2009年09月04日(金)  「しましま みいつけた」ごっこ

福音館の月刊絵本を取りはじめて二年目。去年はこどものともの名作を求めやすい形で復刊した「えほんのいりぐち」を届けてもらい、今年は2、3歳児対象の「こどものとも年少版」を毎月楽しみにしている。月によって食いつきのいい本と興味を示さない本があるのだけど、当たり外れがあっても一冊410円。食わず嫌いせず、いろんな作者の本に触れさせたいし、わたしも触れてみたい。最初は振り向きもしなかった本が、何か月か経ってお気に入りに昇格することもある。

8月号の「しましま みいつけた」は配本されたその日から気に入り、何度も読み聞かせをせがまれた。シャツのしましま、ネクタイのしましま、ストローのしましま、しまうま、うり、横断歩道、床屋のポール,バーコード……身の回りには、なんとたくさんのしましまがあることかと目を開かされる。この絵本に出会って以来、「うちの街にこんなに理髪店があったのか!」と驚くことになった。トリコロールのポールを見つけるたび、「しましま、あった!」とたまが教えてくれる。

さらに面白いのが、バーコード。レジを通す商品一般についているのは理解していたが、それを打った生協のレシートにもバーコードがついている。単行本も商品だからもちろんバーコードがついているが、それを借りるために図書館で貼られるシールにもバーコードがついている。「ピッ」と読み取るものにはバーコードがついている。ということは、先日の総選挙の投票ハガキにも、もれなくついていた。

大人がそうだと認識しないものでも、子どもの目には「しましま」に映る。電車の天井のアルミ(?)も、服の布地の織目も。チカチカするなあとしか思ったことのなかったパチンコ屋の電飾も「あ、しましまだ!」。世の中は、しましまと、そうでないものに分かれているというシンプルで新鮮なルール。「しましま みいつけた」ごっこは、おおらかな気持ちにくれる。

ひさしぶりの子守話は、バーコードのお話。
子守話93「しましま どこどこ」

しましまの えほんを よんだ たまちゃんと ママが
しましま さがしを はじめました。

くろと しろの しましまは バーコード。
えほんにも ジュースにも レシートにも おもちゃにも ついてるね。

バーコードには 「じょうほう」が はいっているんだって。
なまえや ねだんや どこの くにで つくられたか などなど。

おうだんほどうは どうろにつけた バーコードみたい。
なまえは おうだんほどう。おねだんは うんと たかそうだね。
みんなが しんごうを まもって どうろを あんぜんに わたるように
あんないするのが おしごとです。

じいじの あたまは ちょっと バーコードに にてるね。
じいじの バーコードには なんて かいてあるかな。
たまちゃんが だいすきです だって。

しまうまの しましまは くねくねの バーコード。
とおい みなみの くにから やってきたんだって。
なかよくしてねって きっと バーコードに かいてあるね。

ママが おいしゃさんで とった レントゲンの しゃしんも
しろい ほねが しましまに なって バーコードみたい。
げんきですって かいてあるかな。

あっちこっちに バーコード。
しましまが はなしかけてくるよ。

2008年09月04日(木)  佐瀬寿一さんと『はだしになって』
2007年09月04日(火)  愛すべき映画『Little DJ〜小さな恋の物語』
2004年09月04日(土)  文京ふるさと歴史館
2002年09月04日(水)  暑い日の鍋


2009年09月03日(木)  IKEAのある暮らし

IKEA(イケア)の名前を知ったのは1998年のことだから10年以上前になる。映画祭と同じ会場で開かれるカンヌ国際広告祭でクセのあるCMを連発している家具屋として記憶した。あちこちの国にあるらしく、国によって読み方が「イケア」だったり「アイケア」だったりした。先日ビデオで観たアメリカ映画『理想の恋人.com』では「アイケア」と発音していた。

そんなイケアが日本に上陸したとき、わたしはまだ広告会社に勤めていて、イケアのローンチ広告の競合プレゼン準備を近くのチームがやっていた。あのコンペには勝ったのだったか負けたのだったか。イケアと聞くと、コピーライター時代の記憶をくすぐられる。

『パコダテ人』で子役だった前原星良ちゃんの母、せらママから「今井さんは絶対好きよ! ぜひ行きましょう」と誘っていただいていたイケアに、ついに行く機会を得た。捨てても捨てても物があふれているわが家にこれ以上雑貨を持ち込んではいけない、と心に言い聞かせて出かけたものの、いざショールームに足を踏み入れると、「かわいい」「ほしい」を交互に繰り返し、気がつくとあれもこれもと手に取ってしまう。「こんな色、他にないよね」と夢中にさせる色使いの罪なこと。これでお値段が高いとブレーキになってくれるのだけど、「これぐらいなら」と財布の紐を緩めさせる絶妙な価格設定。「子どもが小さいうちに、こんなベッドカバーがあったら」なんてせらママが言うものだから、そうよねえと手が伸びる。

カフェテリア形式のランチがこれまたそそられるメニュー。広い店内を歩き回るので、空腹が何よりのおいしさ増強剤に。元気を盛り返して、また歩く。おひさまの形のランプシェード、写真を入れられる戸棚のドア、お絵描き用のロール紙ホルダー……面白いなあと心惹かれるけれど、大きい物は我慢我慢。結局、カーテンとベッド&枕カバーと細かいものをちょこちょこ買って、一万円でおつりが来た。買い物というより、物が手元に残るレジャーの感覚。

わたしが行った新三郷店はJR武蔵野線新三郷駅から徒歩数分の距離。すぐ近くにはCOSTCO(コストコ)があって、どやっという迫力の業務用サイズの商品群を受け止めるカートは、通常の四倍はあろうかという大きさ。座布団大ピザが1400円也。サイズ感覚が狂って、ちょっとしたミクロアドベンチャー気分。金銭感覚もおかしくなりそう。ここではぐっと我慢して、娘のたまにパンツと靴下を買うにとどめた。ハーシーズのチョコレートがけプレッツェルに惹かれたけれど、1キロを超える大袋を食べきれる自信はなく、食べ切れたとしたらそれはそれで怖いので、断念。

帰宅して、早速わが家をイケアで彩る。カーテンは長さは一種類で、すそをマジックテープで調節する。こういうところが安さのヒミツなんだろう。わたしが買ったものはすそに模様があるので、「お好きなところでカットして縫い直してください」とのこと。そんな芸当はできないので、長いまま斜めに垂らして使うことに。洒落た天蓋風になり、物置となっているベッドの上のごちゃごちゃ隠しにもなり、一石二鳥。カーテンひとつで部屋の印象ががらりと変わったのには、びっくりした。たまもかくれんぼができて大喜び。「これいいじゃん!」と柄も気に入った様子。


カーテンレールには色とりどりのリボンでくくりつけ、裾にはポップな色づかいの動物たちがぞろぞろ。

ちょうど書き上げたフリーペーパーbukuに連載中のエッセイ「出張いまいまさこカフェ」13杯目に添える写真の背景にも動物柄を借りる。邪魔をしに来たたまの手もアクセントに入れた。今回のタイトルが「母と子と映画」なので、これはこれでよし。小さな手と動物イラストで子ども感が高まった。

カーテンと同じ動物柄の枕&掛け布団カバーも購入。「たまちゃんのおふとん」と中に入ってごろごろ。たまが生まれた頃、白いレースじゃなくて絵本の挿絵みたいな子ども部屋用のカーテンや布団はどこで売っているんだろとネットで探し回ったけど、そうか、イケアにあったのか。

ランチョンマットや食器も楽しい色づかい。値段は予想した半値ぐらい。だから、お友だちの分も二つずつ。

袋ものの口を止めるクリップが30本で99円也。底がマグネットで中身が見える小物入れ(こんなのが欲しかった!)は3つで1480円。おたまの絵が壊れたので、新しいのを探してたら、パスタ用や平たいのやフライ返しとセットになって698円。持ち手つきのざるも498円。物はしっかりしていて、安っぽさは感じさせない。

こうなると、あれもこれも買いそろえたい、買い替えたい衝動にかられてきて、帰ってくるなり「次はいつ行こう?」とうずうずしている。

2008年09月03日(水)  マタニティオレンジ329 アンパンマンがミッキーのおうちへ行く話
2007年09月03日(月)  お金を恵むのではなく
2004年09月03日(金)  下高井戸シネマで『Big Fish』


2009年09月02日(水)  やっぱり面白かった『南極料理人』

先日の日記(2009年08月28日(金) 『映画とたべもの』と「レシピに著作権がない」問題)に「すごく観たいし、関わっている人がうらやましい」と書いた『南極料理人』をテアトル新宿で観る。ロビーではペンギンのボーリングピンなどかわいい撮影小道具がお出迎え。上映15分前で最前列を残すのみの盛況。徒歩3分のバルト9『ぼくとママの黄色い自転車』の入りはいかがか、と気になる。

冒頭、雪煙に視界が曇る一面の氷野原にドームから駆け出してくる男たち。「もうイヤなんです!」と逃げ出す若い隊員に追いつき、「お前が強くなるしかないんだ!}と年配隊員が肩を揺さぶる。スポ根ノリの熱い映画なのかと思わせておいて、次のシーンでお茶目にオチをつけ、なるほど。この作品の力の抜き具合を知ると同時に、食べものだけでなくてムードもおいしそうだと身を乗り出した。

「とにかく食べものがおいしそうなのよ」「ラーメン食べたくなるのよ」とすでに観た人が口々に言うので、食材が限られた極北の地ならではのB級グルメが目白押しかと思いきや、堺雅人演じる料理人が腕をふるうメニューの数々に目を見張った。乾物と冷凍野菜、自家栽培のスプラウト類でこれだけの食事を作れてしまうとは。手抜き主婦のわたしに任されたわが家の食卓よりも豊かではないか。南極での食事と言えば、味気なくそっけないものを勝手に想像していたので、これには驚いた。映画的な脚色がどこまでされているのか、本当にこんな感じなのか、原作の体験記『面白南極料理人』を読んでみたい。

食事はもとより南極観測隊の生活についてはほとんど知識がなく、それゆえに「個室はこうなっているのか!」「トイレはこうなっているのか!}「電話があるのか!」などといちいち新鮮に驚くことができた。「平均気温マイナス57℃ 日本との距離14000km 究極の単身赴任!」と公式サイトにあるが、異文化体験をのぞくような面白さがある。今や海外旅行は珍しくないけれど、観測隊員として派遣される人の数はとても限られていて、そうそう遭遇できるものではないから、その土産話に興味が湧くのは当たり前。ずいぶん昔、幼なじみのフミちゃんのダンナさんが観測隊で南極へ行くということを実家の母が興奮気味に電話してきたが、稀少価値でいうと「甲子園出場」以上だろう。

日本に残した家族や恋人との物語が挟まれると、季節感のない観測隊の毎日に、時の流れが感じられる。家族とのやりとりのベタベタしない感じがリアル。毎日顔を合わせる隊員同士もだんだん家族になっていくが、家族ならではの「必要最小限のことしか言わなくてもわかりあう」感じが良く出ている。逆に、最初は「おう」「おうおう」で通じあっていた恋人との電話の会話が時間とともにぎこちなくなっていき、遠距離恋愛の終焉を感じさせるところもうまかった。この若き隊員の恋の結末は、とても好き。劇場映画初監督の沖田修一監督が脚本を書いているが、自然なセリフがとてもいい。達者な役者さんの力なのか、演出がうまいのか、絶妙な間で笑いを確実に取っていたのはお見事。雪と氷の世界なのに、滑らない。

欲を言うと、料理人以外はどういう仕事をしているのか、あまり描かれていなかったけれど、見やすい長さだったし、料理がメインなのだから、いいのかもしれない。車両担当さんは具体的には何をするのだろう。料理については、思った以上の眼福を味わわせてもらった。ラーメンもさることながら、ローストビーフのジューシーな肉汁にはおなかが鳴った。湯気までおいしそうといえば、去年観た『しあわせのかおり』。もしかしてカメラは同じ芦澤明子さんではとエンドロールに注目したら、当たり。この人の撮る食べものは、スクリーンを通しても鮮度が落ちない。

2008年09月02日(火)  マタニティオレンジ328 買い物ごっこ
2007年09月02日(日)  マタニティオレンジ170 せらちゃんのおさがり
2004年09月02日(木)  「とめます」と「やめます」
2002年09月02日(月)  My pleasure!(よろこんで!)


2009年09月01日(火)  防災ずきんを防空ずきんと呼んでしまう

9月1日は防災の日だということを娘のたまが保育園に通っているおかげで、ここ数年思い出させてもらっている。毎年この日には園で防災訓練があり、お迎えのときは父兄は引き渡し訓練をする。いつものお迎えと違うのは「すでに先生方が荷物をまとめてくださっている」ことと「父兄のフルネームを名乗る」ことと「3才未満の小さい子はおんぶして帰る」こと。

たまは3才になったのでおんぶの必要はないのだけど、おんぶして帰ることにすると、背負った途端、泣き出した。「あさも おんぶが よかったよー」。昨日はわたしの仕事が遅くなるのでじいじばあばの家にお泊まりしたのだが、ぐっと我慢していた淋しさが、おんぶされた安堵で一気に吐き出されたらしい。泣きじゃくるたまをおんぶであやしながら家路についた。

防災訓練では何をやっているのか、これまでわからなかったが、今年は「かじになると えんちょうせんせいが バケツもってきて くれるんだよ」などと報告してくれる。これは火事のときの消火訓練か? 家に帰ると、タオルや座布団を頭にかぶり、「ぼうさいずきーん」と遊び出したので、ずきんをかぶる練習をした様子。防災ずきんは今年から園に常備することになり、どこで売ってるんだ、と探し回った挙げ句、楽天にてメール便で送ってくれるものを見つけて購入した。「防災ずきん」という言葉がどうも使い慣れず、つい「防空ずきん」と言ってしまう。同年代の保育園の先生も「防空ずきん」とつられて、「世代かしら?」と笑い合う。防空ずきんもなじみがあるわけではないのだけど……。

2008年09月01日(月)  『ブタがいた教室』と『ヤング@ハート』
2007年09月01日(土)  第2回ユニバーサル映画祭
2004年09月01日(水)  年を取らない誕生日
2003年09月01日(月)  「うんざりがに」普及運動


2009年08月31日(月)  愛のないヤツとは仕事せえへん

撮影監督出身の津田豊滋監督に会ったのは、2004年、『丹下左膳 百万両の壺』で監督デビューされる少し前のことだった。前田哲監督の『パローレ』の試写を観終えて、前田さんとお茶をしに入った渋谷のセガフレードで、木下ほうかさんとお茶しているところに加わらせてもらった。大阪弁でよくしゃべる気さくな人柄に好印象を持った。去年、共通の知人の披露宴で再会したとき、ちゃんと覚えていてくれたのは、別な共通の知人がいたからで、その人からお互いのことは何となく耳に入れていた。

その津田監督と、出会ったセガフレードでまたお会いした。津田さんと十年来組んでいる映像技術車の鈴木康公さんを紹介され、三人で二時間ほどお茶したのだけど、これがとても楽しかった。母国語の大阪弁で話すと、言いたいことがちゃんと言葉になって伝わる感覚がある。津田監督とじっくり話してみると、生理的に好きなことと嫌いなことが近いこともわかった。作品の中で人を殺したくないとか血を見せたくないとか、ファンタジーや夢のある話が好きだとか。CMもたくさん手がけられているので、「CM一本の予算で映画作れちゃうんですよねえ」という話で盛り上がった。

『ぼくとママの黄色い自転車』主演の武井証君を『いま会いに行きます』より早く『丹下左膳』で起用した話、今まででいちばん楽しかったのは「世界の車窓から」の撮影、ロスで仕事していた頃もあってマイケル・ジャクソンの『BAD』も撮影したので、ちょっと前は追いかけられて大変だった話……「へー」「ほんまですかー」と身を乗り出しつつ、「そういえば」とわたしもボールを投げる。大阪弁の会話にありがちな、話題があっちゃこっちゃ行っては戻ってくるのが楽しい。鈴木さんも大阪弁だったからすっかり関西人かと思ったら、「つられているだけです」。

「俺は愛のないヤツとは仕事せえへん」という言葉が気に入った。

2008年08月31日(日)  マタニティオレンジ327 くるくる ぐるぐる 何度でも
2007年08月31日(金)  『怪談』より怖い話
2005年08月31日(水)  佳夏の誕生日
2004年08月31日(火)  東京ディズニーランド『ブレイジング・リズム』


2009年08月30日(日)  朝ドラ「つばさ」第23週は「旅立ちのうた」

25日の火曜日に開設された公式掲示板(公式サイトトップページからどうぞ。書き込みもぜひ!)でも賛否両論の「つばさ」。否定的意見もしっかり載せる潔さにもチャレンジを感じるが、わたしのまわりでも「ついていけない」派が少なからずいて、そんな人たちには、「観続けていたら、きっと面白くなるから!」と言い続けてきた。その甲斐あって、踏みとどまってくれた人や舞い戻って人たちが、今では「あと一か月で終わっちゃうの?」と淋しがってくれていたりする。

わが家にも脱落者が一人いて、放送開始時2才8か月だった娘のたまは、「ちゅばさ、きらい」「シーザーきらい」「いないいないばあ、みるー」とテレビの音量をかき消していた。それをあの手この手でなだめすかすこと数か月。7月に会った同い年のアオチンが主題歌を歌い「ゆうかちゃん、かわいい」などと言うのを見て、一気に歩み寄りを見せ、「きょうは ゆうかちゃん でないねー」「ラジオぽてと」などと口走るようになった。第22週で登場した「川越〜チャレンジ〜イエイ!」のジングルを気に入って口ずさんだかと思うと、「たけちゃん、ちゅばさのおとうさん」とまで言い出し、急成長。

3歳児にも毎日の視聴習慣が継続は力なりになることがわかったけれど、「つばさ」は第1週から巻いてきた伏線をどんどん刈り取っていくので、ずっと観ている人にとっては、「あれはこういう意味だったか!」と発見する楽しみがある。今後はさらに回収率が上がるので、乞うご期待。

ところで、昨日、浅草サンバカーニバルの打ち上げを抜け出したご近所仲間のミキ嬢からゴキゲンな電話があった。会社のサンバチームの応援に行っていたらしいが、「うちのチームの指導してるブラジル人ダンサーが、前に朝ドラで西城秀樹さんと共演したことがあるんだって。朝ドラつながりで今井さんに電話しちゃった」と言うので、「それって、つばさの第19週に出てたビバマリア役のアンドレアさんじゃない?」と言うと、「ええっ、前って言ってたけど、今の朝ドラ?」と電話の向こうで動揺するミキ嬢。「ごめん。その週観てない」と言い訳するので、「っていうか、西城さんが出てるといえば、つばさでしょう」と突っ込むと、「ぎゃーどうしよう。ほとんど観てないのバレちゃった」。うろたえる酔っぱらいミキ嬢に「つばさを観てたら、もっとテンション上がったのに、もったいない!」と言うと、「サンバだけでもすっごく感動したのに、もっと感動できたのかあー!」と酔いにまかせて悔しがっていた。

さて、西城さん演じる斎藤は、第22週でラジオぽてとが念願の広場になったのを見届け、明日からの第23週「旅立ちのうた」で川越を出て行くことに。回を追うごとにどんどんカッコ良くなるヒロリン。打ち上げで間近で拝見したご本人も、タダ者でない渋さで、スターの貫禄。ヒロリンファンの皆様にはたまらない週となるはず。しかし、旅立つのは、ヒロリンだけではなく……。

この週のあらすじを聞いて思い出したのは、はるか20年以上前、中学生だったか高校生だったかのときに観た『ファミリー』という洋画。母親の死期が迫った兄弟姉妹が次々と里親に引き取られていく話で、一人去るたびにハンカチ一枚分ほど号泣し、涙を拭く布がなくて困った記憶がある(調べてみると、1983年アメリカABCで放映。日本ヘラルドで配給)。ハンカチ四枚もしくはそれ以上をご用意して、どうぞ。演出は初登場の松川博敬さん。

続く第24週「あなたを守りたい」は再び今井雅子のクレジットが毎日出る増量週間。冨士眞奈美さん演じる城之内房子のラジオぽてとへの揺さぶりが激しさを増し、最終週へ向けて、ますます目が離せない展開に。どうぞ最後まで見届けてくださいませ。

2008年08月30日(土)  インド三昧、のち、『ペガモ星人の襲来』
2007年08月30日(木)  マタニティオレンジ169 布おむつはエコかエゴか


2009年08月28日(金)  『映画とたべもの』と「レシピに著作権がない」問題

ご近所仲間で映画通のT氏に贈呈された『映画とたべもの』を読み始めた。映画評論家の渡辺祥子さんが『マチルダ』のパンケーキや『初恋のきた道』の水餃子やアメリの『クレーム・ブリュレ』など劇中に登場する食べものをキーワードに綴ったエッセイ。登場する食べものの数もさることながら、主演男優の好きな飲み物が紹介されていたり、同じ食べものが登場した他の映画の名前を挙げたり、内容ももりだくさんでおなかいっぱい楽しめる。

読んであらためて気づいたのは、わたしも映画を食べもので覚えていること。食いしんぼだから「おいしそう」と思いながら観てしまうのだろう。ストーリーは忘れてしまって食べものだけ覚えている作品もある。食べる場面を書くのも好きで、とくに映画ではよく食べる。映画における食事回数の平均値(そんな統計はあるのか?)は上回っていると思う。公開中の『ぼくとママの黄色い自転車』では主人公の少年が旅先で出会う人ごとに食事を共にしている。

知り合いの監督やプロデューサーには「食べものの映画、やりたいです」とアピールしている。脚本家じゃなくても試食家でもいいです、と。映画関係車の間でも話題の『南極料理人』(公開中)と『食堂かたつむり』(製作中?)は、すごく観たいし、関わっている人がすごく羨ましい。

何を食べるか、誰と食べるか、どんな風に食べるか。食事は食べる人の生活や人生を豊かに物語る。それを作る場合はなおさら。どんな材料をどれぐらいずつ、どんなスパイスや隠し味を使うのか、そこに料理人の好みや食べる人への思いは色濃く反映される。先日、東京カリ〜番長の調理担当で著書も多数ある水野仁輔君と話しているときに、「レシピには著作権がないんですよ」という話になった。オリジナルのレシピでも材料の「小さじ1」を「2」に替えられたら、真似されたとは言えなくなるとか。「だから、レシピにキャラクターをつけていかなきゃいけないんです」と水野君。簡単に真似されるレシピにオリジナリティをつけるのは、料理人の親しみやすさやユニークさなのだという。水野君の書くレシピには物語が宿っていて、それを読むと食べたくなり、作りたくなる。でも、レシピって本来、作り手のあたたかみを添えて伝えられるべきもの。分量だけを記した指示書みたいな顔つきをしていても、著作権は守られるべきなのではないかしら。

2008年08月28日(木)  3年ぶりの健康診断
2007年08月28日(火)  マタニティオレンジ167 ベビーシッター代ぐらいは稼がないと
2005年08月28日(日)  高円寺阿波踊り2日目
2004年08月28日(土)  『心は孤独なアトム』と谷川俊太郎


2009年08月27日(木)  応援団をやっていて良かったこと

今月初めに七大戦の演舞演奏会を観に行って以来、血中応援団濃度が幾分高まっているところに、親交のあった神戸大学応援団の同期より創立50周年記念誌への寄稿依頼があった。熱のほとばしるまま一気に書いた原稿のタイトルは、「脚本家になるには」。わたしが脚本家になれたのも、あり続けられるのも、応援団で身についた気力体力忍耐力交渉力感動力飲み会サバイバル術などの賜物。脚本家を目指す若者には、応援団に入ることをおすすめしたい。そうすれば、衰退しつつある応援団界も活気づくし、根性のある脚本家も育つ……といった内容。

別に応援団でなくてもいいのだけど、無駄だと思えるようなことに没頭したり、限界まで自分を追い詰めて、己の弱さと向き合う経験をした先にしか見えない風景があると思う。どちらかというとしんどいことや不条理なことが多い応援団という特殊な世界に身を置くうちに、「人生は、自分で何とかしていくしかない」という悟りのようなものと、それに必要なたくましさを得たとわたしは思っている。あれだけ辛い思いをしたのだから、その後何があっても耐えられるというのとは違う。苦労や努力を喜びや楽しみに転換して、自分の人生は自分で面白くしてやるという気構えのようなものができた。

応援団の四年間に何の意味があるかなんて、中にいるときにはわからない。社会に出て、壁にごんごんぶつかり、乗り越えるたびに、案外図太い自分の土台があの四年間に作られていたことに少しずつ気づく。会社員のコピーライターを経てフリーの脚本家という自力本願度の高い立場になって、なおさら応援団で授かった基礎体力ならぬ基礎生き抜き力に気づかされる毎日だ。その反動で、「脚本家になるにはどうしたらいいですか。ヒマなときにでも教えてください」「今の会社がつまらないので脚本家にでもなりたいと思いますが、ぶっちゃけ、食べていけますか」なんてメールを送ってくる他力本願な志願者には喝を入れたくなってしまう。デビューできるかどうか、食えるかどうか、自分の才能を宝の山にするのも宝の持ちぐされにするのも、あなた次第なんですよと。

応援団の経験のもたらすうまみは年を経るごとに熟成され、脚本業だけでなく子育てにも役立つことを日々実感している。思うようにならない育児もまた気力体力忍耐力勝負であり、開き直りや面白がり精神に助けられる。先日は上野動物園で娘のたまを肩車していたおかげで友人のダンナさんに見つけていただいたが、「母親が肩車しているのは珍しいので、つい顔を見た」ところわたしだったのだそう。チアリーダー時代は同じぐらいの体重の部員を担ぎ合っていたので、十数キロの娘を肩に乗せるのは、だっこよりもラクに感じる。

先日、たまが人形を縦に二つ重ねているのを見て、ふと「ショルダースタンドもできるのではないか」と好奇心にかられた。試しに肩の上に立たせてみたら、意外なほどの安定感。しっかりと足をロック(力を入れて固めること)していて、びくともしない。その姿勢でポーズを取らせ、調子に乗って、たまを乗っけたまま360度回ってみた。これは客人が来たときの座興に使えるのではないか、などと考えてしまうのも応援団出身の性かもしれない。宴会芸もまた応援合戦だった。

2008年08月27日(水)  『トウキョウソナタ』『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一髪』
2007年08月27日(月)  ひさびさのおきらくレシピ「野菜いろいろジュレ」
2005年08月27日(土)  高円寺阿波踊り1日目
2004年08月27日(金)  汐汲坂(しおくみざか)ガーデン
2002年08月27日(火)  虹の向こう


2009年08月26日(水)  エンドロールまで感服『グラン・トリノ』

「今年のナンバーワンだ」「イーストウッド監督作品でベストだ」などと会う人ごとに絶賛し、「まだ観てないの? 観たほうがいいよ」と強烈におすすめされていた『グラン・トリノ』。映画製作に関わる一人として、これぐらい圧倒的に支持される作品を作ってみたいものだわと羨望を覚えつつ、『築城せよ!』や『スラムドッグ$ミリオネア』や神保町シアターの成瀬巳喜男特集を優先させるうちにロングランのロードショーは終わってしまい、待つことひと月。三軒茶屋シネマで一週間上映される情報を得て、つかまえに行った。

広告会社のひとつ上のアートディレクターで、一週間に20回食事を共にするほど仲良くなったタカマツミキが住んでいたのが三軒茶屋で、沿線の鷺沼に住んでいたわたしは、週に何度か途中下車して、会社帰りにご飯を食べていた。三茶に来ると、20代の頃の自分やミキのことを思い出されて、照れくさいような懐かしさが込み上げる。

ミキと映画を観るのは必ず渋谷で、三茶に二つある映画館で彼女と観た記憶はない。見逃した作品を追いかけて、別の人と何度か観に行ったことはあり、沖縄サミットに情熱を燃やしていた小渕恵三元首相が熱烈に薦めていたという噂を聞きつけて観た『ナビイの恋』を観たのも三茶だったと思う。その三軒茶屋中央劇場の手前にあるビルの二階が、三軒茶屋シネマだった。狭い入口から小さな劇場を想像したら、予想外に大きく、二階席まである。いつもの映画館の感覚で座席に腰を下ろすと、座椅子が跳ね上がった。年季が入ってバネが利かなくなっているらしい。椅子を変えても同じことで、座り心地には贅沢は言えないけれど、これもまた味。川越キネマも長い歴史に幕を下ろす前は、こういうガタガタ椅子だったのだろう。

さて、お待ちかねの本編。同じくイーストウッド監督作品の『チェンジリング』にも言えることだけど、扱われるエピソードが劇的でショッキングである分、演出は抑制がきいていて、観客を目撃者の目にさせるところがある。その結果、すごいことが起こってるぞと見せつけられるよりも、むしろ画面に引き込まれ、息を呑んで見守ることになる。そして、「物語を転がす事件のために事件を起こす」ような無理やこじつけを感じさせず、映画の中で起きている出来事が真実味を帯びてくる。ともすれば嘘っぽくなりそうな題材をそれっぽく描く。その違いは、細やかな心配りの積み重ねだろうか。根性焼きやリンチの生々しさ。パンク娘や新米神父や街のゴロつき、隣家に集うモン族の一人一人に至るまでがまとう、いかにもな雰囲気。そして、もちろん、主演のイーストウッド演じる偏屈者の元軍人のもっともらしさ。キャラクターから傷までが映画の時間を生きている。タイトルにもなっている自慢の名車グラン・トリノもまた、主人公に永年寄り添ってきた確かな存在として息づいている。God is in the details(神は細部に宿る).「作り込む」というのは凝りまくることではなく、細部まで目を配り気を抜かないこと、「作り抜く」ことなのだと作品のあちこちに宿る神たちが語っている。

わかりやすいメッセージを連呼するのではなく、どうする、どうすると観客に投げかけ続ける。答えを提示するのではなく、観客に答えを考えさせ、求めさせる。息抜きの場面に見えた何気ない台詞やエピソードが後で重い意味を持つ伏線になっていたりして、高度だなあ、上質だなあと感心する。憎まれ口をたたきあう悪友の理髪師にヒゲを剃らせる場面で主人公の決意の固さを感じさせるとは。心を開き合った隣人のモン族青年をギャングの従兄たちの攻撃から守るために彼が考え、実行した解決策は悲劇ではあるけれど、考えうる最良の方法だと思わせる説得力があった。

エンドロールのバックは、グラン・トリノが走り抜けた海沿いの道をカメラを据えたまま延々と流し続ける。次々と走り去る車が、さまざまな人生を運んで行く。わたしだったら、ついグラン・トリノを追いかけたくなるところだけれど、それは主題歌に任せたイーストウッド監督。諸行無常を感じさせ、流れる人生について立ち止まって考えさせるような深みのあるタイトルバックに唸った。

2008年08月26日(火)  ゴ○○リから「テン」を取って「マル」をつけたら
2007年08月26日(日)  マタニティオレンジ166 お風呂で初U  
2005年08月26日(金)  『道成寺一幕』→『螢光 TOKYO』
2004年08月26日(木)  土井たか子さんと『ジャンヌ・ダルク』を観る
2003年08月26日(火)  アフロ(A26)
2002年08月26日(月)  『ロシアは今日も荒れ模様』(米原万里)


2009年08月25日(火)  7か月ぶりに髪を切って

忙しくなると真っ先に削ってしまうのが、美容院へ行く時間。3月に元同僚の披露宴があったときにヘアメイクをお願いしたけれど、最後に髪を切ったのはその2か月前、1月のことだった。「つばさ」の脚本開発は一段落したし、伸びきった髪をバッサリ切ることに。毎朝セットをする手間ひまを惜しむために、パーマとセットで考えていたのだけれど、美容院へ行った先週水曜日は、お盆明けの定休日翌日ということで混み合い、カットだけになった。長さは肩よりちょっと短いぐらい。ブローしてもらったときは、うまくまとまって、大人のボブというたたずまいになったけれど、それ以降は髪が外向いたり内向いたりで、中学生のおかっぱみたいになっている。こういう髪型の男性経済評論家もいたような……。保育園へ行くと、切りっぱなしのおかっぱ頭の女の子たちが、「おんなじ、おんなじ」「たまちゃんのママ、おそろいねー」と駆け寄ってくる。

毎回の雑誌占い、今回はFIGAROの読書特集。どういう雑誌を持って来られるかで、自分がどういう趣味の人間に見られているのかを占えるわけだけど、ちょうど読みたいものが運ばれてきた。前にもFIGAROを読みふけった気がするから、カルテに「FIGARO好き」とメモされているのかもしれない。雑誌はそもそも買わない上に病院や銀行で待つこともないから、美容院ぐらいでしか読まない。こんなにむさぼるように読む人って、いないだろうなと思う。話しかける隙がないのか、担当のスタイリストさんは必要最小限のことしか声をかけてこないけれど、話したことは何か月経っていてもよく覚えている。ほどよい距離感が好ましくて、いつもその人を指名する。

2008年08月25日(月)  新藤兼人監督最新作『石内尋常高等小學校 花は散れども』
2007年08月25日(土)  マタニティオレンジ165 誕生日の記念写真
2005年08月25日(木)  『クライマーズ・ハイ』(横山秀夫)
2004年08月25日(水)  アテネオリンピックと今井雅子
2003年08月25日(月)  冷凍マイナス18号
2002年08月25日(日) 1日1万

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