2008年09月08日(月)  マタニティオレンジ331 おばけごっこ トンネルごっこ

2才児の遊びにも流行り廃りがあり、娘のたまの最近のブームは「おばけごっこ」と「トンネルごっこ」。「おばけごっこ、る!」と「トンネルごっこ、る!」とせがみ、親にシーツをかぶらせおばけ役をさせたり、足を上げてトンネルを作らせたり。保育園で今はやっている遊びらしい。

「おばけ こわーい」と言いながら笑顔で歓声を上げるさまは、怖くないおばけ屋敷ではしゃぐギャルのよう。トンネルをくぐるのは、何がそんなにおもしろいのか、飽きることなく何度もくぐる。パパとママの二連トンネルや壁に片足をつけての大型トンネルなど、トンネルにバリエーションをつけると、ますます遊びは終わらなくなる。たいていお風呂上がりに「る!」と言い出し、夜中にかけて調子づいてしまうので、寝るのが遅くなる。でも、昼間は保育園に預けっぱなしでかまってあげられないしとつい甘くなってつきあってしまう。

2007年09月08日(土)  対岸のタクシー
2006年09月08日(金)  マタニティオレンジ4 男の子か女の子か?
2005年09月08日(木)  文芸社パンフレットの取材
2004年09月08日(水)  東銀座の『台湾海鮮』
2003年09月08日(月)  「すて奥」作戦


2008年09月07日(日)  出張いまいまさこカフェ9杯目「映画祭審査員は五人五色」

池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuに連載中のエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の9杯目を書く。今回は「映画祭審査員は五人五色」と題して、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の話題。白熱した審査の模様などを綴った。7月下旬に開催された映画祭から、あっという間にひと月半。知り合った皆さんはどうしているだろう。それぞれの国で新作に取り組まれているだろうか。映画のマグマがたぎっていた祭りの熱気が懐かしい。

2007年09月07日(金) マタニティオレンジ172 『パパは神様じゃない』
2006年09月07日(木)  マタニティオレンジ3 「食事のおいしい産院」で産みたい!
2004年09月07日(火)  韓国のカメラマン Youngho KWONさん


2008年09月06日(土)  マタニティオレンジ330  『ちょうちょう』熱唱! はじめてのカラオケ

ダンナが仕事でお世話になっているS氏のお宅を一家で訪問。先日ダンナとS氏が飲んでいたときに酔った勢いでわたしに電話をかけてきて、「うちのマンションのカラオケルームに来てくださいよ。とにかくすごいから」と熱っぽく勧誘されたのに乗った。マンションのすごいカラオケルームってどんなだろと想像がつかないまま高層マンションの高速エレベーターで最上階へ。階数表示は50階を越えていた記憶。一歩中に足を踏み入れると,思わず「おおっ」と感嘆のため息。壁一面のガラス窓から見はるかすビューの見事なこと。まさに天空のステージ。こんなところで歌ったらさぞ気持ちよかろう。

でもカラオケはとんとごぶさたで、何を歌えばいいのやら。娘のたまも一緒に楽しめる童謡なんか入ってるかしらんとブックを開けば、これまた窓外の景色に張り合うような充実のラインナップ。一曲目に『ちょうちょう』を入れ、たまにマイクを握らせると、小さな口にマイクの先が入り、なめるような格好に。マイクを見るのもつかむのも初めてで、扱い方がわからない。それでも歌の最後のほうにはほどよい距離を開けてマイクに声を乗せることを覚えた。

『ちょうちょう』は普段口ずさんでいるテンポより少々早めで曲に遅れがちだったけれど、2曲目の『ぞうさん』はのんびりペースでうまくメロディに乗れた。S氏の愛娘、4年生のミドリちゃんは、お姉さんらしくたまを温かく見守りながらときどき唱和してくれる。「よーし、こうなったら、今日は童謡縛りだ」とS氏。『いぬのおまわりさん』『おもちゃのチャチャチャ』『ぶんぶんぶん』と片っ端から童謡を入れて行く。2曲100円の設定なのだけど、童謡は短いのであっという間に終わり、コストパフォーマンスはよろしくない。「そうだ、『ポニョ』はどうだ?」とS氏。新譜で入荷したポニョを皆で熱唱。たまも大喜びで歌いながら踊る。「ポニョは長いな」と気に入り、童謡を数曲はさんで、またポニョで締めた。

その後、エレベーターで数十階下りてS氏宅で夕食をごちそうになる。面倒見のいいミドリちゃんにお風呂まで入れてもらい、たまはゴキゲン。親子でたいへん楽しい時間を過ごさせてもらった。たまにとっては初めてのカラオケの印象が強烈だったようで、帰り道もにぎりこぶしをマイクにして「ちょうちょ〜」と歌っていた。

2007年09月06日(木)  マタニティオレンジ171 苦し紛れの雨カバー
2006年09月06日(水)  マタニティオレンジ2 着たいがない!
2004年09月06日(月)  シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?
2002年09月06日(金)  ミナの誕生日


2008年09月05日(金)  アテプリスペシャルがDVDに!

4月に放映された『アテンションプリーズスペシャル〜オーストラリア・シドニー編〜』がDVDになることを知ったのは、数週間前。偶然ネットを渡り歩いているときに「9月17日発売」の情報を見つけた。DVD化が決まりましたという知らせがなかなか来ないので、今回はしないのかなあと諦めもよぎっていただけに、なんだ,知らなかっただけかと喜んだ。

そして今日、完成したDVDが到着。タイトル以外は文字情報を拝し、美咲洋子のキラリンとした笑顔だけのいさぎよい紙箱パッケージの中に、ケース入りDVDとオマケのミニ下敷き(?)。ドラマの放送や映画の公開には、心弾むお祭りのような華やかなうれしさがあるのだけど、手に取れるグッズになって帰ってきてくれるのは、抱きしめていとおしむようなしみじみとしたうれしさがある。4か月間の短期決戦で打ち合わせとホン直しを重ねた怒濤の日々までいとおしく思えてきて、手をかけた分だけ作品に親孝行されたときの感激もひとしお。

2007年09月05日(水)  モランボンの鍋ソング 
2006年09月05日(火)  マタニティオレンジ1 マタニティブルーの逆は?
2005年09月05日(月)  あたり前田のクラッカーと551蓬莱
2004年09月05日(日)  映画女優 高峰秀子『チョコレートと兵隊』


2008年09月04日(木)  佐瀬寿一さんと『はだしになって』

『およげ!たいやきくん』『パタパタママ』といえば、わたしが子ども時代に最もよく歌ったベストテンに入る思い出の歌。その作曲を手がけた佐瀬寿一さんが、わたしの書いた歌詞にメロディをつけてくさった。広告会社時代の大先輩、濱田哲二さんがコーディネイターと佐瀬さんとともに「チャイルド・オアシス・ソング」というプロジェクトを立ち上げた縁で、「今井も何か書いてみない?」と声をかけていただいたのだった。4月に歌詞を2つ送って、

>>>2008年4月16日マタニティオレンジ269 『およげ!たいやきくん』作曲家が贈る新しい童謡

待つこと4か月あまり、一案目の『はだしになって』のデモが完成。それを聴きながら打ち合わせしましょうとなり、高円寺にある濱田さんの「ギャラリー工(こう)」で佐瀬さんにお目にかかった。『およげ!たいやきくん』に至っては、子ども会で劇までやった(あの歌をお芝居に膨らませたのは、うちの母だったか?)ので、わたしの思い入れはただものではない。住宅街の突き当たりの道で通し稽古をした30年前のことを話しながら、あの歌の作曲家に会う日がいつか来るなんて考えもしなかったなあと不思議な気持ちと感激がこみあげた。

デモはちょっぴりとぼけた味わいの明るい曲調で、一度聴いたら口ずさめる親しみやすさ。わたしの書いた歌詞の3分の2ほどの分量のメロディになっていて、「これぐらいが歌いやすいと思うんですよ」と佐瀬さん。以前もある人に「君の歌詞はいろんなことを盛り込み過ぎ」と指摘されたことがあったけれど、シンプルにひとつのイメージを伝えることを心がけて言葉を選ばなくてはとあらためて感じた。

他にも「意味はよくわからなくても擬態語や擬音語のような言葉だけで遊ぶフレーズがあってもいい」「一番が春、二番が夏、三番が秋となってるけど、せっかくだから四番の冬まで作ってみては」などとアドバイスをいただく。冬に外ではだしになるのって、どんな場面でしょうねえ。温泉の足湯とか?などと雑談。いただいたデモを聴きながら歌詞を練ることに。

作詞作曲の世界では、CMなどを除いては通常ギャラはなく、印税(著作権料)が作詞料、作曲料となるのだとか。脚本料に加えて著作権二次使用料が入る脚本家とは勝手が違うけれど、そのかわり、売り上げに占める印税のパーセンテージは大きい。「この歌が形になったときはJASRACに入ったほうがいいですよ」と佐瀬さん。加入するときに5万ほどまとまった金額が必要だけれど、年会費のようなものはいらないとのこと。

2007年09月04日(火)  愛すべき映画『Little DJ〜小さな恋の物語』
2004年09月04日(土)  文京ふるさと歴史館
2002年09月04日(水)  暑い日の鍋


2008年09月03日(水)  マタニティオレンジ329 アンパンマンがミッキーのおうちへ行く話

昨日と一昨日、仕事で帰りが遅くなり、娘のたまに淋しい思いをさせた。玄関を向いて座り、「ママ くる?」と帰りを待っていたという。今日、保育園へ送りに行ったときに「きょうは ママ(がお迎え)?」と聞かれたので、いつもより30分ほどだけど早く迎えに行ってから思いっきり甘えさせることにした。散歩して、絵本を読んで、ごはんを食べて、買い物ごっこをして、お風呂でお絵描きして、娘と一緒にたくさん笑った。

寝る前にひさしぶりに子守話を聞かせてあげようと思って、「何の話しよっか?」と聞いた。たいてい「ワニ」「ゾウ」などと動物の名前が挙がって、「ワニが何する話?」と突っ込んで聞くと、「ダンス」などと答えてくるのだけど、今日の返事は「アンパンマン」。「アンパンマンが何する話?」と聞くと、「ミッキーのおうち」。キャラクターの強さに自分のオリジナリティが負けた気がして、娘がちょっと遠くへ行ってしまったような淋しさを覚えた。娘と遊んであげているようで、わたしも遊んでもらっていて、娘が喜んでくれると思って差し出したものを受け取ってもらえなかったり、他のものがいいと言われたりすると、すねてしまう。

「今日ね、ショックなことがあったんだよ」とダンナに話したら、「別にいいんじゃないの?」とクールな返事。「たまにとってはアンパンマンもミッキーも動物もみんな友だちなんじゃない?」。アンパンマンがミッキーマウスの家を訪ねたら、そこにワニやゾウがいたっていい。その垣根のなさをわたしも面白がればいいのか。たまの世界が広くなったのに合わせて、わたしの作る物語も広がればいいだけの話。ゴムみたいに自由に伸び縮みして形を変える、子どもの発想みたいに。

子守話24 ころころニャーン

ニャーンちゃんと たまちゃん なにしてあそぼ。
ボールごっこして あそぼ。
でもボールがないよ。ボールになって あそぼ。
からだをくるんとまるめて さかみち ころころ。
すべりだい とんとんのぼって すべって ころころ。
どこまでいくの あれあれ とまらない。
ころころ ころころ うみまでころがって こどもたちに つかまった。
ボールになった ニャーンちゃんとたまちゃん
みぎにころころ ひだりにころころ なげられてころころ。
とうとう うみに ざっぶーん。
びしょびしょボールの ニャーンちゃんとたまちゃん
かえりみちは おもたくなって ごろごろ ごろごろ。

2007年09月03日(月)  お金を恵むのではなく
2004年09月03日(金)  下高井戸シネマで『Big Fish』


2008年09月02日(火)  マタニティオレンジ328 買い物ごっこ

牛乳を買いに行こう、と娘のたまを誘ったら、「おかね ちょうだいな」と小さな手を差し出された。買い物は今、たまにとって、ちょっとしたブーム。日曜日の夜、いきなり「コロッケ ちょうだいな」とわたしをお店の人に見立てて話しかけてきた。「お店入ってくるところからやってよ」とわたしが言うと、「がらがらがら」と言いながらドアを開ける仕草がつき、買い物ごっこが始まった。

「コロッケいくつ?」と聞くと、ニコニコしながら「うん」。もう一度聞いても同じ。何言われてるんだかわからないけど愛想笑いを浮かべてその場を切り抜ける能力は、2才にして備わっている。「いくつ? 一個? 二個?」と聞くうちに、「いくつ」は数を尋ねているのだとわかってきて、「いっこ」と答えが返ってきた。ちんぷんかんぷんだった言葉の意味が、やりとりを重ねるうちにぼんやり見えてきて、やがてくっきりとなり、そうかこういう局面ではこのカードを切ればいいんだ、と試しにやってみたら、欲しいものが手に入る。言葉が通じない国で買い物するときのあのワクワクドキドキする感じを、母国語で味わっているのだろう。面白いと思ったら飽きることを知らない2歳児の好奇心も手伝って、またやるの、まだやるのと「コロッケちょうだいな」を繰り返すうち、一種類だったコロッケは二種類から選べるようになり、ソースがつき、店を出て数歩あるいて家に帰り、「ピンポーン。パパ、コロッケ かってきたよ」とパパと食べる続きが生まれ、演劇でエチュードを繰り返しながら場面が出来上がっていくように、会話が進化していった。

たま「がらがらがら(と音とともにドアを開ける仕草)」
わたし「いらっしゃませ。今日は何にしますか」
たま「コロッケちょうだいな」
わたし「何コロッケにしますか?」
たま「うん」
わたし「野菜コロッケとカレーコロッケがありますが、どちらにしますか?」
たま「やさいコロッケ」
わたし「大きいのと小さいのがありますが」
たま「おおきいの」
わたし「大きい野菜コロッケ、おいくつ包みましょうか?」
たま「うん」
わたし「いくつ?」
たま「(うなずきながら)いくつ」
わたし「い・く・つ?」
たま「(指を一本立てて)い・く・つ」
わたし「一個ですね?」
たま「(うなずいて)いっこ」
わたし「ソースもつけますか」
たま「うん」
わたし「お代は90円です」
たま「(笑って)」
わたし「お客様。笑ってごまかされては困ります。お金をちょうだいできますか」
たま「(ますます笑って)」
わたし「いえいえいただくものはしっかりと。90円です」
たま「はい、ばっちーん(とわたしのてのひらにお金を置く仕草)」
わたし「あるじゃないですかお客様。百円お預かりしましたので、10円のお返しです。ありがとうございました」
たま「またねー」

2007年09月02日(日)  マタニティオレンジ170 せらちゃんのおさがり
2004年09月02日(木)  「とめます」と「やめます」
2002年09月02日(月)  My pleasure!(よろこんで!)


2008年09月01日(月)  『ブタがいた教室』と『ヤング@ハート』

8月の試写最終日に駆けつけたら満員で入れなかった『ブタがいた教室』の追加試写を観る。『パコダテ人』の前田哲監督の最新作で、撮影の葛西誉仁さん、制作の田嶋啓次さん、現場スタッフの澤村奈都美ちゃんと『パコダテ人』関係者率高し。3月にロケにお邪魔した(>>>2008年03月15日(土) 前田組「豚のPちゃん」に会いに行く)こともあって、身内の作品のような親しみを寄せている。

さて、気になる仕上がりは……試写室を出た瞬間、「よかった!」と監督に興奮して電話してしまったほど、引き込まれた。最後に食べるという前提で6年生のクラスで飼い始めたブタのPちゃんに次第に愛情が湧き、食べることに葛藤する子どもたち。名前をつけてしまった時点から家畜ではなく友だちになり、食べられなくなってしまう。Pちゃんを食べるのか、食べないのか。その答えを子どもたちに導かせようとする先生。卒業の日というタイムリミットに向けて学級会議が重ねられる。一緒に過ごす時間が長くなるほど離れがたい気持ちはふくらむ。けれど、食べないことが愛情なのか。Pちゃんを残して卒業するのは無責任ではないのか……。子どもたちのやりとりに口をはさまず、腕組みしてじっと成り行きを見守っている妻夫木聡演じる星先生の姿は、そのまま撮影現場の姿勢を思わせた。子どもたちには議論の台詞部分を白紙にした台本を渡したと聞くが、子どもたちの本音を引き出した演出は見事。大人の用意した言葉ではなく、自分たちの言葉で自分たちの結論を導いた子どもたち。説教臭くもなくお涙頂戴にもならず、映画のモデルとなった実話の教室で起きた化学変化を映画という形で表現することに成功していて、新鮮だった。公開は11月1日。前田監督の飛躍作になりそうな予感。

続いて、同じ試写室で『ヤング@ハート』を観る。ロックを歌うおじいちゃんおばあちゃんのコーラス隊を追ったアメリカのドキュメンタリー映画。シネカノンで予告を観て、これはいかにもわたし好みと思っていたら、先日『トウキョウソナタ』の試写で試写状をもらった。かわいいおばあちゃんになるのが夢のわたしにとって、チャーミングなお年寄りは人生のお手本。期待通り、いくつになってもヤング@ハートなコーラス隊の面々を観て、年を取るのが楽しみになってしまった。年を取っても趣味を持って仲間を持って張り合って負けたら悔しがって、ずっと自分らしく生きていけたら幸せだ。長生きしても人生から引退してしまったら時間を持て余すだけ。お年寄りがみんなこんなに元気なわけじゃないだろうけれど、人生が詰まった歌声を聴きながら、アメリカは日本に比べて寝たきり老人の数が圧倒的に少ないという話を思い出した。

2007年09月01日(土)  第2回ユニバーサル映画祭
2004年09月01日(水)  年を取らない誕生日
2003年09月01日(月)  「うんざりがに」普及運動


2008年08月31日(日)  マタニティオレンジ327 くるくる ぐるぐる 何度でも

広告会社時代の同僚、E君T嬢夫妻の新居を一家で訪ねる。三人で同じ得意先を受け持っていた仲で、わたしが会社を辞めてからも、二人が結婚しても、親しくおつきあいしている。料理上手、もてなし上手の夫妻は交替でキッチンに立ち、生ハムでアスパラやチーズを巻いたもの、かぶとクルミのサラダ、ビシソワーズ、庭で育てたバジルのジェノヴェーゼ、カレイのパン粉焼き、チキンライスを次々と手際良くテーブルに出してくれた。その連携は美しく楽しげで、バタバタアタフタしてばかりのわが家のせわしなさとはえらい違いだった。

余裕があると言えば、「前の家から二倍になった」という間取りもそうで、アジアン家具がゆったりと配された広いLDKでベランダの向こうの緑を望みながら食事をしていると、リゾートにいるみたいな気分になった。

床のない(物があふれているせいで)家に暮らし、歩くときは膝を大きく持ち上げないと転ぶような生活を強いられている娘のたまは、広々としたフローリングを駆け回り、ウッドデッキのベランダに飛び出してキッチンのドアから入る遊びを覚え、大はしゃぎ。キッチンに立っているT嬢が「あらあ、たまちゃん、来たのねー」と大げさに喜んで出迎えてくれるのがうれしいらしく、LDKからベランダ経由でキッチンに入りLDKに戻ってくるルートを何度もめぐり、そのたびにT嬢は「あらあ、たまちゃん」を繰り返す羽目になった。

ベランダぐるぐるの後、たまの関心は広いお風呂に移った。お湯を張ってない浴槽の中でひと暴れし、温泉みたいな腰かけられる段差にちょこんと座り、わたしやT嬢にも横にかけろと誘い、女三人で縁側トーク。「たまちゃん、悪い男にひっかかっちゃダメよ」とT嬢に言われて、たまはキャキャッと笑っていた。空のお風呂から上がると、「くるくるこっこ るー」と,家でお風呂に入ったときみたいにバスタオルで体を巻いてとおねだり。お風呂に入って、おっちんたんして、くるくるっこ。それを何度も繰り返すので、家中の大きなタオルが尽きてしまった。

「バレリーナ」が持ち芸のたまのために、マシュー・ボーンの『SWAN LAKE』のDVDも流してくれ、半日がかりでさんざん遊んでもらったのに、帰り際、「今日何がいちばん楽しかった?」と聞くと、「ニャーン」と猫の置き物を指差した。ちなみに「いちばんおいしかった」ものは、最後に食べたクッキーとのこと。

2007年08月31日(金)  『怪談』より怖い話
2005年08月31日(水)  佳夏の誕生日
2004年08月31日(火)  東京ディズニーランド『ブレイジング・リズム』


2008年08月30日(土)  インド三昧、のち、『ペガモ星人の襲来』

銀座のメゾンエルメスで「南インドの食事を食べ終えた風景」をアートにした『レフトオーバーズ』という展示があることを知ってしばらくしてから、同じくメゾンエルメスで上映中の『India:Matri Bhumi』の案内をいただいた。エルメスの10階に「ル・ステュディオ」という40席のプライベートシネマがあり、季節ごとに興味深い映画作品を紹介していることを教えてくれたのは、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭事務局の木村美砂さん。

「ついでにインド料理をどう?」と友人アサミちゃんを誘い、ダバ・インディア姉妹店の南インド料理屋『グルガオン』で気分を盛り上げた後、これまで前を通り過ぎるだけだったメゾンエルメスに初めて足を踏み入れる。事前情報なしに観た『India:Matri Bhumi』が始まって間もなく、掘り出し物!と内心で快哉。ドキュメンタリー映像に淡々としたフランス語のナレーションが添えられた90分は、象、川、虎、猿という自然と人間が織り成す4つの物語になっている。腕を組むように雄象の牙に長い鼻をからめる雌象。そんな象の恋を自分の恋に重ねる象使い。ダム建設の犠牲者の名が刻まれた記念碑を見上げ、洪水の被害者の名を刻むならダムの長さの碑が必要だっただろう、と自分の仕事を誇らしく振り返る作業員。飢えて人を襲う虎を退治しようとする村人に先回りし、地上は全員が住めるほど広いのだから、と虎を説得して他の場所へ行かせようとする老人。死んだ主人の亡骸に取りすがった後、単身で町に戻り、サーカスの男に拾われる見世物の猿。裸足で踏ん張って生きる人たちは、大地のエネルギーで充電しているかのような生命力を感じさせ、人間も動物も緑も水も異なる姿かたちをした自然の一部なのだと感じさせる。自然と人間の距離は近く、結びつきは強く、寄り添い、助け合い、ともに生き、「共生」という言葉がしっくり当てはまる。自動車は走っているけれど他の機械はほとんど登場しない時代の風景だから、インドでも今日では昔話なのかもしれない。

見終わってから、ロベルト・ロッセリーニ監督が1959年に発表した作品だとわかる。「有名な映画監督だよ。『緑の光線』とか」とアサミちゃんに嘘を教えてしまった。『緑の光線』の監督はエリック・ロメールだった。ではロッセリーニ監督の代表作はというと、作品一覧を見ても、観たことあるものがないという勉強不足。

『レフトオーバーズ』がこれまた楽しい。バナナの葉っぱにのっかった南インドの定食、ミールスが、ざっと数えて百人前。ずらずらっと床に並んでいる。親戚の集まりがあったのか、村の寄り合いだったのか、車座になって食事を囲んでいた人たちはいなくなり、食べ残しだけが残された(つまりレフトオーバーズがレフトオーバーされた)風景がアートになっている。バナナの葉も、その上のおかずもごはんもモンキーバナナも日本の食品サンプル技術で表現されていて、ひとつひとつ盛りつけも食べられ具合も微妙に違う。「この人全然手つけてないよ」「ごはんは白いのとドライカレーっぽい茶色いのと2種類あるね。機内食みたいに選べるのかな」「ドライor ウェット?」「そもそもこれはどうやって盛りつけるの? バイキングだと葉っぱがしなって食べものが偏っちゃうから、葉っぱの上に配膳係が配っていくのかな?」などとアサミちゃんと突っ込みを入れながら見て回った。作者のN.S.ハーシャさんは「食と人」の関係に注目する1969年生まれのアーティスト。気が合いそうだ。

『レフトオーバーズ』は9/15まで。『India:Matri Bhumi』は9/27まで。毎週土曜11時/14時/17時。入場無料、完全予約制(03 3569 3300 同伴1名まで予約可能)。近くの銀座ハンズ8階では、友人の絵師ミヤケマイが益子焼の作家さんと作った土鍋や鍋敷や香炉を展示販売している「火の道具」展を9/30まで開催。

シモキタに移動して、夜はG-up企画・製作の第6弾『ペガモ星人の襲来』を駅前劇場で観る。脚本が後藤ひろひとさん、演出が関秀人さん、キャストには五反田団の後藤飛鳥さんや絶対王様の有川マコトさんや小椋あずきさんやあひるなんちゃらの黒岩三佳さんなど、これまで舞台を観て心惹かれた役者さんたちが名を連ね、おまけに「ラジオドラマ全盛期、アメリカの『火星人襲来』に触発されて製作したラジオドラマの効果音をめぐる物語」。NHK-FMで放送された今井雅子脚本のオーディオドラマ『昭和八十年のラヂオ少年』では、大正生まれの少年と平成からタイムスリップした少年が日本版『火星人襲来』の脚本を練る。そんな親しみもあって、チラシを見ただけで期待値は跳ね上がった。

現在と過去を行き来しながら、なぜか第一回で打ち切られた連続ラジオドラマ『ペガモ星人の襲来』の謎が明らかにされていく。合間にはさまれるお遊びのバカバカしい番組がいいスパイスになって、笑いの要素もたっぷり。音響効果スタッフが物語の鍵を握るだけあって、傘の開閉で鳥の羽ばたきを表現したり、風船をこすって蛙の泣き声を出したりといった効果音の実演が視覚的にも楽しめる仕掛けになっている。小学校時代、必修クラブの放送劇で手づくりの効果音を工夫した思い出が蘇った。コピーライターになってラジオCMを作る頃には一枚のCDに納まっていて、ミキサーさんに「20番の『水を流す』の後に21番の『野菜を切る』を入れてください」などと指示するだけで間に合った。それはそれで便利だったけど、てんやわんやの効果音作りを見ていると、ああいうことやりたかったなとうらやましくなった。

幻のドラマを再現するにあたって集められたメンバーはオリジナル版の制作メンバーとの一人二役で、血縁者だったり顔が似ているという設定だったり。究極の音を追求した音効スタッフが奇跡を呼んだせいで事件が起こり、その記憶は打ち切られた番組とともに封印された……というファンタジーっぽい落ちもわたし好み。遊気舎二代目座長だった後藤ひろひとさんが今から13年前、1995年にはじめてギャラをもらって立身出世劇場にあてて書いた作品だという。達者な出演者もアッパレ!

G-up presents vol.6 ペガモ星人の襲来
【CAST】
ポキ(大谷雄二)    吉岡毅志 (演劇集団スプートニク)
クリさん(栗山寛之進) 有川マコト(絶対王様)
仁太          瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ) 
ミッチ(春本美智子)  後藤飛鳥(五反田団)
黒さん(黒田甚五郎)  赤星昇一郎
チョロ(宇野弘)    森啓一郎(東京タンバリン)
岸田浮世        小椋あずき
林田藤吉        岩井秀人(ハイバイ)
岡田良         大内厚雄(演劇集団キャラメルボックス)
木浦夕子        町田カナ
プロデューサーほか色々 柿丸美智恵(毛皮族)
ミゴー佐々木ほか色々  黒岩三佳(あひるなんちゃら)
ひろみほか色々     森下亮(クロムモリブデン)
ディレクターほか色々  板倉チヒロ(クロムモリブデン)
AD          森田祐吏(北京蝶々)
守衛さん        関秀人   

【STAFF】
プロデューサー     赤沼かがみ
脚本          後藤ひろひと(Piper)
演出          関秀人

2007年08月30日(木)  マタニティオレンジ169 布おむつはエコかエゴか

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