2001年12月01日(土)  函館映画祭2 キーワード:これが有名な

これが有名ないくら丼
■小山さんと待ち合わせて、ロケのとき食べそびれた『きくよ食堂』のいくら丼にありつく。カウンターに見覚えのある顔が……と思ったら、警官役で隼人を追いかけていた男の子だった。あおいちゃんの大ファンで、シネマネーの出演者募集に応募し、ロケも映画祭も大阪から自腹で参加しているとか。「今井さんのロケ日記を読んで、こちらのお店に来たんです」と言われる。期待に添えただろうか。わたしは、はじめてこの店でイクラ丼を克服したときほどの感動は味わえなかった。舌が大人になってしまったのかも。


これが有名なイカ飯
■あおいちゃんのメイキングビデオ追加撮りがあるというので、小山さんは大正湯へ。BONI(棒二)デパートでプリンを買い、牛乳おじさんちへ向かう。大町の電停で降りたら、ひとつ先のどつく前が正解だった。少し遠回りしてしまう。おじさんちに着くなり、「手紙送ったのに、ウンともスンとも言ってこねえから、都会の人間は冷てえって話してたんだ」となじられる。「(ビデオプランニングから)礼状は来たけど、隣(駒止保育園)と同じ文面だった」とも愚痴られる。「こうして会いに来たんだから許してよ」と言うと、「そうだな」と目尻を下げた。■「本物を食わしてやる」と運ばれてきたのは、自家製のイカ飯。もともと好物だが、これは今まで食べたどんなイカ飯とも違うおいしさ。とにかく柔らかい。イカと具の米が溶け合うようにひとつになって、米にイカの風味がしっかりしみこんでいる。「また食いに来い」と言われたが、この味のために函館に来るのもいいなと思ってしまった。■おじさん、奥さん、お嬢さんとしばらくお話しする。三人は『居酒屋兆治』にけっこうはっきりと出ているらしい。ロケ現場を通りがかったらスカウトされたのだとか。駒止保育園の前で大泉さんと撮った写真も見せてもらう。「函館に来て、おらと写真撮らないわけにはいかねえって言ってやったんだ。あの有名な大泉洋と並んでも負けてないだろ」と胸を張る。

これが有名なパコダテ人作者
■牛乳おじさんをお借りして、函館観光につきあってもらう。「これが有名なXX寺」「これが有名な外人墓地」。おじさんは、何にでも「有名な」をつける。知り合いだというお寺に上がらせてもらう。庭の木にぎっしり雀がとまっていてビックリ。■おじさんと歩いていて驚かされるのは、その顔の広さと人懐こさ。自転車に立ちはだかってびっくりさせたり、車に手を振ったり、通行人に抱きついたりと忙しい。会う人ごとに「これが有名なパコダテ人を書いた人さ」と紹介してくれる。「ああ、パコダテ人ね」となる人と「パコダテ人?」となる人は半々ぐらい。「知らねえのか? 有名な映画だべ」とおじさんは強気。「誰が出てるの?」と聞かれると、「おらが出てる」。面白すぎる人だ。歩き疲れると「休むべ」と八百屋の中にずかずか入って椅子に腰かけ、「あんたも座れや」と手招きする。ここでも店主やお客さんにパコダテ人を宣伝。この調子だと、函館中に知れ渡る日も遠くなさそう。■函館でいちばん古い現役エレベーターがある建物は、土曜日なので閉館。近くにある五島軒で休憩することに。オムライスとカレーが有名な洋食屋だ。昆布入り函館カレーとロシアンティーというご当地らしいメニューを注文する。■牛乳おじさんと別れ、一旦ロープウェイ山頂へ。誰もいないので、ふたたび麓に下り、西波止場まで歩く。巨大クリスマスツリー点火の瞬間を見ようと、すごい人出だ。フェリシモ郵便局へ行き、クリスマスカードを一通書いて、クリスマスポストに投函する。パコダテ人の冒頭シーンを思わせる、女の子が窓辺で星に願いをかけているイラストに、作品がたくさんの人に届くよう願いを込める。

これが有名なダジャレ監督
■パコダテ人の前に、『まぶだち』が上映された。sWinGmaNに出ていた男の子が主演だというので、ほうかさんと並んで見る。最近あちこちで取り上げられていたので、気になっていた作品。中学生の男の子たちの友情がすがすがしい。『STAND BY ME』をまた観たくなる。■いよいよパコの上映。土曜の夜ということで、今夜の人出はすごかった。階段の下まで続く列を見て、感激する。補助椅子を出しても座りきれず、かなりの立ち見が出る。最後列の後ろに立ち、人で埋め尽くされた客席を見ながら、公開もこうであってほしいと願う。上映ごとに涙する場所が変わるが、今回はエンドロールに泣かされた。「函館市民のみなさん」に連なった名前を数えていると170を超えている。少なくともこれだけの人々が力を貸してくれたのだ、その本人や家族が見に来ているのだと思うと、文字がじわっとにじむのだった。舞台挨拶で、好きなシーンを聞かれて、「屋根の上」と「雨宿り」と答える。今夜は前田さんのギャグが走っていた。「北海道で先行公開し、本州に下りていくわけですか?」と聞かれ、「どう南下わかりません。公開せんと後悔するかも」。ロケ地の金森倉庫の話になると、「すぐ倉庫にありますけど」。作品よりも笑いを取っていた。上映前にやって、客席を和ませておくべきだったかな。■上映後、バーカウンターのある店で映画祭の人たちと飲む。前田監督と『ぱこだて人』シナリオとのキューピットとなったじんのひろあき氏と初めてじっくりお話しする。NHKのオーディオドラマを百八十本以上手がけたと聞いて驚く。テーブルの反対側で『まぶだち』の古廓監督を取材していた函館ラサール高校新聞部の男の子が、「パコダテ人の話を聞かせてください」とメモ片手にやってきた。わたしよりも饒舌に質問に答えるじんの氏。行ってないロケの様子を手に取るように生き生きと話しだしたのには舌を巻いた。卓抜した想像力と創造力。脚本家の真髄を見る。


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