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2019年10月15日(火)
(元)グランドキャバレーのPenguin Cafe

Penguin Cafe Handfuls of Night Tour 2019@東京キネマ倶楽部


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Arthur Jeffes:pf, key, harm
Andy Waterworth:db
Rebecca Waterworth:vc
Vincent Greene:va
Clem Browne:vn
Oli Langford:vn
Pete Radcliffe:perc, log drum, harm
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「タイタニックが沈む迄演奏を続けた楽団は、海でペンギンに生まれ変わりペンギンカフェを結成した。やがて彼らは陸に上がり、再び船に乗り込み、今日ここで演奏をしている。彼らと同じ船に乗り合わせた聴衆は、目の前の危機的現実からしばし離れ、演奏に聴き入る。」

というのはPenguin Cafeの初来日公演を観たときに浮かんだ妄想で、そのイメージはずっと続いている。今回のハコ、東京キネマ倶楽部がまたね、難破船(失礼)みたいな雰囲気でね。嵐を逃れてきたひとが迷い込んだらそこに楽団がいて……などと妄想も続く。


「such a beautiful old venue!」。バンドも気に入ってくれたようです、よかった!

安全な場所があっても、そこは極限の地。船であったらそれは沈むし、南極であったら遭難する。身を寄せあって寒さをしのぐペンギンたちは、群れの外のガード役を交替で引き受ける。それでも何羽かは命を落とす。楽団の演奏を聴き終えたら、それぞれの人生に襲ってくる荒波に再び立ち向かうため外へ出て行かなくてはならない。そう考えるとオアシスみたいな場所でもあるな。極地なのに(笑)。オアシスは交通、交流の場であって定住は出来ない、とはよくいったものだ。

1st Setは『Handfuls of Night』をトラック順に全曲。「Next piece, 」とその都度アーサーが解説をしてくれる。コウテイペンギンはペンギンのなかでいちばんおおきい、ジェンツーペンギンはHardest Worker……何度「Penguin」という単語を口にしたかな。英語本来の発音だと「ペングゥィン」というニュアンスなんだー、と妙なところに感心する。グリーンピースがアーサーに依頼した「南極ペンギンについての楽曲」から生まれた今作、ピアノで作曲したものが多いのかな? 前日のインストアライヴではピアノソロで成立していたが、この日のアンサンブルセットでは当然乍ら音のレイヤーが増え、楽曲の新しい魅力が見えてくる。「Chapter」で箱体を響かせるようなコードを、「Adelie」でピアノと丁々発止のフレーズを繰り出すアンディのダブルベース。「At The Top〜」での歩を進めるようなピートのキック。アーサーも前日とは違い、ピアノをプリペアド使いして多彩な音を出す。「Midnight Sun」はミュートしたピアノ弦がハープのように響く。うすぐもりにぼやけた陽光、眼前に夏の南極大陸が現れる。極上のアンビエントミュージック。

2nd Setはリラックス、新旧のナンバーを織り交ぜ楽しいひととき。「Protection」のベース格好よかったなー! アンディにほれぼれ。アコースティックで美しい音楽を奏でる楽団のパーカッションがさりげなくツーバスなのアツい。Simian Mobile Discoのカヴァー「Wheels Within Wheels」で大活躍してました。あとこの楽団、ヴィオラの音がしっかり聴こえるところが好きなんだ。そうそう、「Landau」の導入〜インプロ〜「Wheels Within〜」という流れでは、興に乗ったか大盛りあがりするストリングスと、いつ入ろっかなーとニコニコ眺めるアーサー、みたいな図が出来てて面白かった。みんな呼吸をするように演奏してる。

サイモンの楽曲が減ってきているが、アーサーが父を深く愛し尊敬していること、父の楽団をとてもだいじに思っていることは誰もがわかっている。アーサーはこれからまだまだ、素晴らしい音楽を世に送り出し続けてくれる筈だ。そして、今ではお父さんのことを知らないリスナーも増えているだろう。アーサーの音楽に魅了されるリスナーは、これからも増え続ける。

アンコール。二曲準備してるよ! とアーサー。笑って応えるフロア。日本語で「私のお父さんの名前」(だったかな)と紹介した後に演奏されたのは「Harry Piers」。Harry Piersがサイモンのミドルネームだということ、この曲がサイモンの追悼式で演奏されたことを知ったのは、前回の来日公演のときだった。もしもサイモンが早逝しなければ、アーサーの音楽に出会えただろうか? そのサイモンも、ロバート・スコット(後述)が南極で遭難していなかったら生まれていない。つくづく縁とは不思議なものだ。自分の力ではどうすることも出来ない大きな流れのなかで、ひとは生まれて死んでいく。

遠い未来、消えゆく楽団を再び舟に乗せるのは誰だろう。時間が、場所が変わっても、演奏を続ける楽団を。

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セットリスト(前述の画像は撮らせていただいたもの。有難うございます!)

01. Winter Sun
02. Chinstrap
03. Chapte
04. Adelie
05. At The Top of the Hill, They Stood...
06. Pythagoras on the Line Again
07. The Life of an Emperor
08. Gentoo Origin
09. Midnight Sun
--- interval---
10. Kora Kora
11. Perpetuum Mobile
12. That, Not That
13. The Sound of Someone You Love Who's Going Away and it Doesn't Matter
14. Now Nothing (Rock Music)
15. Ricercar
16. Protection
17. (Landau)
18. Wheels Within Wheels (Simian Mobile Disco cover)
19. Music for a Found Harmonium
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Encore
20. Harry Piers
21. Rescue

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いつも秋に来るけど、台風に当たったのは初めてだったんじゃないかな。また来てね、とは気軽にいえなくなってきたなあ。それでも、また来てほしい。

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・Penguin Cafe “Handfuls of Night”┃Inpartmaint Inc
今回の招聘はSMASHとここかな? これ迄のPLANKTONと違って不明瞭なところが多かったので若干戸惑った。でも新しい展開があるかもしれないし、期待してます

・そして朝霧JAM、また出られる機会があるといいよね……


死を悟ったスコット隊長は、妻である彫刻家のキャサリン・ブルースに再婚を進める遺書を残した。その再婚相手がアーサーの曽祖父だった。アーサーのご母堂(=サイモンの妻)エミリー・ヤングはPenguin Cafe Orchestraのアートワークでもおなじみのアーティストで、彫刻家でもある。ということは、キャサリンは母方の家系だろうか

・(再掲)【インタヴュー】「ペンギン・カフェ」の夢は21世紀も続く:音楽家アーサー・ジェフスに訊く(20120626)┃WIRED.jp
スコットが無事に冒険から帰っていたら、わが家族はなかったということになるんですね。
北極の旅では見るものも聴くものもないですから、とにかく考えるしかないんですね(笑)。そこで「自分は何がやりたいんだろう」ってじっくり考えて、やっぱり音楽かな、となって、やるならちゃんとやろうと決めて、音楽学校の作曲科に1年通いました。26歳のときです。

・ロバート・スコット┃Wikipedia
「アムンゼンに先を越された探検家」という小学生時代に得た知識しかなかったので、気軽にWikiを読みに行って半泣きになってる。なんという悲劇か……。
それにしても、血縁はないにしてもつくづくペンギンにとりつかれているというか、縁がある家系。宿命というものはあるのだなあなんて思う