2008年09月15日(月)  「第2回万葉LOVERSのつどい」でますます万葉ラブ!

第1回に続いて審査員を務めたNHK奈良主催の脚本コンクール「第2回万葉ラブストーリー」募集。審査会で大賞1作品佳作2作品を選んだ6月12日からわずか3か月の間にホン直し、撮影、編集が進められ、活字だった3つの受賞作は、それぞれ10分あまりのオムニバス3作品となった。その「ドラマ万葉ラブストーリー夏」の完成を記念した「第2回万葉LOVERSのつどい」が今日開催された。会場は奈良女子大学記念館。明治時代に建てられたという美しいたたずまいの洋館は、国の重要無形文化財だとか。講堂の高い天井に施された装飾や、舞台正面の壁に配された謎の扉に、胸が高鳴る。

今回の受賞者も全員女性。そのうちの一人、『人込みさがし』で佳作を受賞した宮埜美智さんは、昨年『フルムーン ハネムーン』で受賞した藤井香織さんの友人で、わたしの一日シナリオ講座を一緒に聴きに来てくれたことがあった。審査の段階では作者名は伏せられているので、受賞が決まった後に知ったのだけど、うれしい偶然。大賞作品『誰そ彼からの手紙』を書いた高橋幹子さんは、今年のフジテレビヤングシナリオ大賞も受賞。立て続けにコンクールの最高賞を射止めるのは、才能に加えて運も強力な証拠。受け答えからも自信と意欲が伝わってきて、たのもしい。『つらつら椿』(ドラマ化にあたって『花守り』と改題)で佳作を受賞した縞古都美さんは受賞をしみじみと感激している様子。わたしもコンクールがきっかけで脚本家デビューをしたので、自分が経験した授賞式を振り返りながら、今日の感動が書き続ける力となりますようにと願った。

開演直前に、司会の中村宏アナウンサーと杉本奈都子キャスター、審査員で万葉学者の上野誠先生と第一部のトークショーの打ち合わせ。前回はドラマに登場する万葉集の歌3首を紹介しつつ展開したのだけど、ネタバレになる恐れもあるので、今回は路線変更することに。上野先生が「万葉集の巻七の冒頭にこういう歌があるんですが……」と手書きのメモをテーブルに出した。

 天の海に
 雲の波たち
 月の舟
 星の林に
 漕ぎ隠る見ゆ


「この歌からどんな場面が思い浮かぶかについて話すのはどうでしょう」と上野先生。作者は詠み人知らず。誰が誰に向かってどんな場面で詠んだ歌か思いを馳せるところから脚本作りは始まる。「まさにそういうことができたらと思ってました」とわたし。2回審査をやってみて、「ストーリーに万葉集の歌を盛り込むのではなく、万葉集の歌を原作にしてストーリーを膨らませる」ことが万葉ラブストーリーの必勝法だと確信したところ。その作業のさわりをトークで披露できたら面白い。

ホワイトボードもなく、パワーポイント上映もできないというので、上野先生が読み上げる歌を復唱して頭に入れつつ、一人ブレスト開始。月夜の海に小舟を浮かべて語り合う若い男女がすぐに思い浮かぶけれど、脚本家としては、中村アナや杉本キャスターが思いつかないような変化球を投げてみたい。開演の挨拶を舞台袖で聞きながら思いをめぐらせ、ふと「宝探しの暗号みたい」と思った。「謎解き」というヒントを得て、言葉遊びのスイッチが入り、歌をあらためて眺めると、もうひとつ発見。「できた!」とストーリーが見えた瞬間、名前を呼ばれて壇上へ。

即興脚本作りに入る前に、まず、上野先生が大きなハートを縫い付けたわたしのワンピースを話題に上げた。万葉「ラブ」にちなんでハート服を選んだのだけど、「近くで見ると、すごく縫い方が荒いんですよ」と上野先生。会場の笑いを誘ったところで、「この服を作ったデザイナーはこんな目に遭うとは想像してなかったと思うんですけど、万葉集の作者たちも自分の作品がドラマにされるなんて思ってなかったでしょうね」とわたしが引き取った。リード上手な上野先生との掛け合いは、気持ちよく話がつながる。


「今日は皆さんに脚本が生まれる瞬間に立ち会っていただこうと思うんです」と上野先生が切り出し、「天の海」の歌を読み上げ、「天が海なら雲は波 雲が波なら月は舟 その舟が漕ぎ出すのが星の林に隠れて見える」といった意味を解説。「これを詠んだのは男だと思いますか? 女だと思いますか?」と中村アナ、杉本キャスター、わたし、ついで会場の皆さんに質問。男派と女派がほぼ半々。続いて、中村アナと杉本キャスターに「この歌の場面を即興で演じてください」と上野先生。星空を見上げるカップルをたじたじと照れながら演じはじめたお二人、決め台詞が出ず、会話が終わらない。「その舟に乗せて私をどこへ連れて行ってくれるの?」と上野先生が助け舟。

「では、プロの今井さんならどんなドラマを考えますか」と上野先生に振られ、わたしが披露したのはこんな話。

つきあって10年になるのになかなかプロポーズが聞けない美穂子ちゃん(愛称ホコちゃん)が彼氏の阿久津君に宝探しの歌を贈った。この歌の中に宝のありかが……だけどなかなかわかってくれない阿久津君。じれったくなったホコちゃん、「頭の5文字をつなげてみて!」。答えは「アクツホコ」。ホコちゃんがアクツ君のお嫁さんになるのが宝だってこと。さらに「アクツホコ」を並べ替えると、「アホコツク(アホ小突く)」。鈍感な阿久津君にかわいく肘鉄食らわせたホコちゃんに阿久津君はついにプロポーズしてハッピーエンド。

「プロポーズの舟が星に隠れて見えない」というじれったさが歌に込められていたことを言い忘れたけれど、会場からは拍手を頂戴できたので、ほっとひと安心。ちなみにひらがなで書き起こすと、

 あめのうみに
 くものなみたち
 つきのふね
 ほしのはやしに
 こぎかくるみゆ


打ち上げの席で放送部長の武中千里氏に「在原業平の『かきつばた』の折り句の逆の発想ですね」と指摘されて、それを言い添えておけば教養がにじんだものをと悔しがる。「猫又」という短歌の会で以前「くりひろいを折り句にして一首」というお題があったのに、折り句という言葉もかきつばたもすっかり忘れていた。何気ない会話にさりげなく古典を忍ばせられるような大人になりたい。

第二部は授賞式。上野先生は「景」(景色)と「情」(情感)が描かれていることが選出基準であると話し、井筒和幸監督は大賞の「誰そ彼からの手紙」を絶賛。わたしは脚本作りを料理にたとえ、「このコンクールは万葉集と奈良を使うことと材料が指定されているけれど、万葉集は何千とあり、奈良の見所も何千とある。そのどれとどれを選んで組み合わせ、ストーリーを膨らませるか、そこが料理人の腕の見せどころ」と話した。

その受賞脚本にたくさんの人の手で命が吹き込まれ、さらに重厚な味わいに仕上がっているはず。というわけで、第三部はわたしも初めて観る「ドラマ万葉ラブストーリー夏」の披露上映。昨年以上に見ごたえのある3作品に惹きつけられた。自分の脚本が作品が映像になると、「ここは、こうなったのか」と答え合わせをしながら観てしまう。思った通りのこともあれば、予想を裏切られても期待を上回ることもあり、あれっとなる場合もあるけれど、間違いなく言えるのは、夏の奈良の名演は脚本に描かれている以上だったのではということ。前回の秋の奈良も素晴らしかったけれど、夏には夏の輝きがあり、すでに募集が始まった第3回(>>>募集要項)の春編にも早くも期待が高まる。ぜひ第4回募集で冬編まで作って、万葉ラブの四季を完成させてほしい。

披露上映後、『人込みさがし』に中村太郎役で出演した真鍋拓さん、『花守り』に桜井るり役で出演した中園彩香さんとともに受賞者3名が登壇。ドラマの感想を語り、真鍋さんが劇中でも披露した笙の音色を聞かせてくれた。今回の役のために特訓されたそう。『人込みさがし』を書いた宮埜さんは、ドラマの感激に加え、サプライズで来場したダンナさんのお父さんが涙ぐんでいるのが壇上から見えて、涙、涙。脚本コンクールは数あれど、授賞式と完成披露が一度に行われるものは珍しい。受賞者が一日に味わえる幸福度でいえば、万葉ラブは最強かもしれない。

つどい終了後はお時間の許す方に残っていただき、「ふれあいミーティング」という名の意見交換会。今日の感想をうかがったり、質問を受けつけたり。次々と手が挙がり、前回以上に活発なやりとりとなった。大学時代に応援団の写真をよく撮ってくれた小山氏もわたしのサイトでイベントを知ってサプライズで登場。「三人の受賞者の方、なぜそれぞれの歌を選ばれましたか」といい質問を投げてくださった。ミーティング後も話しかけてくださる方あり、サインを求めてくださる方あり。「子ぎつねへレンのファンです」という男性、「去年も参加しました」という男性、「次回応募したく東京から参加しました」という女性、「奈良に住んでいて、紹介したいところはたくさんあるんですけど、脚本の書き方がわからなくて」という女性三人組。「来年も来ます!」の声がたくさん聞けて、万葉LOVERSの輪が着実に広がっている手ごたえを感じた。

わたしに審査員を依頼してくれた大学時代の同級生、高田雅司くんは夏に千葉放送局に異動したけれど、イベントのために戻ってきてくれた。前回の受賞者の藤井香織さんは東京から、西村有加さんは名古屋から(お土産に名古屋グルメをいただく。あんこ味マーブルチョコ、ヨコイのソース、チョコ×海老せんべい)駆けつけ、ちょっとした同窓会気分。帰りたくなるイベントって、なんだかいいなあ。

奈良放送局へ移動し、ミニ打ち上げ。「6時45分のニュースでやるよ」とテレビをつけ、見守るが、なかなか出てこないうちに天気予報。「この後にもまだ枠があります」と中村アナ。しかし、天気予報の後は相撲のニュース。「落ちたか」と秋山局長。「いえ、あと1分あります」と中村アナ。最後にすべりこみで映った瞬間、大きな歓声。今年も成功でしたね、来年もよろしく、と気持ちよくしめくくる。

ドラマ「万葉ラブストーリー夏」は早くも放送が決定。昨年は奈良ローカル放送に始まり、関西地区での放送を経て全国放送まで4か月かかったけれど、今年は一か月以内のスピードで達成。ドラマとして楽しむもよし、第3回応募の傾向と対策を練るもよし。奈良放送局のブログで読める「万葉サブストーリー」とあわせてどうぞ。
◆9月19日(金)20:00-20:43(総合テレビ 関西のみ放送)
◆10月12日(日)15:05-15:48(総合テレビ 全国放送)

2002年09月15日(日)  パコダテ人P面日記 宮崎映画祭1日目


2008年09月14日(日)  降雪確率100%の「ハーベストの丘」

大阪滞在2日目。「あそこはええよー」と大阪の家族や友人から評判を聞いていたハーベストの丘へ。わたしの実家からは車で10分ほどの距離にあるのだけど、駅前から出ているバスに15分ほど揺られて向かう。行ってみて、「ここはええわー」。広い敷地にいろんなものが詰め込んであって、何時間でも過ごせそう。目移りしそうな遊具に、娘のたまも目がキラリ。だけど、何をするにもいちいちお金がかかる。それぞれ300円かける大人二人。子どもが4才を越えたら、さらに子ども料金がかかる。

放し飼いになっている犬と遊べるコーナーに入るのにも、付き添いの大人は300円。たまが入りたそうにしていたので入ったら、「こわい〜。でる〜」とぐずりだす。300円の元を取ろうと思って引き止めたものの「でる〜」。せめて写真をと撮ったけれど、ひどい顔をしていた。

300円の観覧車から眺めると、吊り橋の向こうは畑や牧場や池が広がるのどかなエリア。観覧車を降り、吊り橋の手前の小径を下って小川が流れているところまで歩く。自然の小川には、あめんぼやおたまじゃくしが泳いでいる。たまを裸足にさせて小川に足をつけさせると、指の間に砂が入り込む感触が気持ち悪いらしく、「でる〜」。軟弱な都会っ子になってしまっている。

吊り橋を渡り、たまが異様に興味を示したパンダボートに乗る。20分900円。自転車を漕いで大きな池を進む。フナみたいな魚が群れで泳いでいて、手をたたくとホイホイ寄ってくる。警戒心ゼロ。ボートから上がると、100円の電気自動車をせがまれ、スイカ車に乗り込む。思いがけないスピードで発進したかと思うと、あっという間に走らなくなる。降りると、「イーゴ」とイチゴ車に駆け寄るたまを引きはがし、牧場エリアへ。ヤギやウサギの餌も有料。どうせたまは怖がるので,眺めるだけに。

カフェテリアのお昼は意外とおいしく、たまもよく食べる。その近くにガラス越しに中の作業を覗ける工場があり、プリンやらソーセージやら牛乳やらを作っている。午後でほとんどの機械は止まっていたけれど、プリンにフタをする作業をたまは食い入るように眺めていた。

ちょうど期間限定の「ハーベストの丘に雪が降る」というイベントがあり、降雪機でまいた雪を敷き詰めた二十畳ほどの銀世界が出現。子どもたちがひしめきあって、角砂糖に群がるアリ状態。そこに高度を上げた降雪機のノズルから大粒の雪が降り注ぐ。大粒というより塊で、こぶし大の雪を顔面に受けると、冷たさよりも衝撃が勝る。昼寝から無理矢理起こされた寝ぼけ眼のたまにはあまり受けなかった。

2003年09月14日(日)  ヤッシー君、地震を吹っ飛ばす!
2002年09月14日(土)  旅支度


2008年09月13日(土)  大阪・北浜『五感』のVIPルーム

『万葉ラブストーリー』イベントに出席するため、3か月ぶりに大阪へ。今回は娘のたまに加えてダンナも一緒に行けることになり、大阪に住むダンナの弟一家とお昼を食べてお茶することに。去年の秋東京で会ったきりなので、ほぼ一年ぶりの再会。甥っ子のハル君はたまより1才4か月年上で、すらりと背が伸び、上手におしゃべりして、すっかりお兄さん。たまもハル君も最初は緊張気味だったけれど、少しずつ打ち解け、追いかけっこをはじめたり、ギュッとだっこしたり。

うどんやだけどカツ丼が名物というお店でお昼を食べた後、歩いて北浜のパティスリー『五感』へ。去年、元同僚夫妻の披露宴で意気投合したフクちゃんたちと大阪で再会したときに案内されたお店で、昭和以前の建物と思われるレトロな店構えに一目惚れした。そのときはティールーム待ちの行列を前に店内で食べるのは諦め,持ち帰ってフクちゃんのデザイン事務所で食べた。一階のパティスリーを見下ろすような二階の回廊のティールームはどういうことになっているのか興味をそそられ、ぜひもう一度機会があればと願っていたら、ダンナ弟のほうから「勤め先近くのケーキ屋」として案内してくれたのだった。

今回も一時間待ちの行列。だけど、焼き菓子の甘い香りの中でショーケースのケーキを冷やかしながら待っていると、思ったより短く感じられた。飴色の階段を上ってすぐの個室に案内される。大人4名子ども2名の6人でちょうど囲める大きなテーブル.壁には本棚。ドアを見ると、「VIPルーム」のプレート。子連れへの配慮でいちばんいい部屋に通されたのだろうか。大人だけだったら、テーブルが並ぶ大部屋だったかもしれない。お手洗いに行くついでに通りがかったそちらも、もちろん雰囲気たっぷりだったけれど、個室は格別。実際、たまがぐずりだしたときは、まわりに他のお客さんがいなくてよかった、と心底ほっとした。人のティータイムを邪魔してしまうほど心苦しいものはない。

さて、運ばれて来たデザートは、注文した「和栗のモンブラン」に桃のシャーベットと小さなケーキ(チョコのスポンジで栗とクリームをサンド)が添えられたもの。三つを交互にスプーンですくって口に運ぶ。ケーキはやさしくふくよかな味でシャーベットはほどよい甘さ。ケーキがひとつ400円ぐらいとして、プレートに昇格したら2倍ぐらいになるんだろうかと思ったら、値段はケーキ一つのまま。シャーベットとプチケーキはおまけなのだ。店内で食べると割高になるのはよくある話だけど、おまけがつくというのは珍しい。飲み物とセットにしても1000円弱でおさまり、なんだかとても満たされた気分。銀座の古い洋館に東京店をぜひ。


2008年09月12日(金)  キューバ帰りのクラシゲ嬢

勤めていた広告会社でコピーライターの同僚だったクラシゲ嬢は、関西出身らしい個性的な着こなしと気さくな性格に好感が持てて、一緒に仕事したことはないけれど、大好きなお姉様だった。わたしが会社を辞めてからも年賀状のやりとりは続いていたのだけど、今年の年賀状は戻って来てしまい、引っ越したのかと思ったら「キューバに行ったよ」と聞いていた。小柄でいつもニコニコしているけれど底知れぬパワーを秘めたクラシゲ嬢がキューバでラムを飲んでいる姿は、想像してみると、とても自然だった。

そのクラシゲ嬢から突然連絡があり、東京に戻って来たという。「近いうちに会えない?」というので、善は急げ、「じゃあ今日」と返事をした。

エクセルシオールカフェで軽く食事しながら、キューバで撮ってきた写真のプリントアウトを見せてもらう。クラシゲ嬢にコピーだけでなく写真の才能もあったことは今日まで知らず、そのことにも驚きながら、あふれる色と笑顔に圧倒される。「こんな小さい赤ちゃんでも、すっごくいい表情するのよ」とクラシゲ嬢。たしかに、澄ました顔がない。日本人よりひとまわり大きな目や口がさらによく動いて、写真のこちら側の人間を仲間に引き込みそうな磁力がある。クラシゲ嬢の小さな体がしっかり溶け込んでいる写真もあって、もともと魅力的な人なつこい笑顔が、いっそう眩しく見えた。

キューバは社会主義の国なので、物は基本的にほどほどに足りていて、すごく貧しい人もいないかわりにすごく富める人もなく、日本を悩ませているような格差への不満や鬱屈はあまりなく、理不尽に人を傷つける事件も聞かない。お金がたくさんあっても使うところがないし、お礼をするときは「油」をあげると喜ばれる……。日本とはまったく価値観の異なる国の話を興味深く聞いた。キューバの案内書は日本ではかなり乏しく、魅力を伝えきれていないので、自分が発信したい、とクラシゲ嬢。彼女のコピーと写真があれば、読んでも眺めても楽しい充実した本が期待できそう。「取り急ぎ、キューバブログを作ってみたら?」と提案すると、「ブログって何?」と聞かれ、今度はわたしが話す番に。

キューバの話も面白かったけれど、「日本で女が独身のまま40代を生きる不自由」についての話もわたしには新鮮だった。わたしは結婚したことで、「あらゆるカードを旧姓のまま使えない不自由」を味わったけれど、「銀行からも不動産屋からも信用されない40代独身女の生き辛さ」は面倒くさいを通り越した深刻な問題で、「そういう線引きのないキューバのほうがよっぽどラク」というクラシゲ嬢は、またしばらくしたらあっちに戻るつもりなのと言った。だけど、日本を離れる間の連絡先確保がまた曲者で、銀行には「郵送物の送り先が国内に確保できなければ口座を閉じてくれ」と言われたとか。「ずっと日本にいたら見えていなかったこと」をいろいろと教えられた。

2006年09月12日(火)  マタニティオレンジ7 おなかの赤ちゃんは聞いている
2004年09月12日(日)  黒川芽以ちゃんのTシャツ物語
2003年09月12日(金)  ビーシャビーシャ@赤坂ACTシアター
2002年09月12日(木)  広告マンになるには


2008年09月11日(木)  フォトグラファー内藤恵美さんの写真

「プロフィール写真を送ってください」と言われるたびに困る。子どもの写真は撮るけれど、自分が写ることはめったにない。第1回万葉ラブストーリーのポスターには、娘が生後6か月のときにフォトスタジオで撮った写真を切り抜いて使った。あごの真下に娘の頭があるので、ずいぶんバランスの悪いトリミングになった。第2回のときに「他の写真を」とリクエストされて、セルフタイマーで撮ったものを送ったら、なかったことにされたのか、前回と同じ写真が使われていた。第3回はそろそろ別の写真にしないと年齢詐称になりそうだし、プロフィール写真ぐらい作っておかなきゃと思い、フォトグラファーの内藤恵美さんを思い出した。

知り合ったのは、雑誌の取材。内藤さんが撮ってくれた写真をわたしが気に入り、内藤さんもわたしの作品を読んだり観たりしてくれるようになった。その後もう一度取材で再会したときの写真もとてもよく撮れていて、いつかじっくりと撮っていただきたいなあと思っていた。「プロフィール写真を撮っていただけませんか」とひさしぶりにメールを送ると、「思い出していただいてありがとうございます」と返信があり、「せっかくだからご家族の写真も撮りませんか」。ありがたい提案に飛びついた。

先週土曜日、光が降り注ぐ最上階のスタジオで行われた撮影は和やかで、楽しくて、1才の誕生日の記念写真を撮ったフォトスタジオではぐずりっぱなしだった娘のたまも終始ごきげんだった。カメラを向けられるのが苦手なわたしもリラックスできて、よくわかってくれている人に撮られるのってラクだなあと感じた。


一時間ほどかけて撮ってくれた写真約200枚を焼いたCDが今日到着。早速スライドショーで楽しむ。遠近感のある構図。寝転がったたま。カメラを意識していない顔。自分でも知らないようなとっておきの表情を本当に上手にとらえていて、写真って瞬間をつかまえるものなんだなあとあらためて思う。「今井さんに会うと、いつもワクワクする」と言ってくれる内藤さんのまなざしが、わたしのいいところをしっかりつかまえてくれて、ワクワクする写真になっている。

プロフィール写真はどれにしようか、候補はたくさんあるけれど、一人で写っているものより娘と一緒に写っているもののほうがいい表情をしている。たとえば、手をつないだ娘に視線を投げかけているこの顔(切り抜き)。

びっくりするような謝礼で引き受けてくださった上に、添えられたカードには「私の写真にたくさん写ってくださってありがとうございます」。こんな気持ちでわたしも書いていきたいなあと背筋が伸びた。

2007年09月11日(火)  マタニティオレンジ175 母娘漫才
2006年09月11日(月)  マタニティオレンジ6 予定日過ぎても踊れます 
2005年09月11日(日)  ZAKUROの2階のZAM ZAM
2004年09月11日(土)  感動の涙が止まらない映画『虹をつかむステージ』
2003年09月11日(木)  9.11に『戦場のピアニスト』を観る


2008年09月10日(水)  さすらいの「書き鉄」

娘のたまが鉄道本にはまっている。お気に入りは絵本『やこうれっしゃ』と別冊太陽のムック『宮脇俊三 鉄道に魅せられた旅人』。どちらの本もご近所仲間で鉄道ファンのT氏にいただいたもの。絵本はたまへのプレゼントで、ムックはわたしへの課題図書。「乗り鉄」「飲み鉄」などの分類にあてはめれば、T氏は「贈り鉄」!? T氏が敷いたレールにまんまと乗っかり、たまは「読み鉄」の道を走り始めた。

絵本もムックも「読む」というより「探す」行為を楽しんでいる(「探し鉄!?」)。文字のない『やこうれっしゃ』のページを開き、駅のホームで「あくしゅで バイバイ」している人や走る列車の洗面所で「おてて あらう」している人を探し、たくさんの乗客から「あかちゃん」を探し、「あった!」と見つけて指差す。ムックでは風景に溶け込んで走る車両を見つけて、「がたんごとん あった!」。

娘がムックで宝探しをする傍らで、わたしは写真の脇にある文章に目を走らせる。鉄道ファンで知られる作家の酒井順子さんが「私は本当は鉄道が好きなのではなくて、宮脇俊三さんが好きなのではないか」とコメントを寄せている。わたしも宮脇さんの書く鉄道の話を読むのが好き。終戦の日の玉音放送のときを綴った「時は止っていたが、電車は走っていた」(『時刻表昭和史』より。この本もT氏に教えられた)なんて名文にはしびれる。

宮脇さんの著書だけでなく、鉄道について書かれた本(ほとんどT氏にすすめられたり贈られたりしたもの)を読むのは楽しい。ガタンゴトンと揺れながら人や物を運ぶ鉄道にはロマンを感じる(そんなJRの広告コピーもあったっけ)。娘の「読み鉄」はわたし譲りなのかも。

鉄道について綴るのも好き(「書き鉄」!?)で、以前ラジオドラマの企画が舞い込んだときに、『さすらい駅』という鉄道駅を舞台にした五分ほどの一話完結ドラマを考えた。その企画が立ち消え、せっかく何本も考えたので何とか形にしたいと思って、読み物にまとめた。ドラマは駅員のモノローグだったので、そのまま一人称語りの掌編になった。映画の宣伝で縁ができた鉄道会社のフリーペーパーに持ち込んだら好感触で、連載して一冊の本にまとめたいですねと盛り上がったのだけど、乗ってくれた担当者が相次いで異動してしまい、話はしぼんだ。『さすらい駅』のお話なだけに企画もさすらっている。

2007年09月10日(月)  マタニティオレンジ174 ご近所さんちで2歳児の会 
2006年09月10日(日)  マタニティオレンジ5 卵から産まれた名前
2005年09月10日(土)  『チャーリーとチョコレート工場』初日
2004年09月10日(金)  原始焼『七代目寅』in English?
2002年09月10日(火)  大槻ケンヂ本


2008年09月09日(火)  腰痛は気功で治せるか

産後一か月は横になっていなさいの忠告を体調がいいことに無視して、産院から退院するなりパソコンに向かった。しかも、ダイニングの椅子に座って。そのツケの腰痛に悩まされるようになって一年半。近所の整骨院に通うようになって、だいぶ症状は緩和され、痛みで眠れなくなることはなくなったけれど、完治にはまだまだ遠い道のり。ついに気功教室の門を叩くことになった。

背骨を動かすことで内臓をマッサージし、腰痛はもちろん万病を緩和し予防するという考え。「気」がのぼっていくのをイメージしながら、背骨を一本ずつ曲げていく。少しずつレベルアップして最終的には気をコントロールする術を体得するらしいが、初級編は背骨くねくねの動きを覚えるのが中心で、体操教室みたいな感じ。

体が気持ちよくなってくると眠気と邪念が湧いてくる。それを超えた境地をめざすらしいのだけど、わたしは眠気と邪念にすっかり支配されて、近所の子どもたちの泣き声はやたら大きく聴こえるし、仕事でやってる企画のあれこれのファイルが勝手に開いて、脳内で一人ブレストが始まってしまった。

「いいなあ、楽しいなあ、気持ちいいなあ、という感覚。わかりますか?」と独特のアクセントで語りかけながらお手本を見せる中国人の先生の動きは恐ろしくなめらかで無駄がなく、ちょっと人間離れした感じがある。顔色も非常に良く、体のどこも悪いところがなく、悩みも一切ないような穏やかで平和ないいお顔。何よりも教室の片隅にあるパキラがこれまで見たことないほど大きく立派に茂っている姿に、ここに漂う気はただものじゃありませんぜという説得力があった。教室の後は身も心もずいぶん軽くなった気がしたけれど、気がうまくめぐったせいなのか、運動不足が解消されただけなのか。見極めるためにも続けてみようと思う。

2007年09月09日(日)  マタニティオレンジ173 父母連総会で区長と話そう 
2005年09月09日(金)  アンティークボタンの指輪


2008年09月08日(月)  マタニティオレンジ331 おばけごっこ トンネルごっこ

2才児の遊びにも流行り廃りがあり、娘のたまの最近のブームは「おばけごっこ」と「トンネルごっこ」。「おばけごっこ、る!」と「トンネルごっこ、る!」とせがみ、親にシーツをかぶらせおばけ役をさせたり、足を上げてトンネルを作らせたり。保育園で今はやっている遊びらしい。

「おばけ こわーい」と言いながら笑顔で歓声を上げるさまは、怖くないおばけ屋敷ではしゃぐギャルのよう。トンネルをくぐるのは、何がそんなにおもしろいのか、飽きることなく何度もくぐる。パパとママの二連トンネルや壁に片足をつけての大型トンネルなど、トンネルにバリエーションをつけると、ますます遊びは終わらなくなる。たいていお風呂上がりに「る!」と言い出し、夜中にかけて調子づいてしまうので、寝るのが遅くなる。でも、昼間は保育園に預けっぱなしでかまってあげられないしとつい甘くなってつきあってしまう。

2007年09月08日(土)  対岸のタクシー
2006年09月08日(金)  マタニティオレンジ4 男の子か女の子か?
2005年09月08日(木)  文芸社パンフレットの取材
2004年09月08日(水)  東銀座の『台湾海鮮』
2003年09月08日(月)  「すて奥」作戦


2008年09月07日(日)  出張いまいまさこカフェ9杯目「映画祭審査員は五人五色」

池袋シネマ振興会のフリーペーパーbukuに連載中のエッセイ「出張いまいまさこカフェ」の9杯目を書く。今回は「映画祭審査員は五人五色」と題して、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の話題。白熱した審査の模様などを綴った。7月下旬に開催された映画祭から、あっという間にひと月半。知り合った皆さんはどうしているだろう。それぞれの国で新作に取り組まれているだろうか。映画のマグマがたぎっていた祭りの熱気が懐かしい。

2007年09月07日(金) マタニティオレンジ172 『パパは神様じゃない』
2006年09月07日(木)  マタニティオレンジ3 「食事のおいしい産院」で産みたい!
2004年09月07日(火)  韓国のカメラマン Youngho KWONさん


2008年09月06日(土)  マタニティオレンジ330  『ちょうちょう』熱唱! はじめてのカラオケ

ダンナが仕事でお世話になっているS氏のお宅を一家で訪問。先日ダンナとS氏が飲んでいたときに酔った勢いでわたしに電話をかけてきて、「うちのマンションのカラオケルームに来てくださいよ。とにかくすごいから」と熱っぽく勧誘されたのに乗った。マンションのすごいカラオケルームってどんなだろと想像がつかないまま高層マンションの高速エレベーターで最上階へ。階数表示は50階を越えていた記憶。一歩中に足を踏み入れると,思わず「おおっ」と感嘆のため息。壁一面のガラス窓から見はるかすビューの見事なこと。まさに天空のステージ。こんなところで歌ったらさぞ気持ちよかろう。

でもカラオケはとんとごぶさたで、何を歌えばいいのやら。娘のたまも一緒に楽しめる童謡なんか入ってるかしらんとブックを開けば、これまた窓外の景色に張り合うような充実のラインナップ。一曲目に『ちょうちょう』を入れ、たまにマイクを握らせると、小さな口にマイクの先が入り、なめるような格好に。マイクを見るのもつかむのも初めてで、扱い方がわからない。それでも歌の最後のほうにはほどよい距離を開けてマイクに声を乗せることを覚えた。

『ちょうちょう』は普段口ずさんでいるテンポより少々早めで曲に遅れがちだったけれど、2曲目の『ぞうさん』はのんびりペースでうまくメロディに乗れた。S氏の愛娘、4年生のミドリちゃんは、お姉さんらしくたまを温かく見守りながらときどき唱和してくれる。「よーし、こうなったら、今日は童謡縛りだ」とS氏。『いぬのおまわりさん』『おもちゃのチャチャチャ』『ぶんぶんぶん』と片っ端から童謡を入れて行く。2曲100円の設定なのだけど、童謡は短いのであっという間に終わり、コストパフォーマンスはよろしくない。「そうだ、『ポニョ』はどうだ?」とS氏。新譜で入荷したポニョを皆で熱唱。たまも大喜びで歌いながら踊る。「ポニョは長いな」と気に入り、童謡を数曲はさんで、またポニョで締めた。

その後、エレベーターで数十階下りてS氏宅で夕食をごちそうになる。面倒見のいいミドリちゃんにお風呂まで入れてもらい、たまはゴキゲン。親子でたいへん楽しい時間を過ごさせてもらった。たまにとっては初めてのカラオケの印象が強烈だったようで、帰り道もにぎりこぶしをマイクにして「ちょうちょ〜」と歌っていた。

2007年09月06日(木)  マタニティオレンジ171 苦し紛れの雨カバー
2006年09月06日(水)  マタニティオレンジ2 着たいがない!
2004年09月06日(月)  シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?
2002年09月06日(金)  ミナの誕生日

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