「海老が欠かせません」。パチパチパチ。そして今年のゆく年くる年で永平寺が出たら、絶対吉野さんのこと思い出す(笑)。エビークリスマス、そしてよいおとしを!

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セットリスト

01. 浮き雲
02. ギラリズム夜明け前
03. 素晴らしい世界
04. 鉛の塊
05. 野良犬、走る
06. まともな世界
07. 無用ノ助
08. 矯正視力〇・六
09. 角を曲がれば人々の
10. 一切合切太陽みたいに輝く
encore
11. 自由
12. DON QUIJOTE
encore2
13. 夜明けの歌

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2010年12月03日(金)
Jónsi JAPAN TOUR 2010

Jónsi JAPAN TOUR 2010@恵比寿 The Garden Hall

サマソニはダウンして行けなかったので、ようやくヨンシーが観られて嬉しい。最初スタジオコーストのチケットをとってたんだけど、この日によんどころない予定が入り(明日書きますよ…)急遽追加公演のこちらに行くことに。チケット交換してくれたお嬢さんありがとー!ホント助かりました。そんなこんなで行けてよかった…ホント。嵐の日に観たと言うのも何か縁がある?とさえ思ってしまったライヴでした。

なんかもー厄落としなのかなんなのか、聴いてるうちに今年あった悲しいことやいやなことを一挙に思い出し気持ちがわやくちゃになりましたよ…ヨンシーおそろしい子!感情の毛穴を開かせる声!終わってスッキリ。デトックスか。

それにしても、ヨンシーの歌は勿論だったが、曲のアレンジや演奏も素晴らしかった。ヨンシー含め5人編成のバンド、リズムが面白いの。ピアノにオルガンにグロッケン、ヴィブラフォンと鍵盤楽器の音が多数使われていたんだけど、それぞれが違うリズムを刻み、噛み合っていき(ポリリズム的な効果もあった)、それぞれの音色が織物のように絡まり、実にダンサブルなグルーヴを生み出すのです。踊れる踊れる。

そのリズムをより強靭にしていたのが、レコーディングにも参加しているサムリのドラム。múmで叩いてた方だそうですね。ヨンシーの繊細な声と、力強いドラムがこんなに相性いいとは。ステージの上手にドラムセット、下手にパーカッションブースがあり、曲によって移動しつつ演奏していました。ドラムはバリッとしためちゃいい響きだし(マレットも使ってバラエティ溢れる音色)、時々入れるシンバルのミュートも効果的。パーカッションの方は、それは楽器なの?ってなさまざまなガジェットを使い、独特な音を出していて面白かった!フェルトで出来た王冠みたいなヘッドドレスも被っててかわいかったです。

アンプは通すしPAもあるけど、基本楽器そのものの響きを活かすアコースティックな音で奏でられるリズム。そしてそのリズムの間を縫うように、ヨンシーのファルセットが伸びていく。は、はごろもか!いやはごろもには縫い目はないのではないか。あ、じゃあ縫うと言うよりくぐり抜けていく?んん?美しく、それでいて躍動感に満ちている、生命の逞しさをも感じさせる音でフロアは満たされました。カラフル!淡色ではなく原色、有機的な色彩。視覚的にも聴覚的にも、色に溢れたステージでした。ヨンシーの衣裳も、あの色使いをごちゃっとならずまとめててセンスいい!

ヨンシーの声、万全のコンディションではない感じもちょっとしましたが、それでもすごかった。ついこないだも思ったことだけど、やっぱり繊細だって言うのとひ弱って言うのは違うなー。ちいさな蝶の羽根だって韃靼海峡を渡る力を宿してるんだぜ、てなものです。ブレスの音がかなり大きく聴こえたのも印象的。変な話だけど、ひとってやっぱりいきもので、呼吸をして生きているのだなあと思ってしまった。ヨンシーは胸いっぱいに息を吸い込んで、それを喉で響かせてあの美しい声を出す。そんなことがどうしようもなく胸に迫りました。生命を持つ者が生み出す、形のないものはこんなにも力の限りを尽くさねばならず、そしてこんなにも美しい。

映像演出にも生きること、は感じられた。氷の国だけど火山もある、アイスランドの森。風はあらゆるものを吹き飛ばしてしまうし、火はだいじなものも燃やし尽くす。死骸も何もかも呑み込んでしまうが故に砂漠は清潔で美しいと言うけれど、自然は人間の思いなど何ひとつ汲み取らず奪い尽くす、しかし与えてもくれる。いやーそれにしても怖くてかわいい映像だった。どうぶつもいっぱい出てきてニコニコ。

最後の、ガスのかかったオーロラが浮かんでいるような空の映像、すごく綺麗だった。嵐が通り過ぎていく時の空のようだった。12月には暖かく、風の強い帰り道はとても気持ちがよかったです。



2010年12月01日(水)
THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』〜アサイラム〜

THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』〜アサイラム〜@Zepp Tokyo

先月のスタジオコーストでのライヴは仕事が終わらずラスト3曲しか聴けませんでしたよ…2公演チケットとっといてよかったよ……。と言っても今日も遅刻したのだが。でも開演も遅れたそうで、5曲目くらいからは聴けてたらしい。

「カラビンカ」聴けたのは嬉しかったわー。演奏もなんかすごくよかったなあ。もともと個人的に馴染みのあるコードリフが聴けて好きな曲なんですが、ライヴで聴くとホントいいわこれ…だいすきー!あーあと「ヘッドフォンチルドレン」もうれしかった…ヘッドフォンしてると車に轢かれるよー!この2曲は歌詞もバッシバシにクリアに入ってきてキましたわ。新譜からの曲は構成が凝ってて練ったなーって印象だったんだけど、実際ライヴで聴くとより立体的に聴こえて面白かった。曲と曲の間にブレイク的な演奏もちょこちょこ入れてあったんだけど、これがまたよくて。

いやーそれにしても失礼なことを言うが、演奏が上手くなってませんか…なんてえの、技術云々ってのとはまた違って(いや技術も向上してるんだろうけど)、グラッとなった時に修復するのが早いって言うか、ちょっとやそっとじゃゆらぎませんと言う。で、それで演奏されると、新譜以外のこれ迄何度も聴いている曲もより骨太に聴こえた。ステージ上はかなりカオスってんだけど、そうなればなる程プレイヤーは冴え冴えとしていく感じでした。岡峰くんはもともと達者な演奏をするひとだなあと思ってたけど、松田くんがそれをガッシリ受けるようになって、ふたりのコンビネーションがますます強靭になった感じも。

雨が降らなかったので妖怪まさすの声は大丈夫かと思ったが、いい声でしたわ。ちょっと嗄れてたけど高音出てたし、そのハスキーな高音ってのがまた印象が違って格好いい。これもゆらがないなーと思った所以。ゆったりめの曲でもあやうさなくしっかり歌が伝わる。「冬のミルク」とかは毛皮はふかふかなのに脚はふとくておっきくなる証拠のハスキー犬のようでしたよー。美しい!弱いと繊細ってのは違うんだなあとつくづく。そんな素晴らしい声をもったあめふらしはえいじゅんをふんずけたりしていてかわいい顔して鬼のようでした。ひどい。

ワンマン久し振りに観たんで、MCが多いのもなんか新鮮だった…演奏はあんななのに、喋るとどうしてこんなにゆるいのか。ほのぼのとすらする……。あー面白かった、師走のスタートにいいもん観たー。

そういえばえいじゅんがなんで『アフロ・ディズニー2』を読んでいるのか気になる(twitter参照)。