2009年09月18日(金)  高松うどん&小豆島1日目

『ぼくとママの黄色い自転車』上映会を目当てに、今日から小豆島で遅い夏休みを取ることに。娘のたまが生まれてから、大阪の実家に帰るか、近場の海へ出かけるぐらいで、一家で長期旅行に出かけるのは、初めて。昨夜、荷造りをしながら、たまは「あした、りょこう。あした、りょこう」と創作ダンスを舞い始めた。


飛行機で高松入り。香川出身で映画『UDON』(脚本は「つばさ」の戸田山雅司さん)を作ったうどん通の本広克行監督に教えてもらったおすすめ店のうちひとつ、「さか枝」が、県庁公園近くにあり、高松駅行き空港バスを途中下車して5分ほど歩く。おひるどきで店の外まで行列。黙々とうどんをかきこむ人々の静かな迫力に威圧される。注文、会計はどうするのか、異国に舞い込んだようにドギマギ、モタモタ。3人分で1000円足らず。しっかりしたコシのある麺で、たまは「小」ざるうどんでは足りず、わたしの分を横取り。わたしは甘い豆の天ぷらを気に入る。本場の雰囲気にのまれながら食べる醍醐味が何よりのスパイス。

大通りを1キロあまり歩き(歩くと何か楽しい発見があるかと期待したが、商店街は脇にそれたところにあったらしい)高松港へ。チケット売り場には「ぼくママ」マップ。高速艇で小豆島土庄港に着くと、「ぼくママ}のぼりと映画で使われたのと同じ黄色い自転車がお出迎え。さらに、映画公開を記念して始まった黄色いレンタサイクルも。このあと、小豆島滞在中に島のあちこちで黄色い自転車を見かけ、そのたびに映画が島に新しい風を起こしているようで感激した。


映画製作と宣伝に多大な協力をしてくださった小豆島ヘルシーランド会長の柳生好彦さんが港まで出迎えてくれ、ゲストハウスに案内される。東京のわが家の何倍もの広さと窓の外は海という絶好の眺めをたたえたこの家が小豆島滞在中の宿。柳生さんの奥様の峰子さん、長男のお嫁さんの陽子さん、次男のお嫁さんの希保さんを紹介される。オリーブオイル効果か、皆さんお肌がつやつや。

上映会に合わせて大阪の両親も泊まりがけで来ていて、宿泊先の小豆島国際ホテルへ会いに行く。偶然にも、わたしのチョコレート名刺やいまいまさこカフェのチョコ壁紙を作ってくれた広告会社時代の先輩、古川ジュンさんがエンジェルロードの広告でお仕事していたのが、このホテル。ここの社長さんに「小豆島が舞台の映画を作った」と「ぼくママ」を紹介された古川さんが、「この脚本書いたの、知り合いですよ」と話してつながり、世の中狭いなあと驚いたが、うちの両親がこのホテルを選んだのも何かの縁。ホテル前には黄色いレンタサイクルがあり、ロビーにも宣伝スペースが設けられていて(写真を撮りそびれて残念)感激。

映画にも登場するエンジェルロードは、ホテルの目の前。客室からは潮の満ち引きで道が現れたり隠れたりするのをのぞめるらしい。ちょうど潮が引いているときで、歩くことができたが、たまは「みずが あがってくるよう」と怖がり、小石を積み上げるという不思議な行動に出た。何か神懸かり的な空気が宿っている場なのだろうか。



エンジェルロードの突き当たりに生い茂る木に、実のようなものがたわわについている。近づいてみると、ハート形の絵馬がたくさん! 


夕食は、宿泊客と同じものを出してもらう。海の幸の新鮮さに目を見張り、頬張る。宿泊しないわたしたち一家は小豆島在住の人だと思われたようで、料理の説明をするたびに「地元の人はよくご存知でしょうけど」と言われ、東京から来ましたと修正するチャンスがないままそうめんまで食べてしまった。

食事中も相手を変えては探険に出かけていたたまは、食後はロビーの外のライトアップされた芝生で大はしゃぎ。うちの両親が会うのは1月以来だから8か月ぶり。あまり孫に執着がなく、大阪に帰ってこいとも言わない人たちではあるが、「たまちゃん、元気やなあ」と面白がっていた。小豆島で落ち合うことにして良かった、と延々と芝生を走り回るたまを見て思った。

2008年09月18日(木)  マタニティオレンジ333(最終回) 魔の二歳児 魔法の二歳児
2005年09月18日(日)  和歌山・串本の干物
2004年09月18日(土)  愛以外は証明できる宇宙飛行士
2003年09月18日(木)  夢も人もつながる映画『夢追いかけて』
2002年09月18日(水)  月刊ドラマ


2009年09月15日(火)  読書の秋! amazonの本全品送料無料

3日で3冊を読んだことを先週水曜の日記に記したが、その翌日の木曜には道尾秀介さんの『シャドウ』を読んだ。先月読んだ『Story Seller(ストーリーセラー)』という人気作家の競作短編集の中で、表題になった有川浩さんの作品と道尾さんの『光の箱』が飛び抜けて面白かった。有川さんは『阪急電車』が去年読んだベスト3に入るほど気に入ったけど、このところ日曜版の書評でこの人の名前を見ない週はないほど話題作を連発している道尾さんの本は読んだことがなかった。

作者の筆力が仕向けた人物を犯人だと怪しんだので、ラストで全容が明かされたときは、やられたと思ったが、振り返ると、ミスリードのための意図があからさまにわかる部分もあり、無理がないことはない。だけど、まんまと騙される快感をひさしぶりに味わえた。『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野 晶午)や『倒錯のロンド』(折原一)などの叙述トリックものに一時期はまったけど、素直に思い込むクセのあるわたしは、いつも作者の狙いに見事に引っかかる。

土日で『やさしい訴え』(小川洋子)を読み、昨日は夜中に起きだして『素人庖丁記』(嵐山光三郎)を読んだ。どちらの作家も何を読んでも外れなし、ページを開いているだけでウットリとなれる。小川さんの美しい文体は繊細な旋律のようだと思うことがあるけれど、今回はチェンバロという楽器を真ん中にした男女三人の話で、チェンバロは嫉妬の対象にもなり、秘めた愛の目撃者にもなり、いっそう深い響きと余韻を物語にもたらしている。

嵐山さんの食べものへの造詣の深さと飽くなき好奇心は、『文人悪食』などからもうかがえたが、好奇心の赴くまま素人包丁をふるい、尺八の竹を煮物にするチャレンジ精神には恐れ入った。病院食にうんざり、ぐったりしていたのに、差し入れのステーキ400gでみるみる回復という逸話もこの人らしい。人生の最後を飾る「死期の献立」についても真剣に論じ、正岡子規が死の前年から36歳(若い!)で亡くなるまで、病人とは思えない食欲で延々食べ続けたものを記録した日記(『仰臥漫録』として岩波文庫から出ている)を紹介している。食べることは生きること、食欲は生命力だとはよく思うけど、命を削ってまで食べる壮絶な生き方もあるのだ。

子どもが寝静まった深夜は本の世界に入り込むのに打ってつけ。真夜中の読書も快適な涼しさとなり、読書の秋だなあとしみじみ。2日に一冊ぐらいのペースで読んでいけたら、言葉銀行の充実をはかれそうだ。コピーライター時代の先輩が「わたしたちの仕事は言葉を捻り出すことだけど、出すばかりだと枯渇するよ」と警告してくれたのを思い出す。折しもアマゾンから「本全品送料無料キャンペーン」(11/4まで)のお知らせが届いた。1500円以上送料無料もすばらしいが、一冊でこの金額を超えるのは難しく、いつも余計な買い物をしてしまうのが難点だった。この機会に今井雅子(いまいまさこ)の関連本を求めてみるのも、よろしいかと。

2008年09月15日(月)  「第2回万葉LOVERSのつどい」でますます万葉ラブ!
2002年09月15日(日)  パコダテ人P面日記 宮崎映画祭1日目


2009年09月14日(月)  ヘッドスパとジェルネイルのビューティサンデー

先日髪を短くしたら、先っぽに残っていたパーマ部分が切り取られて、途端にまとまりがつかなくなった。前回は半年以上の間が空いたけど、今回は一か月も経たないうちに昨日、美容院へ駆け込んだ。担当の美容師さんが新規開店した系列店に移ったばかりで、お店はお祝いのお花だらけ。ヘッドスパとパーマを組み合わせたコースの割引券が案内葉書についていたので、ヘッドスパを初体験する。ここのお店はハンドマッサージでリンパの流れを良くするやり方。抱き枕のようなものを抱えながら、20分ほどもまれた後、じっくりシャンプー。ユーカリ配合とのことで、マッサージ剤もシャンプーもスースーして気持ちいい。わたしの頭皮は血行が悪いため赤みがかっているらしいが、何度かヘッドスパをすると、理想的な青白い地肌になるらしい。「自分の頭皮って見る機会ないですからねえ」と話す。

夕方からは、友人せらママの家でジェルネイルを初体験。先日、娘の星良ちゃんの中学校の宿題でインタビューを受けたとき、せらママもわが家に来たのだけど、せらちゃんのインタビューよりせらママの人生相談が主役になった。娘たちが大きくなって子育てにかけていた時間がずいぶん浮き、それをどう使えばいいのかしら、と迷っている様子だったので、「技術を身につけるとか、磨くとか、自分も楽しめて、人とも分かち合えるような生産的なこと」をおすすめした。たとえば、趣味のキャンドル作りと仕事の英語教室を組み合わせて、親子で楽しめる英語キャンドル作り教室を開く、そのための準備をするなど。

思い立ったら即行動するせらママは、その夜、早速新しいキャンドルの先生を見つけて教室を申し込み、さらに前から興味のあったジェルネイル講座を受講。自宅でジェルネイルができるキットとその使い方を取得したので、「今井さんの爪で練習させて」というわけだった。

ちょうど今度の週末に『ぼくとママの黄色い自転車』上映会に合わせて小豆島へ行くので、「黄色い爪で上陸だ!」作戦と銘打ち、せらママは数日前から黄色いジェルネイルを試行錯誤。アクリル絵の具をジェルに混ぜて黄色を出すのだけど、だまになったり、固まらなかったり、なかなかうまくいかない。二人で相談して、「クリアジェルに黄色いパーツを貼り付けて黄色感を出す」方針に。

甘皮処理に始まり、ベースのジェルを塗っては紫外線で固め、パーツを乗っけては固め、上にジェルを重ねてはまた固め……フルーツのまわりにゼリー液を流し込んで冷蔵庫で固め、ゼリー寄せを作るような感覚。レモンの他にライム、ピンクグレープフルーツ、スイカを組み合わせて、今から夏が始まりそうなトロピカルな爪になった。

昔、留学時代の友人ミカコの従妹にヒロコちゃんというネイルアーティストがいて、ミカコの家でよくネイルアート会を開いた。ネイルをしながらとりとめのない話をするのが楽しくて、ネイルを挟んでのおしゃべりは女の子の特権だなあと思った。時は移り、話題の中心は子育てだけど、2時間がかりでネイルを仕上げる間、せらママとじっくり話すことができた。

わたしがネイルをしに行くことを話したわけでもないのに、土曜日の夜、お客さんからもらったお絵描きセットで、たまは爪に色を塗りだして、「ネイルアート〜」とうれしそうに見せに来た。ネイルアートなんて言葉、わたしが教えたんだっけ。たしかに、足の甲まで色にまみれて、これはこれで前衛アートになっていた。

2008年09月14日(日)  降雪確率100%の「ハーベストの丘」
2003年09月14日(日)  ヤッシー君、地震を吹っ飛ばす!
2002年09月14日(土)  旅支度


2009年09月13日(日)  朝ドラ「つばさ」第25週は「最後のラブレター」

先日の昭和芸能舎公演『長ぐつのロミオ』は六本木のディスコが華やかさを競っていた時代が舞台だった。一緒に観に行ったヤマシタさん、アサミちゃんに「ヴェルファーレで松田聖子に間違われた事件」を話すと、勘違いのスケールの大きさに受けていた。正しくは「松田聖子に間違われたと思い込んだ事件」である。詳細を記した日記にも書いたが、おめでたい性格ゆえに、物事を前向きにねじ曲げて解釈する傾向があり、ありえない勘違いをしでかしてしまう。

最近では、「つばさ」の資料を届けた宅配便のお兄さんが、封筒に「つばさ」のロゴのスタンプが押されているのを目に留めて、「ひょっとして、関係者ですか?」と声を弾ませたときのこと。「ええ、まあ」と答えると、「ひょっとして、出演されているんですか?」。まあわたしって女優に見えるのかしらと自惚れたのと、お兄さんが言葉を続けたのがほぼ同時で、「そちらのお嬢さん」とわたしが手を引いていた娘のたまに目をやった。「いえ、違います」と言うと、「そうですか。いやーお嬢さんが出ているのかなって思いました。かわいいし」とお兄さん。娘じゃなかったらわたしが出ているとは思わなかったらしい。

宅配便の勘違いといえば、学生時代、関西ローカルの「ナイトinナイト」に「公募名人」としてゲスト出演した翌日のこと。荷物を配達に来たお兄さんがわたしの顔を見るなり、「昨日、桂三枝さんとテレビ出てはりましたよね?」と興奮した声を上げた。「観てはりました?」「観てましたよー。うわ、びっくり、本物やわ」とひとしきり盛り上がった後で、「サインください」とお兄さん。いやん、すっかり有名人やんと舞い上がり、「どこにサインしましょ?」と聞くと、「ここにお願いします」とお兄さんは伝票の受領欄の小さい四角を指差した。

……とまあ思い込みの激しさでは武勇伝に事欠かないけれど、最近思うのは、「思い込み」と「決めつけ」は違うということ。自分の価値観、許容範囲からはみ出したものに遭遇したときに、受け入れる余地があるかどうか。その間口は、大きいほうではないかと思う。インド人を幼なじみに持ち、アメリカの高校に留学した経験から、肌の色や言葉が違っても人間はわかりあえるという感覚が育ったし、応援団や広告代理店での波瀾万丈な日々からは、どうにもならない状況にも突破口はあることを学んだ。完璧な人はいないし、完璧な人生なんてない。その事実を受け入れた上で、どれだけ歩み寄れるか、積み上げられるかを探る姿勢に希望は宿るのだと思う。

明日からの「つばさ」第25週では、ラジオぽてとと城之内房子(冨士眞奈美)の対立が激化。欲しいものを手に入れるためなら手段を選ばない房子とわかりあえる道を探るつばさ。絵本『まじょのなみだ』に加乃子が付け足したハッピーエンドのように、みんなから怖れられる魔女の素顔は、みんなとつながりたい淋しがりやなのかもしれない。果たして、つばさは、房子は、どういう答えを出すのか……。24週に続けて「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。演出は初登場の松園武大さん。タイトルの「最後のラブレター」にちなんで、台本のお供はハートで描かれたラブレターを。いろんな形で愛をふりまいてきた「つばさ」も、25週を終えると、残すは最終週のみ。ラストまで休むことなくで精力的に進化を続ける公式サイトにもご注目。ドラマが二倍面白くなること請け合い。公式掲示板にもぜひ感想を書き込んでくださいませ。

【お知らせ】魔女田さん、NHKラジオに40分出演

日本イラン合作映画『風の絨毯』でご一緒して以来のくされ縁で、瀬戸内国際子ども映画祭の準備にも一緒に関わることになった平成の錬金術師、魔女田さんこと益田祐美子さんよりラジオ出演のご案内。

9月17日(木)NHKラジオ第一放送 どきめきインタビューのコーナーで10時から11時45分ころまで「主婦からプロデユーサー 4本目の映画「築城せよ」現在公開中!」(仮)という題で40分間おしゃべりします。また、5作目の映画(ドキュメンタリー)準備中と瀬戸内国際こども映画祭・綜合プロデユーサーについても最後で少し触れる予定です。

とのこと。肩書きのプロデューサーが「プロデユーサー」になっている(dhuで「デュ」と打つ術を知らないから?)のがお茶目。「どきめきインタビュー」と案内にはあるけど、正しくは、「ラジオビタミン」という番組内の「ときめきインタビュー」コーナー。でも、魔女田さんの爆弾発言にはらはらどきどきで、どきめきになるかも。「NHK側は 放送禁句用語をなるべくしゃべらないようとのこと。心がけます」と益田さん。その昔、NHKの地方局でラジオのパーソナリティをしていた益田さんは、中継でレポーターが「男性の身体のとある部分をかたどった氷」の話題を紹介したとき、スタジオから「その氷、なめると大きくなるんでしょうか」と思ったまんまの天然ボケ発言を放送に乗せた前歴がある。でも、益田さんのぶっとびリアクション以前に、中継で取り上げたのも意欲的。どきめきインタビュー、何が飛び出すか、乞うご期待。「10時から11時45分頃まで」「約40分間」というのも矛盾しているので「10時45分頃まで」が正解?

2008年09月13日(土)  大阪・北浜『五感』のVIPルーム


2009年09月12日(土)  「ツジモトは約束を守りますか?」の会

学生時代からの友人で新聞記者のウヅカ君が海外特派員になる夢を叶えてイランへ赴任することになり、共通の友人であるセピー君とツジモトさんも招いて、わが家で送別会を開く。うちのダンナを加えた男性四人は日本人と留学生がともに暮らす寮に下宿していた仲間で、寮の近所に住んでいたわたしは、ちょくちょくパーティに顔を出していた。


主役のウヅカ君が持って来てくれたケーキのメッセージは「たまちゃんもがんばってね」。期待以上に不安も大きかろうが、そこには心強い仲間の支えがある。ツジモトさんはウヅカ君にイラン駐在の役人を紹介し、お父さんの母国イランで生まれ育ち、大学でペルシャ語を教えるセピー君はウヅカ君に個人レッスンで仕込んでいるところ。その寮の出身者の世界を股にかける活躍とネットワークは大したもので、国に帰った留学生たちは、国家の要職に就いたり、大臣クラスの通訳になったり、それぞれの国を背負う人材になっている。

ウヅカ君とセピー君が実践しているのが、「ツジモトは約束を守りますか?」「ツジモトは来ますか?」などと例文の三人称を「ツジモト」にする方法。親しみが湧くのか、頭に入りやすく、驚異的なスピードで習得しているのだという。「通常ペルシャ語の文法を教えるのに一年はかかると思ってたけど、2か月でできることがわかった」とセピー君。

「ちょっと、人を勝手に例文にしないでもらえる?」とツジモトさんが反論。最年長のツジモトさんは同級生であるわたしたちより3つ上で、優秀な成績でキャリア官僚に合格し、尊敬を集めていたはずなのに、いつの間にかいじられ役に没落してしまったことが解せない様子。朝ドラ「つばさ」にわたしが関わっていることを知らなかった、というネタでもさんざん攻撃を浴びる。たしかにドラマが始まったときに「元キャリア官僚が重要な役割で登場します」と案内を送り、返事ももらっていたはずなのだけど、「官僚、官僚と言うな」のようなとんちんかんな返信だったから、内容を理解していなかったのかもしれない。

「つばさ」を一度も観たことがないとツジモトさんが言うので、「朝何時に家を出てるんですか?」と聞くと、「7時」。居酒屋タクシーにも乗らず、終電までこつこつ働いているという。「ちょうど今からやるので観ましょう」と夜7:30からの再放送をつけると、「アンジェラ・アキさんという人が主題歌を歌っているのか? この人はグループ?」。「これが経済産業省出身の真瀬さんですよ」と画面を指差したが、宅間孝行さんの顔は知らず、ヒロインの多部ちゃんのことも知らなかった。

いきなり土曜の回を見せられてもちんぷんかんぷんだったようだけど、クレジットにわたしの名前が出たことには興奮して、「すごいすごい」と半年遅れで喜んでくれた。「反響は賛否両論まっ二つなんですよ」と言うと、「法案でも議論を呼ぶほうがいいんだ。何にも引っかからない当たり障りのないものより、意味がある」と熱く語っていた。帰り際、「つばさ、観ます!」と力強く言ってくれたけど。来週から出勤を遅らせるのだろうか。ツジモトは約束を守りますか?

2008年09月12日(金)  キューバ帰りのクラシゲ嬢
2006年09月12日(火)  マタニティオレンジ7 おなかの赤ちゃんは聞いている
2004年09月12日(日)  黒川芽以ちゃんのTシャツ物語
2003年09月12日(金)  ビーシャビーシャ@赤坂ACTシアター
2002年09月12日(木)  広告マンになるには


2009年09月11日(金)  押上のスパイスカフェに迷い込む

昨年5月、南インド料理のダバインディアでカレー三昧した帰り、一緒に行ったヤマシタさんが言った。「押上にSpice Cafe(スパイスカフェ)っていうむっちゃいい店があるんです。次はそこ行きましょう」。その後なかなかカレーを食べに集まる機会がなかったのだけど、今宵宿願を果たす。メンバーはダバインディアのときと同じくヤマシタさんとアサミちゃんとわたし。今週火曜に昭和芸能舎のお芝居を観たのも、この三人。会えるときは、続けて会える。

CMプロダクションで働くヤマシタさんは、アサミちゃんとわたしがマッキャンエリクソンという広告会社で働いていたときにアサミちゃんと同じ得意先を担当していた。この三人を今もつなげているのは、芝居好きとカレー好きの縁。ヤマシタさんは演劇フリーペーパープチクリの編集人の一人で、アサミちゃんがレイアウトをやっている。その打ち合わせで顔を合わせるたびに「また今井ちゃんに会いたいねえ}と二人で噂してくれているらしい。

さて、押上駅から歩くこと10分強。通り過ぎても気づかないようなひっそりした佇まいのお店は古い木造アパートを改造したもの。木のぬくもりに迎えられ、東京にいるのに旅先の遠い町にいるような錯覚を覚える。先日、東京カリ〜番長の水野仁輔君に「今度スパイスカフェに行くんですよ}と言ったら「日本人で本格的なカレーをやっている希少なお店です」と大絶賛していたので、味にも期待が高まる。

「前菜1種類、カレー1種類、デザート2種類、飲み物」で2500円のコースを二つと「前菜2種類、カレー3種類、デザート3種類、飲み物」で3500円のコースを一つ注文。これでカレーは全5種類、デザートは9種類中7種類を制覇できることに。前菜は「本日の5品盛り」を各自注文して、もう自家製ソーセージを分け合う。シェフは地中海料理出身だそうで、見た目も美しく上品な味わいで、シードルによく合う。

白ワインとともに、メインのカレーは定番のマトン、チキン、野菜、トマトと日替わりのドライカレー。マトンはまったく臭みがなく、どれも素材の味わいが上手に引き出されている。ごはんを大盛りにしたらとんでもない量が皿に盛られてきて焦ったが、しっかり平らげられた。

デザートは別腹。バナナのムースといちじくのタルト、チョコレートのタルトとヨーグルトムースとカスタードプリン、ぶどうのゼリーと大葉と柚子のシャーベット。インド料理屋のデザートと言うと、お米のプリンなど何ともいえないメニューに遭遇することが多いけど、これだけデザートが充実しているのはうれしい。

併設のギャラリーでは明日から始まる「琉9典子展〜かさなるかたち〜」(27日まで)の版画が飾られ、作者の琉9典子(りゅうきゅうてんこ)さんとお話しできた。名前から察する通り沖縄からやってきたという。静岡出身、東京を経て、今は名護に暮らしているそう。「都会の那覇よりも名護のほうが沖縄らしい」「地図のくびれの上と下で人柄が変わる」など興味深い話をにこやかに、ふわふわと。「困ったときに手を見てしまうのは、こまって、の『て』だったんだ!」というのが最近の大発見だったそう。サイトのエッセイも不思議な詩のような味わい。

建物を出て、小径を抜けて通りに出て振り返ると、やはりそこに店があるとは気づかない。今のは夢か幻か、明日来たらそこにはもう何もないのかもしれない。そんなことさえ思わせる時間が流れていた。でも、歩いても歩いてもずっしりとおなかに詰まったごちそうの存在感が、夢じゃなかったんだよと教えてくれる。

2008年09月11日(木)  フォトグラファー内藤恵美さんの写真
2007年09月11日(火)  マタニティオレンジ175 母娘漫才
2006年09月11日(月)  マタニティオレンジ6 予定日過ぎても踊れます 
2005年09月11日(日)  ZAKUROの2階のZAM ZAM
2004年09月11日(土)  感動の涙が止まらない映画『虹をつかむステージ』
2003年09月11日(木)  9.11に『戦場のピアニスト』を観る


2009年09月10日(木)  9/19『ぼくとママの黄色い自転車』小豆島上映会

今井雅子の6本目の長編『ぼくとママの黄色い自転車』は、ただいま公開3週目。時間差で今後公開する館もあるので、「うちの近くに来ない!」と諦めていた方にもスクリーンで観るチャンスがあるかも。

日記でお知らせするのがすっかり遅くなった小豆島上映会は、来週土曜日開催。これに合わせて、大学4年の応援団の夏合宿ぶりに小豆島へ行くことに。ロケ地巡りもとても楽しみ。小豆島では今、劇中で使われたのと同じ黄色い自転車を貸し出しているそう。

『ぼくとママの黄色い自転車』小豆島上映会

日時:9月19日(土)12:30〜/14:20〜
当日料金:一般 1500円/シニア・大高・中・小 1000円
※映画チラシを持参の場合1000円  ※全国共通券使えます
場所:土庄中央公民館 電話:0879-62-0238

『ぼくとママの黄色い自転車』上映劇場情報
(9/10時点。日付は公開日)

10.3 【北海道】苫小牧シネマトーラス 0144-37-8182
12.19 【北海道】北見シアターボイス 0157-31-3600
10.3 【青森】 シネマディクト 017-722-2068
9.26 【青森】 八戸フォーラム 0178-44-4411
10.3 【岩手】 盛岡フォーラム 019-622-4703
8.22 【宮城】 MOVIX利府 022-767-7400
9.5 【宮城】 仙台フォーラム 022-728-7866
10.3 【山形】 山形フォーラム 023-632-3220
8.22 【東京】 新宿バルト9 03-5369-4955
8.22 【東京】 T・ジョイ大泉 03-5933-0147
8.22 【東京】 立川シネマシティ 042-525-1251
10.31 【東京】 船堀シネパル 03-5658-3230
8.22 【東京】 品川プリンスシネマ 03-5421-1113
8.22 【神奈川】川崎チネチッタ 044-223-3190
8.29 【神奈川】ワーナー・マイカル・シネマズ港北ニュータウン 045-914-7677
8.22 【千葉】 エクスワイジー・シネマズ蘇我 043-209-3377
8.29 【埼玉】 MOVIX三郷 048-949-2300
8.29 【埼玉】 ワーナー・マイカル・シネマズ浦和美園 048-812-2055
8.29 【群馬】 MOVIX伊勢崎 0270-30-1700
8.22 【新潟】 T・ジョイ新潟万代 025-242-1840
8.22 【新潟】 T・ジョイ長岡 0258-21-3190
8.22 【長野】 長野千石劇場 026-226-7665
8.22 【長野】 松本エンギザ 0263-32-0396
10/3〜23 【長野】 i city cinema 0263-97-3892
9/12〜25 【静岡】 静岡シネギャラリー 054-250-0283
8.22 【愛知】 ゴールド劇場 052-451-0815
8.22 【愛知】 ユナイテッド・シネマ豊橋18 0532-38-0888
8.22 【愛知】 イオンシネマ岡崎 0564-72-3020
9.5 【愛知】 イオンシネマ・ワンダー 052-509-1414
8.22 【大阪】 梅田ブルク7 06-4795-7602
8.29 【京都】 京都シネマ 075-353-4723
8.22 【広島】 T・ジョイ東広島 082-493-6781
8.22 【広島】 広島バルト11 082-561-0600
9.26 【広島】 エーガル8シネマズ 084-960-0084
10.10 【広島】 福山ピカデリー 084-932-3381
8.22 【島根】 T・ジョイ出雲 0853-24-6000
10.3 【愛媛】 シネマサンシャイン大街道 089-933-6677
8.22 【香川】 ワーナー・マイカル・シネマズ綾川 087-870-8787
8.22 【香川】 ワーナー・マイカル・シネマズ高松 087-822-0505
10.3 【徳島】 徳島シネアルテ 088-632-2239
8.22 【福岡】 T・ジョイリバーウォーク北九州 093-573-1566
8.22 【福岡】 T・ジョイ久留米 0942-41-8250
8.29 【長崎】 TOHOシネマズ長崎 095-848-1400
10.3 【佐賀】 シアター シエマ 0952-27-5116
8.22 【大分】 T・ジョイパークプレイス大分 097-528-7678
9.26 【大分】 日田シネマテークリベルテ 0973-24-7534
8.22 【鹿児島】 鹿児島ミッテ10 099-8

2008年09月10日(水)  さすらいの「書き鉄」
2007年09月10日(月)  マタニティオレンジ174 ご近所さんちで2歳児の会 
2006年09月10日(日)  マタニティオレンジ5 卵から産まれた名前
2005年09月10日(土)  『チャーリーとチョコレート工場』初日
2004年09月10日(金)  原始焼『七代目寅』in English?
2002年09月10日(火)  大槻ケンヂ本


2009年09月09日(水)  エッセイの文体とはその人自身なのではないか

女流作家の桜庭一樹さんが新聞の対談で「一日一冊読む」とさらりと語られていて、ともすれば週に一冊も読めないわが身を反省した。少し仕事が落ち着いたので、この3日愛で3冊読んでみる。まずは『きりこについて』(西加奈子)と『カツラ美容室別室』(山崎ナオコーラ)を続けて。どちらも書評で目をつけていて、二人ともそれぞれ気になる作家さん。西さんは『きいろいゾウ』はとてもすんなりと入り込める作品だったし、山崎さんが新聞の日曜版に連載していたエッセイ「指先からソーダ」(同タイトルで単行本になっている)を毎週楽しみにしていた。そんな二人が旅行に行くほどの仲良しだと先日美容院で読んだFIGAROの読書特集で知り、続けて読んでみたのだった。淡々とした文体の底に流れるあったかいものや比喩の面白さに、二人が親しくなった接点があるのかなと想像したりした。

西さんは何と言っても擬態語擬音語を駆使した大阪弁のリズムが心地よく、全体は大阪弁で書かれているわけではなく時々紛れ込むのだけど、わたしは自然と大阪弁に翻訳して読んでいて、体に文章がしみこんでくる。物語の中で発揮されるたくましい想像力がとても好ましく、読み物としても楽しい。ヒロインである「ぶす」のきりこの顔を頭に思い描きながら読み、この作品は映像化は難しいだろうし、しても映画のきりこは小説ほど愛されないだるなと思った。とてもぶすだけど愛せるヒロインを成立させるのは読者一人一人の補正作業あるいは補強作業が必要で、そのきりこは一人一人の頭の中にしか存在せず、最大公約数的なきりこは誰からも愛されないだろうという気がする。でも、もしも観客一人一人の補正・補強作業を可能にする余地を残した、それこそ小説の中の言葉にあるように「奇跡」の顔の持ち主をキャスティングできたら、劇場で観てみたい。その奇跡を共有するという体験に思いを馳せて、わくわくした。

ナオコーラ(英語で表記するとnao-cola)さんの小説を読むのは初めて。エッセイと同じく簡潔で無駄がない、けれど鋭く心に残る文章を積み重ねながら、この人にしか作れない世界を形作っている。とくに大きな事件は起こらず、けれど登場人物たちにとっては一日の数時間あるいは一週間の数日を止めるような出来事がいくつか起こり、人間関係が少しずつスライドしながら組み変わって行くさまが興味深い。見落としそうな日常のささいなことの愛おしさをすくいとるのがとてもうまい人だと思う。

そして、今日は『手紙』(東野圭吾)を読んだ。『天使の卵』と同じ頃に沢尻エリカさん出演で映画化されていた作品だけど、映画にも小説にもまだ触れていなかった。同じ作者の『秘密』にも唸らされたけれど、本当に構成がお見事。東野さんの作品が次々と映像化されるのがよくわかる。切り取って絵になる場面、鮮やかで劇的な展開、ラストに用意されている驚き点点脚本家が映像化にあたって苦労して膨らませるところを小説が先に提示してくれている。

『手紙』の素晴らしさは、手紙を出す側の気持ちと受ける側の気持ちの温度差の変化がドラマになっていること。返事を待つ身の切なさ、見たくない手紙を破り捨てる心の痛み、そのどちらにも気持ちが加担でき、きりきりと胸を締めつけられる。強盗殺人犯の兄を抱えてしまったことで人生を狂わされる弟を追いかけてくる手紙の重みは、読み手の肩にものしかかるような重苦しさを実感させる。どうして文字を追いかけるだけで、こんなに息苦しくなるのか。読者に鏡を突きつける小説だと解く井上夢人さんの解説もすばらしい。打ち合わせへの移動の車中で読み始め、打ち合わせが終わって近くの紅茶専門店のカウンターで続きを読み、残りの数十ページを帰りの電車で読み切った。本はどこへでも連れて行けて、どこへでも連れて行ってくれる、本当にその通り。

三者三様の小説を読み、作家が違えば文体が違うということに、あらためて感じ入った。それは声や間の取り方や話の運び方が違うように「呼吸」のようなもので、真似されたり交じり合ったりしないものなのだろうなと思った。

ちょうど今日の打ち合わせは、新しいエッセイ連載の編集者との顔合わせだった。「FAXでいただいた原稿をこちらで推敲し、打ち込んで確認します」というやり方にわたしは戸惑い、議論になった。こちらとしては素材ではなく完成原稿をお渡しするつもりだし、指定された文字数で納めるので、最初から推敲、編集する前提でいられると困りますと訴えた。「無駄な表現は省き、わかりにくい言葉はカッコ付きで説明を加えたい」という趣旨のことを言われたので、「そのように指示していただければ自分で再考して修正しますが、勝手に手を加えられると文体が崩れます」と食い下がった。

こちらがFAXで送った原稿を編集者が打ち直すということにも抵抗があった。メールでの受け渡しではないので必要な作業なのだが、それによって編集者の頭が整理される利点もあると言う。打ち直すと、確かに、こうすればもっといい文章になるという方向性が見えるのは確かだが、それで手直しをすると、編集者の文章になってしまうのではないか。

そもそもどうしてメールを使わないのかという議論も交じって話は堂々巡りしたのだけど、突き詰めると「自分の文体へのこだわり」の違いなのかなと重い至った。「原稿を送りますから適当に編集してください」とおまかせされる方は、この編集者のやり方には何の違和感も覚えないし、「これでどうだという原稿を送るので、よっぽどのことがない限り尊重していただきたい」と主張するわたしには、原稿を一から打ち直されること自体に抵抗を覚える。

一言一句変えてくれるなということではなく、書き手の文体を尊重して欲しいのだということをただわかって欲しかったのだ。脚本にももちろん文体はあるのだけど、それは撮影のための設計図としての使命を担うから、より使い勝手のいいように直される宿命を負っている。けれど、エッセイは書き手の内面が文章に映し出されたものであり、その文体は小説以上に書き手自身を現しているとわたしは思う。だから、いじることが前提と言われると、聖域を侵されるような気がして、ムキになった。それだけのことだけど、千疋屋フルーツパーラーに不似合いな熱さで言い募り、編集者を閉口させてしまった。

2008年09月09日(火)  腰痛は気功で治せるか
2007年09月09日(日)  マタニティオレンジ173 父母連総会で区長と話そう 
2005年09月09日(金)  アンティークボタンの指輪


2009年09月08日(火)  昭和芸能舎『長ぐつのロミオ』

朝ドラ「つばさ」の打ち上げに、ちょうどそのとき放送中の第20週で竹雄を「過去からの刺客では」と怯えさせる谷村鉄次役を好演した及川いぞうさんがいらしていた。特長のある渋い声とあまたま似の丸い頭ですぐにわかり、話しかけたところ、「今度芝居やるんですよ」とチラシを渡されたのが、昭和芸能舎公演の『長ぐつのロミオ』。作・演出を見て、「羽原大介さんじゃないですか!」。わたしの大好きな『パッチギ!』や『フラガール』を書かれた羽原さんの舞台を一度見たいと思っていたので、ぜひ行きます!と社交辞令ではなく即答した(>>>8月14日の日記)。

お芝居好きの元同僚アサミちゃんと、アサミちゃんに輪をかけたお芝居通で演劇フリーペーパー「プチクリ」の発行人の一人(そしてアサミちゃんはプチクリのデザイナーでもある)の広告マン、ヤマシタさんも誘い、三人で新宿スペース107へ向かった。一名分を招待にしていただく。及川さんとマネージャーの柏谷さんに感謝!

補助椅子も出て満席。初めて観た昭和芸能舎のお芝居、まずはコント仕立てで鑑賞マナーの注意があり、早くも劇団のサービス精神をうかがわせる。発泡スチロールの箱を抱えた魚河岸ルック集団のダンスの決めのポーズで箱を合わせると、蛍光塗料で書かれたタイトルが浮かび上がる。

劇団名を新宿芸能舎から昭和芸能舎にあらためたそうだが、まさに昭和の匂いプンプン。出てくる歌謡曲や洋楽が、ヤマシタさんやアサミちゃんの中高生時代、わたしの小中学生時代の懐メロで、どの曲も口ずさめる。劇団名のもうひとつの柱である「芸能」をこれでもかと見せてくれるのも特長で、物語の端々で歌やダンスが披露されるのだけど、それぞれがちゃんとエンターテイメントとして楽しませてくれる。突然歌い出す、踊り出す芝居では、その唐突さと中途半端さに観客が椅子に張りついて硬直してしまう場合も多い。でも、「笑いを取りに行く物真似ダンス」「キレを見せるダンス」とそれぞれの立ち位置がはっきりしていて、笑えるものは笑い、見惚れるものは見惚れ(ディスコシーンでのダンスの振付けは、ダンス単体として観ても十分見応えがあった)ることができた。

ショーで遊べるのは、ストーリーの幹がしっかりしているためで、そこはさすが羽原さんの脚本。築地市場の移転問題という題材を膨らませ、移転推進派と反対派の対立に恋と祭りを絡めて起伏をつけた物語で、観客をぐいぐい引き込む。数多い登場人物それぞれにもしっかり光を当て、見せ場を作るという見事な目配り、筋運び。理想と現実、本音と建前、強がりと心細さ……誰もが持ち合わせる強さと弱さ、その間にある揺れが丁寧に描かれていて、どの登場人物にもじわじわと感情移入してしまう。

物語の運びも歌と踊りもラストの祭り神輿も、最初から最後まで息をつかせず、舞台の上は常に全力投球。暗転がなく、場面の切り替えが実に鮮やかで、2時間を超える長尺なのに退屈する暇はなかった。出演者一同そろってのにぎにぎしい挨拶の後「続いて、次回公演『モスクワ』の予告を行います」の告知。「モスクワオリンピックの幻の種目、男子シンクロ」がモチーフであるらしく、いきなり男性陣が海パン姿で再登場して踊り出したのに面食らいつつ、大いに受けた。これでもかのサービス精神、あっぱれ!アサミちゃんとヤマシタさんも大いに気に入り、「モスクワ」もすっかり観に行く気になっていた。

出演者は皆さん威勢がよく、気になる人が続々。贔屓目もあり、及川さん演じる吉野屋のオヤジはダントツに光ってた。もちろん、頭のてっぺんだけではなく……とネタにしていいのやら。でも、「禿げ散らかす」というセリフでしっかり笑いを取っていた。「そこまで禿げ散らかしても、わからないのか?」のようなひどい言われようをされ、「ぐずぐずしてたら髪がなくなって禿げ散らかせなくなる」と言い返す喧嘩に、妙なおかしみを誘われた。禿げ散らかす、なんともインパクトのある言葉だ。

及川さんの息子役を演じたゆかわたかしさんは、森岡利行さん(監督・脚本の『女の子ものがたり』を公開中)主宰のストレイドッグの公演でおなじみだった湯川崇さん。はじけた役どころがよく合っていた。主役のロミオこと博己を演じた佐野大樹さんは、見たことあると思って過去の日記を検索したら、『やわらかい脚立』に出演。日記内検索機能のついた日記をつけていると、自分が忘れていたことを思い出してくれるので、便利便利。まさに脳みその出張所。脳内ハードディスクの検索はできないけれど、日記に書き出しておくと、記憶を掘り出せる。

というわけで、今日の公演の出演者を後々のために記しておきましょう。ロミオの姉役の藤田美歌子さん、オカマのヨッチャン役の渡邊慶人さんが印象に残った。

長ぐつのロミオ

【出演】

★築地市場

魚勝グループ 博己:佐野大樹(*pnish*)
       波子:藤田美歌子
       勝男:松林慎司
社員 哲也:高橋稔  
   鮎子:康実紗  

★場外市場

吉野家グループ 吾郎:及川いぞう     
        樹里:福下恵美
        修仁:ゆかわたかし

チーム月島軍団 トシオ:浦島三太朗
        マッチ:アフロ後藤   
        ヨシオ:渡邊慶人

★六本木ゴージャス 

成田真佐江:中川絵美
小根村:笠原紳司

ゴージャスガールズ ルミネ:神谷奈々江   
          パルコ:鹿島由香
          リカ:高橋梨佳   
          マユ:藤森麻由     
          メグメグ:若原めぐみ

黒服1:佐々木恵太郎   
黒服2:熊谷淳司
黒服3:藤沼豊   
黒服4:池田恵美

伝説の振付師 ヨーコ:ちかみれい
常連客 亜矢:涌澤未来

【スタッフ】
照明:太田安宣(ロンブル)
音響:山本能久(SEシステム) 
舞台監督:赤坂有紀子
振付:井上陽平(ILKスタジオ)
宣伝美術:田久保宗稔(mt-w design works)
企画協力:星久美子(ラ・セッテ)
 制作:奥井美樹
制作補:鄭光誠
協力 シバイエンジン
企画製作:昭和芸能舎

2008年09月08日(月)  マタニティオレンジ331 おばけごっこ トンネルごっこ
2007年09月08日(土)  対岸のタクシー
2006年09月08日(金)  マタニティオレンジ4 男の子か女の子か?
2005年09月08日(木)  文芸社パンフレットの取材
2004年09月08日(水)  東銀座の『台湾海鮮』
2003年09月08日(月)  「すて奥」作戦


2009年09月06日(日)  朝ドラ「つばさ」第24週は「あなたを守りたい」

ホンづくりをしているとき、打ち合わせのたびに残り週が少なくなり、「あと少しですねえ」「あんなに長いと思ってたのにねえ」としみじみとした感慨が挨拶になった。きついマラソンのゴールが見えてきたときの安堵感と淋しさを味わいつつ、悔いのないゴールをとラストスパートをかけていた。長年朝ドラを見ていると、途中までは調子良く飛ばしていたのに、後半で疲れちゃったかなという印象を受ける作品があったりする。力尽きたか、愛が尽きたか。「つばさ」に関していうと、最後まで惜しみなく力と愛を注いでいた、と自信を持って言える。それが出来上がった作品に表れ、観る人に伝わりますように。

明日からの第23週は、「あなたを守りたい」。家族を、仲間を、甘玉堂を、ぽてとを……守りたい人やものがある分だけ、人は強くもなるし、迷いや惑いを抱えて弱くもなる。けれど、守りたい存在があることが幸せなんだなと感じられる週。「毎回楽しみにしています」という人がちらほらいる完成台本ショット、今回は互いを守りあう玉木家をイメージ。週の中盤にも家族が抱き合う場面があるのだけど、5人組のぬいぐるみが一人見当たらず、4人のハグになった。でも、4人という数も今週の玉木家を象徴しているといえる。仲間が去ったぽてとを守ろうと孤軍奮闘するつばさと真瀬、そして優花の「もうひとつの家族」にもご注目。ただでさえ大変なぽてとに揺さぶりをかけるのは、城之内房子(冨士眞奈美)。彼女が登場すると画面に釘づけになるという声多し。

演出は1〜3週、6週(斎藤と加乃子)、10週(紀菜子あらわる)、14週(大衆演劇)、16週(台風)、19週(ビバマリア)の西谷真一チーフ・ディレクター。続く第25週「最後のラブレター」と2週連続で「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。最終週の第26週まで、どうぞお楽しみください。

ご感想は、ぜひ公式掲示板へ。賛否両論にぎやか。公式サイトトップページからどうぞ。サイトもコンテンツ充実で、こちらも力と愛を惜しみなく投入。

2008年09月06日(土)  マタニティオレンジ330  『ちょうちょう』熱唱! はじめてのカラオケ
2007年09月06日(木)  マタニティオレンジ171 苦し紛れの雨カバー
2006年09月06日(水)  マタニティオレンジ2 着たいがない!
2004年09月06日(月)  シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?
2002年09月06日(金)  ミナの誕生日

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