2008年02月07日(木)  映画『歓喜の歌』に感きわまる

今年最初に劇場で観る映画は昨年から観そびれている『続・三丁目の夕日』になるはずだったが、ロングラン上映館もずいぶん減って時間が合わず、『歓喜の歌』が急浮上。昨年観た『しゃべれどもしゃべれども』に続いてNHKの朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』にはまり、わたし史上最高の落語ブームが来ている。立川志の輔の新作落語が原作ということで注目していたら、月刊シナリオに脚本(松岡錠司監督・真辺克彦さんの共同執筆)が掲載されていて、読んでみたところ、これはスクリーンで観なくちゃとなったのだった。

スクリーンで観て大正解! 脚本はもちろん面白く読んだのだけど、出来上がった作品は脚本から想像する以上に面白く、監督の演出のうまさに唸った。音楽の入れ方、小道具の使い方、キャラクターの味つけ、どれもさじ加減が絶妙で心憎くて、うまいとしか言いようがない。ひさしぶりにスクリーンで見る安田成美さんが、今まで見た中でいちばんかわいい、と思ってしまったのだが、キャストが皆生き生きとチャーミングに映画の中で生きていて、それぞれにしっかり感情移入して観れる。小林薫さん演じる主人公のダメダメ小役人ですら「憎めない人」から「愛すべき人」になってしまうのだが、人間の滑稽さをあたたかく見守る視線に落語と通じるものを感じた。

人は皆、毎日振り回されるように生きている。年末ともなるとなおさらだが、この作品が切り取っている12月30日から大晦日の二日間に凝縮された登場人物たちからは、そのリアリティがしっかり感じられた。自分の人生で精一杯の人と人がにっちもさっちもいかない状況に追い込まれ、一つの目標に向かって動き出す。どこにでも転がっていそうな日常の些細な出来事が積み重なり、動きそうにない山を動かしてしまう。そこにはこじつけも無理もなく、気持よく話が転がるに任せていると、いつの間にか奇跡が起こっている。飛び道具を使わずにそれをやってのける物語の展開のうまさにくらくらするような興奮を覚えた。

何度も吹き出し、ところどころでくすくす笑い、ときには大笑いし、ほぼ全編にやにやして観ていたら、ラストで涙が頬を伝ってきて驚いた。さあ泣きなさいとお膳立てされると、これは泣きそうだと予感があって涙を待ち受けるのだが、笑いでネジをゆるめられたところに、本人も気づかないさりげなさで涙が押し出されてしまった。じんわりとあったかい涙を気持ちよく流しながら、ああ、いい映画だったと余韻に浸っていると、クレジットロールの合間にお茶目なエピローグがついている。そこでもまた小道具の使い方に感心させられたが、最後の最後まで観客を楽しませようというサービス精神に脱帽ブラボー、映画はこうでなくっちゃとうれしくなった。

いい映画を観ると、誰かにすすめたくてたまらなくなる。これは誰にすすめようかと思い、浮かんだのが落語好きな母の顔。「小林薫さんの演技好きやわ」とも言っていた。大阪の実家に電話をすると、「ちゃんとリストに入れてあるでえ」。そういえば、母は昔、小学校の音楽の先生だった。安田成美さん演じるママさんコーラスのリーダーも小学校の音楽の先生だったという設定。わたし以上に楽しめるかもしれない。わたしが子どもの頃、母はNHKのラジオでよく落語を聴いていた。噺は断片しか覚えていないが、今わたしが落語を面白がれるのは、ラジオを聴いて笑う母を見た記憶が、根っことなって残っているせいかもしれない。

2007年02月07日(水)  マタニティオレンジ74 子育て中の美容院とエステ
2004年02月07日(土)  二人芝居『動物園物語』


2008年02月06日(水)  『看護』4月号に「玉稿」掲載

日本看護協会出版会の雑誌編集部より寄稿依頼のメールが届いて、日本看護協会の機関誌『看護』を知った。広告会社勤務時代に業界の数だけ機関誌(紙)がある(『日本たばこ新聞』、月刊『砂と砂利』など)ことを学んだが、看護専門の機関誌が存在するのも当然である。届いた見本誌(1月号)を開いてみると、特集もコラムも広告も見事なまでに看護一色。看護というテーマでこれだけ書くことがあるのかと驚かされる。特集のひとつが「看護を社会に発信する」となっていて、「メディアを活用する」(テレビドラマ)という見出しがあり、テレビドラマの看護指導をされている方が「看護の心を伝えたい」と語っている。「現実とフィクションの狭間で……」「ドラマが生む効果」という小見出しからも想像をかきたてられる。放送文化基金のパーティーで知り合って以来親しくしている余語先生も医師の立場からいくつかのドラマをアドバイスされていたが、「フィクションであっても、心をもって誠実に」見せたいとおっしゃっていた。「ドラマの中の医療者」という連載もあり、一脚本家にとっても読みどころ満載である。

前置きが長くなったが、お願いされたのは、「今月のことば」という見開き2ページのコラム。見本誌では、あの『女性の品格』の著者で紅白の審査員もなさった坂東眞理子さんが執筆なさっていて、その3号後にわたくしめが同じ場所に登場させていただいてよろしいのでしょうかと恐縮する。声をかけてくださった編集部の男性は、池袋シネマ振興会のフリーペーパー『buku』に連載中のエッセイ「出張いまいまさこカフェ」で今井雅子を知ってくださったのだという。自分の書いたものの反響を聞くのはうれしいが、読んだ人から次の原稿を依頼されるのは、何よりのほめ言葉だ。

bukuのエッセイは約1,000字だが、今回の依頼はその2倍。1,000字だと勢いで書け、プロットのように1万字クラスだと思いつくまま書きちらせるのだけれど、原稿用紙5枚でまとめるというのは思った以上に大変だった。書いては寝かせて仕上げた原稿をメールで送ると、編集部氏より「玉稿、拝受しました」の返信。あたたかい雰囲気が伝わってきたとのことで、声をかけてくださった期待には応えられたようで安心する。

自分の原稿を「玉稿」と呼ばれたのは初めてで、「玉稿とは何と気持ちのいい言葉か」と舞い上がる。「玉のような赤ちゃん」と同じく「玉のようにすばらしい原稿」という意味だと合点したのだが、新明解国語辞典を引いてみると、「相手から受け取った原稿、の意の尊敬語」とあり、無知を思い知る。以前、とある有名な脚本家の原稿を「国宝です」と受け取るプロデューサーの噂を聞いた。「玉」で「宝」に一歩近づいた気になったのだが、それ以前の問題。「恵存」(保存してくだされば幸いです、の意。自分の書いた書籍などを贈るときに書き添える)も知らなかったし、尊敬したり謙遜したりの語彙が品薄だなあと反省。エッセイの仕事もふえてきたことだし、日本語を使いこなせるよう勉強しなくては。「玉稿(!)」は3月20日発売の4月号に掲載予定。

2007年02月06日(火)  マタニティオレンジ73 ひろくてやわらかい床を求めて
2004年02月06日(金)  ミニ同期会
2002年02月06日(水)  電車にピップエレキバン


2008年02月05日(火)  マタニティオレンジ234 牛乳を飲みたい

好きと嫌いがはっきりしてきて、イヤなことには首を振ってNOの意思表示をするようになった娘のたま。これまではお風呂の時間になると無抵抗だったのに、気分が乗らないうちは動こうとしない。「お風呂に入る時間はアタシが決めるのよ」とばかりに、時間が来ると突然すたすたと風呂場へ向かい、自分から服を脱ごうとする。だんだん「自分」が出てきて面白い。

今日、夕食が終わり、子ども用椅子から下ろすと(椅子も最近は大人用に乗りたがる。子ども用はきゅうくつらしい)、流しまで歩いて行って、背伸びをし、水きり網に洗って伏せてある哺乳瓶のフタ(小さなコップになっている)と牛乳パックに手を伸ばした。そして、左手に持ったコップに、右手に持った牛乳パックを傾け、注ぐ真似をした。「たま、牛乳を飲みたいの?」と聞くと、「ん」とうなずく。早速、右手の空パックを預かり、左手のコップに牛乳を注ぐと、右手を添えてごくごくと飲んだ。牛乳髭をつけたその顔のうれしそうなこと。ほしいものがちゃんと伝わって、手に入ったときの喜びが顔に出ている。外国で言葉が通じて食べ物にありつけたとき、大人だってうれしいもんね。

ビデオを観たいときにはテープを持って機械の前まで行く。おんぶしてほしいときはおんぶひもを、出かけたいときは上着や靴を持ってくる。眠くなったらごろんと横になって床をとんとんたたく。「〜したい」のボキャブラリーがふえると、親も子も楽になる。

2007年02月05日(月)  マタニティオレンジ72 出産ドキュメント
2002年02月05日(火)  3つの日記がつながった


2008年02月04日(月)  マタニティオレンジ233 子守話5「こんにちは さようなら 雪だるま」

道路に積もった雪は朝陽に溶けてしまったけれど、保育園の土の園庭は銀世界。その景色からヒントを得て、今夜の子守話ができた。

子守話5 こんにちは さようなら 雪だるま

雪がたくさんふってつもった つぎの朝 
たまちゃんは 雪だるまをつくりました。
おにぎりみたいに 雪をぎゅぎゅっとかためて まあるくして
大きいまると 小さいまるを ふたつかさねて
石ころの目と 木のえだの口をつけたら
「こんにちは たまちゃん!」
雪だるまが げんきよく はなしかけてきました。
「たまちゃん なにして あそぶ?」と雪だるま。
「雪だるまって みちばたで じっとしているものじゃないの?」
「そんなの つまんない」
たまちゃんは 雪だるまをベビーカーにのっけて 
ほいくえんまでお出かけしました。

ほいくえんのにわは 雪でまっ白。
にちよう日なので ほかには だれもいません。
たまちゃんは 雪だるまをだっこして すべりだいを すべりおりました。
雪だるまは すべりだいがきにいって「もういちど」とせがみます。
なんどもすべりおりているうちに お日さまがたかくのぼり
雪だるまがとけはじめました。
あせをかいたみたいに しずくがぽたぽた。
たまちゃんは すこし小さくなった雪だるまを
いそいでベビーカーにのっけて おうちにかえりました。
そして れいぞうこに ゆきだるまをしまいました。

つぎの日は げつよう日。
ほいくえんへいくたまちゃんが「いってきます」とれいぞうこをあけると
雪だるまも いっしょにいきたいと いいました。
たまちゃんは ほいくえんの日かげのかだんの雪の上に 
雪だるまを そっとおきました。
ここなら すずしいから とけるしんぱいはありません。
「あとで すべりだいで あそぼうね」
そういって たまちゃんは きょうしつにいきました。

たまちゃんが きょうしつであそんでいるあいだに
お日さまがたかくのぼって 日かげだったかだんが 日なたになりました。
ゆきだるまは 少しずつとけて小さくなり 
二だんがさねのアイスクリームぐらいの大きさになり
たまちゃんがむかえにくるまえに ぜんぶとけてしまいました。
水のしずくになったゆきだるまが 土の中にしみこんでいくと
チューリップのきゅうこんが ねむっていました。
はるになったら みどりのめをだして 白い花がさくでしょう。
ふったばかりの雪みたいに まっ白なチューリップの花がさいたら 
たまちゃんは 雪だるまのことをおもいだすかもしれません。

2007年02月04日(日)  マタニティオレンジ71 「鼻からスイカ」伝説
2002年02月04日(月)  福は内


2008年02月03日(日)  雪の日の恵方巻

目が覚めると、窓の外は冷たそうなみぞれまじりの雪。うっすらと積もった道路は雪にアスファルトが透けて灰色になっている。娘のたまは外を指差し、「雪しゅらしゅら(しっくり来る擬態語を探して、この言葉に落ち着いた)」と話しかけながら両手をひらひらさせながら上から下へ動かすと、すぐさま真似をした。「星きらきら」の応用で、あっさり習得。

たまは外へ出たかるけれど、鼻水がひどいし、これで雪の中に出したら一気に風邪を引いてしまいそうなので、窓越しの雪見で我慢。雪が小止みになった夕方、わたし一人で恵方巻を買いに出かける。近所にある大阪鮨の店でハーフを二本。大阪の実家では果敢にも一本を丸かぶりしていたが、ハーフのほうがたしかに手に負える。大阪出身の大将が「切ったりしちゃあ福が逃げる」と得意げに話していたが、一本を半分に切るのは許容範囲か。

コンビニのがんばりで、関東でもすっかり定着した恵方巻。4年前の節分に切った巻き寿司を持って帰った東京人のダンナも、今年は自分から「恵方巻」と言い出した。だが、今年の恵方、南南東を向いて願掛け態勢に入ったわたしの背後で、「これ、どっちから食べるのかな。太いほうからかな」と遠慮なく話しかけてくるところが素人。無言で食べきらないと、ご利益がないのに。「恵方巻に太いほうも細いほうもないよ! ハーフに切るときに包丁の圧力で片方がつぶされただけだよ!」と心の中で叫びながらかぶついていると、「どっちから食べた? ねえ?」。まったく、気が散ってしょうがない。わたしの膝に抱かれたたまは、空気を読んで、神妙な顔つきで恵方巻きに手を添えていた。来年は一緒に丸かぶりできるかな。

2007年02月03日(土)  映画『それでもボクはやってない』と監督インタビュー
2004年02月03日(火)  東北東に向かって食らえ!
2003年02月03日(月)  納豆汁・檜風呂・山葡萄ジュース・きりたんぽ
2002年02月03日(日)  教科書


2008年02月02日(土)  マタニティオレンジ232 ごちそうを人一倍楽しむ方法

昨日の夜、ひさしぶりに外で食事をして、お酒を飲んだ。去年の春から夏にかけて仕事をしたプロデューサー嬢と「一度食事を」と約束していたのが、半年経って実現。わたしを彼女につないでくれたプロデューサー氏もまじえて三人で飲むことになった。

案内されたのは、麻布十番の『』という「うまい魚と野菜で呑める日本料理屋」(リーフレットのコピーより)。間接照明の下で食事をするなんて、いつぶりだろう。外で飲む機会は会社勤めの頃はしょちゅうあったし、フリーになってからもちょくちょくあったけれど、娘が生まれてからはめったにない。メニューを開いてお酒を選ぶことがとても新鮮だったりする。にごり桃酒とにごり柚子酒ですっかりいい気分になり、調子に乗って白ワインも頼んだら、酔っ払いの出来上がり。弱くなったと言おうか、燃費が良くなったと言おうか。

お酒だけじゃなくて、食べ物もしみるようにおいしい。温泉卵のようなとろとろの胡麻豆腐からはじまる和食のコースは上品な関西風の味付けで、来る皿来る皿わたし好み。デザートのフルーツゼリーまで途切れることなく幸せに包まれる。器も盛り付けも運ばれてくるたびにほうと眺めてしまうほど素敵。刺身皿をほんのり照らすのは、薄くむいた大根のスクリーン越しに揺れるキャンドルの炎だったりする。ああ、お皿がいっぱい、それだけでもうれしい。いたずら盛りの一歳児と二人きりの夕食では、おかずもご飯も野菜もいっしょくたにミルフィーユ状に盛った丼に娘の残飯までのっけてかき込んでいる。娘が振り回すスプーンから飛んでくる飯粒を顔で受け、娘が落としたスプーンを拾い(拾うまで「あーあ」とため息を繰り返される)、味わうどころではない。ゆっくりと舌で味を受け止め(普段は特急で通過するところを各駅停車)、とろけて骨抜きになりながら、「味わうとは、舌の滞在時間のこと」というご近所仲間のK夫人の名言を思い出した。

同席したプロデューサー二人も「おいしい」と繰り返していたので、もともとおいしい店なのだろうけれど、わたしが人一倍おいしく味わい、楽しんだ自信はある。ほろ酔いだからできる噂話、ここだけの話もおいしい。わたしの場合、昼は一人で、夜は娘と二人でということが多いので、会話の楽しみという非日常がトッピングされるだけで、ごちそう気分を味わえる。会社を辞めたことと子どもが生まれたことで失ったものをひとつ惜しむとしたら「会食」となるが、Hunger is the best appetizer(空腹は最高の前菜)。飲み会がお祭りになるなら、イベントに飢えるのも悪いことじゃない気がする。

2007年02月02日(金)  マタニティオレンジ70 子連れで江戸東京博物館
2005年02月02日(水)  しましま映画『レーシング・ストライプス』
2003年02月02日(日)  十文字西中学校映画祭
2002年02月02日(土)  歩くとわかること


2008年02月01日(金)  マタニティオレンジ231 たま、ネスカフェの景品に!

昨年暮れのある日、無性に絵が描きたくなった。娘のたまを写真じゃなくて絵で描きとめようと思い立ち、しまってあった画材道具を引っぱり出したところに「絵を描きませんか」と電話が入った。ネスカフェのキャンペーンで、50人のクリエイターがデザインしたマグカップとエコバッグをプレゼントする、そのクリエイターの一人として参加しませんかという。

コピーライター時代に、コンチネンタルミクロネシア航空の広告で理想の旅を募ったときに「応募例」としてイラストを描いたことはあったけれど、「文章を書く」のではなく「絵を描く」仕事が舞い込むなんて、願ってもないこと。「やります!」と飛びついた。

たまをモデルに描くとして、コーヒー気分をどう表現しようかと思案する。ドリンクはもっぱら母乳の乳飲み子とコーヒーをどうやってつなげよう、と考えて、はたと思い出したのが、「お菓子の家」。

たまの11/12才の誕生日に友人のミキさん夫妻が作ってくれたクッキーハウス、あの家にたまがお邪魔するというストーリーはどうだろう。ミキさん夫妻は余った生地で「クッキー人形」も焼いてくれたのだが、その人形をぬいぐるみみたいにたまが小脇に抱えてトコトコ歩いてくる、その後ろにはクッキーがポタポタ落っこちて……という絵が浮かんだ。

そうだ、バッグでは「クッキーを運んでくる」ように見えて、マグカップでは「クッキーを持ち出している」ように見えるように、家とたまの配置を変えてみよう……と下描きをしているうちにアイデアはふくらんで、ひさしぶりに描く絵の線もなめらかになっていった。

背景は、今井雅子のラッキーカラー、イエロー×オレンジ。線画のラインはあたたかみのあるこげ茶色に。できあがったデザインを「どう?」とたまに見せたら、「おーおー」と指差して興奮。色校正のバッグ(布地に印刷した状態のもの)が届いたときも、手に取ってしげしげと眺めていた。自分が描かれているとわかるのか、お菓子の家がおいしそうで喜んでいるのか。わたしもうれしくて、何度も取り出しては飽きずに眺めている。

たまが生まれていなかったら、お菓子の家を贈られることもなかっただろうし、そこに今回の仕事という偶然が重ならなければ、この絵は生まれなかった。縁だなあ、とめぐりあわせの不思議と幸せを感じる。このバッグとカップを手にした人にも、いいことが起こりそうな予感。

「ネスカフェ これでもか コレクション」キャンペーン(通称「これコレ」キャンペーン)は本日から4月25日(金)まで。ポイントマークが付いている「ネスカフェ」および「ネスレ」製品のポイント30点を1口として、どしどしご応募を。1デザインにつき2000名様にプレゼントの太っ腹企画なので、当選確率は高そう。くわしくはキャンペーンサイトにて。今井雅子ページへのコメントも歓迎です。(※キャンペーンサイトは閉鎖しています。2009年7月29日今井記)

2007年02月01日(木)  マタニティオレンジ69 女性は子どもを産むキカイ?
2004年02月01日(日)  東海テレビ『とうちゃんはエジソン』
2002年02月01日(金)  「なつかしの20世紀」タイムスリップグリコ


2008年01月31日(木)  たまった宿題を片づける

昨日から今日にかけてやったこと。
1)年賀状を一通ずつ確認して住所変更を住所録ソフトに打ち込む。ついでにお年玉葉書の当選番号を確認。
2)ドイツに住むペンフレンドのアンネットにクリスマスプレゼントを送る。

1)は思いのほか時間がかかり、半日がかりの作業となった。去年、これを怠ったがために、今年「あて所に尋ねあたりません」と返送された年賀状がかなりの数に。引っ越しても「引っ越しました」とわざわざ記さない人も多いので、一軒ずつ答え合わせすることになる。名前の漢字をずっと間違っていた人に気づいたりして、冷や汗。

お年玉葉書も去年は確認しなかった。昔は切手シートの当たりが百枚につき3枚あり、当選番号が3桁のふるさと小包賞があって、もっと当たりやすかった気がする。お年玉つき葉書じゃない人が多いからか、五百枚ほど来た葉書のうち当選は五枚。もちろん切手シートばかり。

2)は毎年大遅刻。アンネットからのプレゼントが届いてから、「もうそんな時期か」と気づく次第で、年末のあわただしさにかまけて、いつも発送が年明けになる。それでもアンネットの誕生日(たしか1月20日)までには着くように心がけていたのだけれど、今年はそれにも間に合わなかった。近所にあるセンスのいい画材屋で便箋、シール、ポップアップの誕生日カードを、文房具屋でシール、マグネット(寿司、レトロ家電)、極細カラーペン5本組を買い求めた。東急ハンズなどに行けたら、もっと面白いものを見つけられたのだけれど。おまけに、しみチョコや歌舞伎揚げやクリスピーチョコやカップ麺(ワンタン、坦々麺)などのおやつ。取り置いてある包装紙やリボンで包み、箱に詰める。ドイツ語翻訳サイトに手伝ってもらい、「遅くなったけどクリスマスプレゼントと誕生日プレゼント」とカードを書く。そういう手続きを経て、だんだんプレゼントらしくなる気がする。

去年は送料が5000円を超えた記憶があるが、今年は軽く、最初の計量で2130グラム。「2キロまでだと料金がお安くなりますよ」と局員さんに言われ、お菓子一袋と炭石鹸一個を減らした。航空便で2760円。段ボール一面を世界陸上や浮世絵やドラえもんの記念切手で埋め尽くす。お年玉当選葉書で引き換えたばかりの干支切手もシートごと貼りつけた。毎年、切手がいちばん高価な贈りもので、いちばん喜ばれる。

やってしまえば簡単なことで、たまった宿題を片付けた後のように、達成感と爽快感を味わう。「やらなきゃ」の重荷は日が経つほどに重くなるのだから、さっさと片づければいいのに、ついつい後回しにしてしまう。この性格、あらためなければ、と思っているところに、「メルマガの発行が2か月空いています」と発行サイトからメールが来た。「今週中に発行しないと削除します」の警告を受けてあわてて前号を発行してから、もう2か月も経つのかと驚くが、ちょうど今夜最新号を発行する予定だった。ひさしぶりに、新作(でも、ちょっと意外なジャンル)のお知らせ。日付が変わる頃に配信予定なので、それまでに『いまいまさこカフェ通信』に登録していただければ、お届けできるはず。今号を逃すと、次号はまた2か月後!?

2007年01月31日(水)  マタニティオレンジ68 左手に赤ちゃん右手にナン
2005年01月31日(月)  婦人公論『あなたに親友はいますか』
2003年01月31日(金)  トップのシャツ着て職場の洗濯
2002年01月31日(木)  2002年1月のおきらくレシピ


2008年01月30日(水)  マタニティオレンジ230 子守話4「いいにおい」

昨日、娘のたまに晩御飯を食べさせているとき、ご飯粒のついた指をたまが差し出して、「とって」と訴える目をした。わたしの左手はお皿、右手はスプーンでふさがっていたので、口で指をつかまえ、ご飯粒を取った。そのときにひらめいた話が、今夜の子守話になった。わたしに似て食いしんぼなたまは、食べものが出てくる絵本が大好き。音だけでも味わって聞いているようだった。

子守話4 いいにおい

おひるごはんを食べたたまちゃんが あそびに出かけようとすると
「たまちゃん 手をあらってから 行きなさい」とお母さんが言いました。
「いいのいいの。だって 食べものは きたなくないもの」
そう言って、たまちゃんは家をとび出しました。

たまちゃんが元気よく走ってくると、頭の上から声がしました。
「こんにちは、たまちゃん」
「こんにちは、鳥さん」
そのきれいな声は、鳥さんたちでした。
「たまちゃん、とってもいいにおい」
「わたしたちの大好きな お豆のにおい」
鳥さんたちはうたうように言いました。
「そう おひるに 豆のスープを食べたの」とたまちゃん。
見ると、たまちゃんの手には、
豆のつぶの小さなかけらがくっついていました。
「その豆のかけら、くださいな」
と一羽が言うと、他の鳥たちも
「くださいな」「くださいな」と合唱になりました。
「いいよ」とたまちゃんが言うと、鳥さんたちは、
すいーっとおりてきて、たまちゃんの手の上にちょこんととまると、
小さなくちばしをかわるがわるつき出して、豆のかけらをついばみました。
「ああ、おいしいお豆だった」
「ごちそうさま、たまちゃん」
「お礼にうたをうたってあげる」
そう話す鳥さんたちの声が、すっかり楽しいうたになっていました。

鳥さんたちのうたに見送られて、たまちゃんが歩いてくると、
おやおや、ねこの親子が道の真ん中でないています。
子ねこがミャーンミャーンとなくので
お母さんねこも困り果てて ミャーンミャーンとないています。
「こんにちは、ねこさん。どうしたの」
たまちゃんが近づいて声をかけると、子ねこはぴたりとなきやみました。
そして、うれしそうに、たまちゃんの手にぬれたはなを近づけて、
くんくんとにおいをかぎました。
「たまちゃん、お魚のいいにおいがするわね」
とお母さんねこが言いました。
「おひるにお魚を食べたの」とたまちゃん。
指にはお魚の身がほんのちょっぴりくっついています。
「そのお魚、うちのちびちゃんにあげてもいいかしら」
「どうぞどうぞ」とたまちゃんが指をさし出すと、
子ねこは小さな舌でぺろぺろとたまちゃんの指をなめて、
魚の身をきれいに取ってくれました。
すっかりきげんが良くなった子ねこは、ねむくなって、
お母さんねこのおなかに背中をくっつけてまあるくなりました。

ねこさんよかったねとうれしくなって、たまちゃんが歩いてくると、
「わんわん」と犬さんがよびとめました。
「こんにちは、犬さん」
「こんにちは、たまちゃん。ぼくの大好きな肉のにおいがするね」
犬さんがしっぽをふりふり言いました。
「おひるに肉だんごを食べたの」
「肉だんごはぼくが世界でいちばん好きな食べものだよ」
犬さんはうっとりと舌なめずりをしました。
「その指にくっついているかけらを食べただけで、三日間は幸せになれるね」
と犬さんが言うので、たまちゃんは「どうぞ」と指を差し出しました。
犬さんは、ざらざらした舌で、たまちゃんの指をていねいになめました。
指はすっかりきれいになって、肉だんごのにおいまで消えてしまいました。

「たまちゃん、ありがとう。お礼にひみつの場所をおしえてあげるよ」
犬さんが連れていってくれたのは、細い道の先にあるお花畑でした。
たまちゃんがお花をたくさんつんで家に帰ると、
「あら、たまちゃん、いいにおい」とお母さんは大喜び。
「たまちゃんの手にも、お花のにおいがついたわね」
お母さんは、たまちゃんの手をとって、においをかぎました。
「あれ? お花のにおいだけじゃない」とお母さん。
「なんのにおいか、あててみて」とたまちゃん。
お母さんは、はなをくんくんさせながら考えました。
「えーっとね、犬さんと、ねこさんと、それから鳥さん」
「すごい。どうしてわかったの?」とたまちゃんはびっくり。
「ちゃんと手に書いてあるわよ。みんなに手をきれいにしてもらったのね」
たまちゃんは自分の手をじっと見ましたが、何も書いていません。
お母さんって魔法使いみたい、とたまちゃんは思いました。

「さあ、パンがやけたわよ。手をあらってらっしゃい」とお母さん。
たまぢゃんは、石けんで手をごしごし洗ってから、
焼きたてのパンを食べました。
たくさん歩いたから、おなかはぺこぺこです。
夜になって、おふとんに入ってからも、
たまちゃんの手はパンのいいにおいがしました。
たまちゃんは、手がパンになるゆめを見ました。
そのいいにおいをかぎつけて、鳥さんやねこさんや犬さんがやってきて、
たまちゃんの手をむしゃむしゃと食べてしまうゆめでした。

2007年01月30日(火)  作り手の手の内、胸の内。
2002年01月30日(水)  ボケ


2008年01月29日(火)  母の気持ちで……映画『犬と私の10の約束』(脚本協力)

松竹試写室にて3/15公開の映画『犬と私の10の約束』を見る。脚本作りに関わった作品で、わたしが書いたものは、脚本を書くにあたって英語の「犬の10戒(The Ten Commandments)を意訳した「犬との10の約束」が一部採用されて劇中に登場するという形で生き残っている(>>>2007年08月09日(木) ちょこっと関わった『犬と私の10の約束』 )。自分の脚本が使われるのがいちばんうれしいけれど、作品がちゃんと形になり、そこにほんの少しでも自分が関わった痕跡を残せるのもまたうれしい。その作品が愛すべき一本になっていたら、なおさらだ。

映画が描くのは、主人公の斎藤あかりの家に犬のソックスがやってきて去っていく、十年ちょっとの間のできごと。ソックスの一生に寄り添うように物語は進んでいく。わたしが関わったときとはエピソードも人物の性格もだいぶ変わっていて、はじめて知る作品のような新鮮な気持ちで観た。あかりのお母さんを、わたしは「ピーラーとせん抜きを間違えてきゅうりをむく」ような天然ボケのキャラクターとして描いた(その数日前に自分が体験したことをネタにした)けれど、包容力のあるまっとうなお母さんになっていて安心した。出産前、まだ娘がおなかの中にいるときに本作りをしていたのだけれど、当時は母親の気持ちを想像で書いていた。今ならもっと違った母親像を描けただろう。

犬を想う飼い主の気持ちになったり、子を想う母親の気持ちになったり、わたしには身につまされる場面が多かった。わたしが中学生のときにわが家にやってきた犬のトトと過ごした時間も10年ちょっとだったかなあと思い出す。トトは小柄な雑種で、ソックスとは毛が白いところ以外は似つかないのだけれど、ソックスは思い出の中のトトと重なり、あかりは昔のわたしに重なる。たぶん、観る一人一人がスクリーン越しにそれぞれの犬を思い描くのだろう。涙を迫る過剰な演出がない淡々とした描き方は、観る人に想像の余白を空けておいているようにも思える。脳裏に何を思い浮かべるかによって、さまざまな受け止め方ができそうな作品。二つ右隣の男性は「ゆるして〜」と言わんばかりに激しく嗚咽していた。物語と個人的体験がとんでもない化学変化を起こして、感情が爆発してしまった様子。

わたしはしみじみと思い出を振り返り、スクリーンの映像と脳裏の記憶をカットバックさせながら観た。飼いはじめた頃から犬の世界は広がらない(私にはあなたしかいません、が続く)けれど、飼い主の世界はどんどん広がって、人生において犬が占める割合はどんどん小さく軽くなっていく。トトにさびしい思いをさせてしまったかもしれない、最後は親に世話を押しつけてしまった、などと反省と懐かしさがないまぜになって、切なくなった。その一方で、自分はわが子とあと何年一緒にいられるのだろうと考えて、苦しくなる。健康で長生きしても、今は「あなたしかいない」という風にまとわりついてくるわが子が自分の世界を持つようになったら、親は邪魔になっちゃうんだろうなあ。犬にしても、子どもにしても、一緒に過ごせる時間は思っている以上に短い。だから、限りある時間を、目の前の今を、大切にしなくては。そんな素直な気持ちがふわっとこみあげてきた。

懐かしくて絵になる函館の街が舞台だったり、これまた函館が舞台だった『Little DJ』で好演していた福田麻由子さん(田中麗奈さんが演じる主人公あかりの少女時代。たしかによく似てる!)のくるくる変わる表情から目が離せなかったり、衣装がわたし好みだったり(おしゃれすぎる気がしないでもないけど、衣装が変わるたびに「カワイイ」「欲しい」とときめいた)、個人的に楽しめる点も盛りだくさん。犬が苦手なお父さん(豊川悦司)のコミカルな動きにも笑わせてもらった。3月15日(土)より全国公開。

最後のクレジットロールで「脚本協力」に自分の名前を見つけて、あっと驚いた。実は数日前、1月下旬に出る秋元良平さん(『クイール』などのスチールを撮られている写真家)の写真集『犬と私の10の約束』の中で「約束」が使われるにあたり、「訳:今井雅子」の名前を出して、プロフィールに「『犬と私の10の約束』脚本協力」と記します、という電話をプロデューサー氏からもらっていた。本のどこかに小さく入るんだろうなと思っていたら、表紙に「写真 秋元良平」と同じ級数で「訳 川口晴/今井雅子/澤本嘉光」と刻まれていて恐縮したのだが、映画のフィルムにまでクレジットされていたとは。そうと知りせば、年賀状で『子猫の涙』とあわせて宣伝して、「犬猫キャンペーン」ができたのに! 飲み会から手ぶらで帰ったつもりでいたら、脱いだ上着のポケットにプレゼントが忍ばせてあったような、うれしさとドキドキを味わった。(後日、この写真集の装丁を手がけたのが、広告会社時代に席が隣で、誕生日も隣同志で、ネスカフェこれコレにもお隣りの32番で参加していて、『出張いまいまさこカフェ』を連載中のフリーペーパーbukuのデザインも手がけている名久井直子嬢だと知り、さらなるおまけにびっくり!)


『クイール』のビデオや『マリと子犬の物語』の広告に食いついた娘のたまは、わたしのバッグからプレス用パンフを目ざとく見つけて取り出し、「わんわん!」と大興奮。写真のソックスにじゃれついたかと思うと、びりびりと一気に表紙を破いてしまった。一歳児なりの愛情表現なのだろうか。記念に取っておこうなんて親の気持ちはおかまいなし。かわいいけれど世話が焼けて、無邪気ゆえに乱暴で、幼な子って犬みたいだ。「私と気長につきあってください」「言うことをきかないときは、理由があります」……犬との「約束」は、わが子と向き合う教訓にもなる。

2007年01月29日(月)  マタニティオレンジ67 寝返り記念日
2006年01月29日(日)  空想組曲『白い部屋の嘘つきチェリー』
2003年01月29日(水)  清水厚さんと中島博孝さん
2002年01月29日(火)  年輪

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