セクサロイドは眠らない

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2001年11月28日(水) 「それは、お前がとても賢い子だからだよ。いいかい。自分より退屈な人間とは付き合わないことだ。」

同い年の男の子達と遊んでも、なにしろ退屈で。夜になると、眠たいんじゃなくてアクビが出てしまう。

「じゃあ、ね。」
「何だよ。もう帰るのか。」
「うん。ばいばい。」

家に帰ると、パパが眠っている傍らにもぐり込む。

「お帰り。早いんだね。」
「うん。だってつまらないんだもの。どうして、男の子達はあんなに退屈なのかしら。」
「お前にかかると、誰だって退屈なヤツになっちゃうんだね。」
「ええ。私にとっては、パパ以外の男性はみんなつまんないわ。どうしようもなく退屈なの。」
「それは、お前がとても賢い子だからだよ。いいかい。自分より退屈な人間とは付き合わないことだ。無理して付き合うと、目の前の相手と一緒にいる時間が退屈なのは自分のせいだって思い始めるからね。」
「分かったわ。」
「恋をする時は、賢い男を選ぶんだよ。」
「それはどうすれば分かるの?」
「そういうヤツは、体が賢いんだ。自分が歩くべき方向がちゃんと分かってて、誰かに付いて行ったり迷ったりしないんだ。それから、強い男を選びなさい。本当に強い男は優しいものだから。」

私は、ため息をつく。パパ以外に、私を退屈させない男がどこにいるというのかしら?

「ねえ。パパ。」
「好きなの。キスして。」

パパは、もう、随分眠たそうで、私の鼻にキスをすると、そのまま目を閉じてしまった。暗闇に取り残された私は、眠れずに、パパの寝顔を眺める。

--

その気取った女は、パパがいない間にうちを訪ねて来て、
「おとうさま、いつお帰りになる?」
と、訊ねる。

「さあ、分からないわ。それに、パパが帰っても、あなたには会いたがらないと思うの。」
「まあ、なんて失礼な。」

彼女は怒って帰ってしまう。

パパが帰って来たから、そのことを告げると、パパは笑って許してくれた。

「まったくこまったお嬢さんだね。」
「もう、変な女をうちに呼んだりしないで。」
「分かってるよ。」
「私、パパが好きなの。本当に好きなの。パパほどすばらしい男性はいないと思ってるわ。だから、パパ、私をお嫁さんにしてよ。」
「はは。パパもお前が大好きだ。だけど、いつかきっと、パパ以外にお前の心を捉える男性が現われるよ。パパより、強く賢い男が。いつか、きっと・・・。」

ああ。パパ、そんな寂しそうな顔をしないで。

--

そう。

パパには分かっていた。

その不安が的中する日が来ることを。

その男は、私達の部屋に荒々しく踏み込んで来る。私は悲鳴を上げる。男は、パパを見つける。パパも、男を静かに見つめる。それからは、もみ合う衝撃、唸り声、切り裂く音が長く続く。

私は、ただ、その光景を呆然と見ていた。

パパが。

血の海で倒れている。

全てが終わると、男は、体から血を流しながら、私のほうに向かって来る。
「一緒に来るか?」

私は黙ってうなずく。

--

「お前の父親は、この森で一番強い狼だった。」
「ええ。」
「お前の父親を殺した俺を、お前は憎むか?」
私は、静かに首を振る。

あなたを待っていました。

男は、行き先がちゃんと分かっていて、力強く先を行く。私は、退屈なんて言う暇もなく、彼の後を追う。

雪道に二匹の足跡が続く。

私は、春にはこの男の赤ちゃんを産むでしょう。そうして、いつか、強い男の子供に生まれる幸せと、悲しみを、子供達も理解する日が来るでしょう。


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