2005年11月30日(水)  保湿ティッシュは甘かった

いつ頃からかわたしを不安にさせていたのが「ティッシュが甘く感じる」という事実。甘みをすごく感じるときとまったく感じないときがあるので、これは体調に左右されるのではと勝手に憶測し、ティッシュが甘いかどうかを健康のバロメータにして、「ティッシュが甘い日」はデザートを控えたり、睡眠を取るように心がけたりした。

今日も鼻を噛もうとしたら、ティッシュが甘い。これってやはり何かの病気の症状なのだろうか、と以前から漠然と抱いていた不安が膨らみ、「ティッシュが甘い」をgoogleで引いてみたら、50件ヒット。わたしと同じ症状を訴えていた仲間が他にもいた!でも意外と少ない(「ぎっくり背中」は800件ほどヒットした)。先輩方のリサーチによると「保湿系のティッシュは保湿成分のアミノ酸のせいで甘くなっている」とのこと。早速、箱を確かめてみたら「保湿成分(グリセリン・ソルビット)は食品添加物の規格に合致しています」とあった。ソルビットって甘味料として使われているのをよく見る名前。甘みの元は、この成分だったよう。ティッシュの甘みは、わたしの体調ではなくティッシュの値段(保湿ティッシュはちょっと割高)で変動するとわかり、ひと安心。

2003年11月30日(日)  小津安二郎生誕百年
2002年11月30日(土)  大阪のおっちゃんはようしゃべる
2001年11月30日(金)  函館映画祭1 キーワード:ふたたび


2005年11月28日(月)  『ブレスト〜女子高生、10億円の賭け!』制作会見

渋谷の東武ホテルにて『ブレスト〜女子高生、10億円の賭け!』の制作会見。ドラマも映画もいくつかやったけど、制作発表(発表と会見はどう違うのでしょう?)に呼ばれたのは、はじめて。といっても連絡が来たのはぎりぎりで、わたしが着いたときには始まっていて、会見席の佐藤藍子さん、益岡徹さん、山田純大さん、多部未華子さん、小林涼子ちゃん、佐津川愛美さんが意気込みを語り終えたところに滑り込んだ。

Mエージェンシー戦略企画室の6人が居並ぶのを見られて感激……と浸る間もなく、「原作と脚本の今井雅子さんから一言」とマイクを渡され、「原作があったほうが映像化しやすいと知り合いのプロデューサーに言われて原作を出したんですけど、出せばいいってもんじゃなくて、ベストセラーにならないと映像化の道は険しかったんですが、このような形で映像にできてうれしいです」。アドリブがきかず、これでは作者の意気込みではなく経緯の報告。このドラマがきっかけになってブレストがあちこちの職場や学校で流行って、人と人との化学変化から思いがけないアイデアが生まれる醍醐味を味わえるようになったら、毎日がちょっと楽しくなる人が増えるかもしれない……そういう話をできればよかったのだけど、スピーチって、終わってから言うべきことを思いつく。

でも、質疑応答で「ブレスト(ブレーン・ストーミング)という言葉を知っていましたか」という質問が記者さんから飛んで、出演者6人の答えがブレストの面白さをそれぞれの言葉で伝えてくれた。『子ぎつねヘレン』にも出演している小林涼子ちゃんは「私はラブサイン(LOVE SIGN)というブランドを企画していて、企業の方とアイデア出しをしたりするんですが、あーあれがブレストだったんだってわかりました」、佐津川愛美さんは「高校生を集めてお菓子食べながらしゃべってお礼もらえるってのがあるって友だちから聞いてアヤシイと思ってたけど(←これはグルイン=グループ・インタビューのことかも)、人の意見を聞いて新しいアイデアを思いつく方法は面白いと思いました」。

傑作だったのは山田純大さん。「今度ブレストのドラマやる」と友人に話したら、「水泳の話?」と聞かれたそう。水泳をやる人にとっては「ブレスト(ブレスト・ストロークの略)=平泳ぎ」らしい。わたしはそっちの意味を知らなかったけど、最初原作のタイトルを「ブレスト」にしようと思ってたのを「胸肉の話?」と突っ込まれて、長いタイトルにしてしまった。その『ブレーン・ストーミング・ティーン』は増刷(四刷)決定。「ドラマ化」の帯つき本もそろそろ出回る様子。

第5回文芸社ドラマスペシャル『ブレスト〜女子高生、10億円の賭け!』
2006年1月8日(日)14:00〜15:25 テレビ朝日系全国24局ネットで放送


【キャスト】
三原和美(佐藤藍子)……Mエージェンシー社員
山口摩湖(多部未華子)……Mエージェンシー高校生ブレーン
佐々木操(小林涼子)……Mエージェンシー高校生ブレーン
小林雛子(佐津川愛美)……Mエージェンシー高校生ブレーン
三国慶一(益岡徹)……Mエージェンシー戦略企画室長
高倉健介(山田純大)……Mエージェンシー社員

山下巌(萩原流行)……チキン・ザ・チキン宣伝部長
藤野礼子(遠山景織子)…世界物産宣伝部ジェネラルマネージャー

山口真由美(山下容莉枝)……摩湖の母
山口稔(渡辺直樹)……摩湖の弟

冴子(矢野未希子)……摩湖の同級生
南海子(川北志保)……操の同級生
環(依知川絵美)……雛子の同級生

【スタッフ】
提供:文芸社ほか
脚本:今井雅子 文芸社刊 いまいまさこ著『ブレーン・ストーミング・ティーン』より
プロデューサー:井上千尋(テレビ朝日) 菅原章(電通) 小林由紀子
演出:猪原達三
制作:テレビ朝日 電通

2003年11月28日(金)  雪菓(ソルガ)
2000年11月28日(火)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2005年11月20日(日)  G-up side,B;session『ゼロ番区』

脚本家の川上徹也さんに紹介してもらった赤沼かがみさんが代表を務めるG-upは、演劇プロデュースユニットとでもいうのだろうか、新進作家や劇団と組んで、コンスタントに精力的に公演をプロデュースしている。わたし好みの作品が多く(これまでにハズレ!と思ったことがばい)、知らない劇団や俳優さんに出会えるきっかけにもなるので、毎回案内が届くのを楽しみにしている。

今回案内をいただいた『ゼロ番区』は、知人である岡安泰樹(おかやす・たいじゅ)さん出演ということで、さらに楽しみが加わった。7月の舞台『The Winds of God〜零のかなたへ〜』では特攻隊員役で坊主頭だった岡安さん、今回は死刑確定囚役で、坊主がちょっと伸びた感じの短髪。なんだか、見るたびに若返っている気がする。この人のお芝居は内側から迸るものが感じられて、見ていてすがすがしい気持ちにさせられる。本当に芝居が好きで、芝居を通して何かを伝えたい人なのだと思う。

タイトルになっている『ゼロ番区』は実際に使われている用語のようで、死刑または無期の刑を受けた、あるいは上訴中の収容番号の末尾がゼロの「ゼロ番囚」が収監される区画を差すのだとか。場所は東京拘置所の通称「ゼロ番区」。登場するのは死刑執行を待つ男四人と、彼らを見守る看守の男三人。死刑確定囚は独居房が基本だが、四人は一時的に同房に収容されていて、彼らが寝起きする雑居房と看守たちの詰め所を行き来する形で物語は進む。

看守が囚人たちに「ゼロ番区のゼロはお前たちが無意味だってことだ」といったような言葉を吐くが、たとえ死刑に値する罪を犯し、執行までのわずかな時間を塗りつぶすように生きる身であっても、彼らには感情があり、絶望もすれば希望も持つ。最後の瞬間まで人間なのだ、ということをこの舞台は訴えかけているように思えた。

死刑という運命と向き合う囚人たちが四人四様であるように、囚人と向き合うという看守も三人三様。囚人と看守、見張られる側と見張る側という対極の立場にある彼らだが、それぞれに苦悩があり、葛藤があり、双方の抱えるそれらが重なることも、わかりあえる瞬間もある。鍵の内側と外側は大違いだが、それでも同じ人間。そんな風に思えたら、ゼロという響きにあたたかみや重みが加わる気がする。実際のゼロ番区を知る人にとっては、ファンタジーなのかもしれないけれど。

G-up side,B;session『ゼロ番区』
新宿スペース107

【出演】
関 秀人
大内厚雄(演劇集団キャラメルボックス)
岡安泰樹(エル・カンパニー)
入山宏一(絶対王様)
日高勝郎(InnocentSphere)
濱本暢博(劇団OUTLAWS)
松本 匠(エル・カンパニー)

【スタッフ】
作・演出 松本匠(エル・カンパニー)
音響 平田忠範(GENG27)
照明 廣井 実
舞台監督 長谷川裕
制作 伊藤恭子
企画 RISU PRODUCE
製作 G-up
プロデューサー 赤沼かがみ

2004年11月20日(土)  高倉台・三原台同窓会
2002年11月20日(水)  カタカナ語


2005年11月17日(木)  『天使の卵』ロケ見学4日目 電車でGO!

今日は春妃と歩太が出会う印象的なシーンの撮影。嵐山電鉄、通称嵐電(らんでん)の貸切車両に乗りっぱなしで終着駅の嵐山までひたすら往復し、テイクを重ねる。鉄道ファンのご近所仲間・T氏が聞いたら羨ましがりそう。定員があるのでわたしは乗り込めないかもと事前に言われていたが、無事乗せてもらい、運転席のすぐ後ろのすみっこの席へ。カメラには写らない位置で、撮影の模様も見えないが、「はいっ、テスト」「はいっ、よーい、本番!」「はいっ、カット」「はいっ、ボールド」といった冨樫森監督の声や「あと二分です!」「ガバチョください」といった助監督の声がしっかり届き、現場の緊張感は共有できる。ちなみに「ガバチョ」はガムテープ(ガバッと引っ張っるから?)、「カット」はそこでフォルムを回すのを止めること、「ボールド」はシーンの最後にカチンコを映してからフィルムを止めること。

この日集まった乗客役のエキストラさんたちは役者の卵中心だそうで、礼儀正しく挨拶も威勢がいい。撮影待ちの間に繰り広げられる会話は関西弁のせいか漫才を聞いているよう。「鴨川べりに、よくアベック座ってるやんかー」「あー俺、その中におるわ」「あ、そう。僕、その外におるほう」といったとぼけたやりとりが面白い。「ところでこの『天使の卵』ってどんな話?」「俺、原作読んだで」「あらすじ教えて。一分以内で簡潔に」と言われた若い男性は、「歩太っていう美大落ちた浪人生がおってな……」と話し始め、一分ぐらいと思われる時間よどみなく話したが、無駄な言葉も説明不足もなく、見事に要約したストーリーを伝え、「そういう切ないラブストーリーよ」と締めくくると、聞いていた人々から「ほうー」と感心のため息がもれた。同じ課題を彼よりうまくこなせた自信はない。国語力が問われるオーディションがあれば、役をものにできそう。「そうか、悲しい話なんやなー」「悲劇の恋の二人の出会いのシーンなわけやな」とあらすじを知ったエキストラたちはうなずきあっていた。

天気もよく、ガラス窓からのぽかぽか陽気が心地よい。運転手さんは指示通りに電車を発進し、スピードを守って進行させ、ドアを開け、発車ベルを鳴らし、ドアを閉め、また発進することに集中。真面目な横顔に誇りがうかがえる。プライドを持って仕事に打ち込むとき、人はとてもいい顔をする。

嵐山駅に電車を停め、車内でお弁当を食べて休憩。小西真奈美さんとカフェめぐりの話をする。この人にカフェという言葉はよく似合う。京都の趣のあるカフェで、ページにかかる髪をときどきかき上げながら本を読む姿が想像できる。

撮影後、スタッフルームに立ち寄り、監督と本直し。現場の状況によって書き換える必要のある箇所がいくつか出てきた。「いい時期に来てくれました」と言われ、やっと居場所が少しできた気がする。部屋の壁にはシーンナンバーとシーンを手書きした模造紙が貼られている。「撮影が終わったところを塗っていこう」と監督が朱色の墨汁を浸した筆を入れていく。半分ほどが赤く染まる。「ずいぶん撮った気がしたけど、あと半分残っているのか」と監督。

おいしいと評判のお好み焼き屋で監督、助監督さんたちと夕食。和気藹々と楽しそうな雰囲気にまぜてもらえて、また少し転校生を脱出。

2002年11月17日(日)  学園祭


2005年11月16日(水)  『天使の卵』ロケ見学3日目 ミラクル

今日は7:30ロケバス出発。午前中は歩太が父の飛び降りたビルの屋上で花を手向けるシーン。ビルのふもとには大量の機材が出現。大掛かりな撮影隊に、ビルの管理人らしきおばさんは「映画は大変ですなあ」と感心したように言う。リハーサルを重ね、犬のフクスケを入れた形でさらにテストをし、いざ本番。現場では皆、市原隼人さんを「歩太」と呼び、彼も自然に返事している。19才の歩太がそこにいる。

午後は春妃のマンションのシーン。メンチカツのせシチューとサラダの昼食を取っていて、ふと隣を見るとマギー司郎さんがいる。マンションの管理人役で出演。一緒にいる男の子は親戚の中学生さんかと思ったら、二十歳のお弟子さん。しかも、美術助手のアルバイトの女の子の高校時代の同級生だそうで、お互い再会にびっくり。

マジック好きなわたしはマギーさんに興味津々。その場でいくつか披露してもらう。ちょうど少し前にNHK「ようこそ先輩」のマギーさんの回を見て感動したばかり。生徒に自分の欠点を話させてからマジックを披露させるという授業で、生徒を見守るマギーさんが涙ぐんでいるのを見て、もらい泣きしてしまった。「自信のない楽天家」だと自分を分析するマギーさん。17才で家出し、15年後に出演しているテレビ番組のスタジオに母親から電話がかかってくるまで連絡を取っていなかったとか。時間と苦労を重ねて味が染み出しているような人なのだった。マギーさんは鼻歌を歌いステップを踏みながらモップをかける陽気な管理人という役どころなのだが、「どうもダンスは苦手で」と本番ぎりぎりまで練習に励んでいた。

春妃役の小西真奈美さんともこの日初対面。みずみずしい透明感はこの人の宝だと思う。春妃役が決まったと聞いたとき、原作を読んで受けたイメージと見事に重なった。映画化のタイミングで春妃と同じ28才になったのが必然のようでうれしい。原作も脚本をかなり深く読み込まれていて、とても聡明な人という印象を受ける。

歩太と春妃が待ち合わせたカフェはclosedで外は大雨、やむを得ず近くの春妃のマンションに駆け込む二人……という流れ。「雨降らし」の撮影というものをはじめて見たが、そこら中水浸しになるので準備も後片付けも大変そう。ト書きで「雨」と指定すると、「晴れにできませんか」とプロデューサーに相談されることが多いが、よっぽどの理由がない限り避けたいと考えるのが理解できた。でも今回の雨は必然。

夜は単独行動。いつからなのか、三条烏丸の角が新風館というエリアに生まれ変わっている。メリーゴーランドがあり、イルミネーションが灯り、気の早いクリスマスが来たようなにぎやかさ。その一角にあるask a giraffeで夕食。カレーはなかなかいける。インテリアショップGeorge'sのカフェらしい。隣接するショップは閉まっていたけれど、カフェはにぎわっていて、関西弁で恋や夢を語っている。

ロケ現場の脚本家は転校生のようだと思う。しかも文化祭直前の。すでに人間関係は出来上がっていて、皆はそれぞれの役割に忙しい。自分抜きで完結している世界に割り込むのはなかなか大変で、せめて皆の足を引っ張らないように遠慮がちに見学させてもらうのだが、何かを一緒にしない状態で距離を詰めていくのは難しい。滞在期間が長いと、少しずつ打ち解けて居場所もできてくるのだけど、今回は駆け足なので、転校生のままで終わりそう。作品を重ねていけば、『パコダテ人』のスタッフに『子ぎつねヘレン』で再会したように、現場に顔見知りが増えて、お邪魔感は薄まっていくのだろう。


2005年11月15日(火)  『天使の卵』ロケ見学2日目 旅人気分

ロケの朝は早い。『パコダテ人』も『風の絨毯』も『子ぎつねヘレン』も早起きが辛かったけど、今回はとくに早い。6:15にロケバス出発から逆算して間に合うぎりぎりの5:40まで布団の中で粘る。ヘアメイクが必要な役者さんはさらに早起き。

寺へ向かう電車内のシーン。福知山の駅から京都方面行きの電車に乗り込んでの撮影。電車出発間際まで、ロケバスの中でお弁当を食べて待機。とても寒い。駅構内に入ると、通学の高校生たちが市原さんと沢尻さんを見つけて「え!」と信じられないものを見たように目を見開き、一緒にいる友人をつつき、「マジ!」「すごくない?」を連発。テレビで見ている平面の人がいつもの通学路に3Dで現れたら、そりゃあびっくりだ。

貸切ではなく、一般の乗客が乗っている車両を間借りしての撮影。ラッシュ時間を過ぎ、車内は空いている。窓の外は秋色ののどかな風景が続き、ボックスシートに揺られて本を読む人が絵になる。気分はローカル線の旅。

夏姫が車内で目を落とす歩太のデッサン帳を見せてもらう。ページの最後まで、さまざまな表情の春妃が描きこまれている。白地にペンシルで描きこんでいくのではなく、白地をペンシルで塗りつぶしてから練り消しゴムで黒を削り、濃淡を作る手法。作品に合った衣裳やロケ場所を決めるように、美大浪人生が愛する人を描くならどんなタッチになるか、吟味を重ねた上で選ばれたのだろう。奥行きと力強さがある絵には歩太の感情が宿っているようで、引き込まれる。

午後は撮影隊を離れ、京都を探索。「キンシ正宗」の看板を掲げた町屋を改造した堺筋三条のイタリアン『あるとれたんと』で遅めの昼食。向かいの『タントタント』の姉妹店のよう。窓に面したカウンター席が気持ちいい。

町屋の並ぶ三条通りを散策しながら東へ向かい、ビーズの卸屋でパーツを買ってハートのピアスを作り、モザイク画のような外観に惹かれた『ラジオカフェ』にふらっと入る。店内にはミニFM局(NPO京都コミュニティ放送が運営するFM79.7MHZ京都三条ラジオカフェ)があり、店の真ん中のブースから発信中。天井が高くてくつろげる。パンプキンケーキもおいしかった。
夜は、『京町屋 繭』の一角にあるCafe Rumble Fish(カフェランブルフィッシュ)へ。飛び石の路地を進んだ奥に、雰囲気のあるお店が佇んでいる。プロデューサーの清水さんと合流し、『たかはし』というこれまた隠れ家っぽいカウンターのお店に連れて行っていただく。おいしい日本酒と、それをさらにおいしくする肴が出る。お酒が進むにつれ、清水さんが映画を語る口調は熱くなり、ほんとに映画に惚れているんだなあと思う。

2004年11月15日(月)  「トロフィーワイフ」と「破れ鍋に綴じ蓋」
2002年11月15日(金)  ストレス食べたる!


2005年11月14日(月)  『天使の卵』ロケ見学1日目 なつかしの京都

京都駅に着くと、「帰ってきた」という気持ちになる。学生時代の四年間を過ごした思い出の町。ここで『天使の卵』のロケが決まったと知ったときはうれしかった。駅からタクシーを拾うと大渋滞。秋の京都は人が押し寄せる。ロケは大変だろうが、一年でいちばん京都が美しい季節をフィルムに納められる。話好きな運転手さんに「いい声してますね」と褒めたら、「私、数年前まで東京で役者やってましてん」。東映ニューフェイスの13期生、小坂和由さん。「2期が高倉健さん、4期か5期に梅宮辰夫さんがいてはります」とのこと。斬られ役の福ちゃんこと福本清三さんと写った写真を見せてくれた。

夏姫が歩太を問い詰める画廊のロケ地となった美術館は学生時代によく通った場所。到着するとほどなくOKが出て、ばらける。歩太役の市原隼人さん、夏姫役の沢尻エリカさんにはじめましての挨拶。どちらも眩しいほど若く、旬の人のオーラを放っている。映画『問題のない私たち』の舞台挨拶で沢尻さんを初めて見たときは衝撃的で、作品での演技のインパクトもあいまって、監督の森岡利行さんに「彼女いいですね!」と興奮して伝えると、「これからまだまだ行きますよ」と言われたのだが、本当にその後の活躍は目覚ましい。

ロケ弁当で早めの夕食を取り、夜は歩太の母・幸恵が切り盛りする小料理屋『けやき』のシーン。京都らしい通りにたたずむ小料理屋を借りての撮影。犬のフクスケは、原作を読んでイメージしたまんまの「いかにもフクスケ」顔。幸恵役は戸田恵子さん。「舞台『温水(ぬくみず)夫妻』を見て以来のファンなんです」とマネージャーさんに挨拶したら、「直接伝えてください」と戸田さんに紹介される。舞台の客席から、テレビの前で、スクリーンの前で、いろんな戸田さんを見てきたけれど、目の前の本人の輝きは格別。溌剌としたあの声で発せられる言葉が自分に向けられている……それだけですっかり舞い上がってしまう。

店の飲み客のエキストラとして、急遽わたしもテーブルに着くが、カメラからは死角の位置。同じテーブルに着いたエキストラの甲林高雄さんと谷口孝弘さんは残念そう。「ここ写らんのとちゃうの? さんざん待たされたのになぁ」と甲林さん。歩太の作るチャーハン(普段から料理し慣れているのか、手つきがサマになってる)のにおいが厨房からこぼれてきて、「おなかすきましたなー。客の役やねんからつまみぐらい出してほしいもんですなー」とぼやく。場を和ませようとトークに励むうちに打ち解けてきて、話が盛り上がってきたところで撮影は終了。「実はこの作品の脚本を書いているんです」と明かすと、「ええ記念になりました」と言ってもらえる。最後は店の前で記念撮影。

夕方5時に始まった撮影も、撤収する頃には日付が変わろうとしていた。おなかが空いたので、冨樫森監督にいただいた紫野和久傳の『柚こごり』をホテルの部屋に戻って食べる。撮影に入ると監督は現場のことで身も心もいっぱいになるものだが、「お構いできなくてすみません」とさりげなく極上のお菓子を差し入れてくれる心遣いが心憎い。絶妙な甘さに炊いた柚子に柚子のゼリーを重ねたものが柚子の器に納まった柚子尽くし。空腹で食べるのがもったいない上品で贅沢なお味。『けやき』ロケ地の近くにあるお店も雰囲気があった。懐石料理のお店だそう。

2004年11月14日(日)  『バニッシング・ポイント』@ルテアトル銀座


2005年11月09日(水)  『ブレーン・ストーミング・ティーン』がテレビドラマに

去年の4月に刊行されて一年半経ち、広告もしていないのに口コミで息長く売れている『ブレーン・ストーミング・ティーン』(いまいまさこ著・文芸社刊)が第5回文芸社ドラマスペシャル(テレビ朝日系列で来春放送予定)の原作本に決定。脚本も書かせてもらえ、いまいまさこ原作、今井雅子脚本が実現。もともと映像化したくて原作を出したわたしにとっては、願ったり叶ったり。

原作は、女子高生が広告業界の戦力としてアイデア出しに参加しながら大切なものに気づいていくという青春広告小説。広告の現場で使われるブレーン・ストーミング(直訳すると「脳みそに嵐を起こす」こと)という発想法をモチーフに、「宝物はあなたの中にある。それを宝の山にするか、宝の持ちぐされにするかはあなた次第」というメッセージを込めた、元気と勇気とやる気が湧く一冊。やりたいことが見つからない人には見つける手がかりを、夢はあるけどつかめない人には追いかけ続ける自信を、夢を見失いかけた人には見つめ直すきっかけを。読者からは「将来に希望が持てた」「仕事に前向きになれた」「なんでもできそうな気がしてきた」といった感想が続々。「幸運を呼ぶ本」のジンクスも生まれましたが、作者本人にも大きな幸運を届けてくれました。

ドラマ化のニュースに合わせて、5か月ぶりにメルマガ『いまいまさこカフェ通信』を発行。出演者や放送日が発表になり次第、追って次号を発行予定。バックナンバー閲覧と読者登録はこちらでどうぞ。

2003年11月09日(日)  小選挙区制いかがなものか
2002年11月09日(土)  大阪弁


2005年11月08日(火)  『スキージャンプ・ペア〜Road to TRINO2006〜』

スキージャンプ・ペアってすごく面白い、と会社時代の同僚のアートディレクターたちが大騒ぎしだしたとき、なんて面白いことを考える人がいるんだろう、と驚いた。「スキージャンプをペアで飛ぶ」という思いつきもすごいけど、それを見事なCGで表現し、解説までつけてやりきったことがすごい。DVDも売れ続けているらしいが、さらにこの競技が2006年トリノの正式競技になるまでがドキュメンタリー映画になってしまった。

タイトルは『スキージャンプ・ペア〜Road to TRINO2006〜』。よくよく聞くとトリノ・オリンピッグ(Olympig)と言っているし、ひとつひとつの小ネタはギャグに走っているのだが、作りはあくまで王道NHKドキュメンタリー風(いかにもそれっぽく作っているところが笑える)で、実在の人物が大真面目にインタビューに答えていたりする。パロディもここまで徹底すると、バカバカしさを通り越して、すがすがしい。神妙な顔でまことしやかに語る案内役の谷原章介もはまり役で、DVDのファンの人も未見の人も心置きなく楽しめるエンターテイメント作品に仕上がっている。

今日のマスコミ向け試写が行われた渋谷シネマライズ他、全国10都市12スクリーンで来春公開予定とのこと。

2003年11月08日(土)  竜二〜お父さんの遺した映画〜


2005年11月05日(土)  開東閣にて「踊る披露宴」

ある人いわく、結婚披露宴というものは、「歌う披露宴、奏でる披露宴、踊る披露宴」の順に格が上がるのだそうだ。それを当てはめると、今日出席した会社時代の先輩アートディレクター・Y嬢の披露宴は最上格ということになる。

場所は高輪にある開東閣。都心から切り離されたような静かな高台に佇む洋館は、鹿鳴館やニコライ堂を手がけたジョサイア・コンドルが設計、岩崎弥之助が明治時代に完成させ、現在は三菱グループの迎賓館として一般には非公開という由緒正しき歴史的建造物。あまりの重厚な雰囲気にのまれ、競合プレゼンよりも緊張した新婦上司のスピーチはガチガチに。

1階ラウンジでのカクテルタイムの後、2階のバンケットルームに場所を移して食事を楽しみながら披露宴。「スープは香りも召し上がっていただくため、フルートグラスでお出しします。お熱いのでお気をつけください」と料理長直々の味のある説明がおいしさを盛り上げ、デザートまで堪能。

最上級スペイン産イベリコ生ハムと三種の季節野菜のサラダ仕立て
トリュフと新鮮な帆立貝の滑らかなブルーテ、カプチーノ風
香り豊かな茸のコンソメスープ、フルートグラスサービス

バジリコ風味の南仏野菜を詰めた天然真鯛とポテトの重ね焼き
特選和牛フィレ肉の紫マスタード風味ロースト、タイムのクリスタルソルト添え
山形産ラ・フランスのコンポートと軽い栗のアイスクリーム

披露宴の後は再びラウンジでお酒とお菓子とコーヒー。Y嬢のお父様の昔からのなじみというハワイアンバンドの生演奏で、「娘とラストダンスを踊るのが夢だった」というダンディーなお父様と新婦が優雅なダンスを披露。日本人で父と花嫁のダンスが絵になるなんて、すごいこと。うちの父イマセン(社交ダンス経験者)とわたし(チアリーダー部出身)はともにダンス好きではあるけれど、一緒に踊るという発想はなかった。そういえば、応援団の仲間と演舞を披露したわたしの場合も「踊る披露宴」ではあったけど、今日とは別モノ、異種格闘技。「皆さんもどうぞ踊ってください」の呼びかけに応えたのは、Y嬢の親族の皆様。香り高い紅茶をいただきながら眺めているわたしは、ハイソサエティの仲間入りをしたような錯覚にしばしうっとり。

花嫁の父からダンスパートナーを交代された新郎I君は、たどたどしいステップで和やかな笑いを誘っていたが、最後のスピーチでも「僕は地味にやりたかったんですが……でも、やってみて、これはこれでよかったです」と正直すぎる挨拶。そこがまた好感が持てる、と評判だった。Y嬢とI君、末永くお幸せに。

2004年11月05日(金)  『催眠リスニング』1か月


2005年11月04日(金)  名久井直子さんの本

会社の同僚で席も誕生日もお隣りだった名久井直子さんは、会社にいた頃から売れっ子装丁家で、わたしより半年早く会社を辞めてからは、さらに仕事の幅を広げ、装丁だけではなく本の中身も手がけるようになった。相次いで出した二冊が、取り寄せた本屋さんに届いた。どちらも名久井らしさが出ていて、センスよし、たたずまいよし、ずっと眺めていたい本。紙にこだわる彼女らしく、手触りもよし。インターネットで本が読める時代になっても、やはり本の重みや厚みを感じ、ページを指先でめくる楽しさは紙ならでは。

本上まなみさんの帯コメントがついた『いぬはなく』は、詩人の斉藤倫さんの言葉に名久井が絵をつけている。タイトルを見て、犬の話なのかなと想像していたら、犬だけじゃなくて、いろんな動物や生き物たちが鳴く。その鳴き声が「うん、確かにそう聞こえる」という英語で表現されているという目のつけどころがとてもチャーミング。わたしのいちばんのお気に入りは、「Pick up! Pick up!(拾って拾って)」とまたたく星屑。いつもは見落とし(聞き逃し)ている世の中のささやきに耳を傾けたくなる、まるごとかわいい一冊。

東京 和のおやつどき』は、春日一枝さんとの共著。和菓子の世界をとても親しみやすく紹介していて、目で楽しむうちにおなかが空いてしまう困った本。写真がどれも本当においしそうで、添えられている言葉も気が利いていて、和菓子職人さんたちが読んだら誇らしくなりそう。和菓子工房見学のレポートも、秘密基地探検のようなわくわく感が味わえて、この紹介文を書いている間にも頭の中が和菓子に占領されていく、ほんとにほんとに困った本。

2002年11月04日(月)  ヤニーズ4回目『コシバイ3つ』


2005年11月03日(木)  柴田さん、旅立つ。

柴田さんは背がすらりと高くて物腰は優雅で絵になる紳士だった。69歳。ダンナの父の高校時代の同級生。柴田さんから見れば、わたしは「親友の息子の嫁」ということになるが、とてもかわいがってくれた。『パコダテ人』の東京公開中にわたしのトークショーがあった日、仕事帰りのスーツ姿で銀座シネパトスに現れた柴田さんは、場違いなほどかっこよかった。

去年、柴田さんが倒れて入院して以来、義父はどんどん元気がなくなり、口数が減り、食べる量も減った。しぼんでいく義父は、柴田さんとつながっているように見えた。持ち直したと言っては涙ぐみ、今日はしんどそうだったと思い出しては涙ぐみ、そんな義父を見て義母は「あなたまで倒れたらどうするんですか」とオロオロした。やがて柴田さんは言葉を発することも不自由になり、身振りと目で会話するようになるが、「雅子の『子ぎつねヘレン』のチラシを持って行ったら、じーっと見てなあ。テーブルに置こうとしたら、もう一度見せてくれって手を伸ばしてきてな、いつまでも手から離さないんだ。春まで頑張って一緒に観ようなって言ったら、うなずいてたよ」と義父が話してくれたのが、一週間ほど前だった。

あと数日で孫が生まれるのも待てずに柴田さんは逝ってしまい、今日、告別式となった。いつも穏やかな笑みをたたえた人だったけど、棺の中の柴田さんはいつも以上に優しい顔をしていた。お孫さんの誰かが描いたのか、胸の辺りにそっと置かれた画用紙に、クレヨンの飛行機を見つけたら、涙が止まらなくなった。「あんな優しいやつはいない」と義父が言うのを何度聞いたかわからない、柴田さん。あの飛行機に乗って、今頃は空のはるか上に着いただろうか。


2005年11月02日(水)  ウーマンリブVol.9『七人の恋人』

大人計画』の宮藤官九郎さんが作・演出するウーマンリブの第9回公演『七人の恋人』を観に行く。お目当ては『子ぎつねヘレン』に警官役で出演している阿部サダヲさん。観劇の友はデザイナーのアサミちゃん。昔からの大人計画ファンで、1997年末の大人計画公演『生きてるし 死んでるし』のパンフレットデザインも手がけている。アサミちゃんに連れられてその公演に行ったが、わたしの大人計画デビュー。阿部サダヲさんを知ったのもそのとき。もう十年経ったんだなとしみじみ。あの頃から人気はあったけど、チケットが取れないなんてほどじゃなかった。今宵は補助椅子ではまだ足りず、階段は座布団席に早変わり。ネット上ではチケットが二倍以上の値段に跳ね上がっているとか。

リピーターが多いのもチケット争奪戦を激しくしている理由のよう。恋をテーマにした七つのコントはどれも痛快で毒気があって、甘いかと思うとほろ苦く、確かにまたおかわりしたくなる味。観終わった後に「あのネタが面白かったねー」と振り返りながらまた笑えて、何度でもおかし、おいしい。わたしはどうしても阿部さんばかり追いかけてしまったけれど、アサミちゃんも「阿部さん、ぶっとんでてプリティー」と喜んでいた。映画『イン・ザ・プール』でも笑わせてくれた田辺誠一さんは、舞台で観るのははじめてだったけど、真面目におバカをやるのがとても似合う、とあらためて思った。

ウーマンリブVol.9『七人の恋人』

作・演出:宮藤官九郎
出演:阿部サダヲ 三宅弘城 少路勇介 星野源 宮藤官九郎 尾美としのり 田辺誠一

【東京公演】
10/15(土)〜11/13(日) 下北沢本多劇場
【大阪公演】
11/15(火)〜19日(土) 大阪厚生年金会館芸術ホール

2003年11月02日(日)  ロンドン映画祭にも風じゅーの風!
2002年11月02日(土)  幼なじみ同窓会


2005年11月01日(火)  シナトレ4 言葉遊びで頭の体操

目が悪く思い込みの激しいわたしは妄想癖、暴走癖がある。小学生の頃、暗闇の中から無灯火で近づいてきた二台の自転車を見て咄嗟に「馬の親子だ!」と判断し、地面にひれ伏した事件。石鹸屋でガラス皿に盛られた商品をチョコレートと間違えて試食した事件(あ、これはギリシア土産でよくもらうチョコレートだ、と思った瞬間、口に入れていた)。それもこれも脚本家にとっては「おいしい」飯の種となるのだが。

遠くの看板から近くのチラシまで、読み間違いもすごく多い。誤解した上に想像力が加わり、とんでもない話を思いついたりもする。今日は、巣鴨のTSUTAYAに行く途中にビルの上に看板を発見。そこにでかでかと書かれた「自白」の二文字を見て、驚いた。自白とは白昼堂々呼びかけられるものだったのか、しかし誰に呼びかけているのか……と頭の中ぐるぐるさせながらよく見ると、「自白」ではなく「目白」であった。新築マンションの広告らしい。でも、たとえ視力が良くても、追われる身であれば「目白」が「自白」に見えることだってあるかもしれない。いつかサスペンスものを書くときに使おう。こうして新ネタがKOTOBANKに貯蓄される。

ガラスとカラス、天丼と天井、秋田犬と秋田大は点のありなしで大違い。challengの中にはchangeがある。「印象」をひっくり返すと「象印」になり、「印象度」を入れ替えると「印度象」が飛び出す。結婚式には二人のシンプ(新婦・神父)がいる……。言葉で遊んでしまうのはコピーライター時代からの癖だけど、言葉遊びをしながら、それがはまる場面を想像するのは、シナリオを書く上でいい頭の体操になる。

わたしの場合は、実際の作品でも言葉遊びがけっこう役に立っている。映画『パコダテ人』は「『ごきぷり』を『こきぷり』って呼ぶとかわいくなるよ」という元同僚アサミ嬢の何気ない一言から生まれたパコダテ語が活躍した。ラジオドラマ『昭和八十年のラヂオ少年』では主人公がタイムトリップ先で出会う少年の名前を「ラジオ放送がはじまった日に生まれたので『ラジオ』と名づけられるはずだったが、それじゃあんまりだというので、ラから一本引いて『フジオ』」にし、『子ぎつねヘレン』では漢字の遊びを入れてみた。普段から言葉をストックする習慣をつけておけば、いざというときに取り出せる。

2005年10月12日(水)  シナトレ3 盾となり剣となる言葉の力
2005年7月27日(水) シナトレ2 頭の中にテープレコーダーを
2004年9月6日(月) シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?

2002年11月01日(金)  異種格闘技
2000年11月01日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)

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