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2010年11月13日(土)
『わたしのすがた』2回目、『ロールシャッハ』

フェスティバル/トーキョー 10『わたしのすがた』@にしすがも創造舎 他

リピート。今回は13:30出発、昼間だとまた印象が変わる。単純に前回暗くてあまり見えなかったところが見えた、とか、暗くないから怖さが軽減する、と言うのもあるけど、それ以外にもいろいろと。

土曜日の昼間と言うこともあり参加者が多かったのか、前回より出発の間隔が短い感じもして(これは自分の錯覚かも知れないが)他の鑑賞者にも気付きやすい。地図を持ってうろうろしている。このひとはきっと初めて訪問するんだな、なんて想像し乍らすれちがう。先週の私はあんなだったんだ。

道順を憶えていたので、土地勘が全くないところを不安に思い乍ら歩くのとは違う。地図を殆ど見ることなく、前回と違う経路で行ってみる。昼間なのでひと通りが多い。公園で遊ぶこどもたちや親子づれ。お店も開いている。

家も育ってた!3の場所の書き込みが増えてた、とかそういうこと以外も。制作側も手を加え続けているようだ。ハチが瓶詰めになっていたり、バラまかれていたり。音の配置も変わっていた。反面、ひとの出入りによって自然と変化していっているところもある。日々続くひとの出入り、気配が場所を変えていく。約一ヶ月の展示期間でもそうなのだ。数年、数十年経てば、どれだけのものが変化するか。そしてしないか。ひともものも歳をとる。そこには劣化と言う言葉だけでは簡単に片付けられないものが刻み付けられている。

最後の場所にはひとのものだと思われる骨が展示されている。本物かは判らない。参加者の感想をwebで読んでいた時、肝臓がんで亡くなった方の骨だと書かれているものを見付けたので、説明されているところがあったっけ?と今回注意深く探したのだが、そのような記述を見付けることは出来なかった。見落としたのかも知れないけど。実際はどうなのだろう。

しかしこのすかすかの骨には見憶えがある。ウチの母親は肺がんが全身に転移して亡くなったのだが、焼き場から出てきた骨はこのようにぼろぼろでなかなか拾えなかったのだ。当時はこんなにぼろぼろになって死ぬなんて、本当に苦しかっただろう、つらかっただろうとしか思えなかった。今なら、こんなになっても、こんなになる迄生きたんだ、と思えるようにもなってきた。

飴屋さんは「生まれてきたので生きています」と自己紹介に書いていたことがあった。何故生きているのか、に対する答えとしてはシンプルで明快で、とても好きな言葉だ。生まれてきたのでただ生きている。死ぬ迄生きる。死ぬ迄の時間、同じように生きている他人と出会ったり、さまざまな場所に移動したり、見たり聴いたり、いろんなことを経験する。ただ、それだけ。でもそれは、ひとつとして同じものはない。

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KKP#7『ロールシャッハ』@天王洲 銀河劇場

ツアーから戻ってきての東京公演。ネタバレ一切読んでいなかったので、こなれ具合とかはよく判らない。面白かったー。

しかし今迄観たKKPの中ではいちばん重かった。小林さんだから必ず前向きに終わるのを信じていたけど、その信じる、と言う行為がいかに困難か、その過程でどれだけ苦しむかが描かれている。小林さんがこういうことを書いたと言うことは…といろいろ考え込んでしまった。書かないではいられない現在、と言うことなのだろう。

前回の『トライアンフ』でも“信じる”と言うキーワードはあった。信じることは思い込むことと紙一重。そして思い込みには、信じたいと願うあまり、自分に嘘をつくことになる可能性が秘められている。その嘘に自分が納得出来るか、嘘でも構わないと思えるか、それは幸せなことなのか。その判断は日々揺れる。そして、決断には勇気が必要になる。

こんな結末を書いた小林さんは強いし優しいし、途中の迷いを見せる勇気もある。そして4人の登場人物を丁寧に丁寧に書く辛抱強さ。やっぱりすごいひとだなと思いました。

竹井さんと辻本さんは初見でしたが(追記:辻本さんて元オレンヂさんだったんですね…き、気付かなかった……)どちらも面白い!そして久ヶ沢さんのネジの外れ具合は見習いたい…もう尊敬する……(笑)。

自分はぎっちょなので、楽しい面もいろいろありました。皆さん左起点で動くの大変だっただろうなあ、ジャグリングなんかもやってたし!ロールシャッハと言うタイトルも粋だし、フックが利いた内容も流石です。こういう気分がぱあっと晴れるようなひっかけ、小林さんは絶対に外さない。ひとを楽しませたい、笑わせたいと言うことにかけて本当に頭おかしいひとだと思います。素晴らしい。

あと以前大森南朋さんが「僕の名前って漢字で書くと左右対称なんですよね」と言っていたのを思い出した。小林くんとこの話したりしたことあったのかな、なんて思いました。おーもりくんがこの舞台に出演していたら、本名を役名にそのまま使えたね(笑)。