君は鍵を託された
時間を託された
音立てて道を開き
その空間を浄化せよ
貴女を傷つけたものは
懸命に運ぼうとした その重くて硬い力作だったのでは?
それを祟りというのなら その無謀さを諌められたのです
周りを振り回す代償を自分で払った
隣を植え替えたので スイートオリーブが広々と見える 淡いクリーム色でやさしい香り 一人前になって花をいっぱいつけた
四季咲きといっても今がいちばん 金木犀といっしょ ギンモクセイもいっしょ
白い花たちも青い花も それぞれによい場所に落ち着いた
この日に起こったことは 本当に祟りなんでしょうか 私に時間はあるのでしょうか
開けているどの窓からも 流れ込むどの空気も 金木犀をのせてくる
どの辻にも 庭先のツリーのように 蜜柑色の小さな飾りが鈴なりになった
日当たりのいい特等席の樹が 満開になっている
夜の湯殿には 昼間高窓から忍び込んだ金木犀が満ちている
あたたかな気持ちと 切ない気持ちが 湯気の中に立ち上る
嬉しい時はハッピーだけれど 哀しいときには辛くなる 胸に一杯になる少し重い香り
朝 金木犀の蕾がまるくなってると思った
午後 ベランダで 道向こうのお庭の大きな金木犀に オレンジ色の丸い蕾が目立ち始めたと思ったら
風にのって香ってきた
その季節になったんだね
この先は あっという間に年が終わる気がする
わたしだけのみどりの株 意味は秘密 誰も知らない
サプライズを育てることに 疲れて飽きて
もうどうでもよくなって
いらないと思う
でも捨てるつもりなら そのまま放っておけばいいとも思う
消すことと 捨てることは 同じこと 同じ作業
迷いからの 判断であり 決意だ
何かを軽くするための
堅固な石垣を針でつつくような 小さな行動を起こす
長年気にかかっていたことに近寄れた 一歩を出せたことでぐっと動いた 手を伸べてもらえた それだけで十分 結果はどちらでもいい
気がかりなことをつぶしてゆく作業だから 結果が出れば忘れることが出来る
修繕という言葉が好き 何かを修繕すること すごく好き
丁寧に見栄えを再現したり 発想の転換でびっくりするような方法で 機能を復活させたり
自分のものでなくても お気に入りでなくても
そういうことをするのがすごく好き
挑み感がすき
修理とは少し違う感じ
修理は決まったカタチに戻すことと思う 修繕は道具や仕方に個性が出る気がする した人の手跡が残る感じ かな
ここ2年同じデザインの手帳を使っている 表紙の柄を選ぶだけ 3年目の来年用を買った
同デザインで大小2種のサイズがあると気づき 迷った末 今と同じサイズにした でも結局後日若干大きい方のも買った
家でゆっくり触っていると 大きいほうが良いみたい 開き方がゆったりしていて反発がない 再来年はこっちだ
小さいほうの使い道を思案する
長年さがし求めていたものを得た 他のものがすべて色褪せた もう何も欲しいものはない
息が吸えない と思っていたら
俯いていた
仰げばよかったんだ
空に胸を開くのだ
久々に記憶に残る夢を見た
なぜか引っ越しをしてきたその日 下町のアパートのような階段の下 外で片付けや掃除をしていた 雑多な感じのする町
なぜそんな所に居たのだろう 小さなスコップと靴洗いブラシを持って うずくまった頭上を一瞬の轟音が過ぎた
瞬間線路に伏せていた 顔をあげると 少し先に茶色の電車が止まっていた 駅のようだけれど 人は見えない
怖くなった 早くその場を離れねばと思った
小さな斜面を下り 少し淀んだ水を進みまたよじ登り 込み入った家々の裏側を抜け 壊れそうな柵を越え やっと道路まで這い上がったけれど 家がどっちかわからない 町の名も住所も知らない
完全に迷子になった
小さなスコップと靴洗いブラシを持ったまま 泥ネズミ状態で立ち尽くす
こだわることには意味があるだろう でも重要ではないかもしれないし 不要と思うことだってできる
使い切ることは意味があるだろう でも重要ではないかもしれないし 不要と思うこともできる
いつだって 定義はなく人の判断だ
捨てる行為は 不要と判断すること 胸の痛みと決着をつけること
それだって 暮らしに新たな息を吹き返すことでもある
でも
使い切るというエコを 実践する
そろそろ暮らしをもどしたい
土をつかんで 水をつかんで 空をつかんで
深く息をして
大きく歩き
ものを運んで
時おり犬と話す
カレンダーを一日見間違っていた
今日が本当の 満月の中秋の名月 大きくのぼった
ぴったりと平面的に見える ただ明るい
灯篭の後ろのピンクの萩が 台風に落ちず残っていて 月明かりの中 どこかのお寺のよう
庭隅に少し濃い赤 彼岸花が群れている
陽ざしはまだ暑くて 樹陰はうんと涼しくて
空気を一杯吸った 流れ来る風ではなく 庭の空気 久しぶりに 隅々まで歩いて
昨日より大きい あまりの月の明るさに 満月かなと思ったら 中秋の名月だった あわててお団子を買いに
暦という言葉から離れていた 慌ただしく日が過ぎて ただそれだけの日々だった 一日が終わる その繰り返しだけだった
そうだよね 大きな暦の中に生きていたんだよね 何があっても巡り続ける宙の暦 動かせない真理がある その中に生かされている
冴え冴えと明るい月 屋根瓦を明るくしている ものの影たちはくっきりと黒い
やわらかな優しい月光というより まっすぐに射抜くような 威力を感じる
それが生きもののテンションを 上げるのかもしれない
鏡面に力を封じ込めるのかもしれない
明るい月の下 夕方から開く花たちの香りがして 時間の流れが戻った
澄んだ空気の中で 月を仰ぐ 虫の声がする
しずかな秋の夜 満ち足りた時間
何処にいるのか 一羽のシジュウカラが 朝のはりつめた空気に 美しく力強く惚れ惚れする声を 遠くまでひびかせていた
きっと胸張って高らかに 歌っているのだろう
しばらくして飛び立った
メモリーズBOXを もう閉じませんか
その樹も 動物のオブジェも いらない
ほんとうに大切なものを 求めませんか
高窓から 冷たい夜気がおりてくる
一番すきな湯ぶね
夜空はくっきりした藍 月が冴え冴えと明るい 空気がクール ほんとうに気持ちいい 静かな落ち着いた時間
それは ルールでもなく きまりでもなく もちろん法律でもなく しきたりマナー行儀とも離れ
生き難にく くならないための
慣習
その民族として生き その土地に暮らし その世代で居るために
知ったほうがよい
自分の好き嫌いでなく 自分がするかしないかでなく 世の人がどう動くのかということは 知ったほうがよい
世の中を怖れぬために 怖気づかぬために
失った時間を 戻すことではなく 蓄えることでもなく 前をみよう
毎日青い空と白い雲を見に散歩した きれいだねと言って見上げていた ずっと忘れない
小さくたってできるということ
闇雲にではなく
勢いをもって 正確に飛び出すということ
新しいことへ
きみも わたしも
いよいよ明日
吉日であればいいね
みなよく頑張ったと思う 小さなきみがよく耐えたと思う
ひと夏の実りになればいいね
昨日 いっしょに 心の底から高らかに笑ったこと 忘れない 楽しかったね
すべて終わって新しく始まる日
庭の片隅で 彼岸花の蕾があがっていた
お彼岸までに開くのかしら 秋らしくなるのかしら
この夏の夏らしさを知らぬまま もう終わろうとしている
いろんな家族があり 色んな人たちがいた 自分の足らない面も見えた 貴重な体験だった
即断即決即行動 の 失敗が増えている そそっかしいだけ 早計なだけ 短慮ってことか
もう少し考えましょ 結局 何か落としているから
マジックナンバーが 3になった
長かったんだな と思うけれど 長くもなかったような あっという間に流れた気がする 先が見えたら 過去の長さは帳消しになった
とりあえずあと3 丁寧に終えよう
私にとって大切なのは、 私が持っているものであって、 私が失ったものではない
佐藤 真海さんのことばから
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