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2010年04月27日(火)
矢野顕子『ここが音楽堂!』弾き語りツアー

矢野顕子『ここが音楽堂!』弾き語りツアー@東京国際フォーラム ホールC

ピアノ弾き語りのライヴを観るのは随分久し振り。弾き語りのアルバム自体が久し振りだからね、出前コンサートも都内ではなかなか実現しないし。歌とピアノ、やのさんの真骨頂。ハズレは絶対にない。

しかし、やのさんは言った。「もう52年弾いているけど、まだまだピアノについて分からないことが沢山ある」。やのさんをしてこう言わせてしまうピアノと言う楽器の奥深さ、そんなやのさんの演奏を聴くことで毎回更新される自分の中のピアノと言う楽器の素晴らしさ。運搬が容易ではない楽器なので、大概のピアニストは、そのホールに設置されているピアノを弾く。一期一会のものもある。長い間放っておかれていい音が鳴らなくなっているものもある。やのさん曰く「もういいっすよ…」とひねくれてしまっているものもある。「そんなことないよ、いい音だよ」とコンサートの間励まして、それに応えてくれるピアノもあれば、最後迄理解しあえないピアノもある。

この日のピアノはとてもいい子だったそうです。歌の間にも、MCをし乍らピアノにずっと触っているやのさん。コードを弾く、パッセージを繰り返す、指を冷やさないためと言うのもあるだろうが、全てがこの日この時にしかない曲になる。「『音楽堂』のツアーだから、この中からの曲をメインに…と言いつつ、そうはならないんですけどね(笑)」。過去の弾き語りアルバムからの曲も、どのアルバムにも収録されていない曲もあった。そして『音楽堂』からの曲も、ピアノアレンジが変わっているものがあった。

どれも素晴らしかったのですが、個人的なハイライトはRCのカヴァー「恩赦」から「きよしちゃん」への流れ。やのさんの歌と演奏は勿論、観客の集中度もすごかったように思う。

もともと歌とピアノだけで、音ひとつすら聴き逃すまいと言う空気が張りつめているやのさんの弾き語りコンサート。MCで、物音をたててはいけない、と落としたチラシ類を無理な体勢で拾おうとして肩を脱臼したお客さんの話(「出て行くのがステージから見えていたんです。気持ちが悪くなっちゃったのかなと思っていて…終演後スタッフの方が『退場されたお客さまは、肩を脱臼されて……』と。……ええ?脱臼!?エルレガーデンのコンサートじゃないんですよ、私のコンサートでですよ!」(笑))が出たのですが、実際それくらいの緊張感が常にあります。私もお腹鳴らしちゃまずいと開演前におかし食べたもん(笑)。ちなみにそのお客さんは元気になられて、次のコンサートにもいらっしゃったそうです。よかったよかった。

閑話休題。でも、「恩赦」「きよしちゃん」の時は、音を立てちゃいけない、静かにしていなきゃいけない、なんて自制はどこかへ消えていた。やのさんの歌とピアノ以外に、意識が向かなかった。他のひとのことは判らないけれど、自分はそうだった。そして、静まり返っている客席から、立ち上るような熱を感じた。声をあげずとも、身体を動かさずとも、ホールの中は熱気で満たされているようだった。最後の一音の残響が消え、やのさんがピアノから指を離した途端、弾かれたように歓声と拍手が響き渡った。

ゲストの細美くんとのコーナーもよかったです。細美くんとても緊張していたみたいで、それがこっちにも伝わってきてドキドキし乍ら観たよ!ふたりの共作曲のリリース、是非実現してもらいたいです。

立花ハジメさんのステージアートも、不穏な世界が続く中、唄い続けるひとへの敬意が溢れているように感じられるもので、とても印象に残った。

終演後、ホールに清志郎の声で「恩赦」が流れた。もうすぐ一年になる。真夜中の歌舞伎町で訃報を聞いた時のひんやりとした空気は、ずっと憶えていると思う。きよしちゃん、いい曲だね、きよしちゃん。きよしちゃん、ほんっとぉ〜にいい曲だね、きよしちゃん。Everything's gonna be alright. We'll do anything to end this fight.

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■ふとっぱら
前日行ったポンチさんから「綾鷹がもらえた」と聞いていたので、ペットボトル一本だろうと思っていたら。やのさんのメッセージカード(ちゃんと封筒に入ってる)入りの二本セットしかも箱入りしかも紙手提げ付きのものが終演後配られました。あわわわわ有難うございます