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2010年01月26日(火)
『THEE SCENE』

『THEE SCENE -LAST HEAVEN 031011-』@LIQUIDROOM

これで最後だ。ミッシェルの音がライヴハウスで聴ける。

ライヴハウスに『LAST HEAVEN 031011』の映像と爆音をかけるツアーの追加公演、最終日。新木場には行けなかったので有難い。『THEE MOVIE』とは別ものの映像・音響で、途中編集も殆どなく(曲間を短くしたくらい)、ドキュメント的な挿入映像やナレーションも全くない。ミッシェル最後のライヴをひたすら追う構成。あの日のライヴ映像は『BURNING MOTORS GO LAST HEAVEN』としてリリースされているが、それとも違うものになっていた。アベくんのカットが多いように感じた。退きの映像も多い。

「ゴッドファーザー愛のテーマ」が流れて暗転、歓声がわっと沸いて、前方にひとが殺到する。アベくんが登場すると、ひときわ大きな歓声と悲鳴のような声があがる。隣の子は泣き出してしまった。そして「ドロップ」。爆音もいいとこだ。一瞬重い空気になる。しかし続いて「ゲット・アップ・ルーシー」のギターリフが炸裂すると、弾かれたようにフロアがうねり出す。そして「バードメン」が始まった途端、前にいた女の子がもう我慢出来ないと言った様子でフロントに駆け出していった。みるみるサーファーが増えていく。

とにかく音がよく、当日幕張で聴いた音とは格段に違う。その上“あの”爆音なのだ。ミッシェルの爆音。数日耳がイカれてしまう、あの音。今出ているミュージックマガジンにのうやんのインタヴューが載っている。『THEE SCENE』の音響についても話している。正に今この場で演奏しているような音にしたこと。臨場感を大事にするため、あの日の歓声を入れないようにしたこと(実際は曲間に微かに入っていた)。そして音をそのまま流すのではなく、PAを通して(現場で調整して)鳴らしている。映画と違い一日一箇所でしかやっていなかったのは、バンドが街にやってくる、と言う架空のツアーの気分を盛り上げるためだけではなく、音響エンジニアが全ての現場に実際に出向き、PAを操作していたからではないだろうか(憶測だが)。

この日起きた歓声、拍手は、幕張の音ではなく、リキッドにいたひとたちが鳴らした音だ。ライヴハウスのフロアで、スタンディングで観ると言うことは、こういうことだったんだ。楽しい。楽しい!ミッシェルのライヴだ!

しかし曲間が長めに空くとふっと我に返る。照れたように小さな声が飛んだりしていた。そういう気まずさも愛おしく感じた。もともとこれはオマケのようなものだ。ミッシェルの音がライヴハウスで聴けるなんて、もうないことだったのだから。スクリーンに時折映し出されるアベくんの表情(なんとも言えない顔をしている。あの表情をどう説明すればいいか判らない)に呆然とし、「ブギー」「赤毛のケリー」辺りでは重苦しい気分になったが、理由はどうあれ、今回オマケをくれたミッシェルのスタッフには感謝しかない。本当に有難う。

楽しい時間は過ぎる。「リボルバー・ジャンキーズ」や「ジェニー」はゴキゲンな曲だけど、だんだん寂しくなってくる。チバくんの「サンキュー!」に思い切りアベくんが「世界の終わり」のイントロを被せたところにまた笑ってしまいつつ、ああ、やっぱり終わるんだなと思った。終わらないものはない。ミッシェルはもうないし、アベくんももういない。それは解っている。それでまた続いてくだろう、それでまた繰り返すだろう、これは誰のせいなんだろう、それはわかってるんだろう。

このバンドに会えたことに感謝して、曲が残されていることに感謝して、ずっと聴き続けよう。

明るくなってぼんやりしていたら、「KWACKER」が流れ始めた。ミック・グリーンもそっちに行っちゃったよ、アベくん。その場を離れ難くなってうろうろしていたら、「サタニック・ブン・ブン・ヘッド」が始まった。フロアが盛り上がる。そしてうわきたよ「CISCO」!ロビーから戻って来るひともいる。思わずシスコー!やっちゃったよ。いやー、十数年振りにやっちゃった。もうやることもないだろう。「ガールフレンド」が流れ始めて、ようやく外に出た。ドリンク貰わないで出てきちゃったと交換用缶バッヂを見たら、今迄のリキッドロゴ入りのものではなく、クボケン撮影のカートとコートニーの写真がプリントされたものだった。

帰宅後、エアコンのスイッチを入れても起動音が聴こえず、何度もリモコンを押してしまった。耳鳴りが酷い。ミッシェルのライヴに行ったんだな、と思った。