2008年02月10日(日)  誕生日ケーキ三昧

誕生日が週末と重なった9日、家族でランチをと思い、数か月先まで予約でいっぱいのイタリアン、volo cosiに当日キャンセル狙いで電話してみるが、満席。近くにありながら遠い店だ。午後からは雪だというので、家でお昼を食べてケーキを買いに行くことに。近所のパティスリーシモンの小さなガトーショコラにプレートをプラス。一週間前のダンナの誕生日にも同じことをやったので、「いい年して」と店の人はあきれているかもしれない。ケーキを前に娘のたまと記念写真を撮るのが目的なのだが、椅子に座らせようとすると泣き叫び、暴れ回り、写真に写った顔はどれもひどい顔。パパの誕生日にはニコニコと愛嬌をふりまいてくせに。「これもいい思い出だよ」と言うダンナの声には優越感。

ご機嫌ななめのたまにガトーショコラのかけらをあげた途端、とろけるショコラにうっとり、たちまち虜になってしまった。涙目がキラリと光り、「次を寄こせ」と訴える。くせになってはいけないからとかけらをちょびちょびあげて、大人が急いで平らげたが、今度は、「その皿を寄こせ」と手を伸ばしてきた。魚の身がついた皿をなめつくす猫のごとく、アルミ皿にへばりついたチョコレートを夢中でなめる。その集中力のすごいこと。皿はみるみるピカピカにしてしまった。「わたしのチョコ好きが遺伝したのかな」「これは太るぞ」「虫歯も心配」と夫婦で話し、たまを押さえつけて歯磨き大会。上機嫌だったたまは、再び号泣。

今日こそ誕生日ランチをとvolo cosiに電話するが、昨日の雪で足元がぬかるんでいようと、やはり満席。少し散歩の距離をのばして、大好きなイタリアンのタンタローバに行こうかと思い、その近くにあるTipsy'sのチラシに「うっとりするほどおいしいシードルサービス券」がついていたのを思い出す。このお店はオープン当時に一度行ったのだけど、感激度ではタンタローバの圧勝で、なかなかそれっきりになっていた。子ども連れでいいですかと予約の電話で伝えると、感じのいいお返事。案内されたテーブルは、椅子がソファになっていて、たまを隣に座らせられて、助かる。お店の雰囲気も味も以前の印象よりずっと良くなっていた。パンとエゾ鹿のパテをモリモリ食べたたまは、デザートのフランボワーズのムースとアイスクリームも食べる気まんまん。お皿に溶けたアイスクリームに未練を示したので、しつこくスプーンですくってなめさせた。


天気がいいのでお茶の水まで出る。通りがかりに見つけたトラットリアのショーケースに並んだケーキがおいしいそうで、ダブルチーズケーキとチョコレートケーキをひとつずつ。自宅まで一時間かけて歩いて帰り、おなかをすかせてティータイム。どちらも濃厚で、小ぶりだけれどしっかりした食べ応えに満足。普段買うケーキはイモ・クリ派なのだけど、ショーケースのチョコレート色比率が増すバレンタインデー前のこの時期は、ショコラ系に手が伸びる。旬の魚と同じく、チョコレートのケーキも今が一番おいしい気がする。

2007年02月10日(土)  秘密のトンネル
2005年02月10日(木)  「香盤表」の由来
2002年02月10日(日)  ペンネーム


2008年02月09日(土)  プレタポルテ#2『ちいさき神の、つくりし子ら』

旗揚げ公演(>>>2006年08月04日(金) プレタポルテ#1『ドアをあけると……』)を観たときから2着目が楽しみだったプレタポルテの第2回公演『ちいさき神の、つくりし子ら』を六本木・俳優座劇場で観た。

原作はマーク・メドフの戯曲『Children of lesser god』。ろう学校に赴任した教師と学校で働くろう者の女性とのラブストーリー。演出の板垣恭一さんがずっとやりたいと願っていた作品だという。耳の不自由な人のために舞台の左右には字幕スクリーンが用意されている。

原作の戯曲の冒頭にある「ヒロインのサラは、ろうまたは難聴の俳優が演じることを強く希望する」という一文を尊重し、サラ役の津田絵理奈さんはオーディションで選ばれた。彼女の手話の豊かな表現力に、さすが自分の言葉にしていると感心したのだが、後で、プレタポルテのブログを読み、普段は手話を使っておらず、公演のために特訓した成果なのだと知った。

難聴の生徒オリンを演じた石曽根有也(らくだ工務店)は、演技とは思えない発声に驚いたが、お母さんが手話通訳者で、幼い頃からろう者と接してきたのだという。

別な公演でサラを演じたことのある大橋ひろえさんは、リーズに心を寄せる女生徒役。はじけるような明るさと茶目っ気は、テレビなどで紹介されているのを観て感じていたこの人自身のイメージと重なった。

サラの母親役の長野里美さんは、トレランスの公演でも感心したけれど、安定した存在感。校長役の樋渡真司さん、弁護士役の伴美奈子さんも達者。

サラと恋に落ちる教師リーズを演じた岡田達也さんは、台詞の大半が手話交じりの上、サラの手話を反復する形で訳すという重労働。通常の舞台の何倍ものエネルギーを使う役だったのではと想像する。サラとリーズのラブストーリーでありながら、わかりあえない二人がもどかしさや苛立ちをぶつけあう場面が圧倒的に多いのだが、真剣な喧嘩からは「好きだからこそわかってほしい、わかりたい」という思いがひしひしと伝わってきて、心を揺さぶられた。

好きな人には自分と同じ景色を見てほしい、見せてやりたいと願ってしまう。

リーズがサラに「音楽」を説明する場面が素敵だった。音楽は振動だけではない、音程という豊かなフレーズがあることをリーズは身振り手振りで表わそうとするが、「やっぱり無理だ」と諦める。そのとき、サラは「私には音楽はわからないけれど、あなたにとって音楽が大切なものだということはわかった」という趣旨のことを言う。

同じ景色を見ることはできなくても、相手がどんな気持ちでそれを眺めているかに思いを馳せることで、分かち合うことはできる。言葉を通じあわせることに不自由もストレスもない相手と気持ちがすれ違ってしまうのは、同じ景色を見ているつもりになって、別々のことを考えているせいかもしれない。

「違う者同士がわかりあうことの難しさと大切さ」というテーマは、ろう者と聴者だけでなく、男と女、大人と子ども、国や民族や人種の違いにも置き換えられる。

ちいさき神の、つくりし子ら
作者:マーク・メドフ
翻訳:平田綾子 板垣恭一
演出:板垣恭一
出演:岡田達也(演劇集団キャラメルボックス)
   津田絵理奈
   樋渡真司
   伴美奈子
   大橋ひろえ(SAP.AZN)
   石曽根有也(らくだ工務店)
   長野里美

ところで、原作の『Children of lesser god』のタイトルを聞いたのはアメリカ留学中の16歳のとき。市民講座で手話を習っていたのだが、ちょうど映画(『愛は静けさの中で』)版が公開されたときで、講師の先生が何度か話題にしていた。一度舞台を観てみたいと思っていたのが、20年以上経って、わたしの38歳の誕生日プレゼントとなって実現した。

その講座で習った手話の歌の中で、いちばん印象に残っているのが、ポール・マッカートニーとスティービー・ワンダーがデュエットしていた「Ebony and Ivory」。

Ebony and ivory live together in perfect harmony. Side by side on my piano keyboard, oh lord, why don't we?……仲良く並んですばらしいハーモニーを奏でるピアノの黒鍵(Ebony)と白鍵(Ivory)のように有色人種と白色人種もなれないかと問いかける美しい歌詞は、手話で歌っても美しかった。さまざま人種の生徒が集っていたその教室で、いろんな肌の色の手がひとつの歌を熱唱する光景が、記憶の中で希望のように光っている。

2007年02月09日(金)  マタニティオレンジ76 母になってはじめての誕生日
2006年02月09日(木)  倉カルミネにて2006年の誕生日
2004年02月09日(月)  今年もハッピーバースデー
2003年02月09日(日)  何才になっても祝うのだ
2002年02月09日(土)  シモキタ(下北沢)


2008年02月08日(金)  整骨院のウキちゃん3 となりのトトロ編

「続編はないの?」と最近聞かれることが多い整骨院のウキちゃん。シリーズ化する予定はなかったのだけど、リクエストに応えて第三弾。「ウキちゃんの話、面白がってくれる人がいるから、またネタを仕入れたいんだけど」と言っても、ウキちゃん本人はあいかわらず「いやー、ないっすね、面白い話」と自覚がないので、もっぱら院長からの聞き書き。

「シャンプーは3押し、ボディソープは5押し」と体もやることもでかいウキちゃんだが、「妙に気が小さいとこもあるんですよね」と院長。似ていると言われている「となりのトトロ」を妙に意識していて、おもちゃ売り場でトトロがいたりすると、そわそわするらしい。「そしたら、こないだお昼食べてたら、隣のテーブルでトトロの話がはじまっちゃって」と院長は話しながら思い出し笑い。しかも、「トトロに似てるやつがいてさー」というどんぴしゃな話題だった。テーブルに一人中国の人がいて、「ソノ似テル人ハ男デスカ女デスカ」と質問すると、「女でトトロに似てるのはやばいでしょー」。ここで隣のテーブル、爆笑。「思わず、『となりのトトロ〜』って歌ってやろうかと思いましたよ。あ、『となりはトトロ〜』のほうがよかったか」と院長。

「ウキちゃん、小学五年まで、自分で靴下はけなかったんですよ」と院長。それまではお母さんにはかせてもらっていて、お母さんがいないときは、隣のおばちゃんに「はかせて」と持って行ったらしい。「ウキちゃんてお嬢だったの?」と聞くと、「甘えてんですよね。今も基本は変わってないんですけど」とウキちゃん。服もお母さんがコーディネイトしたものを素直に着て、自分で選ぼうとしたことはなかったという。「与えられたまま着る、囚人ですね。家では番号で呼ばれていたそうです」と院長が突っ込むと、「呼ばれてません!」と反論。

「でも、とんでもないとこ、抜けてたりするんで、びっくりしますよ」と院長。こってりラーメンをウキちゃんと二人で食べに行ったときのこと。汁の表面に浮いた背脂を見たウキちゃん、「院長、タピオカが浮いてるぅ〜」と半泣きになった(ウキちゃんは好き嫌いが激しく、タピオカも苦手)。「ラーメンにタピオカが入ってるかよって突っ込んだんですけどね。ウキちゃんが自分のどんぶりから僕んとこにどんどん移してくるんで、こっちはもうタピオカだらけですよ」と院長。顔をしかめてタピオカ入りのれんげを運ぶウキちゃんの姿が目に浮かぶ。「もうっ院長〜、なんで、あたしの話、いちいちばらすんですか」「ホウレンソウだよ」「なんで患者さんに? 報告する義務ないじゃないですかー!」

好き嫌いは激しいけれど、好きなものは底なしに食べるウキちゃんの最近の悩みは体重増加で、「回虫ダイエット」を真剣に検討中。ネットで調べたら、ちゃんとした(安全安心な?)回虫が5万円で入手できるという。
ウキちゃん「院長〜、買ってくださいよ」
院長「じゃあ、今度のボーナス、回虫払いで」
ウキちゃん「いいですねー」
院長「探しとくよ、その辺で」
ウキちゃん「いやですよー、天然ものは」
そんなやりとりが飛び交うと、並んだ施術台に突っ伏した患者さんから「くくく」と笑い声が漏れる。

2007年02月08日(木)  マタニティオレンジ75 授乳しながらランチ&シネマ
2006年02月08日(水)  クリピロ様セネガル行ってらっしゃい会
2005年02月08日(火)  映画『不良少年の夢』試写会
2004年02月08日(日)  FRIDAYの亀ちゃん
2002年02月08日(金)  フライングワイン


2008年02月07日(木)  映画『歓喜の歌』に感きわまる

今年最初に劇場で観る映画は昨年から観そびれている『続・三丁目の夕日』になるはずだったが、ロングラン上映館もずいぶん減って時間が合わず、『歓喜の歌』が急浮上。昨年観た『しゃべれどもしゃべれども』に続いてNHKの朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』にはまり、わたし史上最高の落語ブームが来ている。立川志の輔の新作落語が原作ということで注目していたら、月刊シナリオに脚本(松岡錠司監督・真辺克彦さんの共同執筆)が掲載されていて、読んでみたところ、これはスクリーンで観なくちゃとなったのだった。

スクリーンで観て大正解! 脚本はもちろん面白く読んだのだけど、出来上がった作品は脚本から想像する以上に面白く、監督の演出のうまさに唸った。音楽の入れ方、小道具の使い方、キャラクターの味つけ、どれもさじ加減が絶妙で心憎くて、うまいとしか言いようがない。ひさしぶりにスクリーンで見る安田成美さんが、今まで見た中でいちばんかわいい、と思ってしまったのだが、キャストが皆生き生きとチャーミングに映画の中で生きていて、それぞれにしっかり感情移入して観れる。小林薫さん演じる主人公のダメダメ小役人ですら「憎めない人」から「愛すべき人」になってしまうのだが、人間の滑稽さをあたたかく見守る視線に落語と通じるものを感じた。

人は皆、毎日振り回されるように生きている。年末ともなるとなおさらだが、この作品が切り取っている12月30日から大晦日の二日間に凝縮された登場人物たちからは、そのリアリティがしっかり感じられた。自分の人生で精一杯の人と人がにっちもさっちもいかない状況に追い込まれ、一つの目標に向かって動き出す。どこにでも転がっていそうな日常の些細な出来事が積み重なり、動きそうにない山を動かしてしまう。そこにはこじつけも無理もなく、気持よく話が転がるに任せていると、いつの間にか奇跡が起こっている。飛び道具を使わずにそれをやってのける物語の展開のうまさにくらくらするような興奮を覚えた。

何度も吹き出し、ところどころでくすくす笑い、ときには大笑いし、ほぼ全編にやにやして観ていたら、ラストで涙が頬を伝ってきて驚いた。さあ泣きなさいとお膳立てされると、これは泣きそうだと予感があって涙を待ち受けるのだが、笑いでネジをゆるめられたところに、本人も気づかないさりげなさで涙が押し出されてしまった。じんわりとあったかい涙を気持ちよく流しながら、ああ、いい映画だったと余韻に浸っていると、クレジットロールの合間にお茶目なエピローグがついている。そこでもまた小道具の使い方に感心させられたが、最後の最後まで観客を楽しませようというサービス精神に脱帽ブラボー、映画はこうでなくっちゃとうれしくなった。

いい映画を観ると、誰かにすすめたくてたまらなくなる。これは誰にすすめようかと思い、浮かんだのが落語好きな母の顔。「小林薫さんの演技好きやわ」とも言っていた。大阪の実家に電話をすると、「ちゃんとリストに入れてあるでえ」。そういえば、母は昔、小学校の音楽の先生だった。安田成美さん演じるママさんコーラスのリーダーも小学校の音楽の先生だったという設定。わたし以上に楽しめるかもしれない。わたしが子どもの頃、母はNHKのラジオでよく落語を聴いていた。噺は断片しか覚えていないが、今わたしが落語を面白がれるのは、ラジオを聴いて笑う母を見た記憶が、根っことなって残っているせいかもしれない。

2007年02月07日(水)  マタニティオレンジ74 子育て中の美容院とエステ
2004年02月07日(土)  二人芝居『動物園物語』


2008年02月06日(水)  『看護』4月号に「玉稿」掲載

日本看護協会出版会の雑誌編集部より寄稿依頼のメールが届いて、日本看護協会の機関誌『看護』を知った。広告会社勤務時代に業界の数だけ機関誌(紙)がある(『日本たばこ新聞』、月刊『砂と砂利』など)ことを学んだが、看護専門の機関誌が存在するのも当然である。届いた見本誌(1月号)を開いてみると、特集もコラムも広告も見事なまでに看護一色。看護というテーマでこれだけ書くことがあるのかと驚かされる。特集のひとつが「看護を社会に発信する」となっていて、「メディアを活用する」(テレビドラマ)という見出しがあり、テレビドラマの看護指導をされている方が「看護の心を伝えたい」と語っている。「現実とフィクションの狭間で……」「ドラマが生む効果」という小見出しからも想像をかきたてられる。放送文化基金のパーティーで知り合って以来親しくしている余語先生も医師の立場からいくつかのドラマをアドバイスされていたが、「フィクションであっても、心をもって誠実に」見せたいとおっしゃっていた。「ドラマの中の医療者」という連載もあり、一脚本家にとっても読みどころ満載である。

前置きが長くなったが、お願いされたのは、「今月のことば」という見開き2ページのコラム。見本誌では、あの『女性の品格』の著者で紅白の審査員もなさった坂東眞理子さんが執筆なさっていて、その3号後にわたくしめが同じ場所に登場させていただいてよろしいのでしょうかと恐縮する。声をかけてくださった編集部の男性は、池袋シネマ振興会のフリーペーパー『buku』に連載中のエッセイ「出張いまいまさこカフェ」で今井雅子を知ってくださったのだという。自分の書いたものの反響を聞くのはうれしいが、読んだ人から次の原稿を依頼されるのは、何よりのほめ言葉だ。

bukuのエッセイは約1,000字だが、今回の依頼はその2倍。1,000字だと勢いで書け、プロットのように1万字クラスだと思いつくまま書きちらせるのだけれど、原稿用紙5枚でまとめるというのは思った以上に大変だった。書いては寝かせて仕上げた原稿をメールで送ると、編集部氏より「玉稿、拝受しました」の返信。あたたかい雰囲気が伝わってきたとのことで、声をかけてくださった期待には応えられたようで安心する。

自分の原稿を「玉稿」と呼ばれたのは初めてで、「玉稿とは何と気持ちのいい言葉か」と舞い上がる。「玉のような赤ちゃん」と同じく「玉のようにすばらしい原稿」という意味だと合点したのだが、新明解国語辞典を引いてみると、「相手から受け取った原稿、の意の尊敬語」とあり、無知を思い知る。以前、とある有名な脚本家の原稿を「国宝です」と受け取るプロデューサーの噂を聞いた。「玉」で「宝」に一歩近づいた気になったのだが、それ以前の問題。「恵存」(保存してくだされば幸いです、の意。自分の書いた書籍などを贈るときに書き添える)も知らなかったし、尊敬したり謙遜したりの語彙が品薄だなあと反省。エッセイの仕事もふえてきたことだし、日本語を使いこなせるよう勉強しなくては。「玉稿(!)」は3月20日発売の4月号に掲載予定。

2007年02月06日(火)  マタニティオレンジ73 ひろくてやわらかい床を求めて
2004年02月06日(金)  ミニ同期会
2002年02月06日(水)  電車にピップエレキバン


2008年02月05日(火)  マタニティオレンジ234 牛乳を飲みたい

好きと嫌いがはっきりしてきて、イヤなことには首を振ってNOの意思表示をするようになった娘のたま。これまではお風呂の時間になると無抵抗だったのに、気分が乗らないうちは動こうとしない。「お風呂に入る時間はアタシが決めるのよ」とばかりに、時間が来ると突然すたすたと風呂場へ向かい、自分から服を脱ごうとする。だんだん「自分」が出てきて面白い。

今日、夕食が終わり、子ども用椅子から下ろすと(椅子も最近は大人用に乗りたがる。子ども用はきゅうくつらしい)、流しまで歩いて行って、背伸びをし、水きり網に洗って伏せてある哺乳瓶のフタ(小さなコップになっている)と牛乳パックに手を伸ばした。そして、左手に持ったコップに、右手に持った牛乳パックを傾け、注ぐ真似をした。「たま、牛乳を飲みたいの?」と聞くと、「ん」とうなずく。早速、右手の空パックを預かり、左手のコップに牛乳を注ぐと、右手を添えてごくごくと飲んだ。牛乳髭をつけたその顔のうれしそうなこと。ほしいものがちゃんと伝わって、手に入ったときの喜びが顔に出ている。外国で言葉が通じて食べ物にありつけたとき、大人だってうれしいもんね。

ビデオを観たいときにはテープを持って機械の前まで行く。おんぶしてほしいときはおんぶひもを、出かけたいときは上着や靴を持ってくる。眠くなったらごろんと横になって床をとんとんたたく。「〜したい」のボキャブラリーがふえると、親も子も楽になる。

2007年02月05日(月)  マタニティオレンジ72 出産ドキュメント
2002年02月05日(火)  3つの日記がつながった


2008年02月04日(月)  マタニティオレンジ233 子守話5「こんにちは さようなら 雪だるま」

道路に積もった雪は朝陽に溶けてしまったけれど、保育園の土の園庭は銀世界。その景色からヒントを得て、今夜の子守話ができた。

子守話5 こんにちは さようなら 雪だるま

雪がたくさんふってつもった つぎの朝 
たまちゃんは 雪だるまをつくりました。
おにぎりみたいに 雪をぎゅぎゅっとかためて まあるくして
大きいまると 小さいまるを ふたつかさねて
石ころの目と 木のえだの口をつけたら
「こんにちは たまちゃん!」
雪だるまが げんきよく はなしかけてきました。
「たまちゃん なにして あそぶ?」と雪だるま。
「雪だるまって みちばたで じっとしているものじゃないの?」
「そんなの つまんない」
たまちゃんは 雪だるまをベビーカーにのっけて 
ほいくえんまでお出かけしました。

ほいくえんのにわは 雪でまっ白。
にちよう日なので ほかには だれもいません。
たまちゃんは 雪だるまをだっこして すべりだいを すべりおりました。
雪だるまは すべりだいがきにいって「もういちど」とせがみます。
なんどもすべりおりているうちに お日さまがたかくのぼり
雪だるまがとけはじめました。
あせをかいたみたいに しずくがぽたぽた。
たまちゃんは すこし小さくなった雪だるまを
いそいでベビーカーにのっけて おうちにかえりました。
そして れいぞうこに ゆきだるまをしまいました。

つぎの日は げつよう日。
ほいくえんへいくたまちゃんが「いってきます」とれいぞうこをあけると
雪だるまも いっしょにいきたいと いいました。
たまちゃんは ほいくえんの日かげのかだんの雪の上に 
雪だるまを そっとおきました。
ここなら すずしいから とけるしんぱいはありません。
「あとで すべりだいで あそぼうね」
そういって たまちゃんは きょうしつにいきました。

たまちゃんが きょうしつであそんでいるあいだに
お日さまがたかくのぼって 日かげだったかだんが 日なたになりました。
ゆきだるまは 少しずつとけて小さくなり 
二だんがさねのアイスクリームぐらいの大きさになり
たまちゃんがむかえにくるまえに ぜんぶとけてしまいました。
水のしずくになったゆきだるまが 土の中にしみこんでいくと
チューリップのきゅうこんが ねむっていました。
はるになったら みどりのめをだして 白い花がさくでしょう。
ふったばかりの雪みたいに まっ白なチューリップの花がさいたら 
たまちゃんは 雪だるまのことをおもいだすかもしれません。

2007年02月04日(日)  マタニティオレンジ71 「鼻からスイカ」伝説
2002年02月04日(月)  福は内


2008年02月03日(日)  雪の日の恵方巻

目が覚めると、窓の外は冷たそうなみぞれまじりの雪。うっすらと積もった道路は雪にアスファルトが透けて灰色になっている。娘のたまは外を指差し、「雪しゅらしゅら(しっくり来る擬態語を探して、この言葉に落ち着いた)」と話しかけながら両手をひらひらさせながら上から下へ動かすと、すぐさま真似をした。「星きらきら」の応用で、あっさり習得。

たまは外へ出たかるけれど、鼻水がひどいし、これで雪の中に出したら一気に風邪を引いてしまいそうなので、窓越しの雪見で我慢。雪が小止みになった夕方、わたし一人で恵方巻を買いに出かける。近所にある大阪鮨の店でハーフを二本。大阪の実家では果敢にも一本を丸かぶりしていたが、ハーフのほうがたしかに手に負える。大阪出身の大将が「切ったりしちゃあ福が逃げる」と得意げに話していたが、一本を半分に切るのは許容範囲か。

コンビニのがんばりで、関東でもすっかり定着した恵方巻。4年前の節分に切った巻き寿司を持って帰った東京人のダンナも、今年は自分から「恵方巻」と言い出した。だが、今年の恵方、南南東を向いて願掛け態勢に入ったわたしの背後で、「これ、どっちから食べるのかな。太いほうからかな」と遠慮なく話しかけてくるところが素人。無言で食べきらないと、ご利益がないのに。「恵方巻に太いほうも細いほうもないよ! ハーフに切るときに包丁の圧力で片方がつぶされただけだよ!」と心の中で叫びながらかぶついていると、「どっちから食べた? ねえ?」。まったく、気が散ってしょうがない。わたしの膝に抱かれたたまは、空気を読んで、神妙な顔つきで恵方巻きに手を添えていた。来年は一緒に丸かぶりできるかな。

2007年02月03日(土)  映画『それでもボクはやってない』と監督インタビュー
2004年02月03日(火)  東北東に向かって食らえ!
2003年02月03日(月)  納豆汁・檜風呂・山葡萄ジュース・きりたんぽ
2002年02月03日(日)  教科書


2008年02月02日(土)  マタニティオレンジ232 ごちそうを人一倍楽しむ方法

昨日の夜、ひさしぶりに外で食事をして、お酒を飲んだ。去年の春から夏にかけて仕事をしたプロデューサー嬢と「一度食事を」と約束していたのが、半年経って実現。わたしを彼女につないでくれたプロデューサー氏もまじえて三人で飲むことになった。

案内されたのは、麻布十番の『』という「うまい魚と野菜で呑める日本料理屋」(リーフレットのコピーより)。間接照明の下で食事をするなんて、いつぶりだろう。外で飲む機会は会社勤めの頃はしょちゅうあったし、フリーになってからもちょくちょくあったけれど、娘が生まれてからはめったにない。メニューを開いてお酒を選ぶことがとても新鮮だったりする。にごり桃酒とにごり柚子酒ですっかりいい気分になり、調子に乗って白ワインも頼んだら、酔っ払いの出来上がり。弱くなったと言おうか、燃費が良くなったと言おうか。

お酒だけじゃなくて、食べ物もしみるようにおいしい。温泉卵のようなとろとろの胡麻豆腐からはじまる和食のコースは上品な関西風の味付けで、来る皿来る皿わたし好み。デザートのフルーツゼリーまで途切れることなく幸せに包まれる。器も盛り付けも運ばれてくるたびにほうと眺めてしまうほど素敵。刺身皿をほんのり照らすのは、薄くむいた大根のスクリーン越しに揺れるキャンドルの炎だったりする。ああ、お皿がいっぱい、それだけでもうれしい。いたずら盛りの一歳児と二人きりの夕食では、おかずもご飯も野菜もいっしょくたにミルフィーユ状に盛った丼に娘の残飯までのっけてかき込んでいる。娘が振り回すスプーンから飛んでくる飯粒を顔で受け、娘が落としたスプーンを拾い(拾うまで「あーあ」とため息を繰り返される)、味わうどころではない。ゆっくりと舌で味を受け止め(普段は特急で通過するところを各駅停車)、とろけて骨抜きになりながら、「味わうとは、舌の滞在時間のこと」というご近所仲間のK夫人の名言を思い出した。

同席したプロデューサー二人も「おいしい」と繰り返していたので、もともとおいしい店なのだろうけれど、わたしが人一倍おいしく味わい、楽しんだ自信はある。ほろ酔いだからできる噂話、ここだけの話もおいしい。わたしの場合、昼は一人で、夜は娘と二人でということが多いので、会話の楽しみという非日常がトッピングされるだけで、ごちそう気分を味わえる。会社を辞めたことと子どもが生まれたことで失ったものをひとつ惜しむとしたら「会食」となるが、Hunger is the best appetizer(空腹は最高の前菜)。飲み会がお祭りになるなら、イベントに飢えるのも悪いことじゃない気がする。

2007年02月02日(金)  マタニティオレンジ70 子連れで江戸東京博物館
2005年02月02日(水)  しましま映画『レーシング・ストライプス』
2003年02月02日(日)  十文字西中学校映画祭
2002年02月02日(土)  歩くとわかること


2008年02月01日(金)  マタニティオレンジ231 たま、ネスカフェの景品に!

昨年暮れのある日、無性に絵が描きたくなった。娘のたまを写真じゃなくて絵で描きとめようと思い立ち、しまってあった画材道具を引っぱり出したところに「絵を描きませんか」と電話が入った。ネスカフェのキャンペーンで、50人のクリエイターがデザインしたマグカップとエコバッグをプレゼントする、そのクリエイターの一人として参加しませんかという。

コピーライター時代に、コンチネンタルミクロネシア航空の広告で理想の旅を募ったときに「応募例」としてイラストを描いたことはあったけれど、「文章を書く」のではなく「絵を描く」仕事が舞い込むなんて、願ってもないこと。「やります!」と飛びついた。

たまをモデルに描くとして、コーヒー気分をどう表現しようかと思案する。ドリンクはもっぱら母乳の乳飲み子とコーヒーをどうやってつなげよう、と考えて、はたと思い出したのが、「お菓子の家」。

たまの11/12才の誕生日に友人のミキさん夫妻が作ってくれたクッキーハウス、あの家にたまがお邪魔するというストーリーはどうだろう。ミキさん夫妻は余った生地で「クッキー人形」も焼いてくれたのだが、その人形をぬいぐるみみたいにたまが小脇に抱えてトコトコ歩いてくる、その後ろにはクッキーがポタポタ落っこちて……という絵が浮かんだ。

そうだ、バッグでは「クッキーを運んでくる」ように見えて、マグカップでは「クッキーを持ち出している」ように見えるように、家とたまの配置を変えてみよう……と下描きをしているうちにアイデアはふくらんで、ひさしぶりに描く絵の線もなめらかになっていった。

背景は、今井雅子のラッキーカラー、イエロー×オレンジ。線画のラインはあたたかみのあるこげ茶色に。できあがったデザインを「どう?」とたまに見せたら、「おーおー」と指差して興奮。色校正のバッグ(布地に印刷した状態のもの)が届いたときも、手に取ってしげしげと眺めていた。自分が描かれているとわかるのか、お菓子の家がおいしそうで喜んでいるのか。わたしもうれしくて、何度も取り出しては飽きずに眺めている。

たまが生まれていなかったら、お菓子の家を贈られることもなかっただろうし、そこに今回の仕事という偶然が重ならなければ、この絵は生まれなかった。縁だなあ、とめぐりあわせの不思議と幸せを感じる。このバッグとカップを手にした人にも、いいことが起こりそうな予感。

「ネスカフェ これでもか コレクション」キャンペーン(通称「これコレ」キャンペーン)は本日から4月25日(金)まで。ポイントマークが付いている「ネスカフェ」および「ネスレ」製品のポイント30点を1口として、どしどしご応募を。1デザインにつき2000名様にプレゼントの太っ腹企画なので、当選確率は高そう。くわしくはキャンペーンサイトにて。今井雅子ページへのコメントも歓迎です。(※キャンペーンサイトは閉鎖しています。2009年7月29日今井記)

2007年02月01日(木)  マタニティオレンジ69 女性は子どもを産むキカイ?
2004年02月01日(日)  東海テレビ『とうちゃんはエジソン』
2002年02月01日(金)  「なつかしの20世紀」タイムスリップグリコ

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