消えてゆく小さなこと


消 え て ゆ く 小 さ な こ と

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1914年11月30日(月)

作業が延びた
私の仕事ではないのにしている
うんざりだけれど仕方ない

でもいいことがあった
外に出ると
雲ひとつない藍色の空に
細い月が出ていた
くっきりととても美しい静かな月だった
そしてそのまっすぐ下にはっきり輝く星があった
なにかなぁ 
調べると水星だった 左のが金星
月齢は2日

いい気分の暖かな夕暮れ
よかったと思う
ご褒美なんだ


1914年11月29日(日)

春先のこの寒さに小さくなっていた
二日も何もしていない気がする
夜遅くゆっくりお風呂に入ると
湯気が静かにこもってゆく
身体が疲れた時はあまり好まないのに
心が平安を求めるときは
甘い香りの泡はやさしい


1914年11月28日(土)

ただなんとなく
ほんとにただふらりと
寄ってみただけだった
普段は通らない場所だから

もう随分前に動かなくなって
その後も何の変化もなく
捨て置かれていたのに

びっくりですね
消滅せず復活していた

よくわからないけれど
何か勢いを得たような
流れが澄んだような
そんな感じがした

ペンが絶好調になったのか
整理なのか

ただわかったの
今が一番あなたのやりたいやり方じゃないかな
しがらみなく規制なく自由に人を集めて
コメントを沢山得る手立てを編んで
その中心でやりとりする
前からそうすればよかったのに
いろいろプライドを云々してたものね
でも今あなたのプライドはきっと満たされていると思う
今日見て少しほっとした

あなたの白い花はやっぱり素敵だと思います
気負いがとれてまろやかだ
亡くなったひとへ というより
花嫁だったお母さんへ捧げるのかも知れないね
一番美しく幸せなひとへ
そんな花束

私も卒業できるかな
やっとできそうな気がします
あなたの花束を見て
貴方からも


1914年11月27日(金)

薄紫のフリージアが咲き始めた
数本切ってきて部屋に置く
香りを愛でる花
満ち足りた気持ちになる


1914年11月26日(木)

立ち止まって探すこともせず
ただ突っ走るだけでは
何をさがしているのかもわからず
何もみつからない


1914年11月25日(水)

よく見て 聡くありたいと思う
でも疲れるよ
よく見えなくてもいいのではないか
見えぬからよいこともあるのではないか
見えなくてよいこともあるのではないか
目の力を緩めて柔らかくして見た方が
いいような気がしてくる
人が見ていることなのだ
機械が見ているのではないのだ
わたしは機械ではない


1914年11月24日(火)

戦後の目くるめく時代のドラマでした

糊もアイロンもきっちりきいた
襟のあるブラウスを
普通に普段に着ている女性を見て
心の豊かさに驚きました

精神を高く保つというのは
こういうことなのだな


1914年11月23日(月)

やらねばならぬことがやまほどある のではなく
やりたいことがたくさんある のだから
いそいそといそしめばいい


1914年11月22日(日)

そうだよね
君の思い切りは素晴らしい
記憶の断片にしがみついていても
しかたがない
捨て去ることは賢明だ
所属したという証であっても
そこに活きていたわけではないのだものね


1914年11月21日(土)

久々に君と
ツボがいっしょで
ハマリ具合がシンクロして
大笑いしたね
きもちよかったね
何かからだが軽くなった気がするね


1914年11月20日(金)

ひとのことに不服を思っているより
自分のことをしたほうが
よっぽど自分の時間を無駄にせずにすむ
すっきりしていられる


1914年11月19日(木)

公園の桜が吹き上がり
屋根を越えて庭に舞い込む
きれいな色のまま
きれいな形のまま
お花見のお弁当のように
庭中に散らばっている

昨日公園前の道を通った時
道に張り出た大木の下から見上げると
自由な枝ぶりが美しかった
蒔絵のような桜だった
はらはらと散ってきた

横の公民館の前庭に小さなミモザがあった
いつから在るのだろう
初めて気付いた
一階の窓越しに囲碁の倶楽部が見えた
黙々と対戦していた

今日は川沿いの桜並木を抜けた
まだ散り始めぬようで
風に重そうにゆれていた
曇った色だった


1914年11月18日(水)

1/ f モードが止まってしまった
固まってしまった
そよと吹く風の後追いをしない
青草の先に小さな影が映ったのに
白い花の奥に羽音がするのに

春の陽気にぼんやりと佇む
赤い日が輪郭を滲ませる

時間を止めてよ

子どもじみた願いを淡く唱えて
苦笑してみる

苦笑しながら生きるしかないのかな


1914年11月17日(火)

躓いたのかな
夢破れたのかな
淋しいのかな
切ないのかな
捨て切れぬ自分を
抱き続ける自分を

卒業する
という言葉で押し切って
唐突に足を止める

新しい風を見たくて


1914年11月16日(月)

解決でも決着でもなく

卒業する という言葉

使ってみる手もある


1914年11月15日(日)

失敗を怖れて避けようとしている
だけかもしれない

チャレンジといわず
冒険 してみれば?
あたらしいこと

失敗は織り込み済み
スリルをわくわくを
楽しめばいい


1914年11月14日(土)

それは 人として醜いものなのか
それとも 自身で許せぬのか

ならば削ぎ落とせ
血を流して削ぎ落とせ
葬るとはそういうことだ


1914年11月13日(金)

芸的に立派な家系の役者さんだけれど
舞台は知らずTVで見るだけで
親の七光りだと思っていた
ぬぼーっとしてる感じがして
前は好きではなかった

でも最近 素敵な人だと思うようになった
七光りでなく 内からの輝きに見えて

写真やインタビューを見ていて
女優さんの中でいちばん好きかも

素が たおやか ゆるやか やわらか
そして のびやか そんな感じがする
のびしろのある感じがする
ノーメイクで素直に役を待ち受けている感じがする
自己主張しないという素直な主張があるような気がする

メイクやファッションといった外観で主張するのでなく
眼差しにまわりへのあたたかさを感じる
慈しまれて育ったという育ちのよさを
生身の血の通ったひとを感じる

素は凛々しい人かも知れない
白地に藍の柄の浴衣で素足に下駄が似合い
ずっと青年剣士や書生役をもできそうな
マドンナリリーや少し水色を帯びた白の花菖蒲を思う

今まで気づかなかった
好きな役者さん


1914年11月12日(木)

たっぷりと浸み込んでゆく雨に
庭の景色はかわってゆく
ハナズオウの紫は一段と濃く膨らんで
木蓮の葉が展開しはじめた


1914年11月11日(水)

キラキラ輝くのでなく
鈍く光を放ちしっかりと刻まれる
選ばれてぴたりと納まる言葉を見た

直線ばかりが生きる道ではない。
曲線で描かれる人生のしなやかさ、深さ。

そうだね
強さでなく深さ なんだね


そして曲線はオリジナルな景色をなすのだろうね


1914年11月10日(火)

菜の花色の
ぼあっとした満月が
東に見えた

春 という感じで


1914年11月09日(月)

一重の山吹が枝垂れて
先の先まで黄色くこぼれて
そこら辺りぱっと明るく華やいで
いい花だと思う
うれしくなって笑みのこぼれる花


1914年11月08日(日)

夕暮れの時雨かと思えば
霰の礫つぶてのように固くなって
大きくなって強くなって
痛いほどに吹きつけてきた
闇からの吹雪かと思うほどの
春の雪だった
止めば冷たい空気の向こうに
朧でなく煌々と冴え冴えと
満月に近い春の月


1914年11月07日(土)

私はサービスマンじゃないので

あなたに命令される立場じゃないので

依頼されるならきちんとやりますが

依頼者がすべきことはきちんと要求しますので

タイヘンなことになったと思うかもしれませんよ

私の要求水準は高いです

自分でした方がラクだったと思うかもしれませんよ

よろしいですか


1914年11月06日(金)

春の光が差し込むと
部屋がくすんで見えてくる
俄然お掃除隊になって
あちこち突撃する

そうね 
お掃除ダイエットという手も
お掃除日記という策も


1914年11月05日(木)

忘れろ忘れろ
嫌なことは全部忘れてしまえ
嫌な気持ちは消してしまえ
持ち続けることはない
覚えてなくていい
記憶から消してしまえ
誰かに何か言われた時には
そんなことあったかな
覚えてないな それでいい

記憶なんて不確かなもの
確認し続けるから確定してゆく
確認しなければ沈んでゆく
思い出さなければ消えてゆく
二度と思い出さなければいい


1914年11月04日(水)

神の決めたこと
そのご褒美は 転機 だったのかも

今 
まるで違う気持ちで作業している
不思議なくらい
自分でもよくわからない
説明できない


そして
もうひとつご褒美だと思う
お墓参りでいつもと違う通路を通った
最初の角にはっとする字があった
そんなに出会う名でないのに
胸の躍るふるえるきゅっとする名
ためらったこと飛び込めなかったこと
勇気がなかったこと正直じゃなかったこと
ちゃんと謝れなかったこと
ずっと後悔している
でもあたたかいものを残してくれた
そのことを思い起こさせてくれた
その名と同じ
胸がざわついた
目が少し熱くなった

この通路を通ったことが不思議


1914年11月03日(火)

その樹は
強く剪定されて小さくなった

でも何事も無かったように静かに
どっしりと美しく立っている


1914年11月02日(月)

偶然のことだが
必然だったかも知れない
たまたまそこに目をやったというのは

理性の愛 という言葉を
初めて見た

だから万人を愛せるのだ
許せるのだ

それで納得できた気がした
理性でつくる裏と表 の意味を


1914年11月01日(日)

見えた気がする
私はお助け係と思われている

みなさん
もっと自立して下さい




天窓より          


−ともすれば消えそうになる自分を見失わぬよう−       

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− ささやかに −          

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日付は通し番号として記しています         


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