2005年03月31日(木)  「またたび」の就職活動生

■就職活動の学生には、できるだけ時間を作って会うようにしている。社会人の先輩としてわたしが伝えられることもあるし、彼らから学べることもある。去年、エンジェル大賞の授賞式で知り合った博報堂の植木さんから「広告業界に就職したい学生に会ってもらえませんか」とメールをもらい、うちの会社にエントリーシートを取りに来たコピーライター志望のK君と会うことに。K君の友人でアートディレクター志望のM君も一緒に会社近くのカフェへ。好奇心旺盛、話題豊富な二人で、気がついたら2時間しゃべっていた。わたしが広告会社での仕事のことやアイデア出しのコツを話す代わりに、彼らも最近気になるCMのことや自分たちのことを話してくれ、「バナナが好き」といった妙なことで盛り上がったりした。大学は違うけど高校時代のサッカー部の同期という二人は、旅するアーティスト集団「またたび」のメンバーで、学生でありながら実にユニークな活動をしている。「またたび」は、熊本県御所浦町での「島まるごとワークショップ」を行う目的で、2003年7月に結成された団体だそうで、猫好きの集団ではなく、「また旅をする」が名前の由来だとか。M君がデザインした黄色い名刺は上下左右につなげると、「またたび」のロゴがつながるようになっていて、「人と人のつながりで生まれる広がり」を見せてくれる。東京と熊本を行き来する旅そのものがアート活動という考え方も面白い。現在は、「トラックの荷台に伝馬船を乗せ、東京から御所浦まで旅しながら、車が停まった所を展示場所にして路上にアートを広げる」という「しましままたたびただいま展」を展開中。わたしに会ったあとで、K君M君は就職活動へのやる気をますますかきたてられたようだが、わたしもいい刺激をもらった。就職する前に自分のやりたいこと、夢中になれるものがちゃんと見えているってすごいと思う。広告業界にぜひ来て欲しい二人とは、またまた、たびたび会いそうな予感。

2004年03月31日(水)  岩村匠さんの本『性別不問。』
2003年03月31日(月)  2003年3月のカフェ日記
2002年03月31日(日)  レーガン大統領と中曽根首相の置き土産
2001年03月31日(土)  2001年3月のおきらくレシピ


2005年03月28日(月)  『ダ・ヴィンチ・コード』で寝不足

■同僚に借りた『ダ・ヴィンチ・コード』(The Da Vinci Code)のおかげで寝不足に。なんて面白いんだーと興奮しながら、ページをめくる手がどんどん速くなり、上下巻を一気に読んでしまった。キリスト教や絵画にまつわる歴史や学説を一本のミステリーにまとめあげた著者ダン・ブラウンの手腕に何より感心する。両親は数学者と宗教音楽家、妻は美術史学者であり画家という環境は、この本を書くために整えられたかのよう。作家業に専念する前は英語教師だったそうで、翻訳であることを忘れさせる読みやすさにも納得。本書には女性を聖なる存在として礼賛する思想が繰り返し登場するが、著者の後書きで母親と妻を有能ですばらしい女性として讃えているのが興味深い。■謎を解く鍵としてアナグラム(綴りの並べ替えで意味の違う語句を作る遊び)がふんだんに盛り込まれているのも、暗号好きにはたまらない。もっと謎解きを楽しみたい人は、著者の公式サイトdanbrown.comUNCOVER THE CODEへ。『DIGITAL FORTRESS』(デジタル要塞?)という別な著書のコンテンツでは、本書に出てきたクリプトグラフィー(暗号書記法)の解読を楽しめる。著書もサイトもサービス精神旺盛。

2003年03月28日(金)  中国千二百公里的旅 干杯編


2005年03月27日(日)  今井家の『いぬのえいが』

■昨日観た映画『いぬのえいが』は、大阪の実家で飼っていた雑種のトトのことを思い出させてくれた。死に目に会わなかったせいか、トトのことを思い出しても悲しくも切なくもならない。ただひたすら笑いがこみあげる。そのせいで地下鉄でもエレベーターの中でもにやけて、きっとまわりの人には気味悪がられていると思うのだが、トトはとにかくどんくさいヤツだった。子犬の頃、自分で自分の足を踏んで、よく転んでいた。散歩に行くと、しょっちゅう視界から消えて、溝に落ちていた。家族で山登りに行ったとき、一人だけ車酔いして、いつまでもゲーゲー吐いて、背中をさすられていた。庭先で野良猫と50cmぐらいの距離で睨み合いになって、逆毛を立てられてすごすごと退散していた。妙にケチ臭くて、誰が横取りするわけでもないのに餌を土に隠していた。なのに、どこに隠したか忘れて、庭中を掘り返し、「犬のくせに、匂いわからんの?」と母に突っ込まれていた。人間と同じものを食べたがり、アイスクリームでおなかを壊した。トトもぬけてたが、牛乳パックに入れたトトのえさを間違って飲んだ父も負けてなかった。トトは家族以外の誰にもなつかず、うちに一か月ホームステイしたブラッド君が唯一の例外だった。家族の誰よりも寒がりで、石油ストーブのまん前に陣取り、白い毛に焦げ目がついてシマシマになっていた。もしも「犬の話を書いてください」という仕事が来たら、トトをモデルにした思いっきり情けない犬を書こうと思う。

2003年03月27日(木)  中国千二百公里的旅 食事編
2002年03月27日(水)  12歳からのペンフレンドと3倍周年


2005年03月26日(土)  映画『いぬのえいが』→舞台『お父さんの恋』

■19日から公開の『いぬのえいが』をシネクイントのモーニングショーで観る。宮崎あおいちゃん出演の最新作。といっても、短編のひとつの主役なので短い間しか観られなかったけれど、一段ときれいになっていた。いぬをめぐる6人の監督のオムニバス作品だが、つながっているものとつながっていないものが混じっていて、不思議な構成。ドッグフードのCMが得意先の意向を聞くうちにどんどんヘンになっていく「CMよ、どこへ行く」というお話は、誇張されているんだけど妙なリアリティがあった。と思ったら、脚本書いている山田慶太さんは電通のクリエイターらしい。2003年のヤングカンヌコンペ日本代表でもある。作品全体からも映画というよりCMっぽい印象を受けた。いぬっていいよキャンペーンのプロモーション映像とも取れる。観ている間、観客はそれぞれが関わったことのある犬のエピソードと作品を重ねていたようで、「ここで泣くの?」というところで号泣している人もいた。わたしは、うちで飼ってたおちゃめな雑種トトのことをひさしぶりに思い出した。
■「渋谷 自然食」で検索して見つけたパルコ近くのBiocafeでヘルシーなお昼を食べ、午後はパルコ劇場でパルコ+サードステージpresents『お父さんの恋 Family Tale』。寝たきりの父(前田吟)をめぐる長女(七瀬なつみ)、次女(菊池麻衣子)、息子(堺雅人)、家政婦(星野真里)、隣人の医者(池田成志)が織り成す家族のおとぎ話。『オードリー』や『新撰組』で気になっていた堺さん、はじめて舞台で観たが、いつまでも聴いていたいほど心地いい声。脚本の中谷まゆみさんは『ウォーターボーイズ』などテレビも書かれているようで、台詞も展開もテンポがいい。演出の板垣恭一さんは『動物園物語』のときにご挨拶した気がする。リアリティの中にあるドラマという感じで、素直に共感でき、楽しめた。

2003年03月26日(水)  中国千二百公里的旅 移動編
2002年03月26日(火)  短編『はじめての白さ』(前田哲クラス)


2005年03月25日(金)  傑作ドイツ映画『グッバイ・レーニン!』

リクエストしたレンタルDVDを自宅に届けてくれるTSUTAYA DISCASの第2便で『天国の日々』と『グッバイ・レーニン!』が届き、『グッバイ・レーニン!』を先に見る。同級生、同僚、家族、映画関係者などあちこちから「面白い!」の声が聞こえてきて、とても気になっていた作品。しかも、東西ドイツ統一の頃のことを描いているというので個人的な興味もあった。統一前の東ドイツに行ったときに意気投合したペンフレンドのアンネットとは統一をはさんで文通を続けていたので、「東から見た西」には親しみを覚えていたりする。東ドイツに行ったのは二十年も前のことだったけれど、はじめての海外旅行だったので何もかもが強烈に印象に残っていて、映画を観ていると「こんな感じだったなあ」と懐かしさが押し寄せた。

この作品は、東西ドイツ統一を極めて日常的な視点からとらえているところが面白い。瓶詰め食品、普段着、壁紙……毎日使うものが微妙にして決定的に違う。選択肢は少ないよりも多いほうがいいし、質は悪いよりも良いほうがいい。なのに、昔の時代に逆行せざるを得ない状況を作ってしまった設定がうまい。さらに、逆行すると見せかけて新たな歴史を作る展開へ持って行き、ある種のおとぎ話に仕立ててしまったところがお見事。台詞も映像も遊びごころいっぱいで、感心することしきり。

2002年03月25日(月)  脚本はどこへ行った?


2005年03月23日(水)  高校生がつくるフリーペーパーanmitsu

■高校生がつくるフリーペーパーanmitsuのvol.4が届いた。anmitsuを知ったのはブレーン・ストーミング・ティーンが出た頃だったと記憶しているが、あちこちの新聞で紹介記事を見かけた。その頃にvol.1が出たのだろう。ティーンによるティーンのための紙面作りというところに、ブレストの世界に通じるものを感じたのだが、同じように目をつけた人たちが「こんな活動をしている高校生がいますよ」と知らせてくれた。本を贈らせてもらったところ感想文が届き、お正月に「編集部で回し読みしています」のお便りとともにvol.3が送られて、はじめて実物を見た。わたしが想像していた高校生の手作り感をいい意味で裏切る、とてもセンスのいい出来栄え。企画や取材や資金繰りは高校生の手によるが、デザインだけはプロのデザイナーに依頼しているとのこと。そして、わたしをうならせたのが文章力。ちょっとしたコメントに書き手の視点が見えて、プロのコピーライターも真っ青。企業の宣伝担当者様、高校生向けのアドバトリアルなんて、この人たちに作らせたら、共感を呼ぶんじゃないでしょうか。vol.4の特集は「ただのノートじゃつまらない」。あんみつシネマは「インドネシアの俳優、ニコラス・サプトラ単独インタビュー」。あんみつ調査隊は「プリン」を食べ比べ、新連載「味のある高校生になりたい!」では卓球会館を訪ねる。モデル・東野翠れんさんのコラムあり、海外高校生事情あり、A3サイズを8つ折りにした表裏16ページは読みごたえたっぷり。フリーといえどもただものじゃありません。

2004年03月23日(火)  ENBUゼミ短編映画『オセロ』
2002年03月23日(土)  インド映画『ミモラ』


2005年03月21日(月)  弘前劇場+ROGO『FRAGMENT F.+2』

STRAYDOGにいた古川康大君から「どうしても観ていただきたい舞台があるんです」と熱い招待を受け、新宿pamplemousseへ。タイトルは『FRAGMENT F.+2』。弘前劇場主宰の長谷川孝治さんが書き、94年初演の『破片』を改訂し、97年に完成した『FRAGMENT』。その脚本を読んで雷に打たれた古川君が仲間の鈴木真君とともに弘前に乗り込み、「これをやらせてくれ」と訴え、弘前劇場+ROGO(古川康大・鈴木真)という形での上演が決まったとのこと。その経緯も熱いが、内容も熱い。舞台は海に近い灼熱のガソリンスタンド。劇中で瓶のコーラを飲み干すシーンが出てくるが、演技ではなく本気でカーッと飲む。渇いている。途中に男女一人ずつが絡んでくるものの基本的には二人芝居で、ガソリンスタンドで働く先輩と後輩の男二人が殴りあうように台詞を吐きあう。言葉の力と役者の力がぶつかり、火花を散らすようなパワーが生まれる。最後まで目が離せなかった。

いつもお芝居を見に行って思うのは、東京には(そして日本中には)なんてたくさんの役者がいて、それぞれに演技を磨き、しのぎを削っているのだろうということ。脚本家もライバルだらけだけれど、役者の層はもっと厚く、熾烈な戦いが繰り広げられている。小さな劇場で熱い舞台を観たときほど、そんなことを思ってしまう。先日、大蔵省君と二人芝居『動物園物語』(2004年2月7日)を演じたサードステージ!の瀬川亮君が今度のNHK連続テレビ小説『ファイト』で、ヒロインが心ひかれていく厩務員役を射止めたと知った。「群馬のキャベツ畑で1年、新潟のスキー場で半年」など住み込みで働き、「玉掛け」「フォークリフト」などの資格・免許を取得しつつ打ち込めるものを探してきたときに第三舞台の公演を観て衝撃を受け、門を叩いたのだとか。演技の世界で生きていたい、自分が何者であるかを見極めたいという熱を迸らせていた今日の出演者も、その手でチャンスをつかみ取って欲しい。

2004年03月21日(日)  アドフェスト4日目
2002年03月21日(木)  「かわいい魔法」をかけられた映画


2005年03月18日(金)  あなたのペンが「愛・地球博」にそびえます。

こないだ『パッチギ!』を観に行って、サトちゃんユキちゃん夫妻のことを思い出した。井筒監督の前作『ゲロッパ!』公開のときに「誰か一緒に行く人いないかなあ」と言ったら「うちのサトちゃんが行きたがってる」と関西人の旦那さんを快く貸し出してくれたのがユキちゃん。話題豊富でいつ会っても楽しい二人だが、サトちゃんの転勤で現在はNYに住んでいる。でも、魅力的な人たちはどこに行っても魅力的な人間関係を築くようで、夫妻がNYで知り合ったという台湾人画家Lin Shih-Pao (林世宝 リン・シィパオ)さんは、話を聞いただけでも「わ、会ってみたい」な人。

1997年にペニー(1セント硬貨)100万枚を集めて、重さ3トンの平和の像を製作。ニューヨークにある国連本部がロビーに展示したいと申し出たものの、作者リンさんの国籍が台湾だったため、常任理事国の中国の反対に遭い、広島大学に創立50周年記念として寄贈された。この像のことは新聞で記事を読んだ記憶があるが、「浮浪者からペニーを寄付してもらったり、寄付してくれる人に郵送代を使わせるのが申し訳ないからって地下鉄で出向いて(当時は1ドル50セントくらい?)取りに行ったりして、時には寄付金より交通費のほうが高かったなんてこともあったみたい。でも、リンさんいわく、そうやって芸術家の”僕”と寄付してくれる”人”が直接交わること自体が、すでにアートの一部なんだって」とユキちゃんが紹介してくれたエピソードに人柄を感じる。

今度の愛知万博「愛・地球博」では、ペンで形造った平和の門を展示することが決定。「ペンは剣より強し」ということらしい。材料となる使用済みペンは一般の人からの寄付を募っているが、「6月までに20万本」の目標にまだまだ満たない(17日現在9万本)。というわけで、サトちゃんユキちゃんファンの一人として、友人リンさんの活動を日本から応援させてもらうことに。勝手につけたキャッチコピーは「あなたのペンが『愛・地球博』にそびえます」。門はリンさんが4月下旬に来日して5月から8月にかけて製作、9月1日〜25日にわたって瀬戸会場内の海上広場にて展示される予定。家に眠っている筆記用具を門の一員に参加させてみようという方、リンさんの活動をもっと知りたい方、www.linshihpao.comへどうぞ。サトちゃんが友情で作ったバイリンガルサイト、よくできていて一見の価値あり。メディアの取材も歓迎しますとのこと。リンさんご本人は、とても純朴で愛せるキャラの人だそう。

2004年03月18日(木)  アドフェスト1日目
2002年03月18日(月)  『風の絨毯』高山ロケ3日目 高山観光


2005年03月16日(水)  春はお茶が飲みたくなる季節

お茶することが何より好きなので一年を問わずお茶が飲みたい季節ではあるのだが、新茶の案内が出回る春は、新しいお茶を試してみたい気持ちに駆られる。レピシエが展開する日本・台湾・中国茶専門店緑碧茶園のお店に行ってみると、春をテーマにした桜や梅のお茶が登場。ネーミングに一目惚れして『春ぽろぽろ』を買ってみる。「グリーンルイボスと日本の緑茶をベースに、フレッシュなラズベリーで香りづけし、紅巧梅の花弁をブレンド」という味は、飲み口すっきり。花粉症対策にレモングラス入り甜茶も。

新茶といえば友人のイラストレーター・ミヤケマイから「セブンイレブンで新茶を予約したら私の湯呑みもらえるよー」と案内が来た。ついに全国キャンペーンのノベルティを手がけることになったか、と嬉しくなって早速予約。頭に湯飲みをのっけたダルマや漢字であしらった「七」と「十一」など、ミヤケマイらしい遊び心が楽しめる『開運湯呑み』は商品と一緒に引渡し。キャンペーンは4/13まで。ミヤケマイの勢いはまだまだ止まりそうにないので、この湯呑みは手に入れておくべし。

お茶の話題をもうひとつ。先月、元同僚(大先輩)で現在はフリーの漫画家、イラストレーター、CMプランナーをされているあしはらたいじさんと飲む機会があり、出身地の熊本日日新聞に連載中という四コマ漫画+コラム『お茶にしましょ』を見せていただいた。落ちがあるようなないような、ほのぼの、まったり系。お茶をするというのは力を抜くということ。

2003年03月16日(日)  Q.生まれ変わったら何になりたい?
2002年03月16日(土)  『風の絨毯』高山ロケ1日目


2005年03月15日(火)  チラシ大好き

■お芝居を観に行って楽しみなのは、折込のチラシ。仕事柄自分がチラシを作る側でもあったりするのでデザインやコピーへの興味はもちろんあるけど、単純に読み物として面白い。裏表で完結するショートショートを読む感覚。わたしは全部目を通して、「あの役者さん、これにも出てる」と発見したり、知り合いの次回作を見つけたりして楽しんでいる。次に観に行くお芝居もチラシで選ぶ。金曜日に行った『絶対王様』の公演は、いつにも増してチラシが多く、厚みにして1センチ以上あった。中身を見てその理由を知る。「絶対王様 笹木彰人より皆様へ」の活字ではじまる手書きのペラによると、「小劇場は宣伝のツールとして『折りこみ』が大きなウェイトを占め」ているがゆえに、希望する劇団さんのチラシをできるだけ断らないようにしてきた結果なのだそう。趣味が合わないチラシはければ席に残してもらえれば絶対王様が処分するが、気に入ったチラシは持ち帰って劇場に足を運んでほしい、と扱い方まで丁寧に書いてあり、「東京には面白くない劇団は星の数ほどありますが、おもしろい劇団もたくさんあります。このたくさんのチラシから新しい出会いが生まれる事を切に希望致します」と結んである。このお断りチラシが今回の一番のヒットだった。■映画のチラシももちろん好きで、中学生の頃は洋画のチラシやパンフやポスターのポストカードを集めていた。ストーリーを一枚で表現するキービジュアルを眺めているのが好きだったし、そこに入っている気のきいたキャッチコピーにも惹かれた。わたしが絵を描いたり広告会社に入ったり脚本を書いたりするようになったはじまりは、チラシだったのかもしれない。

2002年03月15日(金)  月刊公募ガイド


2005年03月13日(日)  宮崎美保子さんの四角い指輪

■猫又短歌の会で知り合った憧れの女性、宮崎美保子さんはジュエリーデザイナーで、T's Collectionというご自身のブランドを展開されている。年に数回自宅で開いているという展示会の案内が届いたので、昨年末の猫又祭の会場にもなった素敵なおうちと美保子さん本人を紹介したくて、ダンナを連れてお邪魔した。ワインとお菓子をいただきながら、アンティークボタンで作った指輪やハートのピアスなどを見せていただく。真っ赤なハートのクッションを見て、「ハート好きなんですよ」と言うと、「あら、わたしもよ」とガラスケースに納めたご自身用のハートコレクションを見せてくれた。美保子さんの指輪は指まわりが「輪」ではなく「スクエア」なのが特長で、指輪ならぬ指角? でも、はめてみると、指にしっくり。一目惚れしたキラキラアメジストの指輪をホワイトデーにかこつけてダンナに買わせる。誕生石だし、ちょうどいい。婚約指輪も結婚指輪もないんですよ、と言うと、美保子さんは「まあ、じゃあ、これからますますいいことがありますように」。こんな風に年を重ねたいというお手本のような美保子さんの作品ということが、わたしにとっては何より価値あること。


2005年03月12日(土)  しみじみ映画『きみに読む物語』

■『きみに読む物語』を新宿ピカデリーでようやく観る。チラシに一目惚れして「絶対観る!」と決めていたのだが、混雑がちょっと治まるまで先延ばしにしていた。2月5日の公開からひと月以上経つが、予告が始まったときには満席。若い頃の二人がキラキラしていて、惹きつけられる。とくに彼女アリーの表情はずっと観ていたいぐらい魅力的。着ている服と靴(足首でリボンを結ぶハイヒール)を観ているのも楽しくて、着替えるたびに、素敵だなあとため息がこぼれた。景色も音楽も台詞も美しいわたし好みのラブストーリーだったけれど、なぜだろう、泣ける映画にならなかった。老いてからの二人にあまり感情移入できなかったせいだろうか。たった一人を愛し抜く素晴らしさよりも、どんなに理想的なカップルもいつかは老いを迎えるという哀しさを受け止めてしまったのかもしれない。小説で読んでいれば、自分に都合のいい美しい老夫婦を思い描くのだろうけれど、スクリーンではそうはいかない。「あなたの大切な人と観て下さい」のキャッチコピーに乗せられてダンナを連れて行ったが、観終わったダンナとはラブラブではなくしみじみとしてしまった。

2004年03月12日(金)  『ジェニファ』マスコミ試写開始
2002年03月12日(火)  FOODEX


2005年03月11日(金)  絶対王様公演『やわらかい脚立』

絶対王様』というインパクトのある名前が気になっていたが、結成して11年になるという劇団の公演をようやく観る機会に恵まれた。一緒に見に行った女優・鈴木薫いわく「役者仲間の間でも、見る価値あるって評判なんですよ」とのこと。広々とした新宿・紀伊國屋サザンシアターはほとんど埋まっていて、固定客のファンがついているのかも。

幕が開く前にまずテーマ曲講座。「クラシック音楽の普及に前向きに真面目に取り組んでいる」のだそうで、今回の『やわらかい脚立〜あなた、存在する意味がありませんよ〜』のメインテーマはチャイコフスキー作曲の『ロミオとジュリエット』。続いて、アンケートに答えた人の中から抽選で当たる賞品の紹介。時計やピアスやアロハシャツなど、なかなか豪華。もちろん説明の口上でも笑いを取る。幕が開くと、ひと芝居あった後で、スクリーンにビジュアル入りクレジットロールが映画のごとく流れる。「寝るとわけわかりませんよ」という字幕の脅しもおちゃめ。実際には次々といろんなことが起こるので、眠くなるヒマもスキもなし。台詞はテンポよくノリよくボケと突っ込みも小気味よく、わたしはけっこう笑えた。

出演は絶対王様のメンバー7人(作・演出の笹木彰人さん、有川マコトさん、菜葉菜さん、入山宏一さん、加治木均さん、郡司明剛さん、小橋川健治さん)の他に5人がゲスト出演。こないだの『Brains』での怪演が記憶に新しいbird's-eye viewの杉浦理史さん、*pnish*(チラシいわく人気イケメンユニット)のリーダー佐野大樹さん、Chintao Records所属の山中崇さん、東京スウィカ主宰の吉田羊さん、そして、ひきこもり青年役が印象的だった中泉英雄さんは映画でも活躍されているそう。

チラシには「人は誰からも必要とされないと存在する意味がないのか?をテーマにした絶望喜劇演劇」とあるが、タイトルの『やわらかい脚立』が「必要とされないもの」の象徴として最初と最後に出てくる。しっかりしてなきゃ使い物にならない脚立だが、ラストではちょっぴり役に立つ使い道が見つかって、その終わり方に救われた。モノもヒトも誰かに必要とされてこそ存在する意味があるわけで、見方を変えれば、何かや誰かを必要とすることは優しさでもある。

2004年03月11日(木)  岩村匠さんと再会
2002年03月11日(月)  漫画『軍鶏』


2005年03月10日(木)  おうちでDVDレンタル『TSUTAYA DISCAS』

■最近仕事をしているプロデューサーに「今井さんは本当に映画を観ていませんね」と呆れられている。あまりに作品を知らないので、「あの作品のあのシーン」と言われても「はあ?」となり、話が通じない、噛みあわない。「先ほどの『フェリーニの道』ってのは、どこにあるんですか」「どこって……TSUTAYAとかに行けばありますよ」。フェリーニは外国の地名ではなく、イタリアが生んだ20世紀最大の映画監督と言われるフェデリコ・フェリーニのこと。■勉強不足を痛感している矢先に届いたのが、TSUTAYA DISCASのDM。予約リストに登録したレンタルDVDを宅配してくれるサービスで、返却は同梱された返信用封筒に入れてポストに投函。わたしが入ったのは月額基本料1344円で、1回2枚を月に2回、計4枚借りられるコース。貸し出し期間は決められていないので延滞料金はないかわり、返さないと次のものが送られてこない仕組み。一本あたりで割ると少々割高だが、店へ足を運び、目当ての作品を探す時間を省けるのがありがたい。もちろん棚を見ながら選ぶのも楽しいのだけれど、本やDVDをamazonで買うようになったのに続いて、DVDレンタルもオンラインに走ってしまった。入会したからには大阪人の元取り根性で毎月4枚しっかり借りるぞ、となるはずなので、一年後には48本観ているはず。

2002年03月10日(日)  循環


2005年03月06日(日)  傑作韓国映画『大統領の理髪師』

■東京では渋谷bunkamuraル・シネマでの単館上映ながら、「いい!」という評判をやたらと耳にする『大統領の理髪師』を観る。観ている間も、観終わっても、「傑作!」と何度も言いたくなる作品。これまで映画で描かれることがタブーとされていた韓国の圧制時代を、フィクションと言いつつ史実を踏まえ、なおかつ理髪師の家族の物語として描いたことで、歴史映画でありながらヒューマンドラマという絶妙なバランスが成立。ユーモアのまぶし方、中だるみのない展開、台詞回しも実にお見事。子どもの拷問シーンの描き方もギリギリのうまい表現だった。理髪師役のソン・ガンホは『JSA』でも『シュリ』でも存在感が際立っていたけど、表情で台詞を語れてしまうすごい役者さん。何たる引力。

2002年03月06日(水)  家族


2005年03月05日(土)  Uzさんの新ユニット『croon』

■同僚Okさんの大学時代からの友人という作曲家のUzさんを紹介されたのは、去年の今ごろ。以来、ときどき三人で集まっては昼を食べながら音楽のことや広告のことやそれぞれが興味を持っていることを話す「パワーランチ」と開いている。たまにカレーが食べたくなるような感じで、しばらく間が開くと、「そろそろパワーランチやりますか」と誰かが声をかけ、集まる。昨日のランチは、Uzさんの新ユニット『croon』の1st content『pain』をおさめたコンピレーションアルバム『NEO GENERATION Vol.2』が先月26日に発売されたことにかこつけて開催。ユニット話に始まり、htmi講座(講師はわたし)、UKロックについての解説(解説者はOkさん)、Uzさんが俳句について語り、わたしが猫又短歌の話をし、Okさんが最近やった結婚パーティーでの出し物の報告をし、いつものことながら話題が尽きない。CDは早速会社のPCで流しながら仕事。友人の本を買うことはよくあるけど、考えてみたらCDって初めてで、なんだかうれしい。

2004年10月26日 ジュアールティー1年分
2004年5月3日 渋谷川ルネッサンス

2002年03月05日(火)  情熱


2005年03月04日(金)  押忍、ひさしぶりの総会っす。

■今週は「押忍」な一週間となった。月曜日の朝、「押忍、本日より東京渉外に来ておりまして、先輩と交流する時間を持ちたいのですが、今日のお昼はいかがでしょう」と電話が入り、学ラン姿の若い現役学生たちと食事。彼らはわたしより10ン年も下の応援団の後輩君たちだが、先輩のわたしのことは予習してあり、飽きさせないように話題をふってくる。最近の若者は言葉遣いがなってないとか礼儀ができてないという声もあるが、応援団員に限っては、しっかり叩き込まれている。わたしの場合、大学で学んだことで社会人になって重宝しているのは、応援団で体を張って学んだことばかり。初対面のおじさんといかに話を長続きさせるか、酒の席をいかに盛り上げるか、面倒くさい作業の中にいかに楽しみを見出すか。不可能を可能にするのは気合とチームワークだということも、団の活動から学んだ。ちなみに「渉外」というのは企業に飛び込み営業をかけて、団の機関誌である「団誌」に広告を掲載してもらうという「広告取り」のこと。わたしは現役時代、大阪渉外を3回やったが、門前払いを食らったり、お説教されたり、愚痴られたりとけっこう大変な思いをした。でも、その後広告会社に就職することになり、この経験が大いに役に立った。広告とメディアの仕組み、営業の厳しさを社会に出る前に身をもってお勉強していたのである。■今日は東京渉外に来ている現役部員の歓迎を兼ねて、年に一度の東京総会。わたしはずいぶん長い間ごぶさたしていたが、ひさしぶりに顔を出してみると、刺激的で面白かった。記念講演は無限責任(無責任ではない)中間法人『アクティブ ケア アンド サポート(略称ACS)』を立ち上げた小池一歩(はじめ)先輩。団関係の集まりがあると明るく声をかけてくださる大好きな人。ACSの事業内容は、福祉施設を客観的に評価し、職員の意識高揚や提供サービスの内容と質の向上につなげる「第三者評価」、同評価のシステム構築支援のほか、福祉サービス施設の運営コンサルタント、福祉サービス従事者の教育・訓練、ISO品質・環境・安全マネジメントシステムの構築支援に及ぶ。真摯に取り組んでおられる姿は話しぶりから伝わるが、まだまだPR不足とのこと。小池先輩のようなあたたかい心の持ち主が日本の福祉を少しでも良くしていってくれたらと願う。■乾杯の後は食事と歓談。出席者は現役5人とOB23名。女性はわたしの他に昭和50年卒団のチアリーダー部の大先輩(当時はバトン部といった)が2人。「上の子が今月結婚する」「孫が生まれた」という両先輩は、とても若々しくてチャーミング。わたしもこんな風に年を重ねて大後輩に「若いですねえ」と言わせたい。宴もたけなわ、現役部員のミニ演舞で締めくくり。気合の入った動きは、いつ見ても気持ちいい。わたしの結婚式のときの演舞は今でも「あれはすごかった」と会社で語り草になっている。その話をして、「自分が結婚するときに演舞できるように、応援団を続けてね」と現役君に言ったら、「先輩も踊られたんですか。それは面白そうですね」。いえいえ、笑い取るために踊ったんじゃなくて……今のわたしからは、マジに踊る姿は想像できないのだろうか。

2002年03月04日(月)  感想


2005年03月03日(木)  南イタリア魚介料理『ラ・スコラーレ』

■気に入った店にはつい足が向いてしまう。いいお店は誰かに教えたくなるから、相手を変えて何度も足を運ぶことになる。1500円ランチをはじめたフレンチレストラン『KANSEI』にはこの2週間に立て続けに3回行った。今週火曜日に同僚のH嬢に連れて行ってもらった南イタリア魚介料理レストラン『ラ・スコリエーラ』は、雰囲気と心意気といい料理といい今まで知らなかったのが惜しまれるお店。早速訪ねたサイトがこれまた素敵。こだわりと情熱を一皿一皿に込める姿勢が伝わってきて、毎日でも通いたくなる。中1日空けた今日、同僚G嬢を誘って再来店。大きなガラス窓から光が降り注ぐ店内は、束の間の南イタリア気分を味わわせてくれる。1200円のランチには野菜不足が解消できてドレッシングも充実のサラダバー、お店で毎朝焼き上げる自家製パン、パスタまたは魚料理、食後の飲み物とちょっとした甘いものがつく。こないだはクッキーだったけど、今日は「ひな祭りなので」とあられを出してくるのも心憎い。わたしにとってありがたいのは、会社が半額持ちで社員に配る食券(正式名はバークレー・バウチャー)が使えること。「夜はさらにモチベーション高いんで、ぜひ」とウェイターさん。今度は夜来ようね、と同僚たちと話している。

2002年03月03日(日)  文京区のスポーツクラブ


2005年03月02日(水)  昭和十六年の教科書

■昭和三年生まれのお医者さんの余語先生と四年生まれのT氏の同級生コンビがわたしの職場近くでお芝居を観るというので、その前にお昼をごちそうになる。昨日行ったラ・スコラーレの手前にある北京宮廷料理『涵梅舫』は中国の元宮廷料理人が腕をふるい、本場の宮廷料理を食べられるお店。夜は満漢全席50000円の高級店だが、昼は1000円で味わえるのでおすすめ。テーブルに所狭しと並ぶ料理を分け合いながら、あっちこっちに話は飛ぶ。今月19日にFMシアターで放送される『昭和八十年のラヂオ少年』には大正十四年生まれの少年が登場するが、その四年後、五年後生まれの余語先生とT氏には、脚本を書くにあたって少年時代の貴重な話を聞かせていただいた。「昭和十四年からはちょっと時間が経つんですが、縁の下からこんなものを見つけました」とT氏が取り出したのは、なんと昭和十六年にT氏が使っていた国語と歴史の教本(教科書)。「ご興味ありますか?」と聞かれ、「あります、あります」と興奮してしまう。歳月に色あせているものの保存状態は良好。ところどころに押し花を挟んであり、朝顔の色が移ってしまったり、落ち葉だらけのページがあったりするのは、いかにもT氏らしい。60年経った今、T氏は草花を中心に絵を描いている。その一枚をいただいた。渦巻きアンテナのような模様が入っているのは「仏教大好きのしるし」だそうで、熱心な仏教徒のT氏は、ご自身の絵を通して仏の教えを広めたいとのこと。そういえば、余語先生はクリスチャンだが、仏様と神様の違いはあっても二人のよりどころとする信念には重なるところが多い。わたしは宗教には縁がないけれど、いつも刺激をくれる年の離れた友人たちに感謝している。

2002年03月02日(土)  手づくり


2005年03月01日(火)  ビューラー巻き巻きに挟み撃ちされる

■なぜその場所でそういうことをしたのかわからないが、うら若き学生の頃、研究室の共用机の傍らに突っ立ってビューラーでまつ毛を巻いていたら、同じ研究室のヤマシタ君が「うわっ、なな何やってるん?」とギョッとした声を上げた。ビューラーというものを見たことがなかった彼は、金属を目元に当てる姿がとても奇異で恐ろしいものに映ったらしい。「人前でまつ毛を巻くとびっくりされる」ことを学んだわたしは、以来、いきなりビューラーを取り出すことはしなくなった。■そんなことを思い出したのは、今朝の通勤電車の中で「いきなりビューラー」に挟み撃ちされたから。駅のベンチや車内でお化粧している人はよく見かけるが、両脇をビューラーで固められたのは初めてのことだった。まず、左側に座ったOL嬢がポーチからミラーとビューラーを取り出し、巻き始めた。続いて、右側に座ったロックがんがん音漏れ娘が巻き出した。ロック娘は仕上げだけと見えて、さっさと満足してビューラーをしまったが、OL嬢のほうは実に念入り。根元から毛先にかけて5回ずつギュッギュッとくせをつけること左右5セット。下地を塗ってさらに5セット。マスカラを塗ってダメ押しの5セット。今まで気づかなかったのだが、ビューラーがまつ毛をはさんだときのギュッという音は至近距離で聞くとけっこう耳障り。他の乗客は気にしていない様子だったが、挟み撃ちに遭ったわたしは落ち着かない数分間を過ごしながら、東京版ヤマシタ君が「うわっ、なな何やってるん?」と突っ込んでくれないかなと思っていた。

2002年03月01日(金)  『たまねぎや』と『サムラート』

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