2008年12月09日(火)  クリスマスみいつけた

昨日、保育園からの帰り道、娘のたまと手をつないで歩きながら、「クリスマスがくるね」と何気なく言ったら、「クリスマス、どこ?」と返事が返って来て、不意打ちを食らった。カレンダーを見ながら「あと何日」と数えることがすっかりしみついた身には、クリスマスとの距離を「いつ」ではなく「どこ」と測る感覚が新鮮。でも、考えてみると、「はるがきた はるがきた どこにきた やまにきた さとにきた のにもきた」という歌がある。季節やイベントの訪れを景色や気配で感じることができるのは、カレンダーで確かめるより豊かなことのような気がする。

家と保育園を結ぶ住宅街の道のあちこちにもクリスマスはやって来ていて、外の螺旋階段に等身大のサンタさんが張りついて(2階によじ上ってプレゼントを届けに行く途中と見受けられる)いたり、イルミネーションがまたたいていたり、染物屋の軒先のショーウィンドウに箸置きサイズのサンタさんが並んでいたり(左端の寝転がっている「ねんねサンタさん」が、たまのお気に入り)、ぬいぐるみが並ぶ薬屋さんのショーウィンドウにツリーがお目見えしたり。

クリスマス探しに夢中になって帰宅すると、わが家のクリスマス感のなさが際立つ。大学の卒業式にクリスマスツリーに扮したほどのクリスマス好きなのに、今年の年末はとくに仕事が忙しくて、それどころではなくなっている。クリスマスのにぎやかさの代わりにちらかり放題の室内を探険し、クリスマスカラーの赤いものを集めた。一昨年クリスマスケーキが入っていた長靴やサンタの靴下やハートの置物などなど。並べてみると、多少華やいだ感じになって、たまは「クリスマスだね」とにっこりした。

……という体験から生まれた、今日の子守話

子守話28 クリスマスみいつけた

「クリスマスがくるね」とおかあさんがいいました。「クリスマスはどこ?」とたまちゃんがいうと、「クリスマスは、もうすぐくるのよ」とおかあさんはわらいました。「でも、たまちゃんのちかくにも、もうきているわね」といいました。

たまちゃんは、クリスマスをさがしにでかけました。ほいくえんのまどには、トナカイがひっぱるそりにのったサンタクロースがいました。スーパーマーケットには、おおきなクリスマスツリーがありました。きんじょのおうちには、おほしさまみたいなライトがピカピカひかっていました。

だけど、たまちゃんのおうちには、まだクリスマスはきていません。「そうだ、クリスマスをつれてこよう」とたまちゃんはおもいつきました。そして、いえのなかをさがしまわり、サンタクロースのふくとおなじあかいいろをしたものをたくさんあつめました。あかいくつした、あかいなべつかみ、あかいコップ、あかいはこ。ありったけのあかいものに、あかいリボンをくくりつけて、みどりのはっぱのきにかざると、クリスマスツリーのようになりました。きのてっぺんに、たまちゃんはあかいぼうしをかぶせました。ぼうしにはきいろいおほしさまがついていて、ますますクリスマスツリーらしくなりました。

2006年12月09日(土)  『現代映画聖書』と『麗しの銀幕スタア』
2002年12月09日(月)  ドカ雪


2008年12月08日(月)  手抜き母の子守話

年末で締切が重なり、生活にしわ寄せが来ている。荒れた部屋でいろんなものが次々に姿を消し、探し物という仕事がふえ、また時間に追われる。布オムツを洗う暇を惜しんで紙オムツに戻したら、なんと楽なこと。たまったオムツのにおいからも解放された。ダンナの帰りが遅い日の夕食は保育園帰りにお弁当を買って娘と分け合う。お弁当を2枚の大きなお皿に半分ずつ盛り分けるのが、娘には楽しいらしい。いつまでイベント気分を味わってくれるだろうか。皿数を減らして大皿に盛るのも手抜きのため。

夕食の後はお風呂でたっぷり遊ぶ。最近のブームは自転車漕ぎ。お風呂の浮力を活かして、だっこされた状態で自転車を漕ぎ、すれ違うバスやゴミ収集車に手を振る。おいものてんぷらごっこも好き。「おいものてんぷら〜」と歌いながら、相手の体に粉をつけて揚げる。

長湯をすれば早く寝てくれるのではと期待するのだけど、お風呂から上がってからが長い。やっとママと会えたんだから、寝てたまるか、とばかりに「おうちおうちする」と出産祝いでいただいたボーネルンドのおうちを組み立て、人形のじいじばあばにお茶をふるまったり、「ねんどする」と2歳の誕生日祝いの24色粘土を広げたり。こどものとも傑作集の『おじいちゃんのかお』という絵本を気に入り、何度も読んでとせがむ。早く寝かしつけて仕事の続きをしなきゃと思うけれど、子どもと向き合う時間は手を抜けない。他のことを考えていると、たちまち見抜かれる。

真夜中に近くなって、ようやく「ねる」と言ってくれた頃には、わたしのほうが眠くなっていいて、一緒に布団に入る。そんなわけで、最近はまた子守話の出番がふえた。娘の寝息にますます眠まぶたが重くなり、仕事は明日早起きしてやればいいやと思いながらまぶたを閉じる。今夜の子守話は、「ゾウさんちょうちょ」というお題のリクエストを受けて、ゾウさんがちょうちょになって空飛ぶ話。

子守話27 ゾウさんちょうちょ

ひらひらとそらをとぶちょうちょを うっとりとながめながら ゾウさんがいいました。「ちょうちょは いいな。ぼくも ちょうちょになりたいな」。そこで たまちゃんは まほうをつかって ゾウさんに ちょうちょのはねを つけてあげました。おはなみたいな きれいないろをしたはねをはばたかせると ゾウさんのおおきなからだが ふわりとうかんで そらをとびました。「うわあ。とんだとんだ」とゾウさんはおおよろこび。ながいはなで くもをすいこんで またはきだして そらにおえかきしてあそんでいます。

そらとぶゾウさんをみて もりのなかまは おおさわぎ。「あたしも ちょうちょになりたいよう」とブタさんがいいました。そこで たまちゃんは まほうをつかって ブタさんにも ちょうちょのはねを つけてあげました。そらをとんだブタさんが はないきでくもをふきとばしたので ゾウさんのおえかきは めちゃくちゃになってしまいました。ゾウさんがおこってブタさんをおいかけ そらのうえで おいかけっこがはじまりました。

おおきなくちをあけて そらをみあげていたワニさんが「ぼくも ちょうちょになりたいよう」といいました。そこで たまちゃんは まほうをつかって ワニさんにも ちょうちょのはねを つけてあげました。そらをとんだワニさんは しっぽをぶんぶんふりまわしてスピードをあげて ゾウさんとブタさんにおいつきました。すると とつぜんゆうだちがふってきて はねがぬれてしまい ゾウさんちょうちょとブタさんちょうちょとワニさんちょうちょは じめんにむかっておちていきました。

「キャー じめんにぶつかっちゃう」とめをつぶったそのとき ぷるんとしたなにかにぶつかって ゾウさんちょうちょとブタさんちょうちょとワニさんちょうちょはたすかりました。あめがあがって なないろの にじのはしが そらにかかったのでした。にじのうえで ゾウさんちょうちょとブタさんちょうちょとワニさんちょうちょは すべりだいあそびをしました。

ひがくれて そらがくらくなって ほしがまたたきはじめました。ゾウさんちょうちょとブタさんちょうちょとワニさんちょうちょは なかよくとびながら もりへかえっていきました。きれいなはねが ほしのあかりをうけて キラキラとひかりました。「あ ながれぼし」と もりのだれかがゆびさしていいました。

さあ つぎはだれが ちょうちょになるのかな。

2006年12月08日(金)  マタニティオレンジ40 東大へ行く
2004年12月08日(水)  『frame』 by Takeshi Sasaki


2008年12月05日(金)  2008年の仕事を振り返ると

今年4月3日に放送されたドラマ『アテンションプリーズスペシャル〜オーストラリア・シドニー編』再放送決定の知らせがプロデューサーから入った。12月26日(金)15:57-17:54 フジテレビ系にて放送。考えてみると、2008年に形になった今井雅子脚本作品は、この一本。その再放送で一年を締めくくれるのは悪くない気がする。

一本しか形になってないとは、この一年何やってたんだと振り返ってみた。脚本協力作品の『子猫の涙』と『犬と私の10の約束』が公開され、これまでに書いた脚本が少し報われた。写真集『犬と私の10の約束』にも、英語の「犬の十戒」の日本語訳という形で、脚本開発の際に書いた言葉を採用された。

プロットは今年も書きまくった。消えてしまった企画もあるし、来年以降に望みをつないでいる企画もある。ホンになったところで止まって、また一年過ごしてしまった企画も本棚にずらりと並んでいる。手当たり次第まいた種が、何年か経って目を出すこともあるし、宝くじを買った気持ちであたためている。

エッセイの仕事がふえた年だった。池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuに連載中の「出張いまいまさこカフェ」は、3月に7杯目、6月に8杯目、9月に9杯目、12月下旬刊行号で10杯目。bukuが縁で『月刊看護』4月号の「巻頭の言葉」を書く仕事も舞い込んだ。他に友人の絵師ミヤケマイの2つめの画集『ココでないドコか』にエッセイ「マイルーム願望」が、映画『最後の初恋』の劇場用パンフに「嵐・海」をお題にしたエッセイ「海の中には母があり、母の中には女がある」が掲載された。あちこちに書き散らしたものがまとまった数になって、一冊の『出張いまいまさこカフェ』にできたらいいなと思う。

作詞の仕事では『ほくほく ぼく やきいも』と『ラララ ちらし寿司』の販促ソング2曲が形になったものの、流れているのを耳にしたことがない。どこで販促しているのやら。歌といえば、『およげたいやきくん』『いっぽんでもにんじん』などを作曲した佐瀬寿一さんの「チャイルド・オアシス・ソング」プロジェクトに『はだしになって』という歌詞を寄せた。佐瀬さんがつけてくれたデモを元に歌詞を補作し、あとは来年の完成を待つばかり。

他には、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で、はじめて映画祭の審査員を体験した。NHK奈良の万葉ラブストーリーの審査とイベントは2回目で、来年1月には3回目の審査が行われる。公開シナリオ講座でのパネルディスカッションや一日講師など、人前で話す仕事がちょこちょこ。ネスカフェ『これでもかコレクション』キャンペーンのマグカップとエコバッグは、初めてのイラストの仕事になった。

脚本作品が1本、脚本協力作品が2本にとどまったけれど、写真集、エッセイ、歌、イラストなどちょこちょこしたものを含めると、それなりに形になった年だった。それにしても、映画が2本(『子ぎつねヘレン』『天使の卵』)、ドラマが2本(『ブレスト〜女子高生、10億円の賭け!』『快感職人』)、脚本協力ドラマが1本(『ドクターヨシカの犯罪カルテ』)形になった上に子どもを産んだ2006年は、史上最強の生産的な一年だったのだなあとあらためて思う。「産み年」みたいなものはあるのかもしれない。

間もなく終わる2008年。ぎりぎりまでパソコンに向かい、来年に向けて種を蒔き続ける年の暮れになりそう。1月31日(土)22:00-22:50放送が決まったNHK-FMのFMシアター『友子とモコ』は収録に向けて脚本を仕上げているところ。初号試写を終えた『ぼくとママの黄色い自転車』は2009年中に公開の予定だし、脚本協力で参加している朝ドラ『つばさ』は3月30日から26週にわたって世に出るので、来年は今年より花をたくさんつけられる一年になる見通し。

2006年12月05日(火)  石井兄弟社の忘年会


2008年12月03日(水)  「何見てるの?」「ゆめみてるの」

昨夜のこと。布団に入ってもなかなか寝つかず、目を爛々とさせて天井を見上げている娘のたまに、「何見てるの?」と聞くと、「ゆめみてるの」と返ってきた。布団の中で見る夢といえば、目を閉じて眠っているときに現れるものと思い込んでいる大人は、その答えにハッと目を見開かされる。日が暮れた道端で突然寝転がったときに同じ質問をして、「くもみてるの」と返事が来たとき以上に衝撃的だった。

「夢を見る」という感覚的な概念をいつの間にどのように知ったのか、最近、たまは寝ている間に見た夢のことも話してくれる。一昨日の朝、「どんな夢見たの?」と聞くと、「ちょうちょのゆめ」と答えた。「ちょうちょさん だっこしたの。ないてたの。おかあさんがいいようってないてたの」。なんだか物語の始まりみたいだ。たまの夢をヒントにして、子守話『まいごのちょうちょ』が生まれた。

子守話26 まいごのちょうちょ

たまちゃんが おはなばたけを おさんぽしていると ちいさなちょうちょが ないていました。「えーんえーん おかあさんが いいよう」。ちいさなちょうちょは おかあさんとはぐれて まいごになったようです。たまちゃんは ないているちょうちょを よしよしとだっこしてあげました。それから いっしょに おかあさんを さがしにでかけました。ちいさなちょうちょは きいろいはねに くろいみずたまもようがついていました。おかあさんちょうちょも おなじもようをしているといいます。たまちゃんと ちいさなちょうちょは きいろいはねに くろいみずたまもようのちょうちょをさがしはじめました。

しばらくあるいていくと きいろいちょうちょが とんでいるのがみえました。「あ おかあさんがいた」とちいさなちょうちょが うれしそうにいいました。けれど ちかづいて よくみると きいろいはねについているくろいもようは みずたまではなくて しましまでした。たまちゃんもちいさなちょうちょもがっかりしました。でも しましまちょうちょが「あっちに みずたまのちょうちょがいましたよ」としんせつにおしえてくれたので あっちをさがすことにしました。

しましまちょうちょにおしえてもらったばしょまでくると きいろいはねに みずたまもようのついたちょうちょが はなのみつをすっていました。「あ こんどこそ おかあさんだ」とちいさなちょうちょが いいました。けれど はなびらにかくれていた はねのしたはんぶんは きいろではなく あかいろでした。
たまちゃんもちいさなちょうちょも がっかりしました。でも きいろとあかのはねのちょうちょが おいしいはなのみつを わけてくれたので ちょっぴり げんきになりました。

たまちゃんとちいさなちょうちょは ひがくれるまで おはなばたけを あっちへいったり こっちへきたりしました。けれど おかあさんはみつかりません。とびまわってつかれたちいさなちょうちょを かたにちょこんとのせて たまちゃんはあるきつづけました。ちいさなちょうちょは たまちゃんのかたのうえで ねむってしまいました。たまちゃんも ちいさなちょうちょをかたにのせて きのしたで ねむってしまいました。

それから どれぐらいじかんが たったでしょう。「おかあさんよ。おむかえにきましたよ」とやさしいこえがして たまちゃんとちいさなちょうちょは めをさましました。きいろいはねに くろいみずたまがついたちょうちょが ひらひらと めのまえをとんでいました。「あ おかあさん」とちいさなちょうちょは おかあさんちょうちょにとびつきました。「おかあさん おんぶ おんぶ」とせがまれて おかあさんちょうちょは ちいさなちょうちょを せなかにのせてやりました。そっくりなおかあさんちょうちょとちいさなちょうちょは「たまちゃん ありがとう」とてをふるみたいにはねをひらひらさせて とんでいきました。

たまちゃんも おかあさんにあいたくなって おうちにかえりました。

2006年12月03日(日)  マタニティオレンジ36 撮影大会 
2005年12月03日(土)  第12回函館港イルミナシオン映画祭 参加2日目


2008年12月01日(月)  生きることは、おくりものをおくりあうこと。

ひさしぶりに著書にサインをした。絵本ナビというサイトで『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』が紹介されているのをダンナの同僚が見つけ、「奥さんが書いた本?」とサイン本を頼まれた次第。うちの娘のたまより1歳上の女の子がいる女性で、子どもに読み聞かせる本を探していたところ、偶然発見されたのだという。早速サイトを見てみると、ヘレン絵本のページがあり、「人生の宝物」などのレビューが寄せられていた。

ちょうど一週間前には、今井雅子ファン最高齢、80歳の余語先生からもヘレン絵本のことで電話があり、娘さんを亡くされた方に贈ったところ喜ばれましたという報告をいただいた。タイトルに「おくりもの」という言葉が入っているせいか、プレゼントにされることが多く、「手持ちの分をすべて贈ってしまったので、また購入したい」と余語先生。新しい命を授かった人にも、愛しい命を喪われた人にも、この絵本があたたかい何かを届けられたらと願う。

娘のたまも2歳を過ぎて、読んでとせがむようになった。まだ文字を追えないので、本棚に並んでいる日本語版と中国語版を両手に一冊ずつ持って「おんなじ、おんなじ」と喜んでいる。自分の書いた絵本のページをわが子がめくるさまは、わたしにとって何よりの贈り物。絵本が手紙代わりになって、身近な人や離れた人とつながる機会をくれ、刊行から2年以上経っても感想や反響が舞い込むのがうれしい。絵本のサインには「生きることは、おくりものをおくりあうこと」というメッセージを添えている。

絵本と言えば、最近ちょくちょくお邪魔している制作会社のロボットで、『つみきのいえ』という絵本をいただいた。家が水に沈むたびに上に上にと建て増ししてきた積み木のような家の話。家を下へ下へとたどると、そのときそこで暮らしていた家族の思い出が蘇る。過去が深いところに沈むという家の構造が人の記憶に似ている。ヘレン絵本と同じく、こちらも映画から生まれた絵本。同名のアニメーション映画を絵本におこしたのだそう。

2005年12月01日(木)  Annettからのクリスマスプレゼント2005
2004年12月01日(水)  小原孝・佐山雅弘 Piano de Duo - 4
2001年12月01日(土)  函館映画祭2 キーワード:これが有名な


2008年11月29日(土)  来年の年賀状の季節

朝から年賀状に使う写真を撮影する。毎年、スプーツ新聞風に一家の近況報告を綴っていて、ダンナにダメ出しされながら文案を練る過程で、必ず喧嘩になる。ようやく文章が仕上がると、そのネタに合わせた写真を撮り、広告会社時代の同僚だったE君に合成してもらうのだけど、撮影もてんやわんや。昨年までと違うのは、娘のたまに被写体としての自覚がしっかり芽生えていること。「いたずらっぽい顔して」と指示すると、それなりに顔を作ってくれる。デジカメまで駆け寄り、モニターチェックして、「もう一回」とカメラの前に立つ女優魂。それに引き換え、大人はなかなか狙い通りの表情ができない。「娘のいたずらに手を焼く親」という設定なのだけど、ほどよい「困った顔」というのが難しく、わたしの顔なんかは「本気で怒った顔」に見えてしまう。少しやさしさを取り込もうとすると、締切に追われているせいもあってヤツレが目立ち、「育児疲れか?」と正月早々余計な心配をかきたててしまいそうだ。何枚撮ってもうまくいかないので、E君に「上からいじって」とお願いすることにする。

来年の年賀状のネタにもなっている、たまのいたずらは日に日にレベルが高くなり、手先の器用さと知恵の発達に比例するんだなあと実感している。食事も遊びタイムで、食べものも食器も親の食事も無傷ではいられない。ひさしぶりの子守話は、スプーンとフォークの話。かわいい顔がついたスプーンとフォークはたまのお気に入りなのだけど、顔がついているがゆえに感情が宿ってしまうようで、しばしば食事が中断して人形劇が始まってしまう。

子守話25 スプーンさんとフォークくん

スプーンさんとフォークくんは いつもいっしょでした。スプーンさんがひだり。フォークくんがみぎ。なかよくテーブルにならんでいました。おでかけのときには ふたりいっしょに おてふきタオルにくるまって こうえんやレストランに でかけました。スプーンさんがスープやごはんをすくい フォークくんがやさいやさかなやにくをつきさし ちからをあわせて しょくじをはこびました。しょくじがおわると ふたりいっしょに ひきだしのベッドにかえりました。そして あしたもがんばろうねと はなすのでした。

スプーンさんもフォークくんも じぶんたちのしごとがきにいっていました。おいしいしょくじの においをかぎながら はたらくのも しょくじをはこんだときの えがおをみるのも いいきぶんでした。なにより スプーンさんはフォークくんと フォークくんはスプーンさんといっしょにいるのが たのしいのでした。

ところがあるひ スプーンさんとフォークさんが けんかをしました。「フォークくんは なまけものだ」とスプーンさんが おこりだしたのです。そのひの ごはんは カレーライスで フォークくんのでばんは ありませんでした。スプーンさんが あせをかきかき あつあつのカレーライスをはこぶのを フォークくんは のんびり ぼんやり みているだけでした。はたらきつかれたスプーンさんは つい もんくをいってしまったのです。

「ぼくのほうが はたらいているときだって あるよ」とフォークくんがいいかえしました。スパゲッティのときは フォークくんだけがはたらいて スプーンさんはおやすみです。「あれはくるくるとめがまわるし とってもつかれるんだ」。スプーンさんとフォークくんは これまでがまんしていたもんくを いいあいました。そして せなかをむけて くちをきかなくなりました。

つぎのひ スプーンさんとフォークくんは うまれてはじめて べつべつになりました。スプーンさんが ひとりでむかったテーブルには スパゲッティが まっていました。フォークくんが ひとりでむかったテーブルには スープが まっていました。スプーンさんは くるくるとまわりながら スパゲッティをまきつけようとしましたが スパゲッティは つるつるのおなかをすべっていくだけでした。「フォークくんは すごいな」とスプーンさんはおもいました。めがまわって ふらふらになるたいへんさも よくわかりました。フォークくんは あついスープになんどもとびこみましたが スープのしずくは 2ほんのすきまから こぼれおちてしまいました。「スプーンさんは すごいな」とフォークくんはおもいました。やけどしそうな スープのあつさも よくわかりました。

スプーンさんとフォークくんは またいっしょに はたらくようになりました。あさごはんも ひるごはんも ばんごはんも どこにいくときも いっしょでした。けんかするまえよりも ふたりは ずっとずっと なかよしになりました。

2006年11月29日(水)  日本アカデミー賞PR番組「日本映画のミカタ」
2001年11月29日(木)  2001年11月のおきらくレシピ
2000年11月29日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2008年11月23日(日)  「なまえ」が気になる、たま2歳3か月

0歳2か月から3か月に比べて1歳2か月から3か月はうんと早く感じた。それにも増して、2歳2か月から3か月の早いこと。何もかも初めての驚きやおっかなさに少しずつ慣れて、子育ては日常になっていくんだなと感じる。

昨日11月22日で2歳3か月になった娘のたまのこのごろのブームは、「なまえ」。文字が書いてあると、「なまえ?」と聞いて、読み方や意味を問う。道路に書いてある「患」という文字、毎日歩いていても、「なまえ?」と聞かれるまでは気に留めなかった。患者用車両専用の駐車スペースだろうか、としたらこの建物は医療施設なのだろうか。「患者の患だよ」と教えると、「かんじゃのかん!」と歌うように繰り返した。m&mの「m」とエレベーターのボタンを押す「4」の形は覚えていて、車のナンバープレートに4を見つけると、「よん!」と指差す。駅の時刻表道路に縦書きに寝かせて書いてある「TIME TABLE」の、縦になっているEの文字も「エム!」と得意げに指差した。Eを右に90度回転させたらmかあ。文字を知らない時代をできるだけ楽しんでほしくて、あまり教えないようにしているけれど、文字に興味を持つ姿はほほえましい。

この一か月の大きな進歩は、パンツが上手にはけるようになったこと。オムツもズボンもこれまではおしりの下で止まって前だけちゃんと上げて「はけた!」つもりになっていることが多かったのだけど、おしりをキュキュッとひねって上まで上げられるようになった。靴下も靴もはけるけれど、ギャラリーが盛り上げてくれないと、「ママやって」となる。「たまちゃん ぜーんぶ おねえちゃん」と宣言したかと思うと「たまちゃん あかちゃん」に舞い戻り、甘えたい度合に合わせて使い分けている。

手先がずいぶん器用になったせいで、いたずらのバリエーションが広がり、粉チーズの穴から汁気のあるパスタを垂らしてチーズを湿らせたり、味噌汁をスプーンで牛乳のコップにせっせと移動したり。椅子に乗って台所の流しをのぞきこむのも大好き。放置されている洗い物が宝の山に見えるようで、たまった水に手を突っ込んで水遊びしている。

人形のぽぽちゃんのお世話をするのが大好きで、わたしが空き箱で作った「ぽぽちゃんのいす」に座らせたり、おむつ替えごっこをしたり。自分のおむつはいまだに取れる気配なく、毎回事後報告。おっぱい卒業の気配もなく、「とんとん はいってるかー?」とノックしてくるのもあいかわらずだけど、「飲んでるかー?」と聞くと、「のんでるよー」と返事するようになった。

2006年11月23日(木)  マタニティオレンジ31 たま3/12才と食育
2003年11月23日(日)  通帳で伝える愛 『まばたき』『父帰る2003』
2002年11月23日(土)  MAKOTO〜ゆく年くる年〜


2008年11月22日(土)  8年目の「いい夫婦の日」

昨日、ダンナから「明日はいい夫婦の日で我々の結婚記念日だから食事に行こう」と電話があり、びっくりした。語呂狙いで2000年11月22日に入籍し、今年で8年になるけれど、そんな気のきいたことを言われたのは初めて。神楽坂にある日仏会館のビストロを予約したという。

昨日から娘はダンナの実家に預けていたので、夫婦二人で出かける。よそ行きの服を着て、軽くメイクもして、デートらしい格好になった。二人だけでじっくり話す時間はなかなか取れないので、乾杯に始まり、前菜、主菜、デザートを食べる間の二時間足らずでも、ずいぶんいろんなことを話した気になった。仕事の話や共通の友人の話をしても結局は子どもの話に戻ってくる。「これは、たまが好きそうだ」「この店なら、たまも連れて来れそうだ」。どういう風の吹き回しかわからないけれど、いい夫婦の日になった。

今日の新聞に、「夫婦関係を漢字一文字で表すと」というコラムがあった。若い世代は「愛」や「幸せ」、年代が上になると「忍」という回答が目立つのだとか。うちはなんだろうとダンナに聞くと「笑」という答え。わたしは、「楽」が思い浮かんだ。若い頃は楽しくて、あうんの呼吸ができてくるにつれてラクになっていく。

2007年11月22日(木)  マタニティオレンジ205 たま15/12才ではじめて歌う
2006年11月22日(水)  何かとめでたい「いい夫婦の日」
2002年11月22日(金)  ザ テレビジョンお正月超特大号


2008年11月19日(水)  美しさを感じる心

家の中がどんどん荒れている。わたしの仕事が忙しいと片付けが追いつかないのは昔からなのだけど、魔の二歳児というちらかし要員が一人増え、加速度的にものがあふれ返り、収拾がつかなくなっている。家中の壁がシール貼り場になり、お絵描き帳になり、粘土が絨毯にへばりつき……どこまで行ってしまうのか、怖いような楽しみなような。客人が来ると突貫大掃除を敢行するのだけど、仕事が立て込んでいると、人を招くどころではなく、掃除の機会もなくなってしまう。

今朝の読売新聞に、「『美』感じる心 育てよう」の見出しで宮大工の小川三夫さんが文化遺産などへの落書きをどうやって防ぐかについて語っていた。「大切なのは、美しさを感じる心をはぐくむことだ。人は美しいと感じたものを傷つけようとはしない」とあるのを共感して読んでいたのだが、そうした心をはぐくむためには「親が身の回りをきれいにして、美しい空間で子どもを育てることが大事」「親が部屋を清潔にしておけば、子供も自然に掃除するようになる」とあり、頭を抱えてしまった。子どもが手当たり次第汚してかかるのは、「ここは汚してはいけないところ」かどうか区別がつかないほど家の中が美しくないからなのかもしれない。ううむ。

2002年11月19日(火)  白い巨塔


2008年11月16日(日)  『七人は僕の恋人』→シブヤさんの結婚パーティ

本田劇場にて大人計画ウーマンリブシリーズ第11弾『七人は僕の恋人』を観る。2005年に観た『七人の恋人』の女優版。阿部サダヲさんがオカマのマタニティビクスインストラクターを演じたり、巨大ウンコに刺さっていたりという衝撃に度肝を抜かれた男性版に比べると、女性版はおとなしめ……と思っていたら、デビューから数十年経ってじいちゃんになってるアイドル・ズッキーを追いかける女たちの話はパワー炸裂。おかしくて、かなしくて、笑った後にしみじみとなった。ズッキー役の池田成志さん、「体は老人、心は青年アイドル」を見事に痛々しく演じていて、さすが。それにしても、「精子たちの会話」(精子役のかぶりもの姿がなんともいえない)とか、宮藤官九郎さん、面白いことを考える。「外の世界に出て、中流で終わりたくない」なんていう精子の悲哀を語らせて、観客にうなずかせてしまうのだから、さすが。

夜は広告会社時代の先輩、シブヤさんの結婚パーティ。相手の女性は出会ったときに同じ職場にいたので、会場は元同僚だらけの同窓会状態。16歳差の結婚について、からかうようなスピーチもあったけれど。新婦は「年の差を感じたことはありません。彼をクリエイターとして尊敬しています」ときっぱり。かっこいい。

年の差とよく言うけれど、長い人類の歴史や長い一生を考えたら、数十年なんて誤差みたいなもの。下手したら運命の人は、ずっと過去やずっと未来に生まれ堕ちているかもしれない。事実、歴史上の人物に本気で惚れて現実に出会う相手に興味を持てない人もいるし、めぐりあえる時代に居合わせただけでもすごいことなんじゃないかしらん。

2007年11月16日(金)  三丘スポーツ史3に『寄り道ブドウ』掲載
2006年11月16日(木)  映画『フラガール』に拍手
2005年11月16日(水)  『天使の卵』ロケ見学3日目 ミラクル

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