2002年01月29日(火)  年輪

■メアリーの話をWORDSにアップしたので、今日は彼女のことを思っている。出会った日が九十才の誕生日だったメアリー・ルース・スティーブンソンは、わたしの人生観をいちばん大きく変えた女性だ。ニュージーランドのクライストチャーチからブライトンへ向かうバスで隣の席になり、二時間の道のりの間に友だちになった。彼女は泊まりがけの、わたしは日帰りの一人旅だった。「バスを降りたら、お別れだなあ」と名残り惜しく思っていると、「さあ行きましょうか」と自然に誘われ、帰りのバスが来るまで一緒に過ごすことになった。海岸で貝殻を集めながら、尽きない話を続けた。「明日はここで泳ぐの。かわいい水着なのよ」と言う笑顔がとびきりチャーミングだった。どの本から読もうかしら、夕食は何にしよう、明日晴れますように……。彼女は本当に楽しそうで、きらきらしていて、「誕生日ごとに人生は素晴らしくなる」と笑った。別れ際に、夕日の見えるカフェでお茶をした。ジャムサンドイッチとミルクティー。温い気持ちに包まれたのは、湯気のせいだけではない。「あなたは最高のお客様だから」と当然のように支払い、微笑む彼女こそ、言葉にできないくらい最高だった。あれから十年以上経つ。何度か手紙を交わしたが、わたしが引っ越してしばらくした後に出した手紙には、返事がなかった。メアリーのことを思いだすとき、今も元気でいるだろうかと考え、答えを求めることをやめてしまう。何才になろうと、彼女はかわいいおばあちゃんのままで、毎年あの海辺の小さなコテージで誕生日を祝うのだとおとぎ話のようなことを考えている。

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