セクサロイドは眠らない

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2001年11月30日(金) 私は、ため息をつく。全く、男の人ときたら、どうしてこんなに単純で、すぐ有頂天になれるのかしら?

私は、まだ幼くて、これから飛ぼうというところだった。

そう。巣の中で震えて。

兄弟達はみんな、もう、広い空に飛び出してしまい、私一人が後に残されていた。

「一体、どうしたの?」
かあさんの声がする。

かあさんは、ため息をついて、言った。
「あんたは、昔っから、考えることだけは人並み以上だけど、度胸はからっきしなんだから。」

私は、くやしくて涙ぐむ。かあさんの言うことは正しい。なぜ、みんな怖がらないで飛び出して行けたのだろう?

「さあ。行きなさい。」
「でも、怖いのよ。」
「ねえ。見てごらん。」
かあさんは、私がさっきまでうずくまっていた場所を指す。

「あなたの大きさのくぼみがあるでしょう?」
「ええ。」
「ここが、あなたのいた証。だけど、あなたは、ここにいつまでもいるわけにはいかないわ。外に出て行って、多くに出会って、あなたのその小さなくちばしであなたの存在した証を刻んでこなければ。それは、とても素晴らしいことなのよ。」
「分かってるわ。分かってるけど・・・。」

私は、空を見回す。魅力的だが、怖い。

もし失敗したら?うまく飛べずに落下したら?飛ぶということは、どういうことだろう。ただ、飛ぶというだけで、楽しいものなんだろうか?鳥のくせに、空を飛ぶのを怖がるなんておかしいかしら?

「考えてたってしょうがないわよ。」
かあさんの声が背後から聞こえる。

ええいっ。しょうがない。

私は、目を閉じる。

羽ばたく。

体がフワリと浮く。

目を空けて、そっと下を見る。

私は、飛べた。なのに、翼を動かすのを止めてしまった。なぜ?

きゃ!

--

「それで?」
「ええ。それが私。実は私ね、そういうわけで鳥だったの。空から落っこちちゃったのよ。」

さっき出会ったばかりの私達は、ベッドでお互いのことを打ち明け合う。

「で、僕がそれを見つけた、と?」
「ええ。あなたの手の平が見えたから、とても大きくて暖かそうだったから。だから舞い下りた、とも言えるかもね。」
「とにかく、きみはうまく飛べなくて落ちたんだろう?」
「まあ、そうだけれども。とにかくあなたの手の平が見えていたの。」

彼は、私を抱き締めておでこにキスしながら言う。

「きみが、鳥であっても何でもいいよ。とにかく、僕らは幸せなカップルだ。きみが空を飛ぶのに失敗したのであっても、それでこんな幸福が手に入ったんだから、結果オーライじゃない?」

私は、ため息をつく。全く、男の人ときたら、どうしてこんなに単純で、すぐ有頂天になれるのかしら?私は、永遠に空を飛ぶチャンスをなくしちゃったかもしれないって憂鬱になっている時に。

私は、幸福そうに眼を閉じて横たわっている男を眺めながら思う。

だけれども、私は、空を飛ぶのに失敗したのかしら?それとも、わざと落ちたのかしら?

結局、私は、空を舞うよりは、こうやってベッドの中で物思いにふけるほうが得意なのかもしれないわね。そう思うと、少し気楽になって、シーツにもぐりこんで丸くなる。


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