2007年09月07日(金) マタニティオレンジ172 『パパは神様じゃない』

新聞の書評で「男の子育てにおすすめの本」として紹介されていた『パパは神様じゃない』(小林信彦)を読む。この人の軽妙な語り口が好きで、エッセイをいくつか読んだことがあったが、自身の子育てについても書かれていたとは知らなかった。とはいえ、内容は「子育てに参加した体験記」というより、「子どもが生まれ育つ一方、父は何をしていたか」をやや自虐的なトーンで語っている。仕事で数か月家を空けている間に子どもが別人のように大きくなっていて、びっくり。別荘で仕事しようとしているのに、子どもが来ると、仕事にならない。そんなぼやきの中には、不器用さや照れも見え隠れしている。お父さんはもっと子どもといたい、もっと遊びたい、だけど忙しいし、君たちがすくすく育っているなら、何も言うことはないよ。そんな見守るような祈りが根底にあり、子育て戦力外の自分をおちょくっている。

第一子が誕生するとき、今まさにパパになろうとする小林氏は、作家仲間とホテルの一室で「水洗トイレで用を足す体位を名づける」というバカバカしいゲームに興じていた。なかなか「産まれた」と連絡が来ないので、アイデア出しのネタも尽きた頃、「あ、もうひとつあった」と思い出したのが、蓋を閉め、便座のすきまから射し込むパターン。これを「注入位」と名づけよう、と男二人で盛り上がって、まったくしょうがない。今ほど立ち会い出産が一般的でなかったのかもしれないし、今でも立ち会いできない病院はあるし、立ち会っても男はやることないとは言うけれど、何も妻が死力をふりしぼっているときに……と絶句し、脱力させられる。ここまで来ると、神様じゃないパパがかわいくさえ見えてくる。

それにしても、『自由が丘物語』(井上一馬)といい、『父の目1000日 赤ちゃん新発見―カメラとペンで綴ったわが子の3年間』(田沼武能)といい、『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと 』(山田太一)といい、男の人が書いた育児本というのは、どうしてこんなに読み物として面白いのだろう。母親のように入り込んでいない分、自分と子どもを客観的に見れるので、笑い話にできるのだろうか。肩の力が抜けていて、読んでいて気楽だし、楽しい。

2006年09月07日(木)  マタニティオレンジ3 「食事のおいしい産院」で産みたい!
2004年09月07日(火)  韓国のカメラマン Youngho KWONさん

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