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2010年04月28日(水)
ミヅマ三人衆、うさ公、御名残四月大歌舞伎千秋楽

会田誠+天明屋尚+山口晃『誠がいく、尚がいく、晃がいく ―ミヅマ三人衆ジャパンを斬る―』@高橋コレクション日比谷
自分が今迄観た中でいちばん間近で『ジューサーミキサー』を観れました。展示位置が高くないのです。過去観た時は全て床面から数メートル上に展示されていて、見上げる遠い感じだったけど、このギャラリーでは床面から数十cmのところから展示されている。目の前!で、“あれ”が観られます。いやもうすんげいいい!すんげいいや!ひとりひとりの表情が細かく観られるし、ひとりひとりの身体も細かく観られます。底に行くにつれその身体がどんなふうになっていってるかもなー。もうこれ何度観たか憶えていないくらい観てるけど、気持ちわるいとか怖いとかそういう感情がわかないのが自分でもどうかと思う。すごい作品にはすごいとしか思えませんよ…。作者の倫理観とかフェミニズムとか知らんわ、ご本人も作品解説で、どう言っても伝わらないだろうと思うしフェミニストからはなんやかや言われ続けるだろうと書かれていましたが。
まあひとには勧められません……。
あとみんなといっしょシリーズの『寅次郎 二歳』が観られたのも嬉しかった。これもご本人解説によると「アーチストのアーチストぶったクロッキーやエスキースの鼻持ちならなさがいやで、意識的にそれを外れるようにして描いたもの」。これも最高です。二歳のこどもって、こうなんだろうな〜としか思えないよ。
あああ、会田さんのことばかり書いている。山口さんの綿密な狂気に天明屋さんの任侠魂炸裂っぷりも素敵です。
いやもうミヅマって頭おかしい、大好き。こんなのが有楽町のド真ん中で展示されてるってのが痛快。

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『ゴーゴーミッフィー展』@松屋銀座8階大催場
カツアゲされまくりました……。
それはともかく、今回コラボものが多かった。大人ファンのことも視野にしっかり入れてきてるんだろうなあ。展示場の閲覧用デスクとスツールは深澤直人さんデザインのもの。ミニマルで削ぎ落とされた無駄なしのラインをブルーナカラーが彩り、家具にも芸術品にも見える素敵さ。販売もされていました。ほ、ほしい…でも置く場所ない……。
展示方法も凝っていて、ブルーナさんが絵を描くバストショットを壁面スクリーン、手元ショットを床面に設置された絵本(スケッチブック?)型のオブジェ面に映していたりと、立体的なコーナーも多かったです。今回初期の原画も結構あって、色指定になる前――ポスターカラーで彩色した原画もあって、興味深く観れました。
こどももおとなもうさこちゃんを観てにっこり。そして出口にあるグッズ売場を手ぶらでスルーすることはかなり困難(笑)。55歳おめでとう。
・ブログもあるのよん→『ゴーゴーブログ』
会場の様子がわかります。

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歌舞伎座さよなら公演『御名残四月大歌舞伎』第三部@歌舞伎座

『実録先代萩』『助六由縁江戸桜』。一年半くらいさよなら公演をやっていて、「実のところいつ閉まるんだっけ…?」なんて思った時期もありましたが、いよいよ本当にさよならの日がやってきました。本興行は本日で千秋楽、30日の閉場式を以てこの歌舞伎座は幕を閉じ、改修工事に入ります。

昼過ぎから銀座に来ていたので、ひとまず17時過ぎに歌舞伎座前へ。二部の上演中にも関わらず、すごいひとだかり。報道陣も沢山いて、インタヴュー録りやレポートをしている。周辺の横断歩道では、携帯やデジカメを持ったひとが信号の変わる度に立ち止まり、『本日千秋楽』の垂れ幕たなびく最後の劇場の姿を撮影しています。中央分離帯に取り残されそうになってるひともいた(笑)。向かいの通りも見物人でごった返していました。仕事の手を休めて感慨深そうに様子を眺めているお店のひともいたなー。改修工事中はお客さんが減るだろう。大好きなお弁当屋さんもあるので、新橋演舞場に行く時や、銀座に出向いた時は、足を伸ばして買いものしようと思ったり。劇場前で46年間甘栗を売っていたおじさんは、これを機に引退するとのことで、出店にご挨拶の張り紙がありました。栗は当然のように売り切れていました。

裏に回ったり、周辺を散歩したりしているうちに三部が開場。ひとごみをかきわけて入口へ向かうと、あ、サイモンさんだ!本興行最後のもぎりを務めてらっしゃいました。私も何度かもぎってもらったことがあります。この日は隣の方にもぎってもらいました。サイモンさんにはファンも多いのでしょう、プチ渋滞になってた(笑)。おつかれさまでした、と声をかけているひとも。

ロビーはとても華やか。奥さま方が笑顔で挨拶しています。ふと見上げると二階にもじゃもじゃしたひとがいる。篠山紀信さんが撮影されていました。開演ギリギリ迄劇場内をうろうろ。歌舞伎座のお稲荷さんにもお参りを。売店は品薄、めでたいやきは焼いてるのに売り切れ(予約でいっぱい?)。ここでもお店のひとに最後の声をかけているひとが沢山。ご高齢の方も多いので、閉場と同時に引退される職員さんがかなりいるとのこと。改装後にはどんなひとたちが持ち場に就いているのかな。コーヒーを売ってくれたおばさんに挨拶をして席に着きました。

直前にタさんから「昨日は芝翫さんが体調不良で休演、代役が福助さんだった」と聞いて冷や汗が出ましたが、しっかりしたご様子で出ていらしたので胸をなでおろす。『実録先代萩』の浅岡、素敵だった!それにしても大向こうの量が半端ない。最後の最後な上にオールスターキャストなもんだから、出てくるひと出てくるひとに悉く声が降る。こんなにいっぺんに大向こう聴いたの初めてです。しかし声を掛けるタイミング以外の劇場内の空気は研ぎすまされていました。普段は結構寝てるひととか喋ってるひととかお弁当の包みをガサガサ言わせてるひととかが必ず何人かいるんだけど、流石にこの日は雰囲気が違ったなあ。まあ、寝てるひとはいたのかも知れないけどね(苦笑)。

『実録先代萩』は子役が出ずっぱりで、台詞も多い。亀千代を千之助くん、千代松を宜生くんが懸命に演じます。狙ったかは判らないけれど、次世代に未来を託す思いが感じられる、現歌舞伎座の最後にぴったりの演目でした。とは言うもののこれ、結構酷い話なんだよね…千代松無理矢理連れてかれちゃうんだもん。泣きの動作が思いっきり振付けなんですが、それでももう可哀相でたまらんもん。しかもふたりともかわいいだもん。かわいいそうだよー!幸四郎さんの鬼ー(役が)!浅岡はずっと嘆きっぱなしです。演じるだけでもう憔悴しそう。芝翫さん、おつかれさまでした。

それにしても最後の花道での片倉小十郎(幸四郎さん)と千代松はビシッと絵になって格好よかったわ…割れんばかりの拍手が響き渡りました。

休憩時間もおべんと食べずに場内をうろうろしみじみ。

とうとう最後の演目です、歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜』!海老蔵さんの口上で幕を開けました。出てきた途端わあっと声が上がり、続けて大向こうがどばどばどばっ!いずれは海老蔵さんが團十郎を襲名し、新しい歌舞伎座で助六を演じるんだよなあと思うと、続いていくものの計り知れなさに思わず身震い。ちなみに海老蔵さんは来月新橋演舞場の『助六由縁江戸桜』で助六を演じます。こちらは三浦屋格子先より水入り迄。

それにしてもちょう豪華キャスト。助六を演じたことのある方が4人も(菊五郎さん、仁左衛門さん、三津五郎さん、海老蔵さん)出ている。彼らが團十郎さんの助六を盛り上げる、花を添える!ちょー贅沢…目が回る(笑)。

で、助六です。ああ助六です助六です。結構じらすんだよねー。しかし彼が出て来る迄もド華やか、まずは並び傾城でドーン!続いて揚巻の道中でドーン!白玉出てきてドーン!たすけてー!並び傾城の時点でもう豪華絢爛と言っていい程なのに、40kg超と言われる衣裳(タさんに教えて頂いた参考:今回白玉を演じた福助さんが揚巻を演じた時の話)を身に着けた揚巻が花道に現れた瞬間と言ったら。もう場内に突風が吹いたかのように空気が動いた感じがしました。なんだろう、あの場にいたひと全員が揚巻を見つめるために首や目線を動かした、それが風になったかのようだった!ホントに!いんやもう豪奢過ぎてこっちの感覚もおかしくなってきて、数多に挿された簪を見ているうちに、「あれ?ガンダム?」みたいな……。もうさ、衣裳とかそういう次元じゃない!でも装置ってのも違うぜ!着ている人物含めて芸術品です。あんなん着て優雅な身のこなしが出来ること自体信じられん…動けるだけでもすごいのに。玉三郎さんすごすぎる……!そして福助さんの白玉!ふたりが背中をそらして決める場面はため息とどよめき!だってこれ、相当踏ん張らないとひっくり返っちゃうって。足だけでなくて、肩も首も腕も胸も腰も。女形の(筋)力を思い知りましたよ……。

ちなみに並び傾城の五人の中に新悟くんもいるのです、うふふ。この中から未来の揚巻や白玉が…と考えるとまたしみじみ。

で、意休も出てきていよいよ助六の出。花道入口の幕がシャッと開く音とともに大喝采!花道で出端、團十郎さん格好いい!いやーもうどうしようってなもので。語り、踊り、一挙手一投足がキマるキマる。拍子木もバシバシ入る、これが長い!のに緊張感が切れない!いや〜長かったな、wiki見たら20分くらいやるもんらしい。ようやく本舞台に入ってきた助六さんはモテモテですよ。いや〜モテるねえ、モテの権化ですねえ。客席もやんややんやで、見栄が決まると屋号飛びまくり、助六と言えばの言い立ての前には「待ってました!」そして始まる長台詞「いかさまなぁ、〜」!拍手、拍手、拍手!

で、なんやかんやあって股くぐりです。出てきた通人里暁の勘三郎さん、やってくれました。もともとこの場面の里暁は即興上等なので皆待っていた感じ。出てきた途端にわあっとどよめき、客席も「来たよ!」「やってくれよ!」と言う雰囲気。「股をくぐれ」と言う團十郎さんに「あなたをどっかで見たことがある…夏雄さん(團十郎さんの本名)と言うひとに、似ているなあ」。もう大ウケです。続けて「孝俊(海老蔵)くんが落ち着いてよかったですね」「このひとニューヨークで換金する時『せんだらーず』って言ったんですよ、千は日本語だよ!」やらなんやらつつきまくり、「大病を克服して本当によかった」と言ったところで大拍手。しかしその後「治療で血液型が変わってあたしと同じになったんですよ」でドッとわく。團十郎さんちょっとブルブルしていたような気がするけどなんとか耐えました。続いてのターゲットは助六の兄さん(曽我十郎)の菊五郎さん。「今日いらしてますね!」と寺島しのぶさんに目をやって(見えてるんですねー)、「世界に羽ばたくしのぶ!」と話を振ります。この時点で菊五郎さんかなり危なかったんだけど、「昨日食事奢ってもらったんですよね」との言葉に遂に陥落。おかし過ぎる!なんかもうここらへん、ふくろうをからかうりすのナトキン(@ピーターラビット)に見えたよ…しっぽ喰いちぎられちゃうよ……。

あ、今思い出した。股くぐる時に里暁が手ぬぐい(ハンカチ?正方形だった)を被るんだけど、リバーシブルで三升と重ね扇に抱き柏柄だった。仕込みも完璧です(笑)。

やっとふたりの股をくぐった勘三郎さん、花道でもいろいろ語ります。「皆さんよく券(チケットって言わないところがいい)とれたね」「徹夜でとったひともいたんだよね(後日聞きましたが、勘三郎さんと仁左衛門さんは夜中徹夜組に声をかけに行かれたそうです)」「お別れですね」「沢山使って頂いて有難うございます」。そして「新しい劇場で、また沢山夢を見させてもらいましょうよ」。拍手と歓声、ジーン。

そしてお母さま登場、ひいーとなる兄弟。揚巻の心意気が素敵過ぎる…いやー揚巻はホント格好いいですね、やっぱりあれだけの装束を身にまとうひとは人間力がないと着物に負けるわ。五代目坂東玉三郎がいる時代に生まれたことを幸福に思うー!揚巻の情、しかと観させて頂きました。去る助六、見送る揚巻。歌舞伎座独特の、横長の舞台に速やかに幕が引かれる。鮮やかな幕切れ。

拍手は止まぬがカーテンコールはなし。清々しい千秋楽でした。そう、歌舞伎はこれでおしまいではなく続いていくのです(勘三郎さん、最近乗ったタクシーの運転手さんに「来月から三年間仕事なしですか?」て言われたとか・苦笑)。新しい歌舞伎座が開くのを楽しみに、しばらく他の劇場で。おつかれさまでした、沢山の夢を有難う。