2008年04月27日(日)  シナトレ9 ストーリーを面白く(おいしく!)する5つのコツ

目黒にあるバンタンスクールにて、アニマックス大賞公式ガイダンスイベントのパネルディスカッションに参加。開始一時間前にパネラー三人が初顔合わせ。共同テレビのディレクター佐藤源太さんと、バンタン講師であり作家の斉藤ゆうすけさん。今日のパネルディカッションは参加者から寄せられた「ストーリーを面白くするコツ」を取り上げながら進行するので、それを見ながら「この人、一人で何通も書いてる」などと雑談するうちに時間になった。

定員の百人をオーバーした130人ほどがぎっしりと詰まった会場の後方から壇上へ。司会の井上実さんに紹介され、着席して、はたと気づいた。ワンピースの背中のファスナーが上がりきっていない! 家を出てから見かけた人はファッションだと思ったか、声をかけるのをためらったか、黙殺したか、冷笑したか。背中に手を回し、ファスナーを20センチばかり上げすながら、せめて会場にいる参加者には言い訳をしとこうと考えをめぐらした。で、「ストーリーを面白くするコツ」募集で「キャラクター」と書かれた紙を選び、「さっきから、ここで怪しい動きをしてましたが、実は、ファスナーを上げていました」と白状。「わたし、次のことをやると、それまでやってたことがところてん式に押し出されちゃうんですよ。よく電子レンジから取り出し忘れて冷えたおかずが出てきます。上げかけのファスナーで一度にいろんなことやろうとする性格を描く、これがキャラクターです」。と、転んでもタダでは起きないたくましさもキャラクター。

佐藤さんは「ベタに描かない」を選び、斉藤さんは「気合い」を選び、パネラー三人が順に「コツ」を選んでコメントする形でディスカッションは進む。他の人が選んだものにもコメントを入れたので、どれを自分が選んだのか記憶が曖昧だけれど、参加者が寄せた「コツ」をパネラーが膨らませると、「ラストから逆算して書く」など今すぐ使えるヒント満載。参加者が記者会見のごとくメモを書き込んでいたのが印象的だった。

最後に、各パネラーが考える「ストーリーを面白くする5つのコツ」を披露。わたしは先日のシナリオ講座創作論講義の延長で、料理にたとえてみた。

ストーリーを面白く(おいしく!)する5つのコツ 

1 素材 
2 調理法 
3 スパイス 
4 試食 
5 サービス精神

「素材」は受け手(コンクールであれば審査員、ドラマや映画であれば視聴者や観客)が食べたことのない新鮮で面白い題材を使うこと。そのためには日頃からアンテナを張り、ネタを仕入れることが大事。審査員は同じものばかり食べさせられて食傷気味なので、目新しい食材には飛びつく傾向がある。また、プロになってからは、急な客のわがままな注文にいかようにも応えるのが腕の見せどころ。ネタをアレンジしやすい形でストックしておくと使える。
「調理法」は題材を感動的な味に仕上げる組み合わせと味つけ。テーマやモチーフの斬新さ、アイデア一発勝負ではコンクールには勝てない。どう調理すれば、いちばんおいしくなるのかを考え、そこに自分らしさを出す。
「スパイス」は食後に余韻を残す遊び心。小ネタだったり言葉遊びだったり、サブキャラだったり。
「試食」は脚本を自分で読み返し、まわりの人にも読んでもらい、「うまい」と思えるまで改良すること。味見もしないものを食べさせるのは言語道断。
「サービス精神」は受け手が喜ぶ顔を思い浮かべて作ること。また、受け手の反応を次の料理に活かせること。想像力が乏しいシェフの料理は上達しない。

料理と同じで、脚本は誰にでも書けるけれど、おいしく作るにはコツが要る。それを意識しながら作り続けることが上達の鍵。コンクール応募時代にできるだけネタを仕込み、調理法を身につけておくと、プロになっても手際よくリクエストに応えられる。おいしいストーリーを作る腕を磨き、コンクールで開店のチャンスをつかみ、行列のできる店になってほしい。

2008年04月22日(火) シナトレ8 コンクールでチャンスをつかめ!
2007年10月27日(土) シナトレ7 紙コップの使い方100案
2006年11月07日(火) シナトレ6 『原作もの』の脚本レシピ
2006年03月02日(木) シナトレ5 プロデューサーと二人三脚
2005年11月01日(火) シナトレ4 言葉遊びで頭の体操
2005年10月12日(水) シナトレ3 盾となり剣となる言葉の力
2005年07月27日(水) シナトレ2 頭の中にテープレコーダーを
2004年09月06日(月) シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?

2007年04月27日(金)  マタニティオレンジ111 「祝・出産 祈・安産」の会
2004年04月27日(火)  二級建築士マツエ
2002年04月27日(土)  映画デビュー!「パコダテ人」東京公開初日


2008年04月26日(土)  マタニティオレンジ275「これ、なぁに?」

朝から娘のたまが「これ、なぁに?」を家のあちこちを指差している。冷蔵庫。冷蔵庫の中身の野菜のひとつひとつ。洗濯機。洗濯機から取り出した洗濯物のひとつひとつ。パパのよれよれTシャツの大きなプリントを指差し、「これ、なぁに?」としつこく聞く。アメリカのストーンマウンテンズのお土産Tシャツ。蛍光色のエンボスインクでマークらしいものがプリントされているのだけれど、具体的なモノの形をしていないので、なんとも説明しようがない。「これはねえ、マーク。英語」などと適当に返事すると、納得がいかないのか、「これ、なぁに?」と食い下がる。何事にも疑問を持つ知的好奇心は大いに伸ばしてほしい。だけど、延々と質問される親にも、それに応える根気と体力が要る。

たまは明らかに自分が写っているとわかる写真を指差し、「これ、なぁに?」。「これはたまでしょ。お食い初めのときの写真。鯛をあむあむしているね」などと話すと、写真から広がる物語をうれしそうに聞いている。そういえば、外国語でも、「これは何?」は最初に覚える表現のひとつ。英語でもドイツ語でもフランス語でも、覚えたての表現を試すのが楽しくて、指差して回ったっけ。「何」の答えそのものよりも、そこから会話がはずむことを期待して。

2007年04月26日(木)  マタニティオレンジ110 保育園のPTAはイベント盛りだくさん
2002年04月26日(金)  『アクアリウムの夜』番外編:停電ホラー


2008年04月25日(金)  マタニティオレンジ274 予算の使い道は未来の使い道

 打ち合わせが長引いて出席がかなわなかったけれど、今日、保育園で年に一度の総会があった。園の方針などを説明するガイダンスのようなもので、終わった後に続けて父母会の総会が行われる。昨年度の父母会の会計だったわたしは、ここで会計報告をすることになっていたのだけれど、昨年度の副会長に急遽代理をお願いした。
 今月12日に新役員との引き継ぎを行って以来、2週間足らずの間に何十通というメールを飛び交わせながら、引き継ぎの補足や会計報告作りをし、今年度の予算案作りに意見を出した。昨年の引き継ぎは顔合わせ程度だったし、予算案も会長が作った案を「こんな感じでいいんじゃない」と役員一同で承認しただけだったのだけど、今年度は仕事熱心なパパ会長のもと、かなり突っ込んだ議論をしながら予算案を詰めていった。「こういう活動が発生しそうだから」と予想した上で項目を立て、活動の優先順位や重要性を検討した上で予算を振り分け、「本当にこの金額が適正か」と検証する。予算とはこうやって立てていくものなんだと感心しつつ、会の予算をどう使うかを話し合うことは、この会がどうありたいかという方針を話し合うことなのだと思い当たった。お金の使い道は未来の使い道。予算案から未来予想図が立ち上る。だから、国会の予算案成立があんな大ニュースになるんだなあ。
 国家予算よりずっと小さなわが家の一家予算は、物品購入費は控えめで行事費が突出し、「モノより思い出」の傾向。

 打ち合わせが長引いて間に合わなかったものが、もうひとつ。今日最終締切だった『ネスカフェこれでもかコレクション」に駆け込み応募しようと思い、朝からネスカフェやキットカットを買い込んだ。娘のたまをモデルにデザインした景品のバッグとカップは、「モノ」であるけれど「思い出」でもある。打ち合わせから保育園のお迎えへ向かう山手線の車内で応募ハガキをせっせと書き、あとは出すだけだったのに、近所のポストの回収は終了。24時間やってる郵便局まで子連れでとなるとタクシーで行くしかない。そこまでする気力がなくて断念した。応募はどっさり集まり、かなりの競争率だと聞いているので、当日消印有効に間に合ったとしても当選は厳しかっただろう。当選された人は強運の持ち主!

2007年04月25日(水)  教え子四人とシナリオ合評会
2005年04月25日(月)  美保子さんちで桃を愛でる会
2003年04月25日(金)  魔女田本「私、映画のために1億5千万円集めました」完成!
2002年04月25日(木)  田村あゆちの「ニュースカフェ」に演


2008年04月24日(木)  マタニティオレンジ273 アルバム絵本『かまくらへいきました』

友人セピー君のセカンドハウスのある鎌倉で半日を過ごした4月5日のこと。撮った写真をその日の夕食の後にセピー君がMacのスライドショーで見せてくれた。どれもいい写真だったのだけど、BGMを入れられたり、写真が切り替わるときに拡大縮小移動などのエフェクトが付いたりする効果で、さらにドラマティックに見えた。わたしが使っているWindowsのスライドショーにはこんなことできない、とうらやましがりつつ、「写真をメールで送ってね」と言うと、「ちょっと別な方法でお渡ししますよ。数週間ぐらいお待ちを」とセピー君。

そして数週間経ち、送られてきた封筒を開けて、「わあ!」となった。鎌倉の一日がハードカバーのアルバムに印刷されて届いたのだ。わたしもダンナも感激して、「なんと心憎いことを!」とセピー君に電話したのだけど、娘のたままでこの「本」に恋してしまった。この絵本読んでと言うようにわたしのところに持ってくるので、「ある日 たまちゃんはパパとママと一緒に鎌倉に行きました」と写真にストーリーをつけて読み聞かせると、「もっかい」(もう一回)とせがみ、何度でも聞きたがる。「鎌倉には桜がたくさん咲いていましたね」と語りかけると、「ね」と相づちを打ち、「このたまちゃんはおなかが出てますね」とからかうと、照れくさそうに笑う。写真を見ながらあの日を振り返っているのだろうか、ときどき思い出し笑いのような反応をする。

歴史が物語であるように、歴史をつくる記憶のひとつひとつも物語なんだなあと思う。

自分が主人公で、自分の知っている人たちが登場人物の物語。アルバム絵本がもっと欲しくなった。Macなら簡単に作れるのだろうか。ちょうどパソコンの調子が悪くて買い替え時期かなあと思っていたところで、Macにぐぐっと気持ちが傾いてしまった。

2007年04月24日(火)  4000人と出会った男、大阪へ。
2002年04月24日(水)  天才息子・西尾真人(にしお・なおと)


2008年04月23日(水)  マタニティオレンジ272 二語でおしゃべり、たま1歳8か月

2006年8月22日に生まれた娘のたまは、昨日で1歳8か月になった。1歳になるまでは、12分の1歳にはじまり毎月誕生会を開いていた(子どものためというより、外食の機会が減った親の楽しみのため)ので、「次は○か月だ」とそわそわしながら当日を迎えたけれど、20回目ともなると、過ぎてから、「あ、昨日だったね」となる。

この一か月は二度の発熱に見舞われ、保育園を休んで家でべったり過ごす日が何日かあった。さらに、締切にも追われず、休日もしっかり一緒に遊べた。「もうこんなことができるようになったのか」と今月も驚かされることが多々あった。ズボンを一人で履こうとし、何回かに一度はおしりの半分ぐらいまで上がるようになった。テーブルや床にごはんを飛び散らせながらもスプーンを使って食べようとし、割れるグラスで乾杯したがる。玄関では「かぁぎ」と自分で施錠したがり、雨の日には「かぁさ」と自分で傘を指すと主張する。大人と同じことを自分でやりたい。その自己主張にも言葉がついてくるよになった。手も足も口もずいぶん動くようになり、要注目、要注意。良くも悪くもますます目が離せない。

言葉もひと月でまた増えたけれど、先週末の熱海旅行から帰って以来、この数日でいちだんとおしゃべりになった気がする。帰省や友人宅への外泊以外ではじめての旅行で、はじめて新幹線や船に乗るなど刺激に満ちた体験が何かを伝えたい気持ちをかき立てたのかもしれない。「これ ママの」「ママ こっち」「パパ ねんね」「ニュウニュウ(牛乳) くださいな」など「二語」のおしゃべりが出るようになった。近所のプランターの中にゾウの置物を見つけて、「ゾゾ、ゾゾ」と指差していたのが数日後に消えて以来、通りがかるたびに「ゾゾ、なぁい」と言う。ここにゾウがいたことを覚えていた上に、なくなったことに気づき、前はいたのに今はないと言い続ける。ずいぶん複雑なことができるようになったものだ。

ボキャブラリーもさらに豊かになった。「ピョンピョン」(うさぎ)「チューチュー」(ねずみ)「ニャーン」(猫)「ワンワン」(犬)「ワァニ」(ワニ)「ゾゾ」(ゾウ)「ガオ」(ライオン)「マウマ」(シマウマ)「ナンナ」(花)「ハッパ」(葉っぱ)などの動植物。「パンパン」(パン)「ゴ」(いちご)「カン」(みかん)「ベ」(せんべい)「ビ」(ビスケット、クッキー)などの食べ物。家中に飾ってある「アート」(ハート)。家でも保育園でも使う「トン」(布団)。熱海旅行では「ビューン」(新幹線)を覚えた。「こわい」「いたい」「おおきい」「かたい」などの形容詞も。ケガをすると、自分がぶつかった相手(壁だったり地面だったり)を「メッ」と𠮟ってたたく。

熱海の戸田幸四郎ショップで買い求めた『リングカード・あいうえお』と『リングカード・どうぶつ』のイラストカードを一枚一枚見せていくと、知っている単語は早押しクイズみたいに見た瞬間に答える。その顔の得意げなこと。世界を覚えていく楽しさと興奮を持ち続けられたら、学習は心躍る冒険であり続ける。

今夜の子守話は、めがねの話。リングカードの「めがね」を見せると、たまは「パパ!」と答える。
子守話15 パパのめがね

たいへんたいへん パパがめがねをわすれて かいしゃにでかけちゃった。
めがねはあわてて まどからとびだし パパをおいかけました。
もちろん レンズがわれないように やわらかい しばふのうえに とびおりました。

えきへいそぐパパのせなかが めがねにはよくみえます。
けれど なかなかおいつけません。
めがねのあしはみじかいうえに いつもパパのみみにこしかけているので
はしるどころか あるくことにも なれていないのです。

ようやくえきに つきました。
めがねは きっぷもかわず かいさつのしたをくぐりぬけて でんしゃにのりこみました。
おなじでんしゃに パパがのったのを みとどけたのですが
でんしゃはぎゅうぎゅうづめで どこにだれがいるのか かおがみえません。
めがねは たくさんのあしにふみつぶされないように きをつけながら
しらないだれかの くつのうえで ひとやすみしました。
けれど がたんとでんしゃがゆれると くつからすべりおちるので ねむるわけにはいきません。

でんしゃはパパがいつもおりるえきにつきました。
まいにちパパといっしょにかよっているので めがねはちゃんとおぼえています。
おりるひとの くつにひょいとのっかって めがねはじょうずにでんしゃをおりました。
そのくつには みおぼえがありました。
パパのくつです。

めがねはおもいっきりたかくとびあがって パパのめのまえにとびだしました。
わあ、とパパがびっくりしたときには めがねはりょうあしを パパのみみにひっかけていました。
パパは きのうのよる どこにめがねをおいたかわすれてしまっていたのです。
だけど めがねをさがすためには めがねがひつようだったのでした。
めがねのほうから さがしにきてくれるなんて とパパはおおよろこびしました。

2007年04月23日(月)  はちみつ・亜紀ちゃんのお菓子教室でお買い物
2005年04月23日(土)  根津神社のつつじまつり
2004年04月23日(金)  くりぃむしちゅー初主演作『パローレ』(前田哲監督)
2002年04月23日(火)  プラネット・ハリウッド


2008年04月22日(火)  シナトレ8 コンクールでチャンスをつかめ! 

シナリオ作家協会のシナリオ講座にて、一日講義。受講生は四月から脚本の勉強をはじめた基礎科の生徒さんが中心とのことで「励みになる話を」とリクエストされ、タイトルは「コンクールでチャンスをつかめ!」に。自らコンクールでデビューのチャンスをつかみ、運と縁に助けられて現在に至る今井雅子の体験談をまじえ、脚本を書く腕と気持ちを後押しできそうな話をすることにした。

脚本は何歳になってからでも学べるし、何歳になってもうまくなれるとわたしは考える。脚本家は芸術家というより職人であり、天才でなくとも努力家であれば道を拓いていける。その努力とは書き続けること。しかも、ただ紙を埋めるのではなく、自分の描きたいものを形にする修行を重ねること。そのことを何に例えればわかりやすいだろうと考え、脚本を「料理」に置き換えてみた。

脚本コンクールは、挑戦者が自慢の一皿を送りつけて審査員に食べ比べさせ、腕を競うもの。見知らぬ料理人の作った得体の知れないものを延々と食べさせられ、審査員は食傷気味。そんな相手に食べる気を起こせ、感動させ、食後に高得点をつけたくなる一皿を届けなくてはならない。となると、「ネタの新鮮さ、面白さ」が決め手となる。

わたしの場合、デビューのきっかけをつかんだ札幌放送局主催のオーディオドラマコンクール入選作『雪だるまの詩』は、記憶の蓄積ができない前方性記憶障害を扱った。『博士の愛した数式』や『私の頭の中の消しゴム』で世に知られる前のことで、コンクール受賞作がドラマ化された後に受賞した放送文化基金賞の審査員もまだ知らなかった。もちろん、目新しい食材を皿に盛るだけでは審査員の心は動かせない。どのように調理するかが料理人の腕の見せ所。『雪だるまの詩』では、はかなく消える記憶と雪を重ね、雪のようにはかなく消える夫の記憶を自分の中に雪だるまにして残そうとする妻の視点で描いたことが評価された。

映画脚本デビューのチャンスをつかんだ『ぱこだて人』(『パコダテ人』として映画化)は、「女子高生にしっぽが生える」という飛び道具的設定を使って、「しっぽは欠点ではなくオマケ」と個性の話をし、そのオマケがついた気分を「はこだて」が「ぱこだて」になると表現した。はひふへほがぱぴぷぺぽに変換されるぱこだて語の言葉遊びもスパイスとなり、目を見張って楽しく食べてもらえる一皿となった。

料理と同じで、脚本も毎日書き続けていると手際も勘も良くなってくる。ありあわせの材料を組み合わせておいしいものを作れるコツとワザが身に付き、「あれとあれを組み合わせたらこうなる」という読みもできるようになる。わたしの場合、コピーライターの傍ら脚本家デビューし、しばらくは二足の草鞋をはき続けていたのだけれど、広告を作る作業が「料理」の修業にもなっていたように思う。そう考えると、いきなりフルコースの長編に挑戦するより、CMのようなおつまみサイズのドラマを描くことから始めて、自信と技術がつけていくやり方もありだと言える。

食材(ネタ)×調理(発想)法の組み合わせでコンクールの上位に食い込むために、今日からでもできる勉強法を紹介。まず、新鮮で面白いネタを集めるためには、「人脈(幅広い世代のいろんな人と)」と「ストック」を持つこと。ネタのストックについては、新聞や雑誌を切り抜き、項目別にファイルにまとめることをおすすめした。このとき、記事のどこに惹かれたかに線を引いたり、記事を見て思いついたことをメモしておくと、必要になったときに取り出しやすいだけでなく、頭にもネタを仕込むことができる。デビューした後は、プロデューサーに「予算これだけしかないけど、最高に感動できるもの食べさせて」などと無理な注文をされることになる。そんなとき、手元に使える食材を使いやすい形でどれだけ用意できているかが、競争の激しい料理人(脚本家)の世界で生き残る明暗を分ける。

調理(発想)法を鍛えるやり方として紹介したのは、「レシピ分析」と「食材からの発想」。「レシピ分析」は、名店で感動の味に出会ったときに「これ、どうやって作るんだろ」と想像するのと同じように、お手本にしたい作品がどういう要素をどう調理して成り立っているかを分析する。さらに、そのレシピを真似して作ってみると、より力がつく。「食材からの発想」は、冷蔵庫にあるものやスーパーの特売ありきでメニューを組み立てる主婦のやりくり術の脚本版。ある食材(ネタ)をどう調理するのがおいしいか、考え、実際に作ってみる。同じ素材でいろんなパターンを作って食べ比べたりすると、めきめきとアレンジ力が身につく。

そして、忘れてはならないのが「試食」。料理人本人だけでなく、まわりの人にも食べてもらい、聞いた意見を反映させること。その柔軟性と応用力があるかどうかが料理人として伸びる鍵。締切ぎりぎりに書き上げた初稿をそのままプリントアウトしてコンクールに応募するのは、自分のレストランを出せるかどうかの勝負の一皿を、味見もしないで出すようなもの。料理人の顔が見えなくても、手を抜いた一皿には気の抜けた味しかしない。でも、食べる人の顔を思い浮かべ、その人を喜ばせようというサービス精神と意気込みを注いだ一皿は、作った人の顔が見たくなる。……と例えてみると、思った以上に脚本と料理はよく似ているなあと話している本人が納得してしまった。

質問の手がいくつも挙がった昼の部の講義が終わると、「運命の出会いです!」と駆け寄ってくださる人あり、「お茶をしませんか」と誘ってくださる人あり。夜の部までの2時間強を近くのカフェで過ごす。以前教えたクラスにいた男の子が1人と、今日会った人が4人。「50歳以上は去れ」だの「書けないやつは一生書けない」だのきつい言い方をする脚本家もいるらしく、「誰にでも書ける」というわたしの話に勇気づけられたという。生徒を引き受けた以上、いいところを引き出して教えるのが講師の仕事だとわたしは思うし、初心者の生徒であっても相手に敬意を払うべきだと考える。だけど、下手な期待を抱かせちゃっているのかなあという迷いもある。料理と同じで作り続ければうまくはなるけれど、料理と同じく、プロとしてやっていけるかどうかには壁があるのかもしれない。それでも、食材と調理法の掛け合わせがうまくいけば、コンクールの一点突破は夢ではない、そう言い切れる。だから、コンクールでチャンスをつかめ!

2007年10月27日(土) シナトレ7 紙コップの使い方100案
2006年11月07日(火) シナトレ6 『原作もの』の脚本レシピ
2006年03月02日(木) シナトレ5 プロデューサーと二人三脚
2005年11月01日(火) シナトレ4 言葉遊びで頭の体操
2005年10月12日(水) シナトレ3 盾となり剣となる言葉の力
2005年07月27日(水) シナトレ2 頭の中にテープレコーダーを
2004年09月06日(月) シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?

2007年04月22日(日)  植物は記憶のスイッチ
2002年04月22日(月)  ワープロ


2008年04月21日(月)  マタニティオレンジ271 本を破った。はじめてぶった。

二週間前の風邪が治りきってなかったのか、わたしとダンナにうつした風邪をうつし返されたのか、熱海ではしゃぎすぎたのか、娘のたまが朝から発熱。熱と咳をタスキにして家族で風邪リレーになっている。

保育園を休んだたまは、熱のせいか、いつも以上に聞き分けがない。「魔の二歳児」に向けて日に日に活発になり、暴君化しているのだけど、風邪の熱でわがまま度も過熱気味。何が気に入らないのか、いきなり絵本のページをびりびりと破いてしまった。以前も図書館で借りた本を破ったことがあり、厳しく注意したのだけど、それが悪いことだとわかっていないのか、親が困ると知ってやっているのか。今度こそちゃんと言い聞かせなくてはと顔をのぞきこみ、目を合わせ、「本を破っちゃダメでしょう。本が痛い痛いって言ってるよ」と叱った。ところが、糊で破れ目をつなぎ合わせていると、またしても手を出してきて破ろうとする。「ダメ!」ときつく言い、手を取って甲を叩いた。激しい叩き方ではなかったけれど、親に初めてぶたれたたまは、しゅんとしおらしくなった。

カッとなって声を荒げたことも手を挙げたことがなく、おおらかに子育てをしているつもりだけど、単に甘やかしているだけなのかもという反省もある。しかることから逃げて、子どもを甘やかすというより親自身が甘えているのではないか。保育園の先生を見ていると、子ども相手にビシッとしかっていて、その本気の空気を察して、子どもたちも神妙におしかりを受けている。「𠮟るときはタイミングが大事。ぶれないことが大事」だそうで、悪いことをしたらその場ですぐにしかり、しかっている途中で態度を軟化させてはいけないらしい。大人が迷うと、子どもは戸惑う。厳しくするのは甘やかすよりずっと難しく、親のほうが試されている気がする。

(※パソコンをMacに変えたせいなのか、Windowsでは「しかる」の漢字が化けているとの指摘があり、ひらがなにしました。逆にWindowsで打った丸数字はMacでは文字化けします。互換性があるといいつつ、ところどころで破綻があるのは困ったものです)

2007年04月21日(土)  マタニティオレンジ109 ご近所仲間とたま8/12才
2002年04月21日(日)  貧しい昼食


2008年04月20日(日)  団体新婚旅行in熱海2日目

昨日の雨が上がり、今日は暑いぐらいのいい天気。バイキングの朝食で腹ごしらえし、船着き場まで15分ほど歩いて遊覧船に乗る。ディズニーランドの『カリブの海賊』の上下動を大きくしたみたいに揺れるので、船酔いに弱い福ちゃんはみるみる顔色が悪くなり無口に。途中、甲板に出て、船のまわりを飛び交うカモメの群れにえさ(かっぱえびせん)を投げる。娘のたまは「わあわあ」と興奮。

続いて、太宰治や坪内逍遥など文豪たちに愛された旅館を熱海市が買い取って公開している『起雲閣』へ。ここは前に来てとても気に入ったので、また来たいと思っていたのだけど、福ちゃんさとちゃん夫妻は昨日も来たのだとか。「ここをつぶして高層マンションが建つところだったのを2万人の署名が救ったんです」とガイドさん。1919年に別荘として築かれ、1947年に旅館となり、2000年に熱海市の所有となったそう。毎日話しているうちに名調子が生まれるのか、起雲閣について話しだしたら止まらない。

そのガイドさんおすすめの喫茶室で休憩。見事な庭を望み、アンティークのソファに体を沈め、優雅にいただく熱海紅茶(熱海産マーマレードでいただく)が400円。熱海産マーマレイドを添えたクラッカーが100円。入場料500円を足しても、このティータイムはお値打ち。

花が咲き乱れる庭を散策すると、市民コーラスの練習の声が聞こえてくる。建物の一部は市民の文化活動に開放されている様子。歴史と趣のある建物に歌声を響かせるなんて、贅沢で粋だ。熱海市は本当にいい買い物をしたと思う。

起雲閣の方に「この辺りでお昼をするのにいいところはありますか」と尋ねたら、「どこかを特別におすすめするわけにはいかないんですが」と付近の地図を渡してくださった。3時までやっているという『柴竹』を訪ねると、これが大当たり。「金目鯛の煮付け」「桜えびのかき揚げ」など四品から一品を選ぶと、刺身や小皿がついた定食に。その皿のひとつひとつが「むむ、これは!」と目を見張る出来ばえ。刺身は新鮮だし、煮付けの味付けは絶妙だし、ごはんが進むこと進むこと。

おなかいっぱいになって店を出ると、もう四時。関西組は今から出ても着くのは夜。名残を惜しみ、「また旅行しようね」「今度は関西?」「北海道か九州もいいねえ」などと話して解散。たまが眠ってしまったので、駅までベビーカーを押して歩いていると、絵本が並ぶお店を見つける。熱海に美術館がある戸田幸四郎さんの絵本やグッズを扱っているショップだった。入口の鍵はかかっていて、お隣の洋品店に声をかけると、洋品店を閉めて応対してくださる。色づかいも絵のタッチも明るく楽しく優しく、わたし好み。記念に何を買って帰ろうかと目移りして選んだのが、『リングカード・あいうえお』と『リングカード・どうぶつ』。カルタみたいに絵を描いた一枚一枚をリングで束ねたもので、学生時代の英単語帳の子ども版のような感じ。帰りの新幹線でたまがぐずったときに見せたら、泣くのを忘れて見入り、早速役に立った。

2007年04月20日(金)  マタニティオレンジ108 助産院で赤ちゃん同窓会 
2005年04月20日(水)  東京ハートブレイカーズ公演『黒くやれ』
2002年04月20日(土)  16年ぶりの再会


2008年04月19日(土)  団体新婚旅行in熱海1日目

3年前にわたしの同僚カップルE君とT嬢の披露宴ではじめて会って意気投合したE君の高校時代の同級生の福ちゃんが、タイガースファン同士で盛り上がったさとちゃんと1月に海外挙式。E君T嬢披露宴で仲良くなったメンバーで、旅行でお祝いすることになった。E君T嬢夫妻とうちの一家は関東から、福ちゃんさんちゃん夫妻と、E君の中学時代の同級生の池ちゃんと夫人のさんちゃんは関西からということで、行き先は熱海に。「新婚旅行といえば熱海」はひと昔の話だけど、団体新婚旅行と相成った。

熱海はけっこう好きで、個人的には「日本のカンヌ」だと思っている。海沿いに年季の入ったホテルが建ち並んで、遊覧船が行きかう昔からのリゾート地。南仏カンヌはパリからさらに飛行機を乗り継いで汽車に揺られる長旅だけど、日本のカンヌは東京から新幹線で一時間足らず。あと二週間で出産予定日というときに、「子どもが生まれたら、しばらくは旅行どころじゃなくなる!」と決行したのが熱海旅行。「熱海なら、陣痛がはじまってから新幹線で戻っても間に合う」という腹づもりだった。

その産前駆け込み旅行以来の熱海。パンパンのおなかに内蔵されていた娘のたまはあと3日で1歳8か月。おなかを蹴っていた足は、地面を蹴って走っている。たまが3時間も昼寝をしたせいでわが家はすっかり出遅れ、他のメンバーがひと風呂浴びた後に旅館に到着。急いで浴衣に着替えて夕食となった。

一人一人に立派な脚つきのお膳が用意され、左右の人とは手を伸ばせるほどの距離があり、向かいの人とは数メートルも離れての食事。でも、みんな大きな声でよくしゃべる。担当の仲居さんもよく気がついて世話を焼いてくれ、「お子さんには白いご飯をお持ちしますね。あ、それは塩がきついですから、お水で薄めてあげてください」などと子どもへの目配りもばっちり。

この日はちょうど今年初めての熱海の花火大会。部屋から見えるというので、福ちゃんさとちゃんの部屋に集合。大きな窓いっぱいに花火が広がり、ほとんど時差もなく音が轟く。「あ、ニコちゃんマークや」「魚の形してる! さすが熱海!」などと大人がはしゃぐ傍らで、たまは「こわい〜」と怖じ気づく。でも、最後のほうには「なんな」と言いながら花が開く仕草をして見せた。子どもにも花火は花に見えるんだなあ。15分ほどであっという間だと聞いていたけれど、十分見応えがあり、「ええ日に来たわあ」と予約した福ちゃん株は急上昇。

自ら日を決めて宿を取った新郎新婦は、「前座のほうが派手やったなあ」と言いつつ、持参したMacのスライドショーで南半球の小さな島での挙式と新婚旅行の模様を披露。白い砂がどこまでも続く波打ち際で、はだしの結婚式。ウェディングドレスは「船場で8000円で買うた」とさとちゃん。

スライドショーの後は、わが家が持ってきた「水で描けるシート」を舞台に、お絵描き大会。アートディレクターのE君と福ちゃんはもちろん、池ちゃんも絵が得意。そこに、たまが生まれてから腕を上げたうちのダンナも参戦。描き慣れた「ゾウ」や「ウサギ」は描けるけど、「サイ」「カバ」はお手上げ。ディズニーランドの広告を手がけているE君はディズニーキャラはお手のもの。「スフィンクス」まですらすらと描いたのは驚き。寝てたまるものですかと、たまは目をらんらんとさせ、見入っていた。

2007年04月19日(木)  焼きたてのパンのにおい
2005年04月19日(火)  ありがとうの映画『村の写真集』
2002年04月19日(金)  金一封ならぬ金1g


2008年04月18日(金)  マタニティオレンジ270 おやつでごきげん延長保育

昼過ぎからはじまった打ち合わせが5時前には終わるかなと読んでいたら、思いのほか白熱。気がつくと保育園のお迎えの時間が迫っていた。プロデューサーは「そろそろですか」と時計を気にしてくれたけれど、打ち合わせは引き出しの中身をひっくり返した状態。この中身をどう仕分けるのか、何を捨てるのか、そのヒントぐらいはつかんで帰らないと、「後は宿題で」と言われても何から手をつけていいかわからない。

そのとき、「そうだ、延長があった」と思い出した。文京区の保育園では延長保育で7時15分まで預かってもらえる。連日6時15分ぎりぎりに走って迎えに行くわたしは、時間がある限り甘えてしまうので、延長保育は申請しなかったのだけど、一歳児クラスからは一回400円で「スポット保育」を利用できますよと教えられ、ちょうど昨日「スポット保育登録」の書類を出したばかりだった。保育園に「今日の今日ですみませんが」と電話し、7時過ぎに迎えに行くことに。おかげで何とか今後の方向性を見届けるところまで居合わせることができた。

電話に出た保育士さんには「なるべく早めにお迎えに来てくださいね」と言われた。子どもは親が迎えに来る時間に敏感で、「あの子のママが来たから、つぎはうちのママ」などと順番を読んで待っているという。いつもよりほんの十分迎えが遅くなっただけで不安が募って泣き出す子もいる。果たしてうちの娘のたまは大丈夫かなと駆けつけると、機嫌良く「ママ!」と飛びついてきた。延長保育に入ると「延長おやつ」が出るのだけど、いつも6時15分にたまが帰るのと入れ替わりに延長組はいそいそとおやつのテーブルに着く。たまはそれがうらやましくてしょうがなく、指をくわえて見るのが日課になっていた。その憧れのおやつに今日はじめてありつけたのがうれしくて、ごきげんだったのかもしれない。

2007年04月18日(水)  マタニティオレンジ107 子どもの世界の中心でいられる時間 
2005年04月18日(月)  日比谷界隈お散歩コース

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