2001年11月30日(金)  函館映画祭1 キーワード:ふたたび

ラッキーピエロふたたび
■7:50羽田発のJAL。隣の外人さんがワッキーだったので、口だけで息をする。眠れやしない。9:05函館着。ボランティアスタッフで録音助手をしていたゆうちゃんが出迎えてくれる。「観光につきあってくれる一日ボラスタ募集」とメールを送ったところ、試験期間中にもかかわらず、名乗り出てくれたのだ。同じくボラスタだった瓜谷さんの運転で、市内へ向かう。映画祭実行委員長のあがた森魚さんから携帯に電話。「今井さん、今年はいらっしゃるんですか?」「ええ、もう着いてます」。■あおいママと妹ちゃんが前日から函館入りしているとのことだったので、電話し、合流することに。「ロケ地めぐりをしたい」という希望が一致し、まずはラッキーピエロ人見店へ。ラッキーピエロは、これまで西波止場店しか行ったことがない。人見店にはラーメンがある。メニューも内装も店によって少しずつ違うらしい。ここは壁もテーブルも椅子も白くて、ペンションのような雰囲気。ひかるたちが座った窓際のテーブルを陣取り、チャイニーズチキンバーガーをほおばる。分厚すぎて、子どもの口には負えない。妹ちゃんはパンとレタスとチキンを解体して格闘していた。


大正湯ふたたび
■外は雪がちらついている。今朝までは吹雪だったとのこと。二年前に来たときは耳がちぎれるかと思い、口を開く気にもならなかったが、それに比べれば暖かい。■おなかいっぱいになり、大正湯へ移動。表戸は鍵がかかっている。まだ営業時間前だ。勝手口に回り、恐る恐る呼び鈴を鳴らす。「パコダテ人でお世話になった者ですが……」と名乗ると、しばらくして、表戸がガラリと開き、おかみさんが顔を出した。あおいママと妹ちゃんはロケで来函したとき大正湯を見ていないので、脱衣場を見せたかった。番台や飴色の柱や懐かしいビールのポスターや脱衣籠を。おかみさんが「本見ました?」と 『映画で歩く街 函館』を奥から持ってくる。パコダテ人ロケの様子が大正湯の写真とともに巻頭で紹介されていた。「カンヌまで行くかな」と、お茶目なおじいちゃんの言葉も。ロケ中は生活スペースを何時間も占領したり、真夜中までの撮影があったり、臨時休業までしていただき、ずいぶんご迷惑かけたと思うが、おかみさんもおじいちゃんもパコダテ人に巻き込まれたことを楽しんでくれているようで、うれしい。

映画祭ふたたび
■ひまわり保育園のロケ地となった駒止保育園を外から眺め(門がしっかり閉められていた)、ひかるのスカートがふわりめくれた谷地頭の電停(写真)に立ち寄り、ロープウェイ麓駅へ。主婦の瓜谷さんと午後から試験のゆうちゃんにお礼を言い、車を降りる。ミニ雪だるまを作って待っていると、前田監督、三木プロデューサー、あおいちゃん、マネージャーの小山さん、木下ほうかさんが到着。その前にオーディションで選ばれた函館の高校生、澤村奈都美ちゃんがパパ、ママ、叔母さん、いとこの女の子とともに元気な姿を見せ、もう一人の黒岩ま由ちゃんも札幌からママとともに駆けつけた。映画祭事務局のみなさんとあがたさんに再会する。あがたさんに会うのは二年ぶり。■『sWinG maN 』上映前に前田さん、木下さん、あおいちゃんが舞台挨拶。レストランに引きあげ、昼食。ゲスト参加の片岡礼子さんとお話しする。橋口監督の『ハッシュ』に主演されている女優さんだ。声を聴いて「『スモーキングタイム』(ギャラクシー賞に選ばれたNHK名古屋制作のラジオドラマ)の片岡さんですか?」と聞くと、そうだった。会社の踊り場でため息まじりに煙草を吸っていた主人公と、目の前の雰囲気がだぶった。オーディオドラマファンの間では、片岡さんはやたらと人気があり、「あの声はたまらない」と激賞されている。その話をしたら、「むっちゃうれしい!」と素直に喜び、「ラジオの仕事好きなんですよ。台詞一行でも飛んで行きますよ!」と身を乗り出した。真っ直ぐな人で好感が持てる。この人に『あて書き』でラジオドラマを書いてみるとしたら、どんな話がいいかな。

パコダテ人ふたたび
■平日の夕方なので、パコダテ人にどれだけお客さんが入るか気を揉んだが、上映前から長い列ができていた。大正湯のおじいちゃんと、大正湯ななめ向かいに住むカメラ道楽の吉田さんが、連れ立って見に来られていた。「しまった。今日はカメラをもってないや」と吉田さん。小山さんが挨拶したキレイなお姉さん二人組は、湯の川観光ホテルのフロント係の方。地元の女優さんかと思った。■関係者試写で二回見たので、これで三回目。函館で地元の人たちと見ているという感覚がまた新鮮。舞台挨拶では、わたしも前に出て、少ししゃべる。シナリオコンクールの審査員だったじんのひろあき氏が「普通だったら、こういう企画は映画化が難しいから、まず落とされる。よく形にしたと思う」とスピーチ。ほんとにそうだ。札幌テレビの 原さんが「良かったよー。泣いたよー」と握手を求めてきた。「家族の話あり、差別の話ありで、見応えあったよ」とほめちぎってくださる。
■長い間、「映画化作品が生まれないコンクール」だった映画祭のシナリオコンクール受賞作から、今年は一挙に二作品が映画化された。もうひとつの作品は、鵜野幸恵さん脚本の『オー・ド・ヴィ』。フランス留学中の鵜野さんは絵も料理もプロの腕前でソムリエの資格も持っているとか。そういう多才な面が作品にもうかがえる。監督は『洗濯機は俺にまかせろ』の篠原哲雄さん。「同じテツでも大人のテツと子どものテツです」と前田さんが監督対談で言っていた(写真はダブル"哲"監督)が、どちらも函館を舞台にしているのに、まったく違った印象の作品に仕上がった。監督のテイストの違いでもあるし、「見られる街・函館」が表情豊かな証拠なのかもしれない。主演の小山田さゆりさんがゲスト参加されていたが、すごくかわいい人だと思った。
■オープニング・セレモニーで、この日16才の誕生日を迎えたあおいちゃんに、サプライズがあった。ろうそくのついたバースデーケーキが運ばれ、『害虫』で主演女優賞を受賞したばかりのナント映画祭のトロフィーが手渡された。ロケ地の映画祭で主人公の年に追いつくなんて、神様が仕組んだ憎い演出みたい。
■ウェルカムパーティーでは、遺愛学園のロケのとき、一緒に電停で踊った女の子が「覚えてますよー」と声をかけてくれた。わたしもよく覚えていた。うれしい再会。いろんな人が「良かったですよ」と言ってくれ、こそばゆい。

田森君ふたたび
■昨日ほとんど寝ていないので、やたらと眠い。お酒が入るとコテンと寝てしまいそうなので、裏長屋(映画祭の常連の店)での二次会を断り、98年のシナリオコンクール授賞式で知り合った田森君と軽く食事することに。札幌に住む田森君は、受賞して以来、毎年雪道を徹夜で運転して映画祭に乗り込んでいる。今回も会えるかなと思ったら、やっぱり来ていて、宿まで同じだった。田森君の車で食事のできる店を探すが、まだ11時前だというのに、どこも開いていない。結局カリフォルニア・ベイビーに落ち着く。テキサスライス(だっけ?)とジュースのセットで1時間ほど映画について語る。同じ年に受賞したあとの二人、千葉君と千田ちゃんは元気だろうか。四人で再会したいねと話す。■宿に戻ると、ちょうど前田さん、三木さん、小山さん、ほうかさんが裏長屋から戻ってきた。「もう一軒行くぞ」と誘われ、三木さんが運転するレンタカーに乗り込む。ここでも店はなかなか見つからず、30分ぐらい走り回って、ようやく小洒落た飲み屋に入る。ナシゴレンとタイ風焼き飯を分け合う。■今回の宿は、インターネットで見つけたホテルリッチ函館。1泊3900円という安さに飛びついたが、期待はしていなかった。ところが、部屋は予想以上にきれいだし、必要な物はひととおりそろっている。歯ブラシも浴衣も懐中電灯もある。フロントの応対は丁寧で感じがいい。函館駅からも近く、おすすめ。

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