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2010年03月06日(土)
『富士見町アパートメント』Aプロとか

(3月9日に書いている)あー、そういえば仕事机にチロのポストカード飾ってるんだよ。高橋コレクション日比谷で今『荒木経惟・舟越桂「至上ノ愛像」展』をやってて、おみやげに買ってきてもらったの。こんれがまたあーた、すんごい美人で。あ〜チロは美人だな〜。写真いっぱい撮ってもらってよかったね、チロー。

チロちゃんも海ちゃんもミーちゃんも、カメラマンの傍にいるねこは写真をいっぱい撮ってもらってる。あたりまえと言えばあたりまえと言うか、自然なことなんだろうけど、それを観ることが出来てよかったなーと思う。

てか『至上ノ愛像』は私も行きたいんだ。行けるかな。

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自転車キンクリートSTORE『富士見町アパートメント』Aプロ@座・高円寺 1

本日はAプロ、蓬莱竜太『魔女の夜』、赤堀雅秋『海へ』。こうやってみると『ポン助先生』が異色だったかな。他の三本は今の社会の重苦しいところをとりあげたものだった。あのアパートのセットの印象がこういう話を引き出したのか、カナリアのような作家たちが現在の空気を感じ取って書いたものなのか、いろいろ考え込んでしまった。以下ネタバレあります。

Aプロは男性作家の書いた女性のドロドロと男性作家の書いた男性のドロドロと言う、なんともなまぐさいものが揃いました。そして演出は(個人的な印象です)、女性同士のドロドロはスタイリッシュとも言えるスッキリとしたもので、男性たちのドロドロは靴下くさい見てくれの底にはキラリと美しいもんがあるよって言う(笑)。蓬莱さんも赤堀さんも自ら演出もするひとで、そのふたりの演出を反映させているようも思いました。「生活に使っているのか?と思ってしまうくらい殺風景な部屋」「自殺した男のゴミ部屋」と言うそもそもの設定がホンにあったからだとも思いますが、二本立てと言うことを考えてのことか、うまいことメリハリが付いていた。

山口紗弥加さんと明星真由美さんの『魔女の夜』は、女優とマネジャーの間に積もる複雑な感情のやりとりと、事件が起こっているのか?と言うサスペンス、と言うふたつの緊張感が並行して続くもの。しかしそのお互いを試すかのような台詞の応酬が、途中からもうそれが事実でも虚言でも、どちらでもいいや、と言うところに落ちてしまう停滞があったような感じがしたのが惜しいかな…一時間の上演時間なのにそれを感じてしまったのが残念。基本最悪なことから考えるのがいかんのか。

とは言うものの、この女性同士のなんつうか離れられないけど一緒にいたくないんじゃホントは!みたいな微妙な関係を浮かび上がらせる流れは目が離せなかったなー。明星さんがもうね…些細なきっかけで憎しみが芽吹く、と言うのを説得力のある語りで表現する。ここらへんは流石でした。氣志團のマネジャーをやっていた明星さんのことをつい思ってしまうのも、作り手側の思うツボなんだろうか。山口さんはこれ迄まっすぐな役でしか観たことなかったので新鮮だった。後がない女優のやけっぱち感と諦め感が、数秒単位で入れ替わる。難しかっただろうなあ。

マネジャーは自分の残りの人生のことを考える。女優は女優人生のことを考える。女優の人生って何だろう?

『海へ』はもうあかほり好きにはもうたまらんものでしたよ…。ゴミだらけの部屋、ねこにかにかまをあげる、チン毛をトイレにためる、それぞれのエロDVD嗜好をムキになって論議する、そして何がおこると言うこともない、人生は平凡なもの。平凡なものはこれだけ濃厚なんだ。逆にこれよく一時間に収めたな、と感心もした。

いつものように説明的な台詞は一切ない。会話だけで進む。男は何故死んだのか、何故死ぬ前日に十万円を借りたのか、隣室の老人とはどのくらいの仲?双子の弟は童貞?金子の仕事は何?伊藤の家では妻とこどもたちが待っている。少しずつ疑問が提示され、状況を把握していき、登場人物たちの関係性がだんだん浮かび上がって来る。これが、全て会話で示される。

巧いとか言う技巧ではなく(いやそりゃ何本も書いてるひとだから技巧はあるんでしょうが)、腕力と言うか、腕っぷしの強さで書ききっているように思える。意地にすら見える。何が何でも説明台詞を書くか!と言う(笑)その意地の張り具合がまたいいわ〜(笑)。そして赤堀さんの作品はやはり光を(どんな小さなものであっても)見出すもので、それは死にものぐるいで手を伸ばすもので、そうでなきゃやってらんないからだ。普通に暮らすひとたちが、普通に暮らす中で何故か波立ってしまうもの、どんなに慎ましく生きていても降り掛かる災難。ちょっと調子に乗ってみることもある。それをただただ、ひたすら、脂汗をにじませ乍ら掴んで文字に落としている印象。

これってすんごい辛抱強くないと書けんよなあ…遅筆なのも…し、仕方がないのか……な………。

それを達者な役者さんたちが演じるものだから、ホンに仕込まれている層がますます厚くなる訳です。舞台上から姿を消している(奥の部屋にひっこむ、こたつの中に隠れている等)時ですら、登場人物たちそれぞれの人生を背負った声が聴こえる。笑っているようにすら聴こえる号泣、実にもならない遊びに真剣になる姿。同じ部屋でひと晩を明かし、それぞれの生活へ戻っていく彼らに思いを馳せずにはいられない。最後部屋にひとり残った井之上さんの立ち姿が美しかったなー。「チン毛、海へ!」なんて台詞言ってても。

デリヘルのミカちゃんを演じた遠藤留奈さん、よかったなー。赤堀さんの作品って、こういったギャルをオッサンたちの中にポーンと投げ込んで会話させたら、ギャルがその中の誰よりも達観してて腹が据わってて理解が深く勘がよく、オッサンたちが唖然とさせられる図式が時々出て来るんだけど、正にそれ。トイレにためているチン毛に「あ、大事なんだよね、流しちゃいけないんだよね?」と理解を示すシーンは爆笑しつつも感動すらしたなー。時間にして15分もあったか?そんなに長くないシーンなのに、すごいパンチ力だった。こういうやりとりで女の子のすごさを見せる赤堀さんのなんつうの、ツンデレ?っぷりがもはや清々しい(笑)。

清水さんと入江さんは裕美さんの演出作品にはよく出ていて、それこそ皆二十代の頃から観ている訳だけど、そんな彼らが、人生の半分を過ぎた中年役をそのまま演じられるようになっていたのもなんだか感慨深かった。この世代の共通言語として松田聖子の「赤いスイートピー」が印象的な使われ方をされているんだけど(皆二番迄唄える)、思えばあかほりの方が歳下なんだよね…。

はー、あかほりのこととなると語るなー(笑)。いや新作久し振りだったしね…『沼袋十人斬り』行けなかったから。そしてこんだけチン毛と書いたのも初めてだし、今後書くこともないであろう。あかほりのバカー!

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そんなこんなでこの日はすんげー具合が悪く、芝居以外の予定がいろいろパーになりました。無念。せっかく高円寺行ったんだからお店とか見てまわりたかったよー。まあむしろ芝居で助かったか…座って観られるっていいね!(としより)